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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1334111
審判番号 不服2016-17829  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-29 
確定日 2017-11-02 
事件の表示 特願2012-169362「樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成26年2月13日出願公開、特開2014-28880〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月31日の出願であって、平成28年2月18日付けで拒絶理由が通知され、同年6月7日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月2日付けで拒絶査定がされ、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出され、平成29年1月25日付けで前置報告がされたものである。

第2 平成28年11月29日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成28年11月29日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成28年11月29日に提出された手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)は、審判請求と同時にされた補正であり、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正により補正される前の(すなわち、平成28年6月7日に提出された手続補正書により補正された)下記(1)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載を下記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1の記載へ補正するものを含むものである。

(1)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
該無機充填材がアミノアルキルシランで表面処理されており、
該アミノアルキルシランが、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基及びアミノシクロプロピル基から選択される1種以上を含み、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、該無機充填材の含有量が65?90質量%であることを特徴とする樹脂組成物。」

(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
該無機充填材がアミノアルキルシランで表面処理されており、
該アミノアルキルシランが、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基及びアミノシクロプロピル基から選択される1種以上を含み、
該硬化剤が、下記式(2)又は下記式(3)で表されるシアネートエステル樹脂であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、該無機充填材の含有量が65?90質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

[式(2)中、nは0?20を表す。]
【化2】

」(下線は補正箇所を示すものである。)

2.本件補正の適否
(1)補正の目的について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1については、明細書の段落【0015】、【0021】?【0023】等の記載を根拠にして、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に「該硬化剤が、下記式(2)(注:構造式は省略)又は下記式(3)(注:構造式は省略)で表されるシアネートエステル樹脂であり、」という記載を追加するものであって、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に係る発明の発明特定事項である「硬化剤」をさらに限定するものであり、しかも、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明と本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一である。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうかについて、さらに検討する。

ア 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、平成28年11月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
該無機充填材がアミノアルキルシランで表面処理されており、
該アミノアルキルシランが、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基及びアミノシクロプロピル基から選択される1種以上を含み、
該硬化剤が、下記式(2)又は下記式(3)で表されるシアネートエステル樹脂であり、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、該無機充填材の含有量が65?90質量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【化1】

[式(2)中、nは0?20を表す。]
【化2】



イ 引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2であり、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-174082号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項(以下、それぞれ「摘示(ア)」?「摘示(ケ)」という。)が記載されている。

(ア) 「【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤と、シリカ粒子がシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分とを含有し、
硬化促進剤を含有しないか、又は前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して硬化促進剤を3.5重量部以下の含有量で含有し、
前記シリカ粒子の平均粒子径が1μm以下であり、
前記シリカ成分における前記シリカ粒子1g当たりの前記シランカップリング剤の表面処理量B(g)が、下記式(X)により算出されるシリカ粒子1g当たりの値C(g)に対して10?80%の範囲内にある、エポキシ樹脂組成物。
C(g)/シリカ粒子1g=[シリカ粒子の比表面積(m^(2)/g)/シランカップリング剤の最小被覆面積(m^(2)/g)] ・・・式(X)
【請求項2】
前記エポキシ樹脂及び前記硬化剤の合計100重量部に対して、前記シリカ成分を10?400重量部の範囲内で含有する、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤が、ビフェニル構造を有するフェノール化合物、ナフタレン構造を有するフェノール化合物、ジシクロペンタジエン構造を有するフェノール化合物、アミノトリアジン構造を有するフェノール化合物、活性エステル化合物及びシアネートエステル樹脂からなる群から選択された少なくとも1種である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。」

(イ) 「【0010】
本発明の目的は、粗化処理された硬化体の表面の表面粗さを小さくすることができ、さらに、粗化処理された硬化体の表面に金属層が形成された場合に、硬化体と金属層との接着強度を高めることができるエポキシ樹脂組成物、並びに該エポキシ樹脂組成物を用いたプリプレグ、硬化体、シート状成形体、積層板及び多層積層板を提供することにある。」

