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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G21F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21F
管理番号 1333767
審判番号 不服2017-4387  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-28 
確定日 2017-10-19 
事件の表示 特願2013-157966「放射性汚染物格納容器」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 3月13日出願公開、特開2014- 44201〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年7月30日(特許法第41条に基づく国内優先権主張 平成24年7月30日)を出願日とする出願であって、平成28年8月30日に手続補正がされ同年9月20日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日に意見書及び手続補足書が提出されるとともに手続補正がされたが、平成29年1月6日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年3月28日に拒絶査定不服審判請求がされるとともに、同時に手続補正がされ、さらに、早期審理に関する事情説明書が提出されたものである。
その後、同年4月25日に上申書提出のため早期審理の解除を希望する旨のファクシミリが提出され(平成29年4月25日付け応対記録)、同年6月19日に面接を希望する等の趣旨の上申書及び手続補足書が提出され、同年7月28日に当審にて面接がなされたものである。

第2 平成29年3月28日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、本件補正前(平成28年11月16日になされた手続補正)の特許請求の範囲を、以下のとおりに補正する内容を含むものである(下線は請求人が付与したとおりであって、補正箇所を示す。)。
本件補正前の特許請求の範囲の請求項2につき、
「【請求項1】
放射性廃棄物あるいは放射性物質に汚染された土壌、汚泥、焼却灰を含む放射性汚染物を、直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して保管するための放射性汚染物格納容器であって、
セメント硬化物製の有底筒部材と、該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製の蓋部材とを備え、
前記有底筒部材及び前記蓋部材は、セメント、水、補強繊維、及び起泡剤をプレフォームしてなる泡が混練されて形成された多孔質成形体からなり、該多孔質成形体中に前記補強繊維及び前記泡を分散状態で含有してなることを特徴とする放射性汚染物格納容器。
【請求項2】
前記有底筒部材及び前記蓋部材の比重は、0.8?1.5の範囲内である請求項1に記載の放射性汚染物格納容器。」
とあったものを、
「【請求項1】
原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物を、ドラム缶を介することなく、直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して、仮置場や中間貯蔵施設での保管に供するための放射性汚染物格納容器であり、
セメント硬化物製の有底筒部材と、該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製の蓋部材と、を備え、
前記有底筒部材及び前記蓋部材は、補強繊維、及び気泡を分散状態で含み、比重が0.8?1.5の範囲内であるコンクリート製多孔質成形体からなり、
前記保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないものであることを特徴とする放射性汚染物格納容器。」
に補正。

2 補正の目的
(1)本件補正は、補正前の請求項2において、下記のとおりに補正することを含むものである。
ア 「放射性廃棄物あるいは放射性物質に汚染された土壌、汚泥、焼却灰を含む放射性汚染物」を「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物」と補正。

イ 「直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して保管するための放射性汚染物格納容器」を「ドラム缶を介することなく、直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して、仮置場や中間貯蔵施設での保管に供するための放射性汚染物格納容器」と補正。

ウ 「前記有底筒部材及び前記蓋部材は、セメント、水、補強繊維、及び起泡剤をプレフォームしてなる泡が混練されて形成された多孔質成形体からなり、該多孔質成形体中に前記補強繊維及び前記泡を分散状態で含有してなる」を「前記有底筒部材及び前記蓋部材は、補強繊維、及び気泡を分散状態で含み」と補正。

エ 「前記保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないものである」との限定を付加する。

(2)上記補正について検討する。
ア 上記「(1)」「ア」の補正は、「放射性汚染物」に関して、「土壌、汚泥、焼却灰を含む」との発明特定事項を削除するものであるから、「放射性汚染物」に関して「土壌、汚泥、焼却灰を含」まないものに拡張する補正であると認められる。

イ 上記「(1)」「ウ」の補正は、「泡」に関して、「起泡剤をプレフォームしてなる泡」とあったものを「気泡」と補正し、「起泡剤をプレフォームしてなる」との発明特定事項を削除するものであるから、「泡」に関して「起泡剤をプレフォームしてなる泡」以外のものに拡張する補正であると認められる。

