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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63B |
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管理番号 | 1333508 |
審判番号 | 不服2017-1748 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-06 |
確定日 | 2017-10-30 |
事件の表示 | 特願2016-113974「ボール打撃具の製造方法及び当該方法で使用する測定用ボール打撃具」拒絶査定不服審判事件〔請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年6月8日の出願であって、平成28年8月31日付けで拒絶理由が通知され、同年9月28日付けで手続補正がされ、同年11月2日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という)がされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同年同月7日)、これに対し、平成29年2月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、その後、当審において同年8月8日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という)が通知され、同年9月14日付けで手続補正がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成29年9月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものと認められる。本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、順に「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は以下のとおりである。 「【請求項1】 重量及び重心を変更するための重りを取り付けることができ且つグリップエンドから20?50cmの範囲に歪みセンサーを備え、前記歪みセンサーが歪みの数値を測定し、前記歪みの数値が遠心力の数値に対応することを特徴とするボール打撃具。 【請求項2】 歪みセンサーにより測定された数値を表示するための表示部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のボール打撃具。 【請求項3】 バット、ゴルフクラブ、テニスラケット、バトミントンラケット、クリケットバット及びホッケースティックから選択される、請求項1又は2に記載のボール打撃具。 【請求項4】 長さを調整するスペーサーをシャフトに取り付けることが出来るゴルフクラブである、請求項1?3のいずれか1項に記載のボール打撃具。」 第3 原査定の理由について 1.原査定の理由の概要 原査定は、平成28年8月31日付けの拒絶理由によるものであって、その概要は以下のとおりである。 「(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1 ・引用文献等 1.特開2011-142927号公報 2.実公昭50-44210号公報 ・請求項 2-5 ・引用文献等 3.特開2009-240677号公報 4.実願昭56-42773号(実開昭57-154471号)のマイクロフィルム」 2.原査定の理由の判断 (1)刊行物 ア.刊行物1 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2011-142927号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 (ア)「【0030】 センサーバット100は、図3に示すように運動学情報検出部10と、バランス調整部20と、運動学情報検出部10で検出されたデータを送信する送信部19(図示せず)と、を有する。 【0031】 運動学情報検出部10は、図5(a)に示すようにセンサーノブ部11の中に2軸のジャイロセンサ12(1)と、2軸のジャイロセンサ12(2)、2軸加速度センサ13(1)と、2軸加速度センサ13(2)と、が収められている。センサーノブの底面には、図5(b)に示すように電源ボタン15と、表示用LED16と、充電コネクタ17と、が配置されており各々が機能を発揮するように内部で設置され、電気的に接続されている。センサーノブ部11は根元部でネジ部が設けられ中空の金属製の接続部18で図3に示すバランス調整部20に連結されている。 【0032】 センサーバットの運動学情報検出部10には、3軸加速度センサおよび3軸ジャイロセンサを使用してもよい。加速度センサおよびジャイロセンサは、打球によるバット振動の影響を受けにくいバットのグリップエンド部に搭載され、加速度センサはバットの長軸回りの回転による遠心加速度の影響を除外するため、バットの長軸上に配置するのがよい。 