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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1334196
審判番号 不服2016-11748  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-04 
確定日 2017-11-08 
事件の表示 特願2012- 5504「情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピューター・プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月25日出願公開、特開2013-145463〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年1月13日の出願であって、平成27年10月14日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日付けで手続補正がされ、平成28年4月28日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月4日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。

一方、当審において、平成29年2月23日付けで拒絶理由を通知し、応答期間内である同年5月17日に意見書及び手続補正書が提出された。


第2 本願発明
本願の請求項1-7に係る発明は、平成29年5月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
表示部と、
前記表示部の画面に表示すべき画像を取得する画像取得部と、
前記表示部と一体で且つ前記画面の近傍に配設され、前記画面に表示される前記画像取得部が取得した取得画像を視聴しているユーザーを撮影するカメラ部と、
前記カメラ部が撮影したユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に並列又は重畳して表示する並列・重畳パターンを取得する並列・重畳パターン取得部と、
前記並列・重畳パターンに対応するように、前記ユーザー画像又は前記取得画像の少なくとも一方を画像加工する演算部と、
を具備し、
前記演算部は、前記並列・重畳パターンに基づいて前記ユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に表示したときに前記ユーザー画像に含まれている顔又は身体の位置、向き及び大きさが前記取得画像と揃うように、少なくとも一方の画像を加工する、
情報処理装置。」


第3 引用文献及び引用発明
1.引用文献1について
当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2009-279041号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【背景技術】
【0002】
従来、光源が発する光を変調する光変調素子と、光変調素子から出射される光を投写面(スクリーン)上に投写する投写レンズとを有する投写型映像表示装置が知られている。
【0003】
ここで、スクリーン上に映像を大きく表示するためには、投写レンズとスクリーンとの距離を長くとる必要がある。これに対して、投写レンズから出射される光をスクリーン側に反射する反射ミラーを利用して、投写型映像表示装置とスクリーンとの距離の短縮を図った投写型表示システムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここで、投写型映像表示装置とスクリーンとの距離の短縮を図ると、投写型映像表示装置がスクリーンに近くなり、投写型映像表示装置がユーザの視野に入ることになるため、スクリーンの上下又は横から斜め投写を行う必要がある。例えば、上述した投写型表示システムでは、光変調素子と投写光学系との位置関係を上下方向にシフトするとともに、反射ミラーとして凹面ミラーを用いることにより、投写距離の短縮と斜め投写を行っている。
【特許文献1】特開2006-235516号公報(請求項1、図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、投写距離の短縮を図った投写型映像表示装置の設置方法及び投写方法としては、投写型映像表示装置を床面や机上に設置して、その床面や机上に投写する方法など、新たな設置/投写方法が考えられる。一方で、新たな設置/投写方法をどのような場面で活用できるかについては、あまり考慮されていない。
【0006】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、投写型映像表示装置と投写面との距離の短縮を図った投写型映像表示装置を用いて、投写映像とユーザとを組み合わせた新たな活用方法を実現する投写型映像表示装置を提供することを目的とする。」(段落【0002】-【0006】)

(2)「【0016】
[第1実施形態]
(投写型映像表示装置の構成)
以下において、第1実施形態に係る投写型映像表示装置の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100の構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、投写型映像表示装置100は、映像光生成部200と投写光学系300とを収容する筐体400を有する。第1実施形態では、筐体400の一部は、防護カバー400aを構成する。また、投写型映像表示装置100は、撮像装置500を有する。なお、第1実施形態では、投写型映像表示装置100は、投写面210を構成する壁面又は天井に設置されている。
【0018】
映像光生成部200は、映像光を生成する。具体的には、映像光生成部200は、映像光を出射する表示素子40を少なくとも有する。表示素子40は、投写光学系300の光軸Lに対してシフトした位置に設けられている。表示素子40が光軸Lからシフトした位置に設けられることによって映像光の斜め投写が実現される。表示素子40は、例えば、反射型液晶パネル、透過型液晶パネル、DMD(Digital Micromirror Device)などである。映像光生成部200の詳細については後述する(図2を参照)。
【0019】
投写光学系300は、映像光生成部200から出射された映像光を投写する。ここで、投写光学系300は、投写面210上に映像光を投写する。具体的には、投写光学系300は、投写レンズ310と、反射ミラー320とを有する。
【0020】
投写レンズ310は、映像光生成部200から出射された映像光を反射ミラー320側に出射する。
【0021】
反射ミラー320は、投写レンズ310から出射された映像光を反射する。反射ミラー320は、映像光を集光した上で、映像光を広角化する。例えば、反射ミラー320は、映像光生成部200側に凹面を有する非球面ミラーである。
【0022】
防護カバー400aは、反射ミラー320を保護するカバーである。防護カバー400aは、少なくとも、反射ミラー320で反射された映像光の光路上に設けられている。防護カバー400aは、映像光を透過する透過領域410を有する。
【0023】
このように、投写光学系300は、透過領域410を透過した映像光を投写面210上に投写する。
【0024】
撮像装置500は、投写面210に対向するユーザXを撮像する装置である。第1実施形態では、撮像装置500は、斜め上方からユーザXを撮像する。ユーザXは、例えば、投写面210上に表示された映像を見ながら、ダンスの振り付け、武道の型などの動作練習を行う。」(段落【0016】-【0024】。下線は当審において付した。以下、同様。)

