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審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て不成立) A47C |
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管理番号 | 1333277 |
判定請求番号 | 判定2017-600027 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2017-07-13 |
確定日 | 2017-10-16 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第5920790号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面及びその説明書に示す「アイラッシュ専用チェア」は、特許第5920790号の請求項1?3に係る発明の技術的範囲に属し、特許第5920790号の請求項4に係る発明の技術的範囲に属さない。 |
理由 |
第1 請求の趣旨 本件判定の請求の趣旨は、イ号製品である図面並びにその説明書に示すアイラッシュ専用チェア(以下「イ号物件」という。)は、特許第5920790号発明の技術的範囲に属しない、との判定を求めるものである。 第2 手続の経緯及び本件特許発明 1.手続の経緯 平成25年11月 1日 特許出願(特願2013-228149号) 平成28年 4月22日 特許登録 平成29年 7月13日 本件判定請求書の提出 同 年 9月 1日 判定請求答弁書の提出(被請求人) 2.本件特許発明 本件判定請求では、請求人は本件特許の請求項1?4に係る発明(以下それぞれを「本件特許発明1」?「本件特許発明4」という。)についての判定を求めており、本件特許発明の構成、目的及び効果は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて以下のとおりである。 (1)本件特許発明の構成 本件特許発明を分説すると次のようになる(以下「構成要件(A1)」などという。)。 なお、下記構成要件(A3)は、肘置き部と施術部との関係を特定しようとするものであるから、一つの構成要件として分節した。 【請求項1】 (A1)被施術者の頭部を載置する施術部が形成されているアイメイク施術台において、 (A2)前記施術部の周囲であって、載置される前記被施術者の頭部の左右位置、もしくは左右位置及び上方位置に、施術者の肘を固定可能な肘置き部を設け、 (A3)この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され、水平を軸にして前記施術部に対して回動可能であることを特徴とする (A4)アイメイク施術台。 【請求項2】 (A5)前記肘置き部は、クッション性を有することを特徴とする請求項1に記載のアイメイク施術台。 【請求項3】 (A6)リクライニング機構が付与されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアイメイク施術台。 【請求項4】 (A7)請求項1から請求項3の何れか1項に記載のアイメイク施術台を用い、施術者の肘を前記肘置き部に固定してアイメイク施術を行う、 ことを特徴とするアイメイク施術方法。 (2)本件特許発明の目的及び効果 本件特許明細書の記載によれば、本件特許発明は、「施術者が肘を固定することができ、施術が安定する肘置き部を設け、これにより長時間になる施術であっても、その姿勢を安定させて身体への負担を軽減し、かつ、一台で数多くの施術が可能となるアイメイク施術台を提供すること」(段落【0006】)を目的とし、「被施術者の頭部を載置する施術部が形成されているアイメイク施術台において、施術部の周囲であって、載置される被施術者の頭部の左右位置、もしくは左右位置及び上方位置に、施術者の肘を固定可能な肘置き部を構成している。したがって、施術者は、自ら脇を閉める必要がなく、肘置き部により肘を固定させてアイメイク等の施術することができるので、施術が安定するとともに、施術効率を向上させることができる。さらに、施術時の姿勢が安定するから、施術者の身体への負担を軽減することもできる。」(段落【0010】)、「肘置き部が水平を軸にして回動可能である構成とすれば、肘置き部を回動させることで、施術者の好みにあった角度での肘の固定が実現する。さらに、目じり部の施術を行うとき等、やや特殊な施術パターン(施術者の手の動き)が必要となる際にも、これに対応した肘の固定が可能となって、一台で様々な施術を実施することができる。肘置き部がクッション性を有する構成とすれば、肘置き部に肘の荷重をかけることで確実な固定が望め、施術の安定性を高めて施術効率を確実に向上させることができる。さらに、施術者の身体への負担も激減すると期待される。また、リクライニング機構が付与されている構成とすれば、例えば、被施術者が座った状態と仰向けになった状態とで行うアイメイク等の施術を、被施術者に施術台の移動を強いることなく一台で済ませることができることとなる。」(段落【0011】)、及び「そして、本発明に係るアイメイク施術方法は、上記アイメイク施術台を用い、施術者の肘を肘置き部に固定してアイメイク等の施術を行う構成であるので、施術者の施術が安定するとともに、施術効率が向上し、かつ身体への負担を軽減することもでき、かつ、様々な施術パターン(施術者の手の動き)に対応したアイメイク施術方法として提供することができる。」(段落【0012】)という効果を奏するものである。 第3 当事者の主張の概要 1.請求人の主張の概要 イ号物件は、本件特許発明1の「構成要件(A1)、及び(A4)の「アイメイク施術台」」、及び「構成要件(A3)の「この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され」」を充足しない。その他の構成要件は充足する。 本件特許発明1の「この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され」との構成要件(A3)は、本件発明の進歩性に関して最も重要な構成要件であるところ、本件特許明細書にその技術的意義が全く開示されておらず、後から意見書において効果が主張されているに過ぎず、出願の経過を鑑みれば、本件特許の図面の記載に基づいて厳密に解釈されてべきであるから、構成要件(A3)の「この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され」は、「この肘置き部が、施術部の背面において、当該施術部の上方部に連結され」と解釈するべきである。 したがって、イ号物件は、本件特許発明1?4の技術的範囲に属さない。 2.被請求人の主張の概要 イ号物件は,本件特許発明1?3の構成要件(A1)ないし(A7)を充足する。 本件特許発明1の「この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され」との構成要件(A3)を「この肘置き部が、施術部の背面において、当該施術部の上方部に連結され」と解釈する旨の請求人の主張は、実施例限定解釈であって、その限定解釈を基礎づける事実はなく、出願経過を考慮しても、明細書、及び図面に限定して解釈しなければならない理由はない。 したがって、イ号物件は、本件特許発明1?3の技術的範囲に属する。 また、イ号物件は、本件特許発明4の技術的範囲に属さないことは認める。 第4 イ号物件 イ号製品の説明書(添付資料8)に示された図面により、以下の事項が看取できる。 1.図1?7に示された椅子(101)は、その構造、及び当事者間に争いのないことから、アイラッシュ専用チェア(101)であること。 2.図1より、アイラッシュ専用チェア(101)であって、アイラッシュ専用チェア(101)には被施術者の頭部を載置する施術部(113)が形成されていること。 3.図1より、施術部(113)の周囲には、載置される被施術者の頭部の左右位置及び上方位置に、施術者の肘を固定可能な肘置き部(114)を設けていること。 4.図2?7(特に図3、4参照。)より、肘置き部(114)が、施術部(113)の左右側面の上方部において、一対の回動部材(142R、142L)により連結されていること。 5.図2?7より、肘置き部(114)が、回動部材(142R、142L)により、水平を軸にして施術部(113)に対して回動可能であること。 6.図1より、肘置き部(114)は、クッション性を有すること。 7.図1、4より、アイラッシュ専用チェア(101)には、リクライニング機構が付与されていること。 上記「1.」?「7.」の事項からみて、イ号物品の構成を、本件特許発明の構成要件の分説と対応するように分説すると、イ号物品は次の構成を具備するものである(以下「構成要件(a1)」などという。)。 (a1)被施術者の頭部を載置する施術部(113)が形成されているアイラッシュ専用チェア(101)において、 (a2)前記施術部(113)の周囲であって、載置される前記被施術者の頭部の左右位置及び上方位置に、施術者の肘を固定可能な肘置き部(114)を設け、 (a3)この肘置き部(114)が前記施術部(113)の左右側面の上方部に一対の回動部材(142R、142L)により連結され、水平を軸にして前記施術部(113)に対して回動可能であり、 (a5)肘置き部(114)は、クッション性を有し、 (a6)リクライニング機構が付与されている (a4)アイラッシュ専用チェア(101)。 第5 対比・判断 1.本件特許発明1とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件(A1)について 本件特許明細書の「本発明は、理美容院等でのアイラッシュ、アイブロウ等をはじめとするアイメイク分野で活用されるアイメイク施術台及びアイメイク施術方法に関し」(段落【0001】)、及び「アイメイク施術とは、理美容院等でのアイラッシュ、アイブロウ等をはじめとするアイメイクの分野で、施術者が行う様々な施術を含んだ総称をいう。」(段落【0015】)の記載されているように、アイメイク施術とは、アイラッシュを包含するものであるから、イ号物件の「アイラッシュ専用チェア(101)」は、本件特許発明1の「アイメイク施術台」に包含される。 また、イ号物件の「被施術者の頭部」、及び「施術部(113)」は、その構造、機能、作用からみて、それぞれ本件特許発明1の「被施術者の頭部」、及び「施術部」に相当する。 したがって、イ号物件は構成要件(A1)を充足する。 (2)構成要件(A2)について イ号物件の「施術者の肘」、及び「肘置き部(114)」は、その構造、機能、作用からみて、本件特許発明1の「施術者の肘」、及び「肘置き部」に相当する。 したがって、イ号物件は構成要件(A2)を充足する。 (3)構成要件(A3)について イ号物件の肘置き部(114)は、施術部(113)の左右側面の上方部に一対の回動部材(142R、142L)により連結されているから、「肘置き部(114)は、施術部(113)の上方部に連結されている」といえ、また、「水平を軸にして前記施術部(113)に対して回動可能である」ものである。 したがって、イ号物件は構成要件(A3)を充足する。 なお、請求人は、上記「第3 1.」のとおり、構成要件(A3)の「この肘置き部が前記施術部の上方部に連結され」は、「この肘置き部が、施術部の背面において、当該施術部の上方部に連結され」と解釈するべきである旨主張しているが、構成要件(A3)が請求項に係る発明の進歩性に関して最も重要な構成要件であるか否かであることや当該構成要件の技術的意義や効果の有無が、明細書、及び図面の記載された事項に限定して解釈しなければならない理由とはならない。また、本件の出願経過をみても、上記のように限定して解釈しなければならない理由はない。さらに、本件特許発明の目的及び効果は前記「2.本件特許発明 (2)本件特許発明の目的及び効果」のとおりであるところ、これらの目的を達し、効果を得るために、肘置き部が施術部の背面において施術部に連結されていることが必要であるとも解されないから、構成要件(A3)を「この肘置き部が、施術部の背面において、当該施術部の上方に連結され」と解釈することはできない。 したがって、請求人の上記主張に理由はない。 (4)構成要件(A4)について 上記(1)のとおりであるから、イ号物件は構成要件(A4)を充足する。 (5)小括 上記(1)?(4)に示すように、イ号物件は、本件特許発明1を充足し、本件特許発明1の技術範囲に属する。 2 本件特許発明2とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件(A5)について 上記「1.」のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明2の構成要件(A5)の「請求項1に記載のアイメイク施術台」との構成要件を充足する。 また、イ号物件の肘置き部(114)は、クッション性を有している。 したがって、イ号物件は構成要件(A5)を充足する。 (2)小括 上記(1)に示すように、イ号物件は、本件特許発明2を充足し、本件特許発明2の技術範囲に属する。 3 本件特許発明3とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件(A6)について 上記「1.」,及び「2.」のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明3の構成要件(A6)の「請求項1又は請求項2に記載のアイメイク施術台」との構成要件を充足する。 また、イ号物件には、リクライニング機構が付与されている。 したがって、イ号物件は構成要件(A6)を充足する。 (3)小括 上記(1)に示すように、イ号物件は、本件特許発明3を充足し、本件特許発明3の技術範囲に属する。 4 本件特許発明4とイ号物件の各構成要件との対比・判断 (1)構成要件(A7)について イ号物件は、アイラッシュ専用チェア(101)という物であるのに対し、本件特許発明4は、アイメイク施術方法という方法の発明であるから、両者は、カテゴリーが異なるものである。 したがって、イ号物件は構成要件(A7)を充足しない。 なお、イ号物件が構成要件(A7)を充足しないことは、被請求人も認めるところである(判定請求答弁書12頁19?21行)。 (2)小括 上記(1)に示すように、イ号物件は、本件特許発明4を充足しない。 第5 むすび したがって、イ号物件は、本件特許発明1?3の技術範囲に属し、本件特許発明4の技術範囲に属さない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2017-10-12 |
出願番号 | 特願2013-228149(P2013-228149) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YB
(A47C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大谷 謙仁 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
黒瀬 雅一 藤本 義仁 |
登録日 | 2016-04-22 |
登録番号 | 特許第5920790号(P5920790) |
発明の名称 | アイメイク施術台及びアイメイク施術方法 |
代理人 | 冨田 信雄 |
代理人 | 田上 洋平 |
代理人 | 松下 昌弘 |