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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1333892 |
審判番号 | 不服2016-15240 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-10-11 |
確定日 | 2017-10-27 |
事件の表示 | 特願2014-119190「触覚的にイネーブルにされるユーザインタフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成26年10月23日出願公開、特開2014-199671〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2009年2月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2008年3月12日 米国)を国際出願日とする特願2010-550719号の一部を、平成26年6月10日に新たな特許出願としたものであって、平成27年9月1日付けで拒絶理由通知がされ、平成28年2月1日付けで手続補正がされ、同年6月6日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年10月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がされ、当審において平成29年1月16日付けで拒絶理由通知がされ、同年5月1日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成29年5月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 タッチスクリーンを有するとともに動的触覚的効果を生成することができるデバイスを操作する方法であって、 前記デバイス上のジェスチャを記憶することを含み、前記ジェスチャには前記タッチスクリーン上の指向性の動きに関連するユーザインタラクション(ユーザ対話)が含まれ、 前記記憶された前記デバイス上のジェスチャをシミュレートする前記動的触覚的効果を前記デバイス上で生成することを含み、前記動的触覚的効果は前記指向性の動きをシミュレートするために前記タッチスクリーンの異なる個々の部分に順次適用される、方法。」 3.引用発明・周知技術 (1)引用例1 当審で通知した平成29年1月16日付け拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-331210号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の記載がある。(下線部は当審において付加した。以下同じ) ア.「【技術分野】 【0001】 この発明は、ユーザの操作軌跡を解析して、その操作軌跡に対応するジェスチャーを特定し、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出すユーザインタフェース装置及びユーザインタフェース方法に関するものである。」(3頁5-9行) イ.「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来のユーザインタフェース装置は以上のように構成されているので、ユーザが予め記憶されているジェスチャーをタッチパネルに描けば、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを実行することができる。しかし、そのジェスチャーを正確に覚えていない場合、そのジェスチャーを正確に描くことができず、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを実行することができないことがあるなどの課題があった。 【0005】 この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、ジェスチャーを正確に覚えていない場合でも、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出すことができるユーザインタフェース装置及びユーザインタフェース方法を得ることを目的とする。」(3頁25-36行) ウ.「【0008】 実施の形態1. 図1はこの発明の実施の形態1によるユーザインタフェース装置を示す構成図であり、図において、ジェスチャー記憶部1は所定のコマンドが割り付けられているジェスチャー(ジェスチャーは、複数の特徴ベクトルから構成されている)の他、そのジェスチャーを誘導する案内軌跡などを記憶しているメモリである。なお、ジェスチャー記憶部1は記憶手段を構成している。 座標入力部2はタッチパネル8の背面に設置され、例えばユーザが指でタッチパネル8に触れると、その触れられた位置の座標を入力する処理を実施するポインティングデバイスである。 