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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1333808
審判番号 不服2016-7671  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-25 
確定日 2017-10-16 
事件の表示 特願2012- 13195「サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日出願公開、特開2013-152771〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成24年1月25日の出願であって、平成27年6月30日付けで拒絶理由が通知され、同年8月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がされ、平成28年2月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において平成29年3月30日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年5月29日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたものである。

その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年5月29日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「 外部機器に接続されるサスペンション用基板において、
金属開口部を有する金属支持層と、
前記金属支持層上に設けられ、前記金属開口部上に配置された絶縁開口部を有する絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた配線と、前記配線に電気的に接続されると共に前記外部機器に電気的に接続される外部接続部と、を有する配線層と、を備え、
前記外部接続部は、前記金属開口部および前記絶縁開口部により露出された、前記外部機器に電気的に接続される外部接続面を有し、
前記外部接続部の前記外部接続面とは反対側の面に、当該外部接続部を補強する接続補強部が設けられ、
前記接続補強部は、金属材料により形成され、
前記外部接続部は、複数設けられており、
前記外部機器は、前記外部接続部に電気的に接続される外部端子を有するフレキシブルプリント基板であり、
前記金属開口部および前記絶縁開口部は、複数の前記外部接続部を一括して露出させており、
前記外部接続部の一部は、前記絶縁開口部を通って前記金属開口部内に延びていることを特徴とするサスペンション用基板。」


2.引用発明

当審から通知した拒絶理由に引用された特表2007-537562号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

あ.「【0001】
本発明は、一般に、磁気ディスクドライブヘッドサスペンションに関する。特に、本発明は、貴金属導体を備えたたわみ部、およびたわみ部を製造するためのアディティブ法に関する。」(下線は当審で付した。以下同様。)

い.「【0016】
本発明の別の実施形態によるたわみ部110の概略図を、図5および6に示す。たわみ部110には、フライングリード領域を強化するために、フライングリード領域150に施された導電性材料の追加層を有する導電性リード140が含まれる。導電性リード140の強化フライングリード領域150によって、外部導体と導電性リードのフライングリード領域との間の接続の改善が促進される。導電性リード140には、全導電性リードのそれぞれにわたって延在する、金で作製された主導体部152であって、たわみ部10に関連して図示した主導体部52に似た主導体部152が含まれる。さらに、図示した実施形態のフライングリード領域150には、フライングリード領域150における主導体部152上に施された金の第1のフライングリード導電層154が含まれる。さらに、第2のフライングリード導電層156が、第1のフライングリード導電層154上に施される。層156は、フライングリード領域150の強度を増加するために、ニッケルで作製するのが好ましい。なおさらに、第3のフライングリード導電層158が、第2の層156上に施される。第3の層158は、金で形成されるのが好ましい。金は、電気導体用途において、超音波溶接するのに好ましい材料であり、フライングリード領域150における金の外面によって、有利なことに、両側とも、超音波溶接された導体を受け入れることが可能になる。フライングリード領域150に強度の増加をもたらすことによって、外部導体(図示せず)とフライングリード領域との間の接続の改善が可能になり、フライングリード領域における導電性リード140を損傷せずに、再加工のために外部導体を取り外すことが容易になる。フライングリード領域150を除いて、たわみ部110は、たわみ部10と同様にすることができ、「1XX」シリーズでは、同様の特徴が識別される。たとえば、ばね金属層120は、ばね金属層20と同様かまたは同一にすることができる。」