(3)「【0041】
(投写型映像表示装置の機能)
以下において、第1実施形態に係る投写型映像表示装置の機能について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100に設けられた制御ユニット250を示すブロック図である。制御ユニット250は、映像光生成部200に設けられる。
【0042】
図3に示すように、制御ユニット250は、サイズ取得部251と、第1取得部252と、第2取得部253と、映像制御部254とを有する。
【0043】
サイズ取得部251は、キーボードなどの入力IF600からユーザXのサイズを取得する。ユーザXのサイズは、例えば、ユーザXの体型(身長や体重)を含む。
【0044】
第1取得部252は、撮像装置500から撮像データを取得する。撮像データは、撮像装置500によって撮像された撮像映像を表示するための映像データである。撮像映像は、ダンスの振り付け、武道の型などの動作練習におけるユーザXの動作を含む。
【0045】
第2取得部253は、DVD再生装置などの外部機器700から見本データを取得する。見本データは、見本映像を表示するための映像データである。見本映像は、ダンスの振り付け、武道の型などのインストラクターの模範動作を含む。
【0046】
なお、第2取得部253は、外部機器ではなくて、ハードディスク装置から見本データを取得してもよい。また、第2取得部253は、LANなどのネットワークから見本データを取得してもよい。
【0047】
映像制御部254は、投写面210上に表示される映像を制御する。すなわち、映像制御部254は、表示素子40(液晶パネル40R、液晶パネル40G、液晶パネル40B)を制御する。
【0048】
具体的には、映像制御部254は、投写面210上において、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させる。具体的には、映像制御部254は、ユーザXの動作(撮像映像)を模範動作(見本映像)に重畳させる。
【0049】
ここで、映像制御部254は、サイズ取得部251によって取得されたユーザXのサイズに基づいて、撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃えることが好ましい。具体的には、映像制御部254は、ユーザXの体型とインストラクターの体型とを揃える。なお、インストラクターの体型は既知であることに留意すべきである。
【0050】
また、映像制御部254は、ユーザXの頭頂部をインストラクターの頭頂部に揃えて、撮像映像を見本映像に重畳させることが好ましい。
【0051】
なお、映像制御部254は、ユーザXの動作(撮像映像)及び模範動作(見本映像)を重畳せずに、撮像映像と見本映像とを並べて表示してもよい。重畳表示及び2画面表示の切り替えはユーザXが任意に行うことが可能である。
【0052】
なお、重畳表示は、撮像映像を見本映像に重畳する表示である。2画面表示は、撮像映像と見本映像とを並べた表示である。
【0053】
(映像の表示例)
以下において、第1実施形態に係る映像の表示例について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態に係る映像の表示例を示す図である。
【0054】
図4に示すように、投写面210上には、撮像映像が見本映像に重畳された映像が表示される。また、撮像映像(ユーザXのサイズ)と見本映像(インストラクターのサイズ)とが揃っている。
【0055】
(投写型映像表示装置の動作)
以下において、第1実施形態に係る投写型映像表示装置の動作について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態に係る投写型映像表示装置100の動作を示すフロー図である。
【0056】
図5に示すように、ステップ10において、投写型映像表示装置100は、第2取得部253によって見本データを取得し、その後、ユーザXが一連の動作を行って第1取得部252によって撮像データを取得する。また、ユーザXが動作を行う際に、見本データによって構成される見本映像が投写され、ユーザXが見本映像を参考にしてもよい。
【0057】
ステップ20において、投写型映像表示装置100は、サイズ取得部251によってユーザXのサイズを取得する。
【0058】
ステップ30において、投写型映像表示装置100は、ユーザXのサイズに基づいて、ユーザXの体型とインストラクターの体型とを揃える。
【0059】
ステップ40において、投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されているか否かを判定する。投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されている場合には、ステップ50の処理に移る。投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されていない場合には、ステップ60の処理に移る。上述したように、重畳表示及び2画面表示は、ユーザによって任意に選択される。
【0060】
ステップ50において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させて、撮像映像及び見本映像を表示する。例えば、投写型映像表示装置100は、ユーザXの頭頂部をインストラクターの頭頂部に揃えて、撮像映像を見本映像に重畳させる。
【0061】
ステップ60において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像及び見本データによって構成される見本映像を並べて表示する。
【0062】
ステップ70において、投写型映像表示装置100は、撮像映像の表示を継続するか否かを判定する。撮像映像の表示は、ユーザXの指示によって終了してもよく、インストラクターの模範動作が終了した時点で終了してもよい。投写型映像表示装置100は、撮像映像の表示を継続する場合には、ステップ40の処理に戻る。投写型映像表示装置100は、撮像映像の表示を継続しない場合には、一連の処理を終了する。
【0063】
なお、撮像映像の表示が継続されている場合には、投写型映像表示装置100は、撮像データを継続的に取得することに留意すべきである。
【0064】
撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃えないケースでは、ステップ20及びステップ30の処理を省略可能であることは勿論である。
【0065】
(作用及び効果)
第1実施形態では、映像制御部254は、投写面210上において、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させる。従って、ユーザXの動作がインストラクターの模範動作から乖離しているか否かについて、ユーザXが容易に把握することができる。
【0066】
映像制御部254は、サイズ取得部251によって取得されたユーザXのサイズに基づいて、撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃える。従って、ユーザXの動作がインストラクターの模範動作から乖離している度合いついて、ユーザXが容易に把握することができ、自分のフォームを確認することができる。」(段落【0041】-【0066】)

