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審決分類 |
審判 一部申し立て 4項(134条6項)独立特許用件 H01L 審判 一部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1334310 |
異議申立番号 | 異議2017-700004 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-01-05 |
確定日 | 2017-09-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5948513号発明「ウエハー保持台及びその製法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5948513号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正することを認める。 特許第5948513号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第5948513号の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成27年9月4日に特許出願され、平成28年6月10日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人徳田あけみ(以下、「特許異議申立人」という。)により請求項1ないし6に対して特許異議の申立てがされ、平成29年3月27日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年5月26日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年7月3日に意見書が提出されたものである。 2.訂正の適否についての判断 (1)訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。 請求項1に「前記静電チャックは、セラミック基材に静電電極が内蔵されたものであり、」を追加する訂正をする。(訂正事項) (2)訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記の訂正事項に関連する記載として、明細書の発明の詳細な説明の段落0014には「静電チャック12としては、例えば、アルミナ製や窒化アルミニウム製のセラミック基材に静電電極12aとヒーター電極12bとが内蔵された周知のものを用いることができる。」と記載されていることから、「前記静電チャックは、セラミック基材に静電電極が内蔵されたものであ」る発明は明細書に記載されているものと認められる。 そして、上記の訂正は、明細書に記載された事項の範囲内において「静電チャック」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 そして、これら訂正は一群の請求項に対して請求されたものである。 (3)特許異議の申立てがされていない請求項に係る発明の独立特許要件について 訂正請求により、特許異議の申立てがされている請求項は、訂正後の請求項1ないし6となった。 一方、訂正後の請求項7、8に係る発明は、それぞれ訂正後の請求項1を直接または間接に引用しこれに従属する発明であり、かつ特許異議の申立てがされていないことから、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される特許法第126条第7項の規定を満たしているか否かを検討する。 訂正後の請求項1ないし6に係る発明については、本審決の「3.特許異議の申立てについて」において後記するように、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえず、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、訂正後の請求項7に係る発明は、訂正後の請求項1ないし6のいずれかを引用しこれに従属する発明であるから、本審決の「3.特許異議の申立てについて」と同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。また、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、訂正後の請求項8に係る発明は、訂正後の請求項7を引用しこれに従属する発明であるから、本審決の「3.特許異議の申立てについて」と同様に、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。また、他に特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、訂正後の請求項7、8に係る発明は、特許出願の際、独立して特許を受けることができるものと認められる。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第9項により読み替えて準用される特許法第126条第7項の規定を満たしている。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第7項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-8〕について訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて (1)本件発明 本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし8に係る発明(以下「本件発明1ないし8」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件発明1「【請求項1】 セラミック製の静電チャックと金属製の冷却板との間に樹脂製の接着層を備えたウエハー保持台であって、 前記静電チャックは、セラミック基材に静電電極が内蔵されたものであり、 前記接着層は、前記静電チャックに接する第1層と、前記冷却板に接する第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置する中間層とを含み、耐熱性については前記第1層及び前記中間層が前記第2層より高く、柔軟性については前記第2層が前記第1層及び前記中間層より高く、各層が気密に接している、 ウエハー保持台。」 