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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1334279
審判番号 不服2017-2150  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-02-14 
確定日 2017-11-09 
事件の表示 特願2015- 99326「回転機構、工作機械及び半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月15日出願公開、特開2015-180832〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成26年1月28日(優先権主張 平成25年11月20日、平成26年1月14日)に出願した特願2014-13801号(以下、「原出願」という。)の一部を平成27年5月14日に新たな特許出願としたものであって、平成27年8月19日に手続補正書が提出され、平成28年4月14日付けで拒絶理由が通知され、同年6月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成29年2月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、本願の請求項1?16に係る発明は、平成28年6月13日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた孔に挿通されるシャフトと、
前記ハウジングの内壁に接して前記シャフトの軸方向に固定されるとともに、前記シャフトの外周に接して前記軸方向に固定されて、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記シャフトの一端部に設けられて前記シャフトとともに回転し、かつ前記孔の径方向外側まで張り出した部分が前記ハウジングと所定の大きさの隙間を有して対向する回転部材と、
前記ハウジングの、前記回転部材と対向する面に開口し、前記隙間と前記ハウジングの外側とを接続して、前記隙間の部分の気体を前記ハウジングの外部に通過させる気体通路と、
を含み、
前記軸受は、外輪、前記外輪の径方向内側に配置される内輪及び前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体を有する転がり軸受であり、
前記外輪が前記ハウジングの内壁に固定され、前記内輪が前記シャフトの外周に固定されて、前記ハウジングと前記シャフトとの前記軸方向の位置が固定されており、
前記隙間は、前記ハウジングの内部と外部との間を封止するシール部であり、前記気体通路は、前記隙間に開口する回転機構。」

2.引用文献
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-221345号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で付したものである。以下同様。

「【請求項1】 軸受と、当該軸受を介してハウジングに相対的に回転可能に支持された軸と、を備えたスピンドル装置の内部と外界とを密封可能なスピンドルシール装置であって、
前記軸受と前記外界との間に、気体軸受を配置したスピンドルシール装置。」

「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、スピンドル装置の内部と外界とを密封するスピンドルシール装置に関する。」

「【0009】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するために、本発明は、軸受と、当該軸受を介してハウジングに相対的に回転可能に支持された軸と、を備えたスピンドル装置の内部と外界とを密封可能なスピンドルシール装置であって、前記軸受と前記外界との間に、気体軸受を配置したスピンドルシール装置を提供するものである。
【0010】この構成を備えたスピンドルシール装置は、気体軸受を介して軸表面に気体(例えば、空気(エア)や窒素等)を吹き出させ、その部分の圧力を周囲より高く維持することによって、前記軸受と外界との間をシールすることができ、例えば、ダスト、グリースや潤滑油等の油分等の異物が、軸受内部から外界に放出されることを防止することができる。また、逆に外部からの切削油等の浸入を防止することもできる。」

