現在、審決メルマガは配信を一時停止させていただいております。再開まで今暫くお待ち下さい。

  • ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65H
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65H
審判 全部申し立て 2項進歩性  B65H
管理番号 1333205
異議申立番号 異議2016-700422  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-13 
確定日 2017-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5814165号発明「原稿供給装置及び画像読取装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5814165号の明細書、及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、4-7〕について訂正することを認める。 特許第5814165号の請求項1、4ないし7に係る特許を維持する。 特許第5814165号の請求項2、3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5814165号の請求項1?7に係る特許についての出願は、平成27年10月2日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社より請求項1?7に対して特許異議の申立てがされ、平成28年7月6日付けで取消理由が通知され、同年9月6日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年10月25日に特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社から意見書が提出され、同年11月8日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年12月9日に意見書の提出がされ、平成29年1月23日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年3月16日に特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社から上申書が提出され、同年3月24日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年4月25日付けで取消理由通知(決定の予告)が通知され、同年6月22日に意見書の提出及び訂正請求がされ、同年7月18日に特許異議申立人東京総合コンサルティング株式会社から意見書が提出されたものである。


2.訂正の適否
(1)平成29年6月22日付けの訂正の内容
本件訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)は、の内容は以下のア乃至ツのとおりである。(下線は当審で付した。以下同様。)
ア 訂正事項1(請求項1に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項1の記載を「1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する複数のローラを有する給送ローラと、
前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段と、
前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、
を備える原稿供給装置において、
前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、
前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送することを特徴とする原稿供給装置。」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する)。
訂正事項1における各訂正の内容をそれぞれ、以下の(ア)訂正事項1-1及び(イ)訂正事項1-2とする。
(ア)訂正事項1-1
特許請求の範囲の請求項1の「媒体」を「原稿」と訂正する。
(イ)訂正事項1-2
特許請求の範囲の請求項1の「前記給送ローラに接圧して、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記媒体に作用させるブレーキ手段」を「前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段」と訂正する。

イ 訂正事項2(請求項2に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項2の記載を削除する。(請求項2の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項3(請求項3に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項3の記載を削除する。(請求項3の記載を引用する請求項4?7も同様に訂正する。)

エ 訂正事項4(請求項4に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項4の記載を「前記給送ローラの搬送方向の上流側に配置された、1つの回転軸まわりに回転可能な少なくとも2つのローラを有するピックアップローラを備え、
前記ピックアップローラが有するローラのそれぞれと前記回転軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の原稿供給装置。」に訂正する(請求項4の記載を引用する請求項5?7も同様に訂正する)。
訂正事項4における各訂正の内容をそれぞれ、以下の(ア)訂正事項4-1及び(イ)訂正事項4-2とする。
(ア)訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項4の「媒体」を「原稿」と訂正する。
(イ)訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4の「請求項1?3のいずれか1項に記載の」を「請求項1に記載の」と訂正する。

オ 訂正事項5(請求項5に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項5の記載を「前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅が、前記原稿の最小設定サイズの幅より小さいことを特徴とする、請求項1または4に記載の原稿供給装置。」に訂正する(請求項5の記載を引用する請求項6?7も同様に訂正する)。
訂正事項5における各訂正の内容をそれぞれ、以下の(ア)訂正事項5-1及び(イ)訂正事項5-2とする。
(ア)訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項5の「媒体」を「原稿」と訂正する。
(イ)訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5の「請求項1?4のいずれか1項に記載の」を「請求項1または4に記載の」と訂正する。

カ 訂正事項6(請求項6に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項6の記載を「前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅をL1、前記給送ローラの前記複数のローラのそれぞれの幅をL2、給送ローラの前記ローラの個数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たすことを特徴とする、請求項1、4?5のいずれか1項に記載の原稿供給装置。」に訂正する(請求項6の記載を引用する請求項7も同様に訂正する)。
訂正事項6における各訂正の内容をそれぞれ、以下の(ア)訂正事項6-1及び(イ)訂正事項6-2とする。
(ア)訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項6の「媒体」を「原稿」と訂正する。
(イ)訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項6の「請求項1?5のいずれか1項に記載の」を「請求項1、4?5に記載の」と訂正する。

キ 訂正事項7(請求項7に係る訂正)
特許請求の範囲の請求項7の記載を「請求項1、4?6のいずれか1項に記載の原稿供給装置と、
前記原稿供給装置の下流側に配置され、前記原稿の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた前記原稿の画像の傾斜を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。」に訂正する。
訂正事項7における各訂正の内容をそれぞれ、以下の(ア)訂正事項7-1及び(イ)訂正事項7-2とする。
(ア)訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項7の「媒体」を「原稿」と訂正する。
(イ)訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項7の「請求項1?6のいずれか1項に記載の」を「請求項1、4?6に記載の」と訂正する。

ク 訂正事項8
願書に添付した明細書の【発明の名称】の記載を、「原稿供給装置及び画像読取装置」に訂正する。

ケ 訂正事項9
願書に添付した明細書の段落【0001】の記載を、「本発明は、原稿供給装置及び画像読取装置に関する。」に訂正する。

コ 訂正事項10
願書に添付した明細書の段落【0007】の記載を、「本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で原稿のスキュー状態の連鎖を抑制できる原稿供給装置及び画像読取装置を提供することを目的とする。」に訂正する。

サ 訂正事項11
願書に添付した明細書の段落【0008】の記載を、「上記課題を解決するために、本発明に係る原稿供給装置は、1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する少なくとも2つのローラを有する給送ローラと、前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段と、前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、を備える原稿供給装置において、前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送することを特徴とする。」に訂正する。

シ 訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0009】の記載を削除する。

ス 訂正事項13
願書に添付した明細書の段落【0010】の記載を削除する。

セ 訂正事項14
願書に添付した明細書の段落【0011】の記載を、「また、上記の原稿供給装置は、前記給送ローラの搬送方向の上流側に配置された、1つの回転軸まわりに回転可能な少なくとも2つのローラを有するピックアップローラを備え、前記ピックアップローラが有するローラのそれぞれと前記回転軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置されることが好ましい。」に訂正する。

ソ 訂正事項15
願書に添付した明細書の段落【0012】の記載を、「また、上記の原稿供給装置では、前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅が、前記原稿の最小設定サイズの幅より小さいことが好ましい。」に訂正する。

タ 訂正事項16
願書に添付した明細書の段落【0013】の記載を、「また、上記の原稿供給装置では、前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅をL1、前記給送ローラの少なくとも2つのローラのそれぞれの幅をL2、給送ローラの前記ローラの個数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たすことが好ましい。」に訂正する。

チ 訂正事項17
願書に添付した明細書の段落【0014】の記載を、「また、上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置が、上記の原稿供給装置と、前記原稿供給装置の下流側に配置され、前記原稿の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた前記原稿の画像の傾斜を補正する補正手段と、を備えることが好ましい。」に訂正する。

ツ 訂正事項18
願書に添付した明細書の段落【0015】の記載を、「本発明に係る原稿供給装置は、給送ローラから搬送ローラに進入した原稿がスキュー状態である場合でも、給送ローラの各ローラに配置された回転規制手段により、ローラと原稿との接触状態に応じて、各ローラが異なる挙動をとることにより、次に給送する原稿にスキューが伝達されるのを抑制でき、この結果、簡易な構成で原稿のスキュー状態の連鎖を抑制できるという効果を奏する。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無、及び一群の請求項について
ア 訂正事項1(請求項1に係る訂正)について
(ア)訂正事項1-1について
訂正事項1-1は、「媒体」に関して、「原稿」へと、具体的に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、当初明細書の段落【0020】には、「シート状の媒体Sとは、例えば、原稿や名刺等のシート状の読み取り対象物や印刷用紙、枚葉紙等のシート状の被記録媒体を含む。」と記載されているから、訂正事項1-1は、願書に添付した特許請求の範囲(請求項1)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(イ)訂正事項1-2について
訂正事項1-2は、「前記給送ローラに接圧して、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記媒体に作用させるブレーキ手段」に関して、「前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう」と、その作用を具体的に特定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1-2について、当初明細書の段落【0032】には、「ブレーキローラ3のローラ32a,32bは、給送ローラ2のローラ22a,22bに接圧している。これにより、ブレーキローラ3のローラ32aと給送ローラ2のローラ22aとの間、また、ブレーキローラ3のローラ32bと給送ローラ2のローラ22bとの間には、両ローラの接触面であるニップが形成されている。」と記載され、ニップが形成されていることが示されており、また、段落【0034】には、「他の媒体も一緒に重送されニップに進入した場合には、…搬送対象の媒体S1のみをニップから送り出し、他の媒体はニップの中に保持する」と記載され、媒体がニップに保持されることが示されているから、訂正事項1-2は、願書に添付した特許請求の範囲(請求項1)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項2(請求項2に係る訂正)について
訂正事項2は、請求項2を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項3(請求項3に係る訂正)について
訂正事項3は、請求項3を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項4(請求項4に係る訂正)について
訂正事項4-1は、請求項4が請求項1を引用するものであって、訂正事項1-1と共通するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項4)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項4-2は、訂正前の請求項4が請求項1?3のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、削除された請求項2、及び3を引用しないものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項5(請求項5に係る訂正)について
訂正事項5-1は、訂正事項1-1と共通するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項5)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項5-2は、訂正前の請求項5が請求項1?4のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、削除された請求項2、及び3を引用しないものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項6(請求項6に係る訂正)について
訂正事項6-1は、訂正事項1-1と共通するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項6)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項6-2は、訂正前の請求項6が請求項1?5のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、削除された請求項2、及び3を引用しないものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項7(請求項7に係る訂正)について
訂正事項7-1は、訂正事項1-1と共通するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項7)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項7-2は、訂正前の請求項7が請求項1?6のいずれか1項の記載を引用する記載であるところ、削除された請求項2、及び3を引用しないものとしたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ク 訂正事項8について
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1-1と同じ内容の訂正を、発明の名称に対して行うものであるから、上記「ア (ア)訂正事項1-1について」より、訂正事項8は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項1)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ケ 訂正事項9について
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1-1と同じ内容の訂正を、発明の詳細な説明の段落【0001】に対して行うものであるから、上記「ア (ア)訂正事項1-1について」より、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項1)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

コ 訂正事項10について
訂正事項10は、特許請求の範囲の請求項1を訂正する訂正事項1-1と同じ内容の訂正を、発明の詳細な説明の段落【0007】に対して行うものであるから、上記「ア (ア)訂正事項1-1について」より、訂正事項10は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、願書に添付した特許請求の範囲(請求項1)又は図面に記載した事項の範囲において訂正をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