(ウ) 「【0062】
(硬化剤)
本発明に係るエポキシ樹脂組成物に含まれている硬化剤は、エポキシ樹脂を硬化させることができれば特に限定されない。硬化剤として、従来公知の硬化剤を用いることができる。
【0063】
上記硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、アミン化合物、アミン化合物から合成される化合物、ヒドラジド化合物、メラミン化合物、酸無水物、フェノール化合物、活性エステル化合物、ベンゾオキサジン化合物、マレイミド化合物、熱潜在性カチオン重合触媒、光潜在性カチオン重合開始剤又はシアネートエステル樹脂等が挙げられる。これらの硬化剤の誘導体を用いてもよい。硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、硬化剤とともに、アセチルアセトン鉄等の硬化触媒を用いてもよい。」

(エ) 「【0103】
上記シアネートエステル樹脂として、例えばノボラック型シーネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂及び一部がトリアジン化されたプレポリマーなどを用いることができる。シアネートエステル樹脂の使用により、硬化体の線膨張率をより一層低くすることができる。」

(オ) 「【0154】
上記エポキシ樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部に対して、上記シリカ成分は10?400重量部の範囲内で含有されることが好ましい。上記エポキシ樹脂及び上記硬化剤の合計100重量部対して、上記シリカ成分の含有量のより好ましい下限は25重量部、さらに好ましい下限は43重量部、より好ましい上限は250重量部、さらに好ましい上限は150重量部である。上記シリカ成分の含有量が少なすぎると、粗化処理の際に、シリカ成分の脱離により形成される孔の総表面積が小さくなる。このため、粗化処理された硬化体と金属層との接着強度を充分に高めることができないことがある。上記シリカ成分の含有量が多すぎると、粗化処理された硬化体が脆くなりやすく、かつ硬化体と金属層との接着強度が低下することがある。」

(カ) 「【0198】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物では、上記シリカ粒子が上記特定の量のシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分が含有されているため、シリカ成分の分散性に優れている。従って、粗化処理された硬化体1には、シリカ成分の凝集物の脱離による大きな孔が形成され難い。よって、硬化体1の強度が局所的に低下し難く、硬化体と金属層との接着強度を高めることができる。また、硬化体1の線膨張率を低くするために、シリカ成分の含有量を多くすることができ、シリカ成分の含有量が多くても、硬化体1の表面に微細な複数の孔1bを形成できる。ただし、孔1bは、シリカ成分が数個程度、例えば2?10個程度まとまって脱離した孔であってもよい。」

(キ) 「【0232】
(シリカ成分)
シリカ粒子(平均粒子径0.3μm、比表面積18m^(2)/g)と、アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBE-903」)とをシリカ粒子1g当たりの表面処理量が下記の表1に示す値となるように配合し、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF、特級、和光純薬社製)をさらに添加し、40℃で2時間撹拌した後、2日間放置した。このようにして、シリカ粒子が、アミノシランカップリング剤により表面処理されているシリカ成分(1)?(6)の50重量%DMFスラリー(シリカ成分(1)?(6)50重量%と、DMF50重量%とを含む)を得た。
【0233】
【表1】



(ク) 「【0236】
(実施例1)
シリカ成分(2)の50重量%DMFスラリー46.45gと、DMF10.43gを混合し、完全に均一な溶液となるまで、常温で攪拌した。その後、イミダゾール(1)((四国化成工業社製、商品名「2PN-CN」)0.22gをさらに添加し、完全に均一な溶液となるまで、常温で攪拌した。
【0237】
次に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製、商品名「RE-310S」)19.24gを添加し、完全に均一な溶液となるまで常温で攪拌し、溶液を得た。得られた溶液に、ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤(明和化成社製、商品名「MEH7851-4H」)23.68gを添加し、完全に均一な溶液となるまで常温で攪拌して、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0238】
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「PET5011 550」、厚み50μm、リンテック社製)を用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが50μmとなるように、得られたエポキシ樹脂組成物を塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で12分間乾燥して、縦200mm×横200mm×厚み50μmの樹脂シートの未硬化物を作製した。次に、樹脂シートの未硬化物を170℃のギアオーブン内で1時間加熱して、樹脂シートの一次硬化物を作製した。」

(ケ) 「【0257】
【表3】



ウ 引用文献に記載された発明
引用文献には、摘示(ア)?(ケ)、特に摘示(ク)、(ケ)の実施例1の記載から、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

「ビスフェノールA型エポキシ樹脂を19.24g、ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤を23.68g、イミダゾール(1)を0.22g、シリカ成分(2)の50重量%DMFスラリーを46.45g、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を10.43g含有するエポキシ樹脂組成物。」

エ 本願補正発明と引用発明との対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」、「エポキシ樹脂組成物」は、それぞれ、本願補正発明における「エポキシ樹脂」、「樹脂組成物」に相当する。
引用発明における「ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤」は、硬化剤である点において、本願補正発明における「硬化剤」に相当する。
引用発明における「シリカ成分(2)」は、エポキシ樹脂組成物に含有される無機成分であり、本願補正発明における「無機充填材」に相当する。また、引用発明における「シリカ成分(2)」は、シリカ粒子がアミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBE-903」)により表面処理されているものであり(摘示(キ))、アミノシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBE-903」)は、本願明細書の【0095】にも記載されているように、3-アミノプロピルシランである。したがって、引用発明における「シリカ成分(2)」は、本願補正発明における「アミノプロピル基」「を含」む「アミノアルキルシラン」で表面処理されているものであるといえる。
引用発明のエポキシ樹脂組成物における不揮発成分は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤、イミダゾール(1)、DMFスラリーの50重量%を占めるシリカ成分(2)であると認められる。したがって、引用発明のエポキシ樹脂組成物において、シリカ成分(2)は23.225(=46.45×0.5)g含有され、不揮発成分は総計66.365(=19.24+23.68+0.22+23.225)g含有されるから、不揮発成分を100質量%とした場合、シリカ成分(2)の含有量は約35(=23.225÷66.365×100)質量%である。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、

「エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
該無機充填材がアミノアルキルシランで表面処理されており、
該アミノアルキルシランが、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基及びアミノシクロプロピル基から選択される1種以上を含む、樹脂組成物。」

の点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願補正発明においては、硬化剤が「下記式(2)(注:構造式は省略)又は下記式(3)(注:構造式は省略)で表されるシアネートエステル樹脂」であるのに対して、引用発明においては、硬化剤が「ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤」である点。

<相違点2>
本願補正発明においては、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、無機充填材の含有量が「65?90質量%」であるのに対して、引用発明においては、本願補正発明の無機充填材に相当するシリカ成分(2)の含有量が約35質量%である点。

まず、相違点1について検討する。引用文献には、「ノボラック型シーネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂及び一部がトリアジン化されたプレポリマー」等のシアネートエステル樹脂を硬化剤として用いることも記載されている(摘示(ウ)、(エ))。そして、例えば特開2011-256300号公報(原審の前置報告書において提示された引用文献6)に、
・下式(1)で表されるフェノールノボラック型多官能シアネートエステル系硬化剤(ロンザジャパン(株)製、PT30、シアネート当量124)

[式(1)中、nは平均値として任意の数(好ましくは0?20)を示す。]
・下式(2)で表されるビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー(ロンザジャパン(株)製、BA230、シアネート当量232)

