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審決分類 |
審判 判定 同一 属さない(申立て不成立) C02F |
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管理番号 | 1333280 |
判定請求番号 | 判定2017-600021 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2017-05-15 |
確定日 | 2017-10-11 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4418872号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | イ号図面ならびにその説明書に示す「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」は、特許第4418872号発明の技術的範囲に属しない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件に係る手続の経緯は、以下のとおりである。 平成12年 9月 8日 特許出願(特願2000-314452号) 平成21年12月11日 設定登録 平成29年 5月15日付 本件判定請求書の提出 平成29年 6月 8日付 判定請求書副本送付 平成29年 7月12日付 判定請求答弁書(被請求人) 2 請求の趣旨 請求人の請求の趣旨は、判定請求書の全趣旨からみて、イ号図面ならびにその説明書(なお、判定請求書の添付書類は「イ号説明書」と表記されているので、以下、「イ号説明書」という。)に示す型番JDT-22、JDT-37A、JDT-75、JDT-150で示される「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」の使用態様は、特許第4418872号(以下、「本件特許」という。)の請求項1、4及び5に記載された発明の技術的範囲に属し、同「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」の構成態様は、本件特許の請求項7及び8に記載された発明の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 3 本件特許発明について 本件特許の請求項1?9に係る発明は、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」という。甲第1号証)の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであり、このうち、請求人が上記判定を求める請求項1、4、5、7及び8に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」、「本件特許発明2」、「本件特許発明3」、「本件特許発明4」、「本件特許発明5」という。)は、次のとおりである。 なお、当審において、構成要件毎に分説し、符号A?Mを付し、それぞれを「構成要件A」などという。 【請求項1】 A 油水分離槽(50)と、収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)を構成した油水分離装置(210、220)の収納品交換方法に於いて、 B 前記収納品(341、342、343)の機能が低下した前記槽本体(61、71、81)だけを所定の場所に送り、前記収納品(341、342、343)を交換することを特徴とする C 収納品交換方法。 【請求項4】 D 前記槽本体(61、71、81)には、前記槽本体(61、71、81)を運搬する際にドレン水が漏洩しないように漏洩防止手段(171、172、173、181、182、183、390)を配設したことを特徴とする E 請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の収納品交換方法。 【請求項5】 F 前記漏洩防止手段(171、172、173、181、182、183、390)は、前記槽本体(61、71、81)の出入口となる部分に盲栓(390)を配設するか、または、前記槽本体(61、71、81)の出入口に接続しているビニール製の清水管(171、172、173、181、182、183)を切断して管端を加熱することで密閉の状態にしたものであることを特徴とする G 請求項4に記載の収納品交換方法。 【請求項7】 H 油水分離槽(50)と、収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)を構成した油水分離装置(210、220)に於いて、 I 前記収納品(341、342、343)である油を吸着する油吸着材(342)またはエマルジョン化した油と水の結合を離脱させるアミン化合物を前記油吸着材(342)に付着させたアミン付油吸着材(341)または臭いを吸着する活性炭(343)の何れかを単独でまたは複合して交換可能に収め、機能が低下した前記槽本体(61、71、81)だけを交換可能になっていて、 J 前記槽本体(61、71、81)には、前記槽本体(61、71、81)を運搬する際にドレン水が漏洩しないように漏洩防止手段(171、172、173、181、182、183、390)を配設したことを特徴とする K 油水分離装置。 