サ 訂正事項11について
訂正事項11は、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の段落【0008】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

シ 訂正事項12について
訂正事項12は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ス 訂正事項13について
訂正事項13は、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

セ 訂正事項14について
訂正事項14は、特許請求の範囲の請求項4の記載と発明の詳細な説明の段落【0011】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ソ 訂正事項15について
訂正事項15は、特許請求の範囲の請求項5の記載と発明の詳細な説明の段落【0012】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

タ 訂正事項16について
訂正事項16は、特許請求の範囲の請求項6の記載と発明の詳細な説明の段落【0013】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

チ 訂正事項17について
訂正事項17は、特許請求の範囲の請求項7の記載と発明の詳細な説明の段落【0014】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ツ 訂正事項18について
訂正事項18は、特許請求の範囲の請求項1の記載と発明の詳細な説明の段落【0015】の記載との整合をとるためのものであり、この訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

テ 一群の請求項についての適否
訂正事項1?7に係る訂正前の請求項1?7について、請求項2?7はすべて直接的又は間接的に「請求項1」を引用しているものであって、訂正事項2、及び3によって削除される請求項2,及び3に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1?7は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当するものである。
よって、訂正事項1?7による訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項ごとに」適法に請求されたものである。
また、訂正事項8乃至18は、願書に添付した明細書を訂正するものであり、該訂正事項8乃至18に係る訂正の請求は、当該明細書の訂正に係る、訂正前の請求項1?7の全てについて行われたものである。
よって、訂正事項8乃至18は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合する。
また、訂正後の請求項1?7は、一群の請求項である。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?7〕について訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて
(1)本件特許発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1乃至7に係る発明(以下「本件特許発明1」乃至「本件特許発明7」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する複数のローラを有する給送ローラと、
前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段と、
前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、
を備える原稿供給装置において、
前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、
前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送することを特徴とする原稿供給装置。

【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)

【請求項4】
前記給送ローラの搬送方向の上流側に配置された、1つの回転軸まわりに回転可能な少なくとも2つのローラを有するピックアップローラを備え、
前記ピックアップローラが有するローラのそれぞれと前記回転軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の原稿供給装置。

【請求項5】
前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅が、前記原稿の最小設定サイズの幅より小さいことを特徴とする、請求項1または4に記載の原稿供給装置。

【請求項6】
前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅をL1、前記給送ローラの前記複数のローラのそれぞれの幅をL2、給送ローラの前記ローラの個数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たすことを特徴とする、請求項1、4?5のいずれか1項に記載の原稿供給装置。

【請求項7】
請求項1、4?6のいずれか1項に記載の原稿供給装置と、
前記原稿供給装置の下流側に配置され、前記原稿の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた前記原稿の画像の傾斜を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。」

