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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B02C
管理番号 1333831
審判番号 不服2017-1878  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-08 
確定日 2017-11-14 
事件の表示 特願2014-219014「石炭搬送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月19日出願公開、特開2016- 83626、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年10月28日の出願であって、平成28年3月28日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成28年5月18日に意見書及び手続補正書が提出され、平成28年9月12日付けで拒絶理由が通知され、これに対して平成28年11月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年11月30日付けで拒絶査定(原査定)がされ、これに対し、平成29年2月8日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 原査定の概要
原査定(平成28年11月30日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願の平成28年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲における請求項1ないし6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1及び4に記載された発明並びに刊行物2、3及び5に示された周知の事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開2002-52347号公報
刊行物2:実願平5-49510号(実開平7-13825号)のCD-ROM
刊行物3:実願平4-59855号(実開平6-25236号)のCD-ROM
刊行物4:特開平4-94746号公報
刊行物5:実願昭57-63828号(実開昭58-166844号)のマイクロフィルム

第3 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成28年11月9日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
給炭機から供給される石炭を粉砕機へと搬送するための石炭搬送装置であって、
前記給炭機と前記粉砕機とを連通する給炭管と、
前記給炭管に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記給炭管の内部において、前記給炭機の出口に対向して配置された石炭投入部側から、前記粉砕機の入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリューと、
前記給炭管に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記粉砕機の入口から内部へと案内するガイド部と、を有し、
前記スクリューの外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されており、
前記石炭投入部が鉛直に設置され、前記給炭管の内壁面が鏡面仕上げとなっており、
前記ガイド部は、前記粉砕機内の入口付近に配置され、前記給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている
ことを特徴とする石炭搬送装置。
【請求項2】
給炭機から供給される石炭を粉砕機へと搬送するための石炭搬送装置であって、
前記給炭機と前記粉砕機とを連通する給炭管と、
前記給炭管に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、
前記給炭管に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記粉砕機の入口から内部へと案内するガイド部と、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記給炭管の内部において、前記給炭機の出口に対向して配置された石炭投入部側から、前記粉砕機の入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリューを有し、
前記スクリューの外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されており、
前記ガイド部は、前記粉砕機内の入口付近に配置され、前記給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている
ことを特徴とする石炭搬送装置。
【請求項3】
前記スクリューフィーダは、
前記スクリューのスクリュー長を前記給炭管における前記粉砕機の入口側に位置する端部まで延長してなることを特徴とする請求項1または2に記載の石炭搬送装置。
【請求項4】
前記給炭管は、分割可能に形成されていることを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載の石炭搬送装置。
【請求項5】
点検用の開閉可能に設けられた点検口と、
前記点検口より小型の内部確認用の点検窓と、を更に備えていることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載の石炭搬送装置。
【請求項6】
前記給炭機と、前記給炭管との間の水平面にパッキングが介在されていることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載の石炭搬送装置。」

第4 引用刊行物
1 刊行物1について
(1)刊行物1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願の出願前に頒布された刊行物1(特開2002-52347号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば石炭などの原料(被粉砕物)を、回転するテーブルと、このテーブル上に接触回転するローラとの間に噛み込んで粉砕し、粉砕物を吸引搬出する竪型ミルへの原料供給装置に関する。」(段落【0001】)

イ 「【0010】図1は、本発明の第1の例に係る原料供給装置を有する竪型ミルの概略図で、図中Aが原料供給装置、Bが竪型ミルである。
【0011】竪型ミルBは、ケーシング1内に、モータ2によって回転する円盤状のテーブル3と、このテーブル3の外周寄り上方に設けられ、テーブル3の上面外周部と接して、テーブル3の回転と共に回転するローラ4を備えたものとなっている。なお、図面上は1個のローラ4しか示されていないが、通常、ローラ4は複数個設けられているものである。
【0012】テーブル3の中央部上方には、逆台形円錐形をなす原料落下筒5が設けられており、上部に原料供給装置Aが接続された原料シュート6の下端がこの原料落下筒5に接続されている。原料供給装置Aから供給される原料は、原料シュート6及び原料落下筒5を介して、テーブル3の中央部に落下供給されるものとなっている。テーブル3の中央部に供給された原料は、テーブル3の回転によって外周側へ移動し、テーブル3とローラ4の間に噛み込まれて粉砕されることになる。
【0013】竪型ミルBのケーシング1上部には、粉砕物取出口7が設けられている。この粉砕物取出口7には、誘引ファン(図示されていない)が接続されている。また、ケーシング1の下部からは、通常、上記誘引ファンによる吸引に伴って熱風が吸い込まれ、テーブル3の周囲から、図中矢印で示すように吹き上げるものとなっている。
【0014】テーブル3とローラ4の間に噛み込まれて粉砕された粉砕物のうち、細かく粉砕されたものは、上記誘引ファンの吸引に伴う熱風流によって上昇し、前記原料落下筒5の更に上方に位置するセパレータ8によって分級され、粗い物は再び原料落下筒5からテーブル3の中央部へと落下し、細かい物のみが粉砕物取出口7から搬出されることになる。
【0015】原料供給装置Aは、図2に示されるように、先端に原料吐出口9が設けられた横向き筒形をなし、中間部の上側に原料投入口10が設けられたスクリュシリンダ11と、スクリュシリンダ11の後端から、片持ち構造でスクリュシリンダ11内に挿設されたスクリュ12とを備えたものとなっている。原料投入口9は、スクリュシリンダ11内への原料の取り込み口である。スクリュ12は、モータ13によって回転し、この原料投入口10からスクリュシリンダ11内に入った原料を原料吐出口9へと前進させるものとなっている。
【0016】スクリュシリンダ11の角度は横向きに限定される。その角度を傾斜化した場合、原材料は、スクリューフィーダで押し出されて、傾斜に沿って上昇して行くが、原材料が塊を含む時、塊がシリンダーの傾斜から逆流して落下してくる場合があり、その場合、塊はスクリューとシリンダの間に噛み込み、しばしばスクリューが変形或いは停止するなどの故障を起こす。スクリュシリンダは塊を含む投入原材料をそのまま押し出すことを目的とするため、当該角度は水平とする。
【0017】スクリュシリンダ11の先端は、図1で説明したシュート6の上部に接続されており、シュート6内に位置している原料吐出口9は、外側から原料吐出口9の周囲に押し付けられたダンパ14によって閉鎖されている。
【0018】・・・中略・・・
【0021】ところで、前述のように、スクリュシリンダ11内の原料は、スクリュ12の回転により原料吐出口9方向に前進されるが、上記のように原料吐出口9がダンパ14によって閉鎖されていることから、原料は、ダンパ14の手前でスクリュシリンダ11内に充満されることになる(図中斜線部分が充満した原料を示す。)。そして、この原料の充満した状態で更にスクリュ12が回転し、原料の前進力によるダンパ14を外側へ押す力が高まると、ダンパ14は重錘17による閉鎖方向への押圧力に抗して徐々に押し開かれ、原料が徐々に落下供給されることになる。
【0022】上記のように、本発明においては、ダンパの14の手前でスクリュシリンダ11内に原料が充満した状態でダンパ14が押し開かれて原料の落下供給が行われるので、原料供給時の外気の侵入を、この充満した原料で抑制することができる。また、ダンパ14が押し開かれた後は、スクリュ12の回転によってほぼ連続して徐々に原料を押し出すことができるので、原料供給の脈動及び原料供給に伴う振動が抑制されると共に、原料供給がスクリュの回転により強制的に行われるので、付着性の強い原料や塊のある原料でも作動不良を抑制しやすい。」(段落【0010】ないし【0022】)

