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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F |
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管理番号 | 1333559 |
審判番号 | 不服2017-2532 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-02-22 |
確定日 | 2017-10-31 |
事件の表示 | 特願2015-549874「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)ピアツーピア(P2P)グループを設定する機器、システム、及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年11月13日国際公開、WO2014/182877、平成28年 3月17日国内公表、特表2016-508263、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年5月8日、米国、2013年9月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成28年6月15日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年9月16日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出され、平成28年10月19日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年2月22日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 原査定の概要 原査定(平成28年10月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1-20に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.国際公開第2012/144707号 2.Wi-Fi Alliance Technical Committee P2P Task Group,Wi-Fi Peer-to-Peer(P2P) Technical Specification Version 1.2,Wi-Fi ALLIANCE,米国,2011年12月14日,53-54頁、81頁 3.特開2011-114708号公報 第3 本願発明 本願請求項1-20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明20」という。)は、平成28年9月16日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-20に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。 「 [請求項1] 第1の無線装置であって、 無線機と、 アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュールであって、前記第1の無線装置にある第1のASPに、 前記第1のASPと第2の無線装置の第2のASPとの間に少なくとも1つのASPピアツーピア(ASP-P2P)グループを設定し、前記ASP-P2Pグループは、複数の異なるセッションに及ぶ持続性P2Pグループとして常に形成され、 前記ASP-P2Pグループのグループ形成手順が実行されるべきとき、P2P能力属性の中のグループ能力マップの持続性P2Pグループビットを、前記ASP-P2Pグループが持続性P2Pグループとして形成されるべきであると示すために1の値にのみ設定する、 ようにさせる、ASPモジュールと、 を有する第1の無線装置。 [請求項2] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに前記ASP-P2Pグループの認証情報を格納させる、請求項1に記載の第1の無線装置。 [請求項3] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、前記ASP-P2P持続性グループを使用する意図の指示を有するプロビジョン発見要求を送信させる、請求項1に記載の第1の無線装置。 [請求項4] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、前記ASP-P2P持続性グループを使用することの確認の指示を有する受信したプロビジョン発見応答を処理させる、請求項1に記載の第1の無線装置。 [請求項5] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、前記ASP-P2P持続性グループを使用する意図の指示を有する受信したプロビジョン発見要求を処理させる、請求項1に記載の第1の無線装置。 [請求項6] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、前記ASP-P2P持続性グループを使用することの確認の指示を有するプロビジョン発見応答を送信させる、請求項1に記載の第1の無線装置。 [請求項7] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、P2Pインタフェースアドレスを有するプロビジョン発見メッセージと、前記ASP-P2Pグループにより使用されるべき動作チャネルと、を送信させる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の第1の無線装置。 [請求項8] 前記ASPモジュールは、前記第1のASPに、グループオーナ(GO)として前記ASP-P2P持続性グループを自立的に開始させる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の第1の無線装置。 [請求項9] 1又は複数のアンテナを有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の第1の無線装置。 [請求項10] モバイル装置である請求項1乃至6のいずれか一項に記載の第1の無線装置。 [請求項11] 第1の無線装置にある第1のアプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)により実行される方法であって、前記方法は、 前記第1のASPと第2の無線装置の第2のASPとの間に少なくとも1つのASPピアツーピア(ASP-P2P)グループを設定するステップであって、前記ASP-P2Pグループは、複数の異なるセッションに及ぶ持続性P2Pグループとして常に形成される、ステップと、 前記ASP-P2Pグループのグループ形成手順が実行されるべきとき、P2P能力属性の中のグループ能力マップの持続性P2Pグループビットを、前記ASP-P2Pグループが持続性P2Pグループとして形成されるべきであると示すために1の値にのみ設定するステップと、 を有する方法。 [請求項12] 前記ASP-P2Pグループの認証情報を格納するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項13] 前記ASP-P2P持続性グループを使用する意図の指示を有するプロビジョン発見要求を送信するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項14] 前記ASP-P2P持続性グループを使用することの確認の指示を有する受信したプロビジョン発見応答を処理するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項15] 前記ASP-P2P持続性グループを使用する意図の指示を有する受信したプロビジョン発見要求を処理するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項16] 前記ASP-P2P持続性グループを使用することの確認の指示を有するプロビジョン発見応答を送信するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項17] P2Pインタフェースアドレスと、前記ASP-P2Pグループにより使用されるべき動作チャネルと、を有するプロビジョン発見メッセージを送信するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項18] グループオーナ(GO)として前記ASP-P2P持続性グループを自立的に開始するステップ、を有する請求項11に記載の方法。 [請求項19] プロセッサに、請求項11乃至18のいずれか一項に記載の方法を実施させるコンピュータプログラム。 [請求項20] 請求項19に記載のコンピュータプログラムを記憶したコンピュータ可読記憶媒体。」 本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明である。 本願発明11は、本願発明1に対応する、「方法」の発明である。 本願発明12-18は、本願発明11を減縮した発明である。 本願発明19は、本願発明11-18いずれかに対応する、「コンピュータプログラム」の発明である。 本願発明20は、本願発明19に対応する、「コンピュータ可読記憶媒体」の発明である。 第4 引用文献、引用発明等 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、段落[0097]-[0123]に、以下の記載がある(原文は省略。訳文は、パテントファミリ文献である、特表2014-512153号公報の段落[0071]-[0084]を参照して当審訳。下線は当審付与。以下同様。) 「(訳) [0097] 図5を参照すれば、WiFi-Direct端末1(以下、端末1と称する)とWiFi-Direct端末3(以下、端末3と称する)はピアツーピアアプリケーション-1が駆動され、WiFi-Direct端末2(以下、端末2と称する)はピアツーピアアプリケーション-2が駆動されている。 [0098] ここで、各々の端末は、先に駆動されるアプリケーションからアプリケーション情報を抽出し、抽出されたアプリケーション情報にハッシュ関数を適用してサービス開示情報(呼設定チャネル、サービスタグ、情報保護証明書、リーダー擬似値)を生成する。 [0099] ここで、リーダー擬似値は、CPUクロック数が高いほど、バッテリー残量が多いほど、電力の供給を続けて受ける場合に高く生成される。 [0100] 端末1は、端末1と同一な呼設定チャネルに存在する端末2の発見に成功する(ステップ510)。 [0101] 但し、端末1のサービス情報、すなわち、サービスタグは#1、情報保護証明書はAAAであり、端末2のサービスタグは#2、情報保護証明書はBAであるため、サービス情報が互いに異なるので接続に失敗する(ステップ520,530)。 [0102] 次に、端末1は、再び端末1と同一な呼設定チャネルに存在する端末3の発見に成功する(ステップ540)。 [0103] 端末1と端末3は、サービスタグは#1、情報保護証明書はAAAとして同一であるため、自動接続に成功する(ステップ550)。 [0104] 自動接続に成功した端末1は、端末3からリーダー擬似値を受信して比較した後、リーダー擬似値が高い端末3をリーダー端末、リーダー擬似値が低い端末1をメンバー端末に設定する(ステップ560)。 [0105] ここで、仮に端末1と端末3のリーダー擬似値が同一である場合は、乱数発生アルゴリズムを用いて、同一なリーダー擬似値が発生しないまでに持続的にリーダー擬似値を再設定して、最も高いリーダー擬似値を有するピア端末を抽出し、抽出されたピアをリーダー端末に設定する。 [0106] 次に、端末1と端末3との間には、メッセージングサービス、音楽の共有、ファイルの共有、UCC(User Created Content)の共有、マルチメディアストリーミングなどを行うことになる(ステップ570)。 [0107] [0108] 図6は、本発明の一実施形態によるWiFi-Direct上でリーダーの明示的な終了の場合のリーダーの移転過程を示すフローチャートである。 [0109] 図6を参照すれば、端末1、端末2、端末3の呼設定チャネルは{1}、サービスタグは#1、情報保護証明書はAAAとして同一である。 [0110] ここで、各々の端末は、駆動されるアプリケーションからアプリケーション情報を抽出し、抽出されたアプリケーション情報にハッシュ関数を適用してサービス開示情報(呼設定チャネル、サービスタグ、情報保護証明書、リーダー擬似値)を生成する。 [0111] ここで、リーダー擬似値は、CPUクロック数が高いほど、バッテリー残量が多いほど、電力の供給を続けて受ける場合に高くマッピングされる。 [0112] 端末1は、端末1と同一な呼設定チャネルに存在する端末2の発見に成功する(ステップ605)。 [0113] 端末1と端末2は、サービス情報(サービスタグ、情報保護証明書)が同一であるので自動接続に成功し(ステップ610)、互いの端末からリーダー擬似値を受信して比較した後、リーダー擬似値が高い端末2をリーダー端末、端末1をメンバー端末に設定する(ステップ615)。 [0114] 次に、端末1と端末2との間には、メッセージングサービス、音楽の共有、ファイルの共有、UCC(User Created Content)の共有、マルチメディアストリーミングなどを行うことになる(ステップ620)。 [0115] 端末2は、リーダー端末として同一な呼設定チャネルに存在する端末3の発見に成功し(ステップ625)、サービス情報が同一であるので自動接続に成功する(ステップ630)。その後、端末3はメンバー端末となり、端末1および/または端末2とメッセージングサービス、音楽の共有、ファイルの共有、UCCの共有、マルチメディアストリーミングなどを行うことになる(ステップ635)。 [0116] 端末2は、リーダー端末の役割をする間、リーダー端末のアプリケーション-1の終了を検知した場合(ステップ640)、リーダー擬似値が高い端末3に現在接続に用いられるセキュリティーキーとネットワーク設定情報、メンバーリストなどを提供してリーダーの移転を行う(ステップ645)。 [0117] ここで、リーダー端末の明示的な終了と判断されることは、リーダー端末のアプリケーションが終了する場合の他に、リーダー端末とメンバー端末との距離が遠くなってリーダー端末の信号対干渉雑音比(SINR)が予め設定された値以下に低くなった場合、リーダー端末のバッテリー残量が通信を行う間に予め設定された値以下に低くなった場合などがある。 [0118] 次に、端末2は、端末1および端末3に接続解除メッセージを転送し、端末1および端末3との接続を解除する(ステップ650)。 [0119] 新たにリーダー端末に選出された端末3は自身の端末をリーダー端末に設定し、端末1を招待して(ステップ655)、WiFi接続を再設定した後、ファイルの共有などを行う(ステップ660)。 [0120] 上述したようにリーダー端末であった端末2が明示的に終了する場合、リーダーを端末3に移転することによって、既に接続された無線LANピアツーピアアプリケーション間のトポロジーが維持できるため、従来にリーダー端末がトポロジーから除外される場合に、既に接続されたピアツーピア接続が切れるという問題を解決することができる。 [0121] [0122] 図7は、本発明の一実施形態によるWiFi-Direct上でリーダーの暗黙的な終了の場合のリーダーの再選出過程を示すフローチャートである。 [0123] 図7を参照すれば、端末1、端末2、端末3の呼設定チャネルは{1}、サービスタグは#1、情報保護証明書はAAAとして同一である。」 