ウ 上記ア及びイの検討によれば、上記「(1)」「ア」及び上記「(1)」「ウ」の補正は、特許請求の範囲を拡張する補正であって、「請求項の削除」、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明」のいずれにも該当しないから、他の補正事項を考慮するまでもなく、本件補正は特許法第17条の2第5項に掲げるいずれの目的にも該当しない補正を含むものである。

3 独立特許要件について
以上2での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであるが、仮に特許法第17条の2第5項の規定を満たすものであっても、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正事項を含むものであり、以下のとおり、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たさないものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
(1)刊行物の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開昭62-142299号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、放射性廃棄物処理体に関するものである。
〔先行技術とその問題点〕
・・・
しかし、この提案においては、大きな放射性廃棄物処理用容器全体の重量が大きなものである為、かつ固化材による重量増加も大きなものである為、例えば搬送に際して従来のハンドリング装置で処理できない欠点がある。」(1頁左欄11行?右欄5行)

(イ)「〔実施例〕
図面は、本発明に係る放射性廃棄物処理体の1実施例の一部切欠斜視図である。
同図中、1は、例えば軽量コンクリート(比重1.5前後)又は気泡コンクリート(比重1.0前後)、特に内部に微細な独立気泡を有するような気泡コンクリート(尚、これらのコンクリートにあっては高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたものであると一層好都合である)で構成された、例えば肉厚15cmで内容積1m×1m×1mの大きさの容器本体であり、この容器本体1の内面及び/又は外面には厚さ0.1?5cmの例えばPIC、GRC、FRP、レジンコンクリート、ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂等の樹脂、ステンレス板等の金属板等の緻密な組織を持つ層が一体的に設けられている。
2は、例えばプレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による蓋体である。
3は、上記構成の放射性廃棄物処理用容器内に収納された雑固体又はドラム缶であり、このドラム缶3は従来から提案されてきた放射性廃棄物処理用容器と同じものであり、このドラム缶3内には放射性廃棄物が固化材によって固化充填されている。尚、このドラム缶3内に放射性廃棄物を固化充填する為の固化材としては、従来から提案されてきているものであっても、あるいは後述する固化材であってもよい。
4は、上記構成の放射性廃棄物処理用容器内に収納した雑固体又はドラム缶3の間の空隙を充填した固化体(比重的0.8?1.2)であり、この固化体4は、セメント、水及びマールP液等を所定の配合割合で配合してなる固化材を充填して固化させたものである。」(2頁右上欄16行?右下欄8行)

(ウ)図は次のものである。


(エ)上記(ア)及び(イ)の記載を踏まえて、上記(ウ)の図を見ると、放射性廃棄物処理体は、容器本体1、蓋体2、雑固体又はドラム缶3及び固化体4からなることがみてとれる。
また、容器本体1は、上部に開口及び下部に底を有する箱形であって、蓋体2は容器本体1の上部の開口に設けられるものであることがみてとれる。

(オ)引用発明
上記(ア)ないし(エ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「軽量コンクリート(比重1.5前後)又は内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート(比重1.0前後)であって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成された容器本体1、
プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による蓋体2、
上記容器本体1及び蓋体2から構成された放射性廃棄物処理用容器内に収納された雑固体又はドラム缶3、
及び、ドラム缶3の間の空隙を充填した固化体4からなり、
前記容器本体1は、上部に開口及び下部に底を有する箱形であって、前記蓋体2は容器本体1の上部の開口に設けられるものである、
放射性廃棄物処理体。」

イ 同じく、原査定における拒絶理由に引用された、本願の優先日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開昭62-142300号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある)。
(ア)「〔産業上の利用分野〕
本発明は、放射性廃棄物処理用容器に関するものである。
〔先行技術とその問題点〕
・・・
しかし、この提案においては、大きな放射性廃棄物処理用容器全体の重量が大きなものである為、例えば搬送に際して従来のハンドリング装置で内部に放射性廃棄物が充填されている大きな放射性廃棄物処理用容器を処理できない欠点がある。」(1頁左欄9行?右欄3行)

(イ)「〔実施例〕
図面は、本発明に係る放射性廃棄物処理用容器の1実施例の断面図である。
同図中、1は、例えば軽量コンクリート(比重1.5前後)又は気泡コンクリート(比重1.0前後)、特に内部に微細な独立気泡を有するような気泡コンクリートで構成された、例えば肉厚15cmで内容積1m×1m×1mの大きさの容器本体であり、この容器本体1の内面には厚さ0.1?5cmの例えばPIC、GRC、FRP、レジンコンクリート、ポリエチレン、塩化ビニル系樹脂等の樹脂、ステンレス板等の金属板等緻密な組織を持つ層2が一体的に設けられている。
尚、容器本体1の形状は立方体に限られることなく、円筒形その他任意の形のものでよい。
3は、前記容器本体1の構成素材と同じ素材、例えば気泡コンクリートで構成された肉厚1.5cmの蓋体であり、この蓋体3の内面には厚さ0.1?5cmの前記緻密な組織を持つ層2と同じ構成素材で構成された緻密な組織を持つ層4が一体的に設けられている。・・・
尚、蓋体3は、プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等によるものでもよい。」(1頁右欄9行?2頁右上欄10行)

(ウ)図は次のものである。


(エ)上記(ア)ないし(ウ)によれば、引用文献2には次の事項(以下「引用文献2に記載の事項」という。)が記載されていると認められる。
「気泡コンクリートで構成された放射性廃棄物処理用容器であって、蓋体を容器本体の構成素材と同じ素材で構成すること。」

(2)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)「放射性廃棄物」と「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物」は、「放射性」を有する物である点で一致しているから、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」と、本願補正発明の「放射性汚染物格納容器」とは、「放射性汚染物格納容器」である点で一致する。

(イ)引用発明の「容器本体1」は、「軽量コンクリート(比重1.5前後)又は内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート(比重1.0前後)であって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成されたもので」あるところ、「内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリートであって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維」「で補強されたもので構成されたもの」は補強繊維、及び気泡を分散状態で含むものであることは明らかである。
また、引用発明の「上部に開口及び下部に底を有する箱形である」「容器本体1」は、本願補正発明の「有底筒部材」に相当する。
さらに、引用発明の「気泡コンクリート」は「比重1.0前後」であることは、本願補正発明の「有底筒部材」は「比重は、0.8?1.5の範囲内である」ことに相当する。
したがって、引用発明の「軽量コンクリート(比重1.5前後)又は内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート(比重1.0前後)であって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成されたもので」ある「容器本体1」は、本願補正発明の「セメント硬化物製」であって、「補強繊維、及び気泡を分散状態で含み、比重が0.8?1.5の範囲内であるコンクリート製多孔質成形体からな」る「有底筒部材」に相当する。

(ウ)引用発明の、「容器本体1の上部の開口に設けられるものである」「プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による」「蓋体2」は、本願補正発明の、「該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製」の「蓋部材」に相当する。

(エ)以上(ア)ないし(ウ)での検討によれば、本願補正発明と引用発明は、
「セメント硬化物製の有底筒部材と、該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製の蓋部材と、を備え、
前記有底筒部材は、補強繊維、及び気泡を分散状態で含み、比重が0.8?1.5の範囲内であるコンクリート製多孔質成形体からなる放射性汚染物格納容器。」
である点で一致し、下記各点で相違する。

a 「放射性汚染物格納容器」が、本願補正発明は、「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物を、ドラム缶を介することなく、直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して、仮置場や中間貯蔵施設での保管に供するための放射性汚染物格納容器」であるのに対して、引用発明は「放射性廃棄物処理用容器」である点(以下「相違点1」という。)。

b 本願補正発明の「蓋部材」は、「補強繊維、及び気泡を分散状態で含み、比重が0.8?1.5の範囲内であるコンクリート製多孔質成形体からな」る「有底筒部材」と同じ素材で構成されるのに対して、引用発明の「蓋体2」は、「プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による」ものとされ、「容器本体1」と同じ素材で構成されるとは特定されない点(以下「相違点2」という。)。

c 本願補正発明の「放射性汚染物格納容器」は「前記保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないものである」のに対して、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」はこのように特定されない点(以下「相違点3」という。)。