(2)平成29年4月25日付けの取消理由通知の概要
請求項1、4乃至7に係る発明は、甲第1号証及び周知の技術手段から当業者が容易に想到し得るものである。

(3) 各刊行物の記載
ア 刊行物1(甲第1号証)
取消理由通知において引用した刊行物1(特開平5-278895号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項3】 回転することで当接している紙幣を繰り出すピッカローラと、
集積した紙幣を前記ピッカローラ方向に押圧し、最先端の紙幣を該ピッカローラに当接させる押圧手段と、
ピッカローラにより繰り出された紙幣をさらに繰り出すフィードローラと、
このフィードローラと対向配置され、繰り出された紙幣の2枚送りを防止するためのリバースローラと、
前記ピッカローラとフィードローラを駆動する繰り出し駆動手段と、
繰り出し駆動手段からフィードローラへの駆動力伝達経路に介在するワンウエイクラッチと、
対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトと、これらを駆動する手段とより構成され、ピッカローラとフィードローラにより繰り出された紙幣を受けて搬送する搬送手段を具備し、搬送方向の長さの異なる複数種の紙幣を扱う紙幣自動支払装置において、
前記繰り出し駆動手段からピッカローラへの駆動力伝達経路に介在するワンウエイクラッチと、
繰り出された紙幣の先端を検出する検出手段と、
前記検出手段が紙幣の先端を検出すると繰り出し駆動手段の回転駆動を停止するとともに時間監視を行い、所定時間経過後繰り出し駆動手段の回転駆動を開始する制御手段を具備し、
前記検出手段は、最も搬送方向の長さの短い紙幣の先端がこの検出手段による検出位置に到達した時点で、この紙幣の後端がピッカローラとの接触から開放され、かつ、紙幣の先端側をローラ間あるいはベルト間に挟持することで搬送手段が確実にこの紙幣の搬送可能とした後に、紙幣の先端が検出手段による検出位置に到達する、搬送手段の入口側のローラ間あるいはベルト間での紙幣挟持位置から紙幣の搬送方向に所定量ずれた位置にくるように設けられたことを特徴とする紙幣自動支払装置。
【請求項4】 前記ピッカローラは、紙幣の繰り出し方向に対して同軸上に左右2個設けられ、それぞれのピッカローラが独立してワンウエイクラッチに支持されていることを特徴とする請求項2および請求項3記載の紙幣自動支払装置。」
(イ)「【0008】23はピッカローラで、外周が高摩擦部材により構成されている。このピッカローラ23はピッカローラシャフト24に所定の間隔をあけて2個取り付けられており、このピッカローラシャフト24はその両端にベアリング25a,25bを配してフレーム26a,26bに支持されて滑らかに回転するように構成されている。
【0009】27は立位状態で集積して金庫4内に収納されている支払用の紙幣、28は図示しないバネ等の力を受けて紙幣27をピッカローラ23方向へ押して、最先端の紙幣27aをピッカローラ23に当接させるステージである。29はフィードローラで、外周が高摩擦部材により構成されており、前記ピッカローラ23から見て紙幣27の搬送方向に位置して、このフィードローラ29によりピッカローラ23により繰り出された紙幣27をさらに上方に繰り出す。
【0010】このフィードローラ29は前記ピッカローラシャフト24と平行なフィードローラシャフト30に所定の間隔をあけて2個取り付けられており、このフィードローラシャフト30はその両端にベアリング31a,31bを配してフレーム26a,26bに支持されて滑らかに回転するように構成されている。32は前記ピッカローラ23とフィードローラ29とを回転駆動するためのモータ、33はこのモータ32の軸に固定されたプーリである。
【0011】34はピッカローラシャフト24に取り付けられたプーリ、35はフィードローラシャフト30に取り付けられたプーリで、これらプーリ34,35と前記モータ32の軸に固定されたプーリ33との間でベルト36をかけて、モータ32からの駆動力をピッカローラ23とフィードローラ29に伝達する。前記プーリ34はピッカローラシャフト24に直接取り付けられており、モータ32からの駆動力がピッカローラ23に直接伝達される。
【0012】前記プーリ35の内部には中央にワンウエイクラッチ37が設けられ、その両端にはベアリング38が設けられており、プーリ35はフィードローラシャフト30にワンウエイクラッチ37およびベアリング38を介して取り付けられている。このワンウエイクラッチ37により、モータ32がフィードローラ29を紙幣27を繰り出す方向(図32において時計まわり)に回転させようとしたときには、モータ32の駆動力がフィードローラ29に伝達される。
【0013】そして、モータ32が停止した状態で、フィードローラ29を紙幣27を繰り出す方向(図32において時計まわり)に回転させようとしたときは、フィードローラ29がプーリ35に対して前記方向に自在に回転できるようになっている。39はフィードローラ29に対向配置されたリバースローラで、このリバースローラ39は外周が高摩擦部材で構成されており、フィードローラ29との間に適度な間隔を保ち、ピッカローラ23とフィードローラ29による紙幣27の繰り出し方向と逆方向に紙幣27を送るように回転して、紙幣27の2枚送りを防止している。
【0014】上述した構成の繰り出し機構5により金庫4から1枚ずつ繰り出された紙幣27を搬送する搬送路9は、対向配置したベルト間に紙幣27を挟持して搬送する構造となっており、40a,40bは対向配置したベルト、41はこのベルト40a,40bを懸架する複数個のプーリである。このプーリ41は図示しない搬送モータから駆動力を受けて高速回転しており、プーリ41が高速回転することでベルト40a,40bが回転して、ベルト40a,40b間に挟持した紙幣27を搬送する。そして、搬送路9における紙幣27の搬送速度は、ピッカローラ23,フィードローラ29により紙幣27を繰り出す際の搬送速度より速くなっている。」
(ウ)「【0057】なお、本実施例においてフィードローラ29、リバースローラ39、プーリ41、搬送ベルト40a,40b、繰り出しモータ32等、繰り出し機構および搬送路の基本的な構成は従来例と同様であるため説明を省略する。23a,23bはピッカローラで、外周が高摩擦部材により構成されており、ピッカローラシャフト24に所定の間隔を開けて取り付けられている。
【0058】ピッカローラ23a,23bはそれぞれボス75a,75bに固定され、このボス75a,75bは中央部にワンウエイクラッチ76a,76bが設けられ、その両端にはベアリング77a,77bが設けられており、ピッカローラ23a,23bはピッカローラシャフト24にそれぞれワンウエイクラッチ76a,76bを介して取り付けられる。
【0059】これらワンウエイクラッチ76a,76bにより、モータ32がピッカローラ23a,23bを紙幣27を繰り出す方向(図1において時計まわり)に回転させようと、モータ32の回転力がベルト36を介してピッカローラシャフト24に伝達され、ピッカローラシャフト24が時計まわりに回転したときは、モータ32の駆動力がピッカローラ23a,23bに伝達されて、これらピッカローラ23a,23bも時計まわりに回転する。
【0060】そして、モータ32が停止した状態で、ピッカローラ23a,23bを時計まわりに回転させようとしたときは、ピッカローラ23a,23bはピッカローラシャフト24に対して前記方向に自在に回転できるようになっている。また、ピッカローラ23a,23bはピッカローラシャフト24に対してそれぞれワンウエイクラッチ76a,76bを介して取り付けられているので、モータ32が停止した状態で、ピッカローラ23a,23bは時計まわりにそれぞれ独立して回転可能である。
【0061】78は第1の光学センサで、この第1の光学センサ78が紙幣27の先端を検出すると、モータ32の回転を停止する信号が発せられる。79は第2の光学センサで、この第2の光学センサ79が前記第1の光学センサ78で先端を検出した紙幣27の後端を検出すると、モータ32を回転させる信号が発せられる。前記第1の光学センサ78は、紙幣27の先端が該第1の光学センサ78による検出位置Aに達した時に、紙幣27の後端がピッカローラ23a,23bとの接触から解放され、かつ、紙幣27の先端側を搬送ベルト23a,23bとの間に確実に挟持した後、第1の光学センサ78がこの紙幣27の先端を検出するように、搬送路9の入口側に位置するプーリ41,第1の光学センサ78,ピッカローラ23a,23bおよびフィードローラ29の位置関係を設定して、第1の光学センサ78による紙幣先端の検出位置Aが、搬送路9の入口側における搬送ベルト40a,40bによる紙幣27の挟持位置から紙幣27の搬送方向へわずかにずれた位置にくるようにしている。」
(エ)「【0064】図3において、図2に示すモータ32の駆動力を受けてピッカローラ23a,23bとフィードローラ29は時計方向に回転して、ピッカローラ23a,23bに当接している最先端の紙幣27aを上方へ繰り出す。なお、ピッカローラ23a,23bとフィードローラ29の周速度は、一例として1000mm/sに設定する。また、搬送ベルト40a,40bは一例として1800mm/sに設定する。
【0065】図4において、繰り出された紙幣27aの先端側は搬送ベルト40a,40b間に挟持される。搬送ベルト40a,40bの周速は1800mm/sで、ピッカローラ23a,23bとフィードローラ29の周速1000mm/sに対して速いため、紙幣27aをピッカローラ23a,23bとフィードローラ29から引き抜くように搬送する。搬送ベルト40a,40bは紙幣27aを引き抜くのに十分な搬送力を有している。
【0066】図5において、搬送ベルト40a,40bにより上方へ紙幣27aが搬送されると、紙幣27aの先端が第1の光学センサ78による紙幣先端の検出位置Aに到達する。第1の光学センサ78が紙幣27aの先端を検出すると、モータ32を停止させる信号が発せられてモータ32は停止し、モータ32によるピッカローラ23a,23bとフィードローラ29の紙幣を繰り出すための時計方向の回転は停止する。
【0067】ここで、本実施例では米ドル紙幣と日本円紙幣の両方を扱い可能としているが、第1の光学センサ78は長さの短い米ドル紙幣28aの先端側が搬送ベルト40a,40b間に確実に挟持された時点で、この紙幣27aの先端が第1の光学センサ78による検出位置Aに到達するとともに、紙幣27aの後端がピッカローラ23a,23bから解放される位置に配されている。」
(オ)「【0069】フィードローラ29は、フィードローラ29を固定しているフィードローラシャフト30と、モータ32からの駆動力を伝達するベルト36がかけられたプーリ35との間にワンウエイクラッチ37が介在しており、モータ32が停止した状態でも、フィードローラ29を時計まわりに回転させようとしたときは、フィードローラシャフト30がプーリ35に対して自在に回転できるようになっているので、モータ32が停止しても搬送ベルト40a,40bによる紙幣27aの引き抜きでフィードローラ29は自在に回転することができて、該フィードローラ29が負荷となることはない。」
(カ)「【0072】図8は紙幣が斜行して繰り出された状態を示す説明図で、次に、2個のピッカローラ23a,23b内にそれぞれ独立してワンウエイクラッチ76a,76bを設けた理由を、この図8を用いて説明する。第1の光学センサ78は、紙幣の搬送方向左右に2個設けられており、先行する紙幣27aが万一斜行(図8では右先行)して繰り出された場合、まず、右側の第1の光学センサ78でこの紙幣27aの右側の先端が検出される。これにより、モータ32の回転が停止して、ピッカローラ23a,23bとフィードローラ29の回転が停止する。
【0073】この状態で、右側のピッカローラ23bは紙幣27aと接しなくなる状態であるが、左側のピッカローラ23aは紙幣27aの後端側にLmmだけ接触箇所を残している。このため、各ピッカローラ23a,23bに独立にワンウエイクラッチを設けていない場合、例えばフィードローラ29のようにフィードローラシャフト30とプーリ35との間にワンウエイクラッチ37を介在させた構成にすると、紙幣27aを搬送ベルト40a,40bにより引き抜いた時に、左側のピッカローラ23aが紙幣27aをLmmだけ繰り出す分回転するが、この際に右側のピッカローラ23bも紙幣27aをLmmだけ繰り出す分回転してしまう。この時点で、右側のピッカローラ23bは次の紙幣27bにすでに当接しているので、この次の紙幣27bの右側がLmmだけ繰り出されてしまい、次の紙幣27bも斜行してしまうのである。
【0074】そのため、左右のピッカローラ23a,23bに独立してワンウエイクラッチ76a,76bを配しておけば、左側のピッカローラ23a(あるいは右側のピッカローラ23b)が紙幣をLmm繰り出す分回転しても、右側のピッカローラ23b(あるいは左側のピッカローラ23a)は停止しているので、次の紙幣27bは斜行することはない。
【0075】なお、本実施例において、フィードローラ29を固定しているフィードローラシャフト30とプーリ35との間にワンウエイクラッチ37を介在させた構成としているが、ピッカローラ23a,23bと同様に、それぞれのフィードローラ29内に独立してワンウエイクラッチ37を設けてもよい。図9は本発明の第2の実施例を示す繰り出し機構および搬送路の側面図、図10は第2の実施例における駆動力の伝達経路を示す繰り出し機構および搬送路の正面図である。」
(キ)上記「a 【請求項3】」、「b 【0014】」及び図32より、上記「b」に記載の「対向配置したベルト40a,40b」、「複数個のプーリ41」及び「搬送モータ」は、それぞれ、上記「a」に記載の「対向配置されたベルト」、「対向配置されたローラ群」及び「これらを駆動する手段」に対応するから、上記「b」【0014】より、「対向配置されたローラ群はこれらを駆動する手段から駆動力を受けて高速回転しており、対向配置されたローラ群が高速回転することで対向配置されたベルトが回転して、対向配置されたベルト間に挟持した紙幣を搬送し、搬送路における紙幣の搬送速度は、ピッカローラ,フィードローラにより紙幣を繰り出す際の搬送速度より速くなっている」といえる。
(ク)上記「f」及び図8より、複数のピッカローラと複数のフィードローラと対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトによって紙幣を搬送方向に搬送しているときに、複数のピッカローラにおける一のピッカローラから紙幣が搬送方向に抜けた場合、当該一のピッカローラが停止すると共に、前記複数のピッカローラにおける他のピッカローラが回転を続けることで前記紙幣を搬送方向に搬送する、といえる。
また、複数のフィードローラのフィードローラシャフト方向の全幅が、紙幣の幅より小さいことが、及び複数のフィードローラのフィードローラシャフト方向の全幅をL1、フィードローラの前記複数のローラのそれぞれの幅をL2、フィードローラの前記ローラの個数をnとして、n・L2/L1<1であることが看取できる。
i 上記「f」より、それぞれのフィードローラ内に、ピッカローラと同様に、独立してワンウエイクラッチを設けることが記載されている。そして、ワンウエイクラッチが設けられたピッカローラは、上記「h」のように動作するものであることから、ワンウエイクラッチが設けられたフィードローラも、上記「h」のように動作するものであることは明らかである。そして、上記「a」に記載されているように、リバースローラがフィードローラと対向配置されているから、紙幣が搬送方向に搬送されているときは、フィードローラとリバースローラとの間から紙幣が搬送方向に抜けることは明らかである。そうすると、複数のフィードローラと対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトによって紙幣を搬送方向に搬送しているときに、ワンウエイクラッチが設けられた複数のフィードローラは、複数のフィードローラにおける一のフィードローラとリバースローラとの間から紙幣が搬送方向に抜けた場合、当該一のフィードローラが停止すると共に、前記複数のフィードローラにおける他のフィードローラが回転を続けることで前記紙幣を搬送方向に搬送する、といえる。

これらの記載を総合すると、刊行物1(甲第1号証)には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「回転することで当接している紙幣を繰り出すピッカローラと、
集積した紙幣を前記ピッカローラ方向に押圧し、最先端の紙幣を該ピッカローラに当接させる押圧手段と、
ピッカローラシャフトと平行なフィードローラシャフトに所定の間隔をあけて2個取り付けられており、ピッカローラにより繰り出された紙幣をさらに繰り出すフィードローラと、
このフィードローラと対向配置され、フィードローラとの間に適度な間隔を保ち、繰り出された紙幣の2枚送りを防止するためのリバースローラと、
前記ピッカローラとフィードローラを駆動する繰り出し駆動手段と、
繰り出し駆動手段からフィードローラへの駆動力伝達経路に介在するワンウエイクラッチと、
対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトと、これらを駆動する手段とより構成され、ピッカローラとフィードローラにより繰り出された紙幣を受けて搬送する搬送手段を具備し、搬送方向の長さの異なる複数種の紙幣を扱う紙幣自動支払装置において、
前記繰り出し駆動手段からピッカローラへの駆動力伝達経路に介在するワンウエイクラッチと、
繰り出された紙幣の先端を検出する検出手段と、
前記検出手段が紙幣の先端を検出すると繰り出し駆動手段の回転駆動を停止するとともに時間監視を行い、所定時間経過後繰り出し駆動手段の回転駆動を開始する制御手段を具備し、
前記検出手段は、最も搬送方向の長さの短い紙幣の先端がこの検出手段による検出位置に到達した時点で、この紙幣の後端がピッカローラとの接触から開放され、かつ、紙幣の先端側をローラ間あるいはベルト間に挟持することで搬送手段が確実にこの紙幣の搬送可能とした後に、紙幣の先端が検出手段による検出位置に到達する、搬送手段の入口側のローラ間あるいはベルト間での紙幣挟持位置から紙幣の搬送方向に所定量ずれた位置にくるように設けられ、
対向配置されたローラ群はこれらを駆動する手段から駆動力を受けて高速回転しており、対向配置されたローラ群が高速回転することで対向配置されたベルトが回転して、対向配置されたベルト間に挟持した紙幣を搬送し、搬送路における紙幣の搬送速度は、ピッカローラ,フィードローラにより紙幣を繰り出す際の搬送速度より速くなっており、
前記ピッカローラは、紙幣の繰り出し方向に対して同軸上に左右2個設けられ、それぞれのピッカローラが独立してワンウエイクラッチに支持されており、
複数のピッカローラと複数のフィードローラと対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトによって紙幣を搬送方向に搬送しているときに、複数のピッカローラにおける一のピッカローラから紙幣が搬送方向に抜けた場合、当該一のピッカローラが停止すると共に、前記複数のピッカローラにおける他のピッカローラが回転を続けることで前記紙幣を搬送方向に搬送し、
ピッカローラと同様に、それぞれのフィードローラ内に独立してワンウエイクラッチを設け、
複数のフィードローラと対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトによって紙幣を搬送方向に搬送しているときに、ワンウエイクラッチが設けられた複数のフィードローラは、複数のフィードローラにおける一のフィードローラとリバースローラとの間から紙幣が搬送方向に抜けた場合、当該一のフィードローラが停止すると共に、前記複数のフィードローラにおける他のフィードローラが回転を続けることで前記紙幣を搬送方向に搬送し、
複数のフィードローラのフィードローラシャフト方向の全幅が、紙幣の幅より小さく、
複数のフィードローラのフィードローラシャフト方向の全幅をL1、フィードローラの前記複数のローラのそれぞれの幅をL2、フィードローラの前記ローラの個数をnとして、n・L2/L1<1である、紙幣自動支払装置。」

