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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04N |
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管理番号 | 1334102 |
審判番号 | 不服2015-22386 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-12-21 |
確定日 | 2017-11-02 |
事件の表示 | 特願2014-501490「車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法、画像評価装置、およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月 4日国際公開、WO2012/130507、平成26年 7月 3日国内公表、特表2014-515893〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、2012年2月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年3月31日、独国)を国際出願日とする出願であって、平成26年9月11日付けで拒絶理由が通知され、平成27年3月16日付けで手続補正がされたが、平成27年8月26日付けで拒絶査定がされたものである。 本件は、上記拒絶査定を不服として、平成27年12月21日付けで請求された拒絶査定不服審判であって、請求と同時に手続補正がなされ、その後、当審において、平成28年11月14日付けで拒絶理由が通知され、平成29年4月26日付けで手続補正がされたものである。 2.本願発明 (1)本願の請求項1ないし5に係る発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成29年4月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。 「【請求項1】 車両(100)のカメラ(110)によって撮影された画像を評価するための方法(600)において、 前記方法(600)が、 カメラ(110)の画像を読み取る読み取りステップ(610)と、 前記画像の切り抜き部分(310,320)内の少なくとも1つの対象物(305,315)を検知し、この際に前記切り抜き部分(310,320)が、車両周囲(115)の、前記画像よりも小さい領域を表示するようにする検知ステップ(620)と、 前記画像の前記切り抜き部分(310,320)および/または該切り抜き部分(310,320)に関する情報をドライバーアシストモジュール(140,150,160)に伝送する伝送ステップ(630)と、 前記カメラ(110)によって撮影された画像を評価するために、全画像の代わりに、画像の前記切り抜き部分(310,320)および/または画像の前記切り抜き部分(310,320)に関する情報を前記ドライバーアシストモジュール(140,150,160)内で使用する使用ステップ(640)と、 を有し、 前記読み取りステップ(610)において、読み取られる前記画像は、暗闇で撮影された画像で、且つ、少なくとも1つの自己発光する対象物と外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物とを含む画像であり、 前記検知ステップ(620)において、前記切り抜き部分として、前記少なくとも1つの自己発光する対象物を表示する第1の切り抜き部分と、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物を表示する第2の切り抜き部分と、の両方が、共通の前記画像に対する検知処理により区別して確定され、 前記伝送ステップ(630)において、共通の伝送インターフェースから、複数の前記ドライバーアシストモジュール(140,150,160)のうちの、前記少なくとも1つの自己発光する対象物の情報が必要な第1のドライバーアシストモジュールに、前記第1の切り抜き部分および/または該第1の切り抜き部分に関する情報が送信され、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物の情報が必要な第2のドライバーアシストモジュールに、前記第2の切り抜き部分および/または該第2の切り抜き部分に関する情報が送信される、 車両(100)のカメラ(110)によって撮影された画像を評価するための方法(600)。 【請求項2】 前記伝送ステップ(630)において、画像内の前記切り抜き部分(310,320)の大きさおよび/または位置を情報として伝送する、 請求項1に記載の方法(600)。 