「【0014】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態に係るスピンドルシール装置について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)図1は、実施の形態1に係るスピンドルシール装置の概略を示す一部断面図である。
【0015】なお、この実施の形態1では、スピンドル装置10は、ハウジング12のフランジ23の座ぐり穴を用いて、図示しない装置に取り付けられ、図1でフランジ23から左側の部分が外界に曝されていることになる。
【0016】図1に示すように、実施の形態1に係るスピンドルシール装置1は、転がり軸受11と、転がり軸受11を介してハウジング12に回転可能に支持された回転軸13と、を備えたスピンドル装置10の内部と、フランジ23より左側の外界とを密封可能に構成されている。ハウジング12には、転がり軸受11を押るための軸受押え14が、例えば、ねじ止めされている。
・・・
【0018】このスピンドルシール装置1は、転がり軸受11と前記外界との間に配設された気体軸受15を備えて構成されている。この気体軸受15は、静圧軸受であり、外部から供給された高圧の例えば空気を回転軸13との間に形成されている隙間h2に供給し、その空間の圧力を外部より高圧に維持し、シールを形成している。さらにカバー22との間及び軸受押え14との間の隙間h1にも空気を供給し、気体軸受を形成し、回転軸13が斜めに変位した時の逃げとなる。なお、この隙間h1及びh2は、数μmから数十μm程度の隙間が適当である。
・・・
【0020】なお、実施の形態1では、多孔質体からなる気体軸受を使用した。このように、多孔質体からなる気体軸受を使用することで、高い軸受面圧が得られ、シール性をより向上させることができる。また、この気体軸受15には、図示しない圧縮空気供給源から供給される圧縮空気が外部から軸受押え14に設けられた空気供給孔14aを経由して供給される圧縮空気を気体軸受15に供給する圧縮空気供給口16が設けられている。
・・・
【0022】この構成を備えたスピンドルシール装置1は、気体軸受15が対向する回転軸13の円周上の圧力を均一に高く維持することができる。すなわち、気体軸受15から回転軸13の表面に向けて吹出される空気の圧力及び流れにより、転がり軸受11と外界との間を確実にシールすることができる。したがって、スピンドル装置10内部のダストやグリース等の油分等を含む異物は、前記空気によるシールを越えて外部に放出されたり、外部から異物が侵入したりすることが防止される。
・・・
【0025】このように、実施の形態1に係るスピンドルシール装置1は、従来のスピンドルシール装置のように、シール手段として磁性流体を使用することなく、転がり軸受11と外界との間を、気体軸受15からの空気の吹付けにより確実にシールすることができる。」

「【0030】・・・
(実施の形態3)次に、本発明の実施の形態3に係るスピンドルシール装置について、図面を参照して説明する。
【0031】図3は、実施の形態3に係るスピンドルシール装置の概略を示す一部断面図である。なお、実施の形態3では、実施の形態1と同様の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0032】図3に示すように、実施の形態3に係るスピンドルシール装置3の、実施の形態1に係るスピンドルシール装置2と異なる点は、実施の形態1では、気体軸受15が半径方向のラジアル軸受を構成することによりシール作用を生じさせたのに対し、実施の形態3では、軸方向のアキシアル軸受を構成することによりシール作用を生じさせている点である。
・・・
【0034】なお、図3に示す気体軸受15の左側端面が、気体軸受として作用するので、隙間h2は、実施の形態1のh1、h2や実施の形態2のh2と同様数μmから数十μmとしているが、ラジアル方向の隙間h4は、軸と接触することのないよう、十分な隙間(1mm程度まで)としてある。したがって、気体軸受15の内周面は気体軸受として機能する必要がないので封止してある。また、h3は、h4より小さな隙間としている。
・・・
【0036】隙間h2とh4の両方が微小に保たれ、しかもシール作用を発生することになるので、さらに高いシール効果が得られる。」


【図3】から、
(カ-1)回転軸13はハウジング12の孔に挿通されていること、
(カ-2)軸受押え14は転がり軸受11を回転軸13の軸方向に押さえていること、
(カ-3)転がり軸受11は外輪、内輪、転動体からなり、外輪がハウジング12の孔内に固定され、内輪が回転軸13の外周に固定されていること、
(カ-4)回転軸13の端部に、ハウジング12の孔の径方向外側まで張り出した部分がハウジング12及び気体軸受15と所定の大きさの隙間を有して対向する部材が設けられていること、
(カ-5)気体軸受15はハウジング12の孔に面した端部に設けられていること、
を看取しうる。


