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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1333586
審判番号 不服2016-13972  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-09-16 
確定日 2017-10-31 
事件の表示 特願2012-268205「画像形成システム」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月26日出願公開、特開2014-115382、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成24年12月7日の出願であって,平成28年4月1日付けで拒絶理由通知がされ,同年6月1日付けで手続補正がされ,同年6月16日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年9月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ,平成29年6月9日付けで拒絶理由通知がされ,同年8月10日付けで手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願請求項1乃至10に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明10」という。)は,平成29年8月10日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
直列に接続された第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方または双方により,第1の面および第2の面を有する用紙に対して画像形成処理を実行する直列タンデム方式の画像形成システムであって,
前記第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブを実行する場合,前記第1の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第1の消耗品の使用履歴と,前記第2の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,前記第1の消耗品の劣化情報と,前記第2の消耗品の劣化情報とを比較し,前記第1および第2の画像形成装置のうち,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きくない一方に対して,画像形成処理に使用される装置の動作に関し所定の設定を行い,前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行する印刷モードを設定するとともに,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きい他方に対して,画像形成処理で使用される定着装置の定着部材と前記定着部材に圧接させた加圧部材との間の定着ニップ部における定着圧力を前記印刷モードにおける前記定着部材と前記加圧部材との間の定着ニップ部の定着圧力よりも低い圧力に設定し,前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する搬送モードを設定する動作モード設定部と,
を備える画像形成システム。
【請求項2】
前記第1の消耗品の使用履歴を取得する第1取得部と,
前記第2の消耗品の使用履歴を取得する第2取得部と,
を備え,
前記動作モード設定部は,前記第1取得部により取得された前記第1の消耗品の使用履歴と,前記第2取得部により取得された前記第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,当該第1の消耗品の劣化情報と当該第2の消耗品の劣化情報とを比較する請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記第1の消耗品の使用履歴は,前記第1の画像形成装置において画像形成処理が実行された用紙の数である請求項1または2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記第1の消耗品の使用履歴は,当該第1の消耗品の使用量である請求項1?3の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記第2の消耗品の使用履歴は,前記第2の画像形成装置において画像形成処理が実行された用紙の数である請求項1?4の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記第2の消耗品の使用履歴は,当該第2の消耗品の使用量である請求項1?5の何れか1項に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記搬送モードでは,前記定着装置に対し,前記印刷モードよりも低い定着温度が設定される請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項8】
前記印刷モードでは画像形成処理で使用される帯電装置および現像装置を動作させ,前記搬送モードでは前記帯電装置および前記現像装置を停止させる請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記印刷モードでは画像形成処理で使用される転写装置の転写部材に転写電圧を印加させ,前記搬送モードでは前記転写装置の転写部材に転写電圧を印加させない請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項10】
前記動作モード設定部は,比較の結果,前記第1の消耗品の劣化情報により表される劣化度合いと,前記第2の消耗品の劣化情報により表される劣化度合いとが同じと推定できる場合には,第1の画像形成装置と第2の画像形成装置との間で,前記印刷モードと前記搬送モードとが交互に入れ替わるようにモードを設定する請求項1に記載の画像形成システム。」

第3 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2004-249622号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0008】
図1は本発明のプリンタ構成図例である。印刷する用紙をセットする用紙カセット1と,表面または裏面を印刷を行う第一エンジン2と,裏面または表面を印刷を行う第二エンジン4と,用紙を第一プリンタエンジン2から第二プリンタエンジン4に運ぶ連結部3と,印刷物を排出するフィニッシャ部5とから構成されている。」

イ 「【0010】
例としてホストから両面印刷データが送られてくると,プリンタは指定された用紙を用紙カセット1からピックし,第一エンジン2で表面の印刷を行い,用紙を反転させ第一エンジン2から第二エンジン4に運ぶ連結部3を通り印刷を行う。第二エンジン4で裏面の印刷を行い,フィニッシャ部5から用紙は排出される。
【0011】
第一エンジン2と第二エンジン4では,印刷した枚数をカウントする機能を持っている。各エンジンのカウンタは,プリンタエンジンの画質に関わる部品の交換によってリセットされる。例えばレーザプリンタの場合は,ドラム交換によりカウンタをリセットする。」

