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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 A61M 審判 一部申し立て 2項進歩性 A61M |
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管理番号 | 1333259 |
異議申立番号 | 異議2017-700756 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-08-01 |
確定日 | 2017-10-06 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6072453号発明「医薬品注射器用プランジャーキット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6072453号の請求項1?4、11、12に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第6072453号の特許は、平成24年7月24日(優先日平成23年7月25日)に特許出願され、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、その請求項1?4、11、12に係る特許について、特許異議申立人角田欣也により特許異議の申立てがされたものである。 2.本件発明 本件特許請求の範囲の請求項1?4、11、12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明4」、「本件発明11」、「本件発明12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?4、11、12に記載された事項により特定されるとおりのものである。 3.特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、証拠として特開2009-165524号公報(以下「甲第1号証」という。)、国際公開2009/128265号(以下「甲第2号証」という。)、特開2007-111547号公報(以下「甲第3号証」という。)、特開2007-289677号公報(以下「甲第4号証」という。)を提出し、本件発明1?3、12は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、請求項1?3、12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張し、また、本件発明4、11は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?4号証)に基いて当業者がその出願前に容易に発明をすることができたものであるから、請求項4、11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している(特許異議申立書第22頁2?9行)。 4.各甲号証の記載 (1)甲第1号証 (1-1)本件特許の出願の優先日より前である平成21年7月30日に公開されたものであって、「プレフィルドシリンジ用プランジャおよびそのガスケットからの抜け防止方法」の発明に関して次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、薬液を充填したプレフィルドシリンジのガスケットに装着して用いられるプレフィルドシリンジ用プランジャに関する。 【背景技術】 【0002】 従来、薬液を人体に投与する際に、薬液が既に充填されたシリンジタイプの容器(以下、プレフィルドシリンジという)が、その利便性からよく利用されている。プレフィルドシリンジは、内部に薬液(注射液)が充填された注射筒の内部に雌ネジ部を有するゴム製のガスケットが挿入されており、このガスケットに雄ネジ部を有する硬質プラスチック製のプランジャを装着して使用する(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 上述したプレフィルドシリンジは、ガスケットからプランジャを外した状態で輸送されることが多い。そして、プランジャは、薬液を人体に投与する前に注射筒内のガスケットに装着される。装着方式としては、装着後にプランジャを外す必要がないときは嵌め込み式も使用されるが、使用後にプランジャを外す必要がある場合や、薬液投与時に一旦プランジャを手前に引く操作が要求される場合にはネジ式が用いられる。 【0004】 プレフィルドシリンジに充填された薬液を投与する際は、注射針が血管に達していることを確認するため、一旦プランジャを手前に引いて血液を注射筒内に引き入れる、いわゆる血管確保が行われる。 【0005】 【特許文献1】特開2001-29467号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 金属同士を接合するネジにおいては、中心軸とネジ山の側面との角度は、雄ネジおよび雌ネジのいずれも前後方向共45度が一般的である。しかし、ネジの材料が弾性体の場合は、ネジによる接合を確実にするために、中心軸とネジ山の側面との角度はより小さいことが望まれる。プレフィルドシリンジでは、弾性体で形成されたガスケットと硬質材料で形成されたプランジャとの組み合わせであるため、ネジの中心軸とネジ山の側面の角度は45度より小さくなっている。 