ここでは、ユーザが指でタッチパネル8に触れると、座標入力部2がその触れられた位置の座標を入力するものについて示しているが、例えば、赤外線検知やマウスなど、座標位置を取得することが可能なデバイスであればよく、タッチパネル8以外のデバイスを用いて座標を入力するようにしてもよい。 座標格納部3は座標入力部2により入力された座標を格納するメモリである。 軌跡解析部4は例えばマイコンなどが実装されている半導体集積回路から構成され、座標格納部3により格納された座標に基づいてタッチパネル8に対するユーザの操作軌跡を解析する解析処理を逐次実施する。 なお、座標入力部2、座標格納部3及び軌跡解析部4から軌跡解析手段が構成されている。 【0009】 ジェスチャー検索部5は例えばマイコンなどが実装されている半導体集積回路から構成され、軌跡解析部4がユーザの操作軌跡を解析する毎に、ジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーの中から、軌跡解析部4により解析された操作軌跡に合致する1以上のジェスチャーを検索する処理を実施する。なお、ジェスチャー検索部5はジェスチャー検索手段を構成している。 軌跡表示部6は例えば3Dグラフィックスアクセラレータなどを搭載し、タッチパネル8の表示内容を制御する機能を有しており、ジェスチャー記憶部1からジェスチャー検索部5により検索されたジェスチャーの案内軌跡を取得して、その案内軌跡をタッチパネル8に表示する一方、ジェスチャー検索部5により前回検索されたジェスチャーがユーザの操作軌跡と合致しなくなると、そのタッチパネル8に表示されている当該ジェスチャーの案内軌跡を消去する処理を実施する。なお、軌跡表示部6は案内軌跡表示手段を構成している。 【0010】 コマンド呼出部7は例えばマイコンなどが実装されている半導体集積回路から構成され、ジェスチャー検索部5により検索されたジェスチャーが1つに絞られ、かつ、ジェスチャー記憶部1の最後の特徴ベクトルであると、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドの呼び出し処理を実施する。なお、コマンド呼出部7はコマンド呼出手段を構成している。 タッチパネル8はユーザの操作軌跡を入力する軌跡入力デバイスであると同時に、その操作軌跡や案内軌跡を表示する表示デバイスを兼ねている。 図2はこの発明の実施の形態1によるユーザインタフェース方法を示すフローチャートであり、図3はタッチパネルに表示される操作軌跡や案内軌跡を示す説明図である。」(4頁11行-5頁3行) エ.「【0025】 実施の形態3. 図5はこの発明の実施の形態3によるユーザインタフェース装置を示す構成図であり、図において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。 ジェスチャー検索部11は例えばマイコンなどが実装されている半導体集積回路から構成され、ジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーの中から、軌跡解析部4により解析された操作軌跡に合致するジェスチャーを検索する処理を実施する。即ち、軌跡解析部4により解析された操作軌跡とジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーを比較して、ジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーの中で、その操作軌跡と最も類似しているジェスチャーを検索する処理を実施する。なお、ジェスチャー検索部11はジェスチャー検索手段を構成している。 【0026】 コマンド実行部12はジェスチャー検索部11により検索されたジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出し、軌跡解析部4により逐次解析される操作軌跡に応じて当該コマンドを実行する処理を実施する。なお、コマンド実行部12はコマンド実行手段を構成している。 図6及び図7はこの発明の実施の形態3によるユーザインタフェース方法を示すフローチャートであり、図8はタッチパネルに表示される操作軌跡や案内軌跡を示す説明図である。 【0027】 図5の例では、ユーザインタフェース装置の構成要素である軌跡解析部4、ジェスチャー検索部11、軌跡表示部6及びコマンド実行部12が専用のハードウェアで構成されているものについて示しているが、ユーザインタフェース装置がコンピュータの一部を担う場合、あらかじめ、軌跡解析部4、ジェスチャー検索部11、軌跡表示部6及びコマンド実行部12の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに記憶し、そのコンピュータのCPUがメモリに記憶されているプログラムを実行するようにしてもよい。 【0028】 次に動作について説明する。 