ウ 「【0013】
片面印刷データの印刷指示があった場合,今まで印刷された第一エンジン2の印刷枚数のカウント値S100を読込む。次に,印刷された第二エンジン4の印刷枚数のカウント値S110を読込む。次に印刷された第一エンジン2の印刷枚数のカウント値S100と印刷された第二エンジン4の印刷枚数のカウント値S110を比較S120する。比較した結果,第一エンジン2で印刷した枚数の方が少ない場合は,第一エンジン2で印刷を行うS130。それ以外の場合は,第二エンジン4で印刷するS140様にする。
【0014】
このような方式にすることで,第一エンジン2と第二エンジン4が均等に使用されることが可能となり,第一エンジン2と第二エンジン4の画質差を押えることと,マシン全体としての寿命を長くすることが可能となる。」

エ 【図2】の記載から,プリンタの技術分野の常識を踏まえれば,引用文献1のプリンタは,電子写真式プリンタであることは,自明である。

したがって,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「印刷する用紙をセットする用紙カセット1と,
表面または裏面を印刷を行う第一プリンタエンジン2と,裏面または表面を印刷を行う第二プリンタエンジン4と,用紙を第一プリンタエンジン2から第二プリンタエンジン4に運ぶ連結部3と,印刷物を排出するフィニッシャ部5とから構成されている電子写真式プリンタであって,
第一プリンタエンジン2と第二プリンタエンジン4では,印刷した枚数をカウントする機能を持ち,
ホストから片面印刷データの印刷指示があった場合,今まで印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値と,印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値を読込んで,印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値と印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値を比較し,第一プリンタエンジン2で印刷した枚数の方が少ない場合は,第一プリンタエンジン2で印刷を行い,それ以外の場合は,第二プリンタエンジン4で印刷する様にすることで,第一プリンタエンジン2と第二プリンタエンジン4が均等に使用されることを可能とする電子写真式プリンタ。」
なお,引用文献1において,「プリンタエンジン」に関して,「第一プリンタエンジン2」,「第二プリンタエンジン4」,「第一エンジン2」,「第二エンジン4」の記載が混在しているため,この審決では「第一プリンタエンジン2」,「第二プリンタエンジン4」に統一した。

2.引用文献2について
また,原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開2011-201082号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
オ 「【0015】
図1は,本実施の形態に係る印刷システムの構成を示す図である。本実施の形態に係る印刷システムは,印刷制御装置としてのメインコントローラ10と,第1の印刷部12及び第2の印刷部13を含む印刷装置11とを有している。なお,図1には,第1の印刷部12及び第2の印刷部13のメカ的な構成も示されている。」

カ 「【0026】
第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々は,記録媒体としての記録用紙が搬入される搬入口40及び搬入口40から搬入された記録用紙を搬出する搬出口42を備え,前段に設けられた第1の印刷部12の搬出口42から搬出された記録用紙が後段に設けられた第2の印刷部13の搬入口40に搬送されるように接続されている。
【0027】
第1の印刷部12の前段には給紙部50が設けられ,給紙部50から第1の印刷部12の搬入口40に記録用紙が搬入される。また,第2の印刷部13の後段には排紙部52が設けられ,第2の印刷部13の搬出口42から搬出された記録用紙が収納される。」

キ 「【0032】
画像形成部32は,搬送された記録用紙に画像を形成する(すなわち,印刷する)印刷機構部であって,図1に示すように,感光体1を帯電器2により帯電し,該帯電された感光体1を露光装置2で画像データに基づいて露光し,該露光により生成された静電潜像を現像器4によりトナーを用いて現像し,該現像した画像を記録用紙に転写器5により転写して,該転写した画像を加熱ロール及び加圧ロールを有する定着器6により定着する電子写真方式の画像形成部であってもよいし,画像データに基づいて記録媒体にインク滴を吐出するインクジェット方式の画像形成部であってもよい。また,複数色のトナーを用いてカラーの画像を形成する画像形成部であってもよい。また,転写ベルトを用いて,現像された画像の一次転写を行ってから,該転写ベルトから記録用紙に二次転写を行う画像形成部32であってもよい。」