【0033】 バランス調整部20は、図4に示すように軽金属製のいわゆる金属バット21、あるいはカーボン製のFRPバットにカウンター(C)、ミドル(M)、トップ(T)の3か所のスリットを設け、中の錘27の位置調整ができるようになっている。錘27には図4に示すようにネジ部が設けられ、ネジ部にハンドル29を結合することにより3か所のスリット中の適切な部分に錘27を配置してスイング中にも動かないように強固に固定する。そして、このように錘27の位置を変えることによって、バットの重心位置、慣性モーメントが変化する。」 (イ)「【0038】 バットの角速度・姿勢・加速度・速度・位置の算出は、図7に示すように、ジャイロセンサ12より、角速度(ローカル座標系:局所座標系ともいう)が検出される(S10)。データ解析装置500により受信された角速度データは、まず、運動学情報算出部520により、バットの初期姿勢を用いて角速度(ワールド座標系:絶対座標系ともいう)に座標変換される(S20)。つぎに、算出された角速度(ワールド座標系)からバット姿勢(ワールド座標系)が算出される(S30)。そして、再度、算出されたバット姿勢(ワールド座標系)を用いて、データ解析装置500により受信された角速度データを(ワールド座標系)に座標変換する。このように、角速度(ワールド座標系)とバット姿勢(ワールド座標系)は互いにフィードバックしながら、時々刻々計算される。また、加速度センサ13によりグリップエンド加速度(ローカル座標系)のデータが検出される(S50)。データ解析装置500により受信された加速度データは、運動学情報算出部520により、バット姿勢(ワールド座標系)を用いて、グリップエンド加速度(ワールド座標系)に座標変換される(S60)。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「運動学情報検出部と、バランス調整部と、運動学情報検出部で検出されたデータを送信する送信部と、を有し、 運動学情報検出部は、2軸のジャイロセンサ12(1)と、2軸のジャイロセンサ12(2)、2軸加速度センサ13(1)と、2軸加速度センサ13(2)と、が収められ、 加速度センサおよびジャイロセンサは、バットのグリップエンド部に搭載され、 ジャイロセンサより、角速度が検出され、 加速度センサによりグリップエンド加速度のデータが検出され、 バランス調整部は、3か所のスリットを設け、中の錘の位置調整ができるようになっている センサーバット。」 イ.刊行物2 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実公昭50-44210号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「握持部6を一側に形成したアルミニウム質その他の軽金属質本体1を中空状2として成形し、この軽金属質本体1における打撃部1aの中心部に発泡倍率の比較的大きい合成樹脂材4を位置せしめ、しかも該合成樹脂材3と軽金属質本体1との間に発泡倍率の比較的小さい合成樹脂材3を充填させて成るベースボール用バット。」(実用新案登録請求の範囲) 上記の記載事項を総合すると、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「握持部を一側に形成したアルミニウム質その他の軽金属質本体を中空状として成形し、この軽金属質本体における打撃部の中心部に発泡倍率の比較的大きい合成樹脂材を位置せしめ、しかも該合成樹脂材と軽金属質本体との間に発泡倍率の比較的小さい合成樹脂材を充填させて成るベースボール用バット。」 ウ.刊行物3 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2009-240677号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【0020】 以下に、本発明の実施の形態に係るスイング分析装置について説明する。 図1は、ゴルフクラブ200に装着された測定装置(スイング分析装置)100の正面図である。この図1に示すように、ゴルフクラブ200は、ゴルフプレヤーが把持するグリップ201と、ボールを打球するヘッド203と、グリップ201とヘッド203とを接続するシャフト202とを備えている。」 (イ)「【0025】 図6は、基板125の側面図である。図5および図6に示すように、測定装置100は、基板125の主表面129B上に半田等によって装着された加速度センサ120,121と、基板125の主表面129A上に装着された表示部112と、各種データ演算処理を行う処理部150と、リセットボタン113とを備えている。なお、処理部150、表示部112、およびリセットボタン113が設けられた基板125の主表面129Aに対して、反対側に位置する主表面129B上に加速度センサ120および加速度センサ121が設けられている。なお、主表面129Bは、シャフト202と対向しており、加速度センサ120および加速度センサ121は、処理部150や表示部112よりも、シャフト202に近接するように配置されている。加速度センサ120と加速度センサ121とは、シャフト202の中心軸線P方向(長手方向)に間隔を隔てて配置されている。表示部112は、加速度センサ120と加速度センサ121との間に配置されている。」 (ウ)「【0048】 処理部150は、変換器151,152から出力される電圧に基づいて、シャフト202のうち、各加速度センサ120および加速度センサ121が装着された部分の加速度を算出する演算部153と、演算部153からの出力データを記憶するメモリ154とを備えている。」 (エ)「【0061】 ここで、図5に示すように、測定装置100は、シャフト202の表面に装着された歪ゲージ130および歪ゲージ131を備えている。 【0062】 歪ゲージ130は、シャフト202の周面のうち、飛球方向(X軸方向)に配列する側面上に配置され、歪ゲージ131は、この飛球方向と直交する方向(Y方向)に配列する側面上に貼付されている。なお、好ましくは、歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)?15インチ(381mm)の位置に装着される。 【0063】 図8において、歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力電圧は、ブリッジ155,156を介して、増幅器157,158に入力され、その後、演算部159に出力される。演算部159は、入力された電圧に基づいて、シャフト202のうち、歪ゲージ130および歪ゲージ131が装着された部分の各歪み量を算出する。そして、各歪み量から合成歪み量を算出する。そして、この合成歪み量からシャフト202の撓み量を算出する。」 オ.「【0065】 演算部159は、算出した最大撓み量をメモリ154に出力し、メモリ154は、入力された最大撓み量を記憶する。メモリ154に記憶された最大撓み量は、図示されない表示切替部の操作によって、表示部112に表示される。この最大撓み量に基づいて、スイングテンポを判断することができ、スイングの分析を行うことができる。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「ゴルフプレヤーが把持するグリップと、ボールを打球するヘッドと、グリップとヘッドとを接続するシャフトとを備え、 測定装置が装着され、 測定装置は、加速度センサと、表示部と、各種データ演算処理を行う処理部と、リセットボタンとを備え、 処理部は、演算部と、メモリとを備え 測定装置は、シャフトの表面に装着された歪ゲージ130および歪ゲージ131を備え、 歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)?15インチ(381mm)の位置に装着され、 歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力電圧は、演算部に出力され、 演算部は、入力された電圧に基づいて、シャフトのうち、歪ゲージ130および歪ゲージ131が装着された部分の各歪み量を算出し、各歪み量から合成歪み量を算出し、この合成歪み量からシャフトの撓み量を算出し、 演算部は、算出した最大撓み量をメモリに出力し、メモリは、入力された最大撓み量を記憶し、 メモリに記憶された最大撓み量は、表示部に表示され、 この最大撓み量に基づいて、スイングテンポを判断することができ、スイングの分析を行う ゴルフクラブ。」 エ.刊行物4 原査定に係る拒絶理由で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である実願昭56-42773号(実開昭57-154471号)のマイクロフィルム(以下「刊行物4」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「以下、ゴルフ用クラブとしてゴルフ用パターの例につき実施例図によつて詳述する。第1図は本考案実施例の分解図であり、ヘツド部(1)は底面部に凹所(12)を設けてあつて調節用重り(2)をそこへ嵌合し、2本のねじ(3)によつて固定するようになつており、長さ調節用シヤフト部(5)との連結部(4)には上方に開口する雌ねじ(13)が穿設してある。」(第1ページ最下行?第2ページ第6行) 上記の記載事項を総合すると、刊行物4には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。 「ヘツド部は底面部に凹所を設けてあつて調節用重りをそこへ嵌合し、2本のねじによって固定するようになっているゴルフ用パター。」 オ.刊行物5 前置報告書で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2013-240486号公報(以下「刊行物5」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【請求項1】 スイング時にゴルフクラブのヘッドに生じる力を計測する計測システムであって、 前記ヘッド上の位置を特定できる前記ヘッドに取り付けられた少なくとも1つのヘッド識別特徴を含むゴルフクラブを撮像する、少なくとも2台の撮像装置と、 前記撮像装置により撮像されたスイング時の前記ゴルフクラブの画像から取得した前記少なくとも1つのヘッド識別特徴の位置情報に基づいて、前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力を計測する計測装置と、 を備えることを特徴とするゴルフスイングの計測システム。 【請求項2】 前記計測装置は、 前記撮像装置からスイング時の前記ゴルフクラブの画像を取得する画像取得部と、 取得された前記画像から前記少なくとも1つのヘッド識別特徴を認識し、認識された前記少なくとも1つのヘッド識別特徴の位置情報を取得する位置情報取得部と、 取得された前記位置情報に基づいて前記ヘッドに生じる遠心力および慣性力を前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力として計測する計測部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のゴルフスイングの計測システム。 【請求項3】 前記計測装置は、前記遠心力および前記慣性力を、スイングの打ち出し方向およびトゥダウン方向に分解して、前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力として計測することを特徴とする請求項2に記載のゴルフスイングの計測システム。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物5には、次の発明(以下、「引用発明5」という。)が記載されているものと認められる。 「ヘッドに取り付けられた少なくとも1つのヘッド識別特徴を含むゴルフクラブを撮像する撮像装置と、 前記撮像装置により撮像されたスイング時の前記ゴルフクラブの画像から取得した前記少なくとも1つのヘッド識別特徴の位置情報に基づいて、前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力を計測する計測装置とを備え、 前記計測装置は、 前記少なくとも1つのヘッド識別特徴の位置情報を取得する位置情報取得部と、 取得された前記位置情報に基づいて前記ヘッドに生じる遠心力および慣性力を前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力として計測する計測部と、を有し、 前記計測装置は、前記遠心力および前記慣性力を、スイングの打ち出し方向およびトゥダウン方向に分解して、前記ゴルフクラブのヘッドに生じる力として計測するゴルフスイングの計測システム。」 カ.刊行物6 前置報告書で引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平7-178210号公報(以下「刊行物6」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (ア)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 少なくともアドレスからバックスイングに入りトップに至る間の手、腕、上半身又はゴルフクラブのうちいずれか1以上に取り付けられ、該取り付け箇所の動きを検出する検出手段と、該検出手段によって検出された動きの変化をコントローラを介してプレーヤーに知らせる報知手段とを備えることを特徴とするゴルフスイング練習器。 (中略) 【請求項3】 前記検出手段によって検出される手、腕又はゴルフクラブの動きは、速度、加速度、慣性力、遠心力のうち少なくとも1以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載するゴルフスイング練習器。」 上記の記載事項を総合すると、刊行物6には、次の発明(以下、「引用発明6」という。)が記載されているものと認められる。 「手、腕、上半身又はゴルフクラブのうちいずれか1以上に取り付けられ、該取り付け箇所の動きを検出する検出手段と、該検出手段によって検出された動きの変化をコントローラを介してプレーヤーに知らせる報知手段とを備え、 前記検出手段によって検出される手、腕又はゴルフクラブの動きは、速度、加速度、慣性力、遠心力のうち少なくとも1以上であるゴルフスイング練習器。」 (2)対比 上記1.のとおり、本願発明1に対応する原査定時の請求項2に係る発明は、原査定において当業者が引用発明3及び4から容易に発明することができたとされている。そこで、本願発明1と引用発明3とを対比する。 後者の「ゴルフクラブ」は、その構造、機能、作用等からみて、前者の「ボール打撃具」に相当し、同様に「歪みゲージ」は「歪みセンサー」に相当する。 後者の「歪ゲージ130および歪ゲージ131は、グリップ側端部から約12インチ(約304mm)?15インチ(381mm)の位置に装着され」る点は、前者の「歪みセンサー」が「グリップエンドから20?50cmの範囲に備えられる点に相当する。 後者においては「歪ゲージ130および歪ゲージ131からの出力電圧は、演算部に出力され、演算部は、入力された電圧に基づいて、シャフトのうち、歪ゲージ130および歪ゲージ131が装着された部分の各歪み量を算出し、各歪み量から合成歪み量を算出」するから、「歪ゲージ130および歪ゲージ131」は「歪み量」を測定しているといえ、この点は前者の「歪みセンサーが歪みの数値を測定」することに相当する。 したがって、両者は、 「グリップエンドから20?50cmの範囲に歪みセンサーを備え、前記歪みセンサーが歪みの数値を測定するボール打撃具。