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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1333626
審判番号 不服2016-11978  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-08 
確定日 2017-10-10 
事件の表示 特願2012- 68219「枚葉基材の切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 3日出願公開、特開2013-199035〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年3月23日の出願であって、平成28年1月26日付けで手続補正がなされ、同年4月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月8日付けで拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、その後、当審において、平成29年5月12日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、同年7月12日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願発明は、平成29年7月12日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
印刷済の枚葉基材を排出させる排出ローラと、
排出ローラの下流側に設けられ枚葉基材の先端部と後端部の余白を切断して除去するカッタと、
排出ローラおよびカッタの下方に配置され、枚葉基材からの切断カスを受けるカス受けと、
排出ローラおよびカッタを駆動制御する制御装置とを備え、
制御装置はカッタにより枚葉基材の後端部の余白を切断する際、排出ローラを正転させて枚葉基材を外方へ排出させ、後端部の余白の下流端がカッタに対応する位置にきたとき、排出ローラを停止してカッタを駆動させ後端部の余白を切断して除去し、その後排出ローラを逆転させて後端部の余白をカス受け内に落下させ、
印刷済の枚葉基材には、一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷が施され、カッタは一方の面と他方の面に互いに逆方向に施される両面印刷により決定された枚葉基材の先端部の余白および後端部の余白を切断し、
排出ローラの上流側に、底板と上板とを有する基材搬送路が設けられ、排出ローラと底板との間に切断された後端部の余白が通過する隙間が形成され、上板は底板から更に排出ローラ近傍まで延びていることを特徴とする枚葉基材の切断装置。
【請求項2】
カス受けは、底壁と、前方壁と、後方壁と、一対の側壁とを有し、後方壁は上方に向って後方側へ傾斜することを特徴とする請求項1又は2記載の枚葉基材の切断装置。
【請求項3】
印刷済の枚葉基材を排出させる排出ローラと、
排出ローラの下流側に設けられ枚葉基材の先端部と後端部の余白を切断して除去するカッタと、
排出ローラおよびカッタの下方に配置され、枚葉基材からの切断カスを受けるカス受けと、を備えた枚葉基材の切断装置を用いた枚葉基材の切断方法において、
排出ローラを正転させて枚葉基材を外方へ排出させる工程と、
枚葉基材のうち後端部の余白の下流端がカッタに対応する位置にきたとき排出ローラを停止してカッタを駆動させ後端部の余白を切断して除去する工程と、
排出ローラを逆転させて後端部の余白をカス受け内に落下させる工程とを備え、 印刷済の枚葉基材には、一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷が施され、カッタは一方の面と他方の面に互いに逆方向に施される両面印刷により決定された枚葉基材の先端部の余白および後端部の余白を切断し、
排出ローラの上流側に、底板と上板とを有する基材搬送路が設けられ、排出ローラと底板との間に切断された後端部の余白が通過する隙間が形成され、上板は底板から更に排出ローラ近傍まで延びていることを特徴とする枚葉基材の切断方法。
【請求項4】
排出ローラを正転させて枚葉基材を外方へ排出させる工程の前に、枚葉基材のうち先端部の余白の上流端がカッタに対応する位置にきたとき、排出ローラを停止してカッタを駆動させ先端部の余白を切断して除去し、カス受け内に落下させることを特徴とする請求項3記載の枚葉基材の切断方法。」(以下、請求項1乃至請求項4にかかる各発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明4」といい、これらを総称して「本願発明」という。)


