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審決分類 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  E21D
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  E21D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E21D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E21D
管理番号 1333183
異議申立番号 異議2016-701194  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-27 
確定日 2017-08-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5947441号発明「地中拡幅部の施工方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5947441号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5947441号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5947441号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年11月5日(優先権主張 平成26年11月5日)に特許出願され、平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされた。
その後、その特許に対し、特許異議申立人町田能章(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年4月11日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年6月16日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して申立人から同年7月14日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正内容
本件訂正請求による訂正内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。なお、訂正後の内容については、訂正請求書には誤りがあるので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおりとする。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程と」とあるのを、
「前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程と」(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)に訂正する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に
「前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と」とあるのを、
「前記凍土の構築後、前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと当該先行シールドに隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と」に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程と」という記載における「前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程」という、記載自体は明瞭であるが請求項1に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭であるという記載について、
「前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、」「前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程」と訂正して発明を明確にするものであるから、訂正事項1に係る訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項1における「前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、」「前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程」という事項について本件特許の明細書の記載の有無をみると、「ステップS08では、図11に示すように、後行シールド6が完成する。その結果、エアモルタル(AM)が充填された先行シールド5と後行シールド6が交互に配置され、環状の外殻シールド4が形成される。」(段落【0035】)、「ステップS10では、図13に示すように、外殻シールド4の外周に外周の凍土42が造成される。」(段落【0037】)と記載されている。
したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項1に係る訂正は、請求項1に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭である記載を訂正して発明を明確にするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2) 訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と」という記載において、
「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結」という記載自体は明瞭であるが請求項1に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭である記載を「更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し 」と訂正して発明を明確にするとともに、合わせて、上記訂正前の記載の冒頭を「前記凍土の構築後、 」という記載に訂正し、また訂正前の「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとが連通する連通部」という記載を「前記先行シールドと当該先行シールドに隣接する前記後行シールドとが連通する連通部」という記載に、訂正前の「シールドトンネルの外側に」という記載を「前記シールドトンネルの外側に」という記載に、訂正前の「環状の外殻シールドを構築する」という記載を「前記外殻シールドを構築する」という記載にそれぞれ訂正することによって各事項間の関係を明瞭にし、発明を明確にするものであるから、訂正事項2に係る訂正は明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
また、訂正事項2は、「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結」することについて「前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築 」することに具体的に限定したものであるから、訂正事項2に係る訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無
訂正事項2における「前記凍土の構築後、前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと当該先行シールドに隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」という事項について本件特許の明細書の記載の有無をみると、段落【0037】ないし【0040】に
「【0037】ステップS10では、図13に示すように、外殻シールド4の外周に外周の凍土42が造成される。ステップS10は、本発明の止水工程の一部に相当する。・・・
【0038】ステップS11では、外殻シールド4の内部にRCリング覆工体9が構築される。・・・
【0040】・・・図19は、先行シールドと後行シールドが水平方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。また、図20は、先行シールドと後行シールドが垂直方向に連なる箇所におけるRCリング覆工体の構築状況を示す。図19、図20に示すように、外殻シールド4の内部にRCリング覆工体を構成する鉄筋が組み立てられる。鉄筋の組立が完了すると、図21に示すように、コンクリートが打設されRCリング覆工体9が完成する。」と、「止水工程」による「凍土」の造成後に「先行シールドと後行シールドが」「連なる箇所」に「鉄筋」と「コンクリート」を有する「RCリング覆工体」を構築することが記載され、また図19ないし21を看ると、「先行シールド5」と「後行シールド6」の内部に「RCリング覆工体9」を構築していることが看て取れる。
したがって、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。

ウ 特許請求の拡張・変更の存否
上記アで述べたように、訂正事項2に係る訂正は、請求項1に記載した発明が技術的に正確に特定されず不明瞭である記載を訂正して発明を明確にするものであり、また特許請求の範囲を減縮するものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3) 申立人の主張について
申立人は、平成29年7月14日付け意見書において、訂正事項1、2は特許請求の範囲の減縮に該当せず、訂正要件を満たしていない旨主張している。
しかし訂正事項1に係る訂正は上記(1)アで述べたように特許法第120条の5第2項第3号に掲げる事項を目的とするもの(明瞭でない記載の釈明)と認められ、また訂正事項2に係る訂正も上記(2)アで述べたように同条第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものと認められる。よって、かかる主張は採用できない。