う.「【0050】
図22および23A?Kは、図5および6に示すたわみ部110のばね金属層120上に導電性リード140を製造するためのアディティブ法710の別の実施形態におけるステップを示す。図23Aに示す一ステップは、ばね金属層120上に感光性ポリイミド材料を施して、誘電体層124を形成するステップ712である。ポリイミド材料を施してパターン化するために、フォトリソグラフィプロセスが用いられる。誘電体層124は、ばね金属層120の大部分の上に延在することができるが、誘電体層は、開口部142(図5に示すような)が最終的に形成される、ばね金属層120の部分127の上にギャップを有するようにパターン化される。誘電体層124の厚さは、典型的には部分127の近くで減少し、誘電体層にテーパーエッジ125を形成するようにする。誘電体層124は、ばね金属層120の残りのほとんどに施してもよいが、誘電体層124は、たわみ部110に形成される導電性リード140からばね金属層120を絶縁することが望ましいエリアに施す必要があるだけである。
【0051】
図23Bに示す次のステップは、たわみ部110上にシード層134を施すステップ714である。シード層134は、真空蒸着プロセスまたはシード層材料をたわみ部の表面上にスパッタする他の公知のプロセスを用いることによって、たわみ部110に施すことができる。シード層134は、次のめっきプロセス中に電気基準として用いられる。誘電体層124は部分127の上に施されないが、シード層134は部分127上に施されることに留意されたい。
【0052】
図23C?Eに示す次の別のステップは、たわみ部110のシード層134上に導電性リード140の主導体部152をめっきするステップ716である。主導体部152をたわみ部110のどこに追加するのが望ましく、どこに追加するのが望ましくないかを画定するために、主導体部152をめっきする前に、レジスト材料190のマスクが、フォトリソグラフィプロセスを用いて第1の主面121上に施されてパターン化される。
【0053】
一旦レジスト材料190が施されてパターン化されたならば、導電性リード140の金の主導体部152は、レジスト材料190がないエリアにおける第1の主面121に沿ってたわみ部110にめっきされる。前述の実施形態におけるように、電気めっきプロセスを用いて、主導体部152をめっきすることができる。主導体部152がたわみ部110上にめっきされた後、レジスト材料190は、たわみ部110から除去される。
【0054】
図23F?Hに示す次のさらに別のステップは、フライングリード領域150上に第2のめっき動作を実行するステップ717である。第2のめっき動作を実行する前に、第2のめっき動作においてめっきを受けるように意図されていないたわみ部における部分を覆うために、たわみ部110の第1の主面121における部分が、レジスト材料190のマスクで覆われる。一旦レジスト材料190のマスクが施されたならば、第2のめっき動作は、電気めっきまたは無電解めっきプロセスを用いて、フライングリード領域150の導電性リード140上で実行される。一実施形態において、金の第1のフライングリード導電層154が、第2のプロセスの一部としてたわみ部110上にめっきされる。次のめっき工程において、ニッケルの第2のフライングリード導電層156が、第1の層154上に施される。次のさらに別のめっき動作において、金の第3のフライングリード導電層158が、第2の層156に施される。第1のフライングリード導電層154、第2のフライングリード導電層156および第3のフライングリード導電層158を、それぞれ、金、ニッケルおよび金として説明しているが、銀、銅、金合金を含む様々な合金を始めとして、他の材料または材料の組み合わせを用いてフライングリード領域を形成してもよい。しかしながら、たわみ部110の主面121および123に沿ってアクセス可能な、フライングリード領域150の導電性リード140における部分は、金で形成するのが好ましい。第2のめっき動作が完了した後、レジスト材料190は、上記したプロセスを用いてたわみ部110から除去され、たわみ部は、図23Hに示すように残される。
【0055】
図23Iは、導電性リード140によって覆われていないシード層134の部分を、たわみ部110から除去する次のステップ718を示す。シード層150は、エッチングまたは他の公知のプロセスで除去され、導電性リード140および誘電体層124は、第1の主面121を覆ったままにされる。
【0056】
図23Jを参照すると、次のステップは、カバー層136をたわみ部110上に施すステップ720である。カバー層136は、主に導電性リード140の主導体部152および第1の主面121の周辺エリアの上に施され、フライングリード領域150、テストパッド部146、およびヘッド接合パッド部(図示せず)は、カバー層によるカバレッジがないままにされる。主導体部152の一部もまた、本発明の範囲から逸脱せずに、カバー層136によって覆われないようにすることが可能である。カバー層136は、方法610のステップ620に関連して上記したように施される。
【0057】
図23Kは、たわみ部110の第2の主面123の一部から、ばね金属層120およびシード層134をエッチングで取り去る次のステップ722の結果を示す。ステップ722は、第2の主面123から導電性リード140のフライングリード領域150へのアクセスを可能にする開口部142を作成する。代替として、追加のエッチングを実行して、テストパッド部146、ヘッド接合パッド部(図示せず)またはその両方に対して、第2の主面123からのアクセスを可能にする開口部(図示せず)を作成してもよい。上記で確認したタイプのエッチングおよびフォトリソグラフィプロセスを用いて、開口部142を形成することができる。第1のフライングリード導電層154の厚さは、腐食液が、腐食液に強くない可能性がある第2のフライングリード導電層156の完全性を損なうのを防ぐために重要であることに留意されたい。」

