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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B01J
審判 全部申し立て 特174条1項  B01J
審判 全部申し立て 2項進歩性  B01J
管理番号 1333208
異議申立番号 異議2016-701211  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-28 
確定日 2017-08-31 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5940992号発明「排気ガス浄化触媒」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5940992号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔3-5〕について訂正することを認める。 特許第5940992号の請求項1、2、4、5に係る特許を維持する。 特許第5940992号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5940992号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成25年 1月29日に特許出願され、平成28年 5月27日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人 山田宏基(以下、「特許異議申立人」という。)より、請求項1?5に対して特許異議の申立てがされ、平成29年 3月23日付けで取消理由が通知され、平成29年 5月18日に特許権者から意見書の提出及び訂正請求がされたものである。


第2 訂正請求について
(1)訂正事項1
請求項3を削除する。

(2)訂正事項2
請求項4の「請求項1?3の何れかに記載の」を、「請求項1又は2に記載の」に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項5の「請求項1?4の何れかに記載の」を、「請求項1、2又は4に記載の」に訂正する。


2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、訂正前の請求項4、5が、それぞれ請求項3を引用するものであるところ、請求項3を引用しないものとするための訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項4、5は、請求項3を引用するものであり、本件訂正は一群の請求項ごとに請求されたものである。


3 むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項、及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔3?5〕について訂正を認める。


第3 特許異議の申立てについて
1 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された請求項1、2、4、5に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1、2、4、5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである(下線部は、訂正箇所)。

【請求項1】
Pd、OSC材、無機多孔質体及びCoを含有する触媒層Aと、Pt、Rh又はこれら両方、及び無機多孔質体を含有する触媒層Bと、を基材上に備え、前記触媒層Aよりも上層側に前記触媒層Bを配置してなる構成を備え、 前記触媒層Aにおいて、Coは金属コバルト又は酸化コバルトの状態で含有され、且つ、Pd1質量部に対して0.4?7.3質量部の割合でCoを含有することを特徴とする排気ガス浄化触媒(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。
【請求項2】
前記触媒層Aは、前記OSC材及び無機多孔質体とは別にCoを含有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
触媒層Aにおいて、Pd1質量部に対して5.1?7.3質量部の割合でCoを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記触媒層Aに含有される無機多孔質体が、シリカ、アルミナまたはチタニアのいずれかの化合物の多孔質体であることを特徴とする請求項1、2又は4に記載の排気ガス浄化触媒。


2 取消理由の概要
訂正前の請求項3?5に係る特許に対して、平成29年 3月23日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

請求項3で特定された「Coは無機多孔質体に担持されない状態で存在する」とは、具体的にどのような状態であるのかを理解することができず、また、請求項3に係る発明を当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明に記載されたものであるとはいえない。
請求項3を引用する請求項4、5も同様である。
したがって、請求項3?5に係る特許は、明細書及び特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、取り消されるべきものである。


3 当審の判断
(1)請求項3について
本件訂正によって請求項3は削除されたため、取消理由は、対象となる発明に係る特許が存在しないものとなった。

(2)請求項4,5について
本件訂正によって、請求項4、5は、請求項3を引用しないものとなった。
よって、訂正後の請求項4、5に係る特許を、上記取消理由によって取り消すことはできない。


4 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について
(1)取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由
特許異議申立人は、上記取消理由以外に、概ね以下の理由を申立てた。

ア 特許法第29条第2項
(ア)請求項1?5に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証、及び甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(イ)請求項1に係る発明は、甲第3号証、並びに甲第2号証、甲第4号証、及び甲5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

証拠方法
甲第1号証 : 特開平11-276896号公報
甲第2号証 : 特開平4-78441号公報
甲第3号証 : 特開2000-157870号公報
甲第4号証 : 特表2013-500149号公報
甲第5号証 : 特開2014-8456号公報

イ 特許法第36条第6項第2号、及び第36条第4項第1号
請求項1の「(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」の記載における「触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒」は、明細書には何ら開示されていない。
したがって、当該触媒を除いた請求項1に係る発明の触媒が、どのような触媒であるのか理解できないから、請求項1に係る発明は、不明確であり、また、当業者が実施することができる程度に発明の詳細な説明に記載されていない。
請求項1を引用する請求項2?5も同様である。

ウ 特許法第17条の2第3項
請求項1の「(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」との記載は、出願当初の明細書には一切存在しないから、新規事項を追加したものである。
請求項1を引用する請求項2?5も同様である。

(2)特許法第29条第2項について
ア 甲第1?第5号証の記載事項
・ 甲第1号証
1a 「【請求項14】 担体上に内側触媒層と外側触媒層とが層状に形成され、且つ排気ガス中のNOxの吸蔵作用を有するNOx吸蔵材を有する排気ガス浄化用触媒であって、
上記内側触媒層が、アルミナとCeO_(2) との混合物にPtとNOx吸蔵材とが担持されRhが担持されていない触媒成分と、Mn、Co、Ti及びFeのうちから選択される少なくとも1種の金属の酸化物にRhとNOx吸蔵材とが担持されPtが担持されていない触媒成分とを備え、
上記外側触媒層が、ゼオライトにPtとRhとNOx吸蔵材とが担持されている触媒成分を備えていることを特徴とする排気ガス浄化用触媒。」

1b「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の如く1つの母材粒子に2種の貴金属粒子が担持されている場合、触媒が高温に晒された際にこの両貴金属粒子が合金化し易くなり、触媒浄化性能が低下することになる。
【0006】そこで、本発明は、酸素濃度が高いときにNOxを吸蔵し濃度が低くなったときにそのNOxを放出するNOx吸蔵材を備え、しかもNOxを分解するための触媒作用を有する種類の異なる触媒貴金属を備えている場合において、各貴金属の熱に対する安定性を高めるとともに、その各々がNOxの分解浄化に有効に働くようにすることを目的とする。」

1c「【0021】アルミナとしてはγ-アルミナが好適である。CeO_(2)は酸素吸蔵能(O_(2)ストレージ効果)を有するから、エンジンが理論空燃比(λ=1)近傍で運転されるときに、当該触媒を三元触媒として機能させて、NOxだけでなくHC(炭化水素)及びCO(一酸化炭素)をも同時に効率良く浄化するうえで有効になる。一方、Mn等の酸化物は、熱安定性が高く、第1母材のシンタリング防止に有効であるだけでなく、排気ガス中のNOをNO_(2 )に酸化させる働きがあると認められ、それによってNOx吸蔵材の吸蔵性能を高めるからである。」