ク 「【0035】
第1の印刷部12で片面印刷を行う場合には,第1の搬送経路44に配設された画像形成部32で記録用紙を印刷してそのまま搬出口42から搬出されるが,第1の印刷部12で両面印刷を行う場合には,まず表面を印刷した後,用紙搬送部33に含まれる用紙反転部33aで,表面が印刷された記録用紙を反転させ,反転搬送経路46に該反転させた記録用紙を送り込み,反転搬送経路46から再度第1の搬送経路44に記録用紙を搬送して裏面を印刷する。」
【0036】
検知部34は,第1の印刷部12に設けられた消耗品の残量(もしくは使用量),及び交換部品の使用実績量を検知する(図1では不図示)。消耗品とは,例えば,現像器4の現像に用いられるトナー,印刷物を綴じるステープルの針等をいう。また,交換部品とは,例えば,使用済みのトナーが溜まるトナー回収ボトル,感光体1,定着器6のクリーニングウェブ(布状部材),転写ベルト,定着器6の加熱ロール等をいう。」

ケ 「【0043】
メインコントローラ10は、端末装置から印刷情報を受信すると、受信した印刷情報に
基づいてRIP処理を行う。RIP処理により生成された画像データや、第1の印刷部12及び第2の印刷部13を同期させて印刷させるための制御信号は、印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31に出力される。なお、第1の印刷部12及び第2の印刷部13のいずれか一方の印刷部で印刷を行わせる場合には、RIP処理により生成された画像データは印刷を行わせる印刷部に出力される。印刷装置11では、メインコントローラ10からの画像データ及び制御信号に基づいて印刷を実行する。また、メインコントローラ10は、予め定められた時間間隔毎に印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31に対して、検知部34の検知結果を要求する。第1の印刷部12及び第2の印刷部13の制御部31は、該要求に応じて、検知結果を記憶したメモリから検知結果を読み出してメインコントローラ10に通知する。
【0044】
印刷装置11で印刷が開始されると,メインコントローラ10は,図4に示す処理ルーチンを開始する。
【0045】
ステップ100では,印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31に対して検知結果を要求し,各々から検知結果を受け取る。
【0046】
ステップ102では,各々の検知結果に基づいて,第1の印刷部12及び第2の印刷部13のうち,消耗が進んでいる印刷部を判断する。
【0047】
ここで消耗が進んでいる印刷部とは,消耗品の残量が他方の印刷部より少ないか,交換部品の使用実績量が他方の印刷部より多い印刷部をいう。」

コ 「【0051】
ステップ104では,現在,ステップ102で消耗が進んでいると判断した印刷部で印刷中か否かを判断する。ステップ104で肯定判断した場合には,印刷装置11で実行中の印刷を停止する。そして,ステップ108で,第1の印刷部12及び第2の印刷部13の内部に残留している記録用紙を,各々の用紙搬送部33を動作させて第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々に設けられているパージ部(不図示)に排出し,消耗が進んでいない(すなわち,消耗が進んでいると判断されなかった)印刷部で,排紙部52に印刷が停止される前に排出された記録用紙のうち最後に排出された記録用紙に印刷されたページの1つ後のページから印刷が再開されるよう画像データ及び制御信号を出力し,上記消耗が進んでいると判断された印刷部では記録用紙の搬送だけを行わせ印刷が再開されないように制御信号を出力する。そして,ステップ110に進む。」

