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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  E04D
審判 全部申し立て 発明同一  E04D
審判 全部申し立て 2項進歩性  E04D
管理番号 1333229
異議申立番号 異議2017-700180  
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-23 
確定日 2017-09-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5977396号発明「屋根用板金役物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5977396号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2、4-10〕について訂正することを認める。 特許第5977396号の請求項2ないし10に係る特許を維持する。 請求項1についての本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5977396号の請求項1ないし10に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、平成27年5月21日(優先権主張 平成26年5月27日)に特許出願され、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされた。
その後、その特許に対し、特許異議申立人中嶋守(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年5月17日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月20日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正内容
本件訂正請求による訂正内容は、以下の(1)ないし(8)のとおりである。

(1) 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。

(2) 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部15の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材22と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材23と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材24とで構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部23dを形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする請求項1に記載の屋根用板金役物。」
と記載されているのを、
「建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部15の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材22と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材23と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材24とで構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部23dを形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする屋根用板金役物。」(下線は訂正箇所を示す。以下同様。)
に訂正する。

(3) 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項8に
「前記垂下板材12には、前記垂下板材12の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、
前記破風板のみこみ部Aは、前記破風下地固定板材13と、前記連接板材14と、前記連接板材14を介して前記破風下地固定板材13と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の屋根用板金役物。」
と記載されているのを、
「建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記垂下板材12には、前記垂下板材12の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、
前記破風板のみこみ部Aは、前記破風下地固定板材13と、前記連接板材14と、前記連接板材14を介して前記破風下地固定板材13と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする屋根用板金役物。」
に訂正する。

(4) 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0006】に
「請求項1記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記建造物の屋根面に配置される天面板材と、前記建造物の壁面に配置される垂下板材と、前記垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、前記垂下板材と前記破風下地固定板材とを連接する連接板材と、前記破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、前記連接板材の下方で、前記垂下板材と前記破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、前記天面板材と前記垂下板材との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、前記破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、前記固定手段は、前記破風板を固定しないことを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の屋根用板金役物において、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項3記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根面に配置される天面板材を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から前記前面板材の方向に折り曲げられて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から前記底面板材の方向に折り曲げられて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置し、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置し、前記野地板の前記開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の棟側の端部の高さが前記屋根面高さ以下であり、前記捨水切立ち上げ板の棟側の前記端部が前記止水箱の下方に位置することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の屋根用板金役物において、前記天面板材と前記底面板材との寸法を一定に維持する支持材を設け、前記支持材が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根用板金役物において、前記立ち上げ板に最も近い前記天面板用開口部の端部から、前記止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、野地板の開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の高さが前記屋根面高さ以下であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置することを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の屋根用板金役物において、前記垂下板材には、前記垂下板材の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、前記破風板のみこみ部は、前記破風下地固定板材と、前記連接板材と、前記連接板材を介して前記破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の上下方向の長さを、前記垂下板材の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の左右方向の長さを、前記垂下板材の左右方向の長さよりも短くしたことを特徴とする。」
と記載されているのを、
「請求項2記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記建造物の屋根面に配置される天面板材と、前記建造物の壁面に配置される垂下板材と、前記垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、前記垂下板材と前記破風下地固定板材とを連接する連接板材と、前記破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、前記連接板材の下方で、前記垂下板材と前記破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、前記天面板材と前記垂下板材との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、前記破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、前記固定手段は、前記破風板を固定せず、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項3記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根面に配置される天面板材を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から前記前面板材の方向に折り曲げられて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から前記底面板材の方向に折り曲げられて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置し、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置し、前記野地板の前記開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の棟側の端部の高さが前記屋根面高さ以下であり、前記捨水切立ち上げ板の棟側の前記端部が前記止水箱の下方に位置することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の屋根用板金役物において、前記天面板材と前記底面板材との寸法を一定に維持する支持材を設け、前記支持材が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根用板金役物において、前記立ち上げ板に最も近い前記天面板用開口部の端部から、前記止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、野地板の開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の高さが前記屋根面高さ以下であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置することを特徴とする。
請求項8記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記建造物の屋根面に配置される天面板材と、前記建造物の壁面に配置される垂下板材と、前記垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、前記垂下板材と前記破風下地固定板材とを連接する連接板材と、前記破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、前記連接板材の下方で、前記垂下板材と前記破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、前記天面板材と前記垂下板材との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、前記破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、前記固定手段は、前記破風板を固定せず、前記垂下板材には、前記垂下板材の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、前記破風板のみこみ部は、前記破風下地固定板材と、前記連接板材と、前記連接板材を介して前記破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の上下方向の長さを、前記垂下板材の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の左右方向の長さを、前記垂下板材の左右方向の長さよりも短くしたことを特徴とする。」
に訂正する。

(5) 訂正事項5
願書に添付した明細書の段落【0009】を削除する。

(6) 訂正事項6
願書に添付した明細書の段落【0010】に
「本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による屋根用板金役物において、天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、止水箱を、少なくとも天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、底面板材の一端に立設される前面板材と、底面板材の他端に立設される後面板材と、前面板材の端部と後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、後面板材は、前面板材と対向する立ち上げ板と、立ち上げ板の端部から延出し、前面板材の方向に折り曲げて天面板材と当接する当接板と、当接板の端部から延出し、底面板材の方向に折り曲げて立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前面板材には、天面板用開口部から進入して底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、天面板用開口部と止水箱用開口部とで、建造物の屋内と屋外との通気を行い、邪魔板が、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置するものである。本実施の形態によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置する邪魔板によって、止水箱の防水性能を高めることができる。」
と記載されているのを、
「本発明の第2の実施の形態による屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、建造物の屋根面に配置される天面板材と、建造物の壁面に配置される垂下板材と、垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、垂下板材と破風下地固定板材とを連接する連接板材と、破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、連接板材の下方で、垂下板材と破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、天面板材と垂下板材との角度を屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、固定手段は、破風板を固定せず、天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、止水箱を、少なくとも天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、底面板材の一端に立設される前面板材と、底面板材の他端に立設される後面板材と、前面板材の端部と後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、後面板材は、前面板材と対向する立ち上げ板と、立ち上げ板の端部から延出し、前面板材の方向に折り曲げて天面板材と当接する当接板と、当接板の端部から延出し、底面板材の方向に折り曲げて立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前面板材には、天面板用開口部から進入して底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、天面板用開口部と止水箱用開口部とで、建造物の屋内と屋外との通気を行い、邪魔板が、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置するものである。本実施の形態によれば、破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。また、屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して垂下板材を長くしなければならず、意匠面では、垂下板材が短い方が好まれるため、屋根頂部の勾配に対応して異なる長さの垂下板材としなければならなかったが、本実施の形態によれば、破風下地固定板材を破風下地に固定するため、屋根頂部が急勾配である建造物に対しても短い垂下板材で対応でき、その結果として屋根頂部の勾配に対応した長さの垂下板材を揃える必要が無い。また、本実施の形態によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置する邪魔板によって、止水箱の防水性能を高めることができる。」
に訂正する。