1d 「【0033】
【発明の実施の形態】<触媒の構成>図1は本発明に係る排気ガス浄化用触媒Cの構造を示し、この触媒Cは、車両用のリーン燃焼エンジンの排気ガスを排出するための排気通路(いずれも図示せず)に配設され、この触媒Cにより、理論空燃比燃焼運転時における排気ガス中のHC、CO、NOx等の大気汚染物質を浄化するとともに、さらにリーン燃焼運転時のNOxを有効に浄化する。すなわち、この触媒CはリーンNOx浄化作用を有するものであり、そのリーン雰囲気での酸素濃度は例えば4?5%から20%であり、空燃比はA/F=18以上である。
【0034】上記触媒Cは、例えば耐熱性に優れた担体材料であるコージェライトからなるハニカム状の担体1を備え、その担体1上には、担体1の表面に近い側にある内側触媒層2(下側触媒層)と、その上の担体1の表面から離れた側にある外側触媒層3(上側触媒層)との2層の触媒層が形成されている。
【0035】上記内側触媒層2は、第1母材(例えばアルミナとCeO_(2 )との混合物)に第1貴金属(例えばPt)とNOx吸蔵材とが担持されてなる触媒成分と、第2母材(例えばMn、Co、Ti及びFeのうちから選択される少なくとも1種の金属の酸化物)に第2貴金属(例えばRh)とNOx吸蔵材とが担持されてなる触媒成分との混合物を有する。但し、上記第1母材には第2貴金属は担持されておらず、上記第2母材には第1貴金属は担持されていない。また、NOx吸蔵材の一部は第1母材と第2母材との双方に跨った形で担持され、ひいては第1貴金属と第2貴金属との双方に跨った形で担持されている。一方、外側触媒層3は、第3母材(例えばゼオライト)に貴金属(例えばPt及びRh)とNOx吸蔵材とが担持されてなる触媒成分を有する。
【0036】上記第1乃至第3の各母材には、上記の各貴金属に併せてIr、Pdなど他の貴金属を担持ことができる。上記NOx吸蔵材としては、主としてBaが用いられるが、他のアルカリ土類金属、あるいはアルカリ金属又は希土類金属を用いてもよく、あるいはそれらのうちから選択される2種以上の金属を併用することができる。上記CeO_(2 )成分としてはセリアを用いることできるが、耐熱性を高める観点からセリウムとジルコニウムとの複合酸化物を用いることもできる。 ・・・」

1e 「【0043】-実施例1-
Pt触媒粉(第1触媒粉)の形成
γーアルミナとCeO_(2)-ZrO_(2)複合酸化物とを1:1の重量比率で混合し、この混合物とジニトロジアミン白金溶液とを、混合物:Pt(金属量)=150:1の重量比率となるように混合してスプレードライ法による噴霧乾固を行ない、さらに乾燥及び焼成を施すことによってPt触媒粉を形成した。・・・
【0044】Rh触媒粉(第2触媒粉)の形成
MnO_(2)(二酸化マンガン)と硝酸ロジウム溶液とをMnO_(2):Rh(金属量)=120:1の重量比率となるように混合し、Pt触媒粉の場合と同様に乾固、乾燥及び焼成を施すことによってRh触媒粉を形成した。
【0045】Pt-Rh/MFI触媒粉(第3触媒粉)の形成
ジニトロジアミン白金溶液と硝酸ロジウム溶液とをPt:Rh=75:1の重量比率となるように混合し、これをMFI型ゼオライト(SiO_(2)/Al_(2)O_(3)=80)と合わせて、Pt触媒粉の場合と同様に乾固、乾燥及び焼成を施すことによってPt-Rh/MFI触媒粉を形成した。
【0046】内側コート層の形成
上記Pt触媒粉とRh触媒粉とアルミナバインダとを50:2:5の重量比率となるように混合し、これにイオン交換水を添加することによってスラリーを調製した。このスラリーにハニカム構造の担体(420g/L;このg/Lは担体1L当りの重量を意味する。以下、同じ。)を浸漬して引き上げ、余分なスラリーを吹き飛ばす、という方法によって、乾燥後のコート量が342g/Lとなるように当該スラリーをウォッシュコートした。次いでこれに乾燥及び焼成を施すことによって内側コート層を形成した。
【0047】外側コート層の形成
Pt-Rh/MFI触媒粉とアルミナバインダとを5:1の重量比率となるように混合し、これにイオン交換水を添加することによってスラリーを調製し、このスラリーを上記内側コート層が形成されている担体に、乾燥後のコート量が24g/Lとなるようにウォッシュコートし、これに乾燥及び焼成を施すことによって外側コート層を形成した。
【0048】Baの含浸担持
次に酢酸バリウムをBa量で30g/Lとなるように上記担体の内外の両コート層に含浸させ、これに乾燥及び焼成を施すことによって当該実施例1の触媒を得た。
【0049】従って、この触媒の構成は表1のようになる。この実施例1の触媒の特徴は、内側触媒層においてPtとRhとが異なる母材に分離担持されている点、このRhの母材がMn酸化物である。
【0050】この触媒の内側触媒層は、母材としてγ-アルミナ150g/L、CeO_(2)-ZrO_(2)複合酸化物150g/L及び酸化マンガン12g/Lを有し、バインダは30g/Lであり、貴金属はPtが2g/L、Rhが0.1g/Lである。また、この触媒の外側触媒層は、母材がMFI20g/L、バインダが4g/L、貴金属はPtが0.5g/L、Rhが0.006g/Lである。また、NOx吸蔵材としてBaが内外の触媒層に合わせて30g/L含まれている。」

1f「【0051】
【表1】



1g 「【0052】-実施例2-
酸化マンガンに代えて酸化コバルト(Co_(2)O_(3))を用いる他は実施例1と同様にして実施例2の触媒を得た(表1参照)。」

1h 「【0072】-評価方法-
供試触媒に大気中で900℃で24時間の熱エージング処理を施した後に、これを固定床流通式反応評価装置に取り付ける。はじめは空燃比リーンの模擬排気ガスを触媒にNOx浄化率が安定するまで流す。次にガス組成を切り換えて空燃比リッチの模擬排気ガスを流し、しかる後にガス組成を再び空燃比リーンに切り換え、この切り換え時点から130秒間のNOx浄化率を測定し、リーンNOx浄化性能を評価する。・・・
・・・
【0074】結果は図2に示されている。・・・
・・・
【0075】実施例3と実施例4とは内側触媒層のPtの母材及びRhの母材の各々にMn酸化物を含有するか否かで相違し、この両者のNOx浄化率の差はMn酸化物の添加効果と認められる。すなわち、実施例3では、Mn酸化物の存在によってアルミナのシンタリングが抑制されているとともに、排気ガス中のNOがNO_(2)に酸化されてBaに吸収され易くなり、熱エージング後のNOx浄化率が実施例4よりも高くなっているものと考えられる。・・・
【0077】実施例2はMn酸化物の代わりにCo酸化物を用いた点で実施例1と相違するが、実施例1と同様に高いNOx浄化率を示している。よって、このCo酸化物もMn酸化物と同様の働きを有すると認められる。・・・」

