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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1333654 |
審判番号 | 不服2016-7375 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-05-19 |
確定日 | 2017-10-11 |
事件の表示 | 特願2015- 75878「ダイナミック光起電力モジュール及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月25日出願公開、特開2016- 63212〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月2日(パリ条約による優先権主張2014年9月19日、米国)の出願であって、平成27年5月11日付けで拒絶理由が通知され、同年11月26日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたが、平成28年1月8日付けで拒絶査定がなされた。 本件は、これに対して、平成28年5月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 本件補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容 本件補正により、本願の特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の(平成27年11月26日付けの手続補正により補正された)特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2である、 「 【請求項1】 モジュール電圧及びモジュール電流を有し、直列に接続する複数のセルスタックを備えるダイナミック光起電力モジュールであって、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックはセルスタック電圧及びセルスタック電流を有し、 前記複数の光起電力セルにおける各光起電力セルは、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電圧が前記モジュール電圧と等しく、かつ、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電流が前記モジュール電流と等しくなるように、セル電圧及びセル電流を有することを特徴とするダイナミック光起電力モジュール。 【請求項2】 請求項1記載のダイナミック光起電力モジュールであって、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは、同一のセル電圧及びセル電流を有する同一の複数の光起電力セルを備え、 前記光起電力セルの数は前記モジュール電流と前記セル電流との商に等しく、 前記複数のセルスタックの数は前記モジュール電圧と前記セル電圧との商に等しいことを特徴とするダイナミック光起電力モジュール。」 から、次のように補正されたものと認める。 「 【請求項1】 モジュール電圧及びモジュール電流を有し、直列に接続する複数のセルスタックを備えるダイナミック光起電力モジュールであって、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックはセルスタック電圧及びセルスタック電流を有し、 前記複数の光起電力セルにおける各光起電力セルは、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電圧が前記モジュール電圧と等しく、かつ、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電流が前記モジュール電流と等しくなるように、セル電圧及びセル電流を有し、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは、同一のセル電圧及びセル電流を有する同一の複数の光起電力セルを備え、 前記光起電力セルの数は前記モジュール電流と前記セル電流との商に等しく、 前記複数のセルスタックの数は前記モジュール電圧と前記セル電圧との商に等しく、 前記光起電力セルは、カットされたオリジナルセル電流、オリジナルセル電圧、オリジナルセル長及びオリジナルセル幅を有するオリジナル光起電力セルにより形成され、 2又は複数の光起電力セルが各オリジナル光起電力セルを形成し、 前記セル電圧は前記オリジナルセル電圧と同一の値であり、 前記セル電流は前記オリジナルセル電流と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等しく、 前記セル長は前記オリジナルセル長と同一の長さであり、 前記セル幅は前記オリジナルセル幅と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等しく、 前記各セルスタックにおける光起電力セルの数は2以上であることを特徴とするダイナミック光起電力モジュール。」 (下線は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を引用する請求項2からの補正箇所である。) 2 補正の目的 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項1を引用する請求項2の「光起電力セル」及び「セルスタック」の構成を限定する記載が追加されたものであるから、本件補正の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するか否か)について、以下に検討する。 3 本願補正発明 本願補正発明は、本件補正後の請求項1に記載された事項(上記「1」で、本件補正後の請求項1として記載した事項)により特定されるものと認められる。 4 引用刊行物 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開2013-197192号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。) ア 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、光発電モジュールを直列に複数接続した直列モジュール部を互いに並列に接続し、同一の直列段に配置された光発電モジュールが互いに並列に接続されている光発電システムに関する。 【背景技術】 【0002】 太陽電池を適用した光発電の技術の進展に伴い、光発電による大電力の発電が要求されるようになっている。また、大電力を安定的に発電するときの障害となっている出力の低下について、太陽電池の接続、太陽電池の配置、太陽電池に対して落ちる日陰に対する日陰対策など種々の提案がされている。 【0003】 中でも日陰対策は、通常想定できない出力の低下をもたらすことから、予め日陰を想定して対策を施すことが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0004】 【特許文献1】特開2002-237612号公報」 イ 「【発明を実施するための形態】 【0032】 以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。初めに本発明(光発電システム)に適用される光発電モジュールアレイの原理を説明し、その後で図6A以下を参照して実施の形態について説明する。 【0033】 <本発明に適用される光発電モジュールアレイの原理について> 図1Aないし図5を参照して光発電モジュールアレイMAa、光発電モジュールアレイMAbの構成および作用効果について、「原理」として説明する。また、作用効果の理解を容易にするため、従来の光発電モジュールアレイMApについて先に説明する。 【0034】 図1Aは、本発明と比較される従来の光発電モジュールアレイMApの等価回路図(光発電モジュールMの接続図)である。 【0035】 図1Bは、図1Aに示した光発電モジュールアレイMApでの光発電モジュールMのレイアウトパターンおよび想定した日陰SHを模式的に示す模式図である。 【0036】 従来の光発電モジュールアレイMApは、複数(例えば3個)の光発電モジュールM(説明の都合上、それぞれの光発電モジュールMに配置に応じた個別の符号を追加してM・・の形で示す。なお、それぞれを特に区別する必要が無い場合は、単に光発電モジュールMとすることがある。以下、光発電モジュールアレイMAa(図2A、図2B)、光発電モジュールアレイMAb(図3A、図3B)においても同様である。)を直列接続して形成した直列モジュール部MSを備える。 【0037】 光発電モジュールMは、内部に複数の光発電素子D(図6B参照)を備えるが、理解を容易にするために方向性と電流経路を示す単一のダイオード記号で簡略化して示される。以下に示す光発電モジュールMにおいても同様である。」 ウ 「【0090】 光発電モジュールMは、それぞれモジュール実装部Mjを備える。モジュール実装部Mjは、例えば1枚の透光性絶縁基板に複数の光発電素子Dを実装する態様とされている。また、モジュール実装部Mjには、第1端子1p、第2端子1mが配置されている。 【0091】 なお、光発電システム1における光発電モジュールMのレイアウト状態については、図7A(「原理」の欄の光発電モジュールアレイMAaに相当する。)、図7B(「原理」の欄の光発電モジュールアレイMAbに相当する。)で説明する。 【0092】 図6Bは、図6Aの光発電モジュールMに内蔵された光発電素子Dの接続例を示す接続図である。 【0093】 光発電モジュールM(光発電モジュールM1、・・・、光発電モジュールM9)は、それぞれ光発電素子D(例えば、光発電素子D1、・・・、光発電素子D9、つまり、光発電素子D)を備える。光発電素子D1?光発電素子D9は、例えば直列接続されて直列素子部DSを構成し、直列素子部DSは、更に並列接続されている。つまり、本実施の形態では、光発電モジュールMのそれぞれに日陰対策が施され、光発電素子Dは、直列接続および並列接続され、2次元の直列並列接続点を介して接続されている。なお、光発電素子Dは、具体的には太陽電池セルなどである。 【0094】 本実施の形態に係る光発電モジュールMは、複数(例えば9個)の光発電素子D(光発電素子D1?光発電素子D9)を直列接続した直列素子部DSを複数備え、それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続(配置)された光発電素子Dを互いに並列配線Wpを介して並列に接続した2次元接続点を有する。 【0095】 また、光発電モジュールMは、2次元接続点を有する接続形態に加えて、更に、光発電素子Dの配置(レイアウトパターン)が等価回路での配置に対して異なる配置状態(すなわち、ランダムに分散して配置された分散配置の状態)とされていることが好ましい。 【0096】 換言すれば、光発電モジュールMでは、直列素子部DSは、互いに並列に接続され、同一の直列段に配置(接続)された光発電素子Dが互いに並列に接続されている。また、直列素子部DSのそれぞれで同一の直列段に配置された光発電素子Dは、2次元に分散して配置(ランダムに分散して配置)されている。 【0097】 光発電素子Dをランダムに分散して配置した場合、具体的には(配置の具体例については、表示された対象は異なるが、図3A、図3Bを参照することができる。)