【請求項3】 前記検知ステップ(620)において、前記対象物(305,315)の種々異なる特徴を検知し、前記伝送ステップ(630)においてさらに、引き出された特徴を情報として前記ドライバーアシストモジュール(140,150,160)に伝送する、 請求項1または2に記載の方法(600)。 【請求項4】 車両(100)のカメラ(110)によって撮影された画像を評価する画像評価装置(130)において、 該画像評価装置(130)が、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法(600)のステップを実行するために構成された装置(200,210,220)を有している、 車両(100)のカメラ(110)によって撮影された画像を評価する画像評価装置(130)。 【請求項5】 請求項1から3のいずれか1項に記載の方法(600)をコンピュータに実行させるためのプログラム。」 (2)本願発明の分説 請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)を分説すると次のとおりである。 なお、請求項1に記載された括弧付きの記号は、請求項1の記載の内容を理解するために用いられるものであるから、本願発明の分説においては省略した。 また、説明のために、AないしCの記号を当審において付与した。以下、「構成A」、「構成B」などと称することとする。 「A 車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法において、 B 前記方法が、 B1 カメラの画像を読み取る読み取りステップと、 B2 前記画像の切り抜き部分内の少なくとも1つの対象物を検知し、この際に前記切り抜き部分が、車両周囲の、前記画像よりも小さい領域を表示するようにする検知ステップと、 B3 前記画像の前記切り抜き部分および/または該切り抜き部分に関する情報をドライバーアシストモジュールに伝送する伝送ステップと、 B4 前記カメラによって撮影された画像を評価するために、全画像の代わりに、画像の前記切り抜き部分および/または画像の前記切り抜き部分に関する情報を前記ドライバーアシストモジュール内で使用する使用ステップと、 を有し、 C1 前記読み取りステップにおいて、読み取られる前記画像は、暗闇で撮影された画像で、且つ、少なくとも1つの自己発光する対象物と外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物とを含む画像であり、 C2 前記検知ステップにおいて、前記切り抜き部分として、前記少なくとも1つの自己発光する対象物を表示する第1の切り抜き部分と、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物を表示する第2の切り抜き部分と、の両方が、共通の前記画像に対する検知処理により区別して確定され、 C3 前記伝送ステップにおいて、共通の伝送インターフェースから、複数の前記ドライバーアシストモジュールのうちの、前記少なくとも1つの自己発光する対象物の情報が必要な第1のドライバーアシストモジュールに、前記第1の切り抜き部分および/または該第1の切り抜き部分に関する情報が送信され、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物の情報が必要な第2のドライバーアシストモジュールに、前記第2の切り抜き部分および/または該第2の切り抜き部分に関する情報が送信される、 A 車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法。」 3.引用例1について 当審拒絶理由に引用された特開2008-54171号公報(以下「引用例1」という。)には、「車載画像処理装置」として、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。 ア「【技術分野】 【0001】 この発明は、自車に搭載したカメラにより自車前方を撮影し、その撮影画像を二値化処理して自車前方の先行車等の障害物及び車線を認識する車載画像処理装置に関し、詳しくは、その二値化処理の閾値の設定に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、安全運転支援や衝突防止支援等の運転支援によって車両の安全性の向上等を図るため、自車に自車前方を撮影するカメラ(主に単眼CCDカメラ等の単眼のビデオカメラ)を搭載し、自車走行中に前記カメラにより自車前方を連続的に撮影することが行なわれている。」 イ「【0004】 そして、従来の前記車載画像処理装置は、カメラの撮影画像はほぼ図7に示すように構成される。 【0005】 同図において、1aは自車前方を撮影するIRフィルタ有り(付き)のカメラであり、例えばIRフィルタ付きの単眼CCDカメラからなり、自車前方の白黒又はカラーの時々刻々の撮影画像をマイクロコンピュータ構成の画像処理ECU2等に出力する。 【0006】 3は画像処理ECU2の濃淡画像生成部であり、カメラ1aの時々刻々の撮影画像を取り込んでA/D変換し、前記撮影画像の例えば画素当たり8ビットの多階調の濃淡画像を生成する。4は画像処理ECU2の微分画像生成部であり、前記濃淡画像を、その縦、横方向の輝度階調変化に基づいて微分処理し、前記濃淡画像の輝度変化の微分画像を生成する。5は画像処理ECU2の微分二値画像生成部であり、装置構成を安価にするため、前記濃淡画像の前記微分画像を設定した閾値レベルで二値化し、いわゆるエッジ画像としての画素当たり1ビットの微分二値画像を生成する。 【0007】 6、7は画像処理ECU2の白線認識部、車両認識部であり、前記微分二値画像の周知の画像認識処理により障害物としての後述の先行車α、白線βそれぞれを認識する。具体的には、白線認識部6は種々提案されている周知の道路白線認識の画像認識処理のいずれかを実行し、例えば、前記微分二値画像から予め定義された道路白線の特徴部分を切り出し、この切り出しによって得られた各候補点を結ぶ線から白線βを検出したり、前記特徴部分についてのパターンマッチングから白線βを検出したりする。車両認識部7は種々提案されている周知の車両認識の画像認識処理のいずれかを実行し、例えば、前記微分二値画像の定義された注視領域(画面の一部(中央部)または画面全体)あるいは認識された白線間の注視領域について水平、垂直の画像エッジレベルの大きさや変化の車両固有の特徴(左右のランプ光像や反射板等の反射光像の特徴)から先行車αを検出したり、自車に搭載された超音波や赤外線の測距センサの自車前方の測距結果も利用したセンサフュージョンの画像認識処理により、前記測距結果から推定した車両範囲について一定輝度レベル以上の部分をクラスタリングし、その輪郭抽出等から先行車αを検出したりする。」 ウ「【0012】 そこで、夜間等の車両(先行車α)の認識を優先させるべくカメラ1aをIRカットフィルタ有りの構成とし、夜間等の暗い環境下(換言すれば露光時間を長くし、露光量を多くする必要がある環境下)において、先行車αのブレーキランプが点灯して明るさの急激な変化が生じて多量のIRが発生したときにも、IRカットフィルタによってカメラ1aの露光オーバーを防止して撮影画像の輝度飽和が生じないようにしている。」 エ「【0014】 すなわち、図8、図9の比較からも明らかなように、IRカットフィルタ有りの場合は、先行車αのストップランプが大光量で点灯しても余分なIRはカットされ、撮影画像Paの輝度飽和は生じない。反面、自らは発光しない前記白線βは撮影画像Paにおいて暗くなる傾向にある。一方、IRカットフィルタ無しの場合は、先行車αのストップランプが大光量で点灯すると、この点灯に伴って発生したIRの大光量がカットされずにそのまま前記カメラで撮影され、撮影画像Paの大半部分が輝度飽和状態になる。」 オ「【0017】 そこで、従来は夜間等にもIRによる画像飽和が生じないようにして自車前方の車両(先行車α)や白線βの認識を可能にするため、カメラ1aにIRフィルタ有りのものが用いられる。」 カ「【0064】 そして、白線認識部6、車両認識部7の認識結果は、運転支援の種々の処理に用いられるものであってよいのは勿論である。」 上記ア?カの記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、以下で検討する。 (ア)上記ア?オの記載は、引用例1における従来技術に関しての説明であり、それに対し、上記カの記載は、引用例1の従来技術における課題を解決した構成についての説明である。しかし、上記アの段落0002に記載されているように、従来技術においても、運転支援によって安全性の向上を図るため、カメラにより自車前方を撮影するものであるから、上記カの「白線認識部6、車両認識部7の認識結果は、運転支援の種々の処理に用いられるものであってよいのは勿論である。」は、従来技術においても同様であるといえる。 上記ア、カの記載から、引用例1には、自車に搭載したカメラにより撮影された撮影画像から先行車及び白線を認識し、運転支援の処理に用いる方法が記載されているといえる。 (イ)上記イの段落0005、0006の記載から、引用例1の方法は、カメラの撮影画像を取り込むものである。 また、上記ウ、エの記載から、撮影画像は、夜間の暗い環境下における、ストップランプが点灯する先行車と自らは発光しない白線を含む画像である。 すなわち、引用例1の方法により取り込まれた撮影画像は、夜間において、ストップランプが点灯する先行車と自らは発光しない白線を含む画像である。 (ウ)上記イの段落0006、0007、オの記載から、引用例1の方法は、取り込まれた撮影画像から、周知の車両認識の画像認識処理を実行する車両認識部により、ストップランプが点灯する先行車を認識し、周知の道路白線認識の画像認識処理を実行する白線認識部により、自らは発光しない白線を認識するものである。 (エ)上記カの記載から、引用例1の方法は、認識結果を運転支援の処理に用いるものといえる。 よって、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 なお、説明のために、aないしcの記号を当審において付与した。以下、「構成a」、「構成b」などと称することとする。 「a 自車に搭載したカメラにより撮影された撮影画像から先行車及び白線を認識し、運転支援の処理に用いる方法において、 b 前記方法が、 b1 カメラの撮影画像を取り込み、 c1 取り込まれた撮影画像は、夜間の暗い環境下における、ストップランプが点灯する先行車と自らは発光しない白線を含む画像であり、 b2 取り込まれた撮影画像から、周知の車両認識の画像認識処理を実行する車両認識部により、ストップランプが点灯する先行車を認識し、周知の道路白線認識の画像認識処理を実行する白線認識部により、自らは発光しない白線を認識し、 b3 認識結果を運転支援の処理に用いる a 自車に搭載したカメラにより撮影された撮影画像から先行車及び白線を認識し、運転支援の処理に用いる方法。」 4.対比 本願発明と引用発明を対比する。 (1)本願発明の構成Aと引用発明の構成aについて 引用発明の構成aの「自車に搭載されたカメラ」は、本願発明の構成Aの「車両のカメラ」に相当する。 また、構成aの「撮影画像から先行車及び白線を認識し、運転支援の処理に用いる」とは、撮影画像を評価して、運転支援の処理に用いているといえるので、構成Aの「撮影された画像を評価する」に相当する。 したがって、引用発明の構成aは、本願発明の構成Aに相当する。 (2)本願発明の構成B1と引用発明の構成b1について 引用発明の構成b1の「カメラの撮影画像を取り込」むことは、取り込んだ撮影画像を読み取って、構成b2における「画像認識処理を実行する」ためのものであるから、引用発明は、『カメラの撮影画像を読み取る』構成を有しているといえる。 したがって、引用発明の『カメラの撮影画像を読み取る』構成は、構成B1の「カメラの画像を読み取るステップ」に相当する。 (3)本願発明の構成C1と引用発明の構成c1について 引用発明の構成c1の「撮影画像」は、「夜間の暗い環境下における」画像であるから、夜間の暗闇で撮影された画像であるといえ、構成C1の「暗闇で撮影された画像」に相当する。 さらに、構成c1の「ストップランプが点灯する先行車」は、自己発光しており、「ストップランプが点灯する先行車」と「自らは発光しない白線」は、それぞれ、構成C1の「少なくとも1つの自己発光する対象物」と「外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物」に相当する。 したがって、引用発明の構成c1は、本願発明の構成C1に相当する。 (4)本願発明の構成B2及びC2と引用発明の構成b2について 引用発明の構成b2の「ストップランプが点灯する先行車を認識し、」「自らは発光しない白線を認識」する構成において、上記(3)で検討したように、「ストップランプが点灯する先行車」と「自らは発光しない白線」は、それぞれ、構成C1の「少なくとも1つの自己発光する対象物」と「外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物」に相当するので、これらを併せたものは、構成B2の「少なくとも1つの対象物」に相当する。また、撮影画像に含まれているものであることから、引用発明の構成b2と、本願発明の構成B2とは、「前記画像」「内の少なくとも1つの対象物を検知」「する検知ステップ」を有する点で共通する。 しかしながら、検知ステップに関して、引用発明は、本願発明のように、「前記画像の切り抜き部分内の」対象物を検知するものでなく、また、「前記切り抜き部分が、車両周囲の、前記画像よりも小さい領域を表示するようにする」ものでない。 さらに、上記のとおり、引用発明は、検知ステップを有するものの、検知ステップに関して、本願発明の構成C2のような、「前記検知ステップにおいて、前記切り抜き部分として、前記少なくとも1つの自己発光する対象物を表示する第1の切り抜き部分と、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物を表示する第2の切り抜き部分と、の両方が、共通の前記画像に対する検知処理により区別して確定され」るものでない。 (5)本願発明の構成B3及びC3と引用発明の構成b3について 引用発明の構成b3において、認識結果を、運転支援の処理に用いるためには、認識結果を、運転支援処理のための機器に伝送するものといえ、構成b2と併せて考えるに、引用発明は、『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果を、運転支援処理のための機器に伝送する』ものといえる。 ここで、『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果』は、撮影画像から認識された情報であるから、撮影画像に関する情報といえ、本願発明の構成B3の「前記画像の前記切り抜き部分および/または該切り抜き部分に関する情報」とは、「前記画像に関する情報」という点で共通する。 そうすると、引用発明の『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果を、運転支援処理のための機器に伝送する』ことと、本願発明の構成B3は、「前記画像に関する情報をドライバーアシストモジュールに伝送する伝送ステップ」を有する点で共通する。 しかしながら、伝送ステップに関して、引用発明は、本願発明のように、「前記画像の前記切り抜き部分および/または該切り抜き部分に関する情報」を伝送するものでない。 さらに、上記のとおり、引用発明は、伝送ステップを有するものの、伝送ステップに関して、本願発明の構成C3のような、「前記伝送ステップにおいて、共通の伝送インターフェースから、複数の前記ドライバーアシストモジュールのうちの、前記少なくとも1つの自己発光する対象物の情報が必要な第1のドライバーアシストモジュールに、前記第1の切り抜き部分および/または該第1の切り抜き部分に関する情報が送信され、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物の情報が必要な第2のドライバーアシストモジュールに、前記第2の切り抜き部分および/または該第2の切り抜き部分に関する情報が送信される」構成を有しない。 (6)本願発明の構成B4と引用発明の構成b3について 引用発明の構成b3において、認識結果を、運転支援の処理に用いるためには、認識結果を、運転支援処理のための機器内で使用するものといえ、構成b2と併せて考えるに、引用発明は、『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果を、運転支援処理のための機器内で使用する』ものといえる。 ここで、『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果』は、撮影画像から認識された情報であるから、上記(1)で検討したように、撮影画像を評価して、運転支援の処理に用いているといえるので、引用発明の『車両認識部や白線認識部で認識された先行車や白線という認識結果を、』『運転支援処理のための機器内で使用する』ことと、本願発明の構成B4は、「前記カメラによって撮影された画像を評価するために、画像に関する情報を前記ドライバーアシストモジュール内で使用する使用ステップ」を有する点で共通する。 しかしながら、使用ステップに関して、引用発明は、本願発明のように、「全画像の代わりに、画像の前記切り抜き部分および/または画像の前記切り抜き部分に関する情報」を使用するものでない。 (7)一致点・相違点 したがって、上記(1)?(6)により、本願発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法において、 前記方法が、 カメラの画像を読み取る読み取りステップと、 前記画像内の少なくとも1つの対象物を検知する検知ステップと、 前記画像に関する情報をドライバーアシストモジュールに伝送する伝送ステップと、 前記カメラによって撮影された画像を評価するために、画像に関する情報を前記ドライバーアシストモジュール内で使用する使用ステップと、 を有し、 前記読み取りステップにおいて、読み取られる前記画像は、暗闇で撮影された画像で、且つ、少なくとも1つの自己発光する対象物と外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物とを含む画像である、 車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法。」 (相違点) <相違点1> 検知ステップに関して、本願発明は、「前記画像の切り抜き部分内の」対象物を検知し、また、「前記切り抜き部分が、車両周囲の、前記画像よりも小さい領域を表示するようにする」のに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 <相違点2> 検知ステップに関して、本願発明は、「前記検知ステップにおいて、前記切り抜き部分として、前記少なくとも1つの自己発光する対象物を表示する第1の切り抜き部分と、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物を表示する第2の切り抜き部分と、の両方が、共通の前記画像に対する検知処理により区別して確定され」るのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 <相違点3> 伝送ステップに関して、本願発明は、「画像に関する情報」として、「前記画像の前記切り抜き部分および/または該切り抜き部分に関する情報」を伝送するのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 <相違点4> 伝送ステップに関して、本願発明は、「前記伝送ステップにおいて、共通の伝送インターフェースから、複数の前記ドライバーアシストモジュールのうちの、前記少なくとも1つの自己発光する対象物の情報が必要な第1のドライバーアシストモジュールに、前記第1の切り抜き部分および/または該第1の切り抜き部分に関する情報が送信され、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物の情報が必要な第2のドライバーアシストモジュールに、前記第2の切り抜き部分および/または該第2の切り抜き部分に関する情報が送信される」のに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 <相違点5> 使用ステップに関して、本願発明は、「画像に関する情報」として、「全画像の代わりに、画像の前記切り抜き部分および/または画像の前記切り抜き部分に関する情報」を使用するのに対し、引用発明は、そのような限定がない点。 