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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1333676
審判番号 不服2016-15772  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-21 
確定日 2017-10-18 
事件の表示 特願2011-168208「証印読取端末のための集積回路構造を有するイメージ・エンジン」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 3月15日出願公開、特開2012- 54543〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年8月1日(パリ優先権主張2010年8月5日 米国)の出願であって、平成26年8月1日付で審査請求がなされ、平成27年5月15日付で拒絶理由が通知され、同年11月18日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成28年6月17日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年10月21日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 平成28年10月21日付の手続補正についての却下の決定
[補正却下の結論]
平成28年10月21日付の手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成28年10月21日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の請求項1乃至15を、補正後の特許請求の範囲の請求項1乃至15に補正するものであり、そのうち補正前後の請求項14は、以下のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
(1)本件補正前の請求項14
「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末であって、前記ハンドヘルド証印読取端末が、
復号可能な証印を撮像するための撮像デバイスと、
撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジングとを有し、
前記撮像デバイスが、
コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の連続した基板と、
前記第1の連続した基板に配置され、前記第1の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュールと、第2の基板上に配置され、前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイと、前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサに通過させる統合されたレンズアセンブリとを有し、
前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成されることを特徴とするハンドヘルド証印読取端末。」
(2)本件補正後の請求項14
「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末であって、前記ハンドヘルド証印読取端末が、
復号可能な証印を撮像するための撮像デバイスと、
撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジングとを有し、
前記撮像デバイスが、
コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の単一の連続した基板と、
前記第1の単一の連続した基板に配置され、前記第1の単一の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュールと、第2の基板上に配置され、前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイと、前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサダイに通過させる統合されたレンズアセンブリとを有し、
前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成されることを特徴とするハンドヘルド証印読取端末。」
2 補正の適否について
(1)補正の目的について
本件補正では、本件補正後の請求項14に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)は、本件補正前の請求項14に記載された発明に対応し、本件補正前の請求項14と本件補正後の請求項14を比較すると、本件補正後の請求項14に係る本件補正には、以下の補正事項が含まれる。
ア 補正前の請求項14の「第1の連続した基板」について「第1の単一の連続した基板」とする補正。(以下、「補正事項ア」という。)
補正事項アにより加えられた部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項アは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項アは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項アは、補正前の請求項14の「第1の連続した基板」について、「第1の単一の連続した基板」と補正することにより「連続した基板」が「単一の連続した基板」であるとの限定を加えるものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項アは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