(2)引用発明
ア 引用発明1
上記(1)並びに図1及び2の図示内容を総合し、本願発明1の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。
「石炭を竪型ミルBへと搬送するための原料供給装置Aであって、
前記竪型ミルBに連通するスクリュシリンダ11と、
前記スクリュシリンダ11に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記スクリュシリンダ11の内部において、原料投入口10側から、前記竪型ミルBの入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリュ12と、
前記スクリュシリンダ11に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記竪型ミルBの入口から内部へと案内する原料シュート6と、を有し、
前記原料投入口10が鉛直に設置されており、
前記原料シュート6は、前記竪型ミルB内の入口付近に配置されている原料供給装置A。」

イ 引用発明2
上記(1)並びに図1及び2の図示内容を総合し、本願発明2の表現に倣って整理すると、刊行物1には、次の事項からなる発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認める。
「石炭を竪型ミルBへと搬送するための原料供給装置Aであって、
前記竪型ミルBに連通するスクリュシリンダ11と、
前記スクリュシリンダ11に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、
前記スクリュシリンダ11に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記竪型ミルBの入口から内部へと案内する原料シュート6と、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記スクリュシリンダ11の内部において、原料投入口10側から、前記竪型ミルBの入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリュ12を有し、
前記原料シュート6は、前記竪型ミルB内の入口付近に配置されている原料供給装置A。」

2 刊行物4について
(1)刊行物4の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願の出願前に頒布された刊行物4(特開平4-94746号公報)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「第1A図に、本発明を具体化したミルの全体構成を縦方向断面図として、また第1B図には高硬度剤供給系の構造を軸断面図として示す。
被粉砕原料1は、ミル本体の上部中心軸上にある原料供給管(センターシュート)2より供給され、ミルの下部において低速で水平面上を回転する粉砕テーブル3上へ落下する。この粉砕テーブル3の円周上に装着されていて、上方に断面が半円形状の溝を構成する粉砕レース6が刻設されている粉砕リング4上へと送給される。粉砕レース6上には、粉砕ローラ7が加圧状態で回転しており(この粉砕ローラ7は、粉砕時には粉砕レース上に供給された粉砕原料に対して生じる動摩擦力、また空回転時には粉砕レース6との金属面同士の間で生じる動摩擦力により駆動される)、ここで被粉砕原料1が圧縮粉砕されて微粉となる。」(3ページ右下欄末行ないし4ページ左上欄15行)

イ 「高硬度剤供給系は、ミル内へ供給する高硬度剤27の供給口33が、粉砕部の上方において、粉砕テーブル3の回転軸5に沿って下向きに開口するよう構成されている。ミルの起動に先立って、粉砕ローラ7あるいは粉砕レース6に付着した粉層を除去するために、この高硬度剤27をミル内へ供給し、粉砕テーブル3を回転させる。この高硬度剤供給系は、高硬度剤27を貯えておく高硬度剤ビン26、高硬度剤27をフィーダへ導く高硬度剤シュート28およびモータ30により、スクリュ29-aが回転駆動されるスクリュフィーダ29からなり、作動時にはスクリュフィーダ29がミル内へ挿入される。上述したように、このスクリュフィーダ29の先端には供給口33があり、ここから所定量の高硬度剤27が所定量供給される。供給系の回転駆動部は、ミルハウジング18にせり出すように設けたレール39上に乗って、随時ミルから抜出せるようになっているが、スクリュフィーダ29を、ミル内へ挿入したまま、ミルを通常に操業することも可能である。すなわち、付着し易い原料1を粉砕している最中に、付着粉層除去のための高硬度剤27を供給するわけである。その場合は、ミル内を熱風により空気輸送される粉粒体によるフィーダの損耗対策が必要になる。第1B図に示すように、スクリュフィーダ29の上方には、粉粒体が堆積せず落下するようにしたフィーダルーフ32が、また下方には粉粒体の衝突に耐えられるように、耐摩耗プレート31が設けられている。」(4ページ左下欄6行ないし同ページ右下欄14行)

(2)刊行物4記載の技術
上記(1)並びに第1A及び1B図の図示内容によれば、刊行物4には、次の事項からなる技術(以下、「刊行物4記載の技術」という。)が記載されていると認める。
「高硬度剤ビン26から供給される高硬度剤27をミルへと搬送するための高硬度剤供給系において、高硬度剤27を搬送するスクリュフィーダ29の鉛直方向下方に、ミル内を熱風により空気輸送される粉粒体の衝突に耐えられるように耐摩耗プレート31を設ける技術。」

3 刊行物2、3及び5について
(1)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願の出願前に頒布された刊行物2(実願平5-49510号(実開平7-13825号)のCD-ROM)には、図面(図1及び2を参照。)とともに次の事項が記載されている。
「 【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、押出しスクリュ-に関し、特に、耐摩耗性が高められることにより、長期寿命が得られるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の押出しスクリュ-は、焼却灰の排出、送出し、掘削土の排出などに適用されているが、捩れフランジには、通常、耐摩耗性を高めるため、肉盛り硬化処理が施されている。」(段落【0001】及び【0002】)

(2)刊行物3
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願の出願前に頒布された刊行物3(実願平4-59855号(実開平6-25236号)のCD-ROM)には、図面(図1及び2を参照。)とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、流動性が極度に低い粉末を移送のため容器に充填したり、種々の処理を行なう装置に供給したりする場合に使用する粉末供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
たとえばフェライト磁石製造の原料とする酸化鉄の粉末は、種々の粉末の中でも流動性に乏しいものであって、溶解や焼結のために一定量を炉に供給しようとするとき、ホッパー内でブリッジをつくったり、内面に付着したりして、円滑な作業ができないことが多い。
【0003】
このような流動性の低い粉末を取扱うのはスクリューコンベアのような装置を用いればよいが、単に重力を利用して供給するような場合、もっと簡易な装置で間に合わせたいし、スクリューコンベアへの供給自体をどのように行なうかという問題もある。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
本考案の目的は、上記のような場面に使用して好適な、粉末供給装置を提供することにある。」(段落【0001】ないし【0004】)

イ 「【0006】
ホッパー型の本体は、たとえぱSUS304製であって、そのテーパーは、垂直軸に対して35°以内であることが好ましく、28°内外が好適である。 その内壁は鏡面仕上げを施すとよい。」(段落【0006】)

(3)刊行物5
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物であって、本願の出願前に頒布された刊行物5(実願昭57-63828号(実開昭58-166844号)のマイクロフィルム)には、図面(図1及び2を参照。)とともに次の事項が記載されている(なお、促音の文字については、小文字とした。)。
ア 「2.実用新案登録請求の範囲
1. 被粉砕物を分級するミルホッパ内面に密着係合するよう形成した複数のブロック状金属板に対してそれぞれセラミックス小片をあらかじめ接着し、これらブロック状金属板をミルホッパ内面に溶接で取り付けることによりミルホッパ内面にセラミックスの内張りを形成した耐摩耗性を高めた粉砕分級装置。」(明細書1ページ4ないし11行)

イ 「粉砕炭の分級を行なうベーン25およびホッパ1は粉砕炭の擦過のため激しく摩耗し、耐摩耗対策が必要となる。」(明細書2ページ14ないし17行)

ウ 「第3図は耐摩耗鋼板又はセラミック製の耐摩耗ブロック板6をホッパ面に対し直接さし込み式により取り付けた構造である。耐摩耗鋼板の場合は上下をスポット溶接7としてホッパ面に固定できるが、セラミックス板は穴をあけてボルトで固定しなければならない。反対に耐摩耗性ではセラミックスは十分な耐摩耗性を有するが、鋼板の場合では十分な耐摩耗性は得られていない。」(明細書3ページ8ないし16行)

エ 「第4図は第3図の方法の欠点を補うようにしたものであり、セラミックスを使用することにより耐摩性を向上させると共に、セラミックスの成形を簡素化して製造費を低減するように構成したものである。すなわち、第4図(a)ないし(d)に示す如く、四角形、三角形、円形等に成形した、つまり湾曲していない板のセラミックスの小片を同(e)の如く耐熱性の接着剤9を用いてホッパ1の内周壁に直接接着する。」(明細書4ページ2ないし10行)

オ 「要するにこの考案はブロックに形成した金属板に対してあらかじめセラミックスの小片を耐熱性接着剤等で接着し、このセラミックス小片を接着した金属板をミルホッパ内周面にスポット溶接等の手段により取り付けて、ミルホッパにおける後熱処理、ミルホッパ内での小片の取り付け作業等を不用とし作業性を大幅に高めた粉砕分級装置である。」(明細書5ページ6ないし13行)

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明1における「石炭」は、本願発明1における「石炭」に相当し、以下同様に、「竪型ミルB」は「粉砕機」に、「原料供給装置A」は「石炭搬送装置」に、「スクリュシリンダ11」は「給炭管」に、「スクリューフィーダ」は「スクリューフィーダ」に、「原料投入口10」は「石炭投入部」に、「スクリュ12」は「スクリュー」に、「原料シュート6」は「ガイド部」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「石炭を粉砕機へと搬送するための石炭搬送装置であって、
前記粉砕機に連通する給炭管と、
前記給炭管に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記給炭管の内部において、石炭投入部側から、前記粉砕機の入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリューと、
前記給炭管に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記粉砕機の入口から内部へと案内するガイド部と、を有し、
前記石炭投入部が鉛直に設置されており、
前記ガイド部は、前記粉砕機内の入口付近に配置されている石炭搬送装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

ア 相違点1
本願発明1においては、石炭は、「給炭機から供給される」ものであり、また、給炭管は、「前記給炭機と前記粉砕機とを連通する」ものであり、さらに、石炭投入部は、「前記給炭機の出口に対向して配置され」るものであるのに対し、引用発明1においては、石炭は、給炭機から供給されるものであるか不明であり、また、給炭管は、給炭機と竪型ミルBとを連通するものであるか不明であり、さらに、原料投入口10は、給炭機の出口に対向して配置されるものであるか不明である点(以下、「相違点1」という。)。

イ 相違点2
本願発明1においては、「前記スクリューの外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されて」いるのに対し、引用発明1においては、「スクリュ12」の外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されていない点(以下、「相違点2」という。)。

ウ 相違点3
本願発明1においては、「前記給炭管の内壁面が鏡面仕上げとなって」いるのに対し、引用発明1においては、「スクリュシリンダ11」の内壁面が鏡面仕上げとなっているか明らかでない点(以下、「相違点3」という。)。

エ 相違点4
本願発明1においては、ガイド部は「前記給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている」のに対し、引用発明1においては、原料シュート6は、スクリュシリンダ11と一体に形成されておらず、また、原料シュート6の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されているものとはされていない点(以下、「相違点4」という。)。

(2)判断
ア 事案に鑑み、まず上記相違点4について検討する。
刊行物4記載の技術は、粉粒体の供給機から供給される粉粒体を粉砕機へと搬送する粉粒体の搬送装置において、粉粒体を搬送するスクリューフィーダの鉛直方向下方に耐摩耗手段を設ける技術とまではいえるものの、「ガイド部」は、「給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている」という構成を含む上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項に相当するものではない。
そして、刊行物5に記載されているように、耐摩耗材料としてセラミックスを用いることが、本願の出願前に周知の事項(以下、「周知事項1」という。)であるとしても、引用発明1において、刊行物4記載の技術及び周知事項1に基いて上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項とすることはできない。
ところで、刊行物2に記載されているように、スクリューフィーダにおいて、スクリューの耐摩耗性を向上するために、スクリューの外周端部に硬化肉盛溶接加工を施すことが、本願の出願前に周知の事項(以下、「周知事項2」という。)であるとしても、当該周知事項2は上記相違点2に関するものであって、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項に相当するものではない。
また、刊行物3に記載されているように、粉末の原料を供給するホッパー内面を鏡面仕上げにして、粉末の原料の付着を防ぐことが、本願の出願前に周知の事項(以下、「周知事項3」という。)であるとしても、当該周知事項3は上記相違点3に関するものであって、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項に相当するものではない。
そうすると、引用発明1において、上記相違点4に係る本願発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

イ そして、本願発明1は、上記相違点4に係る本願発明の発明特定事項を備えることにより、「案内板23が経年使用によってケーシング2から脱落することを未然に防止できると共に、案内板23の下面23aをセラミック製とすることで、ミル内での微粉炭による摩耗を防止できる利点を有することが可能となる。」(本願の明細書の段落【0026】)という所期の効果を奏するものである。

ウ したがって、上記相違点1ないし3について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2
(1)対比
本願発明2と引用発明2とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。
・引用発明2における「石炭」は、本願発明2における「石炭」に相当し、以下同様に、「竪型ミルB」は「粉砕機」に、「原料供給装置A」は「石炭搬送装置」に、「スクリュシリンダ11」は「給炭管」に、「スクリューフィーダ」は「スクリューフィーダ」に、「原料シュート6」は「ガイド部」に、「原料投入口10」は「石炭投入部」に、「スクリュ12」は「スクリュー」に、それぞれ相当する。

したがって、両者は、
「石炭を粉砕機へと搬送するための石炭搬送装置であって、
前記粉砕機に連通する給炭管と、
前記給炭管に設けられ、前記石炭を搬送するスクリューフィーダと、
前記給炭管に連結して設けられ、搬送される前記石炭を前記粉砕機の入口から内部へと案内するガイド部と、を備え、
前記スクリューフィーダは、
前記給炭管の内部において、石炭投入部側から、前記粉砕機の入口側にかけて配設される回転軸を中心に回転しながら前記石炭を搬送する螺旋状のスクリューを有し、
前記ガイド部は、前記粉砕機内の入口付近に配置されている石炭搬送装置。」の点で一致し、以下の点で相違している。

ア 相違点1’
本願発明2においては、石炭は、「給炭機から供給される」ものであり、また、給炭管は、「前記給炭機と前記粉砕機とを連通する」ものであり、さらに、石炭投入部は、「前記給炭機の出口に対向して配置され」るものであるのに対し、引用発明2においては、石炭は、給炭機から供給されるものであるか不明であり、また、給炭管は、給炭機と竪型ミルBとを連通するものであるか不明であり、さらに、原料投入口10は、給炭機の出口に対向して配置されるものであるか不明である点(以下、「相違点1’」という。)。

イ 相違点2’
本願発明2においては、「前記スクリューの外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されて」いるのに対し、引用発明2においては、「スクリュ12」の外周端部に硬化肉盛溶接加工が施されていない点(以下、「相違点2’」という。)。

ウ 相違点3’
本願発明2においては、ガイド部は「前記給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている」のに対し、引用発明2においては、原料シュート6は、スクリュシリンダ11と一体に形成されておらず、また、原料シュート6の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されているものとはされていない点(以下、「相違点3’」という。)。

(2)判断
本願発明2は、本願発明1における「前記ガイド部」は、「前記給炭管と一体に形成されてなり、当該ガイド部の鉛直方向下方に位置する外面側にセラミックス加工が施されている」との構成と同一の構成を備えるものであるから、上記1(2)の検討と同様に、引用発明2において、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3を考慮したとしても上記相違点3’に係る本願発明2の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到できたことではない。
したがって、上記相違点1’及び2’について判断するまでもなく、本願発明2は、引用発明2、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 本願発明3ないし6について
また、本願発明3ないし6についても、本願発明1又は2をさらに限定したものであるので、本願発明1又は2と同様に、引用発明1、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて、又は、引用発明2、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし6は、当業者が引用発明1、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて、又は、引用発明2、刊行物4記載の技術及び周知事項1ないし3に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-10-30 
出願番号 特願2014-219014(P2014-219014)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B02C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 筑波 茂樹近野 光知  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 西山 智宏
槙原 進
発明の名称 石炭搬送装置  
代理人 一色国際特許業務法人  

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