え.「【0079】
本発明によって多くの利点が提供される。非腐食性またはほぼ非腐食性の金属を用いることによって、より堅牢で、腐食を防ぐコーティングにそれほど依存しない改善されたたわみ部が準備される。金および銀などの貴金属または準貴金属は、他の材料より耐食性がある。金の表面を備えたフライングリードは、フレックス回路などの外部の導電性リードをフライングリードに取り付けるための超音波接合を受け入れることができる。さらに、本発明の強化リードは、損傷を受けずに再加工するのに適している。なおさらに、フライングリードが第2の動作で施される実施形態において、主導体部の端部上にフライングリードを延ばすことによって、プロセスは、より堅固な導電性リードをもたらす。なぜなら、ずれの可能性が最小限にされるからである。」

お.図5、図6として以下の図面が記載されている。


上記あ.?え.の記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると、

a.上記い.及び図5、6には、引用例における「本発明の別の実施形態」について記載されており、当該実施形態の製造に関して上記う.に記載されている。
上記あ.の記載によれば、引用例は、磁気ディスクドライブヘッドサスペンションのたわみ部に関するものであるといえる。
そして、上記い.の記載によれば、引用例の導電性リード140のフライングリード領域150は外部導体と接続されるものであり、当該外部導体は、上記え.の「金の表面を備えたフライングリードは、フレックス回路などの外部の導電性リードをフライングリードに取り付けるための超音波接合を受け入れることができる。」との記載に照らせば、フレックス回路の外部の導電性リードであることが明らかである。そうしてみると、引用例は、フレックス回路の導電性リードと接続される磁気ディスクドライブヘッドサスペンションのたわみ部に関するものということができる。

b.上記う.の【0057】段落に「・・・第2の主面123から導電性リード140のフライングリード領域150へのアクセスを可能にする開口部142を作成する。」と記載され、また、図6からばね金属層120に開口部142が設けられていることが明らかであることから、引用例は、開口部142が設けられたばね金属層120を有するといえる。

c.上記う.の【0050】段落に「・・・ばね金属層120上に感光性ポリイミド材料を施して、誘電体層124を形成するステップ712である。・・・誘電体層124は、ばね金属層120の大部分の上に延在することができるが、誘電体層は、開口部142(図5に示すような)が最終的に形成される、ばね金属層120の部分127の上にギャップを有するようにパターン化される。」、【0051】段落に「誘電体層124は部分127の上に施されないが・・・」と記載されていること、及び、図6をみれば、誘電体層124はばね金属層120上に形成され、開口部142を有しているといえる。
また、図6をみれば、ばね金属層120に設けられた開口部142と誘電体層124に設けられた開口部142は、フライングリード領域150に形成されており、そもそも当該開口部142は「第2の主面123から導電性リード140のフライングリード領域150へのアクセスを可能にする」(上記う.【0057】段落)ために設けられていることも勘案すれば、ばね金属層120に設けられた開口部142の上部に誘電体層124に設けられた開口部142が重なって位置していることは明らかである。
そうしてみると、引用例は、ばね金属層120上に形成された、開口部142が設けられた誘電体層124を有しており、誘電体層124に設けられた開口部142は、ばね金属層120に設けられた開口部142の上部に位置しているといえる。

d.上記い.、う.の記載及び図6によれば、導電性リード140は、誘電体層124の上に形成される部分と、フライングリード領域150に形成される部分とにより構成されることは明らかである。

e.上記い.、う.の記載及び図6によれば、フライングリード領域150に形成される導電性リード140は、開口部142により露出されているといえる。

f.上記い.、う.の記載及び図6によれば、フライングリード領域150における導電性リード140上には、第2のフライングリード導電層156が形成されている。そして、上記い.に「層156は、フライングリード領域150の強度を増加するために、ニッケルで作製するのが好ましい。」と記載されていることから、第2のフライングリード導電層156はフライングリード領域の強度を増加するためのものといえ、ニッケルで作製されるものである。