(4)「【0067】
[第2実施形態]
以下において、第2実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下においては、第1実施形態と第2実施形態との相違点について主として説明する。
【0068】
第1実施形態では、サイズ取得部251は、キーボードなどの入力IF600からユーザXのサイズを取得する。一方で、第2実施形態では、サイズ取得部251は、第1取得部252によって撮像装置500から取得される撮像データに基づいて、ユーザXのサイズを取得する。なお、第2実施形態に係る制御ユニット250Aでは、図6に示すように、サイズ取得部251は、第1取得部252に接続されている。
【0069】
具体的には、図7に示すように、撮像装置500は、両手及び両足を開いた状態のユーザXを撮像する。サイズ取得部251は、撮像データに基づいて、頭頂部、両手先、両足先、股部などの特徴点を特定する。サイズ取得部251は、ユーザXの手の長さ、ユーザXの足の長さ、ユーザXの身長などを取得する。
【0070】
なお、特徴点は、頭頂部、両手先及び両足先などに限定されるものではない。特徴点は、肘や膝などの関節、胸部、腹部や腰部などのユーザXの外形を特定する部位を含んでもよい。なお、特徴点は、ユーザXによって任意に選択されてもよい。
【0071】
上述したように、映像制御部254は、ユーザXの体型とインストラクターの体型とを揃える。図8に示すように、映像制御部254は、ユーザXの体型をインストラクターの体型に揃えてもよく、インストラクターの体型をユーザXの体型に揃えてもよい。
【0072】
例えば、映像制御部254は、ユーザXの特徴点とインストラクターの特徴点とが重なるように、ユーザXの体型(画像)を拡大又は縮小して、ユーザXの体型をインストラクターの体型に揃える。または、映像制御部254は、ユーザXの特徴点とインストラクターの特徴点とが重なるように、インストラクターの体型(画像)を拡大又は縮小して、インストラクターの体型をユーザXの体型に揃える。
【0073】
(作用及び効果)
第2実施形態によれば、サイズ取得部251は、撮像データに基づいて、ユーザXのサイズを取得する。従って、ユーザXが自身のサイズを入力する手間が省ける。
【0074】
また、特徴点の数を増やすことによって、ユーザXの体型を特定する精度が向上し、ユーザXの体型とインストラクターの体型とを揃える精度が向上する。」(段落【0067】-【0074】)

(5)「【0097】
上述した実施形態では特に触れていないが、映像制御部254は、撮像装置500の傾きに基づいて、撮像映像の視点を見本映像の視点に揃えることが好ましい。すなわち、映像制御部254は、台形補正機能を有していることが好ましい。」(段落【0097】)

また、引用文献1の図1を参照すると、撮像装置500は、筐体400の投写面210とは反対の側に設けられているといえる。

以上を総合すると、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「映像光生成部200と投写光学系300とを収容する筐体400と、撮像装置500とを有し、投写面210を構成する壁面又は天井に設置されている投写型映像表示装置100であって、
前記投写光学系300は、映像光生成部200から出射された映像光を投写するものであって、投写面210上に映像光を投写し、
前記映像光生成部200に設けられた制御ユニット250は、サイズ取得部251と、第1取得部252と、第2取得部253と、映像制御部254とを有し、
前記第1取得部252は、筐体400の投写面210とは反対の側に設けられ、例えば、投写面210上に表示された映像を見ながら、ダンスの振り付け、武道の型などの動作練習を行うユーザXを斜め上方から撮像する前記撮像装置500から撮像データを取得し、
前記第2取得部253は、ダンスの振り付け、武道の型などのインストラクターの模範動作を含む見本映像を表示するための映像データである見本データをDVD再生装置などの外部機器700から取得し、
映像制御部254は、サイズ取得部251によって取得されたユーザXのサイズに基づいて撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃え、また、ユーザXの頭頂部をインストラクターの頭頂部に揃えて、ユーザXの動作(撮像映像)を模範動作(見本映像)に重畳させ、
映像制御部254は、ユーザXの動作(撮像映像)及び模範動作(見本映像)を重畳せずに、撮像映像と見本映像とを並べて表示してもよく、重畳表示及び2画面表示の切り替えはユーザXが任意に行うことが可能であり、
投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されているか否かを判定し、重畳表示が選択されている場合には、ステップ50の処理に移り、投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されていない場合には、ステップ60の処理に移り、
ステップ50において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させて、撮像映像及び見本映像を表示し、
ステップ60において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像及び見本データによって構成される見本映像を並べて表示する、
投写型映像表示装置100。」