(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する特許法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求による訂正を認める。

第3 特許異議の申し立てについて
1 本件特許の請求項1に係る発明
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件訂正発明」という。)。

「【請求項1】
地中拡幅部の施工方法であって、
シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールド機の発進基地を構築する発進基地の構築工程と、
前記発進基地から先行シールド機を発進させ、切削可能なセグメントが配置された先行シールドを間隔を空けて環状に複数構築する先行シールドの構築工程と、
前記発進基地から後行シールド機を発進させ、前記先行シールドの一部を切削しながら、後行シールドを環状に複数構築する後行シールドの構築工程と、
前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程と、
前記凍土の構築後、前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと当該先行シールドに隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と、
前記外殻シールドの構築後、前記外殻シールドの内側を掘削する掘削工程と、を備える、地中拡幅部の施工方法。」

2 取消理由の概要
(1) 取消理由が対象とする訂正前の特許請求の範囲の記載
訂正前の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
地中拡幅部の施工方法であって、
シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールド機の発進基地を構築する発進基地の構築工程と、
前記発進基地から先行シールド機を発進させ、切削可能なセグメントが配置された先行シールドを間隔を空けて環状に複数構築する先行シールドの構築工程と、
前記発進基地から後行シールド機を発進させ、前記先行シールドの一部を切削しながら、後行シールドを環状に複数構築する後行シールドの構築工程と、
前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程と、
前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と、
前記外殻シールドの構築後、前記外殻シールドの内側を掘削する掘削工程と、を備える、地中拡幅部の施工方法。」

(2) 各取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年4月11日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

ア 特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)(サポート要件)(以下「取消理由1」という。)
(ア) 止水工程について
上記(1)で摘記した特許請求の範囲に記載された「前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程」について、発明の詳細な説明には「先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する」旨の記載はない。

(イ) 外殻シールドの構築工程について
上記(1)で摘記した特許請求の範囲に記載された「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」について、発明の詳細な説明には「先行シールドと隣接する前記後行シールド」とを「連結」して「環状の外殻シールドを構築する」する旨の記載はない。

イ 特許法第36条第6項第2号(同法第113条第4号)(明確性要件)(以下「取消理由2」という。)
(ア) 止水工程について
上記(1)で摘記した特許請求の範囲に記載された「前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程」について、「先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する」という記載は、発明の詳細な説明を参照しても不明確である。

(イ) 外殻シールドの構築工程について
上記(1)で摘記した特許請求の範囲に記載された「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」について、「先行シールドと隣接する前記後行シールド」とを「連結」して「環状の外殻シールドを構築する」という記載は、発明の詳細な説明を参照しても不明確である。

ウ 小括
よって、請求項1に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

3 取消理由についての判断
ア 取消理由1
(ア) 止水工程について
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された「前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程」という記載は「前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、」「前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程」と訂正された。これにより上記2ア(ア)で述べた「先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する」という記載ではなくなり、また訂正後の事項は発明の詳細な説明に記載されているので(上記第2の2(1)イ参照。)、取消理由1が解消することは明らかである。

(イ) 外殻シールドの構築工程について
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」という記載は「更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」と訂正された。これにより上記2ア(イ)で述べた「先行シールドと隣接する前記後行シールド」とを「連結」して「環状の外殻シールドを構築する」するという記載ではなくなり、また訂正後の事項は発明の詳細な説明に記載されているので(上記第2の2(2)イ参照。)、取消理由1が解消することは明らかである。

イ 取消理由2
(ア) 止水工程について
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された「前記先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する止水工程」という記載は「前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、」「前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程」と訂正された。これにより上記2イ(ア)で述べた「先行シールド、及び前記後行シールドの外周に凍土を造成する」という記載ではなくなり、訂正後の事項は、発明の詳細な説明の記載とも整合し(上記第2の2(1)イ参照。)、発明が技術的に正確に特定される記載となり明確になったので、取消理由2が解消することは明らかである。

(イ) 外殻シールドの構築工程について
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、訂正前の特許請求の範囲に記載された「前記先行シールドと隣接する前記後行シールドとを連結し、シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する環状の外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」という記載は「更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程」と訂正された。これにより上記2イ(イ)で述べた「先行シールドと隣接する前記後行シールド」とを「連結」して「環状の外殻シールドを構築する」するという記載ではなくなり、訂正後の事項は、発明の詳細な説明の記載とも整合し(上記第2の2(2)イ参照。)、発明が技術的に正確に特定される記載となり明確になったので、取消理由2が解消することは明らかである。

