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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1333898 |
審判番号 | 不服2015-21648 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-04 |
確定日 | 2017-10-26 |
事件の表示 | 特願2011-547886「ビデオ符号化およびビデオ復号における変換の選択のための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 8月 5日国際公開、WO2010/087809、平成24年 7月19日国内公表、特表2012-516627〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、本願は、2009年(平成21年)10月21日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年1月27日、米国、2009年2月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 手続補正 :平成24年10月16日 拒絶理由通知 :平成25年12月10日(起案日) 手続補正 :平成26年 6月18日 拒絶理由通知(最後) :平成26年12月18日(起案日) 手続補正 :平成27年 6月24日 補正の却下の決定 :平成27年 7月28日 拒絶査定 :平成27年 7月28日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :平成27年12月 4日 手続補正 :平成27年12月 4日 前置審査報告 :平成28年 2月 9日 上申書 :平成28年 4月25日 第2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成27年12月4日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載した事項により特定されるものであるところ、その請求項7に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 なお、本願発明の各構成の符号は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成(A)、構成(B)などと称する。 (本願発明) (A)装置であって、 (B)ビデオ・シーケンスにおけるピクチャ内の少なくとも1つのブロックの符号化を、当該ブロック毎に予め決定された2つ以上の異なる変換のセットから前記ビデオ・シーケンスにおける隣接するピクチャ間の当該ブロックの残差に適用する変換を選択することによって行うビデオ符号化器を備え、 (C)前記ビデオ・シーケンスにおける1つ以上の前のピクチャからの再構成されたデータを使用して、前記2つ以上の異なる変換のセットの決定が行われる、 (A)前記装置。 第3 当審の判断 1.引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開2002-314428号公報には、「信号符号化方法及び装置並びに復号方法及び装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。 なお、下線は強調のために当審で付したものである。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、画像信号などの信号系列を符号化及び復号を行う方法及び装置に係り、詳しくは、DCT等の変換基底を用いて信号系列の符号化及び復号を行う方法及び装置に関する。」 (2)「【0054】次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。 【0055】本実施の形態に係る画像符号化装置は、例えば、図11に示すように構成され、また、画像復号装置は、例えば、図12に示すように構成される。本実施の形態では、動き補償フレーム間予測により時間方向に存在する冗長度を削減し、動き補償予測の結果得られた該マクロブロックの予測画像の波形パターンを、主成分に該当する基底でうまく捉えられるようにDCT基底を変形させ、該変形基底を用いた変換符号化による情報圧縮を行う。あらかじめ画像の局所的な性質を考慮した変換基底を数種類用意しておき、予測画像のパターンに応じてそれらを切り替えて使用する。画像符号化装置側と画像復号装置側に同一の基底セットを設けておき、基底の切替情報としてID情報のみを送受信する。