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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1333659
審判番号 不服2016-15843  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-24 
確定日 2017-10-11 
事件の表示 特願2014- 4729「共鍛造ゴルフクラブヘッドおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月19日出願公開、特開2015- 9142〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成26年1月15日(パリ条約による優先権主張 2013年6月26日、米国)に出願された特許法第36条の2第1項の規定による特許出願であって、平成26年10月22日付け、及び平成28年3月4日付けで手続補正書が提出され、同年8月8日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同月16日)、これに対して、同年10月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、これと同時に手続補正書が提出されて、特許請求の範囲を補正する手続補正がされたものである。

第2.平成28年10月24日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1.本件補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1を、
「【請求項1】
ゴルフクラブヘッドを鍛造する方法において、
第1の膨張係数を有する第1の材料からなる筒状のビレットを鍛造して上記ゴルフクラブヘッドの本体部分であって、1または複数のキャビティを有する上記本体部分を形成する第1の鍛造ステップであって、上記1または複数のキャビティは、上記第1の鍛造ステップの鍛造によって形成される、上記第1の鍛造ステップと、
上記1または複数のキャビティを少なくとも部分的に、第2の熱膨張係数を有する第2の材料で充填してウエイト調整部分を形成するステップと、
上記1または複数のキャビティの内部において上記ウエイト調整部分を少なくとも部分的に包むためのキャップを付与するステップと、
上記ウエイト調整部分を内包する上記クラブヘッドの上記本体部分を鍛造して上記ゴルフクラブヘッドを形成する第2の鍛造ステップとを有し、
上記第1の熱膨張係数は上記第2の熱膨張係数より大きいか等しいことを特徴とするゴルフクラブヘッド鍛造方法。」とする、上記下線部の記載を付加する補正がされた。(下線は審決で付した。以下の下線も同様。)

上記の補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である1または複数のキャビティを有する本体部分を形成するステップについて「第1の鍛造ステップであって、上記1または複数のキャビティは、上記第1の鍛造ステップの鍛造によって形成される、上記第1の鍛造」との限定事項を付加し、また、ウエイト調整部分を内包するクラブヘッドの本体部分を鍛造してゴルフクラブヘッドを形成するステップについて「第2の鍛造」との限定事項を付加するもので、かかる補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、前記に記載された事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定に係る拒絶理由(特許法第29条第1項第3号に係る理由2)で引用された、本願の優先日前の平成11年3月16日に頒布された刊行物である特開平11-70191号公報(以下「引用例」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ゴルフクラブヘッドの製造方法に関するものである。」
イ.「【0016】本実施例は、図3に図示したように丸棒状の母材8(例えば軟鉄)を鍛造処理して所定形状のヘッド本体部材4を形成し、続いて、図4に図示したようにこのヘッド本体部材4のソール上方位置に該ソールとほぼ平行する状態で孔6を穿設し、この孔6に軟鉄より比重が大きく且つ適度に軟性を有する例えば、銅,鉛,タングステン若しくはこれらの合金等の棒状の高比重材料2を両側から挿入し、続いて蓋材7を挿入して溶接し、この状態で更に仕上げ鍛造処理(成型プレス)し、続いて仕上げ加工をして図1に図示した最終品とする。」
ウ.「【0021】図5,6,7は別実施例であり、前記で説明した図3の工程の後、図5に図示したようにヘッド本体部材4のソール上方位置に該ソールとほぼ平行する状態で凹部9を形成する(この凹部9は切削形成若しくは図3の鍛造処理の段階で形成しても良い。)。続いて、この凹部9に図6に図示したように前記同様の所定の長さに形成された丸棒状の高比重材料2を適当本数配設し(図6は3本の高比重材料2を配設している。)、続いて、この凹部9に蓋材10を配設して溶接し、この状態で更に仕上げ鍛造処理(成型プレス)し、最後に仕上げ加工をして最終品とする。」

上記の記載事項を総合すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
軟鉄からなる丸棒状の母材8を鍛造処理して所定形状のヘッド本体部材4を形成する鍛造処理の段階で、ヘッド本体部材4に凹部9を形成し、
続いて、この凹部9にタングステンからなる高比重材料2を配設し、
続いて、この凹部9に蓋材10を配設して溶接し、この状態で更に仕上げ鍛造処理(成型プレス)し、最後に仕上げ加工をして最終品とする、
ゴルフクラブヘッドの製造方法。」

3.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
後者の「鍛造処理」は、当該処理の態様や作用・機能等からみて、前者の「鍛造(する)」に相当するものといえる。してみれば、後者では「ゴルフクラブヘッドの製造方法」としているものの、当該「製造方法」は「鍛造処理」による方法であるから、後者も前者と同様に、「ゴルフクラブヘッドを鍛造する方法」、すなわち「ゴルフクラブヘッド鍛造方法」といえる。
そして、軟鉄には軟鉄固有の(熱)膨張係数が存在するから、後者の「軟鉄からなる丸棒状の母材8」は、前者の「第1の膨張係数を有する第1の材料からなる筒状のビレット」に相当し、以下同様に、「ヘッド本体部材4」は「ゴルフクラブヘッドの本体部分」に、「凹部9」は「キャビティ」に、それぞれ相当する。したがって、後者の「軟鉄からなる丸棒状の母材8を鍛造処理して所定形状のヘッド本体部材4を形成する鍛造処理の段階で、ヘッド本体部材4に凹部9を形成」する段階は、前者の「第1の膨張係数を有する第1の材料からなる筒状のビレットを鍛造して上記ゴルフクラブヘッドの本体部分であって、1または複数のキャビティを有する上記本体部分を形成する第1の鍛造ステップであって、上記1または複数のキャビティは、上記第1の鍛造ステップの鍛造によって形成される、上記第1の鍛造ステップ」に相当するものといえる。
また、タングステンにはタングステン固有の熱膨張係数が存在するから、後者の「タングステンからなる高比重材料2」は、前者の「第2の熱膨張係数を有する第2の材料」に相当し、後者の「この凹部9にタングステンからなる高比重材料2を配設」する段階は、前者の「上記1または複数のキャビティを少なくとも部分的に、第2の熱膨張係数を有する第2の材料で充填してウエイト調整部分を形成するステップ」に相当する。
更に、後者の「蓋材10」は、前者の「ウエイト調整部分を少なくとも部分的に包むためのキャップ」に相当する。したがって、後者の「続いて、この凹部9に蓋材10を配設して溶接し、この状態で更に仕上げ鍛造処理(成型プレス)」する段階は、前者の「上記1または複数のキャビティの内部において上記ウエイト調整部分を少なくとも部分的に包むためのキャップを付与するステップ」と、「上記ウエイト調整部分を内包する上記クラブヘッドの上記本体部分を鍛造して上記ゴルフクラブヘッドを形成する第2の鍛造ステップ」とに相当するものといえる。
ここで、軟鉄(炭素含有率が0.02?0.3%の鉄)とタングステンの熱膨張係数についてみると、軟鉄が11.7程度、タングステンが4.3?4.5程度とされており、後者も前者と同様に、「上記第1の(軟鉄の)熱膨張係数は上記第2の(タングステンの)熱膨張係数より大きい」といえる。

してみると、両者は、
「ゴルフクラブヘッドを鍛造する方法において、
第1の膨張係数を有する第1の材料からなる筒状のビレットを鍛造して上記ゴルフクラブヘッドの本体部分であって、1または複数のキャビティを有する上記本体部分を形成する第1の鍛造ステップであって、上記1または複数のキャビティは、上記第1の鍛造ステップの鍛造によって形成される、上記第1の鍛造ステップと、
上記1または複数のキャビティを少なくとも部分的に、第2の熱膨張係数を有する第2の材料で充填してウエイト調整部分を形成するステップと、
上記1または複数のキャビティの内部において上記ウエイト調整部分を少なくとも部分的に包むためのキャップを付与するステップと、
上記ウエイト調整部分を内包する上記クラブヘッドの上記本体部分を鍛造して上記ゴルフクラブヘッドを形成する第2の鍛造ステップとを有し、
上記第1の熱膨張係数は上記第2の熱膨張係数より大きいか等しいゴルフクラブヘッド鍛造方法。」
との点で一致し、本願補正発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているから、本願補正発明は引用例に記載された発明といえる。

よって、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.むすび(本件補正の適否について)
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願の発明について
本願の発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成28年3月4日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ゴルフクラブヘッドを鍛造する方法において、
第1の膨張係数を有する第1の材料からなる筒状のビレットを鍛造して上記ゴルフクラブヘッドの本体部分であって、1または複数のキャビティを有する上記本体部分を形成するステップと、
上記1または複数のキャビティを少なくとも部分的に、第2の熱膨張係数を有する第2の材料で充填してウエイト調整部分を形成するステップと、
上記1または複数のキャビティの内部において上記ウエイト調整部分を少なくとも部分的に包むためのキャップを付与するステップと、
上記ウエイト調整部分を内包する上記クラブヘッドの上記本体部分を鍛造して上記ゴルフクラブヘッドを形成するステップとを有し、
上記第1の熱膨張係数は上記第2の熱膨張係数より大きいか等しいことを特徴とするゴルフクラブヘッド鍛造方法。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由(特許法第29条第1項第3号に係る理由2)に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2.1.本件補正後の本願の発明」で検討した、本願補正発明に係る2つの鍛造ステップのうちの一方のステップについて「第1の鍛造ステップであって、上記1または複数のキャビティは、上記第1の鍛造ステップの鍛造によって形成される、上記第1の鍛造」との限定を省くとともに、同じく、他方のステップについて「第2の鍛造」との限定を省いたものである。

そうすると、上記の「第2.3.対比・判断」に記載したとおり、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものである本願補正発明の発明特定事項は、すべて引用発明が備えているのであるから、本願発明に係る発明特定事項も引用発明が備えているといえる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は引用例に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-10 
結審通知日 2017-05-16 
審決日 2017-05-29 
出願番号 特願2014-4729(P2014-4729)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柴田 和雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
藤本 義仁
発明の名称 共鍛造ゴルフクラブヘッドおよびその製造方法  
代理人 澤田 俊夫  

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