ウ 申立人の主張について
申立人は、平成29年7月14日付け意見書において、概ね、外殻シールドの構築順序、すなわち外殻シールドの構築完了より前に外殻シールドが記載されているという理由により、本件訂正発明においても取消理由1、2は解消していない旨主張している。
しかし、本件訂正発明中の「外殻シールド」という記載を構築完了した「外殻シールド」に限る理由はなく、また本件特許明細書を参照してもそのような記載はない。そうであれば、申立人が主張するような構築順序の矛盾を生じるものではないので、かかる主張は採用できない。

エ 小括
以上より、取消理由1及び2が解消し、また他にサポート要件違反(取消理由1)又は明確性要件違反(取消理由2)に該当する点も発見しない。

4 取消理由通知において採用しなかった異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった異議申立理由の概要は以下のとおりである(異議申立書第3?4頁「理由の要点」の「取消理由1:進歩性なし」参照。)。

特許法第29条第2項(進歩性)(同法第113条第2号)
ア 主引例・甲第1号証
(ア) 本件訂正発明は、甲第1号証記載の発明、甲第3号証記載の発明、及び周知技術(甲第3?5号証、甲第8、9号証等)に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 本件訂正発明は、甲第1号証記載の発明、甲第12号証記載の発明、及び周知技術(甲第8、9号証)に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
イ 主引例・甲第2号証
(ア) 本件訂正発明は、甲第2号証記載の発明及び周知技術(甲第1、3?12号証)に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
(イ) 本件訂正発明は、甲第2号証記載の発明、甲第12号証記載の発明、及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

[証拠方法]
甲第1号証:特開2008-274705号公報
甲第2号証:特開2006-348718号公報
甲第3号証:特開2008-88732号公報
甲第4号証:特開2007-332720号公報
甲第5号証:特開2007-224532号公報
甲第6号証:特開平7-229387号公報
甲第7号証:特開2007-77637号公報
甲第8号証:特開2009-174169号公報
甲第9号証:特開2013-44111号公報
甲第10号証:特開2007-217911号公報
甲第11号証:特開2015-31112号公報
甲第12号証:特開2015-105513号公報

(2) 甲第1、2号証に記載された発明
ア 甲第1号証
甲第1号証には、以下の発明が記載されている。
「分岐合流部の施工方法であって、
ランプシールドトンネル2のセグメントを取り外し、ランプシールドトンネル2の回りに分岐合流部を構築するためのルーフシールド機の発進基地を構築する発進基地の構築工程と、
発進基地からルーフシールド機を発進させ、ルーフシールドトンネル6を間隔を空けて環状に複数構築するルーフシールドトンネル6の構築工程と、
発進基地の反対側の妻部に凍結ゾーン10を造成し、ルーフシールドトンネル6の外周に凍結ゾーン8を造成する止水工程と、
ルーフシールドトンネル6を構成するセグメントの一部をワイヤーソー12で撤去して隣接するルーフシールドトンネル6、6を連結梁24により連結し、ランプシールドトンネル2の外側に分岐合流部の外殻を形成する環状のシールドルーフ先受工3の構築工程と、
シールドルーフ先受工3の構築後、シールドルーフ先受工3の内側を掘削する掘削工程とを備える分岐合流部の施工方法。」(異議申立書第15頁5から19行)

イ 甲第2号証
甲第2号証には、以下の発明が記載されている。
「地下構造物の構築方法であって、
シールド掘削工法により構築された先進導坑6を起点として、先進導坑6回りに分岐合流部を構築するための小断面トンネルの起点となる取付坑10cを構築する取付坑構築工程と、
取付坑10cから掘削を開始し、切削可能な覆工が配置された先行小断面トンネル1を間隔を空けて環状に複数構築する先行小断面トンネル構築工程と、
取付坑10cから掘削を開始し、先行小断面トンネルの一部にラップさせながら、後行小断面トンネルを環状に複数構築する後行小断面トンネルの構築工程と、
取付坑10cの反対側の褄部に止水領域を構築し、外殻2の外周となる領域に止水領域4を構築する止水工程と、
先行小断面トンネルと隣接する後行小断面トンネルとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する後行小断面トンネルに先行小断面トンネルを接続し、先行小断面トンネルと後行小断面トンネルを連結し、先進導坑6の外側にランプ部の外殻を形成する環状の外殻2を構築する外殻の構築工程と、
前記外殻2の構築後、前記外殻2の内側を掘削する掘削工程と、を備える地下構造物の構築方法。」(異議申立書第19頁20行から20頁8行)

(3) 当審の判断
ア 主引例・甲第1号証
本件訂正発明と甲第1号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件訂正発明が「先行シールドの端部の内周面と後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成」しているのに対し、甲第1号証記載の発明はこのような特定を有していない点で相違しているが(以下「相違点」という。)、当該相違点は、甲第2号証ないし甲第12号証にも記載されていない。したがって、甲第1号証記載の発明において、上記相違点に係る本件訂正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

イ 主引例・甲第2号証
本件訂正発明と甲第2号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件訂正発明が「先行シールドの端部の内周面と後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成」しているのに対し、甲第2号証記載の発明はこのような特定を有していない点で相違しているが(相違する点が上記「相違点」と同じなので、以下これも「相違点」という。)、当該相違点は、甲第1号証及び甲第3号証ないし甲第12号証にも記載されていない。したがって、甲第2号証記載の発明において、上記相違点に係る本件訂正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

ウ 申立人の主張について
上記相違点に係る本件訂正発明の構成に関連し、上記(1)ア(ア)ないしイ(イ)それぞれにおいて申立人は「当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項に過ぎない。」(異議申立書29頁4から5行、30頁6行、34頁19から20行、35頁16から17行。)と主張している。
しかし本件訂正発明は上記相違点に係る構成を備えることにより「先行シールドの端部の内側と後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部が配置されることで、先行シールド、及び後行シールドの内側への水の浸入を更に抑制できる。」(本件特許明細書【0017】段落)との効果を奏するものであり、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の事項とはし得ない。

エ 小括
以上のとおり、特許法第29条第2項(進歩性)に係る異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。


第4 むすび
したがって、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立てに記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中拡幅部の施工方法であって、
シールドトンネルのセグメントを取り外し、当該シールドトンネル回りに地中拡幅部を構築するためのシールド機の発進基地を構築する発進基地の構築工程と、
前記発進基地から先行シールド機を発進させ、切削可能なセグメントが配置された先行シールドを間隔を空けて環状に複数構築する先行シールドの構築工程と、
前記発進基地から後行シールド機を発進させ、前記先行シールドの一部を切削しながら、後行シールドを環状に複数構築する後行シールドの構築工程と、
前記先行シールド、及び前記後行シールドの構築後、前記発進基地の反対側の褄部に凍土を造成し、前記先行シールドと前記後行シールドとが交互に配置されることで形成される環状の外殻シールドの外周に凍土を造成する止水工程と、
前記凍土の構築後、前記後行シールドを構成するセグメントの一部を撤去して前記先行シールドと当該先行シールドに隣接する前記後行シールドとが連通する連通部を構築し、当該連通部を構成する前記後行シールドの端部の外周面に前記先行シールドの端部を接続し、かつ、前記先行シールドの端部の内周面と前記後行シールドの端部の外周面を跨ぐように防水部を形成し、更に前記先行シールドと前記後行シールドの内部に鉄筋とコンクリートとを有するRCリング覆工体を構築し、前記シールドトンネルの外側に地中拡幅部の外殻を形成する前記外殻シールドを構築する外殻シールドの構築工程と、
前記外殻シールドの構築後、前記外殻シールドの内側を掘削する掘削工程と、を備える、地中拡幅部の施工方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-04 
出願番号 特願2015-217296(P2015-217296)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (E21D)
P 1 651・ 537- YAA (E21D)
P 1 651・ 851- YAA (E21D)
P 1 651・ 853- YAA (E21D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 桐山 愛世  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 前川 慎喜
井上 博之
登録日 2016-06-10 
登録番号 特許第5947441号(P5947441)
権利者 前田建設工業株式会社
発明の名称 地中拡幅部の施工方法  
代理人 川口 嘉之  
代理人 本間 博行  
代理人 内田 雅一  
代理人 本間 博行  
代理人 平川 明  
代理人 香坂 薫  
代理人 平川 明  
代理人 川口 嘉之  
代理人 香坂 薫  
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