本件発明2「【請求項2】 室温において前記第2層の弾性率が前記第1層及び前記中間層より小さい、 請求項1に記載のウエハー保持台。」 本件発明3「【請求項3】 前記第2層は、エポキシ-アクリル混合樹脂層であり、室温においてせん断の弾性率Z(MPa)が0.048≦Z≦2.350である、 請求項1又は2に記載のウエハー保持台。」 本件発明4「【請求項4】 前記第1層及び前記中間層は、200℃で耐熱を示すポリイミド系樹脂層、エポキシ系樹脂層又はPEEK樹脂層であり、 前記第2層は、エポキシ-アクリル混合樹脂層である、 請求項1?3のいずれか1項に記載のウエハー保持台。」 本件発明5「【請求項5】 前記第1層及び前記中間層は、250℃で耐熱を示すポリイミド系樹脂層、エポキシ系樹脂層又はPEEK樹脂層である、 請求項4に記載のウエハー保持台。」 本件発明6「【請求項6】 前記第2層の厚みは、前記第1層と前記中間層の厚みの和よりも薄く、150?400μmである、 請求項1?5のいずれか1項に記載のウエハー保持台。」 本件発明7「【請求項7】 請求項1?6のいずれか1項に記載のウエハー保持台を製造する方法であって、 前記静電チャックの一方の面に前記第1層が熱硬化する前の第1層前駆体の層を設けると共に、前記冷却板の一方の面に前記第2層が熱硬化する前の第2層前駆体の層を設け、前記静電チャックの前記第1層前駆体の層と前記冷却板の前記第2層前駆体の層との間に前記中間層に相当する熱硬化済みの平坦な樹脂シートを挟み込むことで積層体とし、該積層体を袋内に入れて該袋内を減圧にしたあと該袋の外部から加圧しつつ加熱することにより、前記第1層前駆体の層及び前記第2層前駆体の層を熱硬化させる、 ウエハー保持台の製法。」 本件発明8「【請求項8】 前記第2層前駆体の層は、(A)水素移動型の重付加が可能なエポキシ樹脂、(B)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体、(C)硬化剤、を含む接着材の層である、 請求項7に記載のウエハー保持台の製法。」 (2)取消理由の概要 訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して平成29年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2ないし6号証に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1及び2に係る特許は、取り消されるべきものである。 (3)甲号証の記載 ア 甲第1号証:特開2003-142567号公報 上記甲第1号証には、「セラミック製の静電チャック部5と金属製の導電性ベース部材10との間に樹脂製の接着層を備えたウエハ載置ステージ1であって、 静電チャック部5は、セラミック版状体2の下面に導体層よりなる静電吸着用電極4を形成したものであって、 接着層は、静電チャック部5に接する第一の有機系接着剤層6と、 導電性ベース部材10に接する第二の有機系接着剤8と、 第一の有機系接着剤層6と第二の有機系接着剤8との間に位置する絶縁性フィルム7とを含み、 各層が気密に接している、ウエハ載置ステージ」という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 イ 甲第2号証:柳原榮一、「わかりやすい接着技術読本 接着材からみた接着技術 金属材料編」、日刊工業新聞社、2003年3月、p.15-29、28-39、45-49 上記甲第2号証には、「耐熱性の順序として、ポリイミド、エポキシ接着剤>ゴム系接着材」である技術的事項が記載されている。 ウ 甲第3号証:久保田浪之介、「おもしろ話で理解する材料力学入門」、日刊工業新聞社、2005年11月、p.33-34、60-62 上記甲第3号証には、「ヤング率は、弾性率、弾性係数と同じ」である技術的事項と、「ヤング率(弾性率)が小さい材料は、柔らかい材料」である技術的事項が記載されている。 エ 甲第4号証:宇津木諭、「絵ときでわかる材料力」、株式会社オーム社、平成19年8月、p.20-27 上記甲第4号証には、「せん断の弾性率と縦弾性係数(ヤング率)は比例」する技術的事項が記載されている。 オ 甲第5号証:よくある質問(Q&A)|カプトンR(○付き文字)|東レ・デュポン株式会社、[平成28年10月11日検索]、インターネット<URL:http://www.td-net.co.jp/kapton/faq.html> 上記甲第5号証には、「カプトンR(○付き文字)のポアソン比が、0.29?0.30程度」である技術的事項が記載されている。 カ 甲第6号証:超耐熱・超耐寒性ポリイミドフィルム カプトンR(○付き文字) 東レ・デュポン株式会社、[平成28年12月8日検索]、インターネット<URL:http://www.td-net.co.jp/products/download/documents/kapton2007.pdf> 上記甲第6号証には、「カプトンR(○付き文字)の引張弾性率が3.1?3.5GPa」である技術的事項が記載されている。 (4)判断 ア 取消理由通知に記載した取消理由について (ア)特許法第29条第2項について 本件発明1と引用発明とを対比すると、本件発明1は、「静電チャックは、セラミック基材に静電電極が内蔵されたもの」であるのに対し、引用発明は、「静電チャックは、セラミック基材の下面に静電電極が形成されたもの」である点で相違する。 そして、引用発明に接した当業者が、セラミック基材の下面に静電電極が形成された静電チャックに換えて、セラミック基材に静電電極が内蔵された静電チャックを用いようとする動機付けが存在しない。 また、仮に上記動機付けが存在した場合を検討する。 甲第1号証の明細書の段落0026に「ただし、絶縁性フィルム7の厚みTが5μm未満となると、一対の静電吸着用電極4間に100Vの電圧を印加した時、絶縁フィルム7が絶縁破壊する恐れがあり、また、絶縁性フィルム7の厚みTが100μmを超えると、セラミック板状体2との間の熱膨張差によって接着した際にセラミックス板状体2を変形させ、絶縁性フィルム7の平面度が悪くなる。しかも、厚みTが厚くなると熱伝達が悪くなり、ウエハWの冷却効率が低下させる恐れがある。」