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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 A61M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1333754
審判番号 不服2016-14855  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-04 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2014-81366「経皮的ポレータおよびパッチシステムならびにその使用法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年9月4日出願公開、特開2014-158944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、2008年1月22日(パリ条約による優先権主張 2007年1月22日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2009-546576の一部を平成26年4月10日に新たな特許出願としたものであって、平成27年5月1日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月13日に意見書とともに手続補正書が提出され、平成28年1月21日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月24日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、当該手続補正書による手続補正について同年6月30日付けで補正却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされた。
これに対し、平成28年10月4日に当該査定の取消を求めて本件審判の請求がなされると同時に手続補正書が提出され、特許請求の範囲についてさらに補正がなされ、それに関連して明細書(発明の名称)について補正がなされたものである。

第2 平成28年10月4日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年10月4日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
平成28年10月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、平成27年7月13日付けで補正された特許請求の範囲をさらに補正し、それに関連して明細書について補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1に関する以下の補正を含んでいる。なお、下線部は補正箇所を示す。

(1) <補正前>
「【請求項1】
経皮的な監視の方法であって、
生体膜に少なくとも1つの微小孔を形成する工程と、
該少なくとも1つの微小孔を通じて体外に流動する検体を監視する工程と
を有する、
前記方法。」

(2) <補正後>
「【請求項1】
経皮的な検体の監視方法であって、
ヒトを除く生体の生体膜に、少なくとも1つの微小孔を形成する工程と、
該少なくとも1つの微小孔を通じて体外に流動する検体を監視する工程と
を有する、
前記監視方法。」

2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、補正前の請求項1の「生体膜」について、「ヒトを除く生体の」ものに限定する補正であるから、特許請求の範囲の限定的減縮(特許法第17条の2第5項第2号)を目的とするものに該当する。そして、本件補正は、同法同条第3項及び第4項の規定に違反するものではない。
そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定される独立特許要件に適合するか否かについて検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「監視方法」であると認める。

(2) 刊行物
これに対して、原審の平成28年1月21日付け拒絶の理由においてもなお書きにて示された、本件の優先日前に頒布された刊行物である特表平11-511360号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の発明が記載されていると認められる。

ア 刊行物1に記載された事項

(ア) 第11ページ第11行?第17行
「発明の背景
本発明は、一般に、身体内の分析物の鑑視および身体への薬物の経皮的な送達の分野に関する。より詳細には、本発明は、角質層の微細穿孔による皮膚の浸透性を増加する最小侵襲性から非侵襲性までの方法に関する。これは、分析物を鑑視するために身体からの分析物の外向きのフラックス(flux)を選択的に増強するため、または身体内への薬物送達のために、音波エネルギー、化学的浸透増強剤、圧力などを組合せ得る。」

(イ) 第16ページ第27行?第17ページ第2行
「本発明の簡単な要旨
本発明の目的は、穿孔を用いて角質層の障壁特性を最小にし、その結果角質層の穿孔を通して身体内から分析物を制御可能に回収し、これらの分析物の鑑視を可能にすることである。」

(ウ) 第30ページ第27行?第31ページ第7行
「 本発明は、ヒト皮膚の角質層中に、約1?1000μmを横切る、顕微鏡的な穴(すなわち、微細孔)を無痛で生成するための方法を包含する。この方法を首尾良く行うことの鍵は、角質層と接触して保持される、適切な熱エネルギー供給源または熱プローブの作成である。適切な熱プローブを製作することにおける主な技術的挑戦は、皮膚と所望の接触を有し、しかも十分に高い周波数で熱変調され得るデバイスを設計することである。
角質層に、選択された光供給源により発光される波長で光を吸収するその能力のために選択された適切な光吸収性化合物(例えば、色素または染料)を局所的に適用することにより、適切な熱プローブを製作することが可能である。」

(エ) 第31ページ第23行?第32ページ第1行
「CPCは、以下の理由のためこの実施態様には特に良好に適切である:それは、非常に安定でかつ不活性な化合物であり、移植可能な縫合における色素としての使用のために、既にFDAにより許可されている;750nm?950nmの波長で非常に強く吸収し、この波長は、レーザーダイオードおよびLEDのような多くの低コストのソリッドステートエミッターと良く一致し、さらに、この領域の光学的バンド幅は、同様に、任意の有意な量で皮膚組織により直接吸収されない;」