イ 補正前の請求項14の「前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサに通過させる統合されたレンズアセンブリ」について「前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサダイに通過させる統合されたレンズアセンブリ」とする補正。(以下、「補正事項イ」という。)
補正事項イは、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項イは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項イは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
そして、補正前の「前記イメージセンサ」はそれ以前に記載が無く、「前記ターゲットから反射された光」が通過するのは「イメージセンサダイ」であるから、補正前の「前記イメージセンサ」は、「前記イメージセンサダイ」の誤記であることは明らかである。そうすると、補正事項イは、特許法第17条の2第5項第3号に掲げる、誤記の訂正を目的とするものに該当する。さらに、補正事項イは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
ウ 以上検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項、及び、第5項に規定する要件を満たす。

そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する

(2)進歩性について
ア 引用例1について
(ア)引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、特表2005-507571号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)
a 「【0016】
A.一般的な撮像モジュール構成および組立
本発明による撮像モジュールの第1の実施例が、図1aないし図1gに示されている。撮像モジュール10(10-1)は、通常は画像センサチップによって提供される画像センサ32及び照準光源18を担持している第1の回路基板14aと、照射光源16を担持している第2の回路基板14bとを具備している。第1および第2の回路基板14aおよび14bは、支持アセンブリ80によって支持されている。モジュール10-1の支持アセンブリ80は、画像センサ32を格納するための格納部81と、レンズアセンブリ40を保持するための一体型保持部82とを具備している。モジュール10-1の支持アセンブリ80は第1の回路基板14aと第2の回路基板14bと共に、支柱84を受けるための柱穴83を有している。モジュール10-1はさらに4本の支柱84を具備し、その各々が第1の回路基板14a、支持アセンブリ80、および第2の回路基板14bを貫通して、モジュールの様々な構成要素を結合するのを助けている。撮像モジュール10-1は、様々な発光光学素子を担持する光学板26をさらに具備している。モジュール10-1の光学板26は、画像センサ32の視野に対応する対象領域の上にほぼ均一な照明パターンを展開するのを助けるための照射光学部品27、28(図1n参照)と、対象領域に照準パターンを投影するを助けるための照準光学部品25を具備している。第2の回路基板14bと光学板はいずれも、それらが支持アセンブリ80の方に移動された場合に保持部82を収容するための中央開口836、837を具備している。上述した構成により、撮像モジュールの実質的な小型化が得られる。モジュール10-1は、約0.810インチの幅寸法、約0.450インチの高さ寸法、および約0.560インチの奥行寸法を有することができる。モジュール10-1の照準および照射光源16、18は、側部に延在するリード線を有する、すなわち“ガルウイング型の”表面実装・背面ベンチLEDによって提供される。」
b 「【0020】
モジュール10のさらなる変形例が図2eおよび図2fに示されている。図2eの実施例では、撮像モジュール10-3は、図1a(モジュール10-1)や図2a(モジュール10-2)に示す第1および第2PCBの代わりに、単一のPCB14aを具備している。表面実装される照準LED18および照射LED16はPCB14の前方面14a-fに取り付けられ、処理回路、例えば制御回路140、またはその一部はPCB14aの後方面14a-rに取り付けられている。図2eの実施例における格納部81およびレンズバレル40を保持するための保持部82を備えた支持アセンブリ80は、図2fに示したのと同様の全体構成アセンブリ80を有することができる。」
c 「【0117】
F.受光光学部品
モジュール10のサイズを小さくすると、モジュール10の感度が、画像センサ32に対するレンズアセンブリ40の距離に応じて変化する。従って、レンズバレル40として図示されているレンズアセンブリ40とレンズ保持器82との配置を、レンズバレル40がレンズ保持器82内にで細密調整できるようなものにすることが有益である。レンズアセンブリ40に組込まれた結像レンズは、例えば単一素子レンズ、2素子レンズ(レンズダブレット)、3素子レンズ(レンズトリプレット)とすることができ、1つまたは複数のレンズアセンブリ40は、様々な材料、例えばガラス、プラスチックなどから作ることができる。」
d 「【0125】
G.素子の実装
ここでモジュール10、例えばモジュール10-1のさらなる側面について言及すると、“パッケージされていない”画像センサ32の一部または全体を第1の回路基板14aに搭載することによって、モジュール10のサイズをさらに小さくすることができる。従来の画像センサチップ、またはここで参照される“画像センサ”が、図8zに示されている。画像センサ32は、セラミックまたはプラスチック基板32s、一体型リードフレーム32L、及び保護カバー32cを備えている。一体型表面実装またはリード型フレーム32Lは、画像センサ32の本体から不動に延在しており、プリント回路基板14aにはんだ付けまたはソケット接続されるようになされている。
【0126】