上記オの「【0032】図3に示すように、・・・実施の形態3では、軸方向のアキシアル軸受を構成することによりシール作用を生じさせている点である。」との記載、「【0034】なお、図3に示す気体軸受15の左側端面が、気体軸受として作用するので、・・・」との記載、及び、「【0018】・・・この気体軸受15は、静圧軸受であり、外部から供給された高圧の例えば空気を回転軸13との間に形成されている隙間h2に供給し、その空間の圧力を外部より高圧に維持し、シールを形成している。・・・」との記載からみて、
(キ-1)上記(カ-3)で述べた回転軸13の端部に設けた部材は回転軸13とともに回転する部材であり、
(キ-2)上記(カ-4)で述べたハウジング12及び気体軸受15と回転軸13とともに回転する部材との間の隙間は、気体軸受15から供給された高圧の空気によりスピンドル装置10の内部と外界とを密封可能とするシールを形成している、
と認められる。

上記ア?オの記載事項、上記カの図面の図示内容、【図1】、【図3】の記載、及び、上記キの認定事項から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
〔引用発明〕
「ハウジング12と、
ハウジング12の孔に挿通され、軸方向に押さえられた転がり軸受11を介してハウジング12に回転可能に支持された回転軸13と、
回転軸13の端部に設けられて、ハウジング12の孔の径方向外側まで張り出した部分がハウジング12及び気体軸受15と所定の大きさの隙間を有して対向する、回転軸13とともに回転する部材と、
を含み、
転がり軸受11は外輪、内輪、転動体からなり、外輪がハウジング12の孔内に固定され、内輪が回転軸13の外周に固定され、
ハウジング12の孔に面した端部に設けられた気体軸受15は、軸方向のアキシアル軸受を構成することによりシール作用を生じさせ、
ハウジング12及び気体軸受15と回転軸13とともに回転する部材との間の隙間は、気体軸受15から供給された高圧の空気によりスピンドル装置10の内部と外界とを密封可能とするシールを形成する、スピンドル装置10。」

(2)引用文献2に記載された事項
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の優先日前に頒布された刊行物である特開2000-100907号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体ウエハや液晶表示器用のガラス基板、フォトマスク用のガラス基板、光ディスク用の基板などの基板を保持して回転させる基板保持回転手段と、基板保持回転手段で保持した基板に対して基板処理を行う処理空間と基板保持回転手段を回転させる電動モーターなどの駆動部品を配設する処理外空間とを分離するためのベース部との間にシール手段に備え、基板を保持して回転させながら洗浄乾燥処理や塗布膜の塗布処理、現像処理などの所定の基板処理を行う基板処理装置に係り、特には、基板保持回転手段とベース部との間のシール手段の改良技術に関する。」

「【0027】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施例に係る基板処理装置の全体構成を示す縦断面図であり、図2はスピンベースの底面を下方から見た図、図3はベース部の平面図、図4は要部の拡大縦断面図である。
【0028】この実施例装置は、基板Wを保持して回転させる基板保持回転手段に相当するスピンチャック1を備えている。図に示すスピンチャック1は、電動モーター2の回転によって鉛直方向の軸芯J周りで回転可能な回転軸3の上端部に一体回転可能にスピンベース4が連結され、スピンベース4の上面に3個以上の保持部材5が設けられている。そして、保持部材5によって基板Wの外周部の3箇所以上を保持し、保持した基板Wを回転させながら所定の基板処理が行われる。
・・・
【0030】この装置は、非回転部であるベース部6によって、スピンチャック1で保持した基板Wに対して基板処理を行う処理空間7と、電動モーター2などの駆動部品を配設する処理外空間8とを分離している。そして、回転シール機構10によって、ベース部6に対してスピンチャック1が回転可能に処理空間7と処理外空間8との間をシールするようにしている。」

