• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60K
管理番号 1334064
審判番号 不服2016-16990  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-14 
確定日 2017-11-01 
事件の表示 特願2015-525796号「ハイブリッド車両の駆動を制御する方法、及び、本方法に従って駆動可能な制御部を備えたハイブリッド車両」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日国際公開、WO2014/023486、平成27年9月17日国内公表、特表2015-527244号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年7月4日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年8月10日(DE)ドイツ連邦共和国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月9日に国内書面とともに明細書及び請求の範囲並びに要約書の翻訳文が提出され、平成28年1月21日付けで拒絶理由が通知され、平成28年4月26日に意見書及び補正書が提出されたが、平成28年7月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して平成28年11月14日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明について
[1]本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年2月9日に提出された明細書の翻訳文及び平成28年4月26日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲並びに国際出願時の図面からみて、次のとおりものである。

「【請求項1】
内燃機関によって、及び/又は、蓄えられた電気エネルギーのストックを介して電力供給が可能な電気駆動部によって駆動されうるハイブリッドの車両(10)の駆動を制御する方法であって、前記車両(10)は、ユーザインタフェースを有する駆動制御部を備え、前記方法は、ユーザの前記ユーザインタフェースの利用により、前記車両(10)が所定の時点以降(A、B、C)及び/又は所定の期間若しくは区間(a、b、c)の間優先的に前記電気駆動部のみによって駆動され、走行の終了時にバッテリが満充電されていることが望まれる場合は、前記内燃機関によって前記区間の間駆動されることを設定することを含む、方法。」

[2]引用例
(1)引用例の記載事項
原査定の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特許第4636182号公報(以下、「引用例」という。)には、「車両の制御装置および車両の制御方法、車両の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムおよびプログラムを記録した記録媒体」に関して図面とともに以下の記載がある。

a)「この発明の目的は、運転者の好みに走行パターンを細かく合わせることができるハイブリッド車両の制御装置、制御方法、その制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体を提供することである。
この発明は、要約すると、複数の走行モードを有する車両の制御装置であって、目的地を設定する目的地設定部と、起点から目的地までの走行経路を設定する経路設定部と、走行経路を分割する走行経路分割部と、操作者からの指示に基づき、分割された走行経路の各区間にいずれかの走行モードを対応付けて走行モードを確定させる走行モード確定部と、各区間を対応付けられた走行モードで走行するように車両を走行させる走行制御部とを備える。
好ましくは、車両は、内燃機関とモータとを走行に併用するハイブリッド車両であり、複数の走行モードは、内燃機関の運転が許可されるHV走行モードと、内燃機関を停止させてモータを用いて走行するEV走行モードとを含む。
好ましくは、車両の制御装置は、車両外部から目的地、走行経路、分割された各区間および各区間に対応付けられた走行モードを含む情報を読み込む情報読込部をさらに備える。走行制御部は、情報に基づいて車両を走行させることが可能に構成される。
好ましくは、走行経路分割部は、起点から目的地までの走行経路を複数の走行モードの各々に適する区間に分割し、分割した各区間の走行モードを仮決定し、走行モード確定部は、操作者からの指示に基づき各区間に対応付けられた走行モードを他の走行モードに変更する。
好ましくは、走行モード確定部は、操作者の入力に基づいて走行経路の分割の境界点の位置を変更する。
この発明の他の局面に従うと、複数の走行モードを有する車両の制御装置であって、目的地を設定する設定部と、起点から目的地までの走行経路を設定する設定部と、走行経路を分割する分割部と、操作者からの指示に基づき、分割された走行経路の各区間にいずれかの走行モードを対応付けて走行モードを確定させる確定部と、各区間を対応付けられた走行モードで走行するように車両を走行させる走行制御部とを備える。
好ましくは、車両は、内燃機関とモータとを走行に併用するハイブリッド車両であり、複数の走行モードは、内燃機関の運転が許可されるHV走行モードと、内燃機関を停止させてモータを用いて走行するEV走行モードとを含む。」(第4ページ第15ないし43行)(下線は、理解の一助のために当審が付したものである。以下同様。)