したがって、関連図面と技術常識に照らし、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「WiFi-Direct端末1(以下、端末1と称する)とWiFi-Direct端末3(以下、端末3と称する)はピアツーピアアプリケーション-1が駆動され、 ここで、各々の端末は、先に駆動されるアプリケーションからアプリケーション情報を抽出し、抽出されたアプリケーション情報にハッシュ関数を適用してサービス開示情報(呼設定チャネル、サービスタグ、情報保護証明書、リーダー擬似値)を生成し、 端末1は、端末1と同一な呼設定チャネルに存在する端末3の発見に成功し(ステップ540)、 端末1と端末3は、サービスタグは#1、情報保護証明書はAAAとして同一であるため、自動接続に成功し(ステップ550)、 自動接続に成功した端末1は、端末3からリーダー擬似値を受信して比較した後、リーダー擬似値が高い端末3をリーダー端末、リーダー擬似値が低い端末1をメンバー端末に設定し(ステップ560)、 端末1と端末3との間には、メッセージングサービス、音楽の共有、ファイルの共有、UCC(User Created Content)の共有、マルチメディアストリーミングなどを行うことになる(ステップ570)、 WiFi-Direct端末1。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2は、「Wi-Fi P2P」の規格書であって、80ページ、表11には、「P2P Capability attribute」(P2P能力属性)に「Group Capability Bitmap」(グループ能力マップ)が含まれることが記載され、81ページ、表13には、「Group Capability Bitmap」(グループ能力マップ)の第1ビットが、「Persistent P2P Group」(持続性P2Pグループ)ビットであって、「The Persistent P2P Group field shall be set to 1 when the P2P Device is hosting, or intends to host, a persistent P2P Group, and set to 0 otherwise.」(持続性P2Pグループフィールドは、そのP2P端末が、持続性P2Pグループをホスティング中か、ホストを意図するならば、1にセットされ、そうでなければ、0にセットされる。)と記載されるから、「Wi-Fi P2P」規格において、P2P端末が、持続性P2Pグループの形成を望むか否かに応じて、P2P能力属性の持続性P2Pグループビットを、1か0いずれかに設定することは、本願優先日前において、周知技術であったといえる。 3.引用文献3について (1) 段落[0024]-[0029]について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落[0024]-[0029]に、以下の記載がある。 「[0024] CPU160は、通信装置のメモリ(不図示)等に記録されているプログラムを実行することで、アプリケーション層100(以下、上位層100とも称する。)、プロトコル変換層102(PCL)、接続層104(CNL)として機能する。なお、ベースバンド部150は、物理層(PHY)106として機能する。 [0025] 上位層100は、データ通信を利用する各種のサービスをユーザおよび他のプログラムに提供する。上位層100では、各種のアプリケーションが実行される。PCL102は、上位層100が生成したデータ、コマンド等を、下位層であるCNL104が処理可能なデータ形式に変換する。また、PCL102は、通信の接続確立、接続解除、デバイス認証、デバイスモードのアービトレーション、ネゴシエーション、上位層100の初期化等を行う。CNL104は、PCL102から供給されたデータをパケット化し、送信データとして物理層106に供給し、物理層106から供給されたデータからパケットを抽出し、受信データとして上位層100に供給する。物理層106は、誤り訂正機能、プリアンブルセンス機能等を有する。また、PCL102は、上位層100が利用する各種のプロトコルと、物理層106がデータ伝送のために利用するプロトコルを相互変換する。これにより、各種のプロトコルに対応して上位層100で実行されるアプリケーション間で、物理層106を介してデータ転送を行うことができる。 [0026] [2.通信装置] つぎに、本発明の実施形態に係る通信装置について説明する。図2は、通信装置のOSI層モデルを示す図である。図3は、OSI層モデルの各層のサービスアクセスポイント(SAP)を示す図である。図4は、PCLコントローラの状態遷移を示す図である。 [0027] 図2に示すように、上位層100は、OSI参照モデル上のアプリケーション層およびプレゼンテーション層に相当する。PCL102は、同様にセッション層に相当する。CNL104は、同様にトランスポート層およびデータリンク層に相当する。物理層106は、同様に物理層に相当する。なお、通信装置は、1対1通信を行うので、OSI参照モデル上のネットワーク層に相当する機能を省略することができる。上位層100は、認証情報変更部、プロトコル選択部、アプリケーション起動部として機能する。また、PCL102は、起動情報送受信部、プロトコル変換部として機能する。 [0028] 図3に示すように、PCL102は、PCLコントローラ(PCLC)110およびPCLアダプタ(PCLA)112の2つの機能ブロックに区分される。PCLC110は、初期化および基本通信(接続確立、接続解除、デバイス認証)の共通サービスを上位層100に提供する。 [0029] PCLA112は、PCLC110が通信接続を確立した後にデータ転送を行う。PCLA112は、上位層110で実行されるアプリケーションが利用するプロトコル(OBEX(OBject EXchange)、SCSI(Small Computer System Interface)、その他の汎用プロトコル)を、CNL104が処理可能なデータパケットに変換する。