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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  G01L
管理番号 1333185
異議申立番号 異議2016-700683  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-04 
確定日 2017-08-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5853171号発明「半導体圧力センサおよびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5853171号の明細書、特許請求の範囲を平成29年5月26日付け訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第5853171号の請求項1、5?8に係る特許を維持する。 特許第5853171号の請求項2?4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5853171号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成27年12月18日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人西村隼也より請求項1?8に対して特許異議の申立てがされ、平成28年10月25日付けで取消理由が通知され、平成28年12月27日に特許権者パナソニックIPマネジメント株式会社より意見書の提出及び訂正請求がされ、平成29年2月22日に特許異議申立人から意見書が提出され、さらに平成29年3月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、平成29年5月26日に特許権者パナソニックIPマネジメント株式会社より意見書の提出及び訂正請求がされたものである。(なお、平成29年5月26日付けで訂正請求がされたことにより、平成28年12月27日付け訂正請求は取り下げられたものとみなされる。)

2.訂正の適否
(1)訂正の内容
特許権者は、平成29年5月26日付け訂正請求書において、特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する(訂正事項1)。
「【請求項1】
ケースと、前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口と、大気を導入する大気導入口と、大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップとを備え、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、
前記圧力導入口は前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、
前記大気導入口は前記圧力導入部に並置された大気圧導入部に連通し、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され、
前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型された半導体圧力センサ。」

また、特許権者は、特許請求の範囲の請求項2ないし4を削除することを請求する(訂正事項2)。

また、特許権者は、特許請求の範囲の請求項5を以下の事項により特定されるとおりの請求項5として訂正することを請求する(訂正事項3)。
「【請求項5】
請求項1に記載の半導体圧力センサであって、
前記大気圧導入部は、前記圧力導入部との前記当接面に対向する側に切り欠きを有する半導体圧力センサ。」

また、特許権者は、特許請求の範囲の請求項8を以下の事項により特定されるとおりの請求項8として訂正することを請求する(訂正事項4)。
「【請求項8】
請求項1、5乃至7のいずれか一項に記載の半導体圧力センサであって、
前記圧力導入部が前記大気圧導入部より高い位置まで伸張し、
前記センサチップは、前記ケース内に、前記圧力導入口との対向位置を避けて配置された半導体圧力センサ。」

さらに、特許権者は、明細書を以下のように訂正することを請求する(訂正事項5)。
a.明細書の段落【0005】の「前記圧力導入部と前記大気圧導入部は少なくとも一部で一体成型されたことを特徴とする。」を「前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され、前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型されたことを特徴とする。」に訂正する。
b.明細書の段落【0006】、【0007】、【0010】を削除する。
c.明細書の段落【0011】の「当接面」を「前記当接面」に訂正する。
d.明細書の段落【0014】の「また、上記半導体圧力センサであって、前記センサチップは、前記ケース内に、前記圧力導入口との対向位置を避けて配置されたものを含む。」を「また、上記半導体圧力センサであって、前記圧力導入部が前記大気圧導入部より高い位置まで伸張し、前記センサチップは、前記ケース内に、前記圧力導入口との対向位置を避けて配置されたものを含む。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2の、請求項2?4に係る訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項3の、請求項5に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項4の、請求項8に係る訂正は、引用関係の整合及び特許請求の範囲の減縮を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項5の、明細書に係る訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とし、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正前の請求項1?8は、請求項2?8が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって、訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(3)小括
したがって、上記訂正請求による訂正事項1ないし5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1、3、4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。また、訂正後の請求項6、7は請求項1を直接または間接的に引用するものであって、それ自体の内容は訂正されていない。
したがって、訂正後の請求項〔1-8〕、及び訂正後の明細書について訂正を認める。


3.当審の判断
(1)平成28年10月25日付け取消理由通知に記載した取消理由1(特許法第36条第6項第2号)について
上記取消理由1の概要は以下のとおりである。

「1)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。」
「a.圧力導入口及び大気導入口に関し、請求項1に「前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており」、請求項2に「前記圧力導入口及び前記大気導入口は、・・・第2の主面に配設された」、請求項3に「前記大気導入口は、・・・その開口位置が前記実装基板から前記第2の主面よりも離間した」、請求項6に「前記大気導入口は、・・・前記大気圧導入部の長手方向に沿った側面で露出する」と記載されており、圧力導入口及び大気導入口が設けられている部位が、ケース(第2の主面)上であるのか、もしくは「導入部」の先端や側面といったケース(第2の主面)から離間した領域であるのかが不明確である。

b.請求項2の「前記ケースは、第1の主面に、実装基板上に面実装するための端子を具備し、」なる記載は不明確である。その理由は特許異議申立書第17ページ第2行から第24行までに記載のとおりである。

c.請求項5の「当接面」なる記載は不明確である。その理由は特許異議申立書第18ページ第2行から第10行までに記載のとおりである。

よって、請求項1-3,5,6及びこれらを引用する請求項4,7,8の記載は不明確であり、請求項1ないし8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」

本件の特許請求の範囲は、上記「2.訂正の適否」「(1)訂正の内容」において示したように訂正され、これにより上記取消理由1は解消された。

(2)平成28年10月25日付け取消理由通知に記載した取消理由2(特許法第29条第2項)について
ア 刊行物の記載
取消理由通知において引用した刊行物は、以下のとおりである。