g.図5をみれば、フライングリード領域150の導電性リード140が複数設けられていることは明らかである。

h.上記c.で検討したように、引用例では、ばね金属層120に設けられた開口部142の上部に、誘電体層124に設けられた開口部142が重なるように位置しており、ばね金属層120に設けられた開口部142及び誘電体層124に設けられた開口部142が、フライングリード領域150の複数の導電性リード140を露出させているということができる。そして、図5をみれば、複数の導電性リード140が開口部142により一括して露出されていることが明らかである。

i.上記う.に記載された製造方法及び図6によれば、ばね金属層120に開口部142が形成され、たわみ部が準備された時点では、フライングリード領域150の導電性リード140の一部は誘電体層124の開口部142内に延びていることが明らかである。

以上を総合すると、引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「 フレックス回路の導電性リードと接続される磁気ディスクドライブヘッドサスペンションのたわみ部であって、
開口部142が設けられたばね金属層120を有し、
ばね金属層120上に形成された、開口部142が設けられた誘電体層124を有し、
誘電体層124に設けられた開口部142は、ばね金属層120に設けられた開口部142の上部に位置しており、
誘電体層124の上に形成される部分と、フライングリード領域150に形成される部分とにより構成される導電性リード140を有し、
フライングリード領域150に形成される導電性リード140は開口部142により露出されており、
フライングリード領域150における導電性リード140上に、フライングリード領域150の強度を増加するための第2のフライングリード導電層156が形成され、
第2のフライングリード導電層156はニッケルで作製され、
フライングリード領域150の導電性リード140が複数設けられ、
フレックス回路は、フライングリード領域150における導電性リード140に接続される導電性リードを有しており、
ばね金属層120に設けられた開口部142及び誘電体層124に設けられた開口部142が、フライングリード領域150の複数の導電性リード140を一括して露出させており、
フライングリード領域150の導電性リード140の一部は、たわみ部が準備された時点で誘電体層124に設けられた開口部142内に延びている、
たわみ部。」


3.対比・判断

本願発明を引用発明と対比すると、

本願発明の「外部機器」は「フレキシブルプリント基板」であるところ、引用発明の「フレックス回路」はたわみ部の外部の回路といえるから、本願発明の「外部機器」に相当する。また、引用発明の「たわみ部」は、磁気ディスクドライブヘッドサスペンション用のものであり、金属層、誘電体層、導電性リードを層状に重ねた構造を有するから、本願発明の「サスペンション用基板」に相当する。

引用発明の開口部142のうちの金属支持層に設けられた部分が、本願発明の「金属開口部」に相当することは明らかであるから、引用発明の「開口部142が設けられたばね金属層120」は、本願発明の「金属開口部を有する金属支持層」に相当する。

引用発明の誘電体層124に設けられた開口部142は、本願発明の「絶縁開口部」に相当することは明らかであり、また、引用発明では「誘電体層124に設けられた開口部142は、ばね金属層120に設けられた開口部142の上部に位置し」ている。さらに、引用発明の誘電体層124は、ばね金属層120と導電性リード140とを電気的に絶縁する機能を有していることが明らかであるから、引用発明の「ばね金属層120上に形成された、開口部142が設けられた誘電体層124」は、本願発明の「前記金属支持層上に設けられ、前記金属開口部上に配置された絶縁開口部を有する絶縁層」に相当する。

引用発明において、導電性リード140の誘電体層124の上に形成される部分と、フライングリード領域150に形成される部分とは、電気的に接続されていることは明らかであるから、引用発明の導電性リード140の誘電体層124の上に形成される部分が、本願発明の「前記絶縁層上に設けられた配線」に相当し、引用発明の導電性リード140のフライングリード領域150に形成される部分が本願発明の「外部接続部」に相当する。そして、誘電体層124の上に形成される部分と、フライングリード領域150に形成される部分とを合わせた導電性リード140が本願発明の「配線層」に相当する。

引用発明は「フライングリード領域150に形成される導電性リード140は開口部142により露出され」る構成を有しているところ、フライングリード領域に形成される導電性リード140の下面は、「フレックス回路の導電性リード」に電気的に接続される部分であるから、本願発明の「外部接続面」に相当する。

引用発明の「第2のフライングリード導電層156」は、導電性リード140の下面とは反対の面に形成され、フライングリード領域150の強度を増加する構成であるから、本願発明の「接続補強部」に相当する。

引用発明の第2のフライングリード導電層156はニッケルで作製されており、これは引用発明の「金属材料」に相当する。

引用発明の「フレックス回路の導電性リード」は、フライングリード領域150における導電性リード140に電気的に接続されるものといえるから、本願発明の「外部端子」に相当する。

本願発明においては「外部接続部の一部」は「金属開口部内」まで延びているのに対して、引用発明では「フライングリード領域150の導電性リード140の一部は」「誘電体層124に設けられた開口部142内に延びている」点で相違するものの、「絶縁開口部」まで延びているといえる点では両者は共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「 外部機器に接続されるサスペンション用基板において、
金属開口部を有する金属支持層と、
前記金属支持層上に設けられ、前記金属開口部上に配置された絶縁開口部を有する絶縁層と、
前記絶縁層上に設けられた配線と、前記配線に電気的に接続されると共に前記外部機器に電気的に接続される外部接続部と、を有する配線層と、を備え、
前記外部接続部は、前記金属開口部および前記絶縁開口部により露出された、前記外部機器に電気的に接続される外部接続面を有し、
前記外部接続部の前記外部接続面とは反対側の面に、当該外部接続部を補強する接続補強部が設けられ、
前記接続補強部は、金属材料により形成され、
前記外部接続部は、複数設けられており、
前記外部機器は、前記外部接続部に電気的に接続される外部端子を有するフレキシブルプリント基板であり、
前記金属開口部および前記絶縁開口部は、複数の前記外部接続部を一括して露出させており、
前記外部接続部の一部は、前記絶縁開口部内に延びていることを特徴とするサスペンション用基板。」

(相違点)
一致点とした「前記外部接続部の一部は、前記絶縁開口部内に延びていること」に関して、本願発明では「金属開口部内」まで延びているのに対して、引用発明では、たわみ部が準備された時点では「誘電体層124に設けられた開口部142内」(本願発明の「絶縁開口部内」に相当。)に止まっているものの、超音波接合後の状態は明らかでない点。

上記相違点について検討する。
本願発明の外部接続部の一部が金属開口部内に延びているという構成は、平成29年5月29日付けで補正された構成であるが、当該補正の根拠について、請求人は同日付意見書において「当該事項は、例えば、本願明細書の段落【0136】、図23などに基づいているものと思料する。」と述べている。そこでこれらの指摘箇所をみると、本願明細書の段落【0136】及び図23には、超音波接合の際、ボンディングツール135がフライングリード33を押圧することによって、フライングリードが金属開口部内まで変形する構成が記載されているのみであるから、本願発明として超音波接合時の変形によってフライングリードが金属開口部内まで変形したものは排除されないと考える。
そこで、引用発明について検討すると、上記「2.え.」に「金の表面を備えたフライングリードは、フレックス回路などの外部の導電性リードをフライングリードに取り付けるための超音波接合を受け入れることができる。」と記載されているように、引用発明は超音波接合を行うことを前提としている。そして超音波接合を行う場合、ボンディングツールによってフライングリードを押圧することは技術常識であり、押圧により、フライングリードが接続される外部機器の導電性リードの接合される面の位置形状に応じてフライングリードが変形し得ることは明らかである。したがって、引用発明において、超音波接合時の変形によって外部接続部の一部が金属開口部まで延びる構成とすることは、接続される外部機器側の接合される面の位置に応じて、適宜構成され得る程度の事項にすぎない。
よって、相違点2とした本願発明の構成は、当業者が引用発明から容易に想到できたものである。

そして、本願発明が奏する効果も、当業者が引用発明から容易に予想できる範囲内のものである。


4.むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-08-21 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2012-13195(P2012-13195)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 齊藤 健一  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 菅原 道晴
山本 章裕
発明の名称 サスペンション用基板、サスペンション、ヘッド付サスペンションおよびハードディスクドライブ  
代理人 堀田 幸裕  
代理人 永井 浩之  
代理人 山下 和也  
代理人 佐藤 泰和  
代理人 朝倉 悟  
代理人 中村 行孝  

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