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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1333806
審判番号 不服2016-6938  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-19 
確定日 2017-10-17 
事件の表示 特願2012-104924「高能率磁力面垂直磁力直接回転モーター」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 9月27日出願公開、特開2012-186997〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成24年4月11日の出願であって、平成28年1月8日付で拒絶査定がなされ(発送日:平成28年1月19日)、これに対し、平成28年4月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審により平成28年12月28日付で拒絶の理由が通知され(発送日:平成29年1月10日)、これに対し、平成29年2月28日付で手続補正書が提出されるとともに平成29年3月10日付で意見書が提出されたものである。


2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記した平成29年2月28日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
円柱形永久磁石を、軸に対して平行に、軸上に設置して、円柱形永久磁石のN極、S極を左右に分け、この円柱形永久磁石に対して平行に設置した円柱形電磁石を使って、円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て、発生する反発のエネルギーを使って、軸の回転運動を起動し、磁力面に対して垂直な吸着エネルギー、反発エネルギーで軸の回転運動を形成するモーター。」


3.当審の拒絶の理由
当審で平成28年12月28日付で通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。
「I この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)この出願の発明の構成が不明である。例えば、請求項1において「軸に対して平行」とあるが、何に設けられたどの様な軸であるのか不明である。
更に、請求項1に「軸上に設置して」とあるが、「軸に対して平行」の軸を意味するのか否か不明であり、軸上とは軸のどの部分のことを意味するのか不明である(前出のものを意味するときは「前記?」と記載されたい)。
更に、請求項1に「円筒形永久磁石のN極、S極を左右に分け」とあるが、円筒形永久磁石の着磁面が何処であるのか不明であり、「左右に分け」とはどの様なことを意味するのか永久磁石において一般的な用語ではないため構成が特定できず不明である。
更に、請求項1に「この円筒形永久磁石に対して平行に設置した円筒形電磁石を持って」とあるが、円筒形永久磁石のどの部分と円筒形電磁石のどの部分が平行であるのか不明であり、持ってとあるが、持つとは「手の中に入れて保つ。手に取る。身につける。」ことであるから、誰が持つのか不明である。
更に、請求項1に「円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て」とあるが、同極の磁場を当てるとは一般的な用語ではないため構成が特定できず不明(同極を当てるとは円筒形電磁石と円筒形永久磁石が相対的にどの様に配置されたことを意味するのか)である。
更に、請求項1に「発生する反発のエネルギーを持って」とあるが、何故反発のエネルギーが発生するのか不明(円筒形永久磁石・円筒形電磁石共に底面と上面が着磁面と考えられるが、この場合N極S極は底面と上面の垂直方向に発生し、円筒周面の垂直方向には発生しない。)である。
更に、請求項1に「磁力面」とあるが、何の磁力面であるのか不明であり、磁力面は何処にどの様に形成されるのか不明である。
更に、請求項1に「モーター」とあるが、何故モータの動作を行うのか不明(回転運動ができる回転運動体ではないか)である。


II この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された特開2005-33973号公報に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 」


4.当審の拒絶の理由Iについての判断
特許法第36条第4項は発明の詳細な説明の記載について規定するものであり、「経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること。」(第1号)の規定に適合しなければならず、特許法第36条第6項は特許請求の範囲の記載について規定するものであり、「特許を受けようとする発明が明確であること。」(第2号)の規定に適合しなければならない。