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 前者が、「重量及び重心を変更するための重りを取り付けることができ」るのに対して、後者はそのようなものでない点。 [相違点2] 前者では、「(歪みセンサーが測定した)歪みの数値が遠心力の数値に対応する」のに対して、後者はそのようなものでない点。 (ウ)判断 上記相違点2について検討する。 引用発明4の「ゴルフ用パター」は、本願発明1の「ボール打撃具」に相当する。しかしながら、引用発明4は、凹部に調節用重りを嵌合するゴルフ用パターであって、「歪みの数値」や「遠心力の数値」を測定するものではない。 引用発明5は、ゴルフクラブのヘッドに生じる遠心力を測定するものであり、引用発明6は、ゴルフクラブの遠心力を検出するものであって、「ゴルフクラブ」はともに本願発明1の「ボール打撃具」に相当するから、ボール打撃具において遠心力を測定することは本出願の出願前に周知の技術であるといえる。しかしながら、歪みセンサーが測定した歪みの数値が遠心力の数値に対応することは、引用発明5及び6には開示されておらず、本出願の出願前に周知の技術であるともいえない。 引用発明1の「センサーバット」は本願発明1の「ボール打撃具」に相当し、また、「加速度センサ」は「グリップエンド加速度のデータ」を検出するから加速度を測定するといえる。しかしながら、引用発明1の「加速度センサ」及び「ジャイロセンサ」は歪みの数値を測定するものではないから、引用発明1は歪みの数値を測定するものではなく、歪みセンサーが測定した歪みの数値が遠心力の数値に対応するものでもない。 また、引用発明2も、「歪みの数値」や「遠心力の数値」を測定するものではない。 そうすると、引用発明1、2及び4ないし6は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものではないし、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、本出願の出願前に周知の技術であるともいえない。 また、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。 そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「本発明の測定用ボール打撃具は、使用者にとって最適なボール打撃具の重量及び重心をより正確に且つ容易に決定することができる。従って、本発明の測定用ボール打撃具を用いることにより、使用者にとって最適なボール打撃具を製造するために必要なデータを、容易且つ正確に収集できる。」(段落【0006】)という作用効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、当業者が引用発明3及び4に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (エ)小括 以上のとおり、本願発明1は、当業者が引用発明3及び4に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 本願発明2ないし4は、それぞれ原査定時の請求項3ないし5に係る発明に対応するものであって、本願発明1をさらに限定したものである。そうすると、本願発明2ないし4は、本願発明1と同様に、当業者が引用発明3及び4に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 第4 当審拒絶理由について 1.当審拒絶理由の概要 「この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 (1)請求項1の「歪みセンサーを備えたことを特徴とする遠心力測定用ボール打撃具」という記載は、「遠心力測定」が何を測定することを指すのかが明確でない。 (中略) よって、請求項1ないし4に係る発明は明確でない。 (2)請求項4の「請求項1?3に記載の遠心力測定用ボール打撃具」という記載は、請求項を択一的に引用していないため、請求項4がどのような発明特定事項を有するのかが明確でない。 よって、請求項4に係る発明は明確でない。」 2.当審拒絶理由の判断 平成29年9月14日にされた手続補正により、本件補正前の請求項1ないし4は上記「第2 本願発明」において摘示した請求項1ないし4のとおりにそれぞれ補正された。 このことにより、請求項1ないし4に係る発明は明確となった。 よって、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおりであるから、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-16 |
出願番号 | 特願2016-113974(P2016-113974) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(A63B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 藤井 達也 |
特許庁審判長 |
黒瀬 雅一 |
特許庁審判官 |
森次 顕 藤本 義仁 |
発明の名称 | ボール打撃具の製造方法及び当該方法で使用する測定用ボール打撃具 |
代理人 | 真柴 俊一郎 |