2.引用文献2について
当審において通知した拒絶の理由に引用された特開平08-280863号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0013】図1は本発明の一実施例の構成を示す図である。本実施例の動作表示装置は、練習者2の動作の映像入力・編集・選択・記録等を行う動作映像処理装置3と、その動作映像処理装置3から出力された映像を表示する映像表示装置4から構成される。
【0014】図2に本実施例における動作映像処理装置3の構成を示す。動作映像処理装置3は、練習者の動作あるいはマスター映像等を入力する映像入力装置31、入力された動作映像などをデータ処理する映像処理装置32、表示する内容を選択する選択装置33、入力動作映像、あるいは入力動作映像をデータ処理したもの、などを記録する動作記録装置33から成り立つ。または、それらの任意の組み合わせでもよい。
【0015】図3にオートテニス練習施設における本実施例の装置配置例を示す。この練習施設1は、少なくとも、両側面が壁面で仕切られており、前方には一面に映像表示装置4を構成している投影型スクリーン42が配置されている。この映像表示装置4を構成する投影型表示装置41は、その投影型スクリーン42に背面から投影表示を行う。この投影型スクリーン42の前面にはネットや透明板から成るスクリーン保護装置12が配置され、その中央寄りのやや下方にはボール自動投射装置11が設置され、その上方には練習者2の動作を正面から撮影する第1の入力用カメラ31が設置されている。また左右の壁面上方には、練習者2の動作を左右の側面から撮影するための第2の入力用カメラ31、第3の入力用カメラ31が設置されている。また、動作映像処理装置3は、練習施設1の練習者2の邪魔にならない空間の隅等に配置されている。このように、本発明の動作表示装置は、練習施設1内に設置されるものであるが、練習者2が練習を実施するための基本的な練習装置(例えばオートテニスの自動投球装置11)とは独立である。
【0016】以上のように構成した実施例の動作および作用を述べる。図4は本実施例での処理の流れを表わす図である。
【0017】映像入力装置31は、例えばテレビカメラ入力装置などを使用し、天井、壁、床、その他設置可能な場所に1台あるいは複数台設置する。また、マスター映像を入力する場合は、ビデオテープなどの記録媒体からの入力でもよい。また、ネットワークを介して、コンピュータ・サーバーなどからダウンロードした映像データでもよい。
【0018】映像入力装置31から入力された動作映像等は、映像処理装置32において映像の処理を行う。その際の、映像処理装置32の処理機能手段としては、動作映像にマスター映像を重畳させて表示する処理機能手段と、映像の背景を除去する処理機能手段と、映像の全体または部分を拡大または縮小する処理機能手段と、映像の特徴量をCG(コンピュータ グラフィックス)を用いて表示する処理機能手段と、映像を上下反転または左右反転する処理機能手段と、映像の色あるいは表示速度を変化させる処理機能手段というようなものがあり、映像処理装置32は、これらの処理機能手段を単独で用いた構成、もしくは任意に組み合わせた構成により、入力された映像の処理を行う。また、映像処理装置32を複数台並べてこれらの処理を同時に並列処理して実施してもよい。
【0019】動作記録装置34は、入力された映像、あるいは映像処理装置32で処理された映像の記録に用いられる。記録媒体は、民生用または業務用のビデオでもよいし、コンピュータ用データ記録装置でもよい。
【0020】選択装置33は、映像処理装置32で処理された映像のうち、どの映像を表示させるか、あるいは記録するかを練習者自信あるいは第三者によって選択する装置である。練習開始前にあらかじめ選択しておいてもよいし、練習中に適宜変更してもよい。また、表示と記録を同時に行ってもよい。
【0021】映像表示装置4は、選択装置33で選択された映像を表示するもので、映像処理装置33において、再生する速度を変化させる場合は、再生する速度を調整する機能を備えているものとする。映像表示装置4は、例えばテレビジョンにおけるブラウン管を用いたものでもよいし、図3に示すような投影型表示装置41から投影型スクリーン42に投影表示するものでもよいし、大型のCRT型あるいは液晶あるいはその他のディスプレイ装置でもよい。また、複数の表示装置によって各種の映像を表示してもよい。また、投影型スクリーン42などの大型表示装置と、身近な所に通常のテレビジョン装置を併設するなど、任意に組み合わせてもよい。」(段落【0013】-【0021】)

また、上記【0015】の「投影型スクリーン42の…(中略)…上方には練習者2の動作を正面から撮影する第1の入力用カメラ31が設置されている。」との記載及び図1から、第1の入力用カメラ31は、投影型スクリーン42を視聴している練習者2を撮影しているといえる。

以上を総合すると、上記引用文献2には、
「練習者2の動作の映像入力・編集・選択・記録等を行う動作映像処理装置3と、その動作映像処理装置3から出力された映像を表示する映像表示装置4から構成される動作表示装置であって、
前記動作映像処理装置3は、練習者の動作あるいはマスター映像等を入力する映像入力装置31、入力された動作映像などをデータ処理する映像処理装置32、表示する内容を選択する選択装置33を含み、
前記映像表示装置4を構成する投影型表示装置41は、その投影型スクリーン42に背面から投影表示を行い、この投影型スクリーン42の上方には投影型スクリーン42を視聴している練習者2の動作を正面から撮影する第1の入力用カメラ31が配置されており、
前記映像入力装置31は、例えばテレビカメラ入力装置などを使用し、マスター映像を入力する場合は、ビデオテープなどの記録媒体からの入力でもよく、
前記映像入力装置31から入力された動作映像等は、映像処理装置32において映像の処理を行う。その際の、映像処理装置32の処理機能手段としては、動作映像にマスター映像を重畳させて表示する処理機能手段と、映像を左右反転する処理機能手段というようなものがあり、映像処理装置32は、これらの処理機能手段を単独で用いた構成、もしくは任意に組み合わせた構成により、入力された映像の処理を行う、
動作表示装置。」(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されている。