請求項1に「軸に対して平行」と記載されている「軸」は円柱形永久磁石に対して用いられるものと考えるが、軸はモーターのどの部分に設けられた軸であって、どの様な形態の軸であるのか不明(軸には回転軸と固定軸がある。モーターのどの部分に軸は支持されているのか。)である。
請求項1に「軸上に設置して」と記載されているが、「軸上」の軸とはモーターのどの部分に設けられたどの様な形態の軸であるのか特定できず不明(当審の拒絶理由で、「前出のものを意味するときは「前記?」と記載されたい」としたが、平成29年2月28日付手続補正書では「軸上」の軸に対して「前記」が加えられていないから、「軸に対して平行」の軸とは同じ軸でなくてもよいこととなる。請求項1記載の他の単語も「前記」と記載されていないものは同様に同じ物でなくてもよいこととなる。)であり、円柱形永久磁石が設けられる軸上とはどの軸のどの部分のことを意味するのか不明である。
請求項1に「円柱形永久磁石のN極、S極を左右に分け」と記載されているが、円柱形永久磁石の着磁面が何処であるのか不明(円柱形永久磁石の上面・底面が磁極なのか、側面が磁極なのか、それ以外の着磁の仕方か。)であり、又、「左右に分け」とはどの様なことを意味するのか永久磁石において一般的な用語ではないため明細書を参照しても構成が特定できず不明(分けるとは、「境界をくっきりとつけて、離す。」ことである。永久磁石は必ずN極・S極の2つの極があり、両端がN極・S極の棒磁石を棒の軸方向の真ん中で分割しても両端がN極・S極の2つの棒磁石ができるから、磁石をN極とS極の2つに分けることはできない。仮に左右に分けられるとしても、円柱形永久磁石の軸方向で左右に分けるのか、円柱形永久磁石の上面・底面からみて左右に分けるのか、それ以外か特定できない。)である。
請求項1に「この円柱形永久磁石に対して平行に設置した円柱形電磁石を使って」と記載されているが、円柱形永久磁石のどの部分と円柱形電磁石のどの部分が平行である様に設置しているのか構成を特定できず不明である。
請求項1に「この円柱形永久磁石に対して平行に設置した円柱形電磁石を使って、円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て」と記載されているが、円筒形永久磁石はモーターの何処にどの様に設けられる磁石であるのか明細書を参照しても不明であり、円柱形電磁石をどの様に使えば円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対する対応関係が発生するのか不明であり、円筒形永久磁石は円柱形永久磁石と名称が異なるが両者は何がどの様に異なるのか明細書を参照しても不明であり、又、同極の磁場を当てるとは一般的な用語ではないため明細書を参照しても構成が特定できず不明(同極を当てるとは、どの様な磁場を発生する円柱形電磁石とどの様に着磁された円筒形永久磁石が相対的にどの様に配置されたことを意味するのか。)である。
請求項1に「発生する反発のエネルギーを使って」と記載されているが、何故反発のエネルギーが発生するのか明細書を参照しても不明[反発のエネルギー発生のために円柱形永久磁石・円筒形永久磁石・円筒形電磁石をどの様に用いるのか。円柱形永久磁石・円筒形永久磁石・円筒形電磁石は、各々底面と上面が着磁面であるとしても、N極・S極は底面と上面の垂直方向に発生し、円柱・円筒の円の中心線から放射方向(円筒周面の垂直方向)には発生しない。]である。
請求項1に「磁力面」と記載されているが、何の磁力面であるのか不明であり、磁力面はモーターの何処にどの様に形成されるのか不明である。
請求項1に「モーター」と記載されているが、何故モーターの動作を行うのか明細書を参照しても不明[モーターとは、コイルに流れる電流と磁界の相互作用によって回転力を発生させる機械であって、単に回転するだけでトルクを取り出せず負荷を結合すると回転ができなくなるものはモーターではない。図5に示される様なものは、磁石の各々底面と上面が着磁面であるとしても、N極・S極は底面と上面の垂直方向に発生し、円柱・円筒の円の中心線から放射方向(円筒周面の垂直方向)には発生しないから、固定部分と回転部分で吸引反発は発生しない。仮に、N極・S極が円柱・円筒の円の中心線から放射方向(円筒周面の垂直方向)に発生するとしても、電磁石にどの様な電流を印加するか特定されていないから、電磁石にどの様な磁場がどの様なタイミングで発生するか特定できず、したがって回転部分が何故回転するのか不明(電磁石に直流を印加し続けた場合、N極とN極、S極とS極は反発するから、図5の回転部分が図5の状態から1回転しようとしても1回転の終了間際にはN極とN極、S極とS極は反発して電磁石に近づけない。また、電磁石に印加する直流を切っただけでは、直流印加時に発生した磁場が弱くはなってもN極S極の極性は変わらない。)である。]である。

したがって、請求項1の記載は明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、かつ、発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


5.当審の拒絶の理由IIについての判断
上記のとおり、この出願の、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載は特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないが、仮に特許法第36条第4項及び第6項の規定を満たしているとして、本願発明が特許を受けることができるものであるかについて更に検討する。

(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用された特開2005-33973号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に、以下の事項が記載されている。

a「磁石または電磁石で励磁された固定子及び回転子で構成される駆動力発生装置において、磁界を固定子及び回転子ともに駆動軸と平行、垂直及び傾斜など単数または複数の組み合わせにて形成し、駆動対峙面の極にはすべて同極の磁性または片方のみを駆動方向に単数または複数の磁石や磁性体を介してN、Sの磁極対を発生するようにして、固定子の磁極と回転子の磁極が反発したり、片方にN、S極を発生させた場合には対峙磁極との間で吸引および反撥して駆動力を発生させるように構成したことを特徴とする磁石及び電磁石による駆動力発生装置。」(【請求項1】)

b「そこで本発明は磁石や電磁石を用いて外部からのエネルギーをゼロまたは最小にして駆動力を得ることである。」(【0004】)

c「磁石や電磁石を用いて外部からのエネルギーをゼロまたは最小にして駆動力をうる解決手段として、駆動装置の固定子の磁極の極性とこれに対峙する回転子の磁極の極性を同極にすることにより、回転や移動などでどのような相対位置関係にあっても反発力を発生させたり、固定子、回転子の片方をすべてNかSの同極にしておき、例えば固定子の極がすべてNの同極の場合に、回転子側の極をNSの対極にしておき、回転子のS極が近づいた時吸引し、S極に続いて近づくN極と反撥力を発生させると同時に、必要に応じて駆動力の方向を固定子や回転子の磁極の構造や構成により一方向に規制して駆動力を効率的に発生させることができる。」(【0005】)

d「図2Aは固定子磁石4Aおよび回転子磁石5Aにより回転軸と平行にそれぞれ固定子鉄心磁極3Bおよび回転子鉄心磁極7Bを励磁した対峙面でNまたはSの同極の磁極が形成されるようになっている。9はシャフトである。」(【0009】)