5.当審の判断 (1)引用例2について 当審拒絶理由に引用された特開2003-36494号公報(以下「引用例2」という。)には、「安全運転支援装置、及びそのプログラム」として、図面と共に次に掲げる事項が記載されている(下線は当審が付与した。)。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ドライバーが運転に集中できるように、車載カメラ等で撮影された画像から看板・標識・信号機等の対象物を検出し利用する安全運転支援装置に関する。」 イ「【0016】(実施の形態1)図1は本発明によって実現できるシステムの一構成図を示している。車101の前方を撮影するように配置された画像入力手段(車載カメラ)102から画像データが得られ、記憶手段103に記憶される。そして、CPU104で後述するように前記記憶手段103から画像データを読み出し、予め定められた検出対象を前記画像データから検出し、その検出結果をドライバーに提示できる形態に加工して、スピーカー105、表示手段106へ出力、あるいはその他の車載機器107を制御する。入力手段108はキーボードやマウスなどがあり、後述する提示パターンを編集するのに用いることができる。 【0017】以上のように構成された前記システムについて、以下その動作を述べる。画像入力手段102は車101の前方を撮影するように設置されており、得られた画像を記憶手段103に記憶する。記憶手段103には、予め検出する対象(例えば、道路交通標識、信号機、など)やCPU104で実行するプログラムも記憶されているとする。 【0018】CPU104は、プログラムを記憶手段103から読み出し実行する。図2はCPU104で行われる処理の構成図を示している。画像入力手段102から入力された画像データは記憶手段103内の画像バッファ201に格納されている。画像検出手段202は画像バッファ201に蓄積された画像データから予め定められた検出対象を検出し、その検出結果を出力する。 【0019】画像検出手段202は、一例として「局所色情報を用いた高速物体探索-アクティブ探索法」(信学論VOL.J81-DII,No.9,pp.2035-2042)を用いることが可能である。画像検出手段202から出力される検出結果は、以下に示すように検出対象の名称と検出された前記画像データ内での位置から成っている。ここで検出された位置は、検出対象を囲う外接矩形で表し、外接矩形は左上及び右下のxy座標で表すものとする。 【0020】(名称、左上x座標、左上y座標、右下x座標、右下y座標)図3に検出結果の例を示す。図3(a)は画像データ中に信号機(名称をSIGNALとする)が存在する例を示している。この時、画像検出手段202に信号機(SIGNAL)を検出するように設定してあるとすると、その検出結果は、以下のように検出対象の名称SIGNALと検出された位置の組となる。 【0021】(SIGNAL,sx0,sy0,ex0,ey0)その他の例として図3(b)のように制限速度50Km/hの道路標識(名称をLS50とする)があり、画像検出手段202にこの制限速度50Km/hの道路標識を検出するように設定してあるとすると、その検出結果は、 (LS50,sx1,sy1,ex1,ey1) となる。複数の検出対象がある場合は、これらの検出対象名と検出位置の組の集合となる。 【0022】次に、図2において、検出結果処理手段203は、予め用意された提示パターン格納テーブル204を参照することによって、前記検出結果に対応した提示パターンを選択し、前記提示パターンに記された提示手段205に指定された形式で提示内容を出力する。提示手段205は図1のスピーカー105、表示手段106及び車載機器107に対応する。 【0023】提示パターンは、以下のように検出された対象名、提示内容を出力する提示手段、出力形式、そして提示内容(複数のパラメータ)から成っている。 【0024】(対象名、提示手段、出力形式、パラメータ1、パラメータ2、...、パラメータN)このように、全ての提示手段で提示パターンを共通にするのは、ユーザーがキーボード等の入力手段108を用いて検出対象毎に好みの提示方法を容易に変更できるようにするためである。例えば、信号機を検出して表示手段に表示するのを好まない場合はスピーカーで信号機の存在を音声で知らせる等、システム構築後も自由に提示方法を変更できる。 【0025】ここで、提示手段は、スピーカー105、表示手段106、車載機器107の制御等が考えられ、提示手段205を指示するための識別名(括弧内)を用いることで指定する。以下に各提示手段の一例を示した。」 ウ「【0035】車載機器の制御を伴う提示例を示す。この例では、道路標識「踏切注意」(警戒標識)が検出されたとし、その検出結果が、(RAILROAD、100,120,200,225)であり、予め登録されている提示パターンが、 (RAILROAD、AUDIO、PAT1、PARAM1=MUTE、PARAM2=30秒、PARAM3=30(秒)) である。パラメータ1はカーオーディオの消音(MUTE)を制御することを示し、パラメータ2は消音のON/OFFの周期が30秒であることを示し、パラメータ3はその動作を30秒間継続することを示している。結果的には15秒間消音し、その後カーオーディオの音量は元に戻る。 【0036】このように「踏切」の標識が前方に検出された場合、カーオーディオを15秒間消音し、ドライバーがカーオーディオを操作することなく踏切の音をよく聞くことができるので安全運転ができるようにする。 【0037】また、車載機器の制御を伴う別の提示例を示す。この例では、道路標識「警報ならせ」が検出されたとし、その検出結果が、(HORN、100,120,200,225)であり、予め登録されている提示パターンが、 (HORN、HORN、PAT1、PARAM1=0.5(秒)、PARAM2=1(秒)) である。HORNはクラクションを制御することを示し、パラメータ1はクラクションのON/OFFの周期が0.5秒であることを示し、パラメータ3はその動作を1秒間継続することを示している。 【0038】このように「警報ならせ」の標識が前方に検出された場合、0.25秒間のクラクションを0.25秒間隔で1秒間ならす。結果としては0.25秒継続するクラクションが2回ならされ、ドライバーはカーブなどでハンドル操作が忙しいときに手を離さなくても自動的にクラクションを鳴らすことができ、運転に集中できる。」 上記ア?ウの記載、並びにこの分野における技術常識を考慮し、引用例2の記載事項について、以下に検討する。 (ア)上記アの記載から、引用例2には、車載カメラで撮影された画像から対象物を検出し利用する安全運転支援の技術が記載されているといえる。 (イ)上記イの記載から、引用例2の安全運転支援の技術は、「車載カメラから得られた画像データ、すなわち、撮影された画像から、予め定められた検出対象が検出され、複数の検出対象がある場合には、検出結果を検出対象名と検出対象を囲う外接矩形を左上及び右下のxy座標で表した検出位置の組の集合とし、検出結果に対応した提示パターンを選択し、提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」ものである。 ここで、「撮影された画像から、予め定められた検出対象を検出され」ることにおいて、検出対象は、外接矩形に囲われていることから、『撮影された画像全体のうちの外接矩形内の検出対象』であるといえる。 そして、『外接矩形は、撮影された画像より小さい領域である』ことは当然のことである。 また、「撮影された画像から、予め定められた検出対象が検出され、複数の検出対象がある場合には、検出結果を検出対象名と検出対象を囲う外接矩形を左上及び右下のxy座標で表した検出位置の組の集合とし」ていることから、引用例2の安全運転支援の技術は、複数の異なる種類の検出対象を予め定めることにより、撮影された画像から複数の異なる検出対象がそれぞれ検出されるものであり、『複数の異なる検出対象が、共通の撮影された画像から区別して検出される』ものといえる。 さらに、「検出結果に対応した提示パターンを選択し、提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」ことにおける「検出結果」は、「検出対象名と検出対象を囲う外接矩形を左上及び右下のxy座標で表した検出位置の組の集合とし」ていることから、『撮影された画像全体の情報から検出された外接矩形の情報を含む検出結果』といえる。 また、上記ウの記載から、「提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」において、例えば、道路標識「踏切注意」を検出した場合の提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)は、パラメータ1がカーオーディオの消音(MUTE)を制御すること、パラメータ2が消音のON/OFFの周期が30秒であること、パラメータ3がその動作を30秒間継続することであり、結果的に、カーオーディオを15秒間消音することであるから、「提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」ことにより、カーオーディオを15秒消音する制御が行われる。