イ 判断
(ア)相違点1及び3について検討する。
相違点1に係る発明特定事項は、「放射性汚染物格納容器」に関して、「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物を、ドラム缶を介することなく、直接、又はフレキシブルコンテナバッグに収容した状態で充填して、仮置場や中間貯蔵施設での保管に供するための」と特定するものであって、「放射性汚染物格納容器」の使用方法に関する事項である。
そして、相違点3に係る発明特定事項は、「放射性汚染物格納容器」に関して、「前記保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないものである」と特定するものであって、相違点1による「放射性汚染物格納容器」の使用方法の結果生じる事項である。
したがって、相違点1及び3は、「放射性汚染物格納容器」という物の発明である本願補正発明に関する実質的な相違点ではない。
また、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」は、「放射性廃棄物」を収納するところ、「放射性廃棄物」と「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物」とは、「放射性」を有する物である点で一致しており、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」に「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物」を収納することに格別の技術的困難性はない。
また、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」は、「雑固体又はドラム缶」を収納するものであるところ、「雑固体」と「ドラム缶」が並記されていることに照らして、「雑固体」は「ドラム缶」は別異のものであると解されるから、「雑固体」を収納するに際して「ドラム缶」を介さなくともよいと認められる。
そして、「ドラム缶」を介さない場合は、保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないものであることは明らかである。
さらに、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」をどこで保管するかは、使用に際して適宜定める事項にすぎない。
そうすると、引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」において、「放射性廃棄物」にかえてドラム缶を介することなく「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物」を収納して、「原子力発電所事故に伴って大気中に放散された放射性物質で汚染された放射性汚染物を、ドラム缶を介することなく、直接充填して、仮置場や中間貯蔵施設での保管に供するための放射性汚染物格納容器」となし、あわせて、「保管終了時点での重機による粉砕に際して前記ドラム缶に起因する金属廃棄物を生じさせることのないもの」となし、本願補正発明に係る相違点1及び3の構成となすことは当業者が容易に想到し得ることである。

(イ)相違点2について検討する。
引用発明の「蓋体2」と「容器本体1」の構成素材に関して、気泡コンクリートで構成された放射性廃棄物処理用容器であって、蓋体を容器本体の構成素材と同じ素材で構成すること(引用文献2に記載の事項)が引用文献2に記載されている。
ここで、引用発明と引用文献2に記載の事項とは、放射性廃棄物処理用容器全体の重量が大きなものである為、例えば搬送に際して従来のハンドリング装置で処理できない欠点があるという共通の課題を有し(上記「(1)」「ア」「(ア)」及び「(1)」「イ」「(ア)」参照)、当該課題を解決する手段として共に放射性廃棄物処理容器の構成素材を気泡コンクリートで構成するものである。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の事項を適用して、「容器本体1」のみならず、「蓋体2」にも「容器本体1」と同じ構成素材である気泡コンクリートを採用してより軽量化することに格別の技術的困難性はない。
そして、「蓋体2」と「容器本体1」を同じ構成素材とすることにより、「補強繊維、及び気泡を分散状態で含み、比重が0.8?1.5の範囲内であるコンクリート製多孔質成形体からな」る「蓋体2」となして、本願補正発明に係る上記相違点2の構成となすことは当業者が容易に想到し得ることである。

(3)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記2での検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、また、上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定によっても却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、平成28年11月16日に補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2」[理由]「1 補正の内容」において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
上記「第2」[理由]「3 独立特許要件について」「(1)」のとおりである。

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明を対比する。
ア 引用発明の「容器本体1」は、「軽量コンクリート(比重1.5前後)又は内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート(比重1.0前後)であって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成されたもので」あるところ、「泡が混練されて形成された多孔質成形体」である「内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート」を、「起泡剤をプレフォームして」形成することは例をあげるまでもなく従来周知の技術的手段である。
したがって、引用発明の「容器本体1」は、「軽量コンクリート(比重1.5前後)又は内部に微細な独立気泡を有する気泡コンクリート(比重1.0前後)であって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成されたもので」あることは、本願発明の「有底筒部材」が、「セメント硬化物製」であって、「セメント、水、補強繊維、及び起泡剤をプレフォームしてなる泡が混練されて形成された多孔質成形体からなり、該多孔質成形体中に前記補強繊維及び前記泡を分散状態で含有してなる」ことに相当する。