1i「【図1】




1j「【図2】



・ 甲第2号証
2a 「【特許請求の範囲】
(1)担体上に酸化反応に有効な触媒成分からなる第1触媒層を設け、この第1触媒層の上に混合希土、マンガン、ニッケル及びパラジウムからなる第2触媒層を設けた排気浄化用触媒。
(2)第1触媒層は、セリア、混合希土、コバルトからなる触媒である特許請求の範囲第1項記載の排気浄化用触媒。
(3)第1触媒層は、ペロブスカイト型複合酸化物を担持した触媒である特許請求の範囲第1項記載の排気浄化用触媒。
・・・
(5)混合希土は酸化セリウム、酸化ランタン、酸化ネオジウムである特許請求の範囲第1項記載の排気浄化用触媒。
・・・」(特許請求の範囲)

2b 「 ・・・ しかして、上記第1触媒層に用いる触媒成分としてはセリア、混合希土、コバルトからなり、混合希土及びコバルトはペロブスカイト構造を有している。」(2ページ右上欄下から5行?下から2行)

2c 「実施例
以下本発明の排気ガス浄化触媒の実施例について述べる。400セル/in^(2 )のコーディエライト製一体型担体をR_(0.9)Ce_(0.1)CoO_(3 )100部とCeO_(2) 100部、さらにアルミナゾル50部を水と共にボールミリングすることにより作製したスラリー中に浸漬した。続いて、圧縮空気により過剰液を吹き去り、この一体化物を乾燥して、遊離の水を除去した後、700℃で1時間焼成し、担体1l当り20gのコート層を担持した。次にRMn_(0.6 )Ni_(0.4) O_(3) 100部とアルミナゾル50部を水と共にホールミリングすることにより作製したスラリー中に上記担持物を浸漬し、上記第1層と同様にして担体1l当り20gのコーティングを行った。続いて、該担体をジニトロジアンミンパラジウムの硝酸酸性水溶液に浸漬し、乾燥後、400℃で1時間焼成して担体上に担体1Lに対し0.3g/LのPdを担持した。」(3ページ左上欄5行?右上欄2行)


・ 甲第3号証
3a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 第一の直接担体上にある層は窒素酸化物貯蔵機能を有し、かつ第二の直接排ガスと接触する層は触媒機能を有する、不活性担体上に2層に重なっている機能層を有するディーゼルエンジンの排ガスの浄化のための触媒において、第二機能層が追加的に炭化水素貯蔵機能を有し、かつその触媒機能は、高分散した形で微細な酸性担体材料上に沈着している白金族の触媒活性貴金属により提供されていることを特徴とする、ディーゼルエンジンの排ガスの浄化のための触媒。
・・・
【請求項6】 窒素酸化物貯蔵のための第一機能層は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属の群からの少なくとも1種の窒素酸化物貯蔵化合物を含む、請求項1記載の触媒。
【請求項7】 第一機能層は、追加的にマンガン、コバルト、銅、亜鉛、スズ、鉛、ジルコニウムの群からの遷移金属の塩基性酸化物またはこれらの組合せを含む、請求項6記載の触媒。
・・・
【請求項9】 第一機能層内において、窒素酸化物貯蔵化合物のための少なくとも1種の担体材料は、酸化セリウムを基とする担体材料である、請求項7記載の触媒。
・・・
【請求項11】 第一機能層は、追加的に白金族からの少なくとも1種の触媒活性貴金属を含む、請求項1記載の触媒。
・・・ 」

3b 「【0041】本発明による触媒は、反対に、窒素酸化物の大部分を第一機能層内で主としてゆるやかに一酸化窒素として吸着する。このための前提条件は、窒素酸化物が第二の上部機能層を通る拡散の際にごく少量のみが二酸化窒素に酸化されることである。これは、本発明により、触媒活性白金族金属のための酸性担体材料の使用により達成できる。
【0042】排ガスが第二機能層を拡散した後に、これは僅かに高くなった二酸化窒素の量でその下の第一機能層内に達する。ここで、排ガス中に含まれている一酸化窒素が貯蔵化合物にゆるやかに物理的にのみ吸着される。
【0043】このように、第二機能層は、窒素酸化物を第一機能層内に緩やかに結合させることに実質的に関与する。従って、第一機能層の窒素酸化物貯蔵化合物として、すべての従来技術において公知の貯蔵化合物が使用でき、すなわちアルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物および希土類金属の塩基性貯蔵化合物である。有利には、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムの貯蔵化合物が使用される。追加的に、第一機能層は、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、スズ、鉛、ジルコニウムの群からの遷移金属の塩基性酸化物、またはこれらの組合せを含んでいることができる。
【0044】しかし、第一機能層内の窒素酸化物のゆるやかな結合は、好適な材料選択によっても支援することができる。酸化セリウムを基とする微細な担体材料上に沈着した貯蔵化合物が、窒素酸化物をゆるやかにのみ結合し、かつ比較的低い排ガス温度でも認められるほどの脱着を始めることを発見した。
【0045】この場合に重要な操作温度400℃以下および一定のリーン排ガス条件において、担体材料として純粋の酸化セリウムならびにドーピングした酸化セリウムおよびセリウム/ジルコニウム混合酸化物が好適である。 ・・・
【0047】同様に有利な貯蔵化合物のための担体材料として使用するセリウム/ジルコニム混合酸化物は、市場において広範な酸化セリウムと酸化ジルコニウムの混合比で入手でき、かつ純粋の酸化セリウムと同様に、慣用の三元貯蔵材料中の酸素貯蔵材料として普及している。セリウム/ジルコニム混合酸化物の製造は、例えば機械的混合または含浸法および共沈法により行なうことができる。本発明の範囲内で、これらの材料の優れた性質は貯蔵化合物のための担体材料として重要である。その酸素貯蔵能力は、あまり重要ではない。」