【0007】 例えば、図3に示すように、プレフィルドシリンジ用プランジャ50の雄ネジ部のネジ山52の形状は、進行方向(ガスケットへの装着時に進む方向)側の側面54とプランジャ50の回転軸56に直交する面58とのなす角度Xと、後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)側の側面60とプランジャ50の回転軸56に直交する面58とのなす角度Yとが等しく形成されている。角度X、Yは、例えば23°、15°などとされる。また、ガスケットの中心軸とネジ山の側面の角度は、前後方向共23度付近が一般的である。」 (1-2)段落【0002】?【0003】の記載から、甲第1号証には「ゴム製のガスケットに装着して用いられる硬質プラスチック製のプレフィルドシリンジ用プランジャであって、薬液が充填された注射筒の内部にガスケットが挿入され、雌ネジ部を有するガスケットに雄ネジ部を有するプランジャがネジ式で装着されるもの」が記載されているものと認められる。 (1-3)段落【0007】の「例えば、図3に示すように、プレフィルドシリンジ用プランジャ50の雄ネジ部のネジ山52の形状は、進行方向(ガスケットへの装着時に進む方向)側の側面54とプランジャ50の回転軸56に直交する面58とのなす角度Xと、後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)側の側面60とプランジャ50の回転軸56に直交する面58とのなす角度Yとが等しく形成されている。角度X、Yは、例えば23°、15°などとされる。」との記載及び図3の記載からみて、「プランジャの雄ネジ部のネジ山は、進行方向(ガスケットへの装着時に進む方向)及び後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直交する面とのなす角度(X及びY)がいずれも23度又は15度の台形ネジ」とすることが記載されていると認められる。 (1-4)段落【0007】の「また、ガスケットの中心軸とネジ山の側面の角度は、前後方向共23度付近が一般的である。」との記載からみて、ガスケットの中心軸とネジ山の側面の角度に関し、前方向と後方向とのいずれについても23度付近とすることが記載されていると認められる。 上記(1-1)?(1-3)の記載から、甲第1号証には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「甲第1号証発明」という。)。 「ゴム製のガスケットに装着して用いられる硬質プラスチック製のプレフィルドシリンジ用プランジャであって、薬液が充填された注射筒の内部にガスケットが挿入され、雌ネジ部を有するガスケットに雄ネジ部を有するプランジャがネジ式で装着されるもので、プランジャの雄ネジ部のネジ山は、進行方向(ガスケットへの装着時に進む方向)及び後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直交する面とのなす角度(X及びY)がいずれも23度又は15度の台形ネジであるプレフィルドシリンジ用プランジャ。」 (2)甲第2号証 本件特許の出願の優先日より前である2009年10月22日に国際公開されたものであって、「シリンジ」の発明に関して、プランジャーロッドとガスケットの外れ防止機構を備えた、プレフィルドシリンジ用プランジャーにおいて、雄ネジ部27及び雌ネジ部47のねじ山の形状はいずれも台形ねじであること、雄ネジ部27が円柱状のねじ軸と該ねじ軸から外側に螺旋状に突出するねじ山を有すること、雌ネジ部47が円柱状のねじ軸空間と該ねじ軸空間から螺旋状に形成された凹部としてのねじ溝を有する点が記載されている。 (3)甲第3号証 本件特許の出願の優先日より前である平成19年5月10日に公開されたものであって、「外れ防止機構を備えたプランジャー」の発明に関して、 プランジャーロッドとガスケットの外れ防止機構を備えた、プレフィルドシリンジ用プランジャーにおいて、オネジ21及びメネジ11のねじ山の形状はいずれも台形ねじであること、オネジ21が円柱状のねじ軸と該ねじ軸から外側に螺旋状に突出するねじ山を有すること、メネジ11が円柱状のねじ軸空間と該ねじ軸空間から螺旋状に形成された凹部としてのねじ溝を有する点が記載されている。 (4)甲第4号証 本件特許の出願の優先日より前である平成19年11月8日に公開されたものであって、「プランジャーロッドとガスケットとの結合構造及びシリンジ」の発明に関して、 先端部から突出する柱状部を有するプランジャーロッドと、上記柱状部が挿入される有底筒状に形成されたガスケットとの結合構造において、雄ネジ部23及び雌ネジ部33のねじ山の形はいずれも台形ねじであること、雌ネジ部33が円柱状のねじ軸と該ねじ軸から外側に螺旋状に突出するねじ山を有すること、雌ネジ部33が円柱状のねじ軸空間と該ねじ軸空間から螺旋状に形成された凹部としてのねじ溝を有する点が記載されている。 5.判断 (1)本件発明1について (1-1)対比・判断 本件発明1と甲第1号証発明とを対比する。 甲第1号証発明は、「プランジャの雄ネジ部のネジ山」の「後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直交する面とのなす角度」を「23度又は15度」とするものであり、そして、90度から上記角度を差し引いた角度は、本件発明1の雄ねじにおける「追い側フランクがピストンを引く方向に対してなす角α」に相当する。 