座標入力部2は、ジェスチャー記憶部1により記憶されている案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)が“1”に設定されると(ステップST1)、上記実施の形態1と同様に、定期的に入力信号の確認処理(例えば、ユーザが指でタッチパネル8に触れているか否かを確認する処理)を実施する(ステップST2)。 座標入力部2は、ユーザが指でタッチパネル8に触れていることを確認すると、その触れられた位置の座標(X,Y)を入力して、その座標(X,Y)を座標格納部3に格納する(ステップST3、ST4)。 なお、座標入力部2は、ユーザが指を移動すると、移動後の位置の座標も入力するが、座標の入力処理は一定時間毎に実施するので、座標入力部2により入力される位置は点列になる。 ただし、ユーザが異なる座標を触る毎に(ユーザが指を移動する毎)、新たな座標を入力するようにしてもよい。この場合には、座標入力部2により入力される位置は連続的になる。 【0029】 軌跡解析部4は、座標入力部2が座標(X,Y)を座標格納部3に格納すると、上記実施の形態1と同様に、その座標格納部3により格納されている複数の座標(X,Y)に基づいて、タッチパネル8に対するユーザの操作軌跡を解析する解析処理を逐次実施する。 即ち、軌跡解析部4は、座標入力部2が新たな座標(X,Y)を座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算する(ステップST5、ST6)。 【0030】 ジェスチャー検索部11は、軌跡解析部4がユーザの操作軌跡を解析する毎に、ジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーの中から、軌跡解析部4により解析された操作軌跡に合致するジェスチャーを検索する処理を実施する。 即ち、ジェスチャー検索部11は、ジェスチャー記憶部1に記憶されているレベル(i)における全ての特徴ベクトルと、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルとを比較して、その速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルを検索する。例えば、各特徴ベクトルと速度ベクトルのDPマッチングを実施して、ベクトル間の距離を計算し、ベクトル間の距離が予め設定されている基準距離(誤差の許容範囲を示す閾値)より小さいレベル(i)の特徴ベクトルを検索する。 【0031】 軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルが検索されない場合(ステップST7)、上記実施の形態1と同様に、現在、タッチパネル8に表示されている全ての案内軌跡を消去して(ステップST8)、エラー画面をタッチパネル8に表示する(ステップST9)。または、メニュー画面をタッチパネル8に表示する。 また、軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部5(当審注:「ジェスチャー検索部11」の誤記と認められる。)により速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルが検索された場合(ステップST7)、上記実施の形態1と同様に、その特徴ベクトルを案内軌跡としてタッチパネル8に表示する(ステップST10)。 【0032】 軌跡表示部6は、後述するステップST13の処理において、複数の案内軌跡がタッチパネル8に表示されているとき、その後のユーザの操作によって、その操作軌跡と一致しなくなった案内軌跡が存在する場合、上記実施の形態1と同様に、ユーザの操作軌跡と一致しなくなった案内軌跡を消去する処理を実施する(ステップST11)。 【0033】 軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えているか否かを判定する(ステップST21)。 例えば、画像をズームするコマンドCMD-3-1を実行するために、図8に示すように、ユーザが円を描く場合、円を100%描かなくても、例えば、半円ぐらい描けば、他のコマンドに該当する可能性が排除される。図4の例では、レベル(i)がレベル(5)ぐらいまで進めば、他のコマンドに該当する可能性が排除されて、コマンドCMD-3-1の実行を希望していることを推定することができる。 【0034】 軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えていない場合、上記実施の形態1と同様に、次のレベルであるレベル(i+1)の特徴ベクトルを案内軌跡としてタッチパネル8に表示する(ステップST13)。 以後、案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)に“1”を加算したのち(ステップST14)、ステップST2?ST13の処理を繰り返し実行する。 【0035】 軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えている場合、ジェスチャー記憶部1からレベル(i)の特徴ベクトルを含む一連の木構造全体の案内軌跡を呼び出し(ステップST22、ST31)、その案内軌跡をタッチパネル8に表示する(ステップST32)。 【0036】 座標入力部2は、軌跡表示部6が案内軌跡をタッチパネル8に表示すると、定期的に入力信号の確認処理(例えば、ユーザが指でタッチパネル8に触れているか否かを確認する処理)を実施する(ステップST33)。 座標入力部2は、ユーザが指でタッチパネル8に触れていることを確認すると、その触れられた位置の座標(X,Y)を入力して、その座標(X,Y)を座標格納部3に格納する(ステップST34、ST35)。 【0037】 軌跡解析部4は、座標入力部2が座標(X,Y)を座標格納部3に格納すると、その座標格納部3により格納されている複数の座標(X,Y)に基づいて、タッチパネル8に対するユーザの操作軌跡を解析する解析処理を逐次実施する。 即ち、軌跡解析部4は、座標入力部2が新たな座標(X,Y)を座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算する(ステップST35、ST36)。 【0038】 軌跡表示部6は、軌跡解析部4が速度ベクトルを計算すると、その速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致しているか否かを判定する(ステップST38)。 軌跡表示部6は、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致しない場合、現在、タッチパネル8に表示されている案内軌跡を消去して(ステップST39)、エラー画面をタッチパネル8に表示する(ステップST40)。または、メニュー画面をタッチパネル8に表示する。 【0039】 コマンド実行部12は、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致する場合、軌跡表示部6により表示されている案内軌跡を構成している特徴ベクトルの中から、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと一致する特徴ベクトルを抽出する(ステップST41)。 そして、コマンド実行部12は、その速度ベクトルと一致する特徴ベクトルの方向に対応するコマンド(例えば、右方向ならば、背景画像を拡大するコマンド、左方向ならば、背景画像を縮小するコマンド)を呼び出して実行する(ステップST42)。 以後、ステップST33?ST42の処理を繰り返し実行する。 【0040】 以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、ジェスチャー記憶部1に記憶されているジェスチャーの中から、軌跡解析部4により解析された操作軌跡に合致するジェスチャーを検索するジェスチャー検索部11と、ジェスチャー記憶部1からジェスチャー検索部11により検索されたジェスチャーの案内軌跡を取得して、その案内軌跡をタッチパネル8に表示する軌跡表示部6とを設け、そのジェスチャー検索部11により検索されたジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出し、軌跡解析部4により逐次解析される操作軌跡に応じて当該コマンドを実行するように構成したので、ジェスチャーを正確に覚えていない場合でも、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出して実行することができる効果を奏する。」(7頁43行-10頁26行) (ア)上記ア.、イ.、エ.の段落【0040】の記載によれば、引用例1には、ユーザインタフェース装置において、タッチパネルに描くジェスチャーを正確に覚えていない場合でも、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出すことができるユーザインタフェース方法が記載されている。 (イ)上記エ.の段落【0025】の記載によれば、図5の「実施の形態3」のものは、図1の「実施の形態1」における「ジェスチャー検索部5」、及び「コマンド呼出部7」を、「ジェスチャー検索部11」及び「コマンド実行部12」としたものであって、他の同一符号のものは「実施の形態1」と同一のものである。 (ウ)そして、上記エ.の段落【0025】、図5の記載によれば、ユーザインタフェース装置は、ジェスチャー記憶部1、座標入力部2、座標格納部3、軌跡解析部4、ジェスチャー検索部11、軌跡表示部6、タッチパネル8、コマンド実行部12を備えている。 (エ)上記ウ.の段落【0008】の記載によれば、ジェスチャー記憶部1は、所定のコマンドが割り付けられている複数の特徴ベクトルから構成されているジェスチャーの他、そのジェスチャーを誘導する案内軌跡などを記憶しているメモリであって、座標入力部2はタッチパネル8の背面に設置され、ユーザが指でタッチパネル8に触れると、その触れられた位置の座標を入力する処理を実施するポインティングデバイスであって、座標格納部3は座標入力部2により入力された座標を格納するメモリであって、さらに、段落【0010】によれば、タッチパネル8はユーザの操作軌跡を入力する軌跡入力デバイスであると同時に、その操作軌跡や案内軌跡を表示する表示デバイスを兼ねている。 (オ)上記エ.の段落【0028】、図6には、座標入力部2は、ジェスチャー記憶部1により記憶されている案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)が“1”に設定されると(ステップST1)、定期的に入力信号の確認処理(ユーザが指でタッチパネル8に触れているか否かを確認する処理)を実施し(ステップST2)、座標入力部2は、ユーザが指でタッチパネル8に触れていることを確認すると、その触れられた位置の座標(X,Y)を入力して、その座標(X,Y)を座標格納部3に格納する(ステップST3、ST4)、ことが記載されている。 (カ)上記エ.の段落【0029】、図6には、軌跡解析部4は、座標入力部2が新たな座標(X,Y)を座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算することで、タッチパネル8に対するユーザの操作軌跡を解析する解析処理を逐次実施する(ステップST5、ST6)、ことが記載されている。 (キ)上記エ.の段落【0030】、図6には、ジェスチャー検索部11は、ジェスチャー記憶部1に記憶されているレベル(i)における全ての特徴ベクトルと、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルとを比較して、その速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルを検索する(ステップST7)こと、さらに、段落【0031】には、軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルが検索された場合、その特徴ベクトルを案内軌跡としてタッチパネル8に表示する(ステップST10)、ことが記載されている。 (ク)上記エ.の段落【0034】、図6には、軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えていない場合、次のレベルであるレベル(i+1)の特徴ベクトルを案内軌跡としてタッチパネル8に表示し(ステップST13)、以後、案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)に“1”を加算したのち(ステップST14)、ステップST2?ST13の処理を繰り返し実行する、ことが記載されている。 (ケ)上記エ.の段落【0035】、図6、図7には、軌跡表示部6は、ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えている場合、前記ジェスチャー記憶部1からレベル(i)の特徴ベクトルを含む一連の木構造全体の案内軌跡を呼び出し(ステップST22、ST31)、その案内軌跡を前記タッチパネル8に表示する(ステップST32)、ことが記載されている。 (コ)上記エ.の段落【0037】、図7には、軌跡解析部4は、座標入力部2が新たな座標(X,Y)を座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算する(ステップST35、ST36)こと、段落【0038】には、軌跡表示部6は、軌跡解析部4が速度ベクトルを計算すると、その速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致しているか否かを判定する(ステップST38)こと、さらに、段落【0039】には、コマンド実行部12は、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致する場合、軌跡表示部6により表示されている案内軌跡を構成している特徴ベクトルの中から、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと一致する特徴ベクトルを抽出し(ステップST41)、コマンド実行部12は、その速度ベクトルと一致する特徴ベクトルの方向に対応するコマンド(例えば、右方向ならば、背景画像を拡大するコマンド、左方向ならば、背景画像を縮小するコマンド)を呼び出して実行する(ステップST42)、ことが記載されている。 以上総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されていると認められる。 「ユーザインタフェース装置において、タッチパネル8に描くジェスチャーを正確に覚えていない場合でも、そのジェスチャーに割り付けられているコマンドを呼び出すことができるユーザインタフェース方法であって、 前記ユーザインタフェース装置は、ジェスチャー記憶部1、座標入力部2、座標格納部3、軌跡解析部4、ジェスチャー検索部11、軌跡表示部6、タッチパネル8、コマンド実行部12を備えており、 前記ジェスチャー記憶部1は、所定のコマンドが割り付けられている複数の特徴ベクトルから構成されているジェスチャーの他、そのジェスチャーを誘導する案内軌跡などを記憶しているメモリであって、 前記座標入力部2は前記タッチパネル8の背面に設置され、ユーザが指でタッチパネル8に触れると、その触れられた位置の座標を入力する処理を実施するポインティングデバイスであって、 前記座標格納部3は座標入力部2により入力された座標を格納するメモリであって、 前記タッチパネル8はユーザの操作軌跡を入力する軌跡入力デバイスであると同時に、その操作軌跡や案内軌跡を表示する表示デバイスを兼ねているものであり、 前記座標入力部2は、前記ジェスチャー記憶部1により記憶されている案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)が“1”に設定されると(ステップST1)、定期的に入力信号の確認処理(ユーザが指でタッチパネル8に触れているか否かを確認する処理)を実施し(ステップST2)、 前記座標入力部2は、ユーザが指でタッチパネル8に触れていることを確認すると、その触れられた位置の座標(X,Y)を入力して、その座標(X,Y)を前記座標格納部3に格納し(ステップST3、ST4)、 前記軌跡解析部4は、前記座標入力部2が新たな座標(X,Y)を前記座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算することで、前記タッチパネル8に対するユーザの操作軌跡を解析する解析処理を逐次実施し(ステップST5、ST6)、 前記ジェスチャー検索部11は、前記ジェスチャー記憶部1に記憶されているレベル(i)における全ての特徴ベクトルと、前記軌跡解析部4により計算された速度ベクトルとを比較して、その速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルを検索し(ステップST7)、 前記軌跡表示部6は、前記ジェスチャー検索部11により速度ベクトルと一致するレベル(i)の特徴ベクトルが検索された場合、その特徴ベクトルを案内軌跡として前記タッチパネル8に表示し(ステップST10)、 前記軌跡表示部6は、前記ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えていない場合、次のレベルであるレベル(i+1)の特徴ベクトルを案内軌跡として前記タッチパネル8に表示し(ステップST13)、 以後、案内軌跡の木構造の階層を表すレベル(i)に“1”を加算したのち(ステップST14)、ステップST2?ST13の処理を繰り返し実行し、 前記軌跡表示部6は、前記ジェスチャー検索部11により検索されたレベル(i)が、一連の木構造全体のX%を越えている場合、前記ジェスチャー記憶部1からレベル(i)の特徴ベクトルを含む一連の木構造全体の案内軌跡を呼び出し(ステップST22、ST31)、 その案内軌跡を前記タッチパネル8に表示し(ステップST32)、 前記軌跡解析部4は、座標入力部2が新たな座標(X,Y)を座標格納部3に格納する毎に、新たな座標(X,Y)と一定時間前に格納された座標(X,Y)から速度ベクトルを計算し(ステップST35、ST36)、 前記軌跡表示部6は、軌跡解析部4が速度ベクトルを計算すると、その速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致しているか否かを判定し(ステップST38)、 前記コマンド実行部12は、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと軌跡表示部6により表示されている案内軌跡の特徴ベクトルが一致する場合、軌跡表示部6により表示されている案内軌跡を構成している特徴ベクトルの中から、軌跡解析部4により計算された速度ベクトルと一致する特徴ベクトルを抽出し(ステップST41)、コマンド実行部12は、その速度ベクトルと一致する特徴ベクトルの方向に対応するコマンド(例えば、右方向ならば、背景画像を拡大するコマンド、左方向ならば、背景画像を縮小するコマンド)を呼び出して実行する(ステップST42)、 ユーザインタフェース方法」 (2)引用例2 当審で通知した平成29年1月16日付け拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2006-79238号公報以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。 ア.「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 従来の振動型のタッチパネル装置では、タッチパネル面をなぞってデータ入力する際、該指が移動する度にタッチパネル面を振動してクリック感を発生するが、振動が一定で、クリック感(パルスタッチのフィードバック感)が単調で、リアル感に欠ける。また、タッチパネル面上のタッチ位置に関係なく振動が一定であるため、ブラインドタッチしにくく、表示画面をみながらデータを設定する必要がある。すなわち、タッチパネル面をなぞって音量調整やイコライザ設定、各スピーカの遅延時間を設定するには、設定用画面を見ながらでないと設定が困難で、ブラインドタッチは不可能である。 以上から本発明の目的は、タッチパネル面のタッチ位置に応じて振動子の振動量あるいは振動周波数あるいは振動間隔を制御してクリック感を変えてタッチ位置を操作者に感覚的に認識できるようにすることである。 本発明の別の目的は、ブラインドタッチにより音量やイコライゼーションカーブ等のデータの設定、調整を可能にすることである。 本発明の別の目的は、タッチパネル面に表示されている画像を選択して移動し、画像移動距離に応じて振動子の振動間隔あるいは振動周波数あるいは振動強度を制御してクリック感を変えて移動距離を操作者に感覚的に認識できるようにすることである。 本発明の別の目的は、ブラインドタッチにより車載の各スピーカの遅延時間を設定可能にすることである。」(3頁15-33行) イ.「【0008】 図1(A),(B)はタッチパネル面をなぞってデータを入力する第1のタッチパネル装置の概略説明図であり、指あるいはペン等のポインタPNTのタッチパネル面TP上のタッチ位置を検出し、該タッチ位置に応じた振動周波数あるいは振動間隔あるいは振動強度でタッチパネル面を振動させる。なお、振動間隔とは間欠的に振動させる場合における振動と振動の間隔である。 図1(A)では、音量調整画面を表示し、タッチパネル面TPの上下方向のタッチ位置に応じてタッチパネル面の振動強度を制御し(振動周波数、振動間隔は一定)、該タッチ位置に基づいて音量を設定する。すなわち、縦方向を音量調整量とし、音量調整画面の下ほど調整量が小さいから振動を小さくし、上ほど調整量が大きいから振動を大きくする。このようにすれば、ブラインドタッチにより画面下から上方向にタッチパネル面をなぞると次第に振動が大きくなって音量が増加する。また、上から下になぞると次第に振動が小さくなって音量が減少する。すなわち、振動の大きさとボリューム調整量の間に相関があるためブラインドタッチで音量調整が可能になる。 なお、上下方向に代えて水平方向を音量調整量とし、音量調整画面の左ほど調整量を小さくして振動を小さくし、右ほど調整量を大きくして振動を大きくするように構成することもできる。また、振動強度を制御する代わりに振動周波数あるいは振動間隔を制御することもできる。」(4頁18-35行) 上記引用例2の記載事項及び図面、及び、この分野の技術常識を考慮すると、引用例2には、次の周知の技術事項(以下、「周知の技術」という。)が開示されている。 「タッチパネル面のタッチ位置に応じて、タッチパネル面の振動強度を変えて動的触覚的効果を生成することで位置情報の提供を行うこと。」 4.対 比 本願発明と引用発明とを対比する。 a.引用発明の「タッチパネル8」は、「操作軌跡や案内軌跡を表示する表示デバイスを兼ねているものであ」るから、本願発明の「タッチスクリーン」に相当する。 また、引用発明の「ユーザインタフェース装置」は、「案内軌跡を表示する」「タッチパネル8」を有し、そして、「案内軌跡」の「表示」は、ユーザの操作(ジェスチャ)に伴い時間的及び位置的に変化するから、「動的視覚的情報」の「生成」といえ、該「動的視覚的情報」と本願発明の「動的触覚的効果」はいずれも「動的感覚的情報」ということができるから、引用発明の「ユーザインタフェース装置」と、本願発明の「タッチスクリーンを有するとともに動的触覚的効果を生成することができるデバイス」とは、「タッチスクリーンを有するとともに動的感覚的情報を生成することができるデバイス」の点では共通する。 そして、引用発明の「ユーザインタフェース方法」と、本願発明の「タッチスクリーンを有するとともに動的触覚的効果を生成することができるデバイスを操作する方法」とは、「タッチスクリーンを有するとともに動的感覚的情報を生成することができるデバイスを操作する方法」の点では共通する。 b.引用発明の「ジェスチャー」は、本願発明の「ジェスチャ」に相当する。 そして、引用発明の「ジェスチャー」は、「タッチパネル8」上にユーザが描いた「操作軌跡」であるからタッチスクリーン上の指向性の動きと認められ、また、該「操作軌跡」に対応して「コマンドが割り付けられ」実行されるものであるから、引用発明の「ジェスチャー」は、本願発明の「ジェスチャには前記タッチスクリーン上の指向性の動きに関連するユーザインタラクション(ユーザ対話)が含まれ」に相当する。 また、引用発明の「ジェスチャー記憶部1」は、「ジェスチャー」を「記憶」するものであるから、引用発明においては、いずれかの時点で「ジェスチャー」を「ジェスチャー記憶部1」に「記憶」することは自明である。 c.引用発明の「次のレベルであるレベル(i+1)の特徴ベクトルを案内軌跡として前記タッチパネル8に表示」することは、未だ描いていない次のレベルのジェスチャーの軌跡を表示することであり、ジェスチャーをシミュレートしていると認められることから、引用発明の「次のレベルであるレベル(i+1)の特徴ベクトルを案内軌跡として前記タッチパネル8に表示」することと、本願発明の「前記記憶された前記デバイス上のジェスチャをシミュレートする前記動的触覚的効果を前記デバイス上で生成することを含み」とは、上記a.