3c 「【0055】触媒の両方の機能層は、図1により不活性担体上に施用されている。担体として、公知のセラミックまたは金属のハニカム体が用いられ ・・・ 」

3d 「【0059】
【実施例】以下の例において、本発明による触媒および比較触媒を、下記の寸法を有するコーディエライトから成る開放セル担体上に施用する。
・・・
【0076】比較例2
ハニカム体上の窒素酸化物貯蔵触媒を下記のようにして製造した。
【0077】酸化アルミニウム(比表面積:134m^(2)/g)を白金およびパラジウムを用いて活性化した。 ・・・ 白金含有量1.23質量%およびパラジウム含有量0.71質量%をいずれも酸化アルミニウムに対して含む湿った白金/パラジウム-酸化アルミニウム-粉末が生成した。2時間、120℃、空気中において乾燥した後に、粉末をさらに2時間、300℃において空気中で焼成し、引き続き、流通するフォーミングガス中、500℃で2時間還元した。
【0078】さらに、セリウム/ジルコニウム-混合酸化物(酸化セリウム70質量%;酸化ジルコニウム30質量%;比表面積:104m^(2)/g)をロジウムを用いて含浸した。 ・・・ この方法で製造したロジウム-セリウム/ジルコニウム混合酸化物粉末は、セリウム/ジルコニウム-混合酸化物に対してロジウム含有量1.59質量%を有していた。
【0079】両方の予備製造した粉末から、固体含有量40質量%の被覆用水性分散液を製造した。追加して、全固体含有量に対して酸化マグネシウム比率7.85質量%に相当する酢酸マグネシウムを加えた。
【0080】ハニカム体をこの被覆分散液中に浸漬して被覆した。被覆層を120℃、空気中において乾燥し、引き続き2時間、500℃において焼成した。その後、被覆したハニカム体を酢酸バリウム水溶液を用いて含浸し、あらためて120℃において乾燥器内で2時間乾燥し、引き続き2時間、500℃で焼成した。
【0081】完成した被覆の正確な組成は、表1に記載してある。種々の成分相互の間の相対配列は、下記で与えられる。
【0082】
【化2】



3e 「【0083】例1
機能層2層を有する本発明による触媒を製造した。
【0084】第一機能層として、比較例2の貯蔵触媒を施用した。酸化物含有量は、比較例2と比べ比例して0.78倍減少した。被覆層を120℃において空気中で乾燥し、引き続き2時間、500℃において焼成した。
【0085】第二機能層として、比較例1の還元触媒を施用した。酸化物含有量は、比較例1と比べ比例して0.71倍減少した。第二機能層の白金負荷は、3.18g/lであった。被覆層を120℃、空気中で乾燥し、4時間、300℃において焼成し、引き続き2時間、500℃、フォーミングガス中で還元した。
【0086】例2:別の本発明による触媒を製造した。
【0087】 第一機能層として、比較例2の貯蔵触媒を用いた。酸化物含有量は、比較例2と比べ比例して0.78倍減少した。被覆を120℃において空気中で乾燥し、かつ引き続き2時間、500℃において焼成した。
【0088】第二機能層は、下記のようにして製造した。
【0089】 ケイ酸アルミニウム(二酸化ケイ素5質量%、比表面積:147m^(2)/g)85質量%および脱アルミニウム化したゼオライトY(x=200)15質量%から成る固体混合物を白金を用いて活性化した。このために、固体混合物をエタノールアミン白金(IV)水酸化物の水溶液と攪拌を継続しながら接触させると、湿った流動性粉末が生成した。12時間、120℃、空気中において乾燥した後に生成した粉末を4時間、300℃において空気中で焼成し、500℃において2時間、フォーミングガス中で還元した。このようにして白金を用いて活性化した粉末混合物は、ケイ酸アルミニウムの質量に対して白金2.65質量%を含んでいた。
【0090】この粉末を用いて固体含有量40質量%の被覆用水性分散液を製造した。ハニカム体をこの被覆分散液中に浸漬して被覆した。被覆層を120℃、空気中で乾燥し、4時間、300℃において焼成し、引き続き2時間、500℃においてフォーミングガス中で還元した。得られた触媒の組成は表1に記載してある。
【0091】第二機能層の種々の成分間の相対配置は、下記の式で表される。
【0092】
【化3】



3f 「【0094】例3
別の本発明による触媒を製造した。第一機能層は下記のようにして製造した。
【0095】二酸化ジルコニウム粉末(比表面積:103m^(2)/g)を、CeO_(2) 10.64質量%、La_(2)O_(3) 9.50質量%およびPd3.8質量%を用いて含浸した。このために、硝酸セリウム(III)、硝酸ランタン(III)および硝酸パラジウム(II)から成る水溶液を対応する質量比で二酸化ジルコニウム上に攪拌を続けながら施用すると、湿って含浸された二酸化ジルコニウム粉末が生成した。2時間、150℃、空気中の乾燥の後に、生成した粉末を2時間、600℃、空気中において焼成した。
【0096】含浸した酸化ジルコニウム粉末、ならびに酸化アルミニウム(比表面積:134m^(2)/g)およびセリウム/ジルコニウム混合酸化物(70/30;表面積:104m^(2)/g)を用いて固体含有量40質量%を有する被覆用水性分散液を製造した。被覆分散液乾燥質量に対する酸化ジルコニウム粉末の割合は、18.94質量%、酸化アルミニウムは57.64質量%、かつセリウム/ジルコニウム混合酸化物は10.80質量%であった。追加して、分散液に酸化バリウム12.62質量%に相当する酢酸バリウムを加えた。
【0097】上記の例と同様にして、ハニカム体をこれらの被覆用分散液を用いて被覆し、その被覆を120℃において乾燥し、引き続き2時間、500℃において焼成した。
【0098】その後、被覆したハニカム体を、酸化マグネシウム9.1g/lおよび白金3g/lに相当する硝酸マグネシウムおよびテトラアンミン白金(II)硝酸塩からなる溶液を用いて含浸し、120℃において乾燥し、2時間焼成した。第二機能層として、例2の第二機能層を施用した。完成した触媒被覆の組成は表1に記載してある。
【0099】第一機能層の各種成分の相互の相対配置は、下記の式で表される。
【0100】
【化4】



3g 「【0113】
【表1】



3h「【0114】使用例1
上記例の排ガス浄化触媒の触媒活性を合成気体装置において測定した。・・・
【0117】開始温度測定のために、排ガスを加熱速度15℃/分で加熱した。試験体を最初に表6記載の排ガス混合物中で1時間、400℃において条件調整した。選定した触媒の組合せの測定した触媒活性は、表4に記載してある。
・・・
【0120】
【表4】



3i「【0121】使用例2
選定した触媒の触媒活性を追加して車両において試験した。試験車両として、1.9Lディーゼルエンジンおよび出力81kWの乗用車を用いた。車両ロール試験は、Euro2規格に規定された硫黄含有量500質量ppm以下の市販のディーゼル燃料を用いて行なった。・・・
【0122】6時間、排ガス温度350℃における触媒老化の後のこの試験の結果は、表5に表示してある。例3による本発明による触媒は、「触媒なし」の列にある未処理排出物に対して25%の減少を示し、一方、比較例VB1およびVB2の触媒は、未処理排出物に対して約13%だけ低下した。【0123】
【表5】