3.引用文献3について
当審において通知した拒絶の理由に引用された特開2008-058364号公報(以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0019】
以下、本発明を実施する場合の形態について、具体的に図面を参照して説明する。図1は、学習者を撮影するカメラ、学習者に映像を呈示するモニタの設置方法を説明する図であり、図2は、教師を撮影するカメラ、教師に映像を呈示するモニタの設置方法を説明する図である。図1に示す図は、学習者のトレーニングルームにおける機器の配置構成を示しており、また、図2に示す図は、学習者を訓練する教師のトレーニングルームの機器の構成を示している。これらの図から明らかなように、本発明の手術用トレーニング装置においては、学習者用トレーニングルームおよび教師用トレーニングルームは、共に同じ機器の構成で同じ配置の構成となっている。
【0020】
図1において、10は学習者用システム、1は学習者用模型、2は学習者内視鏡画像呈示モニタ、3は教師内視鏡画像呈示モニタ、4は内視鏡担持部画像呈示モニタ、5は全身画像呈示モニタ、12は内視鏡カメラを含む学習者用内視鏡、14は学習者内視鏡担持部撮影カメラ、15は学習者全身画像撮影カメラ、21は学習者用マイクロフォン、22は学習者用スピーカ、30はトレーニング位置で訓練を受ける学習者である。
【0021】
また、図2において、100は教師用システム、101は教師用模型、102は教師内視鏡画像呈示モニタ、103は学習者内視鏡画像呈示モニタ、104は内視鏡担持部画像呈示モニタ、105は全身画像呈示モニタ、112は内視鏡カメラを含む教師用内視鏡、114は教師内視鏡担持部撮影カメラ、115は教師全身画像撮影カメラ、121は教師用マイクロフォン、122は教師用スピーカ、130は学習者と同様な位置関係でトレーニングの模範動作を教示する教師である。
【0022】
図1および図2において、複数個が設けられるカメラ(12,14,15,112,114,115)および画像提示モニタ(2,3,4,5,102,103,104,105)は、それぞれの信号線により結合されており、学習者用システム10のカメラ(12,14,15)で撮影された画像が、学習者用の画像提示モニタ(2,4,5)で表示されると共に教師用の画像提示モニタ(103,104,105)で表示され、教師用システム100のカメラ(112,114,115)で撮影された画像が、教師用の画像提示モニタ(102,104,105)で表示されると共に学習者用の画像提示モニタ(3,4,5)で表示される。
【0023】
本実施例の手術用トレーニング装置は、実物とほぼ同じ模型を用いて学習者が教師の内視鏡による手術行為を学習するため、図1および図2に示されるように、教師用模型101および学習者用模型1の設置位置は、それぞれ教師130と教師用模型101との相対位置と同一となるように学習者30のトレーニング位置に対する相対位置に設置される。
このように、教師用模型101および学習者用模型1が設置された状態で、学習者全身画像撮影カメラ15が、トレーニング位置の学習者の全身を撮影する。学習者内視鏡担持部撮影カメラ14は、トレーニング位置の学習者の腕の動きと手元の内視鏡担持部を同時に撮影する。
【0024】
教師全身画像撮影カメラ115は、教師の全身を撮影し、教師内視鏡担持部撮影カメラ114は、教師の腕の動きと手元の内視鏡担持部を同時に撮影する。教師用内視鏡112には内視鏡カメラが含まれており、教師用模型101に対して教師が行っている手術における模型内部の状態が撮影される。同様に、学習者用内視鏡12には内視鏡カメラが含まれており、学習者用模型1に対して学習者が行っている手術の模型内部の状態が撮影される。
【0025】
学習者用システム10における全身画像呈示モニタ5には、学習者全身画像撮影カメラ15で撮影された全身の映像が映し出され、内視鏡担持部画像呈示モニタ4には、学習者内視鏡担持部撮影カメラ14で撮影された内視鏡担持部の映像が映し出される。また、学習者用システム10における学習者内視鏡画像呈示モニタ2には、学習者用内視鏡12のカメラで撮影された映像が映し出され、これに並べて設置された教師内視鏡画像呈示モニタ3には、教師用内視鏡112のカメラで撮影された映像が映し出される。
【0026】
教師用システム100においても、同様に、全身画像呈示モニタ105には、教師全身画像撮影カメラ115で撮影された全身の映像が映し出され、内視鏡担持部画像呈示モニタ104には、教師内視鏡担持部撮影カメラ114で撮影された内視鏡担持部の映像が映し出される。また、同じく、教師用システム100における教師内視鏡画像呈示モニタ102には、教師用内視鏡112のカメラで撮影された映像が映し出され、これに並べて設置された学習者内視鏡画像呈示モニタ103には、学習者用内視鏡12のカメラで撮影された映像が映し出される。」(段落【0019】-【0026】)

(2)「【0029】
図3は、学習者に呈示する映像の合成方法を説明する図であり、図4は、教師に呈示する映像の合成方法を説明する図である。図3および図4において、44は内視鏡担持部画像合成部、45は全身画像合成・左右反転部、144は内視鏡担持部画像合成部、145は全身画像合成・左右反転部である。学習者用システム10および教師用システム100において、それぞれのカメラで撮影された画像がそれぞれの画像呈示モニタで表示される場合には、図3および図4に示す内視鏡担持部画像合成部44、全身画像合成・左右反転部45、内視鏡担持部画像合成部144、全身画像合成・左右反転部145により、次に説明するように、画像合成または左右反転して表示される。ここでの画像合成および左右反転の画像処理には、クロマキー、ルミナンスキー等の画像処理技術が利用されるが、この内容は公知であるので説明は省略する。
【0030】
それぞれのカメラで撮影された画像がそれぞれの画像呈示モニタで表示される場合において、学習者用システム10においては全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4が、学習者のトレーニング位置を中心としてカメラの方向またはカメラの方向から±約60度内に置かれた場合には、全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4には鏡像が表示され、また、学習者用システム10の全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4が、学習者のトレーニング位置を中心としてカメラと反対方向またはカメラと反対方向から±約60度内に置かれた場合には、全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4には正像が表示される。また、学習者用システムの全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4が、前記の方向と異なる方向に置かれた場合には、全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4には正像または鏡像が表示される。
【0031】
学習者用の全身画像呈示モニタ5および内視鏡担持部画像呈示モニタ4には、画像処理により、学習者と教師のそれぞれの全身画像、内視鏡担持部画像を重ね合わせて表示し、学習者内視鏡画像呈示モニタ2と学習者用の教師内視鏡画像呈示モニタ3には、それぞれ学習者の内視鏡画像と教師の内視鏡画像が表示され、また、教師内視鏡画像呈示モニタ102と教師用システム100の学習者内視鏡画像呈示モニタ103には、それぞれ教師の内視鏡画像と学習者の内視鏡画像が表示される。」(段落【0029】-【0031】)

(3)「【0051】
(3-2 全身画像合成方法)
学習者全身画像撮影カメラ15および教師全身画像撮影カメラ115で撮影された画像は、全身画像合成・左右反転部45および145で、クロマキー技術を用いて合成するとともに左右反転し鏡像とする。画像の合成は、合成後の画像において学習者および教師が見えるように、両者が重ならないように行う。合成・左右反転した画像は、全身画像呈示モニタ5、105で学習者および教師に呈示する。
【0052】
画像を反転することにより、全身画像呈示モニタ5、105に呈示される学習者および教師の像は、学習者30および教師130から見て鏡に写る自己像と同様な鏡像となり、自己像の認識および姿勢の修正が容易となる。」(段落【0051】-【0052】)

上記引用文献3の記載、引用文献3の図1-4及びこの分野の技術常識を考慮すると、上記引用文献3には、
「実物とほぼ同じ模型を用いて学習者が教師の内視鏡による手術行為を学習するための手術用トレーニング装置であって、
学習者用システム10における全身画像呈示モニタ5には、学習者全身画像撮影カメラ15で撮影された全身の映像が映し出され、
教師用システム100においても、同様に、全身画像呈示モニタ105には、教師全身画像撮影カメラ115で撮影された全身の映像が映し出され、
学習者全身画像撮影カメラ15および教師全身画像撮影カメラ115で撮影された画像は、全身画像合成・左右反転部45および145で、クロマキー技術を用いて合成するとともに左右反転し鏡像とし、合成・左右反転した画像は、全身画像呈示モニタ5、105で学習者および教師に呈示する、
手術用トレーニング装置。」(以下、「引用文献3記載の技術」という。)が記載されている。

4.引用文献4-6について
いずれも当審において通知した拒絶の理由に引用された、特開2004-193661号公報(以下、「引用文献4」という。)の段落【0177】-【0223】及び図13、14の記載、特開2000-099691号公報(以下、「引用文献5」という。)の段落【0012】-【0031】及び図1-15の記載、並びに特開2004-326179号公報(以下、「引用文献6」という。)の段落【0007】-【0009】、【0033】-【0111】及び図9、10の記載からみて、当該引用文献4-6には、撮影された人物の位置や大きさを揃えるため、カメラのパン、チルト、ズームを行うことやディジタル処理によって補正するという技術的事項が記載されていると認められる。


第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

ア.引用発明において、「投写光学系300は、映像光生成部200から出射された映像光を投写するものであって、投写面210上に映像光を投写」するものであるから、「投写光学系300」、「映像光生成部200」及び「投写面210」の3要素は、これらが協働することで表示を実現するものといえる。
したがって、これら3要素は表示をするための部材、すなわち、本願発明の「表示部」に相当する。
また、このうち「投写面210」は、本願発明の「表示部の画面」に相当する。

イ.引用発明の「ダンスの振り付け、武道の型などのインストラクターの模範動作を含む見本映像を表示するための映像データである見本データ」は、投写面210上に投写されるものであるから、本願発明の「表示部の画面に表示すべき画像」に相当する。

ウ.そして、引用発明の「第2取得部253」は、上記イ.の「ダンスの振り付け、武道の型などのインストラクターの模範動作を含む見本映像を表示するための映像データである見本データ」を「DVD再生装置などの外部機器700から取得」するものであるから、本願発明の「表示部の画面に表示すべき画像を取得する画像取得部」に相当する。

エ.引用発明の「撮像装置500」は、「例えば、投写面210上に表示された映像を見ながら、ダンスの振り付け、武道の型などの動作練習を行うユーザXを」「撮像する」ものであるから、本願発明の「前記表示部と一体で且つ前記画面の近傍に配設され、前記画面に表示される前記画像取得部が取得した取得画像を視聴しているユーザーを撮影するカメラ部」と、「前記画面に表示される前記画像取得部が取得した取得画像を視聴しているユーザーを撮影するカメラ部」である点で共通する。