「【0031】以下、本発明の要部である回転シール機構10の詳細な構成を説明する。この第1実施例装置の回転シール機構10は、スピンチャック1側(スピンベース4の底面)に設けられた環状(平面視でリング状)の回転側環状面11と、この回転側環状面11に対向させてベース部6側(ベース部6の上面)に設けられた環状(平面視でリング状)の非回転側環状面12と、回転側環状面11と非回転側環状面12とを接近させる接近力を付与する接近力付与手段に相当するコイルバネ13と、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に気体を供給する気体供給手段に相当する気体供給機構14とを備えている。
【0032】スピンベース4の底面には円筒状の凹部15が形成されており、この凹部15に、セラミックやカーボンなどで形成した円筒状の回転側環状部材16が組付け固定されている。この回転側環状部材16の下面が上述した回転側環状面11となっている。
【0033】一方、ベース部6の上面にも円筒状の凹部17が形成されており、この凹部17に、セラミックやカーボンなどで形成した円筒状の非回転側環状部材18がOリング19を介在させて嵌め込まれている。この非回転側環状部材18の上面が上述した非回転側環状面12となっている。
【0034】ベース部6に形成した凹部17の底面には、複数個(図では8個)のコイルバネ13が、周方向に等間隔(図では45°ごと)に配設されているとともに、・・・
・・・
【0036】非回転側環状部材18の上面(非回転側環状面12)には、平面視で略リング状の溝を形成する4個の気体供給口22が形成されている。各気体供給口22は、非回転側環状部材18内に穿設された気体供給路23を介して、非回転側環状部材18の外周壁面とそれに対向する凹部17の外側の内周壁面と2個のOリング19とで囲まれる円筒状の気体供給バッファ部24に連通接続されている。気体供給バッファ部24には、気体供給管25を介して気体供給源26から清浄な気体が供給される。これにより、気体供給管25、気体供給バッファ部24、各気体供給路23を介して各気体供給口22から、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に全周にわたって略均一に清浄な気体を供給することができる。
・・・
【0040】次に、上記構成を有する実施例装置の動作を説明する。スピンチャック1の回転に先立ち、まず、開閉弁27を開にして各気体供給口22から回転側環状面11と非回転側環状面12との間に気体を供給させる。
【0041】この回転側環状面11と非回転側環状面12との間に供給される気体によって、図4(b)に示すように、各コイルバネ13による回転側環状面11と非回転側環状面12とを接近させる接近力F1に抗して、回転側環状面11と非回転側環状面12とが離間される離間力F2が働く。
【0042】そして、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に数十μm程度(例えば、20μm程度)の僅かな隙間を形成して回転側環状面11と非回転側環状面12とを非接触状態にする。隙間の幅Bは、各コイルバネ13のバネ定数や、各気体供給口22から供給する気体の供給流量などにより調節することができる。
【0043】回転側環状面11と非回転側環状面12との間への気体の供給を継続している間、この気体の供給による回転側環状面11と非回転側環状面12とを離間させる離間力F2と、各コイルバネ13による回転側環状面11と非回転側環状面12とを接近させる接近力F1とが均衡して、回転側環状面11と非回転側環状面12との非接触状態(図4(b)に示す状態)を維持することができる。
【0044】この回転側環状面11と非回転側環状面12との非接触状態において、電動モーター2を駆動して、ベース部6に対してスピンチャック1を回転させると、ベース部6側の非回転側環状面12に対してスピンチャック1側の回転側環状面11が非接触状態で回転される。従って、非回転側環状面12に対して回転側環状面11を摺動させずに回転させることができ、回転側環状面11及び非回転側環状面12からのパーティクルの発生や発熱を起こさずに、ベース部6に対してスピンチャック1を回転させることができる。
【0045】そして、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に供給させ続けている気体によって、回転側環状面11と非回転側環状面12との間の隙間の圧力が高められ、回転側環状面11と非回転側環状面12とが対向する環状面対向位置よりも外側と内側の空間である処理空間7と処理外空間8との間の雰囲気が遮断される。また、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に供給させ続けている気体は、環状面対向位置を挟んだ処理空間7と処理外空間8とに向かって吹き出される。従って、処理外空間8で発生したパーティクルが処理空間7に漏れ出ることが防止され、処理外空間8で発生したパーティクルによる基板処理の処理精度の低下を防止することができる。また、基板処理で薬液を含む適宜の処理液を用いる場合でも、処理空間7から処理外空間8への処理液(薬液)雰囲気の進入が防止され、処理外空間8に配設した電動モーター2などの駆動部品が処理液(薬液)雰囲気にさらされることを防止することができ、駆動部品を耐薬性などで構成することなく、処理液(薬液)雰囲気による駆動部品の故障や寿命の短期化などを防止することができる。なお、駆動部品を耐薬性で構成するとコスト高を招くが、本実施例に係る回転シール機構10によれば、低コストで駆動部品を保護することができる。
【0046】また、上述したように、本実施例に係る回転シール機構10は、摺動する部分がなく、無摺動でシールするので、回転シール機構10を構成する回転側環状面11及び非回転側環状面12をスピンベース4の外周部側に設けても、従来装置のようなパーティクルの発生量の増加や発熱の増大などの問題が起きない。従って、基板処理の処理精度の低下を招くことなく、図1に示すように、回転シール機構10を構成する回転側環状面11及び非回転側環状面12をスピンベース4の外周部側に設けて、スピンチャック1を広い範囲にわたって処理外空間8に含ませることができ、スピンチャック1の構造の簡単化や低コスト化などを図ることができる。」

「【0072】次に、本発明の第3実施例装置の構成を図8ないし図10を参照して説明する。図8は本発明の第3実施例装置の全体構成を示す縦断面図であり、図9はベース部の平面図、図10は要部の拡大縦断面図である。
【0073】この第3実施例装置の回転シール機構50は、上記第1実施例装置の回転シール機構10に加えて、環状面対向位置よりも外側である処理空間7側に吸引口61が配設された吸引手段に相当する吸引機構60と、環状面対向位置よりも外側である処理空間7側に気体吹き出し口71が配設された気体吹き出し手段に相当する気体吹き出し機構70とをさらに備えたものである。その他の構成は第1実施例と同様であるので、共通する部分は第1実施例と同一符号を付してその詳述は省略する。
【0074】吸引機構60の吸引口61は、ベース部6の上面側の、環状面対向位置と気体吹き出し機構70の気体吹き出し口71との間に配設されている。吸引口61は、例えば、平面視でリング状の溝で形成されている。この吸引口61の底部に複数の吸引路62の先端が連通され、各吸引路62を介して吸引ポンプ63などに連通されて、吸引口61から周方向の全周にわたって吸引が行えるように構成している。吸引の実行と停止は、吸引路62に設けられた開閉弁64の開閉制御により行われる。なお、吸引口61、各吸引路62、吸引ポンプ63、開閉弁64が、吸引機構60を構成する。
【0075】気体吹き出し機構70の気体吹き出し口71は、ベース部材6の上面側の、吸引機構60の吸引口61よりさらに外側である処理空間7側に配設されている。・・・
【0076】また、吸引口61からの吸引効果及び気体吹き出し口71から吹き出される清浄な気体による雰囲気の遮断効果を高めるために、吸引口61及び気体吹き出し口71の上方にスピンベース4の底面を配置させて、吸引口61及び気体吹き出し口71付近にスピンベース4の底面とベース部6の上面とで挟まれた狭い空間を形成している。そのため、環状面対向位置は、第1実施例のものよりも若干内側(スピンベース4の回転中心側)に設定している。
【0077】この第3実施例によれば、以下のような作用効果が得られる。まず、吸引機構60によって、環状面対向位置よりも外側である処理空間7側に配設された吸引口61から吸引を行うことで、基板処理で薬液を含む適宜の処理液を用いる場合でも、処理空間7から環状面対向位置に向かって流れてくる処理液(薬液)雰囲気が吸引口61から吸引され、吸引口61より環状面対向位置側に処理液(薬液)雰囲気が流れ込むことを防止することができ、環状面対向位置を挟んで処理空間7と反対側の処理外空間8に配設した駆動部品が処理液(薬液)雰囲気にさらされることをより確実に防止することができる。
【0078】また、仮に、気体供給機構14の故障などの何らかの異常事態が発生してスピンチャック1の回転時に回転側環状面11と非回転側環状面12とが接触してパーティクルが発生しても、そのパーティクルは環状面対向位置よりも処理空間7側に配設された吸引口61から吸引されて処理空間7に漏れ出ることが防止されるので、異常事態の発生時にも基板処理の処理精度の低下を防止することができる。」