第3 引用刊行物
(1)引用刊行物1
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成10年5月19日に頒布された刊行物である特開平10-129055号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像を再現した後の記録紙の不要部分をカットする機能を備え、カットされた用紙片すなわち切り屑を貯えるごみ箱を備えた記録装置の改良に関する。」
イ 「【0012】そこで、本発明は、画像再現後の記録紙の不要部分をカットする機能を備えた記録装置であって、排紙トレイをごみ箱の上方位置に配置しても、装置の使用中にごみ箱内の切り屑の量を容易に目視確認できるようにし、もって長尺の記録紙にも画像を再現して排紙し得るようにしたコンパクトな記録装置を提供することを目的とする。」
ウ 「【0019】熱転写記録装置10の外装をなすハウジング11の上面には蓋部材12が揺動軸12a(図2参照)を中心に開閉自在に取り付けられ、蓋部材12を開放した状態でインクフィルムカセットがハウジング11内の所定位置に装填される。図中左手前側が装置10の前面となっており、この前面側に排紙部が設けられ、背面側に給紙部21が設けられている。給紙部21には、複数枚の記録紙を収納した給紙トレイ14が傾斜して設けられている。また、この熱転写記録装置10内には、画像を再現した後の記録紙の不要部分(記録紙の先端部分および/または後端部分)をカットする用紙カッティング部が設けられており、カットされた切り屑を貯えるごみ箱24が装置前面側に抜き差し自在に設けられている。このごみ箱24は、その上面が開放されると共に、少なくとも外部に臨む面である前面部はアクリル樹脂などの透明部材から形成され、内部に貯えられた切り屑の量を、記録装置10の外部から目視で判別できるようになっている。不要部分をカットした後の記録紙は、用紙排出口16を通って排紙トレイ17上に排出される。排紙トレイ17は、ごみ箱24よりも上方位置に開閉自在に配置されている。ハウジング11に対する排紙トレイ17の取り付け支点17aは、ごみ箱24の上方に設けられている(図2参照)。」
エ 「【0035】プラテンローラ25の下流側には、記録紙18を排紙トレイ17上に排出するために、用紙排出口16側に位置する第1排出ローラ対53と、プラテンローラ25側に位置する第2排出ローラ対54とが所定距離を隔てて取り付けられている。…
【0036】プラテンローラ25と排出ローラ対53、54との間には、排紙処理の際の記録紙18の搬送を案内するガイド部材55が設けられている。…」
オ 「【0038】前記ガイド部材55の下側には、グリップローラ50とピンチローラ51により搬送される記録紙18を、排出ローラ対53、54などが設けられている排紙部22あるいは収容スペース56のいずれか一方に選択的に導くために、可撓性素材より形成された揺動ガイド58が支持軸57を中心として揺動自在に設けられている。揺動ガイド58を上方位置に揺動すると、グリップローラ50などにより搬送される記録紙18は収容スペース56に収容される。一方、揺動ガイド58を上方位置から下方位置まで支持軸57を中心として時計回り方向に揺動すると、記録紙18は排紙部22に向けて搬送される。
【0039】印字品位の向上のためには印字時に記録紙18が排出ローラ対53、54に挟まれないようにする必要があるが、本実施の形態のように揺動ガイド58を設けて排紙部22に至る搬送経路の下方位置に収容スペース56を形成するようにすれば、プラテンローラ25と排出ローラ対53、54との間の距離を小さくすることができ、装置10の床面積が小さくなる。