(オ) 第41ページ第1行?第6行
「 さらに、エレクトロポレーションあるいは電流の短いバーストまたはパルスは、微細孔を形成するのに十分なエネルギーをもって角質層へ送達され得る。エレクトロポレーションは生体膜に孔を生じることについて当該分野で公知であり、そしてエレクトロポレーション装置は市販されている。従って、当業者は、装置およびその使用のための条件を本明細書中に提供されるガイドラインに従って過度の実験をすることなく選択し得る。」

(カ) 第43ページ第25行?第44ページ第2行
「 次いで図1に示す装置を、個体の皮膚の選択された領域を参照プレートに対して配置することにより、その部位に適用した(ここでCPCは局所的に皮膚の上にコートされている)。参照プレートは、中央に4mmの穴を有するおよそ3cm×3cmの薄いガラス窓からなる。次いで、CPCで被覆された領域が中央の穴の中にくるように配置した。次いで、共焦点のビデオ顕微鏡(図1)を用いて皮膚の表面に鋭く焦点が合うようにした。」

(キ) 第44ページ第16行?第19行
「実施例6
CPCを透明な粘着性テープに適用し、次いでこれを個体の皮膚上の選択された部位に接着させることを除いては、実施例5の手順に従った。結果は実質的に実施例5の結果と類似していた。」

(ク) 第54ページ第6行?第9行
「実施例14
この実施例では、実施例6の手順に従って皮膚を穿孔した後に得た間質液を採取して分析し、そのグルコース濃度を決定した。」

(ケ) 第56ページ第1行?第14行
「(e)与えられた個体について全データ採取期間を通して同一部位からのISFの連続した採取を容易にするために、5×5行列の25の微細孔を被験体の上部前腕部に作製した。各微細孔は直径が50μmと80μmとの間であり、それぞれは300μm離れていた。中央に6mmの穴を有する直径30mmのテフロンディスクを、感圧接着剤で被験体の前腕部に接着し、そして6mmの中央の穴が5×5行列の微細孔にわたって位置するように、設置した。この接着によって、穿孔した領域を穏やかに吸引する(10?12インチHg)小さな吸引ホースを接続し得た従来の方法で、ISFを微細孔を通して体外へ流出させるように誘導することが可能になった。テフロンディスクの最上部に、透明なガラス窓を設置し、これによって操作者がその下の微細穿孔される皮膚を直接目視することが可能になる。5μLのISF滴が皮膚の表面上に形成された場合、この窓を通してその部位を視覚的に監視することによってこれは容易に確認され得た。この吸引のレベルは、約5ポンド/インチ^(2)(PSI)の見かけの圧力勾配を生じた。微細孔がなければ、ISFは、穏やかな吸引のみでは被験体の身体から吸引され得なかった。」

イ 刊行物1発明
前記記載事項(ア)?(ケ)を、技術常識を踏まえ補正発明に照らして整理すると、刊行物1には以下の発明が記載されていると認められる(以下「刊行物1発明」という。)。

「皮膚を穿孔して得る間質液を監視する方法であって、
皮膚に、少なくとも1つの微細孔を作製する工程と、
当該少なくとも1つの微細孔を通して体外へ流出する間質液を監視する工程とを有する、監視方法。」

(3) 対比
補正発明と刊行物1発明とを対比すると、以下のとおりである。
刊行物1発明の「皮膚」は、補正発明の「生体膜」に相当し、以下同様に、「微細孔」は「微小孔」に、「作製する」は「形成する」に、「体外へ流出する」は「体外に流動する」に、それぞれ相当する。
また、監視される対象である点において、刊行物1発明の「間質液」は、補正発明の「検体」に対応する。
さらに、生体膜に作製された微細孔から流出する点において、刊行物1発明の「皮膚を穿孔して得る間質液」は、補正発明の「経皮的な検体」に対応する。

したがって、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で一致しているということができる。
<一致点>
「経皮的な検体の監視方法であって、
生体膜に、少なくとも1つの微小孔を形成する工程と、
該少なくとも1つの微小孔を通じて体外に流動する検体を監視する工程と
を有する、
前記監視方法。」

そして、補正発明と刊行物1発明とは、以下の点で相違している。
<相違点>
生体膜について、補正発明では「ヒトを除く生体の」という特定がなされているのに対し、刊行物1発明では、そのような特定がされていない点。