PCLA112は、各プロトコルのための変換モジュール114a?114zを有する。ただし、PCLC110により制御されている1つの変換モジュール114(例えば変換モジュール114z)のみがアクティブ状態となり、他のモジュールがスリープ状態となる。」 引用文献3の上記段落[0024]-[0029]の記載から、通信装置において、OSI参照モデル上のアプリケーション層およびプレゼンテーション層に相当する、各種アプリケーションが実行される「上位層100」に対して、OSI参照モデル上のセッション層に相当する「プロトコル変換層(PCL)102」が、初期化および基本通信(接続確立、接続解除、デバイス認証)の共通サービスを上位層100に提供するという、OSI参照モデルに基づく通信プロトコルの階層構成が、本願優先日前において、公知技術であったといえる。 (2) 段落[0034]について 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3には、段落[0034]に、以下の記載がある。 「[0034] アプリケーションサービス(AS)制御機能は、CNL接続されたデバイスが所定のASを決定するために、以下のフレームワークを提供する。ASとは、各デバイス上で実行されるアプリケーションの組合せにより提供されるサービスを意味する。 ・ASを決定するために必要なパラメータ要素の組合せを示すASパラメータ(ASP) ・ピアデバイス上で利用可能なASPのリストを取得するための手順、およびASPに対応する所定のアプリケーションの実行をピアデバイスに要求するための手順」 引用文献3の上記段落[0034]の記載から、各デバイス上で実行されるアプリケーションの組合せにより提供されるサービスを意味する「AS」を決定するために必要なパラメータ要素の組合せを示す用語である「ASパラメータ(ASP)」が、本願優先日前において、公知技術であったといえる。 第5 対比・判断 1.本願発明1について (1) 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 (ア) 引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」、「WiFi-Direct端末3(端末3)」は、本願発明1の「第1の無線装置」、「第2の無線装置」に相当する。 (イ) 引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」は、「WiFi-Direct」規格に基づく無線通信を行う端末であるから、「無線機」と呼べる部分を有することは、自明であるといえる。 (ウ) 引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」は、「WiFi-Direct端末1(端末3)」とともに、「ピアツーピアアプリケーション-1」を駆動することで、「メッセージングサービス、音楽の共有、ファイルの共有、UCC(User Created Content)の共有、マルチメディアストリーミングなど」を実行しているから、「WiFi-Direct端末3(端末3)」との間に「少なくとも1つのピアツーピア(P2P)グループ」を構成しているといえる。 また、「WiFi-Direct端末1(端末1)」が、上記P2Pグループ構成に関連する「モジュール」と呼べる部分を有することは、自明であるといえる。 よって、引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」は、本願発明1の第1の無線装置が、「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュールであって、前記第1の無線装置にある第1のASPに、前記第1のASPと第2の無線装置の第2のASPとの間に少なくとも1つのASPピアツーピア(ASP-P2P)グループを設定」する「ASPモジュール」を有することと、「モジュールであって、前記第1の無線装置に、第2の無線装置との間に少なくとも1つのピアツーピア(P2P)グループを設定する、ようにさせる、モジュール」を有する点で共通するといえる。 したがって、本願発明1と、引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 [一致点] 「 第1の無線装置であって、 無線機と、 モジュールであって、前記第1の無線装置に、 第2の無線装置との間に少なくとも1つのピアツーピア(P2P)グループを設定する、ようにさせる、モジュールと、 を有する第1の無線装置。」 [相違点1] 本願発明1の「第1の無線装置」は、「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュールであって、前記第1の無線装置にある第1のASPに、前記第1のASPと第2の無線装置の第2のASPとの間に少なくとも1つのASPピアツーピア(ASP-P2P)グループを設定」する、ようにさせる、ASPモジュール」を有するのに対して、引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」は、第1の無線装置の「第1のASP」と第2の無線装置の「第2のASP」との間に「ASPピアツーピア(ASP-P2P)グループ」を設定する「ASPモジュール」を備えていない点。 [相違点2] 本願発明1の「第1の無線装置」の「ASPモジュール」は、さらに、「前記ASP-P2Pグループは、複数の異なるセッションに及ぶ持続性P2Pグループとして常に形成され、前記ASP-P2Pグループのグループ形成手順が実行されるべきとき、P2P能力属性の中のグループ能力マップの持続性P2Pグループビットを、前記ASP-P2Pグループが持続性P2Pグループとして形成されるべきであると示すために1の値にのみ設定する、ようにさせる、ASPモジュール」であるのに対して、引用発明の「WiFi-Direct端末1(端末1)」は、「ASPモジュール」を備えておらず、また、「前記ASP-P2Pグループ」が持続性P2Pグループとして常に形成されるために、持続性P2Pグループビットを1の値にのみ設定していない点。 (2) 相違点についての判断 上記[相違点1]について検討する。 「第4 引用文献、引用発明等」の「2.引用文献2について」に記載のとおり、引用文献2には、「Wi-Fi P2P」規格において、P2P端末が、持続性P2Pグループの形成を望むか否かに応じて、P2P能力属性の持続性P2Pグループビットを、1か0いずれかに設定するという技術的事項が記載されている。 「第4 引用文献、引用発明等」の「3.引用文献3について」に記載のとおり、引用文献3には、 (ア) 通信装置において、OSI参照モデル上のアプリケーション層およびプレゼンテーション層に相当する、各種アプリケーションが実行される「上位層100」に対して、OSI参照モデル上のセッション層に相当する「プロトコル変換層(PCL)102」が、初期化および基本通信(接続確立、接続解除、デバイス認証)の共通サービスを上位層100に提供するという、OSI参照モデルに基づく通信プロトコルの階層構成に関する技術的事項、及び、 (イ) 各デバイス上で実行されるアプリケーションの組合せにより提供されるサービスを意味する「AS」を決定するために必要なパラメータ要素の組合せを示す用語である「ASパラメータ(ASP)」という技術的事項が記載されている。 しかしながら、引用文献2、3には、「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)」それ自体の記載がない以上、上記[相違点1]に係る本願発明1の第1の無線装置の「第1のASP」と第2の無線装置の「第2のASP」との間に「ASPピアツーピア(ASP-P2P)グループ」を設定する「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュール」という構成は、上記引用文献2-3に記載された上記技術的事項とは異なり、引用文献2-3に記載されたものではなく、当業者といえども、引用発明及び引用文献2-3に記載された技術的事項から、上記[相違点1]に係る本願発明1の第1の無線装置の「第1のASP」と第2の無線装置の「第2のASP」との間に「ASPピアツーピア(ASP-P2P)グループ」を設定する「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュール」という構成を容易に想到することはできない。 また、本願発明1の上記[相違点1]に係る、「第1の無線装置」の「アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)モジュール」が、第1の無線装置の「第1のASP」と第2の無線装置の「第2のASP」との間に、「ASPピアツーピア(ASP-P2P)グループ」を設定するという構成は、本願優先日前において周知技術であるともいえない。 したがって、上記[相違点2]について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2.本願発明2-20について 本願発明2-10は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明11は、本願発明1に対応する、「方法」の発明であり、本願発明12-18は、本願発明11を減縮した発明であり、本願発明19は、本願発明11-18いずれかに対応する、「コンピュータプログラム」の発明であり、本願発明20は、本願発明19に対応する、「コンピュータ可読記憶媒体」の発明であって、本願発明1の上記[相違点1]に係る具体的構成と同一の構成を備えるものである。 よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-20も、当業者であっても、引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-20は、当業者が引用発明、引用文献2-3に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-16 |
出願番号 | 特願2015-549874(P2015-549874) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G06F)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 雅也 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
稲葉 和生 山澤 宏 |
発明の名称 | アプリケーションサービスプラットフォーム(ASP)ピアツーピア(P2P)グループを設定する機器、システム、及び方法 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |