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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1333937 |
審判番号 | 不服2017-4036 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-03-21 |
確定日 | 2017-11-14 |
事件の表示 | 特願2015- 3329「CT受信器」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 7月14日出願公開、特開2016-128775、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年1月9日の出願であって、平成28年7月14日付けで拒絶理由が通知され、平成28年9月8日付けで手続補正がなされたが、平成29年1月12日付けで、拒絶査定(以下、「原査定」という)がなされ、これに対し、平成29年3月21日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次の通りである。 この出願の請求項1-3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、引用文献1-8に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特開昭57-3056号公報 2.特開平3-137577号公報 3.特開昭61-227610号公報 4.特開2014-240810号公報 5.特開2010-256135号公報 6.特開2011-163854号公報 7.特開平8-226951号公報 8.特開昭63-238573号公報 第3 本願発明 本願の請求項1-3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明3」という。)は、特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりのものである。 「【請求項1】 配電線に引っ掛ける引っ掛け部を有する本体と、 当該本体に設けられ、前記本体が配電線に引っ掛けられた場合に前記配電線に沿って並べて配置され、前記配電線に流れるパルス状の地絡故障電流を検出する第1CTセンサ及び第2CTセンサと、 前記本体に配置される発光部と、 前記第1CTセンサが時間的に先に地絡故障電流を検出した場合と、前記第2CTセンサが時間的に先に地絡故障電流を検出した場合とにおいて、異なる発光態様で前記発光部を発光させる発光制御部と、 前記第1CTセンサ及び前記第2CTセンサ並びに前記発光制御部を収納した収納部の下面に、絶縁操作棒の先端部に接続される連結部と、 を備えることを特徴とするCT受信器。」 第4 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。 a 「この発明の一実施例を第3図に示す。 図において、この発明の装置(20)は、絶縁性操作棒(16)の一方にパルス電流を検出する検出器(1)、他の一方にパルス電流を処理し、事故点の方向を指示する指示器(18)およびスイッチ(19)を備えた受信装置(3)を取付け検出器(1)と受信装置(3)とは、絶縁性操作棒(16)の中に納められた接続線で接続されている。 絶縁性操作棒(16)は伸縮可能で事故点探査時に便利な構造となっている。(17)は電柱に昇る時、又は移動時に利用するだめの吊りバンドである。 この発明による受信装置を使って地絡事故点を探査する場合の動作を説明する。 第4図に示すように、接地事故が生じた架空配電線路区間の高圧線路(8)と大地(9)の間にリード線(10)、(11)を使って高電圧パルス発生器(12)により高電圧パルスを印加する。事故点探査作業者(14)が電柱(Pl)に昇り、高圧線に受信装置(20)の検出器(1)部分を引掛けて、パルス電流の方向を確認する。」(第2頁右上欄第17-同頁左下欄16行) b 「又検出器(1)のパルス電流検出方法としては、サーチコイル方式でも、磁電変換素子(例えばホール素子等)を使ってもよい。」(第2頁右下欄第1-3行) 上記a,bより、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「装置(20)は、 絶縁性操作棒(16)の一方にパルス電流を検出するサーチコイル方式の検出器(1)、他の一方にパルス電流を処理し、事故点の方向を指示する指示器(18)およびスイッチ(19)を備えた受信装置(3)を取付け、吊りバンド(17)を備え、 接地事故が生じた架空配電線路区間の高圧線路(8)と大地(9)の間にリード線(10)、(11)を使って高電圧パルス発生器(12)により高電圧パルスを印加し、 高圧線に受信装置(20)の検出器(1)部分を引掛けて、パルス電流の方向を確認する受信装置(20)。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「第1図は本発明の第1の実施例に係る事故方向標定装置を示す。同図に示すようにこの事故方向標定装置は2つの光CT10a、10bと判別装置20とで構成されている。光CT10a,10bは、第7図に示すものと同構成をしており、鉄塔Tを挾んで離間して架空地線GWに取り付けられている。したがって事故時のサージ電流が架空地線GWを通って例えば負向側から伝搬してくると、第2図にも示すように、まず光CT10aが事故電流を検出して光ファイバ18aを介して光信号を送出し、次いで光CT10bが事故電流を検出して光ファイバ18bを介して光信号を送出する。なお、第1図においてlは電力線である。 この場合、事故時のサージ電流は、鉄塔Tを通過する際にその一部が鉄塔Tを通じて大地に分流してしまうため鉄塔Tを通過後、事故電流サージはそのレベルが下がる。よって第2図に示すように、光CT10aで事故時のサージ電流を検出した時点と光CT10bで事故時のサージ電流を検出した時点との時間差は、同検出レベルで比較すると通過後の波形(光CT10bで検出する波形)がレベルダウンした分だけ余裕がでて長くなる。