従来の画像センサは耐久性があり取付が簡単であるが、かなりのスペースを消費するものでもあった。スペースを節約する手段として、モジュール10の画像センサ32はおそらく、以下の要素、すなわち(a)セラミック基板、(b)保護カバー、(c)リード線、のうち少なくとも1つが画像センサチップに集積されていない画像センサとされるであろう。上記の構成要素のうち1つ以上を含まない画像センサ32をプリント回路基板14bに搭載することによって、画像センサ32が消費するスペースが減る。
e 「【0128】
発明者は、モジュールの撮像システムの耐久性および性能に実質的な影響を与えることなく、上記の画像センサ構成部の1つ以上をモジュール10に組込まれた画像センサチップから除去することができることを発見した。画像センサ集積基板32sは、チップ32の画像ダイ32dをプリント回路基板14aに直接搭載することができるので、該画像センサ集積基板32sを画像センサチップから除去することができる。画像センサ32の保護カバー32cは、一体型カバー32cが無くても支持アセンブリ80によって画像センサ32を適切に保護することができるので、除去することができる。さらに、剛性のリードフレーム32Lは、画像センサダイ32dを直接プリント回路基板14aにワイヤ結合できる、またはプリント回路基板14aにはんだ付けできるので、画像センサ32から除去することができる。」
f 「【0137】
図9aないし図9kは、本発明のモジュールを組込むことのできるタイプのハウジングの例を示している。図9a及び図9bは1次元光学読取装置110-1を図示しており、図9cないし図9hは2次元光学読取装置110-2、110-3、及び110-4を図示している。読取装置110-2、110-2、110-3はピストル型読取装置のフォームファクタを備え、読取装置110-4はポータブル・データ・ターミナル(PDT)としばしば呼ばれるフォームファクタを備えるものである。さらなる読取装置を参照すると、図9iの読取装置110-5は携帯電話のフォームファクタを備え、図9jの読取装置110-6は携帯情報端末(PDA)のフォームを備え、図9kの読取装置は“リングスキャナ”と呼ばれることもある指装着型読取装置のフォームファクタを具備している。各光学読取装置110-1ないし110-7のハウジング111は、人の手によって握ることができるように(または指に装着されるように)なされており、画像取込み・復号、および/または画像取込み・文字認識動作を始動するための少なくとも1つの引き金式スイッチ113tをその内部に組込んでいる。読取装置110-1、110-2、及び110-3は、他のデータ収集装置またはホストプロセッサなどの外部装置と通信するためのハードワイヤード通信リング178を具備しており、読取装置110-4ないし110-7は、別のデータ収集装置またはホストプロセッサなどの外部装置とワイヤレス通信するためのアンテナ180(図9h及び9iのみに見られる)を具備している。」
g 図2eの記載から、「画像センサ32」は、PCB14aの前方面14a-fに取り付けられていることがわかる。
(イ)引用例1発明および引用例1記載事項について
上記(ア)の記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「1次元もしくは2次元光学読取装置であって、
前記1次元もしくは2次元光学読取装置は、
撮像モジュール10-3と、
撮像モジュール10-3を組込むことのできるタイプのハウジングと
を有し、
撮像モジュール10-3は、
単一のPCB14aと、
PCB14aの前方面14a-fに取り付けられた、画像センサダイ32dを備えた画像センサ32と、
PCB14aの後方面14a-rに取り付けられた、制御回路140と、
レンズバレル40(結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ)を保持するための保持部82を備えた支持アセンブリ80と
を備え、
ハウジングは、人の手によって握ることができるようになされており、画像取込み・復号動作を始動するための少なくとも1つの引き金式スイッチ113tをその内部に組込んでいる、
1次元もしくは2次元光学読取装置。」
また、上記(ア)の記載から、実質的に次の事項(以下、「引用例1記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「モジュール10の画像センサ32を、耐久性や取付の難易やスペースの節約を考慮して、(a)セラミック基板、(b)保護カバー、(c)リード線、のうち少なくとも1つが画像センサチップに集積されていない画像センサとされること。」
イ 対比・判断
(ア)本件補正発明と引用例1発明とを対比する。
a 引用例1発明の「1次元もしくは2次元光学読取装置」は、「人の手によって握ることができるようになされて」いるから、本件補正発明の「ハンドヘルド」と同様の構成である。
また、引用例1発明は、「画像取込み」を行っているが、引用例1【図10a】に「1次元または2次元バーコードシンボル」を読み取る例が記載されているので、引用例1発明も証印を読み取るものであると認められるから、引用例1発明も、本件補正発明の「ターゲット上の復号可能な証印を撮像する」と同様の動作を行っていると認められる。
そうすると、引用例1発明の「1次元もしくは2次元光学読取装置」は、本件補正発明の「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末」に相当する。
b 引用例1発明の「単一のPCB14a」は、「画像センサ32」および「制御回路140」が取り付けられており、また、この「画像センサ32」および「制御回路140」は、「引き金式スイッチ113t」の操作により画像の取り込みを行っていることから、「引き金式スイッチ113t」からの信号(即ち、「コントロール信号」)を「画像センサ32」に伝えるための入力を有していると認められる。
加えて、引用例1発明の「単一のPCB14a」は、取り込んだ画像を復号し、復号した信号(即ち、「出力信号」)を出力するための出力を有していると認められる。
そうすると、引用例1発明の「単一のPCB14a」は、本件補正発明の「コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の単一の連続した基板」に相当する。