画像復号装置側ではID情報に基づいて基底を選択するだけであり、画像復号装置側での基底演算を必要としない。 (中略) 【0057】図11において、入力映像信号201はフレーム画像の時間系列であり、以下、フレーム画像単位の信号を表すものとする(符号化対象となるフレーム画像は、図3における現フレームに該当)。現フレームは、マクロブロック単位で以下の手順で符号化される。現マクロブロックはまず動き検出部202に送られ、ここで、動きベクトル205の検出が行われる。動き補償部207は、動きベクトル205を用いてフレームメモリ203中の局所復号画像217を参照して、各マクロブロックの予測画像206を取り出す。 【0058】現マクロブロックと予測画像206との差分として予測残差信号208が得られ、これが適応変換部209によって直交変換係数データ210に変換される。適応変換部209で用いられる変換基底219は、変換基底演算部218において、使用される予測画像206のパターンに応じて選択される。選択された変換基底219は適応変換部209に送られ、直交変換に使用される。また、直交変換処理単位ごとに変換基底219のID情報250が圧縮ストリーム214に多重され、画像復号装置側に伝送される。変換基底演算部218の処理は後述する。 (中略) 【0061】変換基底演算部218は、入力される予測画像206を直交変換適用領域(N×N画素ブロック、N=4、8など)に分割し、その単位で変形基底219を求め、適応変換部209に対して出力する。まず、図10に示すように、予測画像206の各直交変換適用領域に対し、水平・垂直方向の平均輝度分布x_(H)、x_(V)が求められる。これにより各領域の水平・垂直方向の主成分が反映された波形パターンが得られる(図10参照)。変換基底演算部218には、典型的な平均輝度分布ベクトルx_(H)、x_(V)のパターンを主軸に反映させたK種類の正規直交基底A_(i)(i=0,1,…,K-1)が用意され、x_(H)、x_(V)に対応していずれかの基底A_(i)が選択される。A_(i)として用意される基底(N=4)の例を図13乃至図19に示す。」 (3)「【0083】更に、本発明の第四の実施の形態について説明する。 【0084】本実施の形態に係る画像符号化装置は、例えば、図24に示すように構成され、また、画像復号装置は、例えば、図25に示すように構成される。 【0085】本実施の形態では、前述した第二の実施の形態と同様に、基底セットA_(i)(i=0,1,…,K-1)を用いて変換基底を適応的に選択することによる変換符号化を行うのに加えて、その変換基底A_(i)を動的に更新する仕組みを備える。これにより、固定の基底セットで十分に対応できない画像パターンが現れた際に、さらに符号化効率を改善することができる。 【0086】図24に示す画像符号化装置において、入力映像信号401はフレーム画像の時間系列であり、以下、フレーム画像単位の信号を表すものとする(符号化対象となるフレーム画像は、図3における現フレームに該当)。現フレームは、マクロブロック単位で以下の手順で符号化される。現マクロブロックはまず動き検出部402に送られ、ここで、動きベクトル405の検出が行われる。動き補償部407は、動きベクトル405を用いてフレームメモリ403中の局所復号画像417を参照して、各マクロブロックの予測画像406を取り出す。 【0087】現マクロブロックと予測画像406との差分として予測残差信号408が得られ、これが適応変換部409によって直交変換係数データ410に変換される。適応変換部409で用いられる変換基底419は、変換基底演算部418において、使用される予測画像406のパターンに応じて選択される。選択された変換基底419は適応変換部409に送られ、直交変換に使用される。また、直交変換処理単位ごとに変換基底419のID情報450が圧縮ストリーム414に多重され、画像復号装置側に伝送される。 【0088】さらに、変換基底演算部418において、その時点での基底セットAiに含まれない別の変換基底が生成された場合、その変換基底そのものもID情報450とともに可変長符号化部413を経て圧縮ストリーム414に多重され、伝送される。この際、伝送されるID情報450とは、同時に伝送される変換基底で置き換えられる基底のID情報を意味する。変換基底演算部418の処理は後述する。 (中略) 【0091】変換基底演算部418は、入力される予測画像406を直交変換適用領域(N×N画素ブロック、N=4、8など)に分割し、その単位で変形基底419を求め、適応変換部409に対して出力する。まず、予測画像406の各直交変換適用領域に対し、水平・垂直方向の平均輝度分布x_(H)、x_(V)を求める。