【0040】前記第1排出ローラ対53と第2排出ローラ対54との間には、用紙カッティング部としてのカッタユニット23が設けられている。このカッタユニット23は、ロータリーカッタ60と、このカッタ60との共働により記録紙18をカットする受け台61とを有する。カットされた切り屑は、その自重により、カッタユニット23の下方位置に配置されたごみ箱24内に落下し回収される。ごみ箱24は、前述したように、当該ごみ箱103を取り外した際にできる穴部からカッタユニット23まで手が入らないようにするため、記録装置10のできるだけ下方位置に設けられている。なお、ごみ箱24の前面などには取っ手として機能する図示しない穴部や凹部が設けられ、作業者は、この取っ手に指を掛けてごみ箱24をハウジング11から抜き取り、ごみ箱24内に堆積した切り屑を除去する。
【0041】カッタユニット23には、記録紙先端を検出する先端検出センサSEが設置されている。先端検出センサSEは、記録紙18の先端を検出したときにオン信号を発する。先端検出センサSEが記録紙18の先端を検出した時点を基準として、搬送モータM6を駆動するパルスが管理され、記録紙先端から所定長さだけ記録紙18をカットする先端カットと、記録紙後端から所定長さだけ記録紙18をカットする後端カットとが行われる。センサSEとしては、反射型フォトセンサが例示できるが、この場合に限定されるものではなく、透過型フォトセンサより構成しても良い。」
カ 「【0051】《後端カットの動作》後端カットの動作を説明する。先端カットが終了すると、所定長さに対応したパルス数だけ搬送モータM6を駆動し、第1排出ローラ対53および第2排出ローラ対54により記録紙18を搬送する。その後、ロータリーカッタ60が作動され、記録紙18は、その後端から所定長さだけ後端カットされる。
【0052】後端カットが終了した時点では、カラー画像を再現した製品となる記録紙18は第1排出ローラ対53で挟持され、カットされた不要な切り屑は第2排出ローラ対54で挟持されたままの状態となっている。そこで、まず、搬送モータM6を所定パルス数だけ逆回転駆動して第2排出ローラ対54を逆回転駆動し、切り屑を印字部20に向けて戻すように搬送する。これにより、切り屑は、第2排出ローラ対54から離れて落下し、ごみ箱24内に回収される。搬送モータM6を逆回転駆動しても、第1排出ローラ対53はワンウェイクラッチの作用により逆回転することはなく、記録紙18は第1排出ローラ対53で挟持されたままの状態となっている。搬送モータM6が逆回転駆動していても、作業者は、記録紙18を第1排出ローラ対53から引き抜くこともできる。
【0053】切り屑の回収が終了すると搬送モータM6は所定パルス数だけ正回転駆動され、記録紙18は、第1排出ローラ対53により搬送されて、排紙トレイ17の上に排出される。
【0054】記録紙18の先端および後端のカット動作に伴って切り屑がごみ箱24内に溜まるが、装置の稼働中でも、窓部材70を通して、排紙トレイ17の上方からごみ箱24内部を全域にわたって見渡し、切り屑の量を容易に目視確認できる。」
キ 上記ウ、エ及び図2より、印字済の記録紙を排出させる第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対と、第2排出ローラ対の下流側に設けられ記録紙の先端部と後端部の不要部分を切断して除去するカッタユニットと、第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対およびカッタユニットの下方に配置され、記録紙からの切り屑を受けるごみ箱が看取できる。
ク 上記ウ及び図2より、プラテンローラと第2排出ローラ対との間には、排紙処理の際の記録紙の搬送を案内する上板ガイド部材が設けられていることが看取できる。

上記ア乃至クの記載から、引用刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「印字済の記録紙を排出させる第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対と、第2排出ローラ対の下流側に設けられ記録紙の先端部と後端部の不要部分を切断して除去するカッタユニットと、第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対およびカッタユニットの下方に配置され、記録紙からの切り屑を受けるごみ箱を備えた記録装置であって、
プラテンローラと第2排出ローラ対との間には、排紙処理の際の記録紙の搬送を案内する上板ガイド部材が設けられ、
先端カットが終了すると、所定長さに対応したパルス数だけ搬送モータを駆動し、第1排出ローラ対および第2排出ローラ対により記録紙を搬送し、その後、ロータリーカッタ(カッタユニット)が作動され、記録紙は、その後端から所定長さだけ後端カットされ、搬送モータを所定パルス数だけ逆回転駆動して第2排出ローラ対を逆回転駆動し、切り屑を印字部に向けて戻すように搬送し、これにより、切り屑は、第2排出ローラ対から離れて落下し、ごみ箱内に回収される、記録装置。」

(2)引用刊行物2
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成18年9月28日に頒布された刊行物である特開2006-256119号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙に両面印刷可能な両面印刷装置に関するものである。」
イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1、特許文献2とも、用紙の搬送を一般の搬送ローラだけで行っているために、裏面にカラー印刷を行うときには、用紙の往復搬送時に用紙の搬送ピッチがずれてしまうことがあり、このため高精度なカラー印刷が困難である欠点があった。
【0010】
本発明の目的は、高精度な印刷が可能な両面印刷装置を提供することにある。」
ウ 「【0031】
次に、用紙1の表裏に印刷するときの装置の動作について説明する。
【0032】
図6、図7は、その動作を示すフローチャートであり、図示しない制御部により制御される。図8?図15は、動作中の装置内の状態を示す図である。
【0033】
図示しないプリントスイッチがオンされると、給紙モードが設定される(ST1)。こ
の給紙モードでは、ソレノイド44がオンされ、圧接搬送ローラ5が正転し、リフタ62が上昇し、プラテン61が正転する。これにより、図8に示すように、用紙トレイ2から1枚の用紙1が装置内に搬入されていく。
【0034】
用紙検出センサ10により用紙の後端が検出されると(図9参照)、ボビン71を駆動してインクリボン7を黒(B)に設定する(ST3)。
【0035】
次に、表面印刷モードに設定する(ST4)。この表面印刷モードでは、ソレノイド44がオフされ、圧接搬送ローラ5が逆転し、リフタ62が下降し、プラテン61が逆転する。ボビン71は駆動を維持する。これにより、図10、図11に示すように、用紙1は逆方向に搬送されていき、そのとき、印刷部6により黒色のインクリボンによる印刷が行われる。用紙1は、そのまま逆方向に搬送され、用紙反転ガイド41の外周に巻き付けられるように、ガイド内搬送ローラ42により略雨滴形状の溝40に沿って送られていき、用紙1の先端が反転検出センサ46により検出されると、各ローラの動作が停止し、用紙1の搬送がストップする(ST5)。図12はこのときの状態を示す。
【0036】
続いて、反転モードが設定される(ST10)。この反転モードでは、ソレノイド44がオフされ、圧接搬送ローラ5が正転し、リフタ62が上昇し、プラテン61が正転する。ボビン71は駆動を維持する。これにより、用紙1は、第2の経路Bを通過し、圧接搬送ローラ5により印刷部6へと搬送される。図13はこのときの状態を示す。
【0037】
用紙検出センサ10により用紙後端が検出されると(ST11)、インクリボンを次の色(最初はイエロー(Y)色)に設定し(ST12)、裏面印刷モードを設定する(ST13)。この裏面印刷モードでは、ソレノイド44がオフされ、圧接搬送ローラ5が逆転し、リフタ62が下降し、プラテン61が逆転する。ボビン71は駆動を維持する。これにより、用紙1は逆方向に搬送されながら、その裏面は印刷部6によりインクリボンの色に印刷される。また、印刷後は第2の経路Bを通過し、圧接搬送ローラ5により用紙反転部4へと搬送される。図14は、そのときの状態を示している。
【0038】
上記裏面印刷モードで印刷を行って用紙先端が印刷部6を通過すると(ST14)、用紙1の逆方向への搬送は一端停止する(ST15)。このとき、用紙1の先端は圧接搬送ローラ5で圧接されたままである。そして、ST16に進み、順方向搬送の制御が行われる。この順方向搬送の制御では、図6の給紙モードのときの制御と同じ制御が行われる。したがって、用紙1は下流方向に搬送されていく。ST17で印刷終了でなければ(全ての色についての印刷が終了していなければ)、用紙1の後端が用紙検出センサ10により検出されるまで順方向搬送を行い(ST18)、用紙1の後端が検出されると、ST12に戻り、次の色の印刷が上記と同じ制御により行われる。
【0039】
なお、ステップST14において、用紙1の逆方向への送り量を計数することにより、用紙1の先端が印刷部6を通過するタイミングを容易に検出することができる。その場合、モータ11(図3参照)の回転軸に回転検出センサを設け、このセンサにより検出するパルス数により上記送り量を計数することが可能である。その他、用紙1の先端を検出するセンサを圧接搬送ローラ5の上流側近傍に設け、このセンサにより用紙1の先端が印刷部6を通過するタイミングを検出することもできる。
【0040】
上記ST10からST18までの制御中は、用紙1は常に圧接搬送ローラ5で圧接されている。したがって、用紙1の往復動作中に、ピッチズレ等が生じることはなく、高精度で用紙1の順方向への搬送、及び逆方向への搬送が行われる。このようにして、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色に対して印刷を行うと、ST17により印刷終了と判定され、用紙1は、排出ローラ8により装置外部に排出される。図15は、こ
のとき状態を示している。
【0041】
以上の動作により、1枚の用紙1に対し、最初はその表面に対して、黒(B)の印刷が行われ、続いて、裏面に対して、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の印刷が行われて装置外部に排出される。したがって、葉書に印刷する場合、他の装置やメモリ媒体から適当な宛て名データとカラー画像データを入力することにより、葉書の表面には黒色で宛て名を印刷し、裏面にカラー画像を印刷して排出することができる。これらの印刷は自動的に行われ、また、相対的に安価な黒色の熱溶融リボンと、相対的に高細精度な印刷が可能なイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の熱昇華リボンとを使用しているため、全体として安価で美しいカラー画像の葉書印刷を行うことができる。」
エ 上記ウ及び図8乃至図15より、一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷を施す装置が看取できる。

上記ア乃至エの記載から、引用刊行物2には、次の技術事項(以下「引用刊行物2記載の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。

「一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷を施す装置。」

(3)引用刊行物3
当審の拒絶の理由に引用し、本願の出願日前である平成13年2月6日に頒布された刊行物である特開2001-31263号公報(以下「引用刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリンタ及び給紙マガジンに関し、更に詳しくは記録紙の切断により発生する切屑を集積することができる給紙マガジン及びプリンタに関する。」
イ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述したように、切屑を集積する屑箱をプリンタ内に独立して設けると、屑箱に切り屑が溜まった頃を見計らってその都度屑箱を開けて切屑を取り出さなければならならず、手間がかかるという問題があった。また、切屑の取りだし自体が忘れられやすく、屑箱に切屑が過剰に堆積したままプリントが行われるという懸念もある。更に、屑箱を独立して設ける場合、屑箱専用のスペースが必要になるためプリンタの外形が大型化し、プリンタの小型化の障害になるという問題があった。
【0006】本発明は、記録紙を切断した際に生じる切屑を、特別な取り出し作業を必要とせず、定期的に且つ容易にプリンタ内から除去可能な給紙マガジン及びプリンタを提供することを目的とする。」
ウ 「【0011】図3において、感熱プリンタ10の内部には、途中で2方向に枝分かれする記録紙搬送路15に沿って、給紙ローラ14、定着ランプ16、搬送ローラ17a,搬送ローラ17b、熱記録を行うサーマルヘッド18とこれに対面するプラテンドラム19が配置されている。搬送ローラの下流には、感熱記録紙20の余白を切断するための切断装置21が設けられている。」
エ 「【0014】切断装置21は、前端切断用カッタ22と、後端切断用カッタ23と、一対のスリッタ24とから構成されている。前端切断用カッタ22は、記録紙の主走査方向に延びた固定刃22aと可動刃22bとから構成されている。そして、可動刃22bが降下して感熱記録紙20の記録領域よりも前端側の余白である前端余白部を切り落とす。同様に、後端切断用カッタ23も固定刃23aと可動刃23bとから構成され、感熱記録紙20の記録領域よりも後端側の余白である後端余白部を切り落とす。」
オ 「【0025】余白の切断では、感熱記録紙20の前端側切断予定位置が前端切断用カッタ22に達すると一旦紙送りを停止し、可動刃22bが降下して感熱記録紙20の記録領域よりも前端側の余白である前端余白部を切り落とす。この後再び紙送りを行ない、感熱記録紙20の後端側切断予定位置が後端切断用カッタ23に達すると再び紙送りを停止し、可動刃23bが降下して感熱記録紙20の記録領域よりも後端側の余白である後端余白部を切り落とす。なお、前端側の切断カッタと後端側の切断カッタとを1つで兼用しても良い。
【0026】前端切断用カッタ22や後端切断用カッタ23で切り落とされた前端余白部や後端余白部等の切屑40は、開口28を通って屑受口27を介して露出している切屑収納部32内に落下し堆積する。…」
カ 図1より、底板と上板とを有する記録紙搬送路15が看取でき、図1及び上記オの「後端余白部等の切屑40は、開口28を通って屑受口27を介して露出している切屑収納部32内に落下し堆積する」との記載から、搬送ローラ17bと底板との間もしくは、後端切断用カッタ23と底板との間に切断された後端余白部等の切屑40が通過する隙間が形成されていることが看取できる。