という市販の硬化剤をエポキシ樹脂組成物に用いることが記載され(【0008】、【0011】?【0013】参照。上記式(1)で表される硬化剤は、本願補正発明における、式(2)(注:構造式は省略)で表されるシアネートエステル樹脂である硬化剤に相当し、上記式(2)で表されるプレポリマーによる硬化剤は、本願補正発明における、式(3)(注:構造式は省略)で表されるシアネートエステル樹脂である硬化剤に相当する。)、例えば特開2012-140570号公報(原審の前置報告書において提示された引用文献4。【0038】、【0039】、【0043】参照。)、特開2012-36349号公報(原審の前置報告書において提示された引用文献5。【0039】、【0052】、【0053】、【0056】参照。)にも、それらの市販の硬化剤をエポキシ樹脂組成物に用いることが記載されているように、上記式(1)で表される硬化剤、上記式(2)で表されるプレポリマーによる硬化剤をエポキシ樹脂組成物に用いることは、本願の出願前における当業者に周知の技術である。
そうすると、引用発明において、ビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤の代わりに、硬化剤として引用文献に記載された「ノボラック型シーネートエステル樹脂、ビスフェノール型シアネートエステル樹脂及び一部がトリアジン化されたプレポリマー」を用い、その具体的なシアネートエステル樹脂として前述の周知の硬化剤を用いて上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、粗化処理された硬化物の表面粗さが小さくなるという効果は、当業者が予測し得るものである(特開2012-140570号公報の【0040】、特開2012-36349号公報の【0063】参照。)。

次に、相違点2について検討する。引用文献には、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100重量部に対して、シリカ成分は10?400重量部の範囲内で含有されることが好ましいことが記載されている(摘示(オ))。このことを引用発明で検討すると、引用発明においてはビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビフェニル構造を有するフェノール系硬化剤の合計は42.92(=19.24+23.68)gであるから、シリカ成分(2)は4.292?171.68gの範囲内で含有されることが好ましいことになる。引用発明においては、シリカ成分(2)以外の不揮発成分は総計43.14(=19.24+23.68+0.22)gであるから、シリカ成分(2)の質量が4.292g、171.68gである場合、不揮発成分100質量%に対するシリカ成分(2)の含有量は、シリカ成分(2)の質量÷(シリカ成分(2)の質量+43.14)×100より、それぞれ約9.0質量%、約80質量%である。したがって、引用発明においては、不揮発成分100質量%に対して、シリカ成分(2)の含有量は約9.0?約80質量%であることが好ましいことになる。
引用発明における、上記「約9.0?約80質量%」という好ましいシリカ成分(2)の含有量は、本願補正発明における、「65?90質量%」という無機充填材の含有量と重複するものである。また、引用文献には、エポキシ樹脂組成物の硬化体の線膨張率を低くするために、シリカ成分の含有量を多くすることができることが記載されている(摘示(カ))。そうすると、引用発明において、エポキシ樹脂組成物の硬化体の線膨張率を低くするために、シリカ成分(2)の含有量を約9.0?約80質量%という好ましい範囲内でより多くして上記相違点2に係る本願補正発明と重複一致する発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

よって、本願補正発明は、引用発明、すなわち引用文献に記載された発明及び上記周知の技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

オ まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について
1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし20に係る発明は、平成28年6月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
エポキシ樹脂、硬化剤及び無機充填材を含有する樹脂組成物であって、
該無機充填材がアミノアルキルシランで表面処理されており、
該アミノアルキルシランが、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アミノイソプロピル基及びアミノシクロプロピル基から選択される1種以上を含み、
樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、該無機充填材の含有量が65?90質量%であることを特徴とする樹脂組成物。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、
「2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

・理由 1(2)、2(2)
・請求項 1-8、10-20
・引用文献 2

<引用文献等一覧>
2.特開2011-174082号公報」
というものを含むものである。

3.当審の判断
(1)引用文献の記載事項等
原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2の記載事項及び引用発明は、上記第2 2.(2)イ、ウのとおりである。

(2)本願発明と引用発明との対比・判断
上記第2 2.(1)で検討したように、本願補正発明は本願発明の発明特定事項に限定を加えたものである。そして、上記第2 2.(2)で検討したとおり、本願発明を減縮したものである本願補正発明が、引用発明、すなわち引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、減縮前の本願発明も、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち平成28年6月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-01 
結審通知日 2017-09-05 
審決日 2017-09-19 
出願番号 特願2012-169362(P2012-169362)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
P 1 8・ 575- Z (C08L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀谷 のぞみ  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 小柳 健悟
西山 義之
発明の名称 樹脂組成物  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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