これにより各領域の水平・垂直方向の主成分が反映された波形パターンが得られる(図10参照)。変換基底演算部418には、典型的な平均輝度分布ベクトルx_(H)、x_(V)のパターンを主軸に反映させたK種類の正規直交基底A_(i)(i=0,1,…,K-1)が用意され、x_(H)、x_(V)に対応していずれかの基底A_(i)が選択される。A_(i)として用意される基底(N=4)の例は、図13乃至図19に示すようなものがある。個々の例の説明は実施例2に詳しいので省略する。」 2.引用文献1に記載される発明 引用文献1に記載された発明を以下に認定する。 (1)画像符号化装置 引用文献1の上記1.(1)の記載によれば、引用文献1には、画像信号などの信号系列の符号化を行う装置、すなわち画像符号化装置についての発明が記載されている。 (2)第二の実施の形態 引用文献1の上記1.(2)の記載によれば、引用文献1には、第二の実施の形態に係る画像符号化装置として、フレーム画像の時間系列である入力映像信号を、マクロブロック単位で符号化する装置であり、現マクロブロックと予測画像との差分として予測残差信号を取得し、適応変換部によって予測残差信号を直交変換係数データに変換する装置が記載されている。そして、適応変換部で用いられる変換基底は、変換基底演算部において、あらかじめ画像の局所的な性質を考慮して用意された数種類の変換基底からなる基底セットから、使用される予測画像のパターンに応じて選択される。 (3)第四の実施の形態 引用文献1の上記1.(3)の記載によれば、引用文献1には、第四の実施の形態に係る画像符号化装置として、第二の実施の形態と同様の基底セットを用いて変換基底を適応的に選択することによる変換符号化を行うのに加えて、変換基底演算部において、予測画像に基づいて、その時点での基底セットに含まれない別の変換基底が生成された場合、基底セットの変換基底を動的に更新する仕組みを備える装置が記載されている。 すなわち、第四の実施の形態に係る画像符号化装置は、フレーム画像の時間系列である入力映像信号におけるマクロブロック単位の符号化を、現マクロブロックと予測画像との差分である予測残差信号を、変換基底演算部において、あらかじめ画像の局所的な性質を考慮して用意された数種類の変換基底からなる基底セットから、使用される予測画像のパターンに応じて選択された変換基底を用いて直交変換係数データに変換することによって行う適応変換部を備えている。 そして、変換基底演算部において、予測画像に基づいて、その時点での基底セットに含まれない別の変換基底が生成された場合、基底セットの変換基底を動的に更新する仕組みを備えている。 (4)まとめ 以上により、第四の実施の形態に係る画像符号化装置を引用発明として認定すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) (a)フレーム画像の時間系列である入力映像信号におけるマクロブロック単位の符号化を、現マクロブロックと予測画像との差分である予測残差信号を、変換基底演算部において、あらかじめ画像の局所的な性質を考慮して用意された数種類の変換基底からなる基底セットから、使用される予測画像のパターンに応じて選択された変換基底を用いて直交変換係数データに変換することによって行う適応変換部を備え、 (b)変換基底演算部において、予測画像に基づいて、その時点での基底セットに含まれない別の変換基底が生成された場合、基底セットの変換基底を動的に更新する、 (c)画像符号化装置。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)本願発明の構成(A)と引用発明の構成(c)との対比 引用発明の「画像符号化装置」は、構成(a)にあるように、フレーム画像の時間系列である入力映像信号の符号化を行うものであるから、動画像の符号化を行う装置であり、本願発明のビデオ符号化器を備える「装置」に相当する。 (2)本願発明の構成(B)と引用発明の構成(a)との対比 引用発明の「フレーム画像の時間系列である入力映像信号におけるマクロブロック単位の符号化」は、本願発明の「ビデオ・シーケンスにおけるピクチャ内の少なくとも1つのブロックの符号化」に相当する。 引用発明の「現マクロブロックと予測画像との差分である予測残差信号」は、本願発明の「前記ビデオ・シーケンスにおける隣接するピクチャ間の当該ブロックの残差」に相当する。 また、引用発明の「あらかじめ画像の局所的な性質を考慮して用意された数種類の変換基底からなる基底セット」は、本願発明の「予め決定された2つ以上の異なる変換のセット」といえる。 