【請求項8】 L 前記漏洩防止手段(171、172、173、181、182、183、390)は、前記槽本体(61、71、81)の出入口となる部分に盲栓(390)を配設するか、または、前記槽本体(61、71、81)の出入口に接続しているビニール製の清水管(171、172、173、181、182、183)を切断して管端を加熱することで密閉の状態にしたものであることを特徴とする M 請求項7に記載の油水分離装置。 4 イ号装置及びイ号方法について (1)請求人の提出した証拠方法 イ号説明書に加え、請求人の提出した証拠方法は、次のとおりである。 甲第1号証 特許第4418872号公報(本件特許公報) 甲第2号証 カタログ(イ号物件) 甲第3号証 取扱説明書(イ号物件) 甲第4号証の1 簡易設置マニュアル(イ号物件) 甲第4号証の2 同上 甲第4号証の3 同上 甲第4号証の4 同上 甲第5号証 webサイト(イ号物件) 甲第6号証 一般刊行物 和田洋六著「よくわかる最新水処理技術の基本としくみ」 甲第7号証 一般刊行物 オルガノ(株)開発センター編「トコトンやさしい水処理の本」 (2)イ号説明書及び甲号証の記載内容 ア イ号説明書には、次の図1?図4が記載されている。 (甲第3号証より掲載) (甲第3号証より掲載) (甲第5号証より掲載) (甲第2号証より掲載) ここで、図1は、甲第3号証の取扱説明書第4頁の記載に基づく「エアコンプレッサ用ドレン処理(清水化装置)装置」の側面図であり、図2は、甲第3号証の取扱説明書第5頁の記載に基づく「エアコンプレッサ用ドレン処理(清水化装置)装置」の分解・接続図であり、図3は、甲第5号証のWebサイトの記載に基づく「エア・コンプレッサ専用ドレン水清水化装置」の型番JDT-22、JDT-37A、JDT-75、JDT-150の写真であり、図4は、甲第2号証のカタログ第3頁に基づく「エア・コンプレッサ専用ドレン処理装置(清水化装置)」の処理槽交換システム図である。 イ イ号説明書の図1には、「エアコンプレッサ用ドレン処理(清水化装置)装置」が、「加圧槽」と、その下部に連結した「処理槽」とを有することが記載されている。そして、甲第2号証の「特徴」(第2頁)には、「特別な管理は不要(浮上油を抜取るなどの特別な作業はありません)」と記載され、甲第2号証の「構造」(第2頁)には、「加圧槽」が「ドレン水とエアの分離」を行うこと、及び、「処理槽」が「吸着材エレメント、活性炭(特殊処理)で構成」され、加圧槽から送られたドレン水に対して、「粗粒状油の吸着」、「微粒子油の結合」、「結合した油の吸着」を行うことが記載され、また、甲第3号証の「●各部の説明(名称と働き)」(第4頁)には、「処理槽:特殊処理をした高性能吸着材でドレン水中の乳化した微細な油分を滞りなく吸着します。」、及び、「加圧槽:ドレン水を押し出すための弱い圧力(エア圧、水圧)の誘導、発生用に設けられています。」と記載されている。 ウ イ号説明書の図2には、「加圧槽」と「処理槽」の分離及び接続が可能であることが記載され、また、図4には、交換用処理槽がメーカーから発送されて、使用済み処理槽をメーカーに返却することが記載されている。そして、甲第3号証の「処理槽の交換方法」(第8頁)には、「<1>(当審注:○囲み数字を示す。以下同様。)交換用処理槽(メーカーより発送)が手元にあることを確認し、5ページの組立方法に従って、使用済み処理槽の上部に固定されている加圧槽を取り外し、この加圧槽を交換用処理槽の上部に付け替えて、固定して下さい。」、及び、「<2> 使用済み処理槽は、再利用(リユース)する為、交換用処理槽を梱包していたダンボールに詰め、必ずメーカーに送り返してください。(注)このとき、使用済み処理槽トップには必ずストップ栓をして下さい。」と記載されている。 エ イ号説明書の図2には、「処理槽」が「ストップ栓」と「白テープ」を備えることが記載されている。そして、甲第3号証の「●設置」(第5頁)には、「<3> 次に、サイホン止め穴(φ1)をふさいでいる白色のテープを剥がして下さい。」、及び、「<4> 処理槽トップ、フタ部にある「ドレン導入穴」にねじ込んであるストップ栓(2個)をはずします。」と記載されている。 オ このような構造は、甲第4号証の1?甲第4号証の4の設置簡易マニュアルによれば、イ号説明書の図3に示された、型番JDT-22、JDT-37A、JDT-75、JDT-150の「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」が備えているといえる。 (3)イ号物件の特定に係る請求人の主張 ア 請求人は、イ号説明書の図1?図4から、イ号「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」の構成態様及び使用態様に関して、以下の特徴を有していることを主張している(イ号説明書第1頁)。 (ア)イ号「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」は、加圧槽と、収納品を収めている処理槽と、から成り、油分解吸着槽または油分解槽及び油吸着槽として機能する。 (イ)加圧槽は、エアコンプレッサで発生したドレン水を圧縮空気と共に取り入れ可能なバッファーの働きをするものである。 (ウ)処理槽は、その内部に油吸着材と活性炭から成る収納品が収められている。 (エ)加圧槽と処理槽とは分離及び接続が可能であって、収納品の機能が低下した処理槽だけを所定の場所に送ることで、収納品の交換が可能となっている。 (オ)処理槽の出入口となる部分には赤色ストップ栓又は漏れ止め白色テープが配設されており、運搬の際にドレン水の漏洩を防止すべく機能する。 イ 請求人は、上記アの主張を踏まえて、イ号物件〔第一の構成態様〕及び〔第一の使用態様〕をそれぞれ次のとおりに認定している。 ・イ号物件〔第一の構成態様〕 a2:収納品が収められていない加圧槽と、収納品を収めている処理槽を備えた、〔油分解吸着槽〕または〔油分解槽及び油吸着槽〕を構成するエアコンプレッサ用のドレン処理装置(油水分離装置)であって、 b2:機能が低下した前記処理槽だけを交換可能になっていて、 d2:前記処理槽には、赤色ストップ栓または漏れ止め白色テープを配設したことを特徴とする c2:ドレン処理装置(油分分離装置)。 ・イ号物件〔第一の使用態様〕 a1:収納品が収められていない加圧槽と、収納品を収めている処理槽を備えた、〔油分解吸着槽〕または〔油分解槽及び油吸着槽〕を構成するエアコンプレッサ用のドレン処理装置(油水分離装置)の収納品交換方法に於いて、 b1:前記収納品の機能が低下した前記処理槽だけを所定の場所へ送り、前記収納品を交換することを特徴とする c1:収納品交換方法。 ウ 請求人の上記主張を検討する。 (ア)加圧槽と処理槽とからなる「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」が、油分解吸着槽または油分解槽及び油吸着槽として機能している旨を主張している(上記ア(ア)参照)が、上記(2)イに示したとおり、加圧槽でドレン水とエアの分離が行われ、処理槽で、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着が行われていることから、処理槽が油分解吸着槽または油分解槽及び油吸着槽として機能しており、エアコンプレッサ専用ドレン処理装置が全体として、油分解吸着槽または油分解槽及び油吸着槽として機能しているといえない。 (イ)処理槽の出入口となる部分に赤色ストップ栓又は漏れ止め白色テープが配設されている旨を主張している(上記ア(オ)参照)が、上記(2)エに示したとおり、処理槽のドレン導入穴にストップ栓が配設され、サイホン止め穴に白色テープが配設されることのみが示されており、処理槽の出口にストップ栓を配設することや、処理槽の出入口に漏れ止め白色テープを配設することは示されていない。 (ウ)以上のとおり、請求人の主張を採用することはできないから、イ号については、当審にて新たに認定する。 (4)当審によるイ号装置及びイ号方法の認定 上記(2)の記載から、型番JDT-22、JDT-37A、JDT-75、JDT-150で示される「エアコンプレッサ専用ドレン処理装置」の構成態様(以下「イ号装置」という。)及び使用態様(以下、「イ号方法」という。)は、それぞれ以下のとおりのものであると認める。 なお、a、b、c、h、i、j、kは、イ号装置及びイ号方法を本件特許発明1及び4に対応する様に分説し、各分説に付した符号であり、それぞれ「構成a」などという。 ・イ号装置 h 加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽とを備えた、エアコンプレッサ用のドレン処理装置であって、 i 加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めた処理槽とは分離及び接続が可能であって、使用済み処理槽を交換可能になっていて、 j 処理槽のドレン導入穴は、ストップ栓で塞ぐことが可能であり、サイホン止め穴は、漏れ止め白色テープで塞ぐことが可能である、 k ドレン処理装置。 ・イ号方法 a 加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽を備えた、エアコンプレッサ用のドレン処理装置の処理槽の交換方法に於いて、 b 加圧槽から、使用済み処理槽を取り外し、交換用処理槽を取り付け、使用済み処理槽は、メーカーに送り返して再利用する c 処理槽の交換方法。 5 対比、判断 (1)本件特許発明1について ア イ号方法の構成が本件特許発明1の各構成要件を充足するかを検討する。 (ア)構成要件Aについて 本件特許発明1の構成要件Aは、「油水分離槽(50)と、収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)を構成した油水分離装置(210、220)の収納品交換方法」である。 