しかしながら、甲第1号証発明には、本件発明1の雌ねじにおける「追い側フランクに対峙する溝フランクがピストンを引く方向に対してなす角β」に対応する「ネジ山の中心軸とネジ山の側面とのなす角度」を上記「プランジャの雄ネジ部のネジ山」の「後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直交する面とのなす角度」である「23度又は15度」に対してどのように設定するか特定されていない。 したがって、甲第1号証発明は、本件発明1の「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、 前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」との発明特定事項を有するとはいえない。 (1-2)異議申立人の主張について 特許異議申立人は、甲第1号証には、プランジャの雄ネジ部のネジ山について「角度X、Yは、例えば、23°、15°などとされる」と記載され、ガスケットの雌ネジ部のネジ山について「前後方向共23度付近が一般的である」と記載されていることをもって、進行方向及び後退方向におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直行する面とのなす角度をいずれも15度とするとともに、ガスケットの雌ネジ部のネジ山について、ネジ山の中心軸とネジ山の側面とのなす角度が前後方向共23度とすることは、一般に行われ得る事項であると理解できるとした上で、「ゴム製のガスケットに装着して用いられる硬質プラスチック製のプレフィルドシリンジ用プランジャであって、薬液が充填された注射筒の内部にガスケットが挿入され、雌ネジ部を有するガスケットに雄ねじ部を有するプランジャがネジ式で装着されるもので、プランジャの雄ネジ部のネジ山は、進行方向(ガスケットへの装着時に進む方向)及び後退方向(ガスケットからの脱着時に進む方向)におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直行する面とのなす角度(X及びY)がいずれも15度の台形ねじであり、ガスケットの雌ネジ部のネジ山は、ネジ山の中心軸とネジ山の側面とのなす角度が前後方向共23度であるプレフィルドシリンジ用プランジャ。」の発明が実質的に記載されていると主張している(第11頁12行?12頁12行)。 しかしながら、段落【0006】及び【0007】の記載をみても、上記雄ねじを有するプランジャーロッドにどのような雌ねじを有するピストンを組み合わせるのか、あるいは、上記雌ねじを有するピストンにどのような雄ねじを有するピストンを組み合わせるのかについて、具体的な記載はされていない。つまり、同段落の記載のみでは、雄ねじと雌ねじが相補的であるのか、非相補的であるのかを明確に特定することはできない。 したがって甲第1号証には、進行方向及び後退方向におけるネジ山の側面とプランジャの回転軸に直行する面とのなす角度をいずれも15度とするとともに、ガスケットの雌ネジ部のネジ山について、ネジ山の中心軸とネジ山の側面とのなす角度が前後方向共23度とすることは、一般に行われ得る事項であることについて裏付ける記載も示唆もあるとはいえない。 一方、特許異議申立人の提出した甲第2?4号証を見ると、むしろ相補的な雄ネジ部及び雌ネジ部で構成したガスケットとプランジャとの螺合構造が一般的であるとも考えられる。 これらを考慮すると、段落【0006】及び【0007】の記載から把握できる事項は、プレフィルドシリンジの雄ねじと雌ねじを相補的とし、かつ、側面の角度を45°より小さくすることに限られると考えられる。 以上のとおりであるから、本件発明1の「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており」という技術的特徴は、甲第1号証に記載されているとはいえない。 よって、異議申立人の上記主張は理由がない。 (1-3)小括 以上のとおり、甲第1号証発明は、本件発明1の「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、 前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」との発明特定事項を有するとはいえないから、本件発明1は、甲第1号証発明と同一であるとはいえない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1についてさらに「前記角αと前記角βとが、それぞれ90?150度である」点を限定したものであるが、(1)に記載したように、本件発明1は甲第1号証発明と同一でないので、本件発明1を更に限定した本件発明2は、その詳細を検討するまでもなく、甲第1号証発明と同一であるとはいえない。 (3)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1についてさらに「前記注射筒内において前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを押す方向に摺動させたとき、ピストンの前記雌ねじが弾性変形して、前記進み側フランクと、前記進み側フランクに対峙する溝フランクとが、前記進み側フランクの第3の部分において、前記進み側フランクの第4の部分におけるよりも強く接触する」点を限定したものであるが、(1)に記載したように、本件発明1は甲第1号証発明と同一でないので、本件発明1を更に限定した本件発明3は、その詳細を検討するまでもなく、甲第1号証発明と同一であるとはいえない。 (4)本件発明12について 本件発明12は、「注射筒」に、本件発明1の「医薬品注射器用プランジャーキット」を「螺合させた状態で摺動自在に該注射筒内に嵌入」した「医薬注射器」であるが、(1)に記載したように、本件発明1は甲第1号証発明と同一でないので、本件発明1の「医薬品注射器用プランジャーキット」を発明特定事項とする本件発明12は、その詳細を検討するまでもなく、甲第1号証発明と同一であるとはいえない。 (5)本件発明4について 本件発明4は、本件発明1において「前記雌ねじおよび前記雄ねじの一方が台形ねじ形状を有し、他方が丸ねじ形状、角ねじ形状または前記台形ねじ形状と台形の傾斜部分の傾斜角が異なる別の台形ねじ形状のいずれかを有する」点を限定したものである。 ところで、上記「(1)本件発明1について」の(1-1)対比・判断に記載したとおり、甲第1号証発明は、本件発明1の「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、 前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」との発明特定事項を有していないから、本件発明4と甲第1号証発明とは、少なくとも上記発明特定事項を有しているか否かにおいて相違する。 一方、甲第1?4号証には、上記4(1)?(4)に記載した事項が認められるにすぎないから、いずれにも「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」点が記載されているとは認められない。 したがって、甲第1?4号証の記載に基づき、甲第1号証発明について、本件発明4の上記発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得るものとすることはできない。 よって、本件発明4は、上記甲第1?4号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。 (6)本件発明11について 本件発明11は、本件発明1において「前記ピストンは前記プランジャーロッドと螺合する前記雌ねじを有し、前記雌ねじは、円柱状のねじ軸空間と前記ねじ軸空間から前記ピストンの外周方向に向けて螺旋状に形成された凹部からなるねじ溝とを有しており、前記プランジャーロッドは前記ピストンと螺合する前記雄ねじを有し、前記雄ねじは、円柱状のねじ軸と前記ねじ軸から外側に螺旋状に突出する前記ねじ山とを有する」点を限定したものである。 ところで、上記「(1)本件発明1について」の(1-1)対比・判断に記載したとおり、甲第1号証発明は、本件発明1の「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、 前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」との発明特定事項を有していないから、本件発明11と甲第1号証発明とは、少なくとも上記発明特定事項を有しているか否かにおいて相違する。 一方、甲第1?4号証には、上記4(1)?(4)に記載した事項が認められるにすぎないから、いずれにも「前記角αと前記角βとが異なる角度を有して、前記雌ねじと前記雄ねじとが互いに非相補的な基準溝形と基準山形をそれぞれ有しており、前記ピストンと前記プランジャーロッドを螺合させて前記注射筒内に摺動自在に嵌入させた状態で前記プランジャーロッドを介して前記ピストンを引く方向に摺動させたとき、前記ピストンの雌ねじが弾性変形して、前記追い側フランクと、前記追い側フランクに対峙する溝フランクとが、前記追い側フランクの第1の部分において、前記追い側フランクの第2の部分におけるよりも強く接触する」点が記載されているとは認められない。 したがって、甲第1?4号証の記載に基づき、甲第1号証発明について、本件発明11の上記発明特定事項を有するものとすることは当業者が容易になし得るものとすることはできない。 よって、本件発明11は、上記甲第1?4号証に記載された技術的事項から当業者が容易になし得るものではない。 以上より、本件発明1?3、12は、甲第1号証に記載された発明と同一であるとはいえない。また、本件発明4、11は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術(甲第2?4号証)に基いて当業者がその出願前に容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1?4、11、12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1?4、11、12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-09-28 |
出願番号 | 特願2012-163786(P2012-163786) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
Y
(A61M)
P 1 652・ 113- Y (A61M) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 藤田 和英、姫島 卓弥 |
特許庁審判長 |
高木 彰 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 二階堂 恭弘 |
登録日 | 2017-01-13 |
登録番号 | 特許第6072453号(P6072453) |
権利者 | 株式会社大協精工 |
発明の名称 | 医薬品注射器用プランジャーキット |
代理人 | 菅野 重慶 |
代理人 | 阿部 寛志 |
代理人 | 近藤 利英子 |