この結果、光CT10a、10bの間隔が短かくてもどちらの光CTが先に事故時のサージ電流を検出したのかを判別するのが比較的容易になる。」(第2頁右下欄第13行-第3頁左上欄第19行) 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「そこで、事故の予防保全および故障点の早期発見を目的として、ガス絶縁機器内に発生する放電パルスまたは地絡サージを2個のサージ検出装置でもってそれぞれ検出し、このサージ検出装置によりサージを検知した時間の差を時間測定装置で測定し、この測定された時間差を演算処理して放電発生個所または地絡事故点を検出する装置が考えられている。」(第2頁右上欄第3-10行) 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献4には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0015】 検出部81は、係止された箇所の配電線に流れる直流電流を検出し、地上の作業者に報知する。例えば、検出部81は、直流電流を検出した場合に発光する発光体や鳴動するブザーなどの報知手段を含む。さらに、検出した直流電流の大きさに応じて発光体が発光する色やブザーの音色が変化する構成としてもよい。また、例えば、検出部81は、検出した直流電流の大きさを装置本体1に無線送信する通信手段を含み得る。」 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献5には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0036】 なお、検出部81は、電流検出器により検出された地絡電流の出力を判定するレベル検出回路と、レベル検出回路により判定された地絡電流の出力レベルに応じて所定の色に発光する複数の発光体を設ける構成としてもよい。レベル検出回路の地絡電流の出力レベルにより発光体が所定の色に発光する構成にすることにより、地絡電流の有無に加えて、例えば、下方から目視により容易に地絡電流の出力レベルを確認することが可能になる。」 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献6には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0032】 この吊下部12は、探査電圧を印加する課電ケーブル14aに導通する針電極14が本体筐体11の上部内面の傾斜面11b間の最上部から下方に向かうように突出している。また、この吊下部12の本体筐体11内には、吊り下げる電線に流れる電流により生じる磁界の有無を検出する検電機能(CT受信器)15が内蔵されており、この検電機能15は、本体筐体11内に準備されているボタン電池などのバッテリ15aを利用して、その検電結果をLED15bの点灯により作業者に報知する。」 7 引用文献7について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献7には、図面とともに、次の事項が記載されている。 「【0013】なお、上記表示体13、14は2つある内の一方が常時表示状態となるもので、例えば、図2のように矢印19内に位置する表示体13が赤色の場合はその矢印19の指示方向が電源側方向であることを表すもので、この時、指示方向が反対にある矢印20内の表示体14は白色の状態になっていて不表示状態を表している。」 8 引用文献8について 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献8には、図面とともに、次の事項が記載されている。 a 「第6図はこの事故点探査装置のブロック図であり・・・(12A)、(12B)は人力信号の信号レベルを反転して出力するインバータ、(13A)、(13B)は信号表示器である。」(第2頁左上欄第10行?右上欄第9行) b 第6図より、信号表示器(13A)、(13B)の表示が、矢印であることが見て取れる。 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「架空配電線路区間の高圧線路(8)」、「絶縁性操作棒(16)」は、それぞれ、本願発明1の「配電線」、「絶縁操作棒」に相当する。 イ 引用発明は、「高圧線に受信装置(20)の検出器(1)部分を引掛けて」いるので、引用発明の「検出器(1)」は、本願発明1の「配電線に引っ掛ける引っ掛け部を有する本体」に相当する。 ウ 引用発明の「パルス電流」は、「接地事故が生じた高圧線路(8)」に「高電圧パルス発生器(12)により高電圧パルスを印加し」たことにより流れる電流であるから、本願発明1の「前記配電線に流れるパルス状の地絡故障電流」に相当する。 そして、引用発明の「サーチコイル方式の検出器(1)」は、「検出器(1)」に「サーチコイル」が設けられたものであるといえるので、 引用発明の「検出器(1)」に設けられ、「高圧線に受信装置(20)の検出器(1)部分を引掛けて」「パルス電流を検出するサーチコイル」と、本願発明1の「当該本体に設けられ、前記本体が配電線に引っ掛けられた場合に前記配電線に沿って並べて配置され、前記配電線に流れるパルス状の地絡故障電流を検出する第1CTセンサ及び第2CTセンサ」とは、「当該本体に設けられ、前記本体が配電線に引っ掛けられた場合に、前記配電線に流れるパルス状の地絡故障電流を検出するセンサ」である点で共通する。 エ 引用発明の「受信装置(3)」に備えられた「指示器(18)」と、本願発明1の「前記本体に配置される発光部」とは、「表示部」である点で共通する。 オ 引用発明の「サーチコイル方式の検出器(1)」は、「サーチコイル」を収納しているといえるので、 引用発明の「サーチコイル方式の検出器(1)」と、本願発明1の「前記第1CTセンサ及び前記第2CTセンサ並びに前記発光制御部を収納した収納部」とは、「前記センサを収納した収納部」である点で共通する。 