、等価回路で例えば上段に配置された光発電素子Dがレイアウトパターンでは、上段、中段、下段のいずれかに分散して配置され、また、等価回路で同一の直列段に配置された光発電素子Dの左右の配置位置が、レイアウトパターンでは、等価回路での配置に対して異なって分散して配置される。 【0098】 上記したとおり、光発電モジュールMは、複数の光発電素子Dが直列接続された直列素子部DSを備え、直列素子部DSは、互いに並列に接続されて同一の直列段に配置された光発電素子Dが互いに並列に接続されている。また、直列素子部DSのそれぞれで同一の直列段に配置された光発電素子Dは、2次元に分散して配置されている。 【0099】 したがって、本実施の形態に係る光発電システム1は、光発電モジュールMにおける光発電素子Dが直列並列に2次元で接続され、また、2次元で分散して配置されていることから、光発電モジュールMにおいても日陰の影響を抑制するので、日陰耐性を更に向上する。 【0100】 なお、光発電素子Dは、単なる直列接続であっても良い。つまり、光発電モジュールMにおける光発電素子Dの接続形態については、所定の出力が得られるものであれば、どのような接続形態でも良い。」 ウ 「【図6A】 【図6B】 」 すると、上記引用文献1の記載事項によれば、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DSを複数備え、それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子Dを互いに並列配線Wpを介して並列に接続した2次元接続点を有する光発電モジュールMであって、 光発電素子Dは、太陽電池セルであり、 光発電モジュールMにおける光発電素子Dが直列並列に2次元で接続されていることから、光発電モジュールMにおいても日陰の影響を抑制するので、日陰耐性を更に向上する、光発電モジュールM。」 (2)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開平7-106619号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付したものである。) ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、太陽等の光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電システムにおいて、屋根等に複数枚並べて設置される太陽電池モジュールに関するものである。 【背景技術】 【0002】 主な材料としてシリコンを原料とするウエハを用いた結晶系太陽電池モジュールの発電性能は、発電素子である太陽電池セルの性能向上によってモジュールの発電性能の向上がなされている。 【0003】 しかし、セルの効率向上に伴い、電流が大きくなり、モジュール化する際にセル同士を接続する主に銅からなる配線部材(インターコネクタ)での抵抗ロスが大きくなるため、モジュール化後の性能向上分としては、セルの性能向上分がそのまま増えるわけではなく、上記インターコネクタでの抵抗ロスの増加分だけ少なくなってしまう。 【0004】 この改善策として、従来、インターコネクタの断面積を大きくすることにより抵抗ロスを低減する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特開平11-251613号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、従来提案のもののようにインターコネクタの断面積を大きくしようとする場合、幅か厚みのどちらかを大きくする必要があるが、幅を大きくするとセルの受光面積が減少し、発電量を低下させてしまうため、一般的には厚みを大きくすることが考えられるが、インターコネクタをセル上の電極に半田接合する際に付与する熱の影響により、セルに生じる残留応力が大きくなるため、セルが破損する確率が増え歩留まりが悪くなるという問題があった。 【0007】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、インターコネクタの断面積を増加させること無く出力を向上させる太陽電池モジュールを提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる太陽電池モジュールは、短辺長と長辺長との比が1/n:1(nは2以上の整数)である長方形をなす平面形状のうち、片方の長辺とその両端部の短辺との間の角部を斜めにカットした角落とし部が形成され、受光面に、短辺に平行な複数の受光面バス電極を有し、非受光面の受光面バス電極に対応する位置に裏面バス電極を有する、複数枚の太陽電池セルと、複数枚の太陽電池セルのうち、第1の太陽電池セルの受光面バス電極と、第1の太陽電池セルに隣接する第2の太陽電池セルの裏面バス電極とを電気的に接続するインターコネクタと、を備え、第1の太陽電池セルと第2の太陽電池セルとが、角落とし部が形成されている側とは反対側の長辺同士が対向するように配置されていることを特徴とする。 【発明の効果】 【0009】 本発明にかかる太陽電池モジュールによれば、複数のセルを直列接続するインターコネクタに流れる電流を小さくできるため、抵抗ロスを軽減することができ、太陽電池モジュールの出力を向上させることができる。また、セルの基板となる多結晶または単結晶ウエハは正方形が一般的であるが、そのウエハを半分にカットすることにより、容易にセルを得ることができるという効果を奏する。 