(7) 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0016】に
「本発明の第8の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による屋根用板金役物において、垂下板材には、垂下板材の下端を建造物の壁面側に折り返した折り返し部を形成し、破風板のみこみ部は、破風下地固定板材と、連接板材と、連接板材を介して破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、破風板のみ込み板材は、垂下固定板材を折り返し部に差し込むことによって垂下板材と脱着自在に係止されるものである。本実施の形態によれば、天面板材や垂下板材などの建造物に配置する部材と破風板のみ込み板材とを分けて構成するので、一体構成の場合と比べて製作が容易であり、製造過程や輸送(梱包)において同一部材を重ねた場合の所要スペースを小さくすることができる。」
と記載されているのを、
「本発明の第8の実施の形態による屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、建造物の屋根面に配置される天面板材と、建造物の壁面に配置される垂下板材と、垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、垂下板材と破風下地固定板材とを連接する連接板材と、破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、連接板材の下方で、垂下板材と破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、天面板材と垂下板材との角度を屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、固定手段は、破風板を固定せず、垂下板材には、垂下板材の下端を建造物の壁面側に折り返した折り返し部を形成し、破風板のみこみ部は、破風下地固定板材と、連接板材と、連接板材を介して破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、破風板のみ込み板材は、垂下固定板材を折り返し部に差し込むことによって垂下板材と脱着自在に係止されるものである。本実施の形態によれば、破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。また、屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して垂下板材を長くしなければならず、意匠面では、垂下板材が短い方が好まれるため、屋根頂部の勾配に対応して異なる長さの垂下板材としなければならなかったが、本実施の形態によれば、破風下地固定板材を破風下地に固定するため、屋根頂部が急勾配である建造物に対しても短い垂下板材で対応でき、その結果として屋根頂部の勾配に対応した長さの垂下板材を揃える必要が無い。また、本実施の形態によれば、天面板材や垂下板材などの建造物に配置する部材と破風板のみ込み板材とを分けて構成するので、一体構成の場合と比べて製作が容易であり、製造過程や輸送(梱包)において同一部材を重ねた場合の所要スペースを小さくすることができる。」
に訂正する。

2 訂正の適否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項2、3について
訂正事項2、3は、訂正事項1による請求項の削除に伴った、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2) 訂正事項4ないし7について
訂正事項4ないし7は、明細書の記載を訂正事項1ないし3の内容に整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3) 一群の請求項について
本件訂正請求は、「請求の趣旨」、及び「訂正の理由」の「一群の請求項についての説明」に記載されているとおり、一群の請求項である請求項[1、2、4?10]について訂正することを求めるものである。

(4) 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する特許法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
よって、本件訂正請求による訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件特許の請求項1ないし10に係る発明
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正は認められるから、本件特許の請求項1ないし10に係る発明は、訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下「本件訂正発明2、4?10」あるいは「本件発明3」という。)。

「 【請求項1】(削除)

【請求項2】
建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部15の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材22と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材23と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材24とで構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部23dを形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする屋根用板金役物。

【請求項3】
建造物の屋根面に配置される天面板材11を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材と
で構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から前記前面板材の方向に折り曲げられて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から前記底面板材の方向に折り曲げられて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置し、
前記建造物に設置した状態で、前記止水箱20の少なくとも一部が野地板の開口端部4aよりも棟側に位置し、
前記野地板の前記開口端部4aに取り付ける捨水切30を備え、
前記捨水切を、
前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板31と、
前記捨水切取付板31の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板32とで構成し、
前記捨水切30を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板32の棟側の端部の高さが前記屋根面高さ以下であり、前記捨水切立ち上げ板32の棟側の前記端部が前記止水箱20の下方に位置することを特徴とする屋根用板金役物。

【請求項4】
前記天面板材と前記底面板材との寸法を一定に維持する支持材25を設け、
前記支持材25が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の屋根用板金役物。

【請求項5】
前記立ち上げ板に最も近い前記天面板用開口部の端部から、前記止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根用板金役物。

【請求項6】
野地板の開口端部に取り付ける捨水切30を備え、
前記捨水切を、
前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板31と、
前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板32と
で構成し、
前記捨水切30を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の高さが前記屋根面高さ以下であることを特徴とする請求項2に記載の屋根用板金役物。

【請求項7】
前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部4aよりも棟側に位置することを特徴とする請求項2に記載の屋根用板金役物。

【請求項8】
建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記垂下板材12には、前記垂下板材12の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、
前記破風板のみこみ部Aは、前記破風下地固定板材13と、前記連接板材14と、前記連接板材14を介して前記破風下地固定板材13と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする屋根用板金役物。

【請求項9】
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の上下方向の長さを、前記垂下板材12の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたことを特徴とする請求項8に記載の屋根用板金役物。

【請求項10】
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の左右方向の長さを、前記垂下板材12の左右方向の長さよりも短くしたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の屋根用板金役物。」

2 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成29年5月17日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。

本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願の日前に出願された他の特許出願(甲第1号証:特願2013-37302号(特開2014-163185号))の当初明細書等に記載された発明と同一である。
したがって、本件請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。

3 取消理由についての判断
本件訂正請求による訂正により請求項1は削除されたので、上記2の取消理由は解消された。

4 取消理由通知において採用しなかった異議申立理由について
(1)取消理由通知において採用しなかった異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった異議申立理由の概要は以下のとおりである(異議申立書第33頁12行?34頁13行参照。)。

ア 特許法第29条第1項第3号(新規性欠如)(同法第113条第2号)
本件請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載されているに等しいものである。

イ 特許法第29条第2項(進歩性欠如)(同法第113条第2号)
本件請求項1に係る発明は、甲第2号証記載の発明及び甲第3号証(周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件請求項2に係る発明は、甲第2号証記載の発明、甲第3号証(周知技術)、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第6号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件請求項3に係る発明は、甲第6号証記載の発明、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件請求項4ないし10に係る発明は、甲第2号証記載の発明、甲第3号証(周知技術)、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第6号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)(同法第113条第4号)
「本件特許発明1の構成要件A5(決定注;「前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、」という構成要件。)では、「連接板材14」は”前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する”旨が規定されている。
又、構成要件A7(決定注;「前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、」という構成要件。)では、「破風板のみこみ部A」は、”前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に”形成される旨が規定されている。
一方で、本件明細書の段落【0025】には、”破風板7は、破風板のみこみ部Aに上端部を挿入して設置される。”
そうすると、構成要件A5では、連接板材14は、垂下板材12のどの部分に対して連接するものかは規定されていないから、連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合、明細書の段落【0025】に記載されているような破風板7の挿入は不可能であると考える。
本件特許明細書の段落【0007】に記載の”破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。”旨の効果は、破風板7の挿入による位置決めのことを前提としていると考えられるから、連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合には、上記効果を奏することができない。
よって、本件特許発明1には、本件特許明細書の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、サポート要件を満たしていない。
又、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2、4?10についても同様に、サポート要件を満たしていない。」(異議申立書31頁22行から32頁15行)

エ 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)(同法第113条第4号)
「本件特許発明1の構成要件A7は、以下の点で不明確である。
イ 「破風板のみこみ部」は、上述したとおり、連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合、どのようにして何らかの部材を”のみこむ”かが不明であり、その発明特定事項の技術的意味を理解することができない。
ロ 「破風板のみこみ部」は、屋根回りの部材を指す用語としては一般的でないため、当業者が、その発明特定事項の技術的意味を理解することができない。又、本件特許明細書を参酌しても、その”のみこみ”の程度については記載がなく、どの程度の”のみこみ”が必要であるかも不明確である。例えば、段落【0033】程度には、”折り返し部40の上下方向の長さαは、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβの約10?20%である。”や、”垂下固定板材51の上下方向の長さγは、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβよりも1mm?5mm程度短くすることが好ましく、その範囲の中でも約2mmが最も好ましい。”という記載はあるが、長さγの具体的寸法については言及はない。
以上より、請求項の記載から本件特許発明1を明確に把握することができない。又、本件特許発明1を直接的又は間接的に引用する本件特許発明2、4?10についても本件特許発明1と同様、明確に把握することができない。」(異議申立書32頁17行から33頁7行)