上記ア乃至カの記載から、引用刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。

「内部には、途中で2方向に枝分かれする底板と上板とを有する記録紙搬送路15に沿って、給紙ローラ14、定着ランプ16、搬送ローラ17a,搬送ローラ17b、熱記録を行うサーマルヘッド18とこれに対面するプラテンドラム19が配置され、搬送ローラの下流には、感熱記録紙20の余白を切断するための切断装置21が設けられている、感熱プリンタ10であって、
搬送ローラ17bと底板との間もしくは、後端切断用カッタ23と底板との間に切断された後端余白部等の切屑40が通過する隙間が形成されている、感熱プリンタ10。」

第4 対比
そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
1.後者の「印字済の記録紙」、「記録紙の先端部と後端部の不要部分」、「切断して除去するカッタユニット」、及び「第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対およびカッタユニットの下方に配置され、記録紙からの切り屑を受けるごみ箱」は、それぞれ、前者の「印刷済の枚葉基材」、「枚葉基材の先端部と後端部の余白」、「切断して除去するカッタ」、及び「排出ローラおよびカッタの下方に配置され、枚葉基材からの切断カスを受けるカス受け」に相当する。
2.後者の「印字済の記録紙を排出させる第2排出ローラ」は、その下流側にカッタユニットが設けられているから、前者の「印刷済の枚葉基材を排出させる排出ローラ」に相当する。そうすると、後者の「切断して除去するカッタユニット」は、排出ローラの下流側に設けられ枚葉基材の先端部と後端部の余白を切断して除去するカッタといえる。
3.後者の「記録装置」は、「先端カットが終了すると、所定長さに対応したパルス数だけ搬送モータを駆動し、第1排出ローラ対および第2排出ローラ対により記録紙を搬送し、その後、ロータリーカッタ(カッタユニット)が作動され、記録紙は、その後端から所定長さだけ後端カットされ、搬送モータを所定パルス数だけ逆回転駆動して第2排出ローラ対を逆回転駆動し、切り屑を印字部に向けて戻すように搬送し、これにより、切り屑は、第2排出ローラ対から離れて落下し、ごみ箱内に回収される」ものであるから、第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対およびカッタユニットを駆動制御する制御装置を備えていることは明らかであるし、カッタユニットで記録紙の後端をカットするためには、記録紙はカッタユニットから排出方向に位置させなければならず、カッタユニットから見れば外方へ排出することになるから、カッタにより枚葉基材の後端部の余白を切断する際、排出ローラを正転させて枚葉基材を外方へ排出させ、後端部の余白の下流端がカッタに対応する位置にきたとき、排出ローラを停止してカッタを駆動させ後端部の余白を切断して除去し、その後排出ローラを逆転させて後端部の余白をカス受け内に落下させる、といえる。
4.後者の「上板ガイド部材」は、「プラテンローラと第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対との間には、排紙処理の際の記録紙の搬送を案内する」ものであるから、排出ローラの上流側に、上板を有する基材搬送路が設けられているといえる。
5.後者の「記録装置」は、「第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対」、「カッタユニット」、「ごみ箱」,及び「第1排出ローラ対及び第2排出ローラ対およびカッタユニットを駆動制御する制御装置」を備えるものであるから、前者の「枚葉基材の切断装置」を包含する。

したがって、両者は、
「印刷済の枚葉基材を排出させる排出ローラと、
排出ローラの下流側に設けられ枚葉基材の先端部と後端部の余白を切断して除去するカッタと、
排出ローラおよびカッタの下方に配置され、枚葉基材からの切断カスを受けるカス受けと、
排出ローラおよびカッタを駆動制御する制御装置とを備え、
制御装置はカッタにより枚葉基材の後端部の余白を切断する際、排出ローラを正転させて枚葉基材を外方へ排出させ、後端部の余白の下流端がカッタに対応する位置にきたとき、排出ローラを停止してカッタを駆動させ後端部の余白を切断して除去し、その後排出ローラを逆転させて後端部の余白をカス受け内に落下させ、
排出ローラの上流側に、上板とを有する基材搬送路が設けられている枚葉基材の切断装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、「印刷済の枚葉基材には、一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷が施され、カッタは一方の面と他方の面に互いに逆方向に施される両面印刷により決定された枚葉基材の先端部の余白および後端部の余白を切断」するものであるのに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。
[相違点2]
本願発明1が、「底板と上板とを有する基材搬送路が設けられ、排出ローラと底板との間に切断された後端部の余白が通過する隙間が形成され、上板は底板から更に排出ローラ近傍まで延びている」ものであるのに対して、引用発明1は、「プラテンローラと第2排出ローラ対との間には、排紙処理の際の記録紙の搬送を案内する上板ガイド部材が設けられ」ているものである点。

第5 判断
上記各相違点について検討する。
1.[相違点1]について
相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の「一方の面と他方の面に互いに逆方向に両面印刷が施」すことは、引用刊行物2記載の技術事項に示されているように、当該技術分野において周知の技術手段といえる。
そして、引用発明1も引用刊行物2記載の技術事項も、記録装置である点で技術分野が共通し、高精度な印刷が可能な印刷装置を提供するという内在する課題を有する点でも共通するものであるから、引用発明1に、引用刊行物2記載の技術事項を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
ここで、引用発明1に、引用刊行物2記載の技術事項を適用すれば、引用発明1は、先端カットが終了すると、記録紙の後端から所定長さだけ後端カットする記録装置であるから、必然的に、カッタは一方の面と他方の面に互いに逆方向に施される両面印刷により決定された枚葉基材の先端部の余白および後端部の余白を切断するものとなる。
そうすると、引用発明1において、引用刊行物2記載の技術事項を適用することにより、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

2.[相違点2]について
引用発明3の「底板と上板とを有する記録紙搬送路15」、「搬送ローラ17b」、「切断された後端余白部」、及び「隙間」は、それぞれ、本願発明1の「底板と上板とを有する基材搬送路」、「排出ローラ」、「切断された後端部の余白」、及び「隙間」に相当する。
そうすると、引用発明3には、上記相違点2に係る本願発明1の「底板と上板とを有する基材搬送路が設けられ、底板との間に切断された後端部の余白が通過する隙間が形成され」ている点が記載されている。
そして、引用発明1も引用発明3も、記録装置である点で技術分野が共通し、画像再現後の記録紙の不要部分をカットする機能を備えた記録装置であって、コンパクトな記録装置を提供するという課題を有する点でも共通するものであるから、引用発明1に、引用発明3を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
ここで、引用発明1は、「プラテンローラと第2排出ローラ対との間には、排紙処理の際の記録紙の搬送を案内する上板ガイド部材が設けられ、先端カットが終了すると、所定長さに対応したパルス数だけ搬送モータを駆動し、第1排出ローラ対および第2排出ローラ対により記録紙を搬送し、その後、ロータリーカッタ(カッタユニット)が作動され、記録紙は、その後端から所定長さだけ後端カットされ、搬送モータを所定パルス数だけ逆回転駆動して第2排出ローラ対を逆回転駆動し、切り屑を印字部に向けて戻すように搬送し、これにより、切り屑は、第2排出ローラ対から離れて落下し、ごみ箱内に回収される」ものであるから、引用発明1に、引用発明3を適用すれば、上板ガイド部材と底板とで基材搬送経路が形成されることとなり、必然的に、切断された後端部の余白は、第2排出ローラ対から離れて落下する、すなわち、排出ローラと底板の間の隙間を通過することとなる。そして、本願明細書をみても、本願発明において、「上板は底板から更に排出ローラ近傍まで延びていること」とした点に格別な作用効果は認められないから、相違点2に係る本願発明1の「上板は底板から更に排出ローラ近傍まで延びていること」とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項である。
そうすると、引用発明1において、引用発明3を適用することにより、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

そして、本願発明1の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明1、引用刊行物2記載の技術事項及び引用発明3から、当業者が予測しうる範囲内のものである。

よって、本願発明1は、引用発明1、引用刊行物2記載の技術事項及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることが出来ない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1、引用刊行物2記載の技術事項及び引用発明3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。


よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-08 
結審通知日 2017-08-15 
審決日 2017-08-28 
出願番号 特願2012-68219(P2012-68219)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨江 耕太郎  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 森次 顕
藤本 義仁
発明の名称 枚葉基材の切断装置  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 中村 行孝  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  

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