【0010】 また、第一の太陽電池セルを、n箇所の受光面電極領域のそれぞれの境界において第一の太陽電池セルをn分割し、略長方形の短辺長と長辺長との比が1/n:1(nは2以上の整数)である第二の太陽電池セルを得て、第二の太陽電池セルの受光面バス電極と隣接する太陽電池セルの裏面バス電極とをインターコネクタにより電気的に接続することで、抵抗ロスを軽減する太陽電池モジュールを容易に作製することができるという効果を奏する。」 イ 「【0012】 以下に、本発明にかかる太陽電池モジュールの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。 【0013】 実施の形態1. 図1は、太陽電池モジュールの斜視図であり、太陽電池パネルに枠部材を取り付ける様子を示している。図2は、複数の太陽電池セルがリード線により順次接続されてなるセルアレイが太陽電池パネル内に封止されている様子を示す斜視図である。図3は、太陽電池セルに受光面バス電極を接合した様子を示す上面図である。図4は、太陽電池セルに裏面バス電極を接合した様子を示す裏面図である。図5は、複数の太陽電池セルを直列に接続した様子を上方から見た斜視図である。図6は、複数の太陽電池セルを直列に接続した様子を下方から見た斜視図である。図7は、各部品を積層する状態を示す太陽電池セルの分解斜視図である。図8は、隣接する2つの太陽電池セルの接続状態を示す断面図である。 ・・・ 【0018】 図3,4に示すように本実施の形態の太陽電池セル20は、平面形状が略長方形であり、長方形の短辺長Sと長辺長Lとの比が1/2:1となっている。従来の太陽電池セルは、一般に156mm×156mm或いは125mm×125mmの正方形であるが、本実施の形態の太陽電池セル20は、上記寸法で正方形に作製した太陽電池セルを、接続される際の第1の方向(受光面バス電極(受光面リード接続電極)14が延びる方向)に2分割して作製するので上記形状となっている。 ・・・ 【0023】 分割された太陽電池セル20を得るにあたっては、まず、所定の工程を行うことにより、正方形の基板11に受光面バス電極14、グリッド電極13、裏面集電電極12、及び裏面バス電極15を形成して基礎となる太陽電池セル(第1の太陽電池セル)を作製する。このとき、これら各電極が形成される受光面電極領域と裏面電極領域は、分割する線に合わせて2つの領域に分けて形成しておく、そして、分割線に沿って切断することにより上記長方形の太陽電池セル20を得る。なお、本実施の形態の太陽電池セル20は、正方形に作製した太陽電池セルを二分割しているが、三分割、或いは四分割とさらに多数に分割(n分割)してもよい。n分割する場合には、受光面電極領域と裏面電極領域とをあらかじめn箇所に分けて形成しておく。 ・・・ 【0030】 このような構成の太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セル20を二分割することにより、太陽電池セル20の1枚あたりの電流を半分にすることができるため、電気接続による抵抗損失を低減できる。したがって、分割しない従来の正方形の太陽電池セルを搭載する太陽電池モジュールよりも高出力の太陽電池モジュールとすることができる。 【0031】 実施の形態2. 図9は、実施の形態2の太陽電池モジュールに用いられる太陽電池セルに受光面バス電極を接合した様子を示す上面図である。図10は、同じく太陽電池セルに裏面バス電極を接合した様子を示す裏面図である。図11は、実施の形態2の太陽電池セルを接続する様子を示す上面図である。図12は、実施の形態2のセルアレイの接続のされ方を示す模式図である。本実施の形態の太陽電池セル21は、実施の形態1のものと同じように、正方形の太陽電池セルを受光面バス電極14が延びる方向に二分割して作製され、短辺長Sと長辺長Lとの比が1/2:1となっている(図9)。 ・・・ 【0033】 図11及び図12に示すように、太陽電池セル21が、所定枚数直列に接続されて第1のセルストリング17(17A)が形成されている。また、太陽電池セル21が、同じ枚数だけ直列に接続されて第2のセルストリング17(17B)が形成されている。そして、第1のセルストリング17(17A)と第2のセルストリング17(17B)とが、それぞれの終端部同士をストリングコネクタ16で接合されて、第1の並列接続のセルストリング18(18A)を形成している。さらに、この第1の並列接続のセルストリング18(18A)と同じように接続された第2の並列接続のセルストリング18(18B)とが、ストリングコネクタ16にて直列に接続されている(図12)。そして、同じようにして列接続のセルストリング18の所定列数だけ直列に接続されている。 ・・・ 【0039】 ここで、前述したように、二分割されたセルを所定の枚数だけ直列接続したセルストリングを二組並列接続した並列セルストリングを構成し、その並列セルストリングを全て直列接続するような構成とすれば、そのモジュールの電気出力特性は、電圧が60×V、電流がIとなり、非分割セルを全数直列接続したモジュールと同等の特性となる。したがって、インバータへの接続方法に対して、屋根上でのモジュール配置(屋根上での直・並列接続枚数)を大幅に変えなければならないなどの配慮をする必要がない。さらには既設の太陽光発電システムで従来の非分割セルによるモジュールが故障した場合、特性が同等なので二分割セルによるモジュールを代替品として使用することも可能である。 【0040】 なお、前述したように、二分割されたセルによるモジュールは、電流値が半分になったことによりリード線4,7による抵抗ロスが低減されているが、上記の説明においては、わかりやすくするために抵抗ロス分については無視して説明している。」 エ 「【図3】 【図4】 【図9】 【図11】 【図12】 」 5 対比 (1)本願補正発明と引用発明との対比 ア 引用発明の「太陽電池セルであ」る「光発電素子D」は、本願補正発明の「光起電力セル」に相当する。 イ 引用発明の「光発電モジュールM」と、本願補正発明の「ダイナミック光起電力モジュール」は、「光起電力モジュール」である点で一致する。 ウ 引用発明の「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DSを複数備え、それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子Dを互いに並列配線Wpを介して並列に接続した2次元接続点を有する」構成の、「互いに並列配線Wpを介して並列に接続した」「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」は、本願補正発明の「並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され」る「各セルスタック」に相当し、また、引用発明の「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」は、「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DS」をも構成するのであるから、引用発明の「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DSを複数備え、それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子Dを互いに並列配線Wpを介して並列に接続した2次元接続点を有する」構成は、本願補正発明の「直列に接続する複数のセルスタックを備え」「前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され」る構成に相当する。 また、引用発明の「互いに並列配線Wpを介して並列に接続した」「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」が、並列に複数の「光発電素子D」を含むことは自明であるから、引用発明は、本願補正発明の「前記各セルスタックにおける光起電力セルの数は2以上であること」に相当する構成を備えると認められる。 エ 引用発明の「互いに並列配線Wpを介して並列に接続した」「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」の電圧及び電流は、本願補正発明の「各セルスタック」の「セルスタック電圧」及び「セルスタック電流」に相当する。 すると、引用発明は、本願補正発明の「前記複数のセルスタックにおける各セルスタックはセルスタック電圧及びセルスタック電流を有」する構成に相当する構成を備えると認められる。 オ 引用発明の「互いに並列配線Wpを介して並列に接続した」「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」の電圧がすべて等しいことは、電気回路の技術常識に照らして自明のことであるから、引用発明は、本願補正発明の「前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは、同一のセル電圧」「を有する」「複数の光起電力セルを備え」る構成に相当する構成を有すると認められる。 カ 本願補正発明の「モジュール電圧」は、本願の明細書段落【0059】の「モジュール電圧(Module voltage):モジュール電圧はモジュール内の一連のセルスタックの数をセルスタック電圧(オリジナルソーラーセル電圧)に乗算することにより得られる。」との記載から、セルスタック電圧×セルスタック数、すなわち、「ダイナミック光起電力モジュール」内の総電圧を意味すると解される。 同様に、本願補正発明の「モジュール電流」は、本願の明細書段落【0060】の「モジュール電流(Module current):モジュール電流は、オリジナルソーラーセル電流と等しい、スタックごとのサブセルの数をサブセルの電流(並列電流合計)に乗算することにより得られる。」との記載から、光起電力モジュール電流×光起電力セルに並列数、すなわち、「ダイナミック光起電力モジュール」内の総電流を意味すると解される。 そして、引用発明の「光発電モジュールM」は、「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DS」による「光発電素子D」の電圧に、「光発電素子D」を直列接続した数をかけて得られる「光発電モジュールM」の総電圧であるモジュール電圧を有するといえる。 同様に、引用発明の「光発電モジュールM」は、「互いに並列配線Wpを介して並列に接続した」「それぞれの直列素子部DSにおける同一の直列段に接続された光発電素子D」において、同一の直列段の個々の「光発電素子D」の電流に、同一の直列段に接続された「光発電素子D」の数をかけて得られる「光発電モジュールM」の総電流であるモジュール電流を有するといえる。 また、上述のとおり、引用発明の「光発電モジュールM」は、「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DS」による「光発電素子D」の電圧に、「光発電素子D」を直列接続した数をかけて得られる「光発電モジュールM」の総電圧であるモジュール電圧を有することを言い換えると、「光発電素子D」を直列接続した数は、「光発電モジュールM」の総電圧であるモジュール電圧を、「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DS」による「光発電素子D」の電圧で割った商であるということができる。 すると、引用発明は、本願補正発明の「モジュール電圧及びモジュール電流を有」する「ダイナミック光起電力モジュールであって、」「前記複数の光起電力セルにおける各光起電力セルは、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電圧が前記モジュール電圧と等しく、かつ、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電流が前記モジュール電流と等しくなるように、セル電圧及びセル電流を有し、」「前記複数のセルスタックの数は前記モジュール電圧と前記セル電圧との商に等し」い構成に相当する構成を備えると認められる。 キ 本願補正発明の「ダイナミック光起電力モジュール」の「ダイナミック」は、本願の明細書段落【0014】の「用語「ダイナミック(dynamic)」は、PVモジュールが、部分的又は全体的な遮光、汚れ、不均一な照射、太陽光集光及び空を渡る雲等の異なる利用条件の下で適合可能であり、そして、壊れたセル又はコネクタのような内部モジュール欠陥の効果を消散するということを意味する。」との記載及び本願の明細書の全記載から、日陰のような部分的な遮光による出力の低下などの悪影響をできるだけ少なくするという意味であると解される。 すると、引用発明の「光発電モジュールMにおける光発電素子Dが直列並列に2次元で接続されていることから、光発電モジュールMにおいても日陰の影響を抑制するので、日陰耐性を更に向上する、光発電モジュールM」は、本願補正発明の「ダイナミック光起電力モジュール」に相当する。 (2)一致点 してみると、両者は、 「モジュール電圧及びモジュール電流を有し、直列に接続する複数のセルスタックを備えるダイナミック光起電力モジュールであって、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックはセルスタック電圧及びセルスタック電流を有し、 前記複数の光起電力セルにおける各光起電力セルは、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電圧が前記モジュール電圧と等しく、かつ、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電流が前記モジュール電流と等しくなるように、セル電圧及びセル電流を有し、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは、同一のセル電圧を有する複数の光起電力セルを備え、 前記複数のセルスタックの数は前記モジュール電圧と前記セル電圧との商に等しく、 前記各セルスタックにおける光起電力セルの数は2以上である、ダイナミック光起電力モジュール。」 で一致し、次の各点で相違する。 (3)相違点 ア 本願補正発明は、 「前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは、同一のセル電流を有する同一の複数の光起電力セルを備え、 前記光起電力セルの数は前記モジュール電流と前記セル電流との商に等し」い(「各セルスタックは、同一のセル電流を有する同一の複数の光起電力セルを備え」ていれば、当然に、「前記光起電力セルの数は前記モジュール電流と前記セル電流との商に等し」くなるから、上記特定事項は、実質的に、「各セルスタックは、同一のセル電流を有する同一の複数の光起電力セルを備え」ることを特定しているにすぎない。)のに対して、引用発明では、同一の直列段の個々の「光発電素子D」、すなわち、「太陽電池セル」(本願補正発明の「光起電力セル」に相当する。)の(セル)電流が同一であるか否かが明らかでない点。 イ 本願補正発明は、 「前記光起電力セルは、カットされたオリジナルセル電流、オリジナルセル電圧、オリジナルセル長及びオリジナルセル幅を有するオリジナル光起電力セルにより形成され、 2又は複数の光起電力セルが各オリジナル光起電力セルを形成し、 前記セル電圧は前記オリジナルセル電圧と同一の値であり、 前記セル電流は前記オリジナルセル電流と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等しく、 前記セル長は前記オリジナルセル長と同一の長さであり、 前記セル幅は前記オリジナルセル幅と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等し」いのに対して、引用発明では、「光発電素子D」、すなわち、「太陽電池セル」について、そのような特定がない点。 6 判断 (1)相違点アについて 太陽電池モジュールにおいて、太陽電池セル(直列に接続された複数の太陽電池セルからなる太陽電池セル群も含む)を並列に接続する場合、並列に接続された、個々の太陽電池セル(太陽電池セル群)の電流を同一のものとすることは、引用文献2(すべての「太陽電池セル」として、同一のセルが使用された「実施の形態2」が記載されている。)などに示されるように、周知の技術事項であるから、引用発明において、個々の「太陽電池セル」を電流が同一である(電圧も同一である)同一のセルを使用することは、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない。そして、個々の「太陽電池セル」として同一のセルを使用すれば、並列に接続されたセルの数は、モジュール電流を個々のセル電流で割った商になることは当然のことである。 よって、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、相違点アに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。 (2)相違点イについて 引用文献2には、「複数のセルを直列接続するインターコネクタに流れる電流を小さくできるため、抵抗ロスを軽減することができ、太陽電池モジュールの出力を向上させる」(段落【0009】)ために、「分割線に沿って切断することにより」(段落【0023)】、「第一の太陽電池セルを、n箇所の受光面電極領域のそれぞれの境界において第一の太陽電池セルをn分割し、略長方形の短辺長と長辺長との比が1/n:1(nは2以上の整数)である第二の太陽電池セルを得て、第二の太陽電池セルの受光面バス電極と隣接する太陽電池セルの裏面バス電極とをインターコネクタにより電気的に接続することで、抵抗ロスを軽減する太陽電池モジュールを容易に作製する」(段落【0010】)こと(以下、「引用文献2の技術事項」という。)が記載されている。 引用文献2の技術事項の「第一の太陽電池セル」、「短辺長」、「長辺長」及び「第二の太陽電池セル」は、本願補正発明の「オリジナル光起電力セル」、「セル幅」、「セル長」及び「光起電力セル」に相当する。 すると、引用文献2の技術事項は、本願補正発明の 「前記光起電力セルは、カットされたオリジナルセル電流、オリジナルセル電圧、オリジナルセル長及びオリジナルセル幅を有するオリジナル光起電力セルにより形成され、 2又は複数の光起電力セルが各オリジナル光起電力セルを形成し、 前記セル電圧は前記オリジナルセル電圧と同一の値であり、 前記セル電流は前記オリジナルセル電流と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等しく、 前記セル長は前記オリジナルセル長と同一の長さであり、 前記セル幅は前記オリジナルセル幅と各オリジナルセルを形成する前記光起電力セルの数との商に等し」い構成に相当する構成を備えていると認められる。 そして、引用文献2の技術事項である「太陽電池モジュールの出力を向上させる」という課題は、太陽電池の一般的な課題であり、また、引用文献2の技術事項である「複数のセルを直列接続するインターコネクタに流れる電流を小さくできるため、抵抗ロスを軽減する」という課題は、「複数の光発電素子Dを直列接続した直列素子部DSを複数備え」「る光発電モジュールM」にも共通する課題であるから、引用発明において、「太陽電池セル」として、「分割線に沿って切断することにより」、「第一の太陽電池セルを、n箇所の受光面電極領域のそれぞれの境界において第一の太陽電池セルをn分割し」て得られる、「略長方形の短辺長と長辺長との比が1/n:1(nは2以上の整数)である第二の太陽電池セル」を使用することは、当業者が容易になし得ることである。 よって、引用発明に、引用文献2に記載された技術事項を採用して、相違点イに係る本願補正発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得ることである。 (3)効果について 本願補正発明が奏し得る効果は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものではない。 (4)結論 以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び周知の技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 7 小括 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年11月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記「第2」「[理由]」「1」の本件補正前の請求項1の記載を参照。) 2 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された引用文献1、その記載内容及び引用発明は、上記「第2」「[理由]」「4」「(1)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 上記「第2」「[理由]」「5」「(1)」での対比と同様に対比すると、本願発明と引用発明は、 「モジュール電圧及びモジュール電流を有し、直列に接続する複数のセルスタックを備えるダイナミック光起電力モジュールであって、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックは並列に接続された複数の光起電力セルにより形成され、 前記複数のセルスタックにおける各セルスタックはセルスタック電圧及びセルスタック電流を有し、 前記複数の光起電力セルにおける各光起電力セルは、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電圧が前記モジュール電圧と等しく、かつ、前記ダイナミック光起電力モジュール内の総電流が前記モジュール電流と等しくなるように、セル電圧及びセル電流を有する、ダイナミック光起電力モジュール。」 で一致し、相違点はない。 すると、本願発明は引用発明である。 4 結論 したがって、本願発明は引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に規定される発明に該当し、特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-27 |
結審通知日 | 2017-05-09 |
審決日 | 2017-05-29 |
出願番号 | 特願2015-75878(P2015-75878) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L) P 1 8・ 113- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐竹 政彦、清水 靖記、河村 麻梨子、井上 徹 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
松川 直樹 伊藤 昌哉 |
発明の名称 | ダイナミック光起電力モジュール及びその製造方法 |
代理人 | 特許業務法人創成国際特許事務所 |