3j「【図1】



・ 甲第4号証
4a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア、ジルコニアおよび希土類酸化物を含んだ担体を備える酸素貯蔵材であって、約0.1重量%から約10重量%の範囲の、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化インジウム、酸化金、酸化ビスマスおよび酸化スズ、ならびに、これらの組み合わせからなるグループから選択された遷移金属酸化物によって、活性化される酸素貯蔵材。
・・・
【請求項8】
請求項1の前記酸素貯蔵材、ならびに、パラジウム、ロジウム、プラチナおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択された白金族金属部材を備える、エンジン排気を処理するための触媒。
・・・
【請求項13】
基体と、
セリア、ジルコニアおよびセリア以外の希土類酸化物を含む第1担体を備えた酸素貯蔵材、ならびに酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化マンガン、酸化銀、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化ガドリニウム、酸化サマリウム、酸化インジウム、酸化金、酸化スズ、酸化ビスマスおよびこれらの組み合わせからなるグループから選択された、前記第1担体上に分散された遷移金属酸化物面を備える、第1薄め塗膜層と、
第2担体上に貴金属部材を備える第2薄め塗膜層と、
を備える層状触媒。
【請求項14】
前記第1層が前記基体上に、前記第2層が前記第1層上にある、請求項13に記載の層状触媒。
【請求項15】
前記白金族金属部材がパラジウムである、請求項13に記載の層状触媒。」

4b 「【0055】
白金族金属部材は、パラジウム、ロジウム、プラチナおよびこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されず、任意の適切な貴金属を備えることができる。詳細な実施形態においては、触媒は、約1g/ft^(3)から約300g/ft^(3)の範囲で装填された白金族金属を有する。 ・・・ 」

4c 「【0066】
詳細な実施形態においては、遷移金属酸化物は、金属に基づき、約3g/ft^(3)まで、装填される。 ・・・ 」

4d 「【実施例】
【0074】
実施例1
遷移金属により活性化されるOSCの調製
【0075】
45%のセリア、45%のジルコニア、8%のランタナおよび2%のプラセオジミアを含有した粉末状の基準OSC材料が、以下の実験で利用された。
【0076】
50gの基準OSC材料上にMを含有している一定量の酸性溶液を浸透させて、0.5重量%、1重量%、2重量%および5重量%の遷移金属酸化物MOx(M=Fe、Co、Ni、Mn)の選択群で、修正OSC材料を調製した。溶液は、基準OSC材料の初期湿潤に到達するために、水で希釈された。希釈された溶液は、混合の間、粉末に滴下された。続いて、粉末を乾燥させて、550℃で2時間、焼成した。
・・・
【0079】
〔触媒の調製〕
0.05重量%のRhを含有している試料が、一連の遷移金属酸化物(MOx、M=Fe、Co、Ni、Mn)修正OSC材料上に担持され、そして、OSC基準材料が、含浸により調製された。一定量のRh(NO_(3))_(2)溶液(9.94%のRh)を、50gの遷移金属活性化OSC材料の各々へ浸透させた。 ・・・ 粉末を乾燥させて、約550℃で約2時間、焼成した。表2は、試料およびそれらの組成物の一覧を示す。」

4e 「【0080】
【表2】




4f 「【0093】
〔性能〕
Rh担持した基準OSCおよび修正OSC試料の性能を測定するために、研究室反応器試験が、利用された。 ・・・
【0094】
熟成した粉末試料が、濃厚および希薄条件下で試験された。基準OSC上の基準Rhおよび実験的に修正されたOSC試料上のRhへの、プロピレンおよびメタン酸化活性が、研究された。・・・
・・・
【0096】
続いて、試料は、1050℃で12時間、熱熟成後、希薄(λ=1.026)および濃厚(λ=0.988)条件下で、組み合わせ反応器で比較された。濃厚条件下では、CoOおよびFe_(2)O_(3)修正OSC試料は、300℃で60%より高いNOx転化を、そして、350℃で50%より高いプロピレン転化を示した。希薄条件下では、CoOおよびNiO修正OSC試料は、基準試料と比較して、350℃で20%より高いプロピレン転化を示した。・・・ 」

4g「【0110】
実施例2
触媒材料を有する三元転化触媒複合材は、底塗りおよび上塗り、2つの層を利用して、調製された。層状触媒複合材は、白金族金属としてパラジウムだけを含有し、90g/ft^(3)の総白金族金属添加量、0/90/0のPt/Pd/Rh比率を有した。以下の試料の各々の基体は、CPSI=400/3.5を有する105.7mm(D)x114mm(L)であった。
【0111】
〔比較試料P〕
触媒材料の総パラジウムのうち、?20%は、底塗りにつぎ込まれた。底塗りを調製するために、底塗りのパラジウムの半分は、硝酸パラジウムの形で浸透させ、(リンのトラッピングのための)バリウム部材とともに、2つのアルミナ原料の組み合わせ上へ焼成された。パラジウムの残り半分は、硝酸パラジウムの形で浸透させ、2つの材料の組み合わせ上へ焼成された。第1の材料は、ジルコニア複合材(2つの材料の27.8%)(約75%のジルコニア、10%のイットリア、10%のネオジミアおよび5%のランタナ)で、第2の材料は、OSC(「OSC Y基準」)(2つの材料の72.2%)(約64%のセリア、26%のジルコニア、5%のイットリアおよび5%のランタナ)であった。これらの浸透および焼成された粉末は、水および硝酸でスラリーにされた。スラリーは、約90%の粒子が12μm未満となるまで、粉々にされた。バインダー材料および硝酸ジルコニウムがスラリーに追加され、続いて、約90%が10μm未満の粒子となるまで粉々にされた。続いて、スラリーは、約1.46g/in^(3)の薄め塗膜添加量で、基体上へコーティングされた。
【0112】
上塗りは、アルミナ上へ硝酸パラジウムの形で残りのパラジウム(触媒材料の総パラジウムの?80%)を浸透させ、水および硝酸でスラリーを形成することによって、調製された。スラリーは、約90%の粒子が12μm未満となるまで、粉々にされた。OSC(「OSC Z」)(約40%のセリア、50%のジルコニア、5%のイットリアおよび5%のランタナ)、バインダー材料および硝酸ジルコニウムがスラリーに追加され、続いて、粒子の約90%が10μm未満となるまで、粉々にされた。続いて、スラリーは、約1.867g/in^(3)の薄め塗膜添加量で、基体上へコーティングされた。
【0113】
〔試料Q〕
試料Qの底塗りは、OSC Y基準)を利用しないことを除き、比較試料Pの底塗りで説明されたように調製され、追加された0.1%のAg_(2)Oを有するOSC Y基準の修正したバージョンが利用された。
【0114】
試料Qの上塗りは、比較試料Pの上塗りで説明されたように、調製された。
【0115】
比較試料Pおよび試料Qは、100時間約950℃の燃料カット熟成を利用し、熟成されたエンジンであった。
【0116】
比較試料Pおよび試料Qの組成物(g/in^(3))は、表8にまとめられる。
【表8】