「【0083】また、上記第3実施例では、第1実施例の回転シール機構10に吸引機構60と気体吹き出し機構70とを備えたが、いずれか一方の機構60または70を第1実施例の回転シール機構10に備えただけでもよい。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
後者の「ハウジング12」は、前者の「ハウジング」に相当する。
後者の「ハウジング12の孔に挿通され」た「回転軸13」は、前者の「ハウジングに設けられた孔に挿通されるシャフト」に相当する。
後者の「軸方向に押さえられた転がり軸受11」は、回転軸13とハウジング12との間に介在して、回転軸13をハウジング12に回転可能に支持するものであり、「転がり軸受11は外輪、内輪、転動体からなり、外輪がハウジング12の孔内に固定され、内輪が回転軸13の外周に固定され」るものであるので、前者の「ハウジングの内壁に接してシャフトの軸方向に固定されるとともに、シャフトの外周に接して軸方向に固定されて、シャフトを回転可能に支持する軸受」に相当し、また、後者の「転がり軸受11は外輪、内輪、転動体からなり、外輪がハウジング12の孔内に固定され、内輪が回転軸13の外周に固定され」ることは、前者の「軸受は、外輪、前記外輪の径方向内側に配置される内輪及び前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体を有する転がり軸受であ」ること、及び、「外輪がハウジングの内壁に固定され、内輪がシャフトの外周に固定されて、ハウジングとシャフトとの軸方向の位置が固定されて」いることに相当する。
後者の「回転軸13の端部に設けられてハウジング12の孔の径方向外側まで張り出した部分がハウジング12及び気体軸受15と所定の大きさの隙間を有して対向する、回転軸13とともに回転する部材」は、前者の「シャフトの一端部に設けられてシャフトとともに回転し、かつ孔の径方向外側まで張り出した部分がハウジングと所定の大きさの隙間を有して対向する回転部材」に相当する。
後者の「ハウジング12」「と回転軸13とともに回転する部材との間の隙間は、気体軸受15から供給された高圧の空気によりスピンドル装置10の内部と外界とを密封可能とするシールを形成する」ことは、前者のハウジングと回転部材との間の「隙間は、ハウジングの内部と外部との間を封止するシール部であ」ることに相当する。
後者の「スピンドル装置10」は、前者の「回転機構」に相当する。

そうすると、両者の一致点、相違点は次のとおりである。
〔一致点〕
「ハウジングと、
前記ハウジングに設けられた孔に挿通されるシャフトと、
前記ハウジングの内壁に接して前記シャフトの軸方向に固定されるとともに、前記シャフトの外周に接して前記軸方向に固定されて、前記シャフトを回転可能に支持する軸受と、
前記シャフトの一端部に設けられて前記シャフトとともに回転し、かつ前記孔の径方向外側まで張り出した部分が前記ハウジングと所定の大きさの隙間を有して対向する回転部材と、
を含み、
前記軸受は、外輪、前記外輪の径方向内側に配置される内輪及び前記外輪と前記内輪との間に配置される転動体を有する転がり軸受であり、
前記外輪が前記ハウジングの内壁に固定され、前記内輪が前記シャフトの外周に固定されて、前記ハウジングと前記シャフトとの前記軸方向の位置が固定されており、
前記隙間は、前記ハウジングの内部と外部との間を封止するシール部である、回転機構。」
〔相違点〕
本願発明は、「ハウジングの、回転部材と対向する面に開口し、隙間とハウジングの外側とを接続して、隙間の部分の気体をハウジングの外部に通過させる気体通路」を有し、「気体通路は、隙間に開口する」との事項を有しているのに対して、引用発明は、そのような構成を有していない点。