イ 引用発明の、「プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による」「蓋体2」であって、「容器本体1」とともに「放射性廃棄物処理用容器」を構成する「蓋体2」は、本願発明の、「該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製」である「蓋部材」に相当する。

ウ 引用発明の「放射性廃棄物処理用容器」は、「容器本体1及び蓋体2から構成され」、「収納された雑固体又はドラム缶3、及び、固化体4からなる放射性廃棄物処理体」を構成するものであるから「放射性廃棄物」を収納することは明らかである。
したがって、引用発明の「容器本体1及び蓋体2から構成され」、「収納された雑固体又はドラム缶3、及び、固化体4からなる放射性廃棄物処理体」を構成してなる「放射性廃棄物処理用容器」は、本願発明の「放射性廃棄物を、直接」「充填して保管するための」「放射性汚染物格納容器」に相当する。

エ 引用発明の「気泡コンクリート」は「比重1.0前後」であることは、本願発明の「有底筒部材」「の比重は、0.8?1.5の範囲内である」ことに相当する。

オ 以上アないしエでの検討によれば、本願発明と引用発明は、
「放射性廃棄物を、直接充填して保管するための放射性汚染物格納容器であって、
セメント硬化物製の有底筒部材と、該有底筒部材の上端部の開口に着脱可能に設けられるセメント硬化物製の蓋部材とを備え、
前記有底筒部材は、セメント、水、補強繊維、及び起泡剤をプレフォームしてなる泡が混練されて形成された多孔質成形体からなり、該多孔質成形体中に前記補強繊維及び前記泡を分散状態で含有してなり、
前記有底筒部材の比重は、0.8?1.5の範囲内である、
放射性汚染物格納容器。」
である点で一致し、下記点で相違する。

カ 本願発明の「蓋部材」は、「セメント、水、補強繊維、及び起泡剤をプレフォームしてなる泡が混練されて形成された多孔質成形体からなり、該多孔質成形体中に前記補強繊維及び前記泡を分散状態で含有してな」り、「比重は、0.8?1.5の範囲内である」「有底筒部材」と同じ素材で構成されるのに対して、引用発明の「蓋体2」は、「プレキャストコンクリート又は高密度後打コンクリート等による」ものとされ、「容器本体1」と同じ素材で構成されるとは特定されない点(以下「相違点4」という。)。

(2)判断
相違点4について検討する。
引用発明の「蓋体2」と「容器本体1」の構成素材に関して、気泡コンクリートで構成された放射性廃棄物処理用容器であって、蓋体を容器本体の構成素材と同じ素材で構成すること(引用文献2に記載の事項)が引用文献2に記載されている。
ここで、引用発明と引用文献2に記載の事項とは、放射性廃棄物処理用容器全体の重量が大きなものである為、例えば搬送に際して従来のハンドリング装置で処理できない欠点があるという共通の課題を有し(上記「2」「(1)」「ア」及び「2」「(2)」「ア」参照)、当該課題を解決する手段として共に放射性廃棄物処理容器の構成素材を気泡コンクリートで構成するものである。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の事項を適用して、「容器本体1」のみならず、「蓋体2」にも「容器本体1」と同じ構成素材である気泡コンクリートを採用してより軽量化することは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、「蓋体2」と「容器本体1」を同じ構成素材とすることにより、「内部に微細な独立気泡を有するような気泡コンクリート(比重1.0前後)にあって、高分子繊維、グラスファイバ等の繊維又は鉄筋、金網等で補強されたもので構成された」「蓋体2」となして、本願発明に係る上記相違点4の構成となすことも当業者が容易に想到し得ることである。

(3)小括
したがって、本願発明は、引用発明び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明び引用文献2に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-16 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-05 
出願番号 特願2013-157966(P2013-157966)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G21F)
P 1 8・ 572- Z (G21F)
P 1 8・ 575- Z (G21F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 孝平関根 裕  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 野村 伸雄
松川 直樹
発明の名称 放射性汚染物格納容器  
代理人 菅河 忠志  
代理人 植木 久彦  
代理人 植木 久一  
代理人 伊藤 浩彰  

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