上記記載及び図面を参照すると、回転子は回転軸上に設置されるとともに、前記回転軸に平行な円柱形永久磁石を有し、前記円柱形永久磁石の両端に設けられた2つの回転子鉄心磁極にN極またはS極が形成されている。
上記記載及び図面を参照すると、固定子は回転子と同心状であって円柱形永久磁石を有し、前記回転子の円筒形永久磁石と前記固定子の前記円柱形永久磁石は同心状に配置され、前記固定子のN極、S極と前記回転子のN極、S極が同極同士で対峙して反発により前記回転子が起動して前記回転子の回転運動を形成している。

上記記載事項からみて、引用例には、
「回転子は回転軸上に設置されるとともに、前記回転軸に平行な円柱形永久磁石を有し、前記円柱形永久磁石の両端に設けられた2つの回転子鉄心磁極にN極またはS極が形成され、固定子は前記回転子と同心状であって円柱形永久磁石を有し、前記回転子の円筒形永久磁石と前記固定子の前記円柱形永久磁石は同心状に配置され、前記固定子のN極、S極と前記回転子のN極、S極が同極同士で対峙して反発により前記回転子が起動して前記回転子の回転運動を形成する駆動力発生装置。」
との発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。


(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「駆動力発生装置」は、本願発明の「モーター」に相当する。
引用発明の「回転子は回転軸上に設置されるとともに、前記回転軸に平行な円柱形永久磁石を有し、前記円柱形永久磁石の両端に設けられた2つの回転子鉄心磁極にN極またはS極が形成され」は、本願発明の「円柱形永久磁石を、軸に対して平行に、軸上に設置して、円柱形永久磁石のN極、S極を左右に分け」に相当し、引用発明の「固定子は前記回転子と同心状であって円柱形永久磁石を有し、前記回転子の円筒形永久磁石と前記固定子の前記円柱形永久磁石は同心状に配置され、前記固定子のN極、S極と前記回転子のN極、S極が同極同士で対峙して反発により前記回転子が起動して前記回転子の回転運動を形成する駆動力発生装置」と、本願発明の「この円柱形永久磁石に対して平行に設置した円柱形電磁石を使って、円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て、発生する反発のエネルギーを使って、軸の回転運動を起動し、磁力面に対して垂直な吸着エネルギー、反発エネルギーで軸の回転運動を形成するモーター」は、「この円柱形永久磁石に対して平行に設置した磁石を使って、円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て、発生する反発のエネルギーを使って、軸の回転運動を起動し、磁力面に対して垂直な反発エネルギーで軸の回転運動を形成するモーター」の点で一致する。

したがって、両者は、
「円柱形永久磁石を、軸に対して平行に、軸上に設置して、円柱形永久磁石のN極、S極を左右に分け、この円柱形永久磁石に対して平行に設置した磁石を使って、円筒形永久磁石のN極、S極それぞれの極に対して、同極の磁場を当て、発生する反発のエネルギーを使って、軸の回転運動を起動し、磁力面に対して垂直な反発エネルギーで軸の回転運動を形成するモーター。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点1〕
円柱形永久磁石に対して平行に設置した磁石に関し、本願発明は、円柱形電磁石を使っているのに対し、引用発明は、円柱形永久磁石を使っている点。
〔相違点2〕
本願発明は、吸着エネルギー、反発エネルギーで軸の回転運動を形成しているのに対し、引用発明は、反発エネルギーで軸の回転運動を形成している点。


(4)判断
相違点1、2について
cに、固定子側の極をNとし回転子側の極をNS交互にすることが記載されており、a?cに、永久磁石と共に電磁石を用いることが記載されている。回転電機の分野に於いて、固定子・回転子は相対的なものであり、固定子を回転子とし、回転子を固定子として用いることは周知の事項である。
そうすると、引用発明において、固定子側を電磁石とし、固定子側の極をNSとし回転子側の極をNとして、固定子側の電磁石をNS交互になる様に電流を印加して、吸着エネルギー、反発エネルギーで軸の回転運動を形成して相違点1、2のようにすることは当業者が容易に考えられることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


6.むすび
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-14 
結審通知日 2017-07-25 
審決日 2017-08-22 
出願番号 特願2012-104924(P2012-104924)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
P 1 8・ 537- WZ (H02K)
P 1 8・ 536- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 マキロイ 寛済  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 中川 真一
堀川 一郎
発明の名称 高能率磁力面垂直磁力直接回転モーター  

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