c 引用例1発明の「画像センサダイ32dを備えた画像センサ32」は、「PCB14aの前方面14a-fに取り付けられ」ており、また、「画像センサ32」で取り込んだ画像を復号するためには、「画像センサ32」で取り込んだ画像を出力信号として「PCB14a」に出力する必要があることは明らかであるから、本件補正発明の「前記第1の単一の連続した基板に配置され、前記第1の単一の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュール」と、「前記第1の単一の連続した基板に配置され、前記第1の単一の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く」「カメラモジュール」である点で共通する。
d 引用例1発明の「画像センサダイ32d」は、本件補正発明の「前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイ」に相当する。
e 引用例1発明の「撮像モジュール10-3」は、「レンズバレル40(結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ)を保持するための保持部82を備えた支持アセンブリ80」を備えていることから、「レンズバレル40(結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ)」を備えており、また、「結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ」により、ターゲットから反射された光を「画像センサダイ32d」に通過させていることは、当業者に明らかであるから、引用例1発明の「レンズバレル40(結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ)」は、本件補正発明の「前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサダイに通過させる統合されたレンズアセンブリ」に相当する。
f 引用例1発明の「撮像モジュール10-3」は、「単一のPCB14a」,「画像センサ32」,「画像センサダイ32d」および「結像レンズが組み込まれたレンズアセンブリ」を備えており、また、「1次元もしくは2次元光学読取装置」の撮像を行うためのモジュールであるから、本件補正発明の「復号可能な証印を撮像するための撮像デバイス」に相当する。
g 引用例1発明の「ハウジング」は、「撮像モジュール10-3を組込むことのできるタイプのハウジング」であるから、「撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジング」に相当する。
h 引用例1発明は、「ハウジングは、人の手によって握ることができるようになされており、画像取込み・復号動作を始動するための少なくとも1つの引き金式スイッチ113tをその内部に組込んでいる」から、「引き金式スイッチ113t」の操作により画像の取り込みを行っており、このことは、本件補正発明の「前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成される」ことに相当する。
i そうすると、本件補正発明と引用例1発明とは、以下(イ)の点で一致し、また、以下(ウ)の点で相違する。
(イ)一致点
「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末であって、前記ハンドヘルド証印読取端末が、
復号可能な証印を撮像するための撮像デバイスと、
撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジングとを有し、
前記撮像デバイスが、
コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の単一の連続した基板と、
前記第1の単一の連続した基板に配置され、前記第1の単一の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く」「カメラモジュールと、」「前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイと、前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサダイに通過させる統合されたレンズアセンブリとを有し、
前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成されることを特徴とするハンドヘルド証印読取端末。」
(ウ)相違点
本件補正発明は「前記第1の単一の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュール」であり、「前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイ」が「第2の基板上に配置され」ているのに対して、引用例1発明の「画像センサダイ32dを備えた画像センサ32」は、本件補正発明の「第2の基板」に対応する構成を備えているのか不明であり、また、「画像センサダイ32d」が、本件補正発明の「第2の基板」に対応する構成上に配置されているのか不明であるる点。
(エ)以下、上記相違点について検討する。
引用例1記載事項にあるように、「モジュール10の画像センサ32を、耐久性や取付の難易やスペースの節約を考慮して、(a)セラミック基板、(b)保護カバー、(c)リード線、のうち少なくとも1つが画像センサチップに集積されていない画像センサとされること。」は、公知の技術である。
そうすると、引用例1発明において、画像センサ32をPCB14aの前方面14a-fに取り付ける際に、耐久性や取付の難易やスペースの節約を考慮して、セラミック基板およびリード線を備えた構成とすることは、当業者が適宜為し得たものである。
そして、画像センサ32にセラミック基板およびリード線を備えた際に、セラミック基板は、本件補正発明の「第2の基板」に相当し、また、画像センサ32にリード線を備えていることから、セラミック基板は、本件補正発明のPCB14aへ、「前記出力信号の少なくとも一部を導く」ことと同様の動作を行っていると認められる。