(4) 相違点の検討
前記相違点について検討する。
刊行物1に「本明細書中に使用する『個体』は、本発明が適用され得る、ヒトおよび動物の両方をいう。」(第26ページ第22行?第23行)と記載されていることからすれば、刊行物1発明の監視方法は、ヒトの生体膜も動物の生体膜も適用対象に含むものと解釈することができる。
ここで、一般的に複数の適用対象がある場合に、いずれかの適用対象に限定することは、単に他の可能性を排除することに他ならないから、そこに技術的な困難性は伴わないというべきである。
そうすると、刊行物1発明において、単に、その適用対象を動物の生体膜に限定すること、すなわち、その適用対象からヒトの生体膜を除外し、相違点に係る補正発明の構成とすることに、格別の困難性はない。
したがって、補正発明は、刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、前記[補正却下の決定の結論]のとおり、決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、前記のとおり却下されたところ、本件出願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成27年7月13日付けの手続補正書により補正された前記第2 1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「方法」であると認める。

2 原審における拒絶査定の理由
原審で拒絶査定の理由として通知した平成28年1月21日付け拒絶理由通知書で指摘した内容は、以下のとおりである。

「(発明該当性)この出願の下記の請求項に記載されたものは、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

平成27年7月13日付けの手続補正書にて補正された請求項1には、『経皮的な監視の方法』であるものの、『生体膜に少なくとも1つの微小孔を形成する工程』という、人体に対して外科的処置を施す工程が含む点が記載されている。
してみると、補正後の請求項1に記載された発明は、人間を手術する方法であり、産業上利用することができる発明ではないから、特許法第29条第1項柱書に規定する発明に該当しない。」

3 当審の判断
(1) 人間を手術する方法に該当するか否かについて
本願発明は、「生体膜に少なくとも1つの微小孔を形成する工程」を発明特定事項として含む発明であるところ、前記第2 1(2)に示す特許請求の範囲の記載をみても、「微小孔」が「形成」される「生体膜」について、人間の「生体膜」を排除する旨の特定はないことから、本願発明の前記工程には、人間の「生体膜」に対して行われる前記工程が含まれると解釈することができる。
また、「微小孔を形成する」ことの具体的な内容について、本願明細書には「【0017】・・・本明細書で使用されるような、『穿孔(poration)』、『マイクロポレーション(microporation)』、または任意のそのような類似用語は、選択された目的のために、生体膜の一方の側面から他方の側面への少なくとも1つの透過物の通過のために生体膜の障壁特性を減少させるための、組織、皮膚あるいは粘膜のような生体膜、ま_たは(当審注:『または』の誤記)生体の外層の中の、またはそれを通る、小径穴または割れ目(以降、『微小孔』とも呼ばれる)の形成を意味する。好ましくは、そのように形成される穴または『微小孔』は、直径で約1?1000ミクロンであり、下層組織に悪影響を及ぼすことなく、角質層の障壁特性を破壊するのに十分に生体膜の中へ延在する。・・・」と記載されており、当該記載によれば、「微小孔を形成する」ことには、組織や皮膚、粘膜などに直径約1?1000ミクロンの穴を形成することが含まれると解釈することができる。
そして、これら解釈を総合すると、本願発明における「微小孔を形成する」ことは、例えば、人間の組織や皮膚、粘膜などに穴を形成すること、すなわち、人体を切開又は切除することが含まれるということができる。
そうすると、本願発明の「生体膜に少なくとも1つの微小孔を形成する工程」には、人体を切開又は切除する方法も含まれており、人体を切開又は切除する方法は、人体に対して外科的処置を施す方法、すなわち人間を手術する方法であるとされている(「特許・実用新案 審査基準」(第III部第1章3.産業上の利用可能性の要件についての判断)を参照。)ことから、本願発明に係る「方法」は、その工程の一部に人間を手術する方法を含んでおり、その結果、本願発明は人間を手術する方法に該当する。

(2) まとめ
したがって、本願発明は、人間を手術する方法に該当するので、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当しない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項柱書にいう「産業上利用することができる発明」に該当しないので、特許を受けることができないものであり、本件出願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-21 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2014-81366(P2014-81366)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A61M)
P 1 8・ 121- Z (A61M)
P 1 8・ 14- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 姫島 卓弥  
特許庁審判長 長屋 陽二郎
特許庁審判官 熊倉 強
二階堂 恭弘
発明の名称 経皮的ポレータおよびパッチシステムならびにその使用法  
代理人 高島 一  

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