また、道路標識「警報ならせ」を検出した場合の提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)は、パラメータ1がクラクションのON/OFFの周期が0.5秒であること、パラメータ3がその動作を1秒間継続することであり、結果的に、0.25秒継続するクラクションが2回鳴らされることであるから、「提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」ことにより、クラクションを2回鳴らす制御が行われる。 すなわち、「提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)」は、『車載機器をどのように制御するかに関する情報』といえる。 したがって、「検出結果に対応した提示パターンを選択し、提示パターン内の提示内容(複数のパラメータ)を車載機器に出力する」ことは、『撮影された画像全体の情報から検出された外接矩形の情報を含む検出結果から、車載機器をどのように制御するかに関する情報を決定し、当該車載機器をどのように制御するかに関する情報を検出結果に対応する車載機器に出力する』ものといえる。 以上まとめると、引用例2には、 『撮影された画像全体のうちの外接矩形内の検出対象が検出され、 外接矩形は、撮影された画像より小さい領域であり、 複数の異なる検出対象が、共通の撮影された画像から区別して検出され、 撮影された画像全体の情報から検出された外接矩形の情報を含む検出結果から、車載機器をどのように制御するかに関する情報を決定し、当該車載機器をどのように制御するかに関する情報を検出結果に対応する車載機器に出力する、 車載カメラで撮影された画像から対象物を検出し利用する安全運転支援技術』が開示されているといえる。 (2)相違点1、2について 引用例2に開示された技術は、 『撮影された画像全体のうちの外接矩形内の検出対象が検出され、 外接矩形は、撮影された画像より小さい領域であり、 複数の異なる検出対象が、共通の撮影された画像から区別して検出され』るものであり、引用発明において、認識結果を運転支援の処理に用いる際に、引用例2の技術を適用することにより、検知ステップに関して、「前記画像の切り抜き部分内の」対象物を検知し、「前記切り抜き部分が、車両周囲の、前記画像よりも小さい領域を表示するようにする」ようにし、「前記切り抜き部分として、前記少なくとも1つの自己発光する対象物を表示する第1の切り抜き部分と、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物を表示する第2の切り抜き部分と、の両方が、共通の前記画像に対する検知処理により区別して確定され」るようにすることは、当業者は容易に想到し得るものである。 (3)相違点3?5について 引用例2に開示された技術において、『車載機器をどのように制御するかに関する情報』を、検出結果から決定し車載機器へ送るか、そのような情報を、車載機器側で決定するかについては、各機器の処理負荷に応じて、当業者が適宜決定することであることを踏まえるに、引用発明に引用例2に開示された技術を適用することにより、伝送ステップに関して、「前記画像の前記切り抜き部分および/または該切り抜き部分に関する情報」を伝送するようにし、「共通の伝送インターフェースから、複数の前記ドライバーアシストモジュールのうちの、前記少なくとも1つの自己発光する対象物の情報が必要な第1のドライバーアシストモジュールに、前記第1の切り抜き部分および/または該第1の切り抜き部分に関する情報が送信され、前記外部から光を当てられる少なくとも1つの対象物の情報が必要な第2のドライバーアシストモジュールに、前記第2の切り抜き部分および/または該第2の切り抜き部分に関する情報が送信される」ようにし、使用ステップに関して、「全画像の代わりに、画像の前記切り抜き部分および/または画像の前記切り抜き部分に関する情報」を使用するようにすることは、当業者が容易に想到し得るものである。 (4)小括 よって、相違点1?5については、格別のものではなく、本願発明に関する作用・効果も、その容易想到である構成から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に開示された技術、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に開示された技術、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-06-08 |
結審通知日 | 2017-06-12 |
審決日 | 2017-06-23 |
出願番号 | 特願2014-501490(P2014-501490) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 益戸 宏 |
特許庁審判長 |
清水 正一 |
特許庁審判官 |
渡辺 努 藤井 浩 |
発明の名称 | 車両のカメラによって撮影された画像を評価するための方法、画像評価装置、およびプログラム |
代理人 | 高橋 始 |
代理人 | 大場 玲児 |