b)「直流電源であるバッテリBは、たとえばニッケル水素またはリチウムイオンなどの二次電池を含み、直流電力を昇圧ユニット32に供給するとともに、昇圧ユニット32からの直流電力によって充電される。
昇圧ユニット32は、バッテリBから受ける直流電圧を昇圧してその昇圧された直流電圧をインバータ36に供給する。インバータ36は供給された直流電圧を交流電圧に変換してエンジン始動時にはモータジェネレータMG1を駆動制御する。また、エンジン始動後には、モータジェネレータMG1が発電した交流電力はインバータ36によって直流に変換され、昇圧ユニット32によってバッテリBの充電に適切な電圧に変換されてバッテリBが充電される。
また、インバータ36はモータジェネレータMG2を駆動する。モータジェネレータMG2はエンジン2を補助して前輪20R,20Lを駆動する。制動時には、モータジェネレータは回生運転を行ない、車輪の回転エネルギを電気エネルギに変換する。得られた電気エネルギは、インバータ36および昇圧ユニット32を経由してバッテリBに戻される。バッテリBは組電池であり、直列に接続された複数の電池ユニットB0?Bnを含む。昇圧ユニット32とバッテリBとの間にはシステムメインリレー28,30が設けられ、車両非運転時には高電圧が遮断される。」(第6ページ第19ないし34行)

c)「ナビゲーション制御部64は、乗員の操作に基づいて目的地を設定する設定処理を行ない、起点から目的地までの走行経路を設定する探索処理を行なう。
そしてナビゲーション制御部64は、後に図5で説明するように、探索した走行経路を分割し、分割された走行経路の各区間にいずれかの走行モードを対応付ける処理を行なう。そしてこの対応付けがユーザの好みに合うものであるかを確認するために、操作者からの指示に基づき、走行経路の分割と各区間に対応付けられた走行モードとを確定させる処理を行なう。この場合に、ユーザが区間の分割や走行モードを手動で変更することも可能である。そして確定されたこの区間分割と対応する走行モードを記憶する。その後、ナビゲーション制御部64は、走行が開始されると、対応付けられた走行モードで各区間を走行するように走行モードの情報をハイブリッド制御部62に送信して車両を走行させる。
ナビゲーション制御部64に対して、車両外部から目的地、走行経路、分割された各区間および各区間に対応付けられた走行モードを含む情報を読み込む読込部としてメモリカードインタフェース56が設けられている。メモリカード54に図示しないパーソナルコンピュータで作成したデータを予め記憶させておき、メモリカードインタフェース56を介してこのデータをナビゲーション制御部64に読み込ませることができる。
これにより、車両を走行させる制御装置14は、そのデータに基づいて車両を走行させることが可能に構成される。
ナビゲーション制御部64は、起点から目的地までの走行経路を複数の走行モードの各々に適する区間に分割する。たとえば、道路の周辺環境、傾斜、カーブの有無、信号の有無などに応じてEV走行モード、HV走行モードのいずれかが選択される。なお、レンジ切換可能な変速機を有する車両では、このような走行モードの設定に加え、レンジの切換を行なっても良い。
また、ナビゲーション制御部64は、操作者からの指示に基づき各区間に対応付けられた走行モードを他の走行モードに変更する処理も行なう。」(第7ページ第27ないし50行)