*64%のセリア、26%のジルコニア、5%のイットリアおよび5%のランタナ
**40%のセリア、50%のジルコニア、5%のイットリアおよび5%のランタナ」

4h「【0118】
比較試料Pおよび試料Qのエンジン試験は、MY2008 PZEVエンジンを利用して実施された。FTP試験サイクルが利用され、ミッドベッドHC/CO/NOx排気ガスが、試験サイクルの間、測定された。小さな数ほど、高い転化を示す。結果は、表9に示される。
【0119】
【表9】

【0120】
両方の底塗りでの、修正されたOSC Y(0.1%のAg_(2)O)の使用が、向上した炭化水素、一酸化炭素およびNOx転化活性をもたらすことを、これらの試験の結果は示した。」


・ 甲第5号証
5a 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸アルミニウム焼成体上に、
Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptからなる群から選択される少なくとも1種の白金族金属、およびCr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuからなる群から選択される少なくとも1種の卑金属を担持してなる、排ガス浄化用触媒。
・・・
【請求項3】
担体に対する前記白金族金属の担持量が、0.0001wt%?2.0wt%であり、そして担体に対する前記卑金属の担持量が、0.0001wt%?2.0wt%である、請求項1または2に記載の排ガス浄化触媒。」

5b 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排気ガス浄化用触媒及びその製造方法に関し、さらに特に、排気ガス浄化用白金族金属および卑金属担持リン酸アルミニウム触媒、例えば、自動車等の内燃機関から排出される排ガスに含まれる有害成分を浄化する白金族金属および卑金属担持リン酸アルミニウム触媒、およびその製造方法に関する。」

5c 「【0007】
排ガス浄化触媒中に含まれる貴金属の量を減らすこと、ならびにエンジンから排出される熱、および燃料に含まれる硫黄成分などによって劣化しにくい排ガス浄化触媒が求められている。さらに排ガス浄化基準に適応するために、エンジン始動時、低速運転時のような排ガス温度が低い条件においても、上記成分をさらに良好に除去できる排ガス浄化装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意努力した結果、リン酸アルミニウム焼成体上にPt等の白金族金属およびFe等の卑金属を担持させることによって、上記課題を解決することができることを見いだした。」

5d「【実施例】
・・・
【0036】
(製造例1:共含浸担持法)
・・・リン酸アルミニウム焼成体の粉末を得た。
一方、PtおよびFe粒子の担持は含侵法により行った。 ・・・ 上記リン酸アルミニウム焼成体の粉末をイオン交換水に分散し、これに上記Pt源およびFe源を含む液体を加えた。・・・ 溶媒を蒸発させた。得られた乾燥物を解砕して500℃で2時間焼成した。放冷後、焼成物を解砕し触媒粉末を得た(実施例1)。
【0037】
(製造例2:逐次担持法)
上記硝酸Fe水溶液を用いた含浸担持によって、Fe触媒を調製後、次に上記ジニトロアミンPtを用いた含浸担持によって、PtFe担持触媒を得たことを除き、(製造例1)と同様の手順で、触媒粉末を得た(実施例2)。
【0038】
(実施例3)
Feの代わりに、Mnを用いたことを除き、(製造例1)と同様の手順で、触媒粉末を得た。」


イ 甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、記載事項1d?1gによれば、担体上に内側触媒層と外側触媒層とが層状に形成された排気ガス浄化用触媒において、内側触媒層に、γ-アルミナ、CeO_(2)-ZrO_(2)複合酸化物、Ptを2g/L(担体1L当たり2g)、Rhを0.1g/L(担体1L当たり0.1g)、酸化コバルト(Co_(2)O_(3))を12g/L(担体1L当たり12g)を含有し、外側触媒層にPt、Rh、MFI型ゼオライトを含有する、排気ガス浄化用触媒について記載されている。
このことを踏まえ、記載事項1a?1iを参照して、本件発明1の記載に則して整理すると、甲第1号証には、

「Pt、及びRh、CeO_(2)-ZrO_(2)複合酸化物、γ-アルミナ及びCoを含有する内側触媒層と、Pt、Rh、及びMFI型ゼオライトを含有する外側触媒層と、が担体上に形成され、内側触媒層の上に外側触媒層が形成され、
前記内側触媒層において、Coは酸化コバルト(Co_(2)O_(3))の状態で含有され、Ptを2g/L、Rhを0.1g/L、酸化コバルトを12g/L含有する、排気ガス浄化用触媒。」

の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

ウ 甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、記載事項3a、3j、及び記載事項3d?3gの例3によれば、不活性担体上にある第一機能層と、該第一機能層と重なって第二機能層とを有し、第一機能層は、パラジウム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物を含有し、第二機能層は、ケイ酸アルミニウム、脱アルミニウム化したゼオライトY、及び白金を含有する、排ガスの浄化のための触媒について具体的に記載されている。
このことを踏まえ、記載事項3a?3gを参照して、本件発明1の記載に則して整理すると、甲第3号証には、

「パラジウム、セリウム/ジルコニウム混合酸化物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムを含有する第一機能層と、白金、ケイ酸アルミニウム、脱アルミニウム化したゼオライトYを含有する第二機能層と、を担体上に有し、第一機能層の上に第二機能層が重なっている、排ガスの浄化のための触媒。」

の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。

エ 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1発明との対比・判断
本件発明1と甲1発明とを対比する。
本件発明1の「OSC材」とは、本件明細書によれば、酸素ストレージ能を有する助触媒である(【0020】)。そして、「CeO_(2)」は記載事項1cによれば、酸素吸蔵能(O_(2)ストレージ効果)を有し、記載事項1dの【0036】によれば、セリウムとジルコニウムとの複合酸化物は、セリアの耐熱性を高めたものであるから、甲1発明の「CeO_(2)-ZrO_(2)複合酸化物」は、本件発明1の「OSC材」に相当する。
甲1発明の「γ-アルミナ」、及び「MFI型ゼオライト」は、本件発明1の「無機多孔質体」に相当し、また、甲1発明に係る排気ガス浄化用触媒は、Coを酸化コバルト(Co_(2)O_(3))として含有するから、「ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒」ではないことは、それぞれ技術常識からして明らかである。
そして、甲1発明の「内側触媒層」、「外側触媒層」、「担体」、及び「排気ガス浄化用触媒」は、それぞれ本件発明1の「触媒層A」、「触媒層B」、「基材」、及び「排気ガス浄化触媒」に相当する。
さらに、甲1発明の内側触媒層の「Pt、及びRh」、及び本件発明1の触媒層Aの「Pd」は、貴金属である点で共通している。

