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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1333824
審判番号 不服2017-1911  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-09 
確定日 2017-11-07 
事件の表示 特願2012-257287「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 6月 9日出願公開、特開2014-107043、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年11月26日の出願であって、平成28年7月8日付けで拒絶理由が通知され、同年8月4日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年12月26日付け(発送日:平成29年1月10日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成29年2月9日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされ、同年4月28日に上申書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献1?3に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2004-119047号公報
2.特開2003-9333号公報
3.特開平9-92385号公報

第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正によって、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「切欠き部」について、「前記チューブの端部を配置する切欠き部」とあったものを、「前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」と限定するものであり、かつ、補正前の請求項1に記載された発明とその補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、当初明細書の段落【0020】には、「電気接触部22には、略長方形板状に形成されていて、チューブ4の端部(後述するリブ43)を配置する切欠き部25と、ハウジング3に係止されるハウジング係止孔26と、相手方の端子にボルト固定されて接続される接続部27と、が設けられている。」と記載されているから、「前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」という事項は、当初明細書に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4」から「第6」までに示すように、補正後の請求項1?4に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、平成29年2月9日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
電線の端末に接続される端子金具と、
前記電線及び、前記端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられて該端子金具と前記電線との接続部分を少なくとも被覆するチューブと、を備え、
前記端子金具は、前記電線に接続される電線接続部と、該電線接続部に連なり、相手方の端子金具に接続される電気接触部と、を有し、
前記電気接触部には、前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部と、該切欠き部を挟んで前記電線接続部の反対側に位置して前記相手方の端子に接続される接続部と、が設けられ、
前記チューブの前記端部を外側から圧迫し、当該端部と前記端子金具との隙間を塞いで当該隙間から前記接続部分への浸水を防止する圧迫部材を備えたことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記端子金具は、前記電線の端末に接続される電線接続部と、該電線接続部との間で曲げられるとともに、相手方の端子金具に接続される電気接触部と、で構成され、
前記ハウジングは、前記電気接触部を貫通させる貫通孔を有する第1ハウジングと、前記貫通方向に沿って前記第1ハウジングに近付けられて前記第1ハウジングとの間に前記接続部分を被覆した前記チューブを収容する第2ハウジングと、を備え、
前記第2ハウジングには、前記第1ハウジングに向かって突出して形成されて前記圧迫部材に当接する当接片が設けられ、
前記チューブには、前記電気接触部を被覆する第1被覆部と、前記電線接続部を被覆する第2被覆部と、が設けられ、
前記圧迫部材は、前記第1被覆部の外周に取り付けられて前記第1被覆部を圧迫するとともに、前記第1ハウジングと前記当接片との間に挟持されることを特徴とする請求項1記載のコネクタ。
【請求項3】
前記圧迫部材には、前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとのうち少なともいずれか一方に係止する係止部が設けられていることを特徴とする請求項2記載のコネクタ。
【請求項4】
前記圧迫部材が、一対の分割部に分割されて構成され、
前記一対の分割部は、前記チューブを互いの間に挟んで圧迫した状態で保持されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項記載のコネクタ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1(特開2004-119047号公報)には、「防油水性を備えた電磁波シールド構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0032】
図3および図4に示すように、
・・・(中略)・・・
【0037】
また、モールド本体41の一方端部と他方端部にそうした異質の防水シール部44と防油水シール部45を後付けで設けるためのシール部材装着用の第1,第2凹部42,43を設けているが、それは次の理由からである。すなわち、本例の場合の端子金具33は、電線側導体31にかしめ加工などして圧着する圧着部33aと、L字形の先部に機器側のモータ入出力端子にボルト結合などするためのボルト孔33c付きの接続部33bを設けた平坦な金属材料を加工したものである。そうした平坦形状の安価な端子金具に対して、筒形にプレス加工などされたパワー端子などと呼ばれる高価な端子金具も周知である。そのように形状や種類の異なる端子金具に対して、予め設けられている第1,第2凹部42,43に後付けで適応する樹脂材質の防水シール部44と防油水シール部45を充填して設けることができるので、汎用性が高まる。」

(2)「【0041】
図7?図10において、電気コネクタ100は、シェル101内に電気コネクタ本体120が収納されて構成されている。このシェル101は、金属製(又は、導通性を有する樹脂製)で、一端が開放型の箱状に形成され、開放側の端部近傍には、深さが浅くなる方向に段差102が形成されている。さらに、段差102が形成されているシェル開放端103は、底面がテーパー状になって絞った状態となっている。そして、シェル開放端103で3本の電線122、123、124を覆う編組121の端部を挟み込んでいる。このシェル101には、シェル開放端103の対向側壁面端部にコの字状にフランジ104が設けられている。このフランジ104には、両端部にボルトを挿入するボルト孔105、106が設けられている。また、このシェル101のシェル開放端103の先端両壁面の上端部には、シールドストッパ取付用のフランジ107、108が設けられている。このシールドストッパ取付用のフランジ107、108には、ボルトを挿入するボルト孔109、110が設けられている。そして、このシェル101には、シェル開放端103の反対側の壁面111に適宜間隔で長方形状のスリット112、113、114が形成されている。このスリット112、113、114は、後述する樹脂製のハウジング131、132、133のフランジ状突起131C、132C、133Cを契合するためのものである。この樹脂製のハウジング131、132、133のフランジ状突起131C、132C、133Cをスリット112、113、114に契合することにより、樹脂製のハウジング131、132、133は、シェル101から外れ落ちることなく確実に装着される。
【0042】
また、電気コネクタ本体120は、以下のように構成される。すなわち、図8に示す如く、チューブ形状に編んだ編組121で覆われている3本の電線122、123、124は、電線122、123、124の各絶縁体122A、123A、124Aを剥離し、導体122B、123B、124Bが露出しており、この導体122B、123B、124BのそれぞれにL字形状の端子金具125、126、127が圧着されている。この電線122、123、124は、外側から導電性の素線を覆った編組121によって、例えば大電流・高電圧によって発生する電線122,123、124からの電磁波をその編組121で吸収して外部に放出されることがないようにシールドしてある。このシールド材である編組121としては、金属素線を編んだものの他、ポリエステルなどの樹脂線にCu(銅)メッキ仕上げした素線をスパイラルに巻き付けたものを網目素線とし、筒状に編んだものが良く知られている。この電線122,123、124のそれぞれには、グロメット128、129、130が嵌合してある。
【0043】
また、L字形状の端子金具125、126、127には、樹脂製のハウジング131、132、133がそれぞれ装着されるようになっている。この樹脂製のハウジング131は、円柱状に形成される円柱部131Aを有している。この円柱部131Aの一端には、所定の厚さを有し板状に形成され円柱部131Aの径と略同一の穴131Bの形成された係止部材131Cが設けられている。この係止部材131Cの穴131Bが後述するグロメット128、のグロメット先端部128Bを密に嵌合する部分である。また、樹脂製のハウジング131の円柱部131Aの他端には、充填部131Dが形成されており、この充填部131Dに後述する充填剤134が注入されるようになっている。
・・・(中略)・・・
【0046】
このように電気コネクタを組み立てるには、まず、L字形状の端子金具125、126、127の先端部125A、126A、127Aを樹脂製ハウジング131、132、133のスリット131G、132G、133Gに嵌合し、樹脂製ハウジング131、132、133を端子金具125、126、127のL字近傍まで摺動させる。しかる後、樹脂製のハウジング131、132、133の円柱部131A、132A、133Aの充填部131D、132D、133Dに充填剤134、135、136を注入する。この充填剤134、135、136には、鋼材と樹脂への密着性が良く耐油性、耐熱性のある充填剤で、例えば、ウレタン、アクリル、エポキシ、ホットメルト等がある。
・・・(中略)・・・
【0048】
このように端子金具125、126、127に樹脂製ハウジング131、132、133を装着すると、予め電線122,123、124に嵌合してあるグロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bを樹脂製ハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの穴131B、132B、133Bに密に嵌合する。これによって、電線122,123、124と樹脂製ハウジング131、132、133との間は、グロメット128、129、130のグロメット末端部128A、129A、130Aの部分で電線122,123、124と、グロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bの部分で樹脂製ハウジング131、132、133と密閉されることになる。
【0049】
このように樹脂製のハウジング131、132、133の円柱部131A、132A、133Aの充填部131D、132D、133Dに充填剤134、135、136を注入し、グロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bを樹脂製ハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの穴131B、132B、133Bに密に嵌合すると、この樹脂製ハウジング131、132、133とグロメット128、129、130を結合した端末は、樹脂製ハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの係合突起131E、132E、133Eをシェル101のスリット112、113、114に嵌合して、シェル101に組み付ける。
【0050】
しかる後、シールドストッパー140をシェル101に取り付ける。このシールドストッパー140は、シェル101の開口部と同様の形状を有し、一端にシェル101のフランジ107、108に合わせるフランジ141、142が設けられており、このランジ141、142には、ボルトを挿入するボルト孔143、144が設けられている。また、シールドストッパー140に形成される凹部145、146、147は、樹脂製のハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの円柱部131A、132A、133A取付側に形成される突状係合起148、149、150に係合させるもので、このシールドストッパー140は、樹脂製のハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cを押さえ付けて、樹脂製のハウジング131、132、133がシェル101内に装着され飛び出すことがないようにする役目を果たしている。」

(3)「【0055】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
図12に示すように、電気コネクタ100におけるグロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bの部分に取り付けられている樹脂製のハウジング131、132、133の円柱部131A、132A、133Aのそれぞれを、例えば、電気自動車搭載のモータにおけるアルミニウム製など導電性金属の被取付体200に設けた取付孔201?203に嵌合させて取り付けて仮位置決めする。被取付体200は図示していないが、接地されている。仮位置決め後、金属製のシェル101をボルト(図示せず)をボルト孔105、106に挿入して、ボルトで被取付体200に固定する。」

(4)図8?図12を参照すると、端子金具125、126、127の接続部には、切欠き(図8において、符号127の引出線の上の部分)が設けられており、切欠きの位置には、樹脂製ハウジング131、132、133が位置しており、接続部には、切欠きを挟んで圧着部の反対側に位置して機器側のモータ入出力端子に接続される先端部125A、126A、127Aが設けられていることが看取される。

上記の記載事項及び図面の記載を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、図7?12に記載の第2の実施形態として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「電線122、123、124の端末に接続される端子金具125、126、127と、
前記電線122、123、124及び、前記端子金具125、126、127を収容するシェル10及びシールドストッパー140と、
前記シェル10及びシールドストッパー140内に設けられて該端子金具125、126、127と前記電線122、123、124との接続部分を少なくとも被覆するグロメット128、129、130と、を備え、
前記端子金具125、126、127は、前記電線122、123、124に接続される圧着部と、該圧着部に連なり、機器側のモータ入出力端子に接続される接続部と、を有し、
前記接続部には、樹脂製ハウジング131、132、133が位置している切欠きと、該切欠きを挟んで前記圧着部の反対側に位置して前記機器側のモータ入出力端子に接続される先端部125A、126A、127Aと、が設けられ、
グロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bを樹脂製ハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの穴131B、132B、133Bに密に嵌合している電気コネクタ100。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献2(特開2003-9333号公報)には、「端子防水構造」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【請求項1】 電線・ケーブルの端末部を皮剥処理して露出させた導体に端子金具を圧着して接続し、この接続部に外側から密着してシール性を確保する弾性部材を被着し、さらにその弾性部材を圧縮した状態にして保護部材の内部に収容してなっていることを特徴とする端子防水構造。
【請求項2】 前記弾性部材は、前記電線・ケーブルの皮剥処理した端末部の外周面から前記仕切壁部の外周面に至る接続部全域の外周面に密着する長さのゴム製の筒体であることを特徴とする請求項1に記載の端子防水構造。
【請求項3】 前記保護部材は、前記弾性部材を圧縮状態で着脱可能に収容するキャップ形状となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の端子防水構造。」

(2)「【0016】電線・ケーブル10は、銅線などの導体11上に絶縁体やシースによる絶縁被覆12を押出し成形して施したものであり、その端末部の絶縁被覆12を皮剥ぎ処理して導体11を露出させ、この露出させた導体11に端子金具20をかしめなどして圧着して接続する。
【0017】図2に示すように、端子金具20は、成形ワークである元の円筒体の一端部を円筒形のままの導体圧着部21として残し、その円筒体前方部をプレス加工などして扁平な形状に押し潰し、同時に端子接続孔であるボルト孔25を打ち抜き加工などして端子接続部22を設けた構造となっている。ボルト孔25を機器の入出力端子にボルト結合することで電線・ケーブル10を電気的に接続する。かかる端子金具20の導体圧着部21と端子接続部22との間は押し潰し成形した仕切壁部23となっており、この仕切壁部23で筒形状のままの導体圧着部21と扁平形状の端子接続部22を隔絶している。
【0018】同じく図2において、電線・ケーブル10の端末部で露出させた導体11は端子金具20の筒形状のままとなっている導体圧着部21に後方から挿入され、仕切壁部23の突当て面24に当接させた状態で導体圧着部21をかしめなどして導体11を圧着する。そうした導体11の圧着部を外部に晒さないように、導体圧着部21の上から特に導体挿入口を覆ってゴム製で円筒形のキャップシール(弾性部材)30を密着させて被着している。
【0019】このキャップシール30は、電線・ケーブル10の皮剥処理した端末部の絶縁被覆12の外周面に密着し、また端子金具20の仕切壁部23の外周面に密着するだけの長さを有している。それら絶縁被覆12および仕切壁部23に密着するキャップシール30のキャップ胴部31前後の端部内周面は山谷による凹凸部や刻み目が形成された密着内周部32,33となっている。このキャップシール30を全体に密着して被せることにより、接続部に水成分や油成分が浸入して導体11の線間に浸透することにより、絶縁性能を損なわないよう油水に対するシール性を確保する。
【0020】また、このキャップシール30によるシール性の確実性をさらに高めるために、図3(a),(b)に示すように、プラスチック成形された二つ割り式のキャップホルダ(保護部材)40が備わり、このキャップホルダ40の内側にキャップシール30が圧縮した状態で保持されるようになっている。」

(3)「【0022】以上の構成により、端子金具20の導体圧着部21に圧着した部分の導体11が外部に晒されないようにキャップシール30を密着させて被着することで、水分や油成分が導体圧着部21の導体挿入口から圧着部に浸入して導体11の線間に浸透することで絶縁性能を損なわないようシールする。そうしたキャップシール30を圧縮状態でキャップホルダ40の内部に収容して保持することで、キャップシール30の接続部への密着度をさらに高め、シール性をより一層確実なものとする。キャップシール30の被着作業やキャップホルダ40の装着作業は簡単に行われ、従来のホットメルトなど塗布してシール性を確保する作業と比べて一段と能率アップし、またシール性の信頼性も一層向上する。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献3(特開平9-92385号公報)には、「コネクタ用防水シール」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0019】一方、内周シール筒部42の外周にはリアホルダ50が装着されている。これは硬質の合成樹脂製であって、図3及び図4に示すようにリング状をなしており、径方向の対称位置に一対の係合突起51が突設されている。また、コネクタハウジング10側には防水シール40の内周シール部41を取り巻く位置に、一対の係合孔12が対称位置に形成されており、リアホルダ50を内周シール筒部42外側のリアホルダ収容凹部44に嵌合することで、係合突起51が係合孔12に嵌合するようになっている。また、外周シール筒部41の内周側の保護筒収容凹部46内には保護筒52が嵌合されている。これはシールド電線20の外被23を嵌合可能な円筒形をなしていて、例えば硬質の合成樹脂製である。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「電線122、123、124」は、本願発明1の「電線」に相当する。
以下同様に、「端子金具125、126、127」は、「端子金具」に、
「シェル10及びシールドストッパー140」は、「ハウジング」に、
「グロメット128、129、130」は、「チューブ」に、
「圧着部」は、「電線接続部」に、
「機器側のモータ入出力端子」は、「相手方の端子金具」に、
「接続部」は、「電気接触部」に、
「切欠き」は、「切欠き部」に、
「先端部125A、126A、127A」は、相手方の端子に接続される「接続部」に、
「電気コネクタ100」は、「コネクタ」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「電線の端末に接続される端子金具と、
前記電線及び、前記端子金具を収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられて該端子金具と前記電線との接続部分を少なくとも被覆するチューブと、を備え、
前記端子金具は、前記電線に接続される電線接続部と、該電線接続部に連なり、相手方の端子金具に接続される電気接触部と、を有し、
前記電気接触部には、切欠き部と、該切欠き部を挟んで前記電線接続部の反対側に位置して前記相手方の端子に接続される接続部と、が設けられたコネクタ。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1では、「前記電気接触部には、前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」が設けられ、「前記チューブの前記端部を外側から圧迫し、当該端部と前記端子金具との隙間を塞いで当該隙間から前記接続部分への浸水を防止する圧迫部材を備え」ているのに対して、
引用発明では、「前記接続部には、樹脂製ハウジング131、132、133が位置している切欠き」が設けられ、「グロメット128、129、130のグロメット先端部128B、129B、130Bを樹脂製ハウジング131、132、133の係止部材131C、132C、133Cの穴131B、132B、133Bに密に嵌合している」点。

(2)相違点についての判断
引用文献2(前記「第5 2」を参照。)には、端子金具20は円筒体の一端部を導体圧着部21として残し、その円筒体前方部をプレス加工などして端子接続部22を設けた構造となっていること、及び導体11に端子金具20をかしめなどして圧着して接続し、導体圧着部21の上からキャップシール30を密着させて被着し、このキャップシール30によるシール性の確実性をさらに高めるために、キャップホルダ40(本願発明1の「圧迫部材」に相当。)の内側にキャップシール30が圧縮した状態で保持されるようにすることが記載されている(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)。
しかし、本願発明1では、圧迫部材は、電気接触部の切欠き部にあるチューブの端部を圧迫しているのに対して、引用文献2に記載された技術的事項では、キャップホルダ40(本願発明1の「圧迫部材」に相当。)は、端子接続部22(本願発明1の「電気接触部」に相当。)ではなく、導体11と端子金具20との接続部分である導体圧着部21(本願発明1の「電線接続部」に相当。)にあるキャップシール30を圧縮(本願発明1の「圧迫」に相当。)している点で、両者は圧迫部材の圧迫する位置が異なる。
そして、引用文献2に記載された技術的事項は、「前記電気接触部には、前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」が設けられ、「前記チューブの前記端部を外側から圧迫し、当該端部と前記端子金具との隙間を塞いで当該隙間から前記接続部分への浸水を防止する圧迫部材を備え」ている点を何ら示唆するものではない。

また、引用文献3(前記「第5 3」を参照。)には、リアホルダ50の係合突起51が係合孔12に嵌合することが記載されている(以下、「引用文献3に記載された技術的事項」という。)。
しかし、引用文献3に記載された技術的事項は、「前記電気接触部には、前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」が設けられ、「前記チューブの前記端部を外側から圧迫し、当該端部と前記端子金具との隙間を塞いで当該隙間から前記接続部分への浸水を防止する圧迫部材を備え」ている点を何ら示唆するものではない。

そうすると、たとえ引用発明に引用文献2及び3に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものではない。
したがって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同じ理由により、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第7 原査定について
審判請求時の補正により、本願発明1?4は、「前記チューブの端部にあるリブを配置する切欠き部」という事項を有するものとなっており、前記「第6 1」及び「第6 2」のとおり、本願発明1?4は、原査定において引用された引用文献1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-23 
出願番号 特願2012-257287(P2012-257287)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 片岡 弘之  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 小関 峰夫
内田 博之
発明の名称 コネクタ  
代理人 瀧野 文雄  
代理人 津田 俊明  
代理人 福田 康弘  
代理人 鳥野 正司  
代理人 瀧野 秀雄  

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