カ 引用発明の「受信装置(20)」は、本願発明1の「CT受信器」とは、「受信器」である点で共通する。 すると、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 (一致点) 「配電線に引っ掛ける引っ掛け部を有する本体と、 当該本体に設けられ、前記本体が配電線に引っ掛けられた場合に、前記配電線に流れるパルス状の地絡故障電流を検出するセンサと、 表示部と、 前記センサを収納した収納部と、 を備える受信器。」 (相違点1) センサが、本願発明1は、「前記配電線に沿って並べて配置され」た「第1CTセンサ及び第2CTセンサ」であるのに対して、引用発明は「サーチコイル」である点。 (相違点2) 表示部が、本願発明1は、「前記本体に配置される発光部」であるのに対して、引用発明は、「指示器(18)」である点。 (相違点3) 本願発明1は、「前記第1CTセンサが時間的に先に地絡故障電流を検出した場合と、前記第2CTセンサが時間的に先に地絡故障電流を検出した場合とにおいて、異なる発光態様で前記発光部を発光させる発光制御部」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点4) 本願発明1は、「前記第1CTセンサ及び前記第2CTセンサ並びに前記発光制御部を収納した収納部の下面に、絶縁操作棒の先端部に接続される連結部」を備えるのに対して、引用発明は、そのような特定がない点。 (相違点5) 受信器が、本願発明は、「CT受信器」であるのに対して、引用発明は、「サーチコイル方式」の「装置20」である点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 ア 引用文献2には、2つの光CT10a、10bが、鉄塔Tを挾んで離間して架空地線GWに取り付けられ、どちらの光CTが先に事故時のサージ電流を検出したのかを判別する事故方向標定装置が記載されている(上記「第4 2」)。つまり、引用文献2記載の「事故方向標定装置」は、事故時のサージ電流を検出するものである。 これに対し、引用発明の「受信装置20」は、接地事故が生じた高圧線路(8)に高電圧パルス発生器(12)により高電圧パルスを印加し、パルス電流の方向を確認するものである。 よって、引用発明の「受信装置20」と引用文献2記載の「事故方向標定装置」では、装置の検出対象となる電流の性質が異なるので、引用文献2記載の2つの光CT10a、10bを架空地線GWに取り付ける技術を、引用発明に適用する動機付けとなる理由は見当たらない。 また、引用発明の「受信装置20」は「吊りバンド(17)」を備え、作業者が持ち運ぶものであるのに対し(上記「第4 1」)、引用文献2記載の持ち運びを前提としない、2つの光CT10a、10bを架空地線GWに取り付ける技術であるから、この点からも、引用発明に適用する動機付けとなる理由は見当たらない。 イ 引用文献3には、ガス絶縁機器内に発生する放電パルスまたは地絡サージを2個のサージ検出装置でもってそれぞれ検出し、このサージ検出装置によりサージを検知した時間の差により放電発生個所または地絡事故点を検出する装置が記載されている(上記「第4 3」)。つまり、引用文献3記載の「装置」は、ガス絶縁機器内に発生する放電パルスまたは地絡サージを検出するものである。 これに対し、引用発明の「受信装置20」は、接地事故が生じた高圧線路(8)に高電圧パルス発生器(12)により高電圧パルスを印加し、パルス電流の方向を確認するものである。 よって、引用発明の「受信装置20」と引用文献3記載の「装置」では、装置の検出対象となる電流の性質が異なるので、引用文献3記載の2個のサージ検出装置をガス絶縁機器に取り付ける技術を、引用発明に適用することは、当業者といえども容易になし得たことではない。 また、引用発明の「受信装置20」は「吊りバンド(17)」を備え、作業者が持ち運ぶものであるのに対し(上記「第4 1」)、引用文献3記載の持ち運びを前提としない、2個のサージ検出装置をガス絶縁機器に取り付ける技術であるから、この点からも、引用発明に適用する動機付けとなる理由は見当たらない。 ウ 引用文献4-8には、上記相違点1に係る「前記配電線に沿って並べて配置され」た「第1CTセンサ及び第2CTセンサ」は記載されていない。 エ 引用発明は、「パルス電流を処理し、事故点の方向を指示する指示器(18)」を備え「パルス電流の方向を確認する受信装置20」であるから、「サーチコイル」によりパルス電流の方向を確認できるものである。よって、「パルス電流」が流れる方向を判別するために、2つのCTを線路に沿って取り付けることが周知技術(引用文献2、3)であったとしても、引用発明の「受信装置20」において、「サーチコイル」を「高圧線路(8)」に沿って並べて配置する構成を採用する動機付けとなる理由は見当たらない。 したがって、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 よって、本願発明1は、上記相違点2-5について検討するまでもなく、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 2 本願発明2、3について 本願発明2、3も、上記相違点1にかかる本願発明1の「前記配電線に沿って並べて配置され」た「第1CTセンサ及び第2CTセンサ」と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1-3は、引用発明、引用文献2-8に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-10-30 |
出願番号 | 特願2015-3329(P2015-3329) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 下村 一石、越川 康弘 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
中塚 直樹 須原 宏光 |
発明の名称 | CT受信器 |
代理人 | 林 一好 |
代理人 | 正林 真之 |