上記相違点について以下検討する。
引用文献2には、
ア 基板保持回転手段とベース部との間のシール手段の改良技術に関して(上記「2.(2)ク」参照)、
イ スピンチャック1側(スピンベース4の底面)に設けられた環状の回転側環状面11と、この回転側環状面11に対向させてベース部6側(ベース部6の上面)に設けられた環状の非回転側環状面12との間に気体を供給する気体供給手段に相当する気体供給機構14とを備えた回転シール機構10により、回転側環状面11と非回転側環状面12との間に供給させ続けている気体によって、回転側環状面11と非回転側環状面12との間の隙間の圧力が高められ、回転側環状面11と非回転側環状面12とが対向する環状面対向位置よりも外側と内側の空間である処理空間7と処理外空間8との間の雰囲気が遮断され(上記「2.(2)コ」の段落【0031】、【0045】参照)、
ウ 回転シール機構10に加えて、環状面対向位置よりも外側である処理空間7側のベース部6の上面側に吸引口61が配設された吸引機構60をさらに備え、吸引口61付近はスピンベース4の底面とベース部6の上面とで挟まれた狭い空間が形成され、吸引機構60によって、環状面対向位置よりも外側である処理空間7側に配設された吸引口61から吸引を行うことで、処理空間7から環状面対向位置に向かって流れてくる処理液(薬液)雰囲気が吸引口61から吸引され、吸引口61より環状面対向位置側に処理液(薬液)雰囲気が流れ込むことを防止することができ、また、環状面対向位置側からパーティクルが発生しても、そのパーティクルは環状面対向位置よりも処理空間7側に配設された吸引口61から吸引されて処理空間7に漏れ出ることが防止される(上記「2.(2)サ」の段落【0073】、【0076】?【0078】参照)、
ことが記載されている。
そうすると、引用文献2には、「空気供給による回転シール機構10に加えて、スピンベース4の底面とベース部6の上面との間の空間に面してベース部6の上面側に吸入口61を配設し、その吸入口61から吸引を行うことで処理空間7と処理外空間8との間のシールを形成する機構を設けること」(以下、「引用文献2に記載の事項」という。)が記載されているといえる。
引用発明と引用文献2に記載の事項とは、何れも回転機構の内と外とをシールする技術である点で共通するものであり、また、シール機能を更に向上させようとすることは一般的な課題といえるので、引用発明の気体軸受15によるシールに対して、引用文献2に記載された、吸入によるシールの機構を追加するという事項を適用する動機付けは十分にあるといえる。
そうしてみると、引用発明において、高圧の空気を供給する気体軸受15より外周側でシールを形成している、ハウジング12と回転軸13とともに回転する部材との間の隙間に、引用文献2に記載の、空気供給による回転シール機構10に加えて、スピンベース4の底面とベース部6の上面との間の空間の吸引を行うよう、ベース部6の上面側に吸入口61を配設し、吸引によるシールをさらに形成するとの事項を適用することは、当業者が容易に想到し得ることといえ、その際に、排気先をワークの加工・処理に影響のないハウジングの外側とすることは、隙間の空気を吸引することの技術的意義に鑑みれば、当業者が適宜になし得ることといえる。
よって、引用発明を相違点に係る本願発明の構成とすることは、引用文献2に記載の事項に基づいて当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、本願発明の奏する作用及び効果を検討しても、引用発明及び引用文献2に記載の事項から予測できる程度のものであって格別のものではない。

したがって、本願発明は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、引用発明及び引用文献2に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-09-06 
結審通知日 2017-09-12 
審決日 2017-09-25 
出願番号 特願2015-99326(P2015-99326)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北中 忠渡邊 義之  
特許庁審判長 中村 達之
特許庁審判官 中川 隆司
平田 信勝
発明の名称 回転機構、工作機械及び半導体製造装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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