[申立人が提示した証拠]
甲第2号証:特開2008-81968号公報
甲第3号証:特開2011-252361号公報
甲第4号証:特開2000-345669号公報
甲第5号証:特開2004-190401号公報
甲第6号証:特開2001-303732号公報
甲第7号証:特開2005-307615号公報

(2) 甲第2、6号証に記載された発明
ア 甲第2号証
甲第2号証には、以下の発明が記載されている。
「建物本体2を構成する壁パネル2の上端部に、片流れ屋根1を構成する屋根パネル3が設置され、
壁パネル2には、この壁パネル2の表面を覆う外装材20が取り付けられ、
壁パネル2の上端部には、この壁パネル2と屋根パネル3との間に、屋根パネル3の角度を調整する角度調整材21が設けられ、屋根パネル3は、角度調整材21と同様の角度で屋根パネル3を壁パネル2に固定する屋根固定部材34によって、壁パネル2に固定され、
屋根パネル3の端部を、壁パネル2の上端部に設置し、外装材20の表面よりも若干突出する棟部10を有する、
片流れ屋根1が設けられた建物Aにおける、
棟部10を包み込む棟包み5であって、
棟包み5は、壁パネル2の上端部に固定され、
外装材20に沿って垂下する板状部材61を備える第1金具6と、
第1金具6と接続され、棟部10の端面に当接固定されて外装材20の上端部まで垂下する垂下部70を有する第2金具7と、
第2金具7と接続されるとともに屋根面に固定され、棟部10の頂部を覆うようにして下方に屈曲する第3金具8とからなり、
第2金具7は、この第2金具7によって第1金具6を覆うようにして設けられ、第3金具8は、この第3金具8によって第2金具7の上端部を覆うようにして設けられ、
第1金具6と外装材20との間には、壁パネル2と外装材20との間に雨水が浸入することを防ぐ水密材23が設けられ、
第1金具6の上端部分、及び板状部材61は、壁パネル2と外装材20との間に形成された隙間と同様の厚さ寸法を有する水平板材22を介して角度調整材21に固定され、かつ該固定は外装材20を固定するものではない、
棟包み5。」

イ 甲第6号証
甲第6号証には、申立人の主張のとおり、以下の発明が記載されている(異議申立書25頁21行から26頁4行、28頁27から28行)。
「建造物の屋根面に配置される傾斜部(5)を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記傾斜部(5)の下面に取り付ける水切り板(2)を備え、
前記建造物に設置した状態で、前記水切り板(2)の一部が野地板の開口部(10)よりも棟側に位置し、
前記野地板の開口端部に取り付ける捨て水切り板(22)を備え、
前記捨て水切り板(22)を、
前記野地板と屋根材との間に配置される傾斜部(24)と、
前記傾斜部(24)の端部から立ち上げた立ち上がり部(23)とで構成し、
前記立ち上がり部(23)の棟側の端部の高さが屋根面高さ以上であり、立ち上がり部(23)の棟側の前記端部が前記水切り板(2)の上方に位置する、屋根用板金役物。」

(3) 当審の判断
ア 請求項1に係る特許異議申立てについて
申立人は、請求項1に係る本件特許は、上記(1)の理由で、取り消されるべきものであると主張する。
しかしながら、上記第2のとおり、請求項1を削除する本件訂正が認められたので、請求項1についての本件特許異議申立ては、その対象が存在しないものとなった。
したがって、請求項1についての本件特許異議申立ては、不適法な特許異議申立てであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定によって却下すべきものである。

イ 特許法第29条第2項(進歩性欠如)(同法第113条第2号)について
(ア) 本件訂正発明2について
a 対比・検討
本件訂正発明2と上記(2)アで特定した甲第2号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件訂正発明2が「連接板材14の下方で、垂下板材12と破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し」ているのに対し、甲第2号証記載の発明はこのような特定を有していない点で相違しているが(以下「相違点ア」という。)、当該相違点アは、甲第3号証ないし甲第7号証にも記載されていない。したがって、甲第2号証記載の発明において、上記相違点アに係る本件訂正発明2の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

b 申立人の主張について
申立人は相違点アに関し以下の主張をしている。
「・図1、図3から、「「前記第1金具6の本体の下方で、前記垂下部70と前記第1金具6の上端との間に外装材破風板のみこみ部」が形成されている点・・・が看取できる。
これらの記載によれば、甲第2号証には以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。・・・
a7. 前記第1金具6の本体の下方で、前記垂下部70と前記第1金具6の上端との間に外装材破風板のみこみ部(第1金具6の上端と板状部材61との間)を形成し、(段落【0031】、【図1】、【図3】)」(異議申立書22頁最下行から23頁18行)
「甲2発明では、”この第2金具7の垂下部70は前記外装材20の上部まで垂下”しており(段落【0031】)、又図1や図3からも、第1金具6の上端と板状部材61との間、すなわち垂下部70と第1金具6の上端との間に外装材20が挿入される。よって、「垂下部70と第1金具6の上端との間」は、「破風版のみこみ部A」に相当する。」(異議申立書26頁17から21行)

しかし、甲第2号証の図1、3においては、「外装材20」の「板状部材61」あるいは「垂下部70」側の面と反対側の面部分には、「上端」か否かにかかわらず「第1金具6」は図示されておらず、申立人の主張するような、「第1金具6の上端」が、「第1金具6の本体」の「下方」で「垂下部70」「との間」に「外装材20」の「のみこみ部」を形成していることは看取できない。この点異議申立書を参照しても、図1、3上でどの部分がどう該当するのか、具体的に指し示されていない。
また、申立人は、「第1金具6の上端と板状部材61との間、すなわち垂下部70と第1金具6の上端との間」と述べており、つまり「板状部材61」すなわち「垂下部70」としているが、甲第2号証に「板状部材61」が、「垂下部70」と同一あるいは「垂下部70」の一部の部材である旨の記載はみあたらない。この点異議申立書を参照しても、「板状部材61」すなわち「垂下部70」といえる理由の説明がない。
加えて、申立人は「図1や図3からも、第1金具6の上端と板状部材61との間、すなわち垂下部70と第1金具6の上端との間に外装材20が挿入される。」と主張しているが、図1や図3には「外装材20」が「挿入」されたものかどうかは図示されておらず、また甲第2号証全体を見ても「外装材20」が「挿入」されるという記載はみあたらない。
よって、かかる主張は採用できない。