と記載されている。 この、「絶縁性フィルム7の厚みTが100μmを超えると、・・・絶縁性フィルム7の平面度が悪くなる。」及び「厚みTが厚くなると熱伝達が悪くなり、ウエハWの冷却効率が低下させる恐れがある。」との記載からすると、「平面度」及び「熱伝達」の観点からは、「絶縁性フィルム7」は薄い方が良いことが理解できるところ、「絶縁性フィルム7の厚みTが5μm未満となると、一対の静電吸着用電極4間に100Vの電圧を印加した時、絶縁フィルム7が絶縁破壊する恐れがあ」るため、「絶縁性フィルム7の厚みTが5μm」以上は必要であると理解できる。 してみると、引用発明において、セラミック基材に静電電極が内蔵された静電チャックを用いようとした場合に、求められる絶縁性が変化するのは明らかであるところ、最低5μmの「絶縁性フィルム7」をそのまま残さなければならないと当業者が認識するものとは認められない。 また、甲第2ないし6号証からも「セラミック基材に静電電極が内蔵された静電チャック」を用いた場合に、「絶縁性フィルム」が必須であることが周知であるとの根拠も存在しない。 よって、仮に上記動機付けが存在するとしても、引用発明において、静電チャックを置き換えた場合に、「絶縁性フィルム7」をそのまま残すものとは認められない。 したがって、本件発明1は、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 本件発明2は、本件発明1を引用するものであるから、本件発明1と同様に、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)特許異議申立人の意見について 特許異議申立人は、甲第1号証の段落0012、0026、0027を引用して、「絶縁性フィルム」が必要である旨の主張をしている。 しかしながら、上記(ア)のとおり、「セラミック基材に静電電極が内蔵された静電チャック」の場合にも、「セラミック基材の下面に静電電極が形成された静電チャック」の場合と同程度の「絶縁性フィルム」が必要であるとする根拠が不明であるため、上記特許異議申立人の主張は採用することができない。 イ 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項3ないし6に関し、特許異議申立書において、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3ないし6に係る特許は、取り消されるべきものである旨主張している。 しかしながら、訂正後の特許請求の範囲の請求項3ないし6に係る発明は、直接または間接に請求項1に係る発明を引用しているため、上記ア(ア)と同様の理由により、引用発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 4.むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 セラミック製の静電チャックと金属製の冷却板との間に樹脂製の接着層を備えたウエハー保持台であって、 前記静電チャックは、セラミック基材に静電電極が内蔵されたものであり、 前記接着層は、前記静電チャックに接する第1層と、前記冷却板に接する第2層と、前記第1層と前記第2層との間に位置する中間層とを含み、耐熱性については前記第1層及び前記中間層が前記第2層より高く、柔軟性については前記第2層が前記第1層及び前記中間層より高く、各層が気密に接している、 ウエハー保持台。 【請求項2】 室温において前記第2層の弾性率が前記第1層及び前記中間層より小さい、 請求項1に記載のウエハー保持台。 【請求項3】 前記第2層は、エポキシ-アクリル混合樹脂層であり、室温においてせん断の弾性率Z(MPa)が0.048≦Z≦2.350である、 請求項1又は2に記載のウエハー保持台。 【請求項4】 前記第1層及び前記中間層は、200℃で耐熱を示すポリイミド系樹脂層、エポキシ系樹脂層又はPEEK樹脂層であり、 前記第2層は、エポキシ-アクリル混合樹脂層である、 請求項1?3のいずれか1項に記載のウエハー保持台。 【請求項5】 前記第1層及び前記中間層は、250℃で耐熱を示すポリイミド系樹脂層、エポキシ系樹脂層又はPEEK樹脂層である、 請求項4に記載のウエハー保持台。 【請求項6】 前記第2層の厚みは、前記第1層と前記中間層の厚みの和よりも薄く、150?400μmである、 請求項1?5のいずれか1項に記載のウエハー保持台。 【請求項7】 請求項1?6のいずれか1項に記載のウエハー保持台を製造する方法であって、 前記静電チャックの一方の面に前記第1層が熱硬化する前の第1層前駆体の層を設けると共に、前記冷却板の一方の面に前記第2層が熱硬化する前の第2層前駆体の層を設け、前記静電チャックの前記第1層前駆体の層と前記冷却板の前記第2層前駆体の層との間に前記中間層に相当する熱硬化済みの平坦な樹脂シートを挟み込むことで積層体とし、該積層体を袋内に入れて該袋内を減圧にしたあと該袋の外部から加圧しつつ加熱することにより、前記第1層前駆体の層及び前記第2層前駆体の層を熱硬化させる、 ウエハー保持台の製法。 【請求項8】 前記第2層前駆体の層は、(A)水素移動型の重付加が可能なエポキシ樹脂、(B)アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの重合体、(C)硬化剤、を含む接着材の層である、 請求項7に記載のウエハー保持台の製法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-06 |
出願番号 | 特願2015-562221(P2015-562221) |
審決分類 |
P
1
652・
121-
YAA
(H01L)
P 1 652・ 856- YAA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 儀同 孝信 |
特許庁審判長 |
西村 泰英 |
特許庁審判官 |
渡邊 真 平岩 正一 |
登録日 | 2016-06-10 |
登録番号 | 特許第5948513号(P5948513) |
権利者 | 日本碍子株式会社 |
発明の名称 | ウエハー保持台及びその製法 |
代理人 | 特許業務法人アイテック国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人アイテック国際特許事務所 |