さらに、画像センサ32にセラミック基板およびリード線を備えた際に、引用例1発明の「画像センサダイ32d」は、セラミック基板上に配置されると認められるから、本件補正発明の「前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイ」が「第2の基板上に配置され」ることと、同様の構成を備えていると認められる。
進歩性についての結論
そして、上記相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用例1発明及び引用例1に記載された公知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
よって、本件補正発明は、引用例1発明および引用例1記載の公知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
「2 補正の適否について」で検討したとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 補正却下の決定を踏まえた検討
1 本願発明
平成28年10月21日付の手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願に係る発明は、平成27年11月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項14に記載した発明は、上記第2の1(1)の「補正前の請求項14」の箇所に記載したとおりのものであり、再掲すると次のとおりである。
「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末であって、前記ハンドヘルド証印読取端末が、
復号可能な証印を撮像するための撮像デバイスと、
撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジングとを有し、
前記撮像デバイスが、
コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の連続した基板と、
前記第1の連続した基板に配置され、前記第1の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュールと、第2の基板上に配置され、前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイと、前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサに通過させる統合されたレンズアセンブリとを有し、
前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成されることを特徴とするハンドヘルド証印読取端末。」
そして、上記第2の2(1)イで検討したとおり、「補正前の請求項14」の「前記イメージセンサ」は、「前記イメージセンサダイ」の誤記であるから、平成27年11月18日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項14に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりであると認められる。
「ターゲット上の復号可能な証印を撮像するためのハンドヘルド証印読取端末であって、前記ハンドヘルド証印読取端末が、
復号可能な証印を撮像するための撮像デバイスと、
撮像デバイスに対して取り囲む関係のハンドヘルドハウジングとを有し、
前記撮像デバイスが、
コントロール及び出力信号を導くための入出力を有する第1の連続した基板と、
前記第1の連続した基板に配置され、前記第1の連続した基板に前記出力信号の少なくとも一部を導く第2の基板を有するカメラモジュールと、第2の基板上に配置され、前記ターゲットから反射された光に応答するイメージセンサダイと、前記ターゲットから反射された光を前記イメージセンサダイに通過させる統合されたレンズアセンブリとを有し、
前記ハンドヘルドハウジングが、復号可能な証印を復号するように入出力を介して撮像デバイスを作動させるように作動可能に構成されることを特徴とするハンドヘルド証印読取端末。」
2 引用例と引用例発明および公知技術
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載、引用例1発明、および引用例1記載事項は、上記第2の2(2)の「ア 引用例1について」に記載したとおりである。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2の「2 補正の適否について」で検討した本件補正発明における限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに特定の点に限定を施したものに相当する本件補正発明が、上記第2の2(2)の「イ 対比・判断」に記載したとおり、引用例1発明および引用例1記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1発明および引用例1記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 結語
以上のとおり、本件補正前の請求項14に係る発明は、当業者が引用例1発明および引用例1記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-25 
結審通知日 2017-05-26 
審決日 2017-06-08 
出願番号 特願2011-168208(P2011-168208)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
飯田 清司
発明の名称 証印読取端末のための集積回路構造を有するイメージ・エンジン  
代理人 小林 泰  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 小野 新次郎  
代理人 夫馬 直樹  
代理人 山本 修  

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