以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、
「貴金属、OSC材、無機多孔質体及びCoを含有する触媒層Aと、Pt、Rhの両方、及び無機多孔質体を含有する触媒層Bと、を基材上に備え、前記触媒層Aよりも上層側に前記触媒層Bを配置してなる構成を備え、
前記触媒層Aにおいて、Coは酸化コバルトの状態で含有されていることを特徴とする排気ガス浄化触媒(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:触媒層Aにおいて、本件発明1は、貴金属としてPdを含有し、Pd1質量部に対して0.4?7.3質量部の割合でCoを含有することが特定されているのに対して、甲1発明では、貴金属としてPt、及びRhを含有し、Ptを2g/L、Rhを0.1g/L、及び酸化コバルトを12g/L有するところ、下記※1で示したようにPdを含有することは規定されていない点。

※1 Co_(2)O_(3)の分子量は165.8であり、Coの原子量は58.9であるから、Co_(2)O_(3)12g/Lは、Coでは、8.53g/Lとなる。そうすると、貴金属(Pt+Rh)1質量部に対するCoの含有量は、8.53÷(2+0.1)=4.1質量部となる。
したがって、甲1発明において、上記相違点に係る貴金属に対するコバルトの含有量について、本件発明1で規定する範囲内でコバルトが含まれている。
しかし、甲第1号証に記載のものは、記載事項1aなどによれば、内側触媒層にPtとRhを必須の貴金属成分として含有するものであって、上記相違点に係るPdの含有については、記載事項1dに「上記第1乃至第3の各母材には、上記の各貴金属に併せてIr、Pdなど他の貴金属を担持ことができる。」(【0036】)とあるのみであり、甲1発明における、内側触媒のPt及びRhに替えて含有させることが、甲第1号証に記載されているとまではいえない。
したがって、甲1発明では、Pdを含有することは規定されていない。

以下、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を、甲第2号証、及び甲第5号証から導出できるかどうかについて検討する。

甲第2号証は、記載事項2a?2cによれば、担体上の第1触媒層にコバルトを含むペロブスカイト型複合酸化物を含有し、第1触媒層の上に第2触媒層を設けた排気浄化用触媒について記載されている。
しかし、記載事項2a、2cによれば、甲第2号証のPdは、第2触媒層に担持されるもの、すなわち、Pdを含有する触媒層は上層側であり、また、甲第1号証において、ペロブスカイト型複合酸化物を用いることは何ら想定していないから、甲1発明と甲第2号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

次に、甲第5号証は、記載事項5a?5cによれば、リン酸アルミニウム焼成体上に、Pdなどの白金族金属、及びCoなどの卑金属を担持した排ガス浄化触媒について記載されている。
しかし、甲第5号証に記載のものは、白金族金属、及び卑金属を担持したリン酸アルミニウム触媒であり、記載事項5dをみても、Pd、及びCoを具体的に用いた例はない。
また、甲第1号証では、リン酸アルミニウム触媒を用いることを何ら想定していない。
そうすると、甲1発明と、甲第5号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

さらに、甲1発明と、甲第2号証、及び甲第5号証に記載された発明とを
組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することもできない。

そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の特定事項により、「Pdに対して、・・・Co・・・を含有させることにより、一酸化炭素(CO)の浄化性能が良く」なり、「一酸化炭素(CO)の浄化性能を高めることに成功した。」(本件明細書【0012】)という、甲第1、2、5号証からは予測し得ない効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証、及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(イ)本件発明1と甲3発明との対比・判断
本件発明1と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「セリウム/ジルコニウム混合酸化物」は、記載事項3bの【0047】によれば、酸素貯蔵材料であるから、本件発明1の「OSC材」に相当する。
また、甲3発明の「酸化アルミニウム」、「酸化ジルコニウム」、「ケイ酸アルミニウム」、「脱アルミニウム化したゼオライトY」は、本件発明1の「無機多孔質体」に相当することは、技術常識からして明らかである。
そして、甲3発明は、コバルトを含有していないから、「ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒」ではないことは、明らかである。
さらに、甲3発明の「第一機能層」、「第二機能層」、「担体」、及び「排ガスの浄化のための触媒」は、それぞれ本件発明1の「触媒層A」、「触媒層B」、「基材」、及び「排気ガス浄化触媒」に相当する。

以上のことから、本件発明1と甲3発明とは、

「Pd、OSC材、無機多孔質体を含有する触媒層Aと、Pt、及び無機多孔質体を含有する触媒層Bと、を基材上に備え、前記触媒層Aよりも上層側に前記触媒層Bを配置してなる構成を備えたことを特徴とする排気ガス浄化触媒(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:触媒層Aにおいて、本件発明1は、Coを含有するものであって、Pd1質量部に対して0.4?7.3質量部の割合でCoを含有することが特定されているのに対して、甲3発明では、Pdは含有しているが、下記※2で示したようにCoを含有することは規定されていない点。

※2 甲第3号証の記載事項3aの「【請求項7】」、記載事項3bの【0043】によれば、甲3発明の第一機能層(触媒層Aに相当)に、コバルトの酸化物を追加的に含んでもよいとされている。
しかし、記載事項3a、3bによれば、第一機能層において窒素酸化物貯蔵化合物として、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物および希土類金属の塩基性貯蔵化合物を使用し、さらに「追加的に、第一機能層は、マンガン、コバルト、銅、亜鉛、スズ、鉛、ジルコニウムの群からの遷移金属の塩基性酸化物、またはこれらの組合せを含んでいることができる。」というものであって、酸化コバルトは、遷移金属の塩基性酸化物の一つの選択肢として示されているものにすぎない。
また、甲第3号証の各記載事項、及び他の記載を参照しても、第一機能層に酸化コバルトを含有させた例は何ら記載されていない。
したがって、甲3発明では、Coを含有することは規定されていない。

まず、甲第3号証の記載から、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出できるかどうかについて検討する。

本件発明1では、本件明細書【0009】によれば、触媒のCOの酸化活性を高めるために、上記相違点に係る事項を特定したものであるところ、甲第3号証は、具体的な触媒活性試験を示す記載事項3i?3kをみても、触媒のCO酸化活性を高めるために酸化コバルトを添加するという動機は見出せない。