そして、引用発明の、変換基底演算部において、数種類の変換基底からなる基底セットから選択された変換基底を用いて、予測残差信号を直交変換係数データに変換することは、予測残差信号の変換はブロック毎に行うものであるから、本願発明の「当該ブロック毎に予め決定された2つ以上の異なる変換のセットから前記ビデオ・シーケンスにおける隣接するピクチャ間の当該ブロックの残差に適用する変換を選択することによって」符号化を行うことに相当する。 引用発明の上記のような符号化を行う「変換基底演算部」及び「適応変換部」は、本願発明の「ビデオ符号化器」といえる。 したがって、引用発明の構成(a)は、本願発明の構成(B)の「ビデオ・シーケンスにおけるピクチャ内の少なくとも1つのブロックの符号化を、当該ブロック毎に予め決定された2つ以上の異なる変換のセットから前記ビデオ・シーケンスにおける隣接するピクチャ間の当該ブロックの残差に適用する変換を選択することによって行うビデオ符号化器を備え」という構成と一致する。 (3)本願発明の構成(C)と引用発明の構成(b)との対比 引用発明は、「予測画像に基づいて、その時点での基底セットに含まれない別の変換基底が生成された場合、基底セットの変換基底を動的に更新する」ものであり、「予測画像」は、符号化における「再構成されたデータ」であり、「基底セットの変換基底を動的に更新する」ことは、構成(a)の「数種類の変換基底からなる基底セット」を「決定する」ことに相当する。 そうすると、引用発明の構成(b)は、本願発明の構成(C)と、「再構成されたデータを使用して、前記2つ以上の異なる変換のセットの決定が行われる」ものである点で一致する。 ただし、「予測画像」は、フレーム画像の時間系列の前及び後のフレームの場合もあるので、引用発明は、「再構成されたデータ」に関し、本願発明のように「前記ビデオ・シーケンスにおける1つ以上の前のピクチャからの再構成されたデータ」に特定されていない点で、本願発明と相違する。 4.一致点・相違点 上記3.(1)ないし(3)の対比結果を踏まえると、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 装置であって、 ビデオ・シーケンスにおけるピクチャ内の少なくとも1つのブロックの符号化を、当該ブロック毎に予め決定された2つ以上の異なる変換のセットから前記ビデオ・シーケンスにおける隣接するピクチャ間の当該ブロックの残差に適用する変換を選択することによって行うビデオ符号化器を備え、 再構成されたデータを使用して、前記2つ以上の異なる変換のセットの決定が行われる、前記装置。 [相違点] 引用発明は、「再構成されたデータ」に関し、本願発明のように「前記ビデオ・シーケンスにおける1つ以上の前のピクチャからの再構成されたデータ」に特定されていない点。 5.相違点の判断 一般的に「予測画像」は、ビデオ・シーケンスにおける1つ以上の前か後のピクチャからの再構成されたデータであるところ、そのうち、時間的に先行する「1つ以上の前のピクチャ」のみを使用することは、動画符号化の技術分野においては、当業者が容易になし得ることである。 6.効果等について 本願発明の構成は、上記のように当業者が容易に想到できたものであるところ、本願発明が奏する効果は、その容易想到である構成から当業者が容易に予測しうる範囲内のものであり、同範囲を超える顕著なものではない。 7.上申書について 出願人は上申書において、請求項7について、「前記2つ以上の異なる変換のセットの決定およびリファインメントのうちの少なくとも一方が行われる」という下線部の構成を追加する補正の用意がある旨を述べているが、引用発明の「基底セットの変換基底を動的に更新する」ということは、基底セットの決定の他、基底セットをリファインメントすることも含むものである。 したがって、上申書で述べられる上記補正によっても、本願補正発明が進歩性を有するものとは認められない。 8.まとめ 以上のように、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-01 |
結審通知日 | 2017-06-05 |
審決日 | 2017-06-16 |
出願番号 | 特願2011-547886(P2011-547886) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 嘉宏、山▲崎▼ 雄介、梅本 達雄 |
特許庁審判長 |
藤井 浩 |
特許庁審判官 |
篠原 功一 清水 正一 |
発明の名称 | ビデオ符号化およびビデオ復号における変換の選択のための方法および装置 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 阿部 豊隆 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |