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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1333926 |
審判番号 | 不服2015-489 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-01-09 |
確定日 | 2017-10-26 |
事件の表示 | 特願2013- 83899「太陽電池モジュール及びそれに適用されるリボン結合体」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月16日出願公開、特開2014- 7384〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成25年4月12日(パリ条約による優先権主張 2012年6月22日 韓国)の出願であって、平成26年4月18日付けで拒絶理由が通知され、同年8月20日付けで意見書が提出されるとともに同日付けで手続補正がなされ、同年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成27年1月9日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同時に手続補正がなされた。 その後、当審において、平成27年12月8日付けで拒絶理由が通知され、平成28年3月14日付けで意見書が提出されるとともに同日付で手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1ないし19に係る発明は、平成28年3月14日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項によって特定されるものであるところ、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものであると認められる。 「第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池であって、前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池のそれぞれは、半導体基板と、前記半導体基板の後面に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域と、前記半導体基板の後面に位置し、前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、前記半導体基板の後面において前記第1電極と離隔して位置し、前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を含む、前記第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池と、 前記第1太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の一つと前記第2太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の他の一つを前記半導体基板の後面で電気的に連結するリボンと、 前記複数の太陽電池と前記リボンとの間に位置する絶縁部と、を含み、 前記リボンが、前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池の間の前記リボンの少なくとも一部で、前記絶縁部又は前記複数の太陽電池と隣接した前記リボンの一面に傾斜面を有し、入光面に形成される複数の凹凸を含み、 前記絶縁部は、前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池の間の前記リボンの前記少なくとも一部に位置する少なくとも一つの凹凸を覆うように位置され、 前記絶縁部が透過性を有する、太陽電池モジュール。」 第3 当審の拒絶理由通知 当審の拒絶の理由の概略は、以下のとおりである。 本願の請求項1ないし19に係る発明は、下記の引用文献1及び2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献1:特開2009-266848号公報 引用文献2:特表2010-517315号公報 第4 刊行物、各刊行物、及び引用発明の認定 1 本願の優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特開2009-266848号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。 (1)「【0001】 本発明は、光電変換部の裏面上に形成されたn側電極とp側電極とを有する太陽電池を備える太陽電池モジュールに関する。」 (2)「【0027】 光電変換部30は、光が入射する受光面と受光面の反対側に設けられる裏面とを有する。光電変換部30は、n型又はp型の導電型を有する単結晶Si、多結晶Si等の結晶系半導体材料、GaAs、InP等の化合物半導体材料などの一般的な半導体材料によって構成される。 【0028】 光電変換部30は、図5に示すように、裏面側に形成されたn型領域36とp型領域38とを含む。光電変換部30は、受光面における受光により光生成キャリアを生成する。光生成キャリアとは、光が光電変換部30に吸収されて生成される正孔と電子とをいう。n型領域36とp型領域38とは、配列方向に沿って太陽電池10の略全長に渡って形成される。n型領域36とp型領域38とは、配列方向に略直交する直交方向において交互に形成される。 【0029】 n型領域36は、光電変換部30の裏面に不純物(リンなど)をドーピングすることにより形成される高濃度のn型拡散領域である。光電変換部30内部で生成される電子は、n型領域36に集まる。 【0030】 p型領域38は、光電変換部30の裏面に不純物(ボロン、アルミニウムなど)をドーピングすることにより形成される高濃度のp型拡散領域である。光電変換部30内部で生成される正孔は、p型領域38に集まる。 【0031】 n側電極32は、n型領域36上に形成される。従って、n側電極32は、配列方向に沿って太陽電池10の略全長に渡って形成される。n側電極32は、n型領域36に集まる電子を収集する収集電極である。n側電極32は、例えば、銀をスパッタリングすることや、樹脂型導電性ペーストや焼結型導電性ペーストなどを印刷することにより形成することができる。 【0032】 p側電極34は、p型領域38上に形成される。従って、p側電極34は、配列方向に沿って太陽電池10の略全長に渡って形成される。p側電極34は、p型領域38に集まる正孔を収集する収集電極である。p側電極34は、n側電極32と同様に形成することができる。」 (3)「【0051】 [第2実施形態] 以下において、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。第2実施形態では、接続部材が、第1部分と第2部分とに分離されている。第1部分と第2部分とは、導電体によって電気的に接続される。 【0052】 (太陽電池モジュールの構成) 第2実施形態に係る太陽電池モジュールの構成について、図9を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る太陽電池モジュール2を示す側面図である。 【0053】 図9に示すように、太陽電池モジュール2は、太陽電池ストリング102を備える。太陽電池ストリング102は、複数の太陽電池10と、緩衝材14と、接続部材50とを備える。 【0054】 (太陽電池ストリングの構成) 図10は、太陽電池ストリング102の背面図である。図11は、太陽電池ストリング102の上面図である。図10及び図11に示すように、複数の太陽電池10それぞれは、接続部材50によって接続される。以下、接続部材50の構成について説明する。なお、各太陽電池10の構成は、第1実施形態と同様である。 【0055】 図12は、第2実施形態に係る接続部材50の上面図である。図12に示すように、接続部材50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを有する。第2実施形態では、接続部材50は、銅薄板などの導電性材料を基材として構成されている。 【0056】 第1部分51は、一の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第1表面51Sを有する。第1表面51Sは、導電性を有する第1導電領域51aと、絶縁性を有する第1絶縁領域51bとを含む。第1導電領域51aは、一の太陽電池10が有するn側電極32に沿って形成される。第1導電領域51aは、一の太陽電池10が有するn側電極32に電気的に接続される。第1導電領域51aは、第1絶縁領域51bによって挟まれる。なお、第2実施形態では、第1部分51は、図10に示すように、一の太陽電池10の配列方向中央部に配置される。 【0057】 第2部分52は、他の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第2表面52Sを有する。第2表面52Sは、導電性を有する第2導電領域52aと、絶縁性を有する第2絶縁領域52bとを含む。第2導電領域52aは、他の太陽電池10が有するp側電極34に沿って形成される。第2導電領域52aは、他の太陽電池10が有するp側電極34に電気的に接続される。第2導電領域52aは、第2絶縁領域52bによって挟まれている。なお、第2実施形態では、第2部分52は、図10に示すように、他の太陽電池10の配列方向中央部に配置される。 【0058】 第3部分53は、第1部分51と第2部分52とを電気的に接続する導電体である。第3部分53は、一の太陽電池10と他の太陽電池10との間に露出する(図11参照)。 【0059】 図13は、図10のP-P断面図である。図13に示すように、接続部材50の第1部分51は、導電体54と絶縁体55とを有する。第1導電領域51aは、導電体54の表面である。第1導電領域51aは、一の太陽電池10が有するn側電極32と対向する。第1絶縁領域51bは、絶縁体55の表面である。第1絶縁領域51bは、p側電極34と対向する。 【0060】 図14は、図10のQ-Q断面図である。図14に示すように、接続部材50の第2部分52は、導電体54と絶縁体55とを有する。第2導電領域52aは、導電体54の表面である。第2導電領域52aは、他の太陽電池10が有するp側電極34と対向する。第2絶縁領域52bは、絶縁体55の表面である。第2絶縁領域52bは、n側電極32と対向する。 【0061】 なお、絶縁体55は、第1部分21の表面に選択的に絶縁処理を施すことによって形成することができる。また、太陽電池10と接続部材50との間には、接着層40が設けられる。従って、一の太陽電池10が有するn側電極32は、第1導電領域51aに電気的に接続される。一方、一の太陽電池10が有するp側電極34は、第1導電領域51aから電気的に分離されている。 【0062】 図15は、図10のR-R断面図である。図15に示すように、接続部材50の第1部分51の第1導電領域51aは、接着層40を介して、一の太陽電池10が有するn側電極32に電気的に接続される。 【0063】 図16は、図10のS-S断面図である。図16に示すように、第1部分51の第1絶縁領域51bは、接着層40を介して、一の太陽電池10が有するp側電極34に接続される。第1絶縁領域51bとp側電極34とは、電気的に分離されている。 【0064】 また、図16に示すように、第3部分53と一の太陽電池10との間には、緩衝材14が配設されている。緩衝材14は、封止材13と同様に、EVA、EEA、PVBなどの樹脂材料によって形成することができる。 【0065】 (作用及び効果) 第2実施形態では、第1導電領域51aは、一の太陽電池10が有するn側電極32に沿って形成され、n側電極32に電気的に接続される。第2導電領域52aは、他の太陽電池10が有するp側電極34に沿って形成され、p側電極34に電気的に接続される。第1導電領域51aと第2導電領域52aとは、電気的に接続される。 【0066】 従って、一の太陽電池10の略全長に渡ってn側電極32を形成でき、他の太陽電池10の略全長に渡ってp側電極34を形成できる。その結果、一の太陽電池10及び他の太陽電池10から光生成キャリアを効率的に収集できる。 【0067】 また、第2実施形態では、第1部分51は、一の太陽電池10の配列方向中央部に配置され、第2部分52は、他の太陽電池10の配列方向中央部に配置される。従って、光生成キャリアがn側電極32又はp側電極34の内部を移動する距離を短くすることができる。その結果、n側電極32又はp側電極34の内部における光生成キャリアの抵抗損失を低減することができる。 【0068】 また、第2実施形態では、第1部分51は、一の太陽電池10の配列方向中央部に配置され、第2部分52は、他の太陽電池10の配列方向中央部に配置される。従って、一の太陽電池10及び他の太陽電池10の配列方向端部に接続部材50が押し付けられることを抑制できる。その結果、一の太陽電池10及び他の太陽電池10の端部に割れや欠けが発生することを抑制できる。 【0069】 また、第3部分53と一の太陽電池10との間、及び第3部分53と他の太陽電池10との間には、緩衝材14が配設される。従って、導電性を有する第3部分53が、太陽電池10に接触することによって太陽電池10が破損することを抑制できる。また、第3部分53と太陽電池10との間での短絡の発生を抑制できる。」 (4)図5 (5)図9 (6)図10 (7)図11 (8)図12 (9)図13 (10)図14 (11)図15 (12)図16 (13)図9、16より、引用文献1の「緩衝材14」が、「複数の太陽電池10」と「接続部材50」との間に位置することが、看取できる。 上記(1)ないし(13)により、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「複数の太陽電池10と、緩衝材14と、接続部材50とを備える太陽電池ストリング102であって、 前記複数の太陽電池10が有する、半導体材料によって構成された光電変換部30は、裏面側に形成されたn型領域36とp型領域38とを含み、n側電極32は、前記n型領域36上に形成され、p側電極34は、前記p型領域38上に形成され、 前記接続部材50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを有し、 前記第1部分51は、一の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第1表面51Sを有し、前記第1表面51Sは、導電性を有する第1導電領域51aと、絶縁性を有する第1絶縁領域51bとを含み、前記第1導電領域51aは、前記一の太陽電池10が有するn側電極32に沿って形成されて前記n側電極32に電気的に接続され、 前記第2部分52は、他の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第2表面52Sを有し、前記第2表面52Sは、導電性を有する第2導電領域52aと、絶縁性を有する第2絶縁領域52bとを含み、前記第2導電領域52aは、前記他の太陽電池10が有するp側電極34に沿って形成されて前記p側電極34に電気的に接続され、 前記第3部分53は、前記第1部分51と前記第2部分52とを電気的に接続する導電体であり、 前記緩衝材14は、前記複数の太陽電池10と前記接続部材50との間に位置し、EVA、EEA、PVBなどの樹脂材料によって形成される、 太陽電池ストリング102。」 2 本願の優先日前に頒布され、当審の拒絶の理由に引用された刊行物である、特表2010-517315号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。 (1)「【0006】 本発明の目的は、太陽電池、相互コネクタ、太陽電池によってカバーされなかった領域から太陽電池に向かって入射光を向け直す(リダイレクトする)ための反射部材を有する太陽電池モジュールの態様を単純化することである。本発明の目的は、さらに完全に、または部分的に、上述された問題を解決することである。本発明においては、2つの隣接するセルを電気的に相互接続し、そしてこれらのセルの方に入射太陽光を向け直す機能が、1つの部材中に組み合わせられる。さらにこの部材は、異なった気候条件の下で熱膨張によって起こされた太陽電池の間の力学的応力を緩和することが可能な1つの実施態様にある。」 (2)「【0027】 図1は、ある数の直列に相互接続された太陽電池2を備え、一方、太陽電池2が相互コネクタ3によって相互接続された、完全な太陽電池モジュール1を示す。他の太陽電池2および相互コネクタ3の1つ以上の列が、透明な前カバーの後ろに相互接続され、そして透過的にカプセル化(密封)される。この前カバーはガラスのシートでありうるが、その一方で、EVAが透明なカプセル化材料として使われうる。 【0028】 図2を参照すると、図1に示した相互接続の詳細を示し、2つの隣接する太陽電池2aおよび2bが相互コネクタ3によって相互接続されている。前面、すなわち相互コネクタ3の受光面は、反射構造4によって実質的に完全にコーティングされる。相互コネクタ3は、その長手方向エッジ上に、細長いバー6に接続された接続部材5を有する。これらは、太陽電池の上で、はんだ付け、または何らかの他の適切な接続手段によって、対応する接続アイランドに接続されうる。相互コネクタ3は、銅のような良電気伝導性を備えた材料から作られうる。 【0029】 接続部材は相互コネクタ3の主要本体に対して、また相互コネクタ3に接続された他の接続部材に対して少し動くことができる。この相互コネクタ配置は、相互コネクタの十分な硬さを確保する一方で、太陽電池アセンブリにおける異なった部分間でのいくらかの相対的な運動を可能にするために、好ましくは柔軟である。この設計は、異なった動作温度下での熱膨張によって引き起こされる相互接続された太陽電池2a及び2bの変位を補償するための、相互コネクタ3の応力緩和スプリング構造をもたらす。バー6は、接続部材5と相互コネクタ3の主要本体との間にさらに良好な応力緩和をも提供するために、曲がりくねった設計としうる。 【0030】 図3aから図3dは、様々な典型的な相互コネクタ設計を示す。図3aは、中央の領域において反射性表面4と、太陽電池に接続される接続部材5aとしての両方の長手方向エッジとを備えた相互コネクタの非常に基本的な設計を示す。太陽電池の接触設計に応じて、単一の接続部材5bを、図3bで示すように相互コネクタから引き出されるように、配置することもできる。 【0031】 異なった動作温度下での熱膨張によって引き起こされる相互接続された太陽電池の変位を補償するための、相互コネクタの応力緩和スプリング構造をもたらす設計が、図3cおよび図3dに示されている。図3cを参照すると、薄いバー6cのみによってそれぞれの接続部材5cがさらに高い弾性を提供する相互コネクタに連結されるように、それぞれの接続部材5cに隣接する相互コネクタ中に開口部7cが作られる。 【0032】 図2の実施形態に対応する図3dで示さられた設計では、接続部材5dが相互コネクタのエッジから引き出され、そしてそれぞれが、相互コネクタの主要本体と接続部材5dとの間に薄いギャップ7dを形成するさらに長いバー6dによって連結される。バー6dは、接続部材5dと相互コネクタの主要本体との間にさらに良好な応力緩和をも提供するために、曲がりくねった設計としうる。 【0033】 太陽電池モジュール1に使われる太陽電池のタイプに応じて、相互接続を適用する2つの方法がある。図4aに示されるように、相互コネクタ3は、裏面上の両方の太陽電池の上に接続部材5を接続することによって、太陽電池2aおよび2bを相互接続するように適用されうる。図4bにおいて、相互コネクタ3の接続部材5aは太陽電池2aの裏面に接続され、そして相互コネクタ3の接続部材5bは隣接する太陽電池2bの前面に接続される。 【0034】 好ましくは、太陽電池上の金属で覆われた対応する接続アイランドへの相互コネクタ3の接続部材5の接続は、はんだ付けによってなされる。従って、少なくとも接続部材5のすずコーティングが適切であるが、完全な相互コネクタ3のコーティングもされうる。 【0035】 図5aは、相互コネクタ3上に反射構造4にとって好ましい形状を提供する第1の方法を示す。相互コネクタ3の本体をパンチすることによって、Vグルーブ(溝)を施した形状が実現され、断面において、相互コネクタ3の本体が、相互コネクタ3の厚さより高い振幅を持つが、太陽電池および覆い(カプセル化材料)の厚さより高くはないジグザグの形に現出するようになる。 【0036】 反射構造4aの反射性を改善すために、追加の反射性コーティングを適用することができる。 【0037】 相互コネクタ3上の反射構造4bを形成する第2の方法が図5bに示されている。相互コネクタ3の本体をエンボス加工することは、反射構造4bのためのVグルーブを提供する。これによって、グルーブの振幅は、相互コネクタ3の前面だけが構造化されている一方で、裏面は無垢のままであるように、相互コネクタ3の厚さより小さくなければならない。反射構造4aの反射性を改善するために、追加の反射性コーティングを適用することができる。 【0038】 図5cでは、好ましい形状を提供するための第3の方法が示されている。追加の材料、好ましくは重合体の層4cが、相互コネクタ3の主要本体上に付着される。それによって、追加の層4cはエンボス加工され、相互コネクタ3に付けられる前または後に好ましい形状を提供すしうる。必要な反射性を提供するために、追加の反射性コーティングが層に4c上に堆積される。 【0039】 上述の方法の1つによって提供されうる好ましい形状は、Vグルーブであり、それは、Vグルーブ上への入射光が、前カバーの前面で内部反射させられるような臨界角より大きな角度で前カバー中に後方反射されるような角度である。110°?130°の範囲の角度がVグルーブにとって好ましい設計である、ということが見出された。 【0040】 反射構造4の反射性を改善する追加のコーティングは、好ましくはAg層であるが、それだけでなく、Al、Au、反射性重合体、その他の材料とすることができる。特に太陽電池モジュール中で相互コネクタ3が密封される前に腐食によって引き起こされる、この反射性コーティングの反射性低下を妨げるために、透明な保護コーティングを反射性コーティング上に適用することができる。 【0041】 図6は相互コネクタ上の反射構造の原理を示す。透明な前プレート10は、お互いに間隔を置かれて配置された複数の太陽電池11に重なり、太陽電池がない領域13を提供する。太陽電池11は、反射構造12を持った相互コネクタによって電気的に相互接続され、前面14と裏面15とを持つ。反射構造12は、太陽電池の間のギャップ13に配置される。太陽電池のない領域13に入射する光は、反射構造12から反射され、そして透明な前プレート10中に戻り、そして全反射(TIR)によって太陽電池11の方に、前プレート10と空気との間の界面で再び反射する。」 (3)図5b 上記(1)ないし(3)によれば、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2に記載された事項」という。)が記載されていると認められる。 「太陽電池によってカバーされなかった領域から太陽電池に向かって入射光を向け直す(リダイレクトする)ために、相互コネクタ3の本体をエンボス加工して反射構造4bのためのVグルーブを提供すること。」 第5 当審の判断 1 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「一の太陽電池10」、「他の太陽電池10」、「複数の太陽電池10」、「半導体材料によって構成された光電変換部30」、「p型領域38」、「n型領域36」、「p側電極34」、「n側電極32」、「接続部材50」及び「太陽電池ストリング102」は、本願発明の「第1太陽電池」、「第2太陽電池」、「複数の太陽電池」、「半導体基板」、「第1導電型領域」、「第2導電型領域」、「第1電極」、「第2電極」、「リボン」及び「太陽電池モジュール」に、それぞれ相当する。 (2)引用発明の「前記複数の太陽電池10が有する、半導体材料によって構成された光電変換部30は、裏面側に形成されたn型領域36とp型領域38とを含み、n側電極32は、前記n型領域36上に形成され、p側電極34は、前記p型領域38上に形成され」ることは、本願発明の「太陽電池及び前記第2太陽電池のそれぞれは、半導体基板と、前記半導体基板の後面に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域と、前記半導体基板の後面に位置し、前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、前記半導体基板の後面において前記第1電極と離隔して位置し、前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を含む、前記第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池」「を含」むことに相当する。 (3)引用発明の「前記接続部材50は、第1部分51と、第2部分52と、第3部分53とを有し、前記第1部分51は、一の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第1表面51Sを有し、前記第1表面51Sは、導電性を有する第1導電領域51aと、絶縁性を有する第1絶縁領域51bとを含み、前記第1導電領域51aは、前記一の太陽電池10が有するn側電極32に沿って形成されて前記n側電極32に電気的に接続され、前記第2部分52は、他の太陽電池10が有する光電変換部30の裏面と接合される第2表面52Sを有し、前記第2表面52Sは、導電性を有する第2導電領域52aと、絶縁性を有する第2絶縁領域52bとを含み、前記第2導電領域52aは、前記他の太陽電池10が有するp側電極34に沿って形成されて前記p側電極34に電気的に接続され、前記第3部分53は、前記第1部分51と前記第2部分52とを電気的に接続する導電体であ」ることは、本願発明の「前記第1太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の一つと前記第2太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の他の一つを前記半導体基板の後面で電気的に連結するリボン」「を含」むことに相当する。 (4)引用発明の「緩衝材14は、EVA、EEA、PVBなどの樹脂材料によって形成される」ものであるから、引用発明の「緩衝材14」が、絶縁性であり、透過性を有することは明らかである。 すると、引用発明の「緩衝材14」は、本願発明の「絶縁部」に相当し、引用発明の「緩衝材14は、」「EVA、EEA、PVBなどの樹脂材料によって形成される」ことは、本願発明の「前記絶縁部が透過性を有する」ことに相当する。 