での検討も踏まえれば、「記憶された前記デバイス上のジェスチャをシミュレートする前記動的感覚的情報を前記デバイス上で生成することを含み」の点では共通する。 d.また、引用発明の「タッチパネル8」に表示される「案内軌跡」は、「レベル(i+1)」毎に順次表示されるものであって、また、方向がある「特徴ベクトル」であり、指向性の動きをシミュレートしているといえることから、引用発明の「タッチパネル8」上の「案内軌跡」の表示と、本願発明の「前記動的触覚的効果は前記指向性の動きをシミュレートするために前記タッチスクリーンの異なる個々の部分に順次適用される」とは、上記a.での検討も踏まえれば、「前記動的感覚的情報は前記指向性の動きをシミュレートするために前記タッチスクリーンに順次適用される」の点では共通する。 したがって、本願発明と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。 (一致点) 「タッチスクリーンを有するとともに動的感覚的情報を生成することができるデバイスを操作する方法であって、 前記デバイス上のジェスチャを記憶することを含み、前記ジェスチャには前記タッチスクリーン上の指向性の動きに関連するユーザインタラクション(ユーザ対話)が含まれ、 前記記憶された前記デバイス上のジェスチャをシミュレートする前記動的感覚的情報を前記デバイス上で生成することを含み、前記動的感覚的情報は前記指向性の動きをシミュレートするために前記タッチスクリーンに順次適用される、方法。」 (相違点) 上記「動的感覚的情報」が、本願発明では、「動的触覚的効果」であって、そのために「デバイス」が「動的触覚的効果を生成することができる」ものであり、また、該「動的触覚的効果」は「前記タッチスクリーンの異なる個々の部分に順次適用される」のに対し、引用発明では、「案内軌跡」であって、そのため「ユーザインタフェース装置」が「案内軌跡」を表示できるものであって、また、「案内軌跡」は「タッチパネル8」に順次表示されるが「タッチパネル8」の個々の部分に適用されるかは不明な点。 5.検討 上記(相違点)につき以下検討する。 引用例1の段落【0005】に記載されるように、引用発明は、ジェスチャを正確に覚えていない場合でも、そのジェスチャに割り付けられているコマンドを呼び出すことができるようにすることを目的として、ジェスチャの案内軌跡の表示を行ったものであるが、当業者であればそのような目的を達成するためのジェスチャの提供手段としては、表示以外にも音声や触覚などの他の感覚に基づく情報提供手段も普通に想起し得るものである。 そして、引用例2にも記載されるように、ユーザに情報を提供する手段として、タッチスクリ-ン上の位置に応じた動的触覚的効果を生成させることでタッチスクリ-ン上の位置情報の提供を行うことは周知の技術である。 また、ジェスチャの案内を表示に代えて位置に応じて異なる動的触覚的効果が生成できる情報提供手段で行う際には、ジェスチャの「形」が認識できるようにジェスチャの案内軌跡の形に対応するタッチスクリーンの部分に動的触覚的効果を生成させるものと認められる。 したがって、引用発明において、ユーザにジェスチャの案内の情報を提供する手段として、表示に代えて周知の位置に応じて動的触覚的効果を生成する手段を用いるために、ユーザインタフェース装置を動的触覚的効果を生成できるものとして、レベル(i+1)毎に動的触覚的効果を案内軌跡の位置に対応するタッチスクリーンの個々の部分に順次適用するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである そして、そのようにすることは、引用発明において、相違点に係る本願請求項1に係る発明の構成を採用することにほかならない。 そして、本願発明の効果も、引用発明、周知の技術から想到される構成から当業者が予想できる範囲のものである。 6.むすび 以上のとおりであって、本願発明は、上記引用発明、及び周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-05-31 |
結審通知日 | 2017-06-01 |
審決日 | 2017-06-19 |
出願番号 | 特願2014-119190(P2014-119190) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 聡史 |
特許庁審判長 |
新川 圭二 |
特許庁審判官 |
山澤 宏 山田 正文 |
発明の名称 | 触覚的にイネーブルにされるユーザインタフェース |
代理人 | 川内 英主 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 高橋 誠一郎 |
代理人 | 松井 孝夫 |
代理人 | 岩附 秀幸 |
代理人 | 内田 浩輔 |
代理人 | 岡部 讓 |