オ.引用発明は、「ユーザXの動作(撮像映像)を模範動作(見本映像)に重畳させ」るものであって、「ユーザXの動作(撮像映像)及び模範動作(見本映像)を重畳せずに、撮像映像と見本映像とを並べて表示してもよく、重畳表示及び2画面表示の切り替えはユーザXが任意に行うことが可能であ」るから、本願発明の「前記カメラ部が撮影したユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に並列又は重畳して表示する並列・重畳パターンを取得する並列・重畳パターン取得部」と、「前記カメラ部が撮影したユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に並列又は重畳して表示することを選択する手段」を有する点で共通する。

カ.引用発明において、「投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されているか否かを判定し、重畳表示が選択されている場合には、ステップ50の処理に移り、」「重畳表示が選択されていない場合には、ステップ60の処理に移り、」「ステップ50において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させて、撮像映像及び見本映像を表示し、」「ステップ60において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像及び見本データによって構成される見本映像を並べて表示する」ものであって、これら重畳表示又は並列表示を行うためには、撮像映像又は見本映像の少なくとも一方を加工する必要があることは明らかであるから、本願発明の「前記並列・重畳パターンに対応するように、前記ユーザー画像又は前記取得画像の少なくとも一方を画像加工する演算部」と、「(重畳表示又は並列表示を行うために)前記ユーザー画像又は前記取得画像の少なくとも一方を画像加工する手段」を有する点で共通する。

キ.引用発明において、「映像制御部254は、サイズ取得部251によって取得されたユーザXのサイズに基づいて撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃え、また、ユーザXの頭頂部をインストラクターの頭頂部に揃えて、ユーザXの動作(撮像映像)を模範動作(見本映像)に重畳させ」るものであって、「撮像映像のサイズと見本映像のサイズとを揃え」るためには、撮像映像と見本映像の少なくとも一方のサイズを変更する必要があることは明らかであり(参考までに、上記引用文献1の段落【0072】には、第2実施形態の説明の中で、「例えば、映像制御部254は、ユーザXの特徴点とインストラクターの特徴点とが重なるように、ユーザXの体型(画像)を拡大又は縮小して、ユーザXの体型をインストラクターの体型に揃える。または、映像制御部254は、ユーザXの特徴点とインストラクターの特徴点とが重なるように、インストラクターの体型(画像)を拡大又は縮小して、インストラクターの体型をユーザXの体型に揃える。」と記載されている。)、「ユーザXの頭頂部をインストラクターの頭頂部に揃え」ることは、ユーザXの動作(撮像映像)と模範動作(見本映像)の顔又は体の位置を揃えることにほかならず、そのためには、撮像映像と見本映像の少なくとも一方の位置を変更する必要があることは明らかであるから、本願発明の「前記演算部は、前記並列・重畳パターンに基づいて前記ユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に表示したときに前記ユーザー画像に含まれている顔又は身体の位置、向き及び大きさが前記取得画像と揃うように、少なくとも一方の画像を加工する」構成と、「前記手段は、前記並列・重畳パターンに基づいて前記ユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に表示したときに前記ユーザー画像に含まれている顔又は身体の位置及び大きさが前記取得画像と揃うように、少なくとも一方の画像を加工する」構成である点で共通する。

ク.引用発明の「投写型映像表示装置100」は、後述する相違点を除き、本願発明の「情報処理装置」に相当する。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、次の一致点、相違点を有する。

(一致点)
「表示部と、
前記表示部の画面に表示すべき画像を取得する画像取得部と、
前記画面に表示される前記画像取得部が取得した取得画像を視聴しているユーザーを撮影するカメラ部と、
前記カメラ部が撮影したユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に並列又は重畳して表示することを選択する手段と、
前記ユーザー画像又は前記取得画像の少なくとも一方を画像加工する手段と、
前記手段は、前記並列・重畳パターンに基づいて前記ユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に表示したときに前記ユーザー画像に含まれている顔又は身体の位置及び大きさが前記取得画像と揃うように、少なくとも一方の画像を加工する、
情報処理装置。」

(相違点1)
本願発明のカメラ部は、「前記表示部と一体で且つ前記画面の近傍に配設され」るのに対し、引用発明の「撮像装置500」は、「投写面210」と一体且つ近傍には配置されておらず、「ユーザXを斜め上方から撮像する」配置となっている点。

(相違点2)
一致点の「前記カメラ部が撮影したユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に並列又は重畳して表示することを選択する手段」に関し、本願発明が「並列・重畳パターンを取得する並列・重畳パターン取得部」を有しているのに対し、引用発明は、このような構成を特定していない点。

(相違点3)
本願発明が、重畳表示又は並列表示を行うために「ユーザー画像又は前記取得画像の少なくとも一方を画像加工する演算部」を有しており、「前記演算部は、前記並列・重畳パターンに基づいて前記ユーザー画像と前記取得画像を前記画面上に表示したときに前記ユーザー画像に含まれている顔又は身体の位置、向き及び大きさが前記取得画像と揃うように、少なくとも一方の画像を加工する」のに対し、引用発明は、下記相違点4に関する部分を除き、同様の画像加工をすることは特定しているものの、これを「演算」によって行うことについて特定していない点。

