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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1334328
異議申立番号 異議2016-700646  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-28 
確定日 2017-09-04 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5864021号発明「ポリエステル樹脂組成物、射出成形品、光反射体基体及び光反射体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5864021号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔14?16〕について訂正することを認める。 特許第5864021号の請求項14?16に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5864021号の請求項1?16に係る特許についての出願は、平成28年1月8日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人岩崎勇より請求項14?16に対して特許異議の申立てがされ、同年11月4日付けで取消理由が通知され、平成29年1月6日付け(受理日:同年1月6日)で意見書の提出及び訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、同年2月15日付け(受理日:同年2月16日)で特許異議申立人岩崎勇から意見書が提出され、同年3月29日付けで取消理由通知(決定の予告)がされたところ、その指定期間内に特許権者から意見書が提出されなかったものである。

第2 訂正の適否
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。

特許請求の範囲の請求項14に「ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂成分(A)」と記載されているのを「ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、スチレン系樹脂を3?15質量%含有する樹脂成分(A)」に訂正する。(以下、「訂正事項1」という。)
特許請求の範囲の請求項14に「該ポリエステル樹脂組成物を射出成形してなる成形品表面の最大高さRyが5.5μm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。」と記載されているのを「該ポリエステル樹脂組成物を、以下の条件で射出成形してなる成形品表面の最大高さRyが5.5μm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
条件:シリンダー温度260℃、射出時間30sec、射出速度60mm/sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、#14000による表面仕上げを施した鏡面金型を用い、金型温度は60℃とする。」に訂正する。(以下、「訂正事項2」という。)
また、当該請求項14を引用する請求項15及び請求項16も併せて訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項14の「ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂成分(A)」がさらに「スチレン系樹脂を3?15質量%含有する」とするものであり、「樹脂成分(A)」をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。また、訂正事項1は、願書に添付した明細書の段落【0126】に記載されているから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項2は、訂正前の請求項14の「射出成形」の条件を「条件:シリンダー温度260℃、射出時間30sec、射出速度60mm/sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、#14000による表面仕上げを施した鏡面金型を用い、金型温度は60℃とする。」とするものであり、願書に添付した明細書の段落【0121】の記載に照らせば、射出成形は当該条件で行われるものと認められ、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。また、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
さらに、本件訂正請求による訂正は、訂正後の請求項14?16についての訂正であるが、訂正前の請求項15及び請求項16は訂正前の請求項14を引用するものであるので、訂正前の請求項14?16は、一群の請求項である。したがって、本件訂正請求は、一群の請求項に対して請求されたものである。

3.小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項14?16について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正後の請求項14?16に係る発明(以下、それぞれ「本件発明14」?「本件発明16」という。)は、その特許請求の範囲の請求項14?16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項14】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、スチレン系樹脂を3?15質量%含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、平均一次粒子径が2.5μm以下、比重が3g/cm^(3)以下の無機充填材(B)0.1?20質量部を含有するポリエステル樹脂組成物であって、該ポリエステル樹脂組成物を、以下の条件で射出成形してなる成形品表面の最大高さRyが5.5μm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
条件:シリンダー温度260℃、射出時間30sec、射出速度60mm/sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、#14000による表面仕上げを施した鏡面金型を用い、金型温度は60℃とする。
【請求項15】
成形品表面の算術平均粗さRaが0.25μm以下である請求項14に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項16】
表面に膜厚150nmのアルミニウム層を設けた成形品の、アルミニウム層側の拡散反射率が1%未満である請求項14又は15に記載のポリエステル樹脂組成物。」

2.取消理由(決定の予告)の概要
取消理由(決定の予告)の概要は次のとおりである。

「1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2)本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。



第1 本件発明
・・・(略)・・・
第2 取消理由
・・・(略)・・・
4.刊行物4に基づく特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項について
(1)刊行物
刊行物4:特開2008-280498号公報(特許異議申立書に添付された甲第4号証)

(2)刊行物4の記載事項
本件特許の優先日前に頒布された刊行物4である特開2008-280498号公報(以下、「引用文献4」という。)には、次の事項(以下、「摘示ア4」?「摘示キ4」という。)が記載されている。
・・・(略)・・・
(3)引用文献4に記載された発明の認定
引用文献4には、摘示ア4?キ4、特に摘示ウ4?キ4における実施例3の記載から、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認める。
・・・(略)・・・
(4)本件発明14と引用発明4との対比・判断
・・・(略)・・・
以上のことから、本件発明14は、引用文献4に記載された発明であるから、請求項14に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。仮にそうでないとしても、本件発明14は、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(5)本件発明15と引用発明4との対比・判断
・・・(略)・・・
以上のことから、本件発明15は、引用文献4に記載された発明であるから、請求項15に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。仮にそうでないとしても、本件発明15は、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(6)本件発明16と引用発明4との対比・判断
・・・(略)・・・
以上のことから、本件発明16は、引用文献4に記載された発明であるから、請求項16に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。仮にそうでないとしても、本件発明16は、引用文献4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。」

