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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G21C
管理番号 1333640
審判番号 不服2015-21066  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2017-10-11 
事件の表示 特願2012-556038「リアクタコンポーネント」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 9月 9日国際公開、WO2011/108974、平成25年 6月10日国内公表、特表2013-521493〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年2月23日(パリ条約による優先権主張 2010年3月1日 スウェーデン)を国際出願日とする出願(特願2012-556038号)であって、平成26年11月26日付けで拒絶理由が通知され、平成27年2月25日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年7月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年11月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成28年7月8日付けで拒絶理由の通知がなされ、同年10月12日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされ、同年11月2日付けで回答書提出の期限を指定して審尋がなされたが、当該期限内に請求人から回答書は提出されなかった。

第2 本願の請求項1の記載
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成28年10月12日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「核分裂リアクタにおける燃料要素内の燃料棒を分離するために用いられるのに適合し、金属材料のみからなるコア(2)およびセラミック材料のみからなる層(3)を備え、前記層(3)は、前記コア(2)を少なくとも部分的に包囲する、スペーサ(60)であって、前記コア(2)と前記層(3)との間に中間層(4)を備え、前記中間層(4)は、前記コア(2)から前記層(3)への前記金属材料の濃度の減少、および前記コア(2)から前記層(3)への前記セラミック材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する、スペーサ(60)。」

第3 特許法第36条第4項第1号の違反について
1 当審における拒絶理由
当審において(平成28年7月8日付けで)通知した、本願は特許法第36条第4項第1号の規定に違反しているとした拒絶理由は、以下のとおりである。
「第3 理由(3)について
本願の請求項1の「前記中間層(4)は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の減少、および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の増加を含む材料勾配を有する」、及び、請求項2の「前記材料勾配は、前記コア(2)から前記層(3)への前記第1の材料の濃度の連続した減少、および前記コア(2)から前記層(3)への前記第2の材料の濃度の連続した増加を含む」について、発明の詳細な説明には、「金属材料(例えばインコネルまたはジルカロイ)のコア2」および「セラミック材料(例えば二酸化ジルコニウム(ZrO_(2)))の層3」の間に中間層4について「コア2から層3まで物質特性の漸次的な遷移を形成する」と記載されているのみで、その具体的形成方法については、何等記載されていない。
すなわち、発明の詳細な説明には、当該発明のスペーサの製造方法についての開示はなく、明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に違反している。
(なお、上記「金属材料(例えばインコネルまたはジルカロイ)のコア2」および「セラミック材料(例えば二酸化ジルコニウム(ZrO_(2)))の層3」の間に中間層4について「コア2から層3まで物質特性の漸次的な遷移を形成する」特に「連続した減少」及び「連続した増加」を形成することが、その開示がなくとも、当業者が技術常識から実施できるものであることは自明であるとするならば、その点が技術常識であることの証拠を示してその旨を主張されたい。)
よって、本願は拒絶されるべきものである。」