(相違点4)
本願発明が、「顔又は身体の位置、向き及び大きさ」の3要素が揃うよう画像を加工しているのに対し、引用発明は、顔又は身体の「位置及び大きさ」を揃えることは特定しているものの、「向き」を揃えることについては特定していない点。


第5 当審の判断
上記相違点について検討する。

(相違点1)について
引用発明において、撮像装置500は、「筐体400の投写面210とは反対の側に設けられ、」「ユーザXを斜め上方から撮像する」ものであるが、ユーザXが自然に写るように撮像装置500の位置を適宜変更することは、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内といえる。
また、引用発明の「投写光学系300」、「映像光生成部200」及び「投写面210」による表示方法に代えて、本願出願日前に周知である、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイのような薄型の表示装置を採用することもまた、当業者が適宜なし得ることである。
そして、このように薄型の表示装置を採用する際、撮像装置500と表示装置とを一体で且つ近傍に配設することは、当業者であれば当然に検討する事項といえる(上記引用文献1の段落【0097】には、「撮像装置500の傾きに基づいて、撮像映像の視点を見本映像の視点に揃えることが好ましい。」と記載されており、撮像装置500がユーザXを正面から捉えることが好ましいことが示唆されている。また、同文献の段落【0004】には、「投写型映像表示装置とスクリーンとの距離の短縮を図る」ことが記載されており、(投写型映像表示装置100に設けられた)撮像装置500と投写面210とが近づくことが示唆されている。)。

(相違点2)について
上記「第4 対比」のオ.で述べたように、引用発明は、「ユーザXの動作(撮像映像)を模範動作(見本映像)に重畳させ」るものであって、「ユーザXの動作(撮像映像)及び模範動作(見本映像)を重畳せずに、撮像映像と見本映像とを並べて表示してもよく、重畳表示及び2画面表示の切り替えはユーザXが任意に行うことが可能であ」るものである。
そして、上記「第4 対比」のカ.で述べたように、引用発明において、「投写型映像表示装置100は、重畳表示が選択されているか否かを判定し、重畳表示が選択されている場合には、ステップ50の処理に移り、」「重畳表示が選択されていない場合には、ステップ60の処理に移り、」「ステップ50において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像を見本データによって構成される見本映像に重畳させて、撮像映像及び見本映像を表示し、」「ステップ60において、投写型映像表示装置100は、撮像データによって構成される撮像映像及び見本データによって構成される見本映像を並べて表示する」ものである。
これらの記載から、引用発明は、重畳表示が選択されているか、重畳表示が選択されていない(並列表示が選択されている)かを判定し、その判定結果に応じて、それぞれ重畳表示、並列表示を行うものといえる。
一般に、択一的に選択可能な複数の機能のうち、ユーザが選択した機能を値(パターン)として記憶しておき、実行時にその値を読み出し、値に応じた機能を選択するようにすることは常とう手段であるから、引用発明における重畳表示が選択されているか、重畳表示が選択されていない(並列表示が選択されている)かの判定を「並列・重畳パターン」を用いて行うこととし、本願発明の相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に相当し得たものである。

(相違点3)について
画像の各種加工を演算によって行うことは極めて一般的であるから、引用発明において、画像を並列又は重畳表示する、若しくは、画像の位置、向き及び大きさを合わせるに際して、これを演算によって行うこととし、本願発明の相違点3に係る構成とすることは、当業者であれば容易に相当し得たものである。

(相違点4)について
引用発明において、ユーザXの動作(撮像映像)をダンスの振り付け、武道の型などのインストラクターの模範動作(見本映像)に重畳させて表示する際、ユーザXに相対して配置される撮像装置500で撮影した撮像映像をそのまま見本映像に重畳すると、ユーザXは投写面210に表示される見本映像を見ながら動作を行うため、撮像映像内のユーザXの動作と見本映像内のインストラクターの模範動作とが左右逆に重畳されて表示されることは明らかである。
したがって、このように左右逆に表示されることによるユーザの不便は、引用発明に内在される課題であるといえる。
そして、撮像画像の左右を反転するという技術的手段は、引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術に示されるように、本願の出願日前において公知であって、引用発明、引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術は、いずれも見本となる映像を視聴しているユーザーを撮影し、撮影した映像を見本となる映像とともに表示するという点で、共通の技術分野に属するものである。
してみれば、引用発明において、引用文献2記載の技術及び引用文献3記載の技術を適用して、撮像映像又は見本映像の少なくとも一方を加工して、向きを揃えるようにし、本願発明の相違点4に係る構成とすることは、当業者であれば容易に相当し得たものである。

なお、顔や体の向きを揃えるための手法としては、左右反転する手法のみならず、上記引用文献6の段落【0106】-【0111】及び図9、10、並びに、平成28年4月28日付けの拒絶査定で引用された特開平08-182786号公報の段落【0037】に示される回転処理もまた周知である。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、各引用文献記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-07 
結審通知日 2017-06-13 
審決日 2017-06-26 
出願番号 特願2012-5504(P2012-5504)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 若林 治男  
特許庁審判長 新川 圭二
特許庁審判官 稲葉 和生
土谷 慎吾
発明の名称 情報処理装置及び情報処理方法、並びにコンピューター・プログラム  
代理人 佐々木 榮二  
代理人 特許業務法人大同特許事務所  
代理人 宮田 正昭  
代理人 澤田 俊夫  
代理人 山田 英治  

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