イ 刊行物2(甲第2号証)
取消理由通知において引用した刊行物2(特開2002-300367号公報)には、次の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】積載された媒体を搬送路に沿って搬送し、搬送された媒体の画像を読取る画像読取部により媒体を読取り、読取り後の媒体を排出部へ排出する、画像読取装置であって、
搬送路に沿って搬送される媒体の状態を検出する媒体検出手段と、
搬送された媒体の画像を読取る画像読取部において読取った画像から媒体の斜行量を算出することが可能な画像読取手段と、
該媒体検出手段により検出した媒体の通過状態から、媒体の斜行量を算出して、算出した斜行量によって、該画像読取手段により読取った画像から斜行量を算出するか否かの判断を行う斜行量判断手段と、を有し、
該斜行量判断手段の結果により、媒体を読取った結果について斜行の補正制御を行うことを特徴とする画像読取装置。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像読取装置において媒体の斜行を補正する場合に用いて好適な装置に関する。」
(ウ)「【0024】そこで、本発明は、無駄な処理時間をかけずに、実際の斜行量にあった斜行補正処理を高速に行うことを目的としている。
【0025】さらに、本発明は、画像読取部の裏当てを、必要に応じて白と黒に自動で切替えることで、画像読取り時の白基準補正と、原稿の斜行量が大きな場合での読取部での正確な斜行量の検出及び補正を可能とすることで、高速で正確な画像読取処理を実現することを目的としている。」
(エ)「【0034】31はピックローラであり、ホッパ10に載置されている原稿を搬送路に導くためのローラである。また32は分離ローラであり、プレ分離用パッド33とブレーキローラ34により、ピックローラ31から搬送路に繰り出された原稿が重送されないようにするものである。搬送ローラ、ピックローラ31、分離ローラ32は図示されないモータにより駆動される。320、330、322、332、324、334、326、336、328、338はそれぞれ搬送ローラであり、図示省略したモータにより駆動される。また、616は、画像読取タイミングセンサであり、原稿先端が検出された時点で、図示省略したタイマにより原稿搬送の時間を計測し、原稿先端が読取りのために読取部の位置に達するタイミングで原稿の読取り動作が行われる。
【0035】37は画像読取用の光学ユニットであり、この位置で通過する原稿を読み取るものである。35は用紙検出センサであり、ここを通過した用紙はフィードローラ361,362に挟まれて、画像読取部37へ送られる。

【0037】尚、本発明の画像読取装置では、装置の中心を基準として原稿の搬送が行われるため、ピックローラや分離ローラ、フィードローラ、等の搬送用のローラは、装置の中心線上に設けられる。」
(オ)「【0054】斜行角度が許容範囲外である場合は、次に規定の範囲内か、例えば0.5度以上10度以下であるか判断して(F154)範囲内であれば、裏当てはそのままの状態の白のままで、画像読取部において画像を読み込み(F156-2)読込んだデータをメモリに保存し(F157)、斜行角度に応じた斜行補正処理、例えばアフィン変換(F158)を行う。斜行補正の方法については、後述する。読込んだ画像データに対して斜行補正処理を施した後に、画像データを出力する(F160)。」
(カ)上記「d 【0037】」より、ピックローラや分離ローラ、フィードローラ、等の搬送用のローラによって、原稿(媒体)を搬送するといえる。

これらの記載を総合すると、刊行物2(甲第2号証)には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「ホッパに載置されている原稿を搬送路に導くためのローラであるピックローラ、分離ローラ、プレ分離用パッドとブレーキローラにより、ピックローラから搬送路に繰り出された原稿が重送されないようにするものであり、
積載された媒体をピックローラや分離ローラ、フィードローラ、等の搬送用のローラによって、搬送路に沿って搬送し、搬送された媒体の画像を読取る画像読取部により媒体を読取り、読取り後の媒体を排出部へ排出する、画像読取装置であって、
搬送路に沿って搬送される媒体の状態を検出する媒体検出手段と、
搬送された媒体の画像を読取る画像読取部において読取った画像から媒体の斜行量を算出することが可能な画像読取手段と、
該媒体検出手段により検出した媒体の通過状態から、媒体の斜行量を算出して、算出した斜行量によって、該画像読取手段により読取った画像から斜行量を算出するか否かの判断を行う斜行量判断手段と、を有し、
該斜行量判断手段の結果により、媒体を読取った結果について斜行の補正制御を行う画像読取装置。」

(4)対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比すると、
ア 後者の「紙幣」と、前者の「原稿」とは、「媒体」との概念で共通するから、後者の「紙幣自動支払装置」と、前者の「原稿供給装置」とは、「媒体供給装置」との概念で共通する。そして、後者の「フィードローラ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「給送ローラ」に相当し、後者の「繰り出された紙幣の2枚送りを防止するためのリバースローラ」と、前者の「所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段」とは、「所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記媒体に作用させるブレーキ手段」との概念で共通する。
イ 後者の「フィードローラシャフト」、「繰り出し駆動手段」、及び「2個取り付けられており、ピッカローラにより繰り出された紙幣をさらに繰り出すフィードローラ」は、それぞれ、前者の「1つの給送軸」、「単一の駆動源」、及び「複数のローラを有する給送ローラ」に相当する。
ウ 後者の「対向配置されたローラ群」は、「これらを駆動する手段」とより「ピッカローラとフィードローラにより繰り出された紙幣を受けて搬送する搬送手段」を構成するものであるから、「給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラ」といえる。
エ 後者の「それぞれのフィードローラ内に独立して設けられたワンウエイクラッチ」は、「給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段」に相当し、「個別に配置されている」といえる。
オ 後者は、「対向配置されたローラ群はこれらを駆動する手段から駆動力を受けて高速回転しており、対向配置されたローラ群が高速回転することで対向配置されたベルトが回転して、対向配置されたベルト間に挟持した紙幣を搬送し、搬送路における紙幣の搬送速度は、ピッカローラ,フィードローラにより紙幣を繰り出す際の搬送速度より速くなって」いるから、後者の「ピッカローラとフィードローラを駆動する繰り出し駆動手段」は、「給送ローラの周速度を搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能」といえる。
カ 後者は、「それぞれのフィードローラ内に独立してワンウエイクラッチを設け、複数のフィードローラと対向配置されたローラ群あるいは対向配置されたベルトによって紙幣を搬送方向に搬送しているときに、ワンウエイクラッチが設けられた複数のフィードローラは、複数のフィードローラにおける一のフィードローラとリバースローラとの間から紙幣が搬送方向に抜けた場合、当該一のフィードローラが停止すると共に、前記複数のフィードローラにおける他のフィードローラが回転を続けることで前記紙幣を搬送方向に搬送する」ものであるから、「給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送する」といえる。

したがって、両者は、
「1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、媒体を搬送方向に搬送する複数のローラを有する給送ローラと、
所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記媒体に作用させるブレーキ手段と、
前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、
を備える媒体供給装置において、
前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記媒体を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、
前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記媒体を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記媒体が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記媒体を搬送方向に搬送する媒体供給装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
媒体に関して、本件特許発明1が、「原稿」であるのに対し、引用発明1は、「紙幣」である点。

[相違点2]
本件特許発明1が、「給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう」に作用させるブレーキ手段を備えるのに対し、引用発明1は、「フィードローラと対向配置され、フィードローラとの間に適度な間隔を保」つリバースローラを備えている点。

(5)判断
上記相違点2について、以下検討する。
一般に、対向配置されたローラ間で媒体を挟持して搬送する対向配置されたローラ同士は、少なくとも媒体を挟持して搬送している最中は、媒体を介してお互いに接圧していることは、媒体の搬送原理からして、明らかであるし、また、給送ローラと対向配置されたブレーキ手段(ローラ)とで媒体を挟み、すなわち、給送ローラと対向配置されたブレーキ手段(ローラ)とを接圧し、進入した媒体に搬送負荷を作用させることは、周知の技術事項(例えば、甲第2号証の【0035】参照。以下「周知の技術事項」という。)である。
しかし、搬送対象の原稿以外でニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるように作用させるブレーキ手段は、甲第2号証には記載されていないし、当業者にとって設計的事項といえる理由もない。
しかも、本件特許発明1は、上記相違点2に係る本件特許発明1の発明特定事項を具備することにより、「本発明に係る媒体供給装置は、給送ローラから搬送ローラに進入した媒体がスキュー状態である場合でも、給送ローラの各ローラに配置された回転規制手段により、ローラと媒体との接触状態に応じて、各ローラが異なる挙動をとることにより、次に給送する媒体にスキューが伝達されるのを抑制でき、この結果、簡易な構成で媒体のスキュー状態の連鎖を抑制できるという効果を奏する。」(【0015】参照。)という作用効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明1は、甲第1号証記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

本件特許発明4乃至本件特許発明7は、本件特許発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本件特許発明4乃至本件特許発明7は、甲第1号証記載の発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(6)平成29年4月25日付けの取消理由通知に記載しなかった異議申立ての理由について
ア 申立理由1「請求項1?請求項6の発明は、甲第1号証に記載された発明である。」
上記「(4)対比」のとおり、本件特許発明1と甲第1号証とは、上記[相違点1]及び[相違点2]で相違するから、本件特許発明1、本件特許発明4乃至本件特許発明7は、甲第1号証に記載された発明とはいえない、
よって、特許異議申立人の主張する申立理由1の主張は、理由がない。

