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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1333620 |
審判番号 | 不服2015-20463 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-16 |
確定日 | 2017-10-10 |
事件の表示 | 特願2013-509483「アルコール耐性経口医薬形態」拒絶査定不服審判事件〔平成23年11月17日国際公開、WO2011/141241、平成25年7月25日国内公表、特表2013-530138〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年4月7日(パリ条約による優先権主張 2010年5月14日(フランス))を国際出願日とする特許出願であって、平成26年9月17日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月10日付けで拒絶査定がなされたのに対して、同年11月16日に拒絶査定不服の審判請求がなされ、それと同時に手続補正書が提出され、平成28年12月8日に上申書が提出されたものである。 第2 平成27年11月16日提出の手続補正書による補正の却下の決定 <補正の却下の決定の結論> 平成27年11月16日提出の手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 <理由> 1 補正の内容 本件補正は特許請求の範囲を補正するものであって、「徐放性経口医薬形態」に係る特許請求の範囲の請求項16(請求項1を引用する)を引用する請求項17について、実質的に本件補正前において 「1日1回または1日2回経口投与される薬剤として用いるための、 アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限するための、 中心から周縁部へ向かって、 中性キャリヤー、 少なくとも1種類の活性成分と薬学上許容可能な結合剤とを含んでなる少なくとも1種類のマウンティング層、 水に不溶性のセルロース誘導体から選択される疎水性コーティングポリマーと、 疎水性コーティングポリマーの乾燥重量に関して少なくとも20%の不活性充填物と を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなる、アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限するための、徐放性微粒剤を含む少なくとも1種類の活性成分の徐放性経口医薬形態。」とあったものを、 「アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限する痛みの治療のための、徐放性微粒剤を含む少なくとも1種類の活性成分の1日1回用量の徐放性経口医薬形態であって、 前記徐放性微粒剤が、 中心から周縁部へ向かって、 中性キャリヤー、 少なくとも1種類の活性成分と薬学上許容可能な結合剤とを含んでなる少なくとも1種類のマウンティング層、 水に不溶性のセルロース誘導体から選択される疎水性コーティングポリマーと、 疎水性コーティングポリマーの乾燥重量に関して少なくとも20%の不活性充填物と を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなり、 前記薬学上許容可能な結合剤が、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、かつ 前記活性成分が、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、トラマドール、ガバペンチン、およびそれらの誘導体から選択される、徐放性経口医薬形態。」とする補正(以下、「補正事項」という。)を含むものである。 2 補正の目的 補正事項は、(a)請求項17に係る「1日1回または1日2回」を「1日1回用量」とし、(b)「薬学上許容可能な結合剤」を「HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され」ること、「活性成分」を「ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、トラマドール、ガバペンチン、およびそれらの誘導体から選択される」ことを発明特定事項として追加することを含むものである。 そして、補正の前後で産業上の利用分野および解決しようとする課題は同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、(a)「1日2回」との選択肢を削除するものであり、(b)本願拒絶査定時の請求項6の「薬学上許容可能な結合剤」及び同請求項12の「鎮痛剤」の記載に基づきなされたものといえる。 このため、補正事項は新たな技術的事項を導入するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。 したがって、補正事項1は特許法第17条の2第3項及び第5項に規定する要件を満たしている。 3 独立特許要件 補正事項の目的は、特許法第17条の2第5項第2号の場合に該当するから、同条第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合しているか否かを検討する。 (1)補正事項による本願請求項に係る発明 補正事項による本願請求項1に記載される発明(以下、「補正発明」という。)は次のとおりである。 「アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限する痛みの治療のための、徐放性微粒剤を含む少なくとも1種類の活性成分の1日1回用量の徐放性経口医薬形態であって、 前記徐放性微粒剤が、 中心から周縁部へ向かって、 中性キャリヤー、 少なくとも1種類の活性成分と薬学上許容可能な結合剤とを含んでなる少なくとも1種類のマウンティング層、 水に不溶性のセルロース誘導体から選択される疎水性コーティングポリマーと、 疎水性コーティングポリマーの乾燥重量に関して少なくとも20%の不活性充填物と を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなり、 前記薬学上許容可能な結合剤が、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、かつ 前記活性成分が、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルフォン、トラマドール、ガバペンチン、およびそれらの誘導体から選択される、徐放性経口医薬形態。」 (2)引用刊行物の記載事項 本願の出願(優先日)前に頒布された刊行物であることが明らかな刊行物A(原査定の引用文献3)には、次の事項が記載されている。なお、刊行物Aは英語で記載されているところ、下記は当合議体が作成した邦訳である。 刊行物A:米国特許出願公開第2005/0020613号明細書 ア「[0001] 本発明は、鎮痛薬、特にオピオイド鎮痛薬を含む徐放性形態の経口剤形、及び、例えば痛みを治療するための使用方法に関する。」 イ「[0011] 更に本発明により提供されるのは、痛みを治療する方法である。該方法は、上記のような徐放性経口剤形を1日1回、ヒトに経口投与することを含む。」 ウ「実施例 [0106] 以下の実施例は本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。以下の実施例では、医薬組成物は、ペレット(例えば、ペレット、ビーズ、スフェロイド、顆粒等)の形態の2つの異なるサブユニット、患者への投与後第1の12時間に開始して持続的にオピオイドを放出する第1放出ペレット、及び患者への投与後の第2の12時間に開始して持続的にオピオイドを放出する第2放出ペレットを投与することを含む。第1放出ペレット及び第2放出ペレットは、互いに対して同一又は異なる量のオピオイドを含有することができ、同一又は異なる放出遅延物質(種類又は量のいずれか)、同一又は異なる賦形剤(種類又は量のいずれか)を含み得る。 … [0113] 第1サブユニット及び第2サブユニットを含む徐放性経口剤形を、表1-5に示すように調製した。 … 表1 単位当たりの量(mg) 第1サブユニット 硫酸モルヒネ 50.0 Non-pareil seed (16-18メッシュ) 131.9 ヒプロメロース 3.3 エチルセルロース 28.1 ポリエチレングリコール6000 9.9 Eudragit L100-55 8.3 フタル酸ジエチル 5.7 タルク 26.0 合計 263.3 第2サブユニット 硫酸モルヒネ 50.0 Non-pareil seed (16-18メッシュ) 131.9 ヒプロメロース 3.3 Eudragit RS PO 26.9 Eudragit RL PO 4.5 クエン酸トリエチル 3.1 ラウリル硫酸ナトリウム 0.7 タルク 17.6 合計 238.0 [0115] 第1サブユニットは、最初に硫酸モルヒネをヒプロメロースの水性アルコール溶液に機械的攪拌機で分散させ、ローター造粒プロセスによってNon-pareil seedに適用して硫酸モルヒネコアを製造することによって調製した。次いで、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、Eudragit及びフタル酸ジエチルのポリマー溶液をエタノール中で調製し、タルクをポリマー溶液中に均一に分散させた。得られたポリマー溶液を、Wurster法を用いて硫酸モルヒネコア上に直ちに噴霧し、そこで経口剤形の第1サブユニットを完成させた。第2サブユニットは、硫酸モルヒネをヒプロメロースの水性アルコール溶液に機械的攪拌機で分散させ、得られた溶液をローター造粒プロセスによってNon-pareil seedに適用することによって調製した。次いで、Eudragit RS、Eudragit RL、クエン酸トリエチル及びラウリル硫酸ナトリウムのポリマー溶液をエタノール中で調製し、タルクをポリマー溶液中に分散させた。得られたポリマー溶液を、Wurster法を用いて硫酸モルヒネコア上に直ちに噴霧し、そこで経口剤形の第2サブユニットを完成させた。」 (3)刊行物Aに記載された発明 刊行物Aには、Non-pareil seedを中心にして、硫酸モルヒネとヒプロメロースの混合物を適用してコアを製造し、次いで、エチルセルロース、ポリエチレングリコール、Eudragit及びフタル酸ジエチル、更にはタルクの混合物を該コア上に噴霧して得られる第1サブユニットと、Non-pareil seedを中心にして、硫酸モルヒネとヒプロメロースの混合物を適用してコアを製造し、次いで、Eudragit RS、Eudragit RL、クエン酸トリエチル及びラウリル硫酸ナトリウム、更にはタルクの混合物を該コア上に噴霧して得られる第2サブユニットとから経口剤形を得ること、第1サブユニットは患者への投与後第1の12時間に開始して持続的にオピオイドを放出すること、第2サブユニットは患者への投与後の第2の12時間に開始して持続的にオピオイドを放出すること、これらはペレットであること、第1サブユニットにおいて、タルクはエチルセルロースに対して92.5%(≒26.0/28.1)の重量比で存在することが記載されている(上記(2)ウ)。 また、徐放性経口剤形は、1日1回、ヒトに経口投与するものであること(上記(2)イ)、鎮痛薬を含む徐放性のものであることや痛みの治療のために用いるものであること(上記(2)ア)が記載されている。 これらの点からみて、上記(2)ア-ウの摘記事項から、刊行物Aには、 「痛みの治療のための、徐放性ペレットを含む、鎮痛薬である硫酸モルヒネの1日1回用量の徐放性経口剤形であって、 前記徐放性のペレットが、 中心から周縁部へ向かって、 Non-pareil seed、 硫酸モルヒネとヒプロメロースとを含んでなる層、 エチルセルロースと、 エチルセルロースの重量に関して92.5%のタルクと を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなり、 薬学上許容可能な結合剤が、ヒプロメロースであり、かつ 活性成分が、硫酸モルヒネである、徐放性経口剤形。」 に係る発明(以下、「刊行物発明」という。)が記載されている。 (4)対比 補正発明と刊行物発明とを対比する。 刊行物発明の「徐放性経口剤形」及び「ペレット」は、補正発明の「徐放性経口医薬形態」及び「微粒剤」に相当する。刊行物発明の「Non-pareil seed」は、補正発明の「中性キャリヤー」に相当する(必要であれば、http://www.umangpharmaceuticals.com/Dummy-pellets-and-Sugar-pellets-(Non-Pareil-Seeds).html参照)。 また、「硫酸モルヒネ」はモルヒネの誘導体であり、補正発明の「活性成分」の選択肢の一つであり、「ヒプロメロース」はヒドロキシプロピルメチルセルロースすなわちHPMCであり、補正発明の「薬学上許容可能な結合剤」の選択肢の一つであり、「エチルセルロース」は水に不溶性のセルロース誘導体であり、補正発明の「疎水性コーティングポリマー」に相当し、「タルク」は、補正発明の「不活性充填物」に相当する。 そして、刊行物発明の「エチルセルロース」と「タルク」の重量の比は乾燥重量の比であるか否か明らかにされていないが、補正発明の「少なくとも20%」という値であれば、乾燥重量の比を満たすものと解される。 さらに、硫酸モルヒネとヒプロメロースとを含んでなる「層」は、実施例における製造工程(上記(2)ウ)からみて、Non-pareil seed上に構成されるものと解され、補正発明でいう「マウンティング層」となっているものと解される。 これらの点を踏まえると、補正発明と刊行物発明とは、 「痛みの治療のための、徐放性微粒剤を含む少なくとも1種類の活性成分の1日1回用量の徐放性経口医薬形態であって、 前記徐放性微粒剤が、 中心から周縁部へ向かって、 中性キャリヤー、 少なくとも1種類の活性成分と薬学上許容可能な結合剤とを含んでなる少なくとも1種類のマウンティング層、 水に不溶性のセルロース誘導体から選択される疎水性コーティングポリマーと、 疎水性コーティングポリマーの乾燥重量に関して少なくとも20%の不活性充填物と を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなり、 前記薬学上許容可能な結合剤が、HPMCから選択され、かつ 前記活性成分が、モルヒネの誘導体から選択される、徐放性経口医薬形態。」 の点で一致し、次の点で一応相違するものといえる。 <一応の相違点> ・補正発明は「アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限する」ものであるのに対し、刊行物発明はこれを特定していない点。 (5)判断 一応の相違点について検討する。 補正発明と刊行物発明とは、徐放性経口医薬形態として、構成材料及びその構造において差異を見いだせないことに鑑みると、刊行物発明は補正発明と同様の医薬形態としての機能を有するものと解される。そうすると、刊行物Aにおいて刊行物発明が「アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限する」ものであることの記載がないとしても、刊行物発明はそのような機能を有するものと解するのが相当である。 このため、一応の相違点に関し、補正発明と刊行物発明とは実質的に相違しない。 4 むすび 以上のことから、補正発明は、刊行物発明と相違する点が存在せず、刊行物Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。そうすると、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反しているものと認められるので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本願発明 上記第2のとおり、本件補正は却下されたので、本願に係る発明は平成27年3月19日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-18にそれぞれ記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、請求項17に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、実質的に次のとおりであると認められる。 「1日1回または1日2回経口投与される薬剤として用いるための、 アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限するための、 中心から周縁部へ向かって、 中性キャリヤー、 少なくとも1種類の活性成分と薬学上許容可能な結合剤とを含んでなる少なくとも1種類のマウンティング層、 水に不溶性のセルロース誘導体から選択される疎水性コーティングポリマーと、 疎水性コーティングポリマーの乾燥重量に関して少なくとも20%の不活性充填物と を含んでなる少なくとも1種類の徐放性コーティング層 を含んでなる、アルコールの摂取によって誘発される活性成分の即時放出を回避または制限するための、徐放性微粒剤を含む少なくとも1種類の活性成分の徐放性経口医薬形態。」 第4 当審の判断 1 引用文献及びその記載事項 原査定において引用され、本願の出願(優先日)前に頒布された刊行物であることが明らかな下記引用文献1は、上記第2の3(2)における刊行物Aと同じ文献であり、したがって、該引用文献1には同箇所に摘示したア-ウの事項が記載されている。 引用文献1:米国特許出願公開第2005/0020613号明細書 2 引用文献1に記載された発明 引用文献1には、上記第2の3(3)において認定した刊行物発明が記載されている。 3 対比・判断 本願発明と刊行物発明とを対比する。 上記第2の3(4)に示した点を踏まえると、両者の間に相違点は存在しない。 4 まとめ そうすると、本願発明は、刊行物発明と相違する点が存在せず、したがって引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものである。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願については、他の請求項について検討するまでもなく上記理由により拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-18 |
結審通知日 | 2017-05-19 |
審決日 | 2017-05-30 |
出願番号 | 特願2013-509483(P2013-509483) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61K)
P 1 8・ 113- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 近藤 政克 |
特許庁審判長 |
須藤 康洋 |
特許庁審判官 |
大熊 幸治 長谷川 茜 |
発明の名称 | アルコール耐性経口医薬形態 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 反町 洋 |
代理人 | 浅野 真理 |
代理人 | 松山 祐子 |
代理人 | 中村 行孝 |