甲第2号証:米国特許第4879903号明細書
甲第3号証:特開2000-241278号公報
甲第4号証:特開平9-43085号公報
甲第5号証:特開平9-178596号公報
甲第6号証:特開2000-28460号公報
甲第7号証:実願昭59-172688号(実開昭61-87338号)のマイクロフィルム
甲第11号証:特開2005-164270号公報
甲第12号証:特開2000-186969号公報
刊行物1:特開平11-14486号公報
刊行物2:実願昭63-27668号(実開平1-131136号)のマイクロフィルム

(ア)甲第2号証
甲第2号証には、次の事項(a)ないし(d)が図面とともに記載されている。(部分訳及び下線は当審による。以下同様。)

(a)「FIG. 1 is a perspective view of a pressure measurement apparatus 20 in accordance with the invention. The preferred embodiment includes a generally rectangular housing 22. Six pin terminals 24 extend through the housing as more fully described below. The housing 22 includes first and second external tubes 26 and 28, respectively, extending from an upper wall region 30 of the housing 22.」(第3欄第48行?第55行)
(図1は本発明に係る圧力測定装置20の斜視図である。・・・ハウジング22は、ハウジング22の上壁部30からそれぞれ延在している第1及び第2の外筒26,28を含んでいる。)

(b)「The first and second external tubes 26 and 28 are integrally formed with the upper wall region 30. The first external tube 26 includes an enlarged base region 38 adjacent to the upper wall region 30 and includes a barbed tip region 40 distal from the upper wall region 30. Similarly, the second external tube 28 includes an enlarged base region 42 adjacent to the upper wall region 30 and includes a barbed tip region 48(当審注:44の誤記) distal from the upper wall region 30.」(第4欄第23行?第31行)
(第1及び第2の外筒26,28は、上壁部30と共に一体的に形成されている。第1の外筒26は、・・・返し先端部40を含んでいる。同様に、第2の外筒28は、・・・返し先端部44を含んでいる。)

(c)「First and second vent ports 56 and 58 are formed in the upper wall region and communicate with the chamber 52. The first vent port 56 communicates with the external environment through a conduit defined by the first external tube 26. The second vent port 58 communicates with the external environment through a conduit defined by the second external tube 28 and an internal tube 60. The internal tube 60 is integrally formed with the upper wall region 30 and depends into the chamber 52. The internal tube 60 is coaxial with the second external tube 28.」(第4欄第60行?第5欄第2行)
(第1及び第2の通気口56,58は、上壁部に形成されており、空洞52に連通している。第1の通気口56は、第1の外筒26によって形成された導管を介して外部環境に連通している。第2の通気口58は、第2の外筒28と内筒60によって形成された導管を介して外部環境に連通している。・・・)

(d)「A semiconductor differential gage or absolute pressure transducer 62 is disposed within the chamber 52. The transducer 62 includes a diaphragm region 64 having oppositely facing first and second surfaces 66 and 68, respectively. The transducer 62 includes four piezoresistors coupled in a Wheatstone Bridge configuration (not shown). Deflections of the diaphragm region 64 resulting from the exposure of the respective first and second surfaces 66 and 68 to different pressures causes a measurable offset in the Bridge. The formation and operation of the piezoresistors in the Wheatstone Bridge are well known in the art and need not be described in detail herein.」(第5欄第12行?第24行)
(半導体差圧ゲージまたは絶対圧変換素子62は、空洞52内に配置されている。・・・)

上記(a)ないし(d)及び図面のFIG.1?6の記載より、甲第2号証には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ハウジング22と、返し先端部40と、返し先端部44と、半導体差圧ゲージまたは絶対圧変換素子62とを備え、
前記返し先端部40及び前記返し先端部44は、第1外筒26及び第2外筒28に含まれており、
前記第1外筒26は前記ハウジング22の上壁部30から延在し、
前記第2外筒28は前記ハウジング22の上壁部30から延在し、
第1及び第2の外筒26,28は、上壁部30と共に一体的に形成された圧力測定装置20。」

(イ)甲第3号証
甲第3号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0022】圧力センサ装置1は、圧力検出を行うセンサ部2と、センサ部2に燃料蒸気圧を導入するための筒状の圧力導入ポート(圧力導入管)3と、センサ部2に基準圧としての大気圧を導入するための筒状の大気圧導入ポート4と、これら部材2、3、4を車両に取り付けるための取付部5とを備えている。ここで、図2は圧力センサ装置1の断面構成図であり、上記各部材2、3、4の部分を表してある。また、図3は図2に示す圧力センサ装置1の分解断面図であり、(a)、(b)、(c)は各々後述の蓋20、素子部15、ケース6(各ポート3、4含む)を示す。」

(ウ)甲第4号証
甲第4号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0017】さて、ケース2(ケース主部3)の図で左端側部分には、前記基準圧室8とケース2の外部(大気)とを連通させるための大気圧導入穴19が設けられる。この場合、図2及び図3にも示すように、ケース主部3の左端部は、内面(上面)が前記リッド4に近接する位置まで突出する厚肉状に構成され、前記大気圧導入穴19は、その厚肉部分を上下方向に貫通するように形成されている。」

(エ)甲第5号証
甲第5号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0002】
【従来の技術】従来、この種の圧力センサとして、図5に示す構成のものが存在する。このものは、カバーAが覆設される樹脂製のボディBと、ボディの内部B1と外部とを連通し圧力測定対象である流体が流入する圧力導入管Cと、ボディBの内部B1で圧力導入管端面C1に密着固定されて圧力を電気信号に変換する圧力センサチップDと、ボディBに装着されて圧力センサチップDとワイヤボンディングでもって接続されるプリント基板Eと、プリント基板Eに接続されてボディBの外部に導出される端子Fと、外部開口端A1からボディBの内部B1に大気を導入する大気導入孔A2と、を備えている。」

(オ)甲第6号証
甲第6号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0002】
【従来の技術】この種の圧力センサとしては、腐食性流体(例えば、ガソリン等の腐食性のオイルやガス)の圧力を検出するために用いられるものがあり、図3(a)(b)に示す構造を有するものが提案されている。この圧力センサは、流体の圧力を検出するセンサエレメント10と、センサエレメント10およびセンサエレメント10の出力を増幅する増幅回路や増幅回路の出力を調整するためのトリミング用の厚膜抵抗が設けられた回路基板32を収納する収納室21が一面に形成された樹脂成形品からなるボディ20とを備えている。ボディ20の収納室21が形成された面と対向する面の一側には筒体22が突設され、他側には略L字状の突起23が突設されている。筒体22には流体の圧力が導入される圧力導入孔24が同心円状に2段に形成されており、圧力導入孔24は、圧力導入孔24と同心で圧力導入孔24よりも孔径の小さい連通孔25を介して収納室21と連通する。また、突起23には収納室21と連通する大気導入孔26が形成されている。」

(カ)甲7第号証
甲第7号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「第1図に於いて、21は中央に開口部22を有するステムであり、この開口部22には下側に向けて圧力導入管23が取付けられている。大気開放口24は圧力導入管23から外れた位置のステム21に設けられている。ダイヤフラム部25を有するシリコンチップ26はこの大気開放口24上に搭載されている。」(第4ページ第16行?第5ページ第2行)

(キ)甲第11号証
甲第11号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0040】
そして、本実施形態では、独自の構成として、圧力ポート30の先端部は、閉塞部材31によって閉塞されており、圧力ポート30の側面には、圧力ポート30の内径Dよりも穴径の小さい貫通穴32が設けられており、この貫通穴32から被測定体K1内を流れる流体の圧力すなわち測定圧力が導入されるようになっている。
【0041】
ここで、閉塞部材31は、樹脂や金属等からなるものであり、センサケース12の作製時に同時に一体成形したり、センサケース12を作製した後に、接着等により圧力ポート30の先端部の開口部に固定して、当該開口部を密閉することにより、形成することができる。」

(ク)甲第12号証
甲第12号証には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0018】また、空気室7の底面つまりカバー3の上面には、凸部3cの周囲から凸部3cに向かって低くなるようにテーパ3eが形成されており、空気室7の容積を小さくし結露水の量を少なくし、結露水が凸部3cの外周部分にたまりやすくするようになっている。また、図1及び図2に示す様に、空気室7底面の開口穴7aの位置と素子部2の凹部2aの位置は、オフセットしてあり、測定圧力(空気)がチップ5の接続線5aに直接加わらないようにして、接続線(ワイヤボンド)5aが測定圧力の変化により傾かないようにしている。」

(ケ)刊行物1
刊行物1には、次の事項が図面とともに記載されている。
「【0003】半導体センサチップ1などが実装されたセラミック基板10は、一面が開口した例えば樹脂製のボディ20に収納される。図7(a)?(c)に示すように、ボディ20の上面には、ボディ20の内外を連通する圧力導入孔24が穿孔された圧力導入用パイプ21が、ボディ20の上面と略直交する方向に突設されており、また、ガラス台座5及びセラミック基板10にも、圧力導入孔24と連通する孔6,11がそれぞれ穿設され、半導体センサチップ1の受圧ダイアフラムには、圧力導入用パイプ21の圧力導入孔24からの圧力が伝わるようになっている。ここに、ボディ20とボディ20に接着固定され半導体センサチップ1やセラミック基板10などを覆うカバー40とでケース2が構成され、圧力導入用パイプ21が突設されたボディ20の上面には、半導体センサチップ1とカバー40との間の空間と、ケース2の外部とを連通する大気導入孔26が穿設された大気導入用パイプ27が、ボディ20の上面と略直交する方向に突設されている。」

「【0015】ところで、図1(a)及び図4に示すように、圧力導入孔24の一部には第1の屈曲部24cが形成されており、ボディ20の上面と略平行な方向に伸びる孔24aと、ボディ20の上面と略直交する方向に伸びる孔24bとが第1の屈曲部24cで略直交している。ここで、第1の屈曲部24cの断面形状は略D字状に形成されており、ボディ20を樹脂成形する際に、第1の屈曲部24cの平面部が、孔24aを成形する金型と、孔24cを成形する金型との合わせ面となるので、両金型を容易に合わせることができる。また、両金型は平面部で当接するので、両金型の当接面でバリなどが発生しにくくなる。また、第1の屈曲部24cの断面積が孔24a,24bの断面積に比べて小さいので、第1の屈曲部24cが絞りの役割を果たし、圧力導入孔24を通ってケース2内に異物が浸入するのを防止している。
【0016】ここに、ボディ20とボディ20に接着固定され半導体センサチップ1やセラミック基板10などを覆うカバー40とでケース2が構成され、ボディ20の側面には、半導体センサチップ1とカバー40との間の空間と、ケース2の外部とを連通する大気導入孔26が穿設されている。したがって、大気導入孔26をボディ20の側面に設けているので、大気導入孔26をボディ20の上面に設けた場合に比べて、大気導入孔26内に水が入り込みにくくなる。さらに、大気導入孔26の一部には略垂直に屈曲する第2の屈曲部26aが設けられており、大気導入孔26のボディ20の側面側の開口端には絞り部26bが設けられているので、大気導入孔26の開口端から内部に入るにつれて、大気導入孔26の断面積が除々に小さくなるため、大気導入孔26の開口端に水滴が付着しても、水の表面張力によって、水滴が大気導入孔26内に入り込むことがなく、大気導入孔26内に水が浸入するのを防止することができる。」

(コ)刊行物2
刊行物2には、次の事項が図面とともに記載されている。
「また、・・・開口部から離れた位置に大気開放口を設け、中央部に圧力導入管内の圧力と大気圧との差圧検出用のダイヤフラムを設け・・・」(第2ページ第17行?第3ページ第2行)

イ 訂正後の請求項1に係る発明
平成29年5月26日付け訂正請求により訂正された訂正後の請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)は、上記「2.訂正の適否」「(1)訂正の内容」において示した以下のとおりのものである。

「ケースと、前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口と、大気を導入する大気導入口と、大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップとを備え、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、
前記圧力導入口は前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、
前記大気導入口は前記圧力導入部に並置された大気圧導入部に連通し、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され、
前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型された半導体圧力センサ。」

ウ 対比・判断
本件発明1と引用発明とを対比する。
まず、引用発明における「ハウジング22」、「返し先端部40」及び「圧力測定装置20」は、それぞれ本件発明1における「ケース」、「前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口」及び「半導体圧力センサ」に相当する。また引用発明における「返し先端部44」及び「半導体差圧ゲージまたは絶対圧変換素子62」は、それぞれ本件発明1の「大気を導入する大気導入口」及び「大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップ」に対し、「流体を導入する流体導入口」及び「前記流体の圧力を測定するセンサチップ」である点で共通する。
次に、引用発明は「前記返し先端部40及び前記返し先端部44は、第1外筒26及び第2外筒28に含まれており、前記第1外筒26は前記ハウジング22の上壁部30から延在し、前記第2外筒28は前記ハウジング22の上壁部30から延在し」ているものであるから、「前記返し先端部40及び前記返し先端部44」が「前記ハウジング22の上壁部30」側に配設されていること、「前記返し先端部40及び前記返し先端部44」が「第1外筒26及び第2外筒28」に連通して頂部に配設されていること、「第1外筒26」及び「第2外筒28」が互いに立設並置されていること、は明らかであって、これらは本件発明1において「前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、前記圧力導入口は前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、前記大気導入口は前記圧力導入部に並置された大気圧導入部に連通し、前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され」ていることに対し、「前記圧力導入口及び前記流体導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、前記圧力導入口は前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、前記流体導入口は前記圧力導入部に並置された流体導入部に連通し、前記圧力導入口及び前記流体導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記流体導入部の頂部に配設され」ている点で共通する。
さらに、引用発明において「第1及び第2の外筒26,28は、上壁部30と共に一体的に形成された」ものであることは、本件発明1において「前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型され」ていることに対し、「前記圧力導入部と前記流体導入部は少なくとも一部で一体成型され」ている点で共通する。

してみると、両者の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

(一致点)
「ケースと、前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口と、流体を導入する流体導入口と、前記流体の圧力を測定するセンサチップとを備え、
前記圧力導入口及び前記流体導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、
前記圧力導入口は前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、
前記流体導入口は前記流体導入部に並置された流体導入部に連通し、
前記圧力導入口及び前記流体導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記流体導入部の頂部に配設され、
前記圧力導入部と前記流体導入部は少なくとも一部で一体成型された、
半導体圧力センサ。」

(相違点)
相違点1:
本件発明1においては、導入される被測定対象以外の流体が大気であって、「大気を導入する大気導入口」、「大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップ」、「大気圧導入部」を備えているのに対し、引用発明においては導入される被測定対象以外の流体が限定されていない点。

相違点2:
本件発明1においては、「前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して」いるのに対し、引用発明がそのような構成を有していない点。

本件発明1の内容に鑑み、上記相違点2について検討する。
相違点2に係る本件発明1の構成は、上記「ア 刊行物の記載」において挙げた刊行物のいずれにも記載も示唆もされておらず、また周知でもない。
したがって、本件発明1は、甲第2号証に記載された引用発明、及び上記「ア 刊行物の記載」において挙げたその他の刊行物に記載の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件の特許異議申立人は、特許異議申立書において、
「・・・甲第6号証には、圧力導入孔24が形成された筒体22と、大気導入孔26が形成された突起23とが、それら根元部分で合体することでそれらの伸長方向に沿って当接面を有しており、・・・」(第31ページ第10行?第12行)
と主張しているが、上記主張において「当接面」であるとされた箇所は、筒体22と突起23とが突設されるボディ20に含まれる部位であって、本件発明1の「ケース」に相当するものである。本件発明1の「当接面」は、「ケースの表面に立設された圧力導入部」と「大気圧導入部」とが共有する、「それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する」構成を有するものであるから、上記「ボディ20」のような構成を含むものとはいえない。
なお、本件の特許異議申立人は、平成29年2月22日付けの意見書において、本件発明1に関する進歩性違反についての主張を行っているが、該主張は参考資料1ないし3を追加引用して、実質的に新たな理由を追加するものであるから、これを採用することはできない。
また、本件の請求項5-8は請求項1を直接または間接的に引用するものであるから、本件発明5-8も相違点2で引用発明と相違するものである。
よって、本件発明5-8も、甲第2号証に記載された引用発明、及び上記「ア 刊行物の記載」において挙げたその他の刊行物に記載の技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび
以上のとおり、本件発明1,5?8に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項1,5?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2?4に係る特許は、訂正により、削除されたため、本件特許の請求項2?4に対して、特許異議申立人西村隼也がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体圧力センサおよびその製造方法
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体圧力センサおよびその製造方法に係り、特に、その実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンの弾性体としての性質を利用し、マイクロマシニング技術によりダイヤフラム部と呼ばれる薄膜部をシリコン基板に形成して圧力変化を電気信号に変換するようにした半導体圧力センサが提供されている。なかでも、シリコンのピエゾ抵抗効果を利用してダイヤフラム部の歪みを拡散抵抗の抵抗値変化として検出するピエゾ抵抗型の半導体圧力センサは、シリコンの化学的安定性から、特に腐食性を有する気体や導電性を有す液体などを被圧力検出流体とする用途に広く用いられている。このような従来の半導体圧力センサの一例を図16に示す(たとえば特許文献1)。この半導体圧力センサでは、半導体基板を加工して薄膜のダイヤフラム部101a及びダイヤフラム部101aの圧力による歪みを検出するピエゾ抵抗111が形成されるとともにガラス台座102に固着されたセンサチップ101を用いている。そして、略函形に形成されて内部にセンサチップ101が納装される本体112の開口部をステンレスダイヤフラム113で閉塞する。そして、本体112の内部にシリコンオイル114を封入する。そして、ハーメチックシール115によって本体112に端子116を封止している。また、この端子116をボンディング用のワイヤ117によってセンサチップ101のピエゾ抵抗111と接続している。すなわち、被圧力検出流体Pはステンレスダイヤフラム113の外側に接触しており、ステンレスダイヤフラム113が被圧力検出流体から受けた圧力が本体112内部のシリコンオイル114を介してセンサチップ101のダイヤフラム部101aに伝達され、被圧力検出流体の圧力を検出することができる。
しかしながら、上記構成では、導圧媒体であるシリコンオイル114を本体112内に封止し且つ圧力をシリコンオイル114に伝達するためにステンレスダイヤフラム113を用いており、構造が複雑になり、コストが高くなるという欠点がある。また、大きさも嵩高くなり、小型化が困難である。さらに、ステンレスダイヤフラム113の反力の影響を受け、センサチップ101の検出精度が悪くなるという問題もあった。
そこで、図17に示すように、薄膜のダイヤフラム部を用いたセンサチップ220に対し大気導入口212を圧力導入口211と対向して設けた実装構造を持つ圧力センサが提案されている(特許文献2)。210が本体、231がリードフレームである。図17(a)はこの圧力センサの上面図、図17(b)および(c)は圧力センサの側面図および正面図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09-250964号公報
【特許文献2】特開2009-52988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の圧力センサの構造では、図17に示したように、小型化および軽量化が可能であるが、大気導入口が圧力導入口と反対方向にあるため、ユーザ側で基板への実装後に基板をポッティング剤で埋めると、大気導入口も埋まってしまい、正確な圧力測定ができないという問題があった。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、実装が容易で、正確な圧力測定が可能な半導体圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明の半導体圧力センサは、ケースと、前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口と、大気を導入する大気導入口と、大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップとを備え、前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、前記圧力導入口は、前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、前記大気導入口は、前記圧力導入部に並置された大気圧導入部に連通し、前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され、前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型されたことを特徴とする。