イ 申立理由3-1「「当該一のローラが停止する」理由が、請求項1の記載から理解することができず、請求項1は発明の内容が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反している。また、請求項1は、「当該一のローラが停止する」手段として、給送軸の回転停止以外の手段も包含しているが、本件特許明細書には、給送軸の回転停止以外の手段はサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。」(特許異議申立書30頁3行?33頁2行)
本件特許発明1には、「1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する複数のローラを有する給送ローラ」と特定されているから、技術常識を踏まえれば、「給送軸の回転」は、「停止」するものであることは明らかである。
また、本件特許明細書には、給送軸の回転停止については開示されているのであるから(【0053】及び【0054】参照。)、サポート要件違反とまではいえない。
よって、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明4乃至本件特許発明7について、特許異議申立人の主張する申立理由3-1の主張は、理由がない。

ウ 申立理由3-2「給送軸の停止により「当該一のローラが停止」しつつ、「他のローラ」が回転を続けるためには、給送軸と、搬送ローラとを独立して駆動する構成が必須となるが、請求項1はそのような構成は規定されておらず、どのようにして、「当該一のローラが停止」しつつ、「他のローラ」が回転を続けるかが不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反している。また、請求項1は、「当該一のローラが停止」しつつ、「他のローラ」が回転を続けるための駆動源の構成として、給送ローラ用の駆動源と搬送ローラ用の駆動源とを備える構成以外の構成も包含しているが、本件特許明細書には、給送ローラ用の駆動源と搬送ローラ用の駆動源とを備える構成以外の構成はサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。」(特許異議申立書33頁3行?34頁3行)
本件特許発明1には、「給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラ」、「前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され」、及び「前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ」と特定されているから、技術常識を踏まえれば、給送ローラのうちの他のローラは、搬送ローラにより搬送される原稿からの摩擦力により空転することは明らかである。
また、本件特許明細書には、他のローラは、搬送ローラにより搬送される原稿からの摩擦力により空転することは開示されているのであるから(【0050】)、サポート要件違反とまではいえない。
よって、本件特許発明1及び本件特許発明1を引用する本件特許発明4乃至本件特許発明7について、特許異議申立人の主張する申立理由3-2の主張は、理由がない。

エ 申立理由3-3「請求項2の「前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅くする制御を実行する」と規定するが、この制御と請求項1の記載の上記規定1との関係が不明瞭であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反している。」(特許異議申立書34頁5?8行)、及び「請求項2は、「前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅くする制御を実行」し、給送軸が回転を継続する場合にも、「当該一のローラが停止する」ことを包含しているが、本件特許明細書には、その例がサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。」(特許異議申立書35頁7?11行)
請求項2に係る発明は、訂正により、削除されたため、申立理由3-3は却下された。

オ 申立理由3-4「請求項3の「前記媒体検出手段により、前記媒体が前記搬送ローラに進入したことを検出すると、前記駆動源による前記給送軸の回転を停止する制御を実行する」と規定するが、この制御と請求項1の記載の上記規定1との関係が不明瞭であるから、特許法第36条第6項第2号の規定に違反している。」(特許異議申立書35頁13?16行)、及び「請求項3は、請求項3の制御が請求項1の「当該一のローラが停止する」ことと無関係な制御である場合も包含しているが、本件特許明細書には、該制御により「当該一のローラが停止する」こと以外の制御はサポートされておらず、特許法第36条第6項第1号の規定に違反している。」(特許異議申立書36頁1?4行)
請求項3に係る発明は、訂正により、削除されたため、申立理由3-4は却下された。

4.むすび
以上のとおり、本件特許発明1、本件特許発明4乃至本件特許発明7に係る特許は、取消理由、及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に本件特許発明1、本件特許発明4乃至本件特許発明7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は訂正により削除されたため、本件特許の請求項2及び3に対して特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。


よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
原稿供給装置及び画像読取装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿供給装置及び画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
積層された複数の媒体から1つずつ分離して媒体を順次給送する構成の媒体供給装置において、例えば媒体を送り出すローラ間の圧力荷重の不均一や片あたりなどの影響により、媒体が斜行姿勢で送られる状態、所謂スキューが発生する場合がある。一旦スキューが発生すると、以降の媒体もスキュー状態が連鎖する現象が起きやすい。
【0003】
スキューを補正する技術として、例えば特許文献1には、搬送幅方向に2つのローラを備え、これらのローラを2つのステッピングモータにより独立して駆動制御することにより、媒体のスキューを補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-233330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される従来のスキュー補正手法では、スキュー補正専用のローラを設置したり、搬送幅方向の2つのローラを個別の駆動源により独立制御する必要があり、装置が複雑化や大型化するという問題があった。
【0006】
また、媒体供給装置が主に適用されるスキャナ装置などの画像読取装置やコンシューマ仕様の安価なプリンタにおいては、ジャム発生が回避でき、または読み取り画像の斜行が目立たないレベルであれば、スキューを許容しうる場合も多い。要は、スキューが発生した場合に、スキューを高精度に補正できなくても、次の媒体にスキューが連鎖することさえ回避できれば十分である場合が多い。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で原稿のスキュー状態の連鎖を抑制できる原稿供給装置及び画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る原稿供給装置は、1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する少なくとも2つのローラを有する給送ローラと、前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段と、前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、を備える原稿供給装置において、前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送することを特徴とする。
【0009】(削除)
【0010】(削除)
【0011】
また、上記の原稿供給装置は、前記給送ローラの搬送方向の上流側に配置された、1つの回転軸まわりに回転可能な少なくとも2つのローラを有するピックアップローラを備え、前記ピックアップローラが有するローラのそれぞれと前記回転軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置されることが好ましい。
【0012】
また、上記の原稿供給装置では、前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅が、前記原稿の最小設定サイズの幅より小さいことが好ましい。
【0013】
また、上記の原稿供給装置では、前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅をL1、前記給送ローラの少なくとも2つのローラのそれぞれの幅をL2、給送ローラの前記ローラの個数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たすことが好ましい。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明に係る画像読取装置が、上記の原稿供給装置と、前記原稿供給装置の下流側に配置され、前記原稿の画像を読み取る画像読取部と、前記画像読取部により読み取られた前記原稿の画像の傾斜を補正する補正手段と、を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る原稿供給装置は、給送ローラから搬送ローラに進入した原稿がスキュー状態である場合でも、給送ローラの各ローラに配置された回転規制手段により、ローラと原稿との接触状態に応じて、各ローラが異なる挙動をとることにより、次に給送する原稿にスキューが伝達されるのを抑制でき、この結果、簡易な構成で原稿のスキュー状態の連鎖を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置を図1に示す矢印A1の方向からみたときの概略構成を示す平面図である。
【図3】図3は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図4】図4は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図5】図5は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態によるスキュー連鎖の抑制効果を説明するためのグラフである。
【図7】図7は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図9】図9は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図10】図10は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【図11】図11は、本発明の第三実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る媒体供給装置及び画像読取装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0018】
[第一実施形態]
図1?6を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
【0019】
まず、図1,2を参照して、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置の構成について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図であり、図2は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置を図1に示す矢印A1の方向からみたときの概略構成を示す平面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る媒体供給装置1は、積層された複数のシート状の媒体Sから1枚ずつ分離して供給する装置である。媒体供給装置1は、例えば、イメージスキャナ、複写機、ファクシミリ、文字認識装置等の画像読取装置やプリンタ等の画像形成装置などに搭載される自動給紙機構(Auto Document Feeder:ADF)に適用される。本実施形態では、その一例として、媒体供給装置1が画像読取装置10に搭載されてシート状の媒体Sを分離搬送する場合について説明する。シート状の媒体Sとは、例えば、原稿や名刺等のシート状の読み取り対象物や印刷用紙、枚葉紙等のシート状の被記録媒体を含む。
【0021】
媒体供給装置1は、複数種のサイズの媒体を供給可能であり、これらの複数種のサイズの媒体に対して、搬送方向に直交する幅方向の媒体の中央位置を基準位置として給紙する中央給紙基準方式をとるものである。図1に示すように、媒体供給装置1は、媒体を搬送方向に搬送する搬送路上に、給送ローラ2と、ブレーキローラ3(ブレーキ手段)と、搬送ローラ4と、媒体センサ13(媒体検出手段)とを備え、さらに制御装置7を備えている。
【0022】
給送ローラ2は、図示しないホッパに積層されている複数の媒体Sのうち、搬送対象となる最下端の1枚の媒体S1を搬送方向に繰り出すためのローラである。図1,2に示すように、給送ローラ2は、搬送方向に略直交に配置された給送軸21と、この給送軸21の周囲に設けられた2つのローラ22a,22bとを備える。給送軸21は、媒体の搬送路より下方に配置され、制御装置7により制御されるモータ8の動作によって回転駆動される。
【0023】
図2に示すように、給送ローラ2のローラ22a,22bは、搬送方向と略直交する方向に、媒体搬送中心Cを挟んで配置されている。ローラ22a,22bは、例えば内層に発泡ゴムなどのニップ幅を形成しやすい軟らかい材料を用いてにより円柱状に形成されており、積層された媒体Sのうち最も給送ローラ2側にある1枚の媒体S1と、その周面で接触可能である。すなわち、ローラ22a,22bは、単一の駆動源であるモータ8から給送軸21に伝達された駆動力により回転することで、その周面で接触している搬送対象の媒体S1を搬送方向に搬送することができる。
【0024】
また、給送ローラ2は、図2に示すように、給送軸21方向の全幅L1が、媒体Sの最小設定サイズの幅より小さく設けられており、媒体供給装置1が対象とする全てのサイズの媒体Sに対して、給送ローラ2のローラ22a,22bの両方と接触可能となるよう構成されている。
【0025】
また、給送ローラ2は、図2に示すように、給送ローラ2の給送軸21方向の全幅をL1、ローラ22a,22bのそれぞれの幅をL2、給送ローラ2のローラ数をn(本実施形態ではn=2)として、
n・L2/L1≦0.95
の条件を満たすように設けられており、給送ローラ2の2つのローラ22a,22bの間に適切に間隙を設けることができるよう構成されている。これによりローラ22a,22bの内側面同士が接触するのを防止でき、ローラ22a,22bが個別の回転動作をとることがローラ22a,22b同士の接触により妨げられるのを防止することができる。
【0026】
図1,2に示すように、給送ローラ2の2つのローラ22a,22bのそれぞれと給送軸21との間には、ワンウェイクラッチ14a,14b(回転規制手段)が個別に設けられている。ワンウェイクラッチ14a、14bは、ローラ22a,22bが搬送対象の媒体S1を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制するよう配置されている。
【0027】
すなわち、給送ローラ2のローラ22a,22bは、単一の駆動源であるモータ8から給送軸21に伝達された駆動力により一体回転可能であり、かつ、それぞれに設けられたワンウェイクラッチ14a,14bによって回転または停止の動作を個別に行うことができるよう構成されている。
【0028】
ワンウェイクラッチ14a,14bの具体的な構成としては、例えば、ローラ式、カム式、コイルバネ式、ラチェット式、スプラグ式などの構成を適用することができる。また、ワンウェイクラッチ14a,14bの軸方向両側に、焼結軸受、樹脂軸受、ボールベアリングなどの支持部材を配置し、ワンウェイクラッチ14a,14bに掛かるラジアル荷重を支持する構成としてもよい。
【0029】
なお、給送ローラ2は、一般的に消耗品であり、使用に伴い適宜交換される。給送ローラ2の交換単位としては、例えば(1)給送軸21、ローラ22a,22b、及び給送軸21とモータ8とを連結するギヤを含む駆動ギヤ軸一体型、(2)ローラ22a,22bがワンウェイクラッチ14a,14bを内部に備えた状態で一体的に形成され、給送軸21と分離可能なローラ一体型、(3)ローラ22a,22bがワンウェイクラッチ14a,14bをそれぞれ内部に備えた状態で、給送軸21と個別に分離可能なローラ一輪型(ワンウェイクラッチ包含)、(4)個々のローラ22a,22bがワンウェイクラッチ14a,14bと分離可能なローラ一輪型(ワンウェイクラッチは別)、などが挙げられる。
【0030】
ブレーキローラ3は、図示しないホッパに積層されている複数の媒体Sのうち、搬送対象となる1枚の媒体S1以外の媒体が搬送方向に繰り出されるのを防止するためのローラである。ブレーキローラ3は、給送ローラ2と対向して設けられ、給送ローラ2に接圧している。なお、本実施形態では、「接圧」とは任意の接触圧力で押圧する状態を意味するものである。
【0031】
ブレーキローラ3は、搬送方向に略直交に配置された軸31と、この軸31の周囲に設けられた2つのローラ32a,32bとを備える。ローラ32a,32bは、搬送方向と略直交する方向に、媒体搬送中心Cを挟んで配置されている。ローラ32a,32bは、例えば内層に発泡ゴムなどのニップ幅を形成しやすい軟らかい材料を用いて円柱状に形成されている。
【0032】
ブレーキローラ3のローラ32a,32bは、給送ローラ2のローラ22a,22bに接圧している。これにより、ブレーキローラ3のローラ32aと給送ローラ2のローラ22aとの間、また、ブレーキローラ3のローラ32bと給送ローラ2のローラ22bとの間には、両ローラの接触面であるニップが形成されている。媒体Sは、給送ローラ2とブレーキローラ3との間のニップを通過して搬送方向の下流側に給送される。ニップの搬送方向の長さであるニップ幅は、ブレーキローラ3の給送ローラ2への接圧の度合いによって調整可能である。
【0033】
ブレーキローラ3は、所定の従動回転トルク以上のトルクを受けるときには給送ローラ2の回転にしたがって従動回転可能であり、かつ、従動回転トルクより小さいトルクを受けるときには所定の回転負荷を発生するよう構成されている。このような構成は、具体的には、軸31が駆動軸であり軸31が搬送方向とは逆方向に回転することで負荷を発生させるFRR方式や、軸31が逆回転しない簡易FRR方式を適用することで実現することができる。
【0034】
ニップに1枚の媒体のみが進入している場合には、ブレーキローラ3は従動回転トルク以上のトルクを受けて従動回転するが、他の媒体も一緒に重送されニップに進入した場合には、ニップの摩擦係数が相対的に小さくなるため、ブレーキローラ3は回転負荷を発生させて、給送ローラ2側の搬送対象の媒体S1以外でニップに進入した媒体を搬送対象の媒体S1に対して相対移動させて分離し、搬送対象の媒体S1のみをニップから送り出し、他の媒体はニップの中に保持することで、搬送対象となる1枚の媒体S1以外の媒体が搬送方向に繰り出されるのを防止する。
【0035】