サ 「【0054】
このように,図4に示す処理ルーチンでは,第1の印刷部12と第2の印刷部13とで,消耗品の残量の差,交換部品の使用実績量の差が0となるように印刷制御される。
【0055】
なお,本処理ルーチンで行われる印刷制御では,第1の印刷部12及び第2の印刷部13の消耗度合い,すなわち消耗品の残量や交換部品の使用実績量が平均化するため,以下では,この印刷制御を平均化印刷制御という。
【0056】
これに対して,消耗品の残量や交換部品の使用実績量の検知結果により印刷に用いる印刷部を切替えることをせずに印刷を行わせる制御を通常印刷制御という。
【0057】
平均化印刷制御では印刷部を切替える度に印刷が停止されるため,切替える回数が多いほど印刷が終了するまでの時間が長くなる。従って,印刷システムで,平均化印刷制御を行うか,通常印刷制御を行うかを,利用者が予め指定しておいてもよい。
【0058】
また,両面印刷の印刷情報に基づく印刷を行う場合には,平均化印刷制御と通常印刷制御のどちらを行うかを利用者に指定させ,片面印刷の印刷情報に基づく印刷を行う場合には,利用者に指定させることなく平均化印刷制御を行うように構成してもよい。」

したがって,上記引用文献2には次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「印刷制御装置としてのメインコントローラ10と,第1の印刷部12及び第2の印刷部13を含む印刷装置11とを有する印刷システムであって,
第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々は,記録媒体としての記録用紙が搬入される搬入口40及び搬入口40から搬入された記録用紙を搬出する搬出口42を備え,前段に設けられた第1の印刷部12の搬出口42から搬出された記録用紙が後段に設けられた第2の印刷部13の搬入口40に搬送されるように接続され,第1の印刷部12の前段には給紙部50が設けられ,給紙部50から第1の印刷部12の搬入口40に記録用紙が搬入され,第2の印刷部13の後段には排紙部52が設けられ,第2の印刷部13の搬出口42から搬出された記録用紙が収納され,
第1の印刷部12で片面印刷を行う場合には,第1の搬送経路44に配設された画像形成部32で記録用紙を印刷してそのまま搬出口42から搬出され,
画像形成部32は,搬送された記録用紙に画像を形成する印刷機構部であって,感光体1を帯電器2により帯電し,該帯電された感光体1を露光装置2で画像データに基づいて露光し,該露光により生成された静電潜像を現像器4によりトナーを用いて現像し,該現像した画像を記録用紙に転写器5により転写して,該転写した画像を加熱ロール及び加圧ロールを有する定着器6により定着する電子写真方式の画像形成部からなり,
検知部34は,消耗品の残量(もしくは使用量),及び交換部品の使用実績量を検知するものであって,メインコントローラ10は,予め定められた時間間隔毎に第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31に対して,検知部34の検知結果を要求し,第1の印刷部12及び第2の印刷部13の制御部31は,該要求に応じて,検知結果を記憶したメモリから検知結果を読み出してメインコントローラ10に通知し,
印刷装置11で印刷が開始されると,メインコントローラ10は,処理ルーチンを開始し,印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31から検知結果を受け取ると,各々の検知結果に基づいて,第1の印刷部12及び第2の印刷部13のうち,消耗が進んでいる印刷部を判断し,消耗が進んでいると判断した印刷部が印刷中であれば,該実行中の印刷を停止し,第1の印刷部12及び第2の印刷部13の内部に残留している記録用紙を,各々の用紙搬送部33を動作させて第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々に設けられているパージ部に排出し,消耗が進んでいない印刷部で,排紙部52に印刷が停止される前に排出された記録用紙のうち最後に排出された記録用紙に印刷されたページの1つ後のページから印刷が再開されるよう画像データ及び制御信号を出力し,上記消耗が進んでいると判断された印刷部では記録用紙の搬送だけを行わせ印刷が再開されないように制御信号を出力することで,第1の印刷部12と第2の印刷部13とで,消耗品の残量の差,交換部品の使用実績量の差が0となるように平均化印刷制御される片面印刷の印刷情報に基づく印刷を行う印刷システム。」

第4 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1-5,7は引用文献1に記載された発明と同一(以下,「原査定理由1」という。),請求項1-4,6,8は引用文献2に記載された発明と同一である(以下,「原査定理由2」という。)から,特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないというものである。
また,請求項1-5,7は引用文献1に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである(以下,「原査定理由3」という。),請求項1-4,6,8は引用文献2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである(以下,「原査定理由4」という。),請求項6,8,9-11は引用文献1及び2に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである(以下,「原査定理由5」という。)から,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

1.原査定理由1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
引用発明1における「用紙」は,本願発明1における「用紙」に相当する。
以下同様に,「第一プリンタエンジン2」は「第1の画像形成装置」に,「第二プリンタエンジン4」は「第2の画像形成装置」に,それぞれ相当する。
引用発明1の「裏面」,「表面」は,印刷を行う用紙の一方の面を「裏面」と定めた場合,他方の面が「表面」と定まることを,本願発明1の「第1の面」,「第2の面」は,印刷を行う用紙の一方の面を「第1の面」と定めた場合,他方の面が「第2の面」と定まることを意味しているから,引用発明1の「裏面」及び「表面」が,本願発明1の「第1の面」及び「第2の面」に,もしくは,引用発明1の「裏面」及び「表面」が,本願発明1の「第2の面」及び「第1の面」に,相当する関係にあることは自明である。
引用発明1の「表面または裏面を印刷を行う第一プリンタエンジン2と,裏面または表面を印刷を行う第二プリンタエンジン4と,用紙を第一プリンタエンジン2から第二プリンタエンジン4に運ぶ連結部3と,印刷物を排出するフィニッシャ部5とから構成されている電子写真式プリンタ」という全体構成から,引用発明1は本願発明1の「直列に接続された第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方または双方により,第1の面および第2の面を有する用紙に対して画像形成処理を実行する直列タンデム方式の画像形成システム」に相当することは明らかである。
引用発明1の「片面印刷データの印刷指示」は,第一プリンタエンジン2と第二プリンタエンジン4のいずれかで片面印刷を行うものであるから,本願発明1の「第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブ」に相当することは明らかである。
本願発明1の「第1の消耗品の使用履歴」又は「第2の消耗品の使用履歴」は,明細書の記載によれば「画像形成装置において画像形成処理が実行された用紙の数(つまり,プリント枚数)を記憶部172から読み出すことによって,消耗品の使用履歴を間接的に取得」(段落【0040】,【0042】参照)するものであるから,引用発明1における「今まで印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値」と,「(今まで印刷された)印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値」は,本願発明1の「第1の消耗品の使用履歴」,「第2の消耗品の使用履歴」に相当することは明らかである。
本願発明1の「第1の消耗品の劣化情報」又は「第2の消耗品の劣化情報」は,明細書の記載によれば「制御部101は,消耗品の使用履歴が増加すればするほど,当該消耗品の機械的特性および電気的特性等が低下し,当該消耗品の劣化度合いが大きくなる点を考慮して判定」(段落【0043】参照)するものであるから,引用発明1における「今まで印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値」と,「(今まで印刷された)印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値」は,本願発明1の「第1の消耗品の劣化情報」,「第2の消耗品の劣化情報」に相当する情報にもなることは明らかである。
引用発明1の「片面印刷データの印刷指示があった場合,今まで印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値と,印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値を読込んで,印刷された第一プリンタエンジン2の印刷枚数のカウント値と印刷された第二プリンタエンジン4の印刷枚数のカウント値を比較し,第一プリンタエンジン2で印刷した枚数の方が少ない場合は,第一プリンタエンジン2で印刷を行い,それ以外の場合は,第二プリンタエンジン4で印刷」することは,上記の事項を踏まえると,本願発明1の「第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブを実行する場合,前記第1の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第1の消耗品の使用履歴と,前記第2の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,前記第1の消耗品の劣化情報と,前記第2の消耗品の劣化情報とを比較し,前記第1および第2の画像形成装置のうち,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きくない一方に対して,画像形成処理に使用される装置の動作に関し所定の設定を行い,前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行する印刷モードを設定」することに相当することは明らかである。
引用発明1において,明記されないが,ホストから片面印刷データの印刷指示があり,いずれのプリンタエンジンで印刷を行うかを選択した場合,印刷を選択されなかったプリンタエンジンは,印刷を実行せずに搬送処理を実行するように制御されることは,自明である。
引用発明1は,「電子写真式プリンタ」であるから,「定着装置の定着部材」,「定着部材に圧接させた加圧部材」を有し,「定着部材に圧接させた加圧部材との間の定着ニップ部」を形成していることは自明である。
したがって,本願発明1と引用発明1との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「直列に接続された第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方または双方により,第1の面および第2の面を有する用紙に対して画像形成処理を実行する直列タンデム方式の画像形成システムであって,
前記第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブを実行する場合,前記第1の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第1の消耗品の使用履歴と,前記第2の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,前記第1の消耗品の劣化情報と,前記第2の消耗品の劣化情報とを比較し,前記第1および第2の画像形成装置のうち,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きくない一方に対して,画像形成処理に使用される装置の動作に関し所定の設定を行い,前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行する印刷モードを設定するとともに,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きい他方に対して,前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する搬送モードを設定する動作モード設定部と,
を備える画像形成システム。」