上記(1)ないし(4)より、本願発明と引用発明は、 「第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池であって、前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池のそれぞれは、半導体基板と、前記半導体基板の後面に形成される第1導電型領域及び第2導電型領域と、前記半導体基板の後面に位置し、前記第1導電型領域に電気的に連結される第1電極と、前記半導体基板の後面において前記第1電極と離隔して位置し、前記第2導電型領域に電気的に連結される第2電極と、を含む、前記第1太陽電池及び第2太陽電池を含む複数の太陽電池と、 前記第1太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の一つと前記第2太陽電池の前記第1電極及び前記第2電極の他の一つを前記半導体基板の後面で電気的に連結するリボンと、 前記複数の太陽電池と前記リボンとの間に位置する絶縁部と、を含み、 前記絶縁部が透過性を有する、太陽電池モジュール。」 の点で一致し、以下の相違点1、2で相違する。 <相違点1>「リボン」が、本願発明では、「前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池の間の前記リボンの少なくとも一部で、前記絶縁部又は前記複数の太陽電池と隣接した前記リボンの一面に傾斜面を有し、入光面に形成される複数の凹凸を含」むのに対して、引用発明の「接続部材50」はそのような構成でない点。 <相違点2>「絶縁部」が、本願発明では、「前記第1太陽電池及び前記第2太陽電池の間の前記リボンの前記少なくとも一部に位置する少なくとも一つの凹凸を覆うように位置され」るのに対して、引用発明の「緩衝材14」はそのように位置されるものでない点。 2 上記相違点1、2について検討する。 太陽電池モジュールにおいて、リボン等の太陽電池を接続する接続部材に入射した光を有効に利用するという課題は周知のものである。そして、該課題の解決にあたり、太陽電池によってカバーされなかった領域から太陽電池に向かって入射光を向け直す(リダイレクトする)ために、相互コネクタ3(リボンに相当する。)の本体をエンボス加工して反射構造4bのためのVグルーブ(本願発明の傾斜面を有し、入射面に形成される複数の凹凸に相当する。)を提供することは、引用文献2に記載されている。 してみると、引用発明の「接続部材50」に引用文献2に記載された事項を適用して相違点1にかかる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 引用発明に引用文献2に記載された事項を適用するに際して、「太陽電池によってカバーされたかった領域」に対応するエンボス加工を、引用発明の「接続部材50」のどの範囲まで行うかは、 (1)どのような方法のエンボス加工を採用するか(たとえば、ポンチで何度も叩くようにするか、金型で一度で形成するかなど。)、 (2)エンボス加工を行う装置の精度(ポンチの頭の大きさ、金型の精密さなど。ポンチの頭が大きかったり、金型が精密でなければ、該「領域」からはみ出して、「Vグループ」が形成されることがあり得る。)、 (3)被加工部材である接続部材50の大きさ(相互コネクタ3のサイズが小さくて、加工装置の精度が低ければ、精密な範囲で、エンボス加工ができないから、該「領域」からはみ出して、「Vグループ」が形成されることがあり得る。)、 (4)「太陽電池によってカバーされなかった領域から太陽電池に向かって入射光を向け直す」ために必要な、Vグループ(溝)の大きさや、それらの間隔(Vグループが大きくて、間隔が広い場合は、「太陽電池によってカバーされなかった領域」からはみ出して、Vグループが形成されることがあり得る。)、 などを考慮して、少なくとも「太陽電池によってカバーされなかった領域」を含むように、当業者が適宜決定するものといえる。 してみると、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用するに際して、接続部材50に対するエンボス加工によるVグループを、「太陽電池によってカバーされなかった領域」を含め、さらに、「複数の太陽電池とリボンとの間に位置する絶縁部」である「緩衝剤14」の部分にもVグループを形成することは、適宜行われることであって、格別なことではない。 したがって、引用発明に引用文献2に記載された事項を適用して相違点1、2にかかる構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明が奏する作用効果も、当業者が予測できる域を超えるものではない。 4 まとめ 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-04-05 |
結審通知日 | 2016-04-12 |
審決日 | 2016-04-27 |
出願番号 | 特願2013-83899(P2013-83899) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 和田 将彦、門 良成 |
特許庁審判長 |
森林 克郎 |
特許庁審判官 |
川端 修 井口 猶二 |
発明の名称 | 太陽電池モジュール及びそれに適用されるリボン結合体 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 鶴田 準一 |
代理人 | 南山 知広 |
代理人 | 中村 健一 |