搬送ローラ4は、給送ローラ2の搬送方向における下流側に配置され、給送ローラ2を通過した媒体S1をさらに搬送方向下流側に搬送する。搬送ローラ4は、モータ9により回転駆動する駆動ローラと、駆動ローラと接圧して従動回転する従動ローラとを有する。媒体S1はこの駆動ローラと従動ローラとの間を通り搬送方向の下流側へ搬送される。
【0036】
媒体センサ13は、媒体S1の搬送経路上に配置され、媒体S1の先端の通過を検出する。媒体センサ13は、搬送ローラ4より搬送方向の直後に配置されている。本実施形態では、媒体センサ13は媒体S1の搬送路をはさんだ状態で一対配置されており、媒体S1の厚さ方向に沿って互いに対向している。そして、この対向するセンサの間を媒体S1が通過したことを検出する。なお、媒体センサ13は、媒体S1が搬送ローラ4に進入したことを検出できれば、搬送ローラ4の上流など任意の位置に配置してもよい。
【0037】
搬送ローラ4の下流側には、画像読取装置10の画像読取部5が配置されている。搬送ローラ4により媒体S1が画像読取部5の読取位置まで搬送されると、画像読取部5は、媒体S1の読取走査を行い媒体S1の画像データを生成する。
【0038】
画像読取部5の下流側には、さらに排出ローラ6が配置されている。排出ローラ6は、画像読取部5による読取走査が行われた媒体を下流に排出する。排出ローラ6は、モータ9により回転駆動する駆動ローラと、駆動ローラと接圧して従動回転する従動ローラとを有する。すなわち搬送ローラ4と排出ローラ6とは共通のモータ9により回転可能に構成されている。
【0039】
制御装置7は、媒体供給装置1及び画像読取装置10の各部を制御するものである。図1に示すように、制御装置7は、媒体センサ13、モータ8、モータ9に接続されており、媒体センサ13等の各種センサ情報に基づいて、モータ8が接続される給送ローラ2、モータ9が接続される搬送ローラ4及び排出ローラ6の回転駆動を制御する。また、制御装置7は、図1には図示しないが画像読取部5にも接続されており、画像読取部5による画像読取動作を制御する。
【0040】
特に本実施形態では、制御装置7は、媒体センサ13により媒体S1の先端の通過を検知されたときに、媒体S1が搬送ローラ4に到達したものとして、モータ8の動作を停止させ、給送ローラ2の回転を停止する制御を実施する。また、制御装置7は、画像読取部5により読み取られた媒体S1の画像データを保持する。さらに、制御装置7(補正手段)は、画像読取部5により読み取られた媒体S1の画像の傾斜を補正する画像処理を行うよう構成することもできる。
【0041】
制御装置7は、物理的には、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などを有するコンピュータである。上述した制御装置7の各機能の全部または一部は、ROMに保持されるアプリケーションプログラムをRAMにロードしてCPUで実行することによって、RAMやROMにおけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。
【0042】
次に、図3?5を参照して、本実施形態に係る媒体搬送装置の動作について説明する。図3?5は、本発明の第一実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【0043】
図3?5には、図1の給送ローラ2及び搬送ローラ4を、ブレーキローラ3側(図1に示す矢印A2の方向)から見た図が示されている。図3?5では、媒体Sの搬送方向は図の下向きであり、図の上方から下方に向かって媒体Sが搬送される。また、積層される媒体Sのうち、一番下にあり搬送対象である1枚目の媒体S1と、媒体S1の直上に積層され媒体S1の次の搬送対象である2枚目の媒体S2のみが図示されている。すなわち、図3?5には、図の奥行き方向において、一番手前に媒体S2、その次に媒体S1、さらに奥に給送ローラ2及び搬送ローラ4が階層的に図示されている。
【0044】
図3?5に示す動作の初期状態としては、給送ローラ2は、モータ8により媒体S1を搬送方向に送り出す方向に回転駆動されており、ローラ22a,22bも回転駆動されている。給送ローラ2より搬送方向の下流側にある搬送ローラ4も、モータ9により媒体S1を搬送方向に送り出す方向に回転駆動されている。このとき、搬送対象の媒体S1に、例えばローラ間の圧力荷重の不均一や片あたりなどの影響により、図3に示すように斜行姿勢で送られる状態、所謂スキューが発生し、媒体S1がスキューを生じたまま給送ローラ2に挿入される状況を考える。
【0045】
媒体S1が給送ローラ2に挿入されると、給送ローラ2は、2つのローラ22a,22bの外周面により、挿入された媒体S1と直接接触する。図3に示すように、媒体S1は、接触する給送ローラ2の回転駆動によって、給送ローラ2の各ローラ22a,22bの外周面から搬送方向へ摩擦力を受けて、この摩擦力によって搬送方向の下流側へ向けて送り出されている。このとき、媒体S1の上に積層されている2枚目の媒体S2は、給送ローラ2との間に媒体S1が介在するので、給送ローラ2とは非接触な状態であり、搬送方向への力は伝達されていない。
【0046】
媒体センサ13が媒体S1の通過を検知すると、制御装置7は、媒体S1が搬送ローラ4に到達したものとして、モータ8を停止させる。これにより、給送ローラ2の回転は停止される。このとき、媒体S1は、搬送ローラ4の回転駆動によって、搬送方向下流側へ送り出される。
【0047】
媒体S1の搬送方向の移動によって、給送ローラ2の各ローラ22a,22bの外周面は搬送方向に摩擦力fを受ける。この摩擦力fは、上述のモータ8の回転駆動により媒体S1がローラ22a,22bから受けていた摩擦力と同一方向である。ローラ22a,22bと給送軸21との間に配置されるワンウェイクラッチ14a,14bは、この摩擦力fによっては回転可能である。したがって、ローラ22a,22bは摩擦力fより共に空転し、搬送ローラ4の回転駆動に従動回転して、媒体S1が搬送方向に送り出される。
【0048】
搬送ローラ4による媒体S1の送り出しが進むと、媒体S1は給送ローラ2から離れ、2枚目の媒体S2が給送ローラ2と接触する状態へと遷移する。上記のように、媒体S1にはスキューが発生しているので、このような媒体S1が搬送ローラ4側に送り出される過程においては、図4に示すように、給送ローラ2の一方のローラ22aが先に媒体S1と離れ、他方のローラ22bが媒体S1と接触している状態が発生する。言い換えると、媒体S1が、給送ローラ2の一方のローラ22aのニップを抜けて、他方のローラ22bのニップ内にある状態である。
【0049】
このとき、媒体S1が先に抜けたローラ22aは、媒体S1から搬送方向への摩擦力fを受けなくなるので、搬送ローラ4に対して従動回転しなくなり、回転を停止する。このため、ローラ22aは、次に給送する媒体S2とローラ22bに先んじて接触しているが、これを引き込むことがない。さらに、ワンウェイクラッチ14aは搬送方向と逆方向への回転を規制するので、媒体S2がブレーキローラ3から回転負荷を受ける場合でも、ローラ22aはこの回転負荷により逆方向へは回転しないので、媒体S2を搬送方向と逆方向に戻す挙動も起こらない。
【0050】
一方、媒体S1と接触しているローラ22bは、媒体S1による搬送方向への摩擦力fを受けるので、摩擦力fより空転し、搬送ローラ4に対して従動回転を継続する。媒体S2は、このローラ22bとの間に媒体S1が未だ介在するので、ローラ22bとは非接触な状態であり、搬送方向への摩擦力fは伝達されていない。つまり、媒体S2は、給送ローラ2の各ローラ22a,22bとそれぞれ異なる接触状態となるが、スキュー角度方向への回転モーメントMは受けない。
【0051】
そして、図5に示すように、媒体S1が給送ローラ2の両方のローラ22a,22bのニップから抜けた後には、媒体S2は、媒体S1のスキューが伝達されることなく、その幅方向が搬送方向と略直交した姿勢を維持して、給送ローラ2の両方のローラ22a,22bに略同一のタイミングで挿入される。
【0052】
次に、本実施形態に係る媒体供給装置の効果を説明する。
【0053】
本実施形態の媒体供給装置1は、1つの給送軸21に伝達された単一の駆動源(モータ8)からの駆動力により回転し、媒体S1を搬送方向に搬送する2つのローラ22a,22bを有する給送ローラ2と、給送ローラ2に接圧して、所定の搬送負荷を給送ローラ2との間に進入した媒体S2に作用させるブレーキローラ3と、給送ローラ2の搬送方向における下流側に配置された搬送ローラ4と、給送ローラ2の搬送方向における下流側に配置され、媒体S1を検出する媒体センサ13と、を備える。この媒体供給装置1は、給送ローラ2が有するローラ22a,22bのそれぞれと給送軸21との間には、ローラ22a,22bが媒体S1を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制するワンウェイクラッチ14a,14bが個別に配置される。また、媒体供給装置1は、媒体センサ13により、媒体S1が搬送ローラ4に進入したことを検出すると、モータ8による給送軸21の回転を停止する制御を実行する。
【0054】
この構成により、給送ローラ2の各ローラ22a,22bにワンウェイクラッチ14a,14bが個別に配置されるので、各ローラ22a,22bと媒体S1との接触状態に応じて、左右のローラ22a,22bが異なる挙動をとることが可能となる。より詳細には、媒体S1と接触している間は搬送ローラ4の回転駆動に従動回転する動作と、媒体S1と非接触のときは回転を停止する動作とを、各ローラ22a,22bごとに個別に行うことができる。これにより、給送ローラ2から搬送ローラ4に進入した媒体S1にスキューが発生している場合でも、媒体S1が搬送ローラ4に進入するのに応じてモータ8による給送軸21の回転を停止する制御を実行すれば、図3?5を参照して説明したように、ローラ22a,22bと媒体S1との接触状態に応じて、左右のローラ22a,22bが異なる挙動をとることにより、次に給送する媒体S2にスキューが伝達されるのを抑制でき、スキュー連鎖を抑制できる。
【0055】
また、給送ローラ2は、ワンウェイクラッチ14a,14bをローラ22a,22bごとに設けることで、特にローラ22a,22bごとに個別の動力源を用意することなく、従来どおり単一の動力源(モータ8)のみを利用して、各ローラ22a,22bに別々の動作を行わせることが可能となる。この結果、簡易な構成で媒体Sのスキュー状態の連鎖を抑制できる。
【0056】
ここで、図6を参照して、本実施形態の媒体供給装置1によるスキュー連鎖の抑制効果について説明する。図6は、本発明の第一実施形態によるスキュー連鎖の抑制効果を説明するためのグラフである。
【0057】
図6は、本実施形態の媒体供給装置1において、A6サイズの媒体Sを搬送方向に対して横向き(スキュー角度0度)にセットし、サイドガイドを使用しない状態で供給したときの供給枚数ごとのスキュー角度をプロットしたものである。また、比較対象として、給送ローラ2の各ローラ22a,22bに共通の1個のワンウェイクラッチを備える従来技術における実験結果もプロットしている。
【0058】
図6の横軸は媒体Sの供給枚数[枚]を示し、縦軸はスキュー角度θ[deg]を示している。また、白色のプロットが本実施形態の実験結果を示し、黒色のプロットが従来技術の実験結果を示す。
【0059】
図6に示すように、従来技術では、給紙枚数が増加するにつれて、スキューが顕在化して徐々に悪化する傾向にある。これに対して本実施形態の媒体供給装置1では、給紙枚数が増加しても、スキュー角度θは0度近傍に安定している。このように本実施形態によりスキューの悪化を抑制できることが示されている。
【0060】
また、本実施形態の媒体供給装置1において、給送ローラ2の給送軸21方向の全幅L1が、媒体Sの最小設定サイズの幅より小さい。
【0061】
これにより、媒体供給装置1が対象とする全てのサイズの媒体Sに対して、給送ローラ2のローラ22a,22bの両方と接触可能とすることができ、スキュー連鎖を抑制することが可能となる。
【0062】
また、本実施形態の媒体供給装置1において、給送ローラ2の給送軸21方向の全幅をL1、給送ローラ2の2つのローラ22a,22bのそれぞれの幅をL2、給送ローラ2のローラ数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たす。
【0063】
この構成により、給送ローラ2の2つのローラ22a,22bの間に適切に間隙を設けることができる。これによりローラ22a,22bの内側面同士が接触するのを防止でき、ローラ22a,22bが個別の回転動作をとることがローラ22a,22b同士の接触により妨げられるのを防止することができる。
【0064】
また、画像読取装置10は、上記の媒体供給装置1と、媒体供給装置1の下流側に配置され、媒体Sの画像を読み取る画像読取部5と、画像読取部5により読み取られた媒体Sの画像の傾斜を補正する制御装置7と、を備える。これにより、媒体Sの画像データに画像処理を施してスキューを補正できるので、媒体Sのスキューの影響をより一層低減して画像読取を行うことができる。
【0065】
[第一実施形態の変形例]
なお、本実施形態の媒体供給装置1は、媒体センサ13により媒体Sが搬送ローラ4に進入したことを検出したときの動作として、給送ローラ2のモータ8を停止する動作の代わりに、給送ローラ2の周速度が搬送ローラ4の周速度より相対的に遅くなるようモータ8を駆動制御してもよい。この場合、図3?5に示した媒体供給装置1の動作では、媒体センサ13による検知に応じてモータ8を「駆動」から「停止」に切り替えていたところを、「駆動」から「減速」に切り替えるよう変更される。
【0066】
[第二実施形態]
次に、図7?10を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。図7は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図である。図8?10は、本発明の第二実施形態に係る媒体供給装置によるスキュー連鎖の抑制動作について説明するための平面図である。
【0067】
図7に示すように、本実施形態の媒体供給装置1aは、(1)給送ローラ2と搬送ローラ4とを単一のモータ15で制御する点、及び(2)媒体Sが搬送ローラ4に進入したことを検出する媒体センサ13を備えない点で、第一実施形態の媒体供給装置1と異なるものである。
【0068】