【0006】(削除)
【0007】(削除)
【0010】(削除)
【0011】
また、上記半導体圧力センサであって、前記大気圧導入部は、前記圧力導入部との前記当接面に対向する側に切り欠きを有するものを含む。
【0012】
また、上記半導体圧力センサであって、前記大気導入口は、前記大気圧導入部の長手方向に沿った最先端部で露出せず、前記大気圧導入部の長手方向に沿った側面で露出するものを含む。
【0013】
また、上記半導体圧力センサであって、前記大気圧導入部の前記最先端部は、前記大気圧導入部とは別部材で形成されているものを含む。
【0014】
また、上記半導体圧力センサであって、前記圧力導入部が前記大気圧導入部より高い位置まで伸張し、前記センサチップは、前記ケース内に、前記圧力導入口との対向位置を避けて配置されたものを含む。
【発明の効果】
【0015】
この構成によれば、圧力導入口及び大気導入口は、ケースの同一面側に配設されており、圧力導入口はケース内に連通するようにしている。従って、大気導入口が圧力導入口と同一側にあるため、実装面側には大気導入口が来ないように実装することができ、ユーザ側で基板への実装後に基板をポッティング剤で埋める際、大気導入口が埋まったりすることもなく、正確な圧力測定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1の半導体圧力センサを示す上面図
【図2】図1のA1-A2断面を示す図
【図3】図1のB1-B2断面を示す図
【図4】図1のC1-C2断面を示す図
【図5】本発明の実施の形態1のセンサチップを示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図
【図6】(a)乃至(c)は本発明の実施の形態1の半導体圧力センサの製造工程を示す図
【図7】本発明の実施の形態1の半導体圧力センサを示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は下面図
【図8】本発明の実施の形態1の半導体圧力センサを実装基板に載置した状態を示す説明図
【図9】本発明の実施の形態2の半導体圧力センサを示す図
【図10】本発明の実施の形態3の半導体圧力センサを示す図
【図11】本発明の実施の形態4の半導体圧力センサを示す図
【図12】本発明の実施の形態4の半導体圧力センサを示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は下面図
【図13】本発明の実施の形態4の半導体圧力センサの要部拡大断面図
【図14】本発明の実施の形態4の半導体圧力センサの要部拡大断面図
【図15】本発明の実施の形態5の半導体圧力センサを説明する図であり、(a)は実施の形態4と同等の半導体圧力センサの正面図、(b)は実施の形態4と同等の半導体圧力センサの上面図、(c)は実施の形態5の半導体圧力センサの正面図、(d)は実施の形態5の半導体圧力センサの上面図、(e)は、(d)の矢印E方向から見たときの大気圧導入部の頂部の拡大図、(f)は、変形例を示す図
【図16】従来例の半導体圧力センサの断面図
【図17】従来例の半導体圧力センサを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る半導体圧力センサについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の半導体圧力センサの上面図、図2は図1のA1-A2断面を示す図、図3は図1のB1-B2断面を示す図、図4は図1のC1-C2断面を示す図である。図5はこの半導体圧力センサで用いられる圧力センサチップを示す図であり、(a)は上面図、(b)は断面図である。
本発明の実施の形態1の半導体圧力センサは、圧力導入口11及び大気導入口12が、ケース10の同一面側に配設されており、圧力導入口11はケース10内に連通するとともに、センサチップ20は、ケース10内に、圧力導入口11との対向位置を避けて配置されたことを特徴とする。なお、このケース10はプラスチック樹脂によって形成されており、このケース10内に被測定対象の外部流体を導入する圧力導入口11と、大気を導入する大気導入口12と、大気圧に対する流体の圧力を測定するセンサチップ20とを具備している。
【0019】
ケース10は、筒状のケース本体10aと、ケース本体10aに連通するようにケース本体の第2の主面10Bから導出された管状の圧力導入部10bと、同様にケース本体の第2の主面10Bから導出された管状の大気圧導入部10cと、を具備している。そして底面には基板13がシール材14で密着封止されている。
センサチップ20は、シリコン単結晶基板21をエッチングなどにより薄肉化して形成したダイヤフラム22上に拡散やイオン打ち込みで形成したゲージ抵抗23のピエゾ抵抗効果を、電極24を介して取り出し、圧力を検出するものである。
ピエゾ抵抗効果は、応力によって起こる分極現象であるピエゾ効果とは異なり抵抗に加わった応力によって抵抗率が変化する現象である。この現象は印加された応力により結晶格子に歪が生じ、半導体中のキャリアの数や移動度が変化するために起こるものである。
【0020】
このセンサチップ20は、ダイヤフラムの第1の面20A側の圧力と第2の面20B側の圧力との圧力差により変位する。従って、第1の面20A側が測定対象としての流体圧を受けるようにし、第2の面20B側が大気圧を受けるようにすることで、大気圧に対する流体圧を検出することができる。
【0021】
従ってこの半導体圧力センサでは、図2および3に示すようにケース10内空間に圧力導入口11を介してケース内部に供給される流体の圧力が、センサチップ20のダイヤフラムの第1の面20Aにかかる。一方、大気導入口12を介して大気圧がセンサチップ20のダイヤフラムの第2の面20Bにかかる。
【0022】
ここでセンサチップの電極24は、バンプを介していわゆるフリップフロップ法により、リードフレーム31に接続され、このリードフレーム31のアウターリードはケース10から導出されている。
【0023】
また、もう1枚の信号処理回路を搭載した処理回路チップ28も同様にリードフレーム31に接続されている。
【0024】
次に、この半導体圧力センサの組み立て方法について説明する。
図6(a)に示すように、まず、センサチップ20を通常の半導体プロセスにより形成する。
次いで図6(b)に示すように、このセンサチップ20および処理回路チップ28を、リードフレーム31に搭載する。
そして金型内にこのセンサチップ20および処理回路チップ28を搭載したリードフレーム31を設置し、射出成型により、図6(c)に示すように、ケース10を形成する。
【0025】
次にこのケース10の開口部に基板13を設置し、シール材14で機密封止する。 このようにして図7(a)乃至(d)に示すように、半導体圧力センサが完成する。
図中(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は下面図である。
【0026】
このようにして形成された半導体圧力センサを、図8に示すようにプリント基板40上の配線パターン41上に載置し、電気的接合を行った後ポッティングにより樹脂42を供給することで固着される。
【0027】
この構成によれば、圧力導入口11及び大気導入口12は、ケース10の同一面側に配設されており、圧力導入口11はケース10内に連通するようにしている。従って、大気導入口12が圧力導入口11と同一側にあるため、ユーザ側でプリント基板40への実装後にケース10とプリント基板40との間をポッティング剤(樹脂42)で埋める際、大気導入口12が埋まったりすることもなく、正確な圧力測定を行うことが可能となる。
また、センサチップ20は、ケース10内に、圧力導入口11との対向位置を避けて配置されているため、圧力導入口11を経て汚染物が導入されるのを防ぎ、信頼性の向上を図ることができる。
このケース10は、第1の主面10Aに、実装基板としてのプリント基板40上に面実装するための端子を具備し、圧力導入口11及び大気導入口12は、第1の主面10Aに対向する第2の主面10Bに配設されているため、ケース10の裏面から大気導入口12までの距離を大きくすることができ、プリント基板40などの実装基板上に実装する際、圧力導入口11や大気導入口12にポッティング樹脂などが入り込むのを防ぐことができる。
【0028】
また、圧力導入口11はケース10の表面に立設された圧力導入部10bに連通しており、大気導入口12はこの圧力導入部10bに並置された大気圧導入部10cに連通されている。圧力導入口11と大気導入口12とが並置されているため、実装時にポッティングによる樹脂の流れ込みを容易に抑制することができる。
【0029】
また、大気導入口12は、ケース10の第2の主面10Bに形成された延長部としての、管状の大気圧導入部10cを介して配設され、その開口位置がプリント基板40から第2の主面10Bよりも離間している。このため、より確実に、実装時のポッティングによる樹脂42の流れ込みを容易に抑制することができる。
【0030】
(実施の形態2)
次に本発明の実施の形態2の半導体圧力センサについて説明する。
図9は、本発明の実施の形態2の半導体圧力センサを示す図である。前記実施の形態1では大気導入口12は延長部として管状の大気圧導入部10cに取り付けられているが、変形例として示すように、図9に示すようにケース本体10aに直接大気導入口12が形成されるようにしてもよい。なお、図9は要部のみを示すが、延長部としての大気圧導入部10c以外は前記実施の形態1と同様に形成されている。20は半導体圧力センサのセンサチップである。
この構成によれば、より構造が簡単で、小型化を図ることが可能となる。
【0031】
(実施の形態3)
次に本発明の実施の形態3の半導体圧力センサについて説明する。
なお、前記実施の形態1では大気導入口12はケース本体10aに延長部として別途形成された大気圧導入部10cに取り付けられるとともに、圧力導入口11はケース本体10aに延長部として別途形成された圧力導入部10bに取り付けられている。これに対し、本実施の形態では、変形例として、1つの導入部に直接大気導入口12と圧力導入口11が形成される。
図10は、本発明の実施の形態3の半導体圧力センサを示す斜視図である。
圧力導入部10bと大気圧導入部10cは一体成型されており、大気圧導入部10cの管璧に大気導入口12が搾設されたことを特徴とする。10aはケース本体であり、ここにMEMSチップなどが収納されている。
この構成によれば、大気圧導入部および圧力導入部が肉薄となり、材料厚を小さくすることができることから、熱容量を小さくすることができ、実装時にリフローを行う際、熱効率を高めることができる。
【0032】
(実施の形態4)
次に本発明の実施の形態4の半導体圧力センサについて説明する。
図11は本発明の実施の形態4の半導体圧力センサの斜視図、図12(a)乃至(d)はこの半導体圧力センサの実装状態を示す図であり、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は下面図である。また図13および図14は、この圧力導入口11および大気導入口12付近を示す部分拡大断面図である。図14は圧力導入口に測定対象の管に接続するためのチューブ50を装着した状態を示す図である。
【0033】
前記実施の形態1では大気導入口12はケース本体10aに延長部として別途形成された大気圧導入部10cに取り付けられるとともに、圧力導入口11はケース本体10aに延長部として別途形成された圧力導入部10bに取り付けられている。これに対し、本実施の形態では、変形例として、大気導入口12を備えた大気圧導入部10cを構成する管状部と、圧力導入口11が形成された圧力導入部10bを構成する管状部とが一部で一体化されたものである。つまり圧力導入部10b及び大気圧導入部10cは、ともにケース本体10aの第2の主面10Bから伸張方向Dに沿って当接面Sを有し、圧力導入部10bが大気圧導入部10cより高い位置まで伸張している。そしてこの大気導入口12の近傍に切り欠き部15が形成され、大気の導入を確保するようにした構成である。14は基板の底面を密着封止するためのシール材である。
【0034】
本実施の形態においても、圧力導入部10bと大気圧導入部10cは一体成型されているが、圧力導入口11および大気導入口12が所望の高さに設けられ、一部で一体化されている。本実施の形態では、圧力導入口11が、大気導入口12よりも所望の高さだけ高い位置に設けられており、大気圧導入部10cの頂部に大気導入口12が配設され、圧力導入部10bの頂部に圧力導入口11が配設されている。10aはケース本体であり、ここにMEMSチップなどが収納されている。
この構成によれば、圧力導入部10bが大気圧導入部10cにつながって立設されているため、圧力導入口の物理的強度を高くすることができる。
【0035】
また、図13に要部拡大断面図を示すように、大気導入口12先端に切り欠き部15を設けている。このため、圧力を測定するための管をチューブ50で接続した場合にも、図14に示すように、大気導入口12が塞がれないように維持される。
また、本実施の形態においても、実施の形態1の場合に比べて材料厚を小さくすることができることから、熱容量を小さくすることができ、実装時にリフローを行う際、熱効率を高めることができる。
【0036】
(実施の形態5)
次に本発明の実施の形態5の半導体圧力センサについて説明する。
図15は本発明の実施の形態5の半導体圧力センサを説明する図である。(a)は実施の形態4と同等の半導体圧力センサの正面図、(b)は実施の形態4と同等の半導体圧力センサの上面図、(c)は実施の形態5の半導体圧力センサの正面図、(d)は実施の形態5の半導体圧力センサの上面図である。また、(e)は、(d)の矢印E方向から見たときの大気圧導入部10cの頂部の拡大図、(f)は、変形例を示す図である。
【0037】
図15(a)、(b)に示すように、チューブ(ホース)50が圧力導入部10bに接続されると、大気圧導入部10cの大気導入口12にも隣接することになる。このとき、チューブ50を圧力導入部10bに固定するための接着剤等が大気導入口に侵入したり、チューブ50にて結露した水滴が、大気導入口へ侵入したりするおそれがある。
【0038】
実施の形態5の半導体圧力センサにおいては、図15(c)-(e)に示すように、大気導入口12は、大気圧導入部10cの長手方向に沿った最先端部(頂部の更に先端)で露出せず、大気圧導入部10cの長手方向に沿った側面で露出している。すなわち、大気圧導入部10cの長手方向に沿った最先端部は、最先端平面部60として形成され、大気導入口12は最先端壁部61で覆われている。そして、大気導入口12は、大気圧導入部10cの長手方向に沿った側面で露出しているが、特に本実施の形態では、大気圧導入部10cの半径方向の中心方向寄りの部分で露出している。
【0039】
このような構成により、チューブ50を圧力導入部10bに固定するための接着剤等が大気導入口に侵入したり、チューブ50にて結露した水滴が、大気導入口へ侵入したりすることを効果的に防止することができる。
【0040】
上記実施形態では、最先端平面部60、最先端壁部61は、大気圧導入部10cと一体的に同じ材料で形成されている。一方、図15(f)は本実施形態の変形例を示し、最先端平面部60、最先端壁部61を含む大気圧導入部10cの最先端部が、大気圧導入部10cとは別部材で形成されている。すなわち、図15(f)の斜線部で示された部分が、大気圧導入部10cとは別体のカバー62で形成されている。カバー62は、樹脂やシール材等で成形することができる。すなわち、大気圧導入部10cの最先端部には、大気圧導入部10cとは別体のカバーが取り付けられており、図15(f)の最先端平面部60、最先端壁部61はカバー62で形成される。本例によれば、簡単に図15(e)と同様な構成が実現される。
【0041】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0042】
10 ケース
10a ケース本体
10b 圧力導入部
10c 大気圧導入部
10A 第1の主面
10B 第2の主面
S 当接面
D 伸張方向
11 圧力導入口
12 大気導入口
13 基板
14 シール材
15 切り欠き部
16 凹部
17 突起
18 先端面
20 センサチップ
20A 第1の面
20B 第2の面
21 シリコン単結晶基板
22 ダイヤフラム
23 ゲージ抵抗
24 電極
28 処理回路チップ
31 リードフレーム
40 プリント基板
41 配線パターン
42 樹脂(ポッティング剤)
50 チューブ
60 最先端平面部
61 最先端壁部
62 カバー
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、前記ケース内に被測定対象の流体を導入する圧力導入口と、大気を導入する大気導入口と、大気圧に対する前記流体の圧力を測定するセンサチップとを備え、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、前記ケースの同一面側に配設されており、
前記圧力導入口は、前記ケースの表面に立設された圧力導入部に連通し、
前記大気導入口は、前記圧力導入部に並置された大気圧導入部に連通し、
前記圧力導入口及び前記大気導入口は、それぞれ前記圧力導入部及び前記大気圧導入部の頂部に配設され、
前記圧力導入部と前記大気圧導入部は、それぞれの伸張方向に沿って互いに当接する当接面を共有して少なくとも一部で一体成型された半導体圧力センサ。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】
請求項1に記載の半導体圧力センサであって、
前記大気圧導入部は、前記圧力導入部との前記当接面に対向する側に切り欠きを有する半導体圧力センサ。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体圧力センサであって、
前記大気導入口は、前記大気圧導入部の長手方向に沿った最先端部で露出せず、前記大気圧導入部の長手方向に沿った側面で露出する半導体圧力センサ。
【請求項7】
請求項6に記載の半導体圧力センサであって、
前記大気圧導入部の前記最先端部は、前記大気圧導入部とは別部材で形成されている半導体圧力センサ。
【請求項8】
請求項1、5乃至7のいずれか一項に記載の半導体圧力センサであって、
前記圧力導入部が前記大気圧導入部より高い位置まで伸張し、
前記センサチップは、前記ケース内に、前記圧力導入口との対向位置を避けて配置された半導体圧力センサ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-16 
出願番号 特願2011-254888(P2011-254888)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (G01L)
P 1 651・ 121- YAA (G01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 森 雅之  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 関根 洋之
中塚 直樹
登録日 2015-12-18 
登録番号 特許第5853171号(P5853171)
権利者 パナソニックIPマネジメント株式会社
発明の名称 半導体圧力センサおよびその製造方法  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  
代理人 特許業務法人栄光特許事務所  

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