c 小括
以上のとおりであるから、本件訂正発明2は、甲第2号証記載の発明、甲第3号証(周知技術)、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第6号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ) 本件発明3について
a 対比・検討
本件発明3と上記(2)イで特定した甲第6号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件発明3が「捨水切立ち上げ板32の棟側の端部の高さが屋根面高さ以下であり、捨水切立ち上げ板32の棟側の端部が止水箱20の下方に位置する」のに対し、甲第6号証記載の発明は「立ち上がり部(23)の棟側の端部の高さが屋根面高さ以上であり、立ち上がり部(23)の棟側の端部が水切り板(2)の上方に位置する」点で相違している(以下「相違点イ」という。)。
そして、甲第6号証記載の発明における「立上がり部(23)」は、甲第6号証の段落【0020】、【0021】に記載されているように、
「【0020】・・・水切り板(2)の起立部(7)に形成された通気口(6)から雨水が小屋裏に浸入することを考慮し、捨て水切り板(22)を用いることができる。
【0021】捨て水切り板(22)は、立上がり部(23)・・・を備える。そして、・・・浸入する雨水が、万一水切り板(2)の起立部(7)に形成された通気口(6)から野地開口(10)に向かっても、捨て水切り板(22)の立上がり部(23)において雨水が受け止められる。」
ことを目的として設けられる部材であり、そのために「通気口(6)」と対応する高さ、位置としていることは明らかであるから、この棟側の端部を、高さが屋根面高さ以下であり、水切り板(2)の下方に位置を変更することは動機付けがなく、当業者が容易に想到し得ることではない。
また、甲第3号証ないし甲第5号証、及び甲第7号証をみても、「甲第6号証記載の発明の「立上がり部(23)」を、棟側の端部の高さが屋根面高さ以下、棟側の端部が「水切り板(2)」の下方に位置するように変更しても上記目的が達成できることを教示するような記載はない。
したがって、甲第6号証記載の発明において、上記相違点イに係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。

b 申立人の主張について
申立人は相違点イに関し以下の主張をしている。
「甲第7号証の図1には、周知技術として「入水止め4、4’を野地板Bに設置した状態で、立ち壁板40の棟側端部の高さが屋根面高さ以下であり、前記立ち壁板40の棟側の前記端部が換気装置1の底板11の下方に位置する」点が開示されている。又、立ち上がり部(23)の棟側の端部の高さや位置を、周知技術のように構成することは当業者の通常の創作力の発揮に過ぎない。」(異議申立書29頁9から14行)

しかし、甲第7号証の「立ち壁板40」は、甲第7号証の段落【0037】に記載されているように、
「屋根瓦R_(1)の波起面と換気装置1の底板側との間の隙間は、捨水切り囲み兼用として入水止め4,4’の立ち壁板40,40’で覆われているため、当該隙間より入り込む雨水を遮るようにできる」
ことを目的として設けられる部材であって、すなわち甲第6号証記載の発明における「立上がり部(23)」とは目的とする雨水を防ぐ対象位置が異なるものであり、そのような甲第7号証の記載に接しても、甲第6号証記載の発明の「立上がり部(23)」の位置を変更することは示唆されない。よって、申立人の主張は採用できない。

c 小括
以上のとおりであるから、本件発明3は、甲第6号証記載の発明、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ) 本件訂正発明4ないし7について
本件訂正発明4、5は本件訂正発明2あるいは本件発明3を更に減縮したものであり、本件訂正発明6、7は本件訂正発明2を更に減縮したものであるから、上記(ア)、(イ)での検討と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ) 本件訂正発明8について
本件訂正発明8と甲第2号証記載の発明を対比すると、少なくとも、本件訂正発明8が「連接板材14の下方で、垂下板材12と破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し」ているのに対し、甲第2号証記載の発明はこのような特定を有していない点で相違しているが、上記(ア)a、bで述べたように、当該相違点に係る本件訂正発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たことではない。
よって、本件訂正発明8は、甲第2号証記載の発明、甲第3号証(周知技術)、甲第4号証、甲第5号証(周知技術)、甲第6号証(周知技術)、甲第7号証(周知技術)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ) 本件訂正発明9及び10について
本件訂正発明9及び10は本件訂正発明8を更に減縮したものであるから、上記(エ)での検討と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(カ) 小括
以上のとおり、特許法第29条第2項(進歩性欠如)に係る異議申立理由によっては、訂正後の請求項2ないし10に係る特許を取り消すことはできない。

ウ 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)(同法第113条第4号)について
上記(1)ウに摘記したように、サポート要件違反に係る異議申立理由は、本件訂正発明2、8は、「連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合」を含むということを前提とするものである。
これに対し本件訂正発明2、8は、上記第3の1にも摘記したように、「連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成」すると特定されているものであるから、「連接板材14の下方」に「垂下板材12」が存在するものと解されるので、「連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接する」場合は含まない
また、本件訂正発明2、8は、「前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、」と特定されているところ、本件特許明細書では「破風板のみこみ部」について、「破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。」(段落【0007】)、「破風板7は、破風板のみこみ部Aに上端部を挿入して設置される。」(段落【0025】)と記載されているから、「破風板のみこみ部」が破風板の上端部を挿入・位置決めできるものであることが理解できる。そして、そのような「破風板のみこみ部」が形成されることからも、「連接板材14の下方」に「垂下板材12」が存在することは明らかである。
このように、異議申立理由で前提としている構成は本件訂正発明2、8に含まれるものではないことは明らかである。

以上のように、本件訂正発明2、8、及びそれらを引用する本件訂正発明4?7、9?10の記載が特許法第36条第6項第1号の要件を満たさないとの主張は理由がない。また外にサポート要件違反となる点も発見しない。

エ 特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)(同法第113条第4号)について
上記(1)エに摘記したように、明確性要件違反に係る異議申立理由は、
a 「連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合・・・技術的意味を理解することができない。」
b 「「破風板のみこみ部」は、屋根回りの部材を指す用語としては一般的でないため、当業者が、その発明特定事項の技術的意味を理解することができない。又、本件特許明細書を参酌しても、その”のみこみ”の程度については記載がなく、どの程度の”のみこみ”が必要であるかも不明確である。・・・具体的寸法については言及はない。」
の2つの主張からなっている。
まず、上記aについて検討すると、これは本件訂正発明2、8が「連接板材14が、垂下板材12の下端と、破風下地固定板材13とを連接するものであった場合」を含むことを前提とするものである。しかし上記ウで述べたとおり、本件訂正発明2、8は当該場合を含むものではないので上記aの主張には理由がない。
次に、上記bについて検討すると、本件特許明細書では「破風板のみこみ部」について、「破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。」(段落【0007】)ためのものと説明され、実施例で「連接板材14の下方で、垂下板材12と破風下地固定板材13との間に」(段落【0020】)形成されるものである状況が「屋根用板金役物の分解斜視図」である図1に示され、また「破風板7は、破風板のみこみ部Aに上端部を挿入して設置され」(段落【0025】)ている状況が、「屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図」(段落【0024】)である図2から4に示されている。このような本件特許明細書及び図面を参酌すれば「破風板のみこみ部」が破風板の上端部を挿入・位置決めできるものであることが理解でき、よって「当業者が、その発明特定事項の技術的意味を理解することができない」という主張には理由がない。
加えて、上記bで主張される”のみこみ”の程度、寸法が不明という点についても、上記本件特許明細書及び図面の記載を参酌すれば、破風板の上端部を挿入・位置決めできる程度の寸法であることを当業者が理解できるものであるから、具体的寸法が特定されていないとしても明確でないとまではいえない。
以上のように、本件訂正発明2、8、及びそれらを引用する本件訂正発明4?7、9?10の記載が特許法第36条第6項第2号の要件を満たさないとの主張は理由がない。また外に明確性要件違反となる点も発見しない。


第4 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項2ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1に係る本件特許異議申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
屋根用板金役物
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1及び特許文献2に開示されているように、片流れ屋根の屋根頂部に設置する屋根用板金役物が従来から提案されている。
特許文献1は、建造物の片流れ屋根の頂付近から屋根の傾斜面に沿って軒方向側に延びる通気経路と排出口とを有する換気棟を、取付台と頂部支持台とにより片流れ屋根に取り付けるものである。
特許文献2は、換気効率と防水性を向上させることができる片流れ屋根の換気構造であり、片流れ屋根の屋根頂部に対応した断面山型を成し、屋根頂部に形成された連通孔を覆うよう設けられ、屋内と屋外とを通気可能とする換気装置において、屋根面側に配される傾斜部と壁面側に配される垂下部により断面山型を成し、傾斜部と垂下部の両方に屋内と屋外とを通気可能とする通気路を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特開2010-248819号公報
【特許文献2】 特開2011-127359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
片流れ屋根は、屋根頂部の勾配が同じではないため、屋根頂部の勾配に対応させた寸法の屋根用板金役物を揃える必要がある。すなわち、屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、建造物の屋根面に配置される天面板材、及び建造物の壁面に配置される垂下板材を長くする必要がある。
また、垂下板材は、意匠的に短いことが好まれ、短い垂下板材では調整笠木を用いる必要がある。
【0005】
本発明は、片流れ屋根に対応した屋根用板金役物にあっては、屋根頂部の異なる勾配に対応でき、調整笠木を用いることなく施工ができる屋根用板金役物を提供することを目的とする。
また本発明は、防水性能の高い止水箱を実現することで、屋根頂部の異なる勾配に対応できる屋根用板金役物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項2記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記建造物の屋根面に配置される天面板材と、前記建造物の壁面に配置される垂下板材と、前記垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、前記垂下板材と前記破風下地固定板材とを連接する連接板材と、前記破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、前記連接板材の下方で、前記垂下板材と前記破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、前記天面板材と前記垂下板材との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、前記破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、前記固定手段は、前記破風板を固定せず、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項3記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根面に配置される天面板材を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、前記天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、前記止水箱を、少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、前記底面板材の一端に立設される前面板材と、前記底面板材の他端に立設される後面板材と、前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、前記後面板材は、前記前面板材と対向する立ち上げ板と、前記立ち上げ板の端部から前記前面板材の方向に折り曲げられて前記天面板材と当接する当接板と、前記当接板の端部から前記底面板材の方向に折り曲げられて前記立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置し、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置し、前記野地板の前記開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の棟側の端部の高さが前記屋根面高さ以下であり、前記捨水切立ち上げ板の棟側の前記端部が前記止水箱の下方に位置することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項2又は請求項3に記載の屋根用板金役物において、前記天面板材と前記底面板材との寸法を一定に維持する支持材を設け、前記支持材が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根用板金役物において、前記立ち上げ板に最も近い前記天面板用開口部の端部から、前記止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたことを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、野地板の開口端部に取り付ける捨水切を備え、前記捨水切を、前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、前記捨水切を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の高さが前記屋根面高さ以下であることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項2に記載の屋根用板金役物において、前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置することを特徴とする。
請求項8記載の本発明の屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、前記建造物の屋根面に配置される天面板材と、前記建造物の壁面に配置される垂下板材と、前記垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、前記垂下板材と前記破風下地固定板材とを連接する連接板材と、前記破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、前記連接板材の下方で、前記垂下板材と前記破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、前記天面板材と前記垂下板材との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、前記破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、前記固定手段は、前記破風板を固定せず、前記垂下板材には、前記垂下板材の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、前記破風板のみこみ部は、前記破風下地固定板材と、前記連接板材と、前記連接板材を介して前記破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の上下方向の長さを、前記垂下板材の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたことを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項8又は請求項9に記載の屋根用板金役物において、前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の左右方向の長さを、前記垂下板材の左右方向の長さよりも短くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の屋根用板金役物によれば、破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。
また、本発明の屋根用板金役物によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置する邪魔板によって、止水箱の防水性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】 本発明の一実施例による屋根用板金役物の分解斜視図
【図2】 本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図3】 本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図4】 本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図5】 本発明の他の実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図6】 本発明の更に他の実施例による屋根用板金役物を建造物の下屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図7】 本発明の更に他の実施例による屋根用板金役物を示す断面図
【図8】 本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図9】 本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図
【図10】 本実施例による屋根用板金役物を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0009】(削除)
【0010】
本発明の第2の実施の形態による屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、建造物の屋根面に配置される天面板材と、建造物の壁面に配置される垂下板材と、垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、垂下板材と破風下地固定板材とを連接する連接板材と、破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、連接板材の下方で、垂下板材と破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、天面板材と垂下板材との角度を屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、固定手段は、破風板を固定せず、天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、止水箱を、少なくとも天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、底面板材の一端に立設される前面板材と、底面板材の他端に立設される後面板材と、前面板材の端部と後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、後面板材は、前面板材と対向する立ち上げ板と、立ち上げ板の端部から延出し、前面板材の方向に折り曲げて天面板材と当接する当接板と、当接板の端部から延出し、底面板材の方向に折り曲げて立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前面板材には、天面板用開口部から進入して底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、天面板用開口部と止水箱用開口部とで、建造物の屋内と屋外との通気を行い、邪魔板が、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置するものである。本実施の形態によれば、破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。また、屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して垂下板材を長くしなければならず、意匠面では、垂下板材が短い方が好まれるため、屋根頂部の勾配に対応して異なる長さの垂下板材としなければならなかったが、本実施の形態によれば、破風下地固定板材を破風下地に固定するため、屋根頂部が急勾配である建造物に対しても短い垂下板材で対応でき、その結果として屋根頂部の勾配に対応した長さの垂下板材を揃える必要が無い。また、本実施の形態によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置する邪魔板によって、止水箱の防水性能を高めることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態による屋根用板金役物は、建造物の屋根面に配置される天面板材を有し、建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、天面板材の下面に取り付ける止水箱を備え、天面板材には、切り起こしにより形成された天面板用開口部を有し、止水箱を、少なくとも天面板用開口部の下方に配置される底面板材と、底面板材の一端に立設される前面板材と、底面板材の他端に立設される後面板材と、前面板材の端部と後面板材の端部とを連接する側面板材とで構成し、後面板材は、前面板材と対向する立ち上げ板と、立ち上げ板の端部から前面板材の方向に折り曲げられて天面板材と当接する当接板と、当接板の端部から底面板材の方向に折り曲げられて立ち上げ板と対向する邪魔板とで構成し、前面板材には、天面板用開口部から進入して底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、天面板用開口部と止水箱用開口部とで、建造物の屋内と屋外との通気を行い、邪魔板が、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置し、建造物に設置した状態で、止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置し、野地板の開口端部に取り付ける捨水切を備え、捨水切を、野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、捨水切を野地板に設置した状態で、捨水切立ち上げ板の棟側の端部の高さが屋根面高さ以下であり、捨水切立ち上げ板の棟側の端部が止水箱の下方に位置するものである。本実施の形態によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置する邪魔板によって、止水箱の防水性能を高めることができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第2又は第3の実施の形態による屋根用板金役物において、天面板材と底面板材との寸法を一定に維持する支持材を設け、支持材が、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に位置するものである。本実施の形態によれば、天面板用開口部と止水箱用開口部との間に支持材を位置させることで、天面板用開口部と止水箱用開口部との距離を確保して、止水箱の防水性能を高めることができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第2から第4のいずれかの実施の形態による屋根用板金役物において、立ち上げ板に最も近い天面板用開口部の端部から、止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたものである。本実施の形態によれば、立ち上げ板に最も近い天面板用開口部の端部から止水箱用開口部までの距離を30mm以上とすることで止水箱の防水性能を確保できる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第2の実施の形態による屋根用板金役物であって、野地板の開口端部に取り付ける捨水切を備え、捨水切を、野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板と、捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板とで構成し、捨水切を野地板に設置した状態で、捨水切立ち上げ板の高さが屋根面高さ以下である。本実施の形態によれば、捨水切を野地板に設置した状態で、捨水切立ち上げ板の高さが屋根面高さ以下であることで、止水箱の少なくとも一部を野地板の開口端部よりも棟側に位置させることができ、異なる勾配の屋根頂部に対して、野地板の開口の位置を変えることなく、更に同一寸法の屋根用板金役物で施工できる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第2の実施の形態による屋根用板金役物であって、建造物に設置した状態で、止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部よりも棟側に位置するものである。本実施の形態によれば、野地板の開口端部の位置に制約されることなく止水箱を配置できるため、異なる勾配の屋根頂部に対して、野地板の開口の位置を変えることなく、更に同一寸法の屋根用板金役物で施工できる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態による屋根用板金役物は、建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、建造物の屋根面に配置される天面板材と、建造物の壁面に配置される垂下板材と、垂下板材と平行に配置される破風下地固定板材と、垂下板材と破風下地固定板材とを連接する連接板材と、破風下地固定板材を破風下地に固定するビス又は釘等の固定手段とを備え、連接板材の下方で、垂下板材と破風下地固定板材との間に破風板のみこみ部を形成し、天面板材と垂下板材との角度を屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、破風板のみこみ部に破風板の上端部が配置され、固定手段は、破風板を固定せず、垂下板材には、垂下板材の下端を建造物の壁面側に折り返した折り返し部を形成し、破風板のみこみ部は、破風下地固定板材と、連接板材と、連接板材を介して破風下地固定板材と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、破風板のみ込み板材は、垂下固定板材を折り返し部に差し込むことによって垂下板材と脱着自在に係止されるものである。本実施の形態によれば、破風板のみこみ部を設けることで、施工時に破風板の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部で破風板の位置決めができるため施工性が向上する。また、屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して垂下板材を長くしなければならず、意匠面では、垂下板材が短い方が好まれるため、屋根頂部の勾配に対応して異なる長さの垂下板材としなければならなかったが、本実施の形態によれば、破風下地固定板材を破風下地に固定するため、屋根頂部が急勾配である建造物に対しても短い垂下板材で対応でき、その結果として屋根頂部の勾配に対応した長さの垂下板材を揃える必要が無い。また、本実施の形態によれば、天面板材や垂下板材などの建造物に配置する部材と破風板のみ込み板材とを分けて構成するので、一体構成の場合と比べて製作が容易であり、製造過程や輸送(梱包)において同一部材を重ねた場合の所要スペースを小さくすることができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による屋根用板金役物において、破風板のみ込み板材は、垂下固定板材の上下方向の長さを、垂下板材12の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたものである。本実施の形態によれば、天面板材及び垂下板材によって破風板のみ込み板材が固定されるので、上からの荷重で破風板のみ込み板材が外れないようにすることができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第8又は第9の実施の形態による屋根用板金役物において、破風板のみ込み板材は、垂下固定板材の左右方向の長さを、垂下板材の左右方向の長さよりも短くしたものである。本実施の形態によれば、破風板のみ込み板材に用いる材料を減らすことができる。また、破風板のみ込み板材の垂下固定板材を垂下板材の折り返し部に差し込みやすくなる。
【実施例】
【0019】
以下本発明の一実施例による屋根用板金役物について説明する。
図1は本実施例による屋根用板金役物の分解斜視図である。
本実施例による屋根用板金役物は、建造物の屋根面に配置される天面板材11と、建造物の壁面に配置される垂下板材12と、垂下板材12と平行に配置されて破風下地に固定される破風下地固定板材13と、垂下板材12と破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、天面板材11の下面に取り付ける止水箱20と、野地板の開口端部に取り付ける捨水切30とを備えている。
【0020】
連接板材14の下方で、垂下板材12と破風下地固定板材13との間には、破風板のみこみ部Aを形成している。
天面板材11には、切り起こしにより天面板用開口部15を形成している。
また、天面板材11の一端には、天面板材用前面板材16と、この天面板材用前面板材16の端部から延出して折り曲げられた屋根面当接板材17を形成している。
垂下板材12は、天面板材11の他端に連接し、天面板材用前面板材16と対向している。少なくとも、天面板材11、垂下板材12、天面板材用前面板材16、及び屋根面当接板材17は、一枚の板材を折り曲げて形成されている。本実施形態においては、天面板材11、垂下板材12、破風下地固定板材13、連接板材14、天面板材用前面板材16、及び屋根面当接板材17は、一枚の板材を折り曲げて形成されている。
天面板用開口部15は、下向きランスによる切り起こしが好ましいが、下向きブリッジによる切り起こしでもよい。
【0021】
止水箱20は、少なくとも天面板用開口部15の下方に配置される底面板材21と、底面板材21の一端に立設される前面板材22と、底面板材21の他端に立設される後面板材23と、前面板材22の端部と後面板材23の端部とを連接する側面板材24とで構成している。
底面板材21には、天面板材11と底面板材21との寸法を一定に維持する支持材25を設けている。
前面板材22には、天面板用開口部15から進入して底面板材21に溜まった雨水を流出させる通水孔22aを形成している。
後面板材23は、前面板材22と対向する立ち上げ板23aと、立ち上げ板23aの端部から延出し、前面板材22の方向に折り曲げて天面板材11と当接する当接板23bと、当接板23bの端部から延出し、底面板材21の方向に折り曲げて立ち上げ板23aと対向する邪魔板23cとで構成している。立ち上げ板23aには、止水箱用開口部23dを形成している。
【0022】
天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとで、建造物の屋内と屋外との通気を行う。
邪魔板23cは、天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとの間に位置する。天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとの間に位置する邪魔板23cによって、止水箱20の防水性能を高めることができる。
支持材25は、天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとの間に位置する。天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとの間に支持材25を位置させることで、天面板用開口部15と止水箱用開口部23dとの距離を確保して、止水箱20の防水性能を高めることができる。
【0023】
捨水切30は、野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板31と、捨水切取付板31の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板32と、捨水切立ち上げ板32の端部から延出し、捨水切取付板31の方向に折り曲げた捨水切折り曲げ板33とで構成している。
【0024】
図2から図4は、本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図であり、図2は2.5寸勾配、図3は5寸勾配、図4は9寸勾配の屋根頂部に設置した状態を示している。
本実施例では片流れ屋根の建造物を示している。建造物は、柱1の上端に棟木2を設け、棟木2の上部には垂木3を斜め下方に傾斜して設けている。
垂木3の上部には野地板4を設け、野地板4の上面には屋根材5が敷設されている。
棟木2の壁面と垂木3の棟側端面には破風下地6を設けている。破風下地6の屋外側面には、破風板7が配置される。
開口8は、野地板4の棟側端部の一部に形成されている。
【0025】
天面板材11は止水箱20とともに屋根材5の屋根面に配置され、垂下板材12は建造物の壁面に配置される。破風下地固定板材13は、破風下地6にビスによって固定される。
破風下地固定板材13を破風下地6に固定した後に、破風板7が設置される。
破風板7は、破風板のみこみ部Aに上端部を挿入して設置される。
【0026】
本実施例によれば、破風板のみこみ部Aを設けることで、施工時に破風板7の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。また、破風板のみこみ部Aで破風板7の位置決めができるため施工性が向上する。
また、従来では、例えば図4に示すような屋根頂部が急勾配である建造物にあっては、図2に示すような屋根頂部が緩勾配である建造物と比較して垂下板材12を長くしなければならず、意匠面では、垂下板材12が短い方が好まれるため、屋根頂部の勾配に対応して異なる長さの垂下板材12としなければならなかったが、本実施例によれば、破風下地固定板材13を破風下地6に固定するため、図2から図4に示すように、屋根頂部が急勾配である建造物に対しても短い垂下板材12で対応でき、その結果として屋根頂部の勾配に対応した長さの垂下板材12を揃える必要が無い。
すなわち、図2から図4に示すように、天面板材11と垂下板材12との角度を屋根頂部の傾斜にあわせて変更するだけで施工が行える。
【0027】
本実施例による屋根用板金役物は、立ち上げ板23aに最も近い天面板用開口部15の端部から止水箱用開口部23dまでの距離Lを30mm?90mmとしている。天面板材11の一端から他端までの距離Hを190mm、止水箱20の深さDを20mmとして、風速40m/s、水量240mm/hの条件で雨水浸入試験を行った結果、距離Lが28mmでは若干の水の浸入があったが、距離Lが46mmでは水の浸入はなく十分な防水性能が認められた。なお、距離Lが90mmを超えると、止水箱用開口部23dから開口8までの通気路が確保できなくなるため好ましくない。
従って、立ち上げ板23aに最も近い天面板用開口部15の端部から止水箱用開口部23dまでの距離Lを30mm以上、好ましくは46mm以上とすることで止水箱20の防水性能を確保できる。
【0028】
捨水切30は、捨水切取付板31を野地板4と屋根材5との間に配置して、野地板4の開口端部4aに取り付ける。捨水切30を野地板4に設置した状態では、捨水切折り曲げ板33の高さ、すなわち捨水切立ち上げ板32の高さを屋根材5の屋根面高さ以下とする。
このように、捨水切30を野地板4に設置した状態で、捨水切折り曲げ板33が屋根面より下方に位置することで、止水箱20の少なくとも一部を野地板4の開口端部4aよりも棟側に位置させることができ、異なる勾配の屋根頂部に対して、野地板4の開口8の位置を変えることなく、更に同一寸法の屋根用板金役物で施工できる。
【0029】
本実施例による屋根用板金役物は、建造物に設置した状態で、止水箱20の少なくとも一部が野地板4の開口端部4aよりも棟側に位置させることができる。
本実施例によれば、野地板4の開口端部4aの位置に制約されることなく止水箱20を配置できるため、異なる勾配の屋根頂部に対して、野地板4の開口8の位置を変えることなく、更に同一寸法の屋根用板金役物で施工できる。
【0030】
図5は、本発明の他の実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図である。
本実施例は、図1から図4に示す実施例と異なり、止水箱20を含む換気機能を備えていない屋根用板金役物である。
本実施例で示すように、換気機能を備えていない屋根用板金役物であっても、建造物の屋根面に配置される天面板材11と、建造物の壁面に配置される垂下板材12と、垂下板材12と平行に配置されて破風下地6に固定される破風下地固定板材13と、垂下板材12と破風下地固定板材13とを連接する連接板材14とを備え、連接板材14の下方で、垂下板材12と破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部を配置することで、施工時に破風板7の厚みを確保するための調整笠木を用いることなく、施工を完了することができる。
【0031】
なお、図1から図4に示す実施例では、片流れ屋根に対応した屋根用板金役物として説明したが、止水箱20を含む換気機能については、垂下板材12が無く、一対の天面板材11を対称に建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であっても適用できる。
【0032】
図6は、本発明の更に他の実施例による屋根用板金役物を建造物の下屋根頂部に設置した状態を示す断面図である。なお、上記実施例と同一部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
本実施例では、垂木3の棟側端面には外壁下地材7xが配置されている。
本実施例は、図1から図4に示す実施例と異なり、垂下板材12を、上方に折り曲げて外壁下地材7xの外表面に配置している。垂下板材12の外表面には、屋根下葺材7yや外装材7zが更に配置される。
本実施例で示すように、止水箱20を含む換気機能を備えた屋根用板金役物は、下屋根頂部にも適用することができる。
【0033】
次に図7?図10を用いて、本発明の更に他の実施例による屋根用板金役物を説明する。図7は屋根用板金役物を示す断面図、図8及び図9は屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図、図10は屋根用板金役物を示す斜視図である。なお、上記実施例と同一部材には同一の符号を付けて説明を省略する。
本実施例は、図1に示す実施例と異なり、破風板のみこみ部Aは、破風板のみ込み板材50によって形成される。
図7(a)は破風板のみ込み板材50を垂下板材12に差し込む前の状態を示している。破風板のみ込み板材50は、破風下地固定板材13と、連接板材14と、連接板材14を介して破風下地固定板材13と平行に配置される垂下固定板材51とからなり、一枚の板材を折り曲げて形成されている。
天面板材11、垂下板材12、天面板材用前面板材16、及び屋根面当接板材17は、一枚の板材を折り曲げて形成されている。また、垂下板材12には、垂下板材12の下端を内側(建造物の壁面側)に折り返した折り返し部40が形成されている。折り返し部40の折り返した面は、折り返す前の面と平行である。折り返し部40の上下方向の長さαは、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβの約10?20%である。
また、破風板のみ込み板材50を垂下板材12に差し込むことができるように、垂下固定板材51の上下方向の長さγは、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβよりも短くしている。垂下固定板材51が短すぎると上からの荷重で破風板のみ込み板材50が外れてしまうおそれがあるので、垂下固定板材51の上下方向の長さγは、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβよりも1mm?5mm程度短くすることが好ましく、その範囲の中でも約2mmが最も好ましい。垂下固定板材51の上下方向の長さγを、垂下板材12の外側面の上下方向の長さβよりも約2mm短くすることによって、破風板のみ込み板材50を垂下板材12に固定でき、上からの荷重で外れないようにすることができる。
また、破風下地固定板材13の上下方向の長さδは、垂下固定板材51の上下方向の長さγよりも約20%長くしている。
また、垂下固定板材51の上端と破風下地固定板材13の上端に連接する連接板材14は、垂下固定板材51の上端から破風下地固定板材13の上端に向かうにつれて下方に傾斜するように設けている。
【0034】
上記のように形成された破風板のみ込み板材50は、図7(b)に示すように、垂下固定板材51を折り返し部40に差し込むことによって垂下板材12と脱着自在に係止される。
このように、天面板材11や垂下板材12などの建造物に配置する部材と、破風板のみ込み部Aを形成する部材とが分離した2ピースの部材とすることで、図1に示す実施例のような一体構成の場合と比べて、製作性、生産性、施工性、及び加工性が向上する。また、個々の部材の製作が容易となり、製造過程や輸送(梱包)において同一部材を重ねた場合の所要スペースを小さくすることができる。
【0035】
図8(a)は、本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図、図8(b)は、本実施例による屋根用板金役物のうち破風板のみ込み板材50を使用せずに建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図である。本実施例では片流れ屋根の建造物を示している。
図8(a)に示すように、破風下地固定板材13は、破風下地6にビス又は釘によって固定される。
また、破風板のみ込み板材50は垂下板材12とは別部材として構成されているので、図8(b)に示すように、破風板のみ込み板材50を折り返し部40に差し込まない(破風板のみ込み板材50を使用しない)ようにして、従来の施工と同様に、破風下地6にビス又は釘によって破風板7を固定することもできる。
【0036】
図9は本実施例による屋根用板金役物を建造物の屋根頂部に設置した状態を示す断面図であり、図9(a)は2.5寸勾配、図9(b)は9寸勾配の屋根頂部に設置した状態を示している。
連接板材14の傾斜は、棟の勾配が異なっても対応できるように、急勾配(9寸勾配)としている。したがって、図9(a)に示すような緩勾配(2.5寸勾配)であっても、図9に示すような急勾配(9寸勾配)であっても、同じ破風板のみ込み板材50で対応することができる。
【0037】
図10は本実施例による屋根用板金役物を示す斜視図であり、破風板のみ込み部材50が垂下板材12に係止された状態を示している。
破風下地固定板材13及び垂下固定板材51の左右方向の長さは、図10(a)に示すように、垂下板材12の左右方向の長さと同じとしてもよいが、図10(b)に示すように、垂下板材12の左右方向の長さよりも短い短尺とし、その短尺の破風板のみ込み板材50を、破風下地6にビス又は釘によって固定される箇所のみに配置するようにした場合には、破風板のみ込み板材50に用いる材料を減らすことができる。また、破風板のみ込み板材50を垂下板材12に差し込みやすくなり施工性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、屋根頂部の異なる勾配に対応できる。
【符号の説明】
【0039】
3 垂木
4 野地板
4a 開口端部
5 屋根材
6 破風下地
7 破風板
8 開口
11 天面板材
12 垂下板材
13 破風下地固定板材
14 連接板材
15 天面板用開口部
20 止水箱
21 底面板材
22 前面板材
23 後面板材
23a 立ち上げ板
23c 邪魔板
23d 止水箱用開口部
24 側面板材
25 支持材
30 捨水切
31 捨水切取付板
32 捨水切立ち上げ板
33 捨水切折り曲げ板
40 折り返し部
50 破風板のみ込み板材
51 垂下固定板材
A 破風板のみこみ部
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】(削除)
【請求項2】
建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段と
を備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部15の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材22と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材23と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材24と
で構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から延出し、前記前面板材の方向に折り曲げて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から延出し、前記底面板材の方向に折り曲げて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部23dを形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする屋根用板金役物。
【請求項3】
建造物の屋根面に配置される天面板材11を有し、前記建造物の片流れ屋根頂部または下屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記天面板材11の下面に取り付ける止水箱20を備え、
前記天面板材11には、切り起こしにより形成された天面板用開口部15を有し、
前記止水箱20を、
少なくとも前記天面板用開口部の下方に配置される底面板材21と、
前記底面板材の一端に立設される前面板材と、
前記底面板材の他端に立設される後面板材と、
前記前面板材の端部と前記後面板材の端部とを連接する側面板材と
で構成し、
前記後面板材は、
前記前面板材と対向する立ち上げ板と、
前記立ち上げ板の端部から前記前面板材の方向に折り曲げられて前記天面板材と当接する当接板と、
前記当接板の端部から前記底面板材の方向に折り曲げられて前記立ち上げ板と対向する邪魔板と
で構成し、
前記前面板材には、前記天面板用開口部から進入して前記底面板材に溜まった雨水を流出させる通水孔を形成し、
前記立ち上げ板には、止水箱用開口部を形成し、
前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部とで、前記建造物の屋内と屋外との通気を行い、
前記邪魔板が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置し、
前記建造物に設置した状態で、前記止水箱20の少なくとも一部が野地板の開口端部4aよりも棟側に位置し、
前記野地板の前記開口端部4aに取り付ける捨水切30を備え、
前記捨水切を、
前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板31と、
前記捨水切取付板31の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板32と
で構成し、
前記捨水切30を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板32の棟側の端部の高さが前記屋根面高さ以下であり、前記捨水切立ち上げ板32の棟側の前記端部が前記止水箱20の下方に位置することを特徴とする屋根用板金役物。
【請求項4】
前記天面板材と前記底面板材との寸法を一定に維持する支持材25を設け、
前記支持材25が、前記天面板用開口部と前記止水箱用開口部との間に位置することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の屋根用板金役物。
【請求項5】
前記立ち上げ板に最も近い前記天面板用開口部の端部から、前記止水箱用開口部までの距離を30mm?90mmとしたことを特徴とする請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根用板金役物。
【請求項6】
野地板の開口端部に取り付ける捨水切30を備え、
前記捨水切を、
前記野地板と屋根材との間に配置される捨水切取付板31と、
前記捨水切取付板の端部から立ち上げた捨水切立ち上げ板32と
で構成し、
前記捨水切30を前記野地板に設置した状態で、前記捨水切立ち上げ板の高さが前記屋根面高さ以下であることを特徴とする請求項2に記載の屋根用板金役物。
【請求項7】
前記建造物に設置した状態で、前記止水箱の少なくとも一部が野地板の開口端部4aよりも棟側に位置することを特徴とする請求項2に記載の屋根用板金役物。
【請求項8】
建造物の屋根頂部に設置する屋根用板金役物であって、
前記建造物の屋根面に配置される天面板材11と、
前記建造物の壁面に配置される垂下板材12と、
前記垂下板材12と平行に配置される破風下地固定板材13と、
前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13とを連接する連接板材14と、
前記破風下地固定板材13を破風下地6に固定するビス又は釘等の固定手段と
を備え、
前記連接板材14の下方で、前記垂下板材12と前記破風下地固定板材13との間に破風板のみこみ部Aを形成し、
前記天面板材11と前記垂下板材12との角度を前記屋根頂部の傾斜にあわせて変更でき、
前記破風板のみこみ部Aに破風板7の上端部が配置され、
前記固定手段は、前記破風板7を固定せず、
前記垂下板材12には、前記垂下板材12の下端を前記建造物の前記壁面側に折り返した折り返し部を形成し、
前記破風板のみこみ部Aは、前記破風下地固定板材13と、前記連接板材14と、前記連接板材14を介して前記破風下地固定板材13と平行に配置される垂下固定板材とからなる破風板のみ込み板材によって形成し、
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材を前記折り返し部に差し込むことによって前記垂下板材と脱着自在に係止されることを特徴とする屋根用板金役物。
【請求項9】
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の上下方向の長さを、前記垂下板材12の上下方向の長さよりも1mm?5mm短くしたことを特徴とする請求項8に記載の屋根用板金役物。
【請求項10】
前記破風板のみ込み板材は、前記垂下固定板材の左右方向の長さを、前記垂下板材12の左右方向の長さよりも短くしたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の屋根用板金役物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-08-29 
出願番号 特願2015-103312(P2015-103312)
審決分類 P 1 651・ 161- YAA (E04D)
P 1 651・ 121- YAA (E04D)
P 1 651・ 537- YAA (E04D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 津熊 哲朗前田 敏行油原 博  
特許庁審判長 井上 博之
特許庁審判官 小野 忠悦
前川 慎喜
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5977396号(P5977396)
権利者 株式会社トーコー
発明の名称 屋根用板金役物  
代理人 清水 善廣  
代理人 清水 善廣  
代理人 辻田 幸史  
代理人 太田 貴章  
代理人 太田 貴章  
代理人 辻田 幸史  
代理人 阿部 伸一  
代理人 阿部 伸一  

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