2 拒絶理由に対する請求人(出願人)の対応
上記の拒絶理由に対して、請求人は、平成28年10月12日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1を上記「第2 本願の請求項1の記載」に記載したとおりに補正するとともに、同日付けで意見書を提出し、次のように主張している。
「2-2.理由(3)に関して、本願のスペーサの製造方法については、本願明細書及び図面に実質的に開示され又は少なくとも示唆されていますから、当業者が本願明細書及び図面の記載を読めば、その技術常識から実施できるものであると請求人は思料します。以下、これについてご説明します。
本願は、公開公報(特表2013-521493号)に記載のとおり、発明の名称を「リアクタコンポーネント」とする出願であり、発明の詳細な説明には、「リアクタコンポーネントの1つの例は、いわゆるスペーサである」(段落0005参照)として、本願のスペーサは、発明の詳細な説明に記載されるリアクタコンポーネントの1つの例であることが記載されています。
一方、リアクタコンポーネントの製造方法については、発明の詳細な説明につぎのように記載されています(段落0016参照)。(なお、下線は請求人において付したものです。)
「本発明の実施形態によれば、リアクタコンポーネントは、焼結によって製造される。そしてそれは、コンポーネントに、第1の材料および第2の材料の共に良好な焼結を提供する焼結方法は、圧力を加え、および/または温度を上昇させることを含み得るか、または組み合わされ得る。焼結方法は、焼結されたコンポーネントのいくつかの物質特性(例えば粒子サイズおよび孔隙率(porosity))が広い間隔の範囲内で制御可能であることを保証する。焼結方法は、第2の材料が第1の材料を少なくとも部分的に包囲するような仕方で、第1の材料および第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、コアと層との間に中間層が形成されるように、第1の材料および第2の材料を共に、リアクタコンポーネントに焼結する工程と、を含むことができる。第1の材料および第2の材料を供給する工程において、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成される。中間ゾーンは、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第1の材料の濃度の減少、および、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第2の材料の濃度の増加、を含む。さらにまた、第1および第2の材料が、共にもたらされて中間ゾーンを形成するような仕方で、スペースは振動されることができる。供給される第1の材料は、粉末形状であり得る。供給される第2の材料は、粉末形状であり得る。」
ここで、本願のスペーサは、発明の詳細な説明に記載されるリアクタコンポーネントの1つの例であること、上記のとおりであることに加えて、リアクタコンポーネント1の断面を示す図1におけるコア2、層3、中間層4の配置と、スペーサ60のスペーサ壁64の断面を示す図6bにおけるコア2、層3、中間層4の配置とは、同じ構成です。
そのため、上記のリアクタコンポーネントの製造方法は、本願のスペーサ60のスペーサ壁64の製造方法にも適用することができるといえます。
具体的には、例えば、粉末形態の金属材料がツールのスペースの内側ゾーンに供給されることができ、そして、粉末形態のセラミック材料がツールのスペースの外側ゾーン(この外側ゾーンは内側ゾーンを包囲する)に供給されることができます。ツール延いてはスペースは、次いで、中間ゾーンにおいて金属材料及びセラミック材料を混合するために、焼結工程に先立って、振動されることができます。振動によるこの混合は、内側ゾーンから外側ゾーンへの金属材料の連続した減少、及び外側ゾーンから内側ゾーンへのセラミック材料の連続した減少、を生じさせます。
したがって、このようにして得られたスペーサ壁64を図6aに示すように組み立てることによって、スペーサ60を製造することができます(スペーサ壁64を組み立てる方法については、段落0042参照。)。
こうして得られたスペーサは、本願の請求項1に係る発明を実施したスペーサであるといえることはもちろん、内側ゾーンから外側ゾーンへの金属材料の連続した減少、及び外側ゾーンから内側ゾーンへのセラミック材料の連続した減少を有していますから、本願の請求項2に係る発明を実施したスペーサであるともいえます。
また、リアクタコンポーネントの製造方法については、発明の詳細な説明につぎのようにも記載されています(段落0017参照)。
「さらにまた、スペースは、内側部分を備える内側分離部材、および外側部分を備える外側分離部材によって分けられることができ、外側分離部材と内側分離部材との間に中間部分が形成される。分離部材は、製造されるコンポーネントの形状に依存するパイプとし
て、例えば構成されることができる。中間部分は、中間ゾーンを形成するために、第1の材料および第2の材料の混合物が供給される。中間部分もまた、少なくとも中間部材の分割部分に分けられることができる。分割部分は、第1の材料の濃度と第2の材料の濃度との間で異なる比率の混合物が供給される。」
段落0016の記載事項に基づく上記の考察を前提にすれば、段落0017の記載事項に基づいてスペーサを製造することもできるといえます。そして、こうして得られたスペーサは、本願の請求項1に係る発明を実施したスペーサであるといえます。
したがって、本願の発明の詳細な説明(段落0005、0016、0017、0042)及び図面(図1、図6a、6b)には、本願発明のスペーサの製造方法について実質的に開示されているといえる根拠が記載されている、と請求人は思料します。
このご説明により、理由(3)は、解消したものと思料します。」

3 合議体から請求人への審尋について
(1)審尋をした趣旨
上記「2」における請求人が同年10月12日付けで提出した意見書で主張する内容について、審判合議体は、上記「1」の拒絶理由を解消するには不十分なものであって、上記の拒絶理由は、解消していないものとの心証を得た。しかしながら、上記「1」の拒絶理由の趣旨が明確に請求人に伝わっていなかった可能性もあり、意見書を補充する機会を与えることが必要ではないかと考え、上記「1」の拒絶理由について、上記「2」で請求人が意見書で主張した内容も踏まえた上で補足して説明し、請求人に、回答書提出の期限を指定して、下記の合議体からの審尋に回答するように求めた。

(2)審尋の概要
審尋の概要は次のとおりである。
「3 理由(3)についての再度の説明
上記の意見書における請求人の主張内容によれば、粉末形態の金属材料と、粉末形態のセラミック材料をそれらの混合部を含んで一度に焼結してスペーサを形成することになる。
しかしながら、一般に、金属とセラミックでは融点が大きく異なり(例えば、本件明細書の【0043】に挙げられている金属、セラミックの例では、金属のインコネルの融点は1370?1425℃、ジルカロイの融点が約1850℃であるのに対し、セラミックの二酸化ジルコニウムの融点は約2715℃である)、同じ温度で一度に焼結することには困難を伴う。
すなわち、上記の粉末形態の金属材料と、粉末形態のセラミック材料をそれらの混合部を含んで一度に焼結するには焼結の条件や装置の特殊な設定が必要であり、例えば、金属及びセラミックそれぞれの具体的組成、それぞれの粉末の粒度、焼結の温度や圧力、時間などの条件、の他、具体的な焼結の手法(例えば、本件明細書の【0035】に挙げられている冷間静圧形成法、熱間水圧成形法、放電プラズマ焼結、又はその他の焼結法の何れの手法をどのような装置を用いて行うのかということ)についての開示がなくては、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということができないものと認められる。
ましてや、本件の請求項2の「コア(2)から層(3)への」「金属材料の濃度の連続した減少」及び「セラミック材料の濃度の連続した増加」を形成することが、その開示がなくとも、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているということはできない。
ところが、本件明細書の発明の詳細な説明には、それらの開示が一切のないのであるから、本件の明細書の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない。
ただし、粉末形態の金属材料と、粉末形態のセラミック材料をそれらの混合部を含んで一度に焼結することが、本願の優先日当時において、技術常識から、その開示がなくとも当業者が実施し得ることであるという事情があれば、本件明細書の発明の詳細な説明が当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができない、ということもできないので、その場合には、上記の点が技術常識であることを、本願の優先日前に公開されている証拠を示して、説明をしていただきたい。
平成28年10月12日付けで提出した意見書では、上記の点が技術常識であることを示す何らの証拠も挙げられていないのであるから、上記の拒絶理由の理由(3)は解消されていない。
<審尋の内容>
したがって、請求人は、上記の点が技術常識であることを示す証拠挙げることが可能であるか否かについて回答し、可能である場合には、その証拠を提示して下さい。不可能である場合には、できるだけ速やかにその旨を回答して下さい。 」