(相違点)
(相違点1)第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブ実行時,つまり片面印刷時に,本願発明1は「画像形成処理で使用される定着装置の定着部材と前記定着部材に圧接させた加圧部材との間の定着ニップ部における定着圧力を前記印刷モードにおける前記定着部材と前記加圧部材との間の定着ニップ部の定着圧力よりも低い圧力に設定」するという発明特定事項を備えるのに対し,引用発明1はそうではない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1と引用発明1との間に相違点1が存在する以上,本願発明1と引用発明1とは同一ではない。
また,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は,この技術分野において周知事項ではない。
そして,本願発明2-5,7は,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものであり,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明2-5,7と引用発明1とは同一ではない。

2.原査定理由2について
(1)対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
引用発明2における「記録用紙」は,本願発明1における「用紙」に相当する。
以下同様に,「第1の印刷部12」は「第1の画像形成装置」に,「第2の印刷部13」は「第2の画像形成装置」に,それぞれ相当する。
引用発明2は「片面印刷」が可能であり,その場合当然「裏面」,「表面」が定義され,印刷を行う用紙の一方の面を「裏面」と定めた場合,他方の面が「表面」と定まることとなるが,本願発明1の「第1の面」,「第2の面」は,印刷を行う用紙の一方の面を「第1の面」と定めた場合,他方の面が「第2の面」と定まることを意味しているから,引用発明2の「裏面」及び「表面」が,本願発明1の「第1の面」及び「第2の面」に,もしくは,引用発明2の「裏面」及び「表面」が,本願発明1の「第2の面」及び「第1の面」に,相当する関係にあることは自明である。
引用発明2の「第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々は,記録媒体としての記録用紙が搬入される搬入口40及び搬入口40から搬入された記録用紙を搬出する搬出口42を備え,前段に設けられた第1の印刷部12の搬出口42から搬出された記録用紙が後段に設けられた第2の印刷部13の搬入口40に搬送されるように接続され,第1の印刷部12の前段には給紙部50が設けられ,給紙部50から第1の印刷部12の搬入口40に記録用紙が搬入され,第2の印刷部13の後段には排紙部52が設けられ,第2の印刷部13の搬出口42から搬出された記録用紙が収納」されるという全体構成から,引用発明2は本願発明1の「直列に接続された第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方または双方により,第1の面および第2の面を有する用紙に対して画像形成処理を実行する直列タンデム方式の画像形成システム」に相当することは明らかである。
引用発明2において「第1の印刷部12で片面印刷を行う場合には,第1の搬送経路44に配設された画像形成部32で記録用紙を印刷してそのまま搬出口42から搬出」される場合,第2の印刷部13では印刷動作が行われず,そのまま「第2の印刷部13の後段に設けられた排紙部52」に排出されることは自明である。さらに,片面印刷の印刷情報に基づく印刷を行う場合の平均化印刷制御において,「第1の印刷部12で片面印刷を行う場合には,第2の印刷部13では印刷動作が行われないこと」及び,「第2の印刷部13で片面印刷を行う場合には,第1の印刷部12では印刷動作が行われないこと」は自明であって,引用発明2は,本願発明1の「第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブ」に相当する印刷ジョブを有していることは明らかである。
本願発明1の「第1の消耗品の使用履歴」又は「第2の消耗品の使用履歴」は,明細書の記載によれば「画像形成装置において画像形成処理が実行された用紙の数(つまり,プリント枚数)を記憶部172から読み出すことによって,消耗品の使用履歴を間接的に取得」(段落【0040】,【0042】参照)するものであるから,引用発明2における「消耗品の残量(もしくは使用量),及び交換部品の使用実績量」は,本願発明1の「消耗品の使用履歴」に相当し,引用発明2において「第1の印刷部12」と「第2の印刷部13」毎に,該「消耗品の残量(もしくは使用量),及び交換部品の使用実績量」を検知部34が検知しているから,これらの「消耗品の残量(もしくは使用量),及び交換部品の使用実績量」は,本願発明1の「第1の消耗品の使用履歴」又は「第2の消耗品の使用履歴」に相当することは明らかである。
本願発明1の「第1の消耗品の劣化情報」又は「第2の消耗品の劣化情報」は,明細書の記載によれば「制御部101は,消耗品の使用履歴が増加すればするほど,当該消耗品の機械的特性および電気的特性等が低下し,当該消耗品の劣化度合いが大きくなる点を考慮して判定」(段落【0043】参照)するものであり,引用発明2において「メインコントローラ10は,処理ルーチンを開始し,印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31から検知結果を受け取ると,各々の検知結果に基づいて,第1の印刷部12及び第2の印刷部13のうち,消耗が進んでいる印刷部を判断」していることを踏まえると,引用発明2における「第1の印刷部12の検知結果」又は「第2の印刷部13の検知結果」は,本願発明1の「第1の消耗品の劣化情報」,「第2の消耗品の劣化情報」に相当する情報にもなることは明らかである。

引用発明2の「印刷装置11で印刷が開始されると,メインコントローラ10は,処理ルーチンを開始し,印刷装置11の第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々の制御部31から検知結果を受け取ると,各々の検知結果に基づいて,第1の印刷部12及び第2の印刷部13のうち,消耗が進んでいる印刷部を判断し,消耗が進んでいると判断した印刷部が印刷中であれば,該実行中の印刷を停止し,第1の印刷部12及び第2の印刷部13の内部に残留している記録用紙を,各々の用紙搬送部33を動作させて第1の印刷部12及び第2の印刷部13の各々に設けられているパージ部に排出し,消耗が進んでいない印刷部で,排紙部52に印刷が停止される前に排出された記録用紙のうち最後に排出された記録用紙に印刷されたページの1つ後のページから印刷が再開されるよう画像データ及び制御信号を出力し,上記消耗が進んでいると判断された印刷部では記録用紙の搬送だけを行わせ印刷が再開されないように制御信号を出力」することは,上記の事項を踏まえると,本願発明1の「第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブを実行する場合,前記第1の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第1の消耗品の使用履歴と,前記第2の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,前記第1の消耗品の劣化情報と,前記第2の消耗品の劣化情報とを比較し,前記第1および第2の画像形成装置のうち,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きくない一方に対して,画像形成処理に使用される装置の動作に関し所定の設定を行い,前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行する印刷モードを設定」することに相当することは明らかである。
引用発明2は,「電子写真式プリンタ」であって,「転写した画像を加熱ロール及び加圧ロールを有する定着器6」を有しているから,定着器6に「定着ニップ部」を形成されていることは自明である。
したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。
(一致点)
「直列に接続された第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方または双方により,第1の面および第2の面を有する用紙に対して画像形成処理を実行する直列タンデム方式の画像形成システムであって,
前記第1の画像形成装置を用いて前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブを有し,
前記第1の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第1の消耗品の使用履歴と,前記第2の画像形成装置の画像形成処理に使用される装置の構成部品を含む第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,前記第1の消耗品の劣化情報と,前記第2の消耗品の劣化情報とを比較し,前記第1および第2の画像形成装置のうち,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きくない一方に対して,画像形成処理に使用される装置の動作に関し所定の設定を行い,前記用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行する印刷モードを設定するとともに,消耗品の劣化情報により表される劣化度合いが大きい他方に対して,前記用紙に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する搬送モードを設定する動作モード設定部と,
を備える画像形成システム。」