モータ15は、給送ローラ2及び搬送ローラ4と、それぞれ異なるギヤトレーン(図示せず)を介して接続されており、給送ローラ2を回転速度V1で回転駆動し、搬送ローラ4を回転速度V2で回転駆動する。これらの回転速度V1,V2は、制御装置7により制御されるモータ15の駆動力に応じて可変であるが、常時V2>V1の関係が維持される。言い換えると、媒体供給装置1aでは、制御装置7が給送ローラ2の周速度を搬送ローラ4の周速度より相対的に遅く制御可能である。
【0069】
次に、図8?10を参照して媒体供給装置1aの動作を説明する。図8?10の給送ローラ2、搬送ローラ4、媒体S1,S2の位置関係は、図3?5と同様である。
【0070】
給送ローラ2は、モータ15により媒体Sを搬送方向に送り出す方向に周速度V1で回転駆動されている。給送ローラ2より搬送方向の下流側にある搬送ローラ4も、モータ15により媒体Sを搬送方向に送り出す方向に周速度V2で回転駆動されている。このとき、図8に示すように、搬送対象の媒体S1がスキューを生じたまま給送ローラ2に挿入される状況を考える。
【0071】
媒体S1が給送ローラ2に挿入されると、給送ローラ2は、2つのローラ22a,22bの外周面により、挿入された媒体S1と直接接触する。図8に示すように、媒体S1は、接触する給送ローラ2の回転駆動によって、給送ローラ2の各ローラ22a,22bの外周面から搬送方向へ摩擦力を受けて、この摩擦力によって搬送方向の下流側へ向けて送り出されている。このとき、媒体S1の上に積層されている2枚目の媒体S2は、給送ローラ2との間に媒体S1が介在するので、給送ローラ2とは非接触な状態であり、搬送方向への力は伝達されていない。
【0072】
媒体S1が搬送ローラ4に到達すると、媒体S1は、周速度V1で回転駆動する給送ローラ2と、周速度V2で駆動する搬送ローラ4とにより同時に搬送方向へ送り出されている状態となる。V2>V1であるので、このとき、給送ローラ2を基準とすると、媒体S1は相対速度V2-V1で搬送ローラ4側へ移動していることになる。
【0073】
媒体S1の搬送方向の移動によって、給送ローラ2の各ローラ22a,22bの外周面は搬送方向に摩擦力fを受ける。この摩擦力fは、上述のモータ15の回転駆動により媒体S1がローラ22a,22bから受けていた摩擦力と同一方向である。ローラ22a,22bと給送軸21との間に配置されるワンウェイクラッチ14a,14bは、この摩擦力fによっては回転可能である。したがって、ローラ22a,22bは摩擦力fより共に空転し、搬送ローラ4の回転駆動に従動回転して、媒体S1が搬送方向に送り出される。
【0074】
搬送ローラ4による媒体S1の送り出しが進むと、媒体S1は給送ローラ2から離れ、2枚目の媒体S2が給送ローラ2と接触する状態へと遷移する。上記のように、媒体S1はスキュー状態であるので、このような媒体S1が搬送ローラ4側に送り出される過程においては、図9に示すように、給送ローラ2の一方のローラ22aが先に媒体S1と離れ、他方のローラ22bが媒体S1と接触している状態が発生する。言い換えると、媒体S1が、給送ローラ2の一方のローラ22aのニップを抜けて、他方のローラ22bのニップ内にある状態である。
【0075】
このとき、媒体S1が先に抜けたローラ22aは、媒体S1から搬送方向への摩擦力fを受けなくなるので、搬送ローラ4に対して従動回転しなくなる。さらに、ワンウェイクラッチ14aは搬送方向と逆方向への回転を規制するので、媒体S2がブレーキローラ3から回転負荷を受ける場合でも、ローラ22aはこの回転負荷により逆方向へは回転しないので、媒体S2を搬送方向と逆方向に戻す挙動も起こらない。
【0076】
一方、媒体S1と接触しているローラ22bは、媒体S1による搬送方向への摩擦力fを受けるので、摩擦力fより空転し、搬送ローラ4に対して従動回転を継続する。媒体S2は、このローラ22bとの間に媒体S1が未だ介在するので、ローラ22bとは非接触な状態であり、搬送方向への摩擦力fは伝達されていない。
【0077】
そして、図10に示すように、媒体S1が給送ローラ2の両方のローラ22a,22bのニップから抜けた後には、媒体S2は、媒体S1のスキューが伝達されることなく、その幅方向が搬送方向と略直交した姿勢を維持して、給送ローラ2の両方のローラ22a,22bに略同一のタイミングで挿入される。
【0078】
このように、本実施形態の媒体供給装置1aは、1つの給送軸21に伝達された単一の駆動源(モータ15)からの回転力により回転し、媒体S1を搬送方向に搬送する2つのローラ22a,22bを有する給送ローラ2と、給送ローラ2に接圧して、所定の搬送負荷を給送ローラ2との間に進入した媒体S2に作用させるブレーキローラ3と、給送ローラ2の搬送方向における下流側に配置された搬送ローラ4と、を備える。この媒体供給装置1aは、給送ローラ2の2つのローラ22a,22bのそれぞれと給送軸21との間には、ローラ22a,22bが媒体S1を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制するワンウェイクラッチ14a,14bが個別に配置される。また、媒体供給装置1aは、モータ15により、給送ローラ2の周速度V1を搬送ローラ4の周速度V2より相対的に遅く制御可能である。
【0079】
このような構成により、給送ローラ2から搬送ローラ4に進入した媒体S1がスキュー状態である場合でも、図8?10を参照して説明したように、ローラ22a,22bと媒体S1との接触状態に応じて、左右のローラが異なる挙動をとることにより、次に給送する媒体S2にスキューが伝達されるのを抑制でき、第一実施形態の媒体供給装置1と同様に、スキュー連鎖を抑制できる。
【0080】
なお、本実施形態の媒体供給装置1aは媒体センサ13を備えない構成としたが、媒体センサ13が給送ローラ2の駆動制御に使用されなければ、媒体センサ13を備える構成であってもよい。
【0081】
[第三実施形態]
次に、図11を参照して本発明の第三実施形態について説明する。図11は、本発明の第三実施形態に係る媒体供給装置を搭載する画像読取装置の概略構成を示す断面図である。
【0082】
図11に示すように、本実施形態の媒体供給装置1bは、給送ローラ2の搬送方向の上流側にピックアップローラ16を備える点で、第一実施形態の媒体供給装置1及び第二実施形態の媒体供給装置1aと異なるものである。
【0083】
ピックアップローラ16は、積層される媒体Sのうち最下層の搬送対象の媒体S1を、搬送方向に送り出すためのローラである。ピックアップローラ16は、搬送方向に略直交に配置された回転軸41と、この回転軸41の周囲に設けられた2つのローラ42a,42bとを備える。回転軸41は、媒体Sの搬送路より下方に配置され、制御装置7により制御されるモータ17の動作によって回転駆動される。ローラ42a,42bは、搬送方向と略直交する方向に連続して配置され、例えば内層に発泡ゴムなどのニップ幅を形成しやすい軟らかい材料を用いて円柱状に形成されている。ローラ42a,42bは、搬送対象の媒体S1と、その周面で下方から接触可能である。ピックアップローラ16は、モータ17から回転軸41に伝達された駆動力により回転し、下方から搬送対象の媒体S1に接触することで、媒体S1を搬送方向に送り出すことができる。
【0084】
そして、このピックアップローラ16が有する2つのローラ42a,42bのそれぞれと回転軸41との間にも、給送ローラ2と同様にワンウェイクラッチ14a,14b(回転規制手段)が個別に設けられている。
【0085】
この構成により、ピックアップローラ16から給送ローラ2に進入した媒体S1がスキュー状態である場合でも、ピックアップローラ16の左右のローラ42a,42bと媒体S1との接触状態に応じて、左右のローラ42a,42bが異なる挙動をとることにより、次に給送する媒体S2にスキューが伝達されるのを抑制できるので、スキュー連鎖をより一層抑制できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0087】
例えば、ワンウェイクラッチ14a,14bを設けるローラは、媒体Sの搬送路上の最上流のローラとしてもよい。この場合、第一実施形態の媒体供給装置1や第二実施形態の媒体供給装置1aのように、媒体Sの搬送路上の最上流のローラが給送ローラ2である場合には、給送ローラ2にワンウェイクラッチ14a,14bが設けられる。また、第三実施形態の媒体供給装置1bのように、給送ローラ2の上流にさらにピックアップローラ16を備える構成では、媒体Sの搬送路上の最上流のローラがピックアップローラ16となるので、ピックアップローラ16にワンウェイクラッチ14a,14bが設けられる。
【0088】
また、上記実施形態では、給送ローラ2、ブレーキローラ3、ピックアップローラ16が有するローラの数が2個の構成を例示したが、給送ローラ2、ブレーキローラ3、ピックアップローラ16は少なくとも2個のローラを備えていればよく、3個以上の構成としてもよい。
【0089】
また、上記実施形態のブレーキローラ3は、給送ローラ2に接圧して、所定の搬送負荷を給送ローラ2との間に進入した媒体Sに作用させることができれば、例えば分離パッドや分離ベルトなどブレーキローラ3以外の構成としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、ホッパに積層されている複数の媒体Sのうち最下端の1枚の媒体S1を搬送対象として供給するタイプ、所謂下取り出し式の媒体供給装置を例示したが、本発明は、ホッパ上の媒体Sのうち最上端の媒体を搬送対象として給紙する上取り出し式の媒体供給装置にも適用可能である。
【0091】
また、上記実施形態では、搬送方向に直交する幅方向の媒体Sの中央位置を基準位置として給紙する中央給紙基準方式の媒体供給装置を例示したが、本発明は、搬送方向に直交する幅方向の一端側を基準位置とする片側給紙基準方式の媒体供給装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1,1a,1b 媒体供給装置
10 画像読取装置
2 給送ローラ
21 給送軸
22a,22b ローラ
3 ブレーキローラ(ブレーキ手段)
4 搬送ローラ
5 画像読取部
7 制御装置(補正手段)
8 モータ(駆動源)
13 媒体センサ(媒体検出手段)
14a,14b ワンウェイクラッチ(回転規制手段)
16 ピックアップローラ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの給送軸に伝達された単一の駆動源からの駆動力により回転し、原稿を搬送方向に搬送する複数のローラを有する給送ローラと、
前記給送ローラに接圧してニップを形成し、搬送対象の原稿以外で前記ニップに進入した原稿が当該ニップに保持されるよう、所定の搬送負荷を前記給送ローラとの間に進入した前記原稿に作用させるブレーキ手段と、
前記給送ローラの搬送方向における下流側に配置された搬送ローラと、
を備える原稿供給装置において、
前記給送ローラが有するローラのそれぞれと前記給送軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置され、
前記駆動源により、前記給送ローラの周速度を前記搬送ローラの周速度より相対的に遅く制御可能とされ、前記給送ローラと前記搬送ローラとによって前記原稿を前記搬送方向に搬送しているときに、前記給送ローラの前記複数のローラにおける一のローラと前記ブレーキ手段との間から前記原稿が前記搬送方向に抜けた場合、当該一のローラが停止すると共に、前記給送ローラの前記複数のローラにおける他のローラが回転を続けることで前記原稿を搬送方向に搬送することを特徴とする原稿供給装置。
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
前記給送ローラの搬送方向の上流側に配置された、1つの回転軸まわりに回転可能な少なくとも2つのローラを有するピックアップローラを備え、
前記ピックアップローラが有するローラのそれぞれと前記回転軸との間には、前記ローラが前記原稿を搬送方向に搬送する搬送回転方向に回転することを許容し、かつ前記搬送回転方向と逆回転方向への回転を規制する回転規制手段が個別に配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載の原稿供給装置。
【請求項5】
前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅が、前記原稿の最小設定サイズの幅より小さいことを特徴とする、請求項1または4に記載の原稿供給装置。
【請求項6】
前記給送ローラの前記給送軸方向の全幅をL1、前記給送ローラの前記複数のローラのそれぞれの幅をL2、給送ローラの前記ローラの個数をnとして、
n・L2/L1≦0.95
を満たすことを特徴とする、請求項1、4?5のいずれか1項に記載の原稿供給装置。
【請求項7】
請求項1、4?6のいずれか1項に記載の原稿供給装置と、
前記原稿供給装置の下流側に配置され、前記原稿の画像を読み取る画像読取部と、
前記画像読取部により読み取られた前記原稿の画像の傾斜を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする画像読取装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-23 
出願番号 特願2012-53661(P2012-53661)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B65H)
P 1 651・ 113- YAA (B65H)
P 1 651・ 537- YAA (B65H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤井 眞吾  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
藤本 義仁
登録日 2015-10-02 
登録番号 特許第5814165号(P5814165)
権利者 株式会社PFU
発明の名称 原稿供給装置及び画像読取装置  
代理人 香島 拓也  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 伊藤 剣太  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 伊藤 剣太  
代理人 香島 拓也  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