そして、本件特許明細書に、「油水分離装置210は、油水分離槽50と二つの油分解吸着槽60から構成され」(段落【0018】)、「油分解吸着槽60は、収納品341、342、343を収納している槽本体61と、槽本体61を地面に固定する架台321と、槽本体61を架台321に固定する4本のナット305から構成され」(段落【0022】)、及び、「油水分離装置220が、油水分離槽50と油分解槽70と油吸着槽80で構成され」ること(段落【0045】)が記載されているから、上記構成要件Aは、「油水分離槽(50)」と、「収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)」とから構成した「油水分離装置(210、220)」に対して、その収納品を交換する方法であると認められる。 さらに、本件特許明細書に、「油水分離槽50の油浮上分離室50bで、水より軽い油を水面に浮かせ、・・・油や各種の異物を除去された綺麗なドレン水が水貯槽室50cに送り込まれる・・・、水貯槽室50cに送り込まれたドレン水は、・・・、出口管50fと清水管171を経由して油分解吸着槽60に送り込まれる。」(段落【0035】?【0036】)と記載されていることから、上記構成要件Aの「油水分離槽(50)」は、ドレン水から水より軽い油を浮上させて分離除去するものと認められる。 一方、イ号方法の構成aは、「加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽を備えた、エアコンプレッサ用のドレン処理装置の処理槽の交換方法」である。 ここで、上記構成aの「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽」は、上記構成要件Aの「収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)」と認められる。 また、上記構成aの「エアコンプレッサ用のドレン処理装置」は、甲第5号証に、「エア・コンプレッサ専用 ドレン水清水化装置「ドレントーレ」は、エア・コンプレッサから出るドレン水を油と水に分離し清水化することにより、環境負荷低減に貢献します。」と記載されていることから、上記構成要件Aの「油水分離装置」と認められる。 しかしながら、上記構成aの「加圧槽」は、上記4(2)イによれば、ドレン水とエアの分離を行い、ドレン水を処理槽に押し出すためのものであり、ドレン水から水より軽い油を浮上させて分離除去するものでないから、上記構成要件Aの「油水分離槽(50)」に該当しない。 また、上記構成aの「処理槽」は、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行うものであって、上記4(2)イによれば、ドレン水から水より軽い油を浮上させて分離除去するものでないから、「処理槽」が、構成要件Aの「油水分離槽(50)」と同様な機能を備えているものでもない。 さらに、イ号方法には、その他に、構成要件Aの「油水分離槽(50)」に該当する構成は見当たらない。 よって、イ号方法は、本件特許発明1の構成要件Aを充足しない。 なお、請求人は、「加圧槽」が、本件特許発明1における油水分離槽と同様に、ドレン水を一定水量貯留可能とすることでドレン水に含まれる油分のうち浮上油の製造が可能であり、「加圧槽」は「油水分離槽(50)」と認められる旨を主張している(判定請求書第7頁第2行?第9頁第6行)が、「加圧槽」に設けられた「液面レベルゲージ」について、甲第3号証の「●各部の説明(名称と働き)」(第4頁)には、「<16> 液面レベルゲージ……目詰まりが出てきた場合、液面上昇を事前に察知します。」と記載され、甲第2号証の第4頁の表には、「寿命の判断」は「加圧槽のレベルゲージが赤テープに達した時」と記載されていることからみて、ドレン処理装置で油水分離を定常的に実施している場合には、加圧槽内にドレン水は貯留されているとはいえず、加圧槽内で浮上油が作成されるものでないから、請求人の上記主張は妥当でない。 (イ)構成要件Bについて イ号方法の構成bは、「加圧槽から、使用済み処理槽を取り外し、交換用処理槽を取り付け、使用済み処理槽は、メーカーに送り返して再利用する」ことであり、加圧槽から使用済み処理槽を取り外し、処理槽をメーカーに送り返して再利用するものであるから、メーカーにおいて、処理槽に収められた収納品である「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭」が新しいものに交換されて、処理槽の筐体は再利用されるものといえる。 よって、イ号方法の構成bは、本件特許発明1の構成要件Bを充足する。 (ウ)構成要件Cについて イ号方法の構成cの「処理槽の交換方法」は、上記(イ)で検討したとおり、処理槽に収められた収納品である「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭」が新しいものに交換されるものであるから、本件特許発明1の構成要件Cを充足する。 イ 以上のとおり、イ号方法は、少なくとも構成要件Aを充足しないから、本件特許発明1の技術的範囲に属しない。 (2)本件特許発明2及び3について イ号方法は、本件特許発明1の技術的範囲に属しないのであるから、本件特許発明1に対して他の構成要件を付加したものである本件特許発明2及び3の技術的範囲にも属しないことは明らかである。 (3)本件特許発明4について ア イ号装置の構成が本件特許発明4の各構成要件を充足するかを検討する。 (ア)構成要件Hについて 本件特許発明4の構成要件Hは、「油水分離槽(50)と、収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)を構成した油水分離装置(210、220)」である。 そして、上記(1)ア(ア)で検討したと同様に、上記構成要件Hは、「油水分離槽(50)」と、「収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)」とから構成した「油水分離装置(210、220)」であり、「油水分離槽(50)」は、ドレン水から水より軽い油を浮上させて分離除去するものであると認められる。 一方、イ号装置の構成hは、「加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽とを備えた、エアコンプレッサ用のドレン処理装置」である。 ここで、上記構成hの「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めており、加圧槽から送られたドレン水に対して、粗粒状油の吸着、微粒子油の結合、結合した油の吸着を行う処理槽」は、上記構成要件Hの「収納品(341、342、343)を収めている槽本体(61、71、81)を備えた、油分解吸着槽(60)、または油分解槽(70)及び油吸着槽(80)」と認められる。 しかしながら、上記(1)ア(ア)で検討したと同様に、上記構成hの「加圧槽」は、ドレン水とエアの分離を行い、ドレン水を処理槽に押し出すためのものであり、ドレン水から水より軽い油を浮上させて分離除去するものでないから、上記構成要件Hの「油水分離槽(50)」に該当しない。 また、上記(1)ア(ア)で検討したと同様に、上記構成hの「処理槽」が、構成要件Hの「油水分離槽(50)」と同様な機能を備えているものでもない。 さらに、イ号装置には、その他に、構成要件Hの「油水分離槽(50)」に該当する構成は見当たらない。 よって、イ号装置は、本件特許発明4の構成要件Hを充足しない。 (イ)構成要件Iについて イ号装置の構成iは、「加圧槽と、特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭を収めた処理槽とは分離及び接続が可能であって、使用済み処理槽を交換可能になってい」ることであり、「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭」は、「油を吸着する油吸着材(342)」または「臭いを吸着する活性炭(343)」と認められ、そして、この「特殊処理した吸着材エレメント及び活性炭」は交換可能に「処理槽」に納められ、さらに、この「処理槽」だけが交換可能となっているといえるから、イ号装置の構成iは、本件特許発明4の構成要件Iを充足する。 (ウ)構成要件Jについて イ号装置の構成jは、「処理槽のドレン導入穴は、ストップ栓で塞ぐことが可能であり、サイホン止め穴は、漏れ止め白色テープで塞ぐことが可能である」ことであり、「ストップ栓」及び「白色テープ」は、運搬の際にドレン導入穴とサイホン止め穴からドレン水が漏洩することを防止する「漏洩防止手段」と認められるから、イ号装置の構成jは、本件特許発明4の構成要件Jを充足する。 (エ)構成要件Kについて イ号装置の構成kの「ドレン処理装置」は、甲第5号証に、「エア・コンプレッサ専用 ドレン水清水化装置「ドレントーレ」は、エア・コンプレッサから出るドレン水を油と水に分離し清水化することにより、環境負荷低減に貢献します。」と記載され、「油水分離装置」と認められるから、イ号装置の構成kは、本件特許発明4の構成要件Kを充足する。 イ 以上のとおり、イ号装置は、少なくとも構成要件Hを充足しないから、本件特許発明4の技術的範囲に属しない。 (4)本件特許発明5について イ号装置は、本件特許発明4の技術的範囲に属しないのであるから、イ号装置が、本件特許発明4に対して他の構成要件を付加したものである本件特許発明5の技術的範囲にも属しないことは明らかである。 6 むすび 以上のとおりであるから、イ号方法及びイ号装置は、本件特許発明1?5の技術的範囲に属しない。 よって、結論のとおり判定する。 |
判定日 | 2017-09-28 |
出願番号 | 特願2000-314452(P2000-314452) |
審決分類 |
P
1
2・
1-
ZB
(C02F)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増田 亮子 |
特許庁審判長 |
新居田 知生 |
特許庁審判官 |
大橋 賢一 宮澤 尚之 |
登録日 | 2009-12-11 |
登録番号 | 特許第4418872号(P4418872) |
発明の名称 | 収納品交換方法および油水分離装置 |
代理人 | 福田 信雄 |
代理人 | 特許業務法人あーく特許事務所 |