(相違点)
(相違点2)第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方を用いて用紙の第1の面または第2の面に画像形成処理を実行し,他方を用いて前記用紙の第1の面および第2の面に画像形成処理を実行せずに前記用紙の搬送処理を実行する印刷ジョブ実行時,つまり片面印刷時に,本願発明1は「画像形成処理で使用される定着装置の定着部材と前記定着部材に圧接させた加圧部材との間の定着ニップ部における定着圧力を前記印刷モードにおける前記定着部材と前記加圧部材との間の定着ニップ部の定着圧力よりも低い圧力に設定」するという発明特定事項を備えるのに対し,引用発明1はそうではない点。

(2)相違点についての判断
本願発明1と引用発明2との間に相違点2が存在する以上,本願発明1と引用発明2とは同一ではない。
また,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は,この技術分野において周知事項ではない。
そして,本願発明2-4,6,8は,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものであり,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明2-4,6,8と引用発明2とは同一ではない。

3.原査定理由3について
本願発明1と引用発明1との相違点は,上述したとおり上記相違点1である。
そして,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項は,この技術分野において周知事項であるとも,設計事項であるともいえない。
そして,本願発明1は,該発明特定事項を備えることによって「消耗品を用いた不必要な動作が行われることなく,当該消耗品の省電力化,ひいては当該消耗品のコスト低減を図ることができる。(本願明細書段落【0058】参照)」という顕著な効果を奏しているものである。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また,本願発明2-5,7は,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものであり,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明2-5,7は,当業者であっても引用発明1に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.原査定理由4について
本願発明1と引用発明2との相違点は,上述したとおり上記相違点2である。
そして,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は,この技術分野において周知事項であるとも,設計事項であるともいえない。
そして,本願発明1は,該発明特定事項を備えることによって「消耗品を用いた不必要な動作が行われることなく,当該消耗品の省電力化,ひいては当該消耗品のコスト低減を図ることができる。(本願明細書段落【0058】参照)」という顕著な効果を奏しているものである。
したがって,本願発明1は,当業者であっても引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
また,本願発明2-4,6,8は,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を備えるものであり,さらに他の発明特定事項を限定したものであるから,本願発明2-4,6,8は,当業者であっても引用発明2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.原査定理由5について
請求項6,8,9-11は,いずれも直接又は間接に請求項1を引用しているから,本願発明6,8,9-11と引用発明1とは,少なくとも,上記相違点1において相違している。
相違点1に係る本願発明6,8,9-11の発明特定事項は,上記引用文献2には記載されておらず,該発明特定事項がこの技術分野において周知事項であるとも,設計事項であるともいえないことは,上述のとおりである。
そして,本願発明6,8,9-11は,該発明特定事項を備えることによって「消耗品を用いた不必要な動作が行われることなく,当該消耗品の省電力化,ひいては当該消耗品のコスト低減を図ることができる。(本願明細書段落【0058】参照)」という顕著な効果を奏しているものである。
したがって,本願発明6,8,9-11は,当業者であっても引用発明1及び2に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

なお,平成28年10月24日付け前置報告書において挙げられた引用文献3(特開2003-140415号公報)であるが,上記相違点1(相違点2)に係る本願発明1の発明特定事項については,この引用文献3には記載も示唆もない。

第5 当審拒絶理由について
1.特許法第36条第6項第1号について
(1)当審では,請求項1の特に「第1の消耗品の使用履歴と,第2の消耗品の使用履歴とに基づいて,第1および第2の画像形成装置のうち何れか一方に対して印刷モードを設定し,他方に対して搬送モードを設定する」という記載に対して,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである旨の拒絶の理由を通知しているが,平成29年8月10日付けの手続補正書によって補正された結果,この拒絶の理由は解消した。

第6 むすび
以上のとおり,本願発明1乃至10は,引用文献1又は2に記載された発明と同一ではなく,当業者が引用文献1又は2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでも,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-13 
出願番号 特願2012-268205(P2012-268205)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 健二  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
吉村 尚
発明の名称 画像形成システム  
代理人 木曽 孝  
代理人 鷲田 公一  

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