(3)審尋に対する請求人の回答について
指定された期限内に、請求人から回答書は提出されなかった。

4 当審の判断
本願の発明の詳細な説明には、核分裂リアクタ内で用いられるリアクタコンポーネントの製造方法に関し、
「【0016】
本発明の実施形態によれば、リアクタコンポーネントは、焼結によって製造される。そしてそれは、コンポーネントに、第1の材料および第2の材料の共に良好な焼結を提供する焼結方法は、圧力を加え、および/または温度を上昇させることを含み得るか、または組み合わされ得る。焼結方法は、焼結されたコンポーネントのいくつかの物質特性(例えば粒子サイズおよび孔隙率(porosity))が広い間隔の範囲内で制御可能であることを保証する。焼結方法は、第2の材料が第1の材料を少なくとも部分的に包囲するような仕方で、第1の材料および第2の材料をツールのスペースに供給する工程と、コアと層との間に中間層が形成されるように、第1の材料および第2の材料を共に、リアクタコンポーネントに焼結する工程と、を含むことができる。第1の材料および第2の材料を供給する工程において、スペースの内側部分とスペースの外側部分との間に中間ゾーンが形成される。中間ゾーンは、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第1の材料の濃度の減少、および、スペースの内側部分からスペースの外側部分への第2の材料の濃度の増加、を含む。さらにまた、第1および第2の材料が、共にもたらされて中間ゾーンを形成するような仕方で、スペースは振動されることができる。供給される第1の材料は、粉末形状であり得る。供給される第2の材料は、粉末形状であり得る。」(下線は当審において付された。)
と記載されており、また、上記「1」の拒絶理由において述べたように、上記の「第1の材料」および「第2の材料」のそれぞれの具体的材料として、「金属材料(例えばインコネルまたはジルカロイ)」および「セラミック材料(例えば二酸化ジルコニウム(ZrO_(2)))」が例示されている。
そうすると、上記の「中間ゾーン」においては、金属材料の「インコネルまたはジルカロイ」とセラミック材料の「二酸化ジルコニウム(ZrO_(2))」が混在した状態で焼成して焼結がなされることになる。
ここで、上記の当審での審尋でも述べたように「金属のインコネルの融点は1370?1425℃、ジルカロイの融点が約1850℃であるのに対し、セラミックの二酸化ジルコニウムの融点は約2715℃である」。そして、セラミックの焼結は、融点の7割以上の温度で行われる場合もあることは、周知の技術事項である(例えば、特開平2-199069号公報第2頁左下欄第12?16行「強固なセラミックス粉末粒子の粒間結合の形成に際して・・・・一般的にその焼結温度は、対象材料の融点の7割程度を必要とし、・・・」、特開平10-46211号公報【0009】内「焼結温度は概ね融点の70?90%で行うとよい。」などの記載参照)から、上記の金属材料とセラミック材料を混在させた部材の焼結においては、セラミックの焼結温度が金属材料の融点を超えてしまい、特殊な条件(各粉末材料それぞれの粒径、焼結温度、圧力、処理時間等に関しての特定の条件)のもとでの焼成なければ、混合物をうまく焼結できないであろうことは容易に想定し得るところである。
そのような焼成のための条件等が開示されていない本願明細書の発明の詳細な説明の記載では、当業者がその発明を実施できる程度に十分かつ明確に記載されたものではないといえる。
そして、その点を、具体的に指摘し、さらに検討して意見を述べる機会を与えるためなされた上記の審尋に対して、回答書は提出されなかったのであるから、上記の「1」の当審における拒絶理由が解消していないと判断せざるを得ない。

第4 結言
以上のとおりであり、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たさないから拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-01 
結審通知日 2017-05-09 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2012-556038(P2012-556038)
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 青木 洋平  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 森林 克郎
松川 直樹
発明の名称 リアクタコンポーネント  
代理人 正林 真之  
代理人 林 一好  
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