d)「図4は、制御装置14が実行する処理の制御構造を示すフローチャートである。この処理は、車両においてナビゲーション制御部64において実行されるが、車両外のパーソナルコンピュータ上にカーナビゲーションシステムのソフトウエアをインストールしておいて、車両に乗り込む前に予め行なってもよい。
図4を参照して、まず処理が開始されると、ステップS1において車両走行の目的地の設定入力の受付処理が行なわれる。操作者は、車両において操作を行なう場合は図2の表示部48にあるタッチディスプレイを操作することにより目的地を設定する。また、車外の自宅などにおいて、パーソナルコンピュータで操作する場合には、マウスやキーボード等の入力装置を操作して目的地を設定する。
続いて、ステップS2において、車両の現在位置(または自宅の位置)から目的地までの走行経路の探索が行なわれる。そして、ステップS3において探索された走行経路が画面上に表示される処理が行なわれる。
ステップS4において、走行経路を確定させる入力待ちの状態となる。走行経路を確定させる入力は、たとえば、タッチパネル上に表示された「案内開始」ボタンが押されることであっても良い。また、「再探索」ボタンが押されること無く無操作で一定時間が経過した場合に確定とするのであっても良い。ステップS4において再探索の要求があった場合には、ステップS4からステップS2に処理が戻る。その際に、通過地点などを設定するステップが設けられても良い。
ステップS4において走行経路が確定したと判断された場合にはステップS5に処理が進む。
ステップS5では、探索された走行経路を分割する処理がおこなわれ、ステップS6では分割された各区間の走行モードを重ねて表示する処理が行なわれる。
なお、ステップS5において、走行経路の分割のみを行なって、後のステップS7でユーザに走行モードを選択させるようにしても良い。この場合には、走行経路の分割は、単純に一定距離ごとに分割するようにしても良い。」(第8ページ第27行ないし第9ページ第1行)

e)「図7は、図4のステップS7における変更入力の他の例を示す図である。
図7(A)は、図5で分割され、走行モードが表示されている区間A3にタッチディスプレイの場合は指でタッチしたり、マウスの場合はクリックしたりして区間の選択処理が行なわれることを示す。
すると、図7(B)に示すように区間A3の走行モードを選択可能とするポップアップ表示B3が現れる。そして、操作者は、ポップアップ表示中の「EV」ボタンを押すことで、区間A3の走行モードをHVモードからEVモードに変更することができる。なお、分割した時点では、走行モードを仮決定せず、各区間について、図7(B)で示したようにユーザに選択させるようにしても良い。
再び図4を参照して、ステップS8ではステップS7で行なわれた操作者の入力にもとづき区間分割や走行モードの変更が行なわれ、再びステップS7に処理が戻る。
一方、ステップS7において変更入力が無い場合には、ステップS9に処理が進む。たとえば、タッチディスプレイ上の「走行開始」ボタン等のボタンが押された場合や、変更入力操作が一定時間無かった場合や、変更入力操作が無い状態で車両が発進した場合などには、ステップS7においてユーザの変更入力が無いと判断され、処理はステップS9に進む。
ステップS9では、走行モード・区間分割の確定処理と、および確定した走行モード・区間分割の情報を内蔵するハードディスクやメモリなどに退避させる保存処理が行なわれる。
ステップS9の次はステップS10においてこのフローチャートの処理は一旦終了する。」(第9ページ第27ないし47行)

(2)上記(1)及び図面から分かること
f)上記(1)a)から、車両は、内燃機関とモータとを走行に併用するハイブリッド車両であり、内燃機関の運転が許可されるHV走行モード、または、内燃機関を停止させてモータを用いて走行するEV走行モードのいずれかを選択することにより前記車両の駆動を制御することが分かる。

g)上記(1)d)及びe)並びに図2及び図4の記載から、ハイブリッド車両は、操作者が表示部48のタッチディスプレイを操作して指示を行うナビゲーション制御部64を有するハイブリッド制御部62を備えることが分かる。

h)上記(1)e)から、操作者のタッチディスプレイにおける指示によって、指示に対応する区間においてEV走行モードによりハイブリッド車両が駆動されることを設定することを含むことが分かる。

(3)引用発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「内燃機関の運転が許可されるHV走行モードによって、または、内燃機関を停止させてモータを用いて走行するEV走行モードによって駆動されうるハイブリッド車両の駆動を制御する方法であって、ハイブリッド車両は、操作者が表示部48のタッチディスプレイを操作して指示を行うナビゲーション制御部64を有するハイブリッド制御部62を備え、方法は、操作者のタッチディスプレイにおける指示により、指示に対応する区間においてEV走行モードにより駆動されることを設定することを含む、方法。」

[3]本願発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「内燃機関の運転が許可されるHV走行モードによって」は、HV走行モードが、少なくとも内燃機関が運転される状態による走行を含むから、本願発明における「内燃機関によって」に相当し、引用発明における「内燃機関を停止させてモータを用いて走行するEV走行モードによって」は、ハイブリッド車両において、内燃機関を停止させ、モータのみを用いて走行する際に、モータには、あらかじめバッテリに蓄えられている電力を供給することは明らかであるから、本願発明における「蓄えられた電気エネルギーのストックを介して電力供給が可能な電気駆動部によって」に相当する。
そして、引用発明における「ハイブリッド車両」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明における「ハイブリッドの車両」あるいは「車両」に相当し、以下同様に、「操作者が表示部48のタッチディスプレイを操作して指示を行うナビゲーション制御部64」は「ユーザインターフェース」に、「ハイブリッド制御部62」は「駆動制御部」に、「操作者」は「ユーザ」に、「タッチディスプレイにおける指示」は「ユーザインターフェースの利用」に、「指示に対応する」「区間」は「所定の」「区間」に、「区間において」は「区間の間」に、「EV走行モードにより駆動され」は「優先的に電気駆動部のみによって駆動され」にそれぞれ相当する。

したがって、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「内燃機関によって、又は、蓄えられた電気エネルギーのストックを介して電力供給が可能な電気駆動部によって駆動されうるハイブリッドの車両の駆動を制御する方法であって、車両は、ユーザインタフェースを有する駆動制御部を備え、方法は、ユーザのユーザインタフェースの利用により、車両が所定の区間の間優先的に電気駆動部のみによって駆動されることを設定することを含む、方法。」

[相違点]
「ユーザのユーザインタフェースの利用により、車両が所定の区間の間優先的に電気駆動部のみによって駆動されることを設定することを含む」ことに関し、本願発明においては、「走行の終了時にバッテリが満充電されていることが望まれる場合は、内燃機関によって前記区間の間駆動されることを設定する」のに対して、引用発明においては、「走行の終了時にバッテリが満充電されていることが望まれる場合は、内燃機関によって前記区間の間駆動されることを設定する」という構成を有するか否か不明である点。(以下、「相違点」という。)

以下、相違点について検討する。

[相違点について]
ハイブリッドの車両の技術分野において、目的地に到着したときに、バッテリが目的地において必要となる電力量などに応じた程度に充電されることが望まれる場合に、内燃機関の運転によりバッテリを充電することを優先するモードを、目的地到着前の区間などにおいて実行することをユーザインターフェースにより設定可能とすることは、例えば、特開2004-236472号公報(段落【0063】ないし【0075】の記載並びに図5及び図6の記載等参照。)及び、特開2007-62640号公報(段落【0127】ないし【0137】の記載及び図11ないし図13の記載等参照)によれば周知の技術(以下、「周知技術」という。)と認められる。
そして、ハイブリッドの車両において、目的地において必要となる電力量に応じた、バッテリが充電される程度を「満充電」とすることも、例えば、特開2012-125059号公報(段落【0052】ないし【0061】の記載、「満充電」に関しては、特に【0061】の記載を参照。)にみられるように、一つの設計例(以下、「設計例」という。)にすぎない。
したがって、引用発明において、ハイブリッド車両の技術分野における上記周知技術を適用して、目的地に到着したときに、バッテリが目的地において必要となる電力量などに応じた程度に充電されることが望まれる場合に、内燃機関の運転によりバッテリを充電することを優先するモードを目的地到着前などの区間において実行することをユーザインターフェースにより設定可能とし、その際、上記設計例のように、目的地に到着したときのバッテリが充電される程度を満充電とすることにより、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得たことである。

そして、本願発明は、引用発明、周知技術及び設計例から予測される以上の格別な効果を奏するものではない。

第3 むすび
したがって、本願発明は、引用発明、周知技術及び設計例に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないので、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-01 
結審通知日 2017-06-06 
審決日 2017-06-19 
出願番号 特願2015-525796(P2015-525796)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山村 秀政  
特許庁審判長 伊藤 元人
特許庁審判官 松下 聡
槙原 進
発明の名称 ハイブリッド車両の駆動を制御する方法、及び、本方法に従って駆動可能な制御部を備えたハイブリッド車両  
代理人 亀谷 美明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