また、記載事項3fの【0095】によれば、甲3発明の酸化ジルコニウムは、「酸化ジルコニウム粉末」として、Ce、La、及びPdを含浸担持するための担体として用いられているものであり、この酸化ジルコニウム粉末が、記載事項3a、3bにおける「追加的なジルコニウムの塩基性酸化物」であるとしても、酸化ジルコニウムは、排ガス浄化用触媒の耐熱性担体として慣用されているものであるのに対し、酸化コバルトは、排ガス浄化用触媒の担体として通常は用いられるものではないから、追加的な塩基性酸化物として酸化ジルコニウムと並記された酸化コバルトを、酸化ジルコニウム担体粉末に替えて用いることは当業者といえども想定できないものである。

したがって、甲第3号証から、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

次に、上記相違点に係る本件発明1の特定事項を、甲第2号証、甲第4号証、甲第5号証から導出できるかどうかについて検討する。

甲第2号証については、上記のとおり担体上の第1触媒層にコバルトを含むペロブスカイト型複合酸化物を用いることが記載されているが、甲第3号証において、ペロブスカイト型複合酸化物を用いることは何ら想定していないから、甲3発明と甲第2号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

甲第4号証は、記載事項4a?4hによれば、セリア、ジルコニア、及び希土類酸化物を含んだ担体である酸素貯蔵材に、0.1?10重量%の酸化コバルトなどの遷移金属酸化物によって活性化される酸素貯蔵材、並びにパラジウム、ロジウム、及びプラチナから選択される白金族金属部材を備えるエンジン排気を処理するための触媒について開示されている。そして、記載事項4d?4fによれば、白金族金属部材としてRhを用いた例であるが、セリウム、ジルコニウム、ランタンを含むOSC材料に酸化コバルトを担持した修正OSC材料によると酸化活性が向上したことが開示されている。また、記載事項4g、4fによれば、下層にパラジウム、及び修正されたOSCを含む二層の層状触媒も開示されている。
しかし、甲第4号証では、上記のとおり、セリア、ジルコニア、及び希土類酸化物を含んだ担体である酸素貯蔵材に、酸化コバルトを担持して酸素貯蔵材を活性化するものであるのに対し、甲第3号証では、記載事項3bの【0047】によれば、セリウム/ジルコニウム混合酸化物は、三元貯蔵材料中の酸素貯蔵材料として普及しているものであるところ、窒素酸化物の貯蔵化合物の担体材料として重要であり、その酸素貯蔵能力はあまり重要ではないとされ、また、上記のとおり、酸化コバルトは第一機能層に追加的に含んでいることができる程度のものであるから、甲3発明において、酸化コバルトを酸素貯蔵材料であるセリウム/ジルコニウム混合酸化物に担持しようとする動機は存在しない。
そうすると、甲3発明と、酸化コバルトにより酸素貯蔵材を活性化しようとする甲第4号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

甲第5号証は、上記「本件発明1と甲1発明との対比」の項における検討と同様であり、甲第5号証は、リン酸アルミニウム触媒に関するものであるから、甲3発明と、甲第5号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することはできない。

さらに、甲3発明と、甲第2号証、及び甲第4号証に記載された発明、又は、甲3発明と、甲第2号証、及び甲第5号証に記載された発明とを組み合わせて上記相違点に係る本件発明1の特定事項を導出することもできない。

そして、本件発明1は、上記相違点に係る本件発明1の特定事項により、「Pdに対して、・・・Co・・・を含有させることにより、一酸化炭素(CO)の浄化性能が良く」なり、「一酸化炭素(CO)の浄化性能を高めることに成功した。」(本件明細書【0012】)という、甲第2?5号証からは予測し得ない効果を奏するものである。

したがって、本件発明1は、甲3発明、甲第2号証、甲第4号証、及び甲第5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


オ 本件発明2、4、5について
本件発明2、4、5は、本件発明1の特定事項をすべて含む排気ガス浄化触媒の発明である。
そうすると、上記「エ 本件発明1について」と同様の理由により、本件発明2、4、5は、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


(3)特許法第36条第6項第2号、及び第36条第4項第1号について
請求項1の「(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」の記載は、請求項1に係る発明の触媒が、触媒層Aにペロブストカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒、を含んでいないことを意味することは、請求項1の記載から明らかである。
そして、発明の詳細な説明には、実施例として、触媒層Aを形成するために、硝酸Co、多孔質γ-アルミナ、及びセリア・ジルコニア複合酸化物粒子を含むスラリーを基材に浸漬した後、焼成してコート層を形成して、Coは、酸化コバルトの状態でコート層に含有され、「ペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒」に該当しない触媒を調製していることは当業者であれば明らかであるから、発明の詳細な説明は当業者が実施することが出来る程度に記載されているといえる。


(4)特許法第17条の2第3項について
請求項1の「(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。」とは、審査の過程で補正により特定されたものである。
すなわち、引用された特開2007-326001号公報に、内側層と外
側層とを触媒担体上に備えた排気ガス浄化用触媒において、内側層にペロブスカイト型複合酸化物にCoを含有することが記載されていたところ、このような触媒を除く目的で、いわゆる「除くクレーム」として特定されたものであって、新たな技術的事項が導入されるものではないから、このような補正は許されるものであり、新規事項を追加するものではない。


第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、4、5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、4、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、本件特許の請求項3に対して、特許異議申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pd、OSC材、無機多孔質体及びCoを含有する触媒層Aと、Pt、Rh又はこれら両方、及び無機多孔質体を含有する触媒層Bと、を基材上に備え、前記触媒層Aよりも上層側に前記触媒層Bを配置してなる構成を備え、
前記触媒層Aにおいて、Coは金属コバルト又は酸化コバルトの状態で含有され、且つ、Pd1質量部に対して0.4?7.3質量部の割合でCoを含有することを特徴とする排気ガス浄化触媒(但し、前記触媒層Aがペロブスカイト型複合酸化物を構成する金属としてのみCoを含有する触媒は除く)。
【請求項2】
前記触媒層Aは、前記OSC材及び無機多孔質体とは別にCoを含有することを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項3】(削除)
【請求項4】
触媒層Aにおいて、Pd1質量部に対して5.1?7.3質量部の割合でCoを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の排気ガス浄化触媒。
【請求項5】
前記触媒層Aに含有される無機多孔質体が、シリカ、アルミナまたはチタニアのいずれかの化合物の多孔質体であることを特徴とする請求項1、2又は4に記載の排気ガス浄化触媒。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-22 
出願番号 特願2013-14477(P2013-14477)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (B01J)
P 1 651・ 55- YAA (B01J)
P 1 651・ 536- YAA (B01J)
P 1 651・ 537- YAA (B01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 涼安齋 美佐子  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 永田 史泰
後藤 政博
登録日 2016-05-27 
登録番号 特許第5940992号(P5940992)
権利者 三井金属鉱業株式会社
発明の名称 排気ガス浄化触媒  
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所  
代理人 特許業務法人竹内・市澤国際特許事務所  

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