3.取消理由(決定の予告)についての判断
3-1 引用文献の記載等
(1)引用文献4の記載
取消理由通知(決定の予告)において引用した引用文献4(特開2008-280498号公報)には、次の事項(以下、「摘示ア4」?「摘示ク4」という。)が記載されている。

ア4 「【請求項1】
表面に光反射層を設ける光反射体基体用ポリエステル樹脂組成物であって、該組成物が(A)ポリエステル樹脂100重量部、(B)重量平均分子量2000以上、酸価が1mgKOH/gを超えて10mgKOH/g未満である変性ポリオレフィン樹脂0.05?2重量部を含むことを特徴とする、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
さらに、(C)平均粒子径が10μm以下の微粉末フィラーを、(A)ポリエステル樹脂100重量部に対して0.1?50重量部含有することを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
(A)ポリエステル樹脂の少なくとも1種が、ポリブチレンテレフタレート樹脂であることを特徴とする、請求項1?5のいずれか1項に記載のポリエステル樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1、3、8)

イ4 「熱可塑性樹脂製の光反射体基体には、機械的性質、電気的性質、その他物理的・化学的特性に優れ、かつ良好な加工性が要求されるので、この様な熱可塑性樹脂として、結晶性熱可塑性ポリエステル樹脂、特にポリブチレンテレフタレート樹脂単独またはポリエチレンテレフタレート樹脂と他の樹脂との混合物に様々な強化材を添加配合した樹脂組成物が用いられてきた。そして光反射体基体表面にアンダーコート等の前処理(下塗り)を行った後、真空蒸着等により光反射層として金属薄膜層を形成し、光反射体を製造する方法が一般的であった。
しかしアンダーコート等の下塗りは、大幅なコストアップとなるので、アンダーコートしなくとも高い輝度感を有する光反射体を得ることが望まれている。アンダーコートしなくとも成形体の一面に光反射層を付与された反射体が、高い輝度感・均一な反射率を有するには、樹脂成形体自体が良好な表面平滑性を有し、且つ高い光沢性・輝度感を有することが必要となる。またその用途仕様から、樹脂の耐熱性や、成形時等におけるガス発生抑制(低ガス性)も重要な問題である。」(段落【0005】、【0006】)

ウ4 「本発明のポリエステル樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、良好な外観、成形収縮等を目的としてポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂などの樹脂や通常の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、繊維状強化剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤、顔料等を含有することができる。
これらの添加剤の含量は、本発明のポリエステル樹脂組成物の10重量%以下であることが好ましい。」(段落【0084】)

エ4 「以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
これらの実施例および比較例においては下記の成分を使用した。
[ポリエステル樹脂](ポリアルキレンテレフタレート樹脂)
(1)ポリブチレンテレフタレート(PBT):三菱エンジニアリングプラスチックス(MEP)社製ノバデュラン5008 η=0.85、末端カルボキシル基量20μeq/g、Mn20,000」(段落【0093】?【0095】)

オ4 「(4)ポリエチレンテレフタレート(PET):三菱化学社製GS385 η=0.65」(段落【0098】)

カ4 「[変性ポリオレフィン樹脂]
(6)酸化ポリエチレンワックス:クラリアント社製リコワックス 分子量5500、酸価3?5mgKOH/g (酸化ポリエチレンワックス(クラリアント社製リコワックスPED522、分子量3100、酸価22?28mgKOH/g)と、ポリエチレンワックス(クラリアント社製リコワックスPE520、分子量6000、酸価0mgKOH/g)との混合物)」(段落【0100】)

キ4 「[微粉末フィラー]
(12)焼成カオリン:ENGELHARD社製 ウルトレックス98 平均粒子径0.75μm 吸油量90ml/100g
(12')タルク:林化成社製 ミセルトン 平均粒子径1.4μm、吸油量50ml/100g
[有機リン酸エステル]
(13)オキシエチルアシッドホスフェート:城北化学社製 JP-502
(14)ステアリン酸ホスフェート:旭電化社製 AX-71」(段落【0106】、【0107】)

ク4 「〔実施例1?12、比較例1?9〕
ポリエステル樹脂、変性ポリオレフィン樹脂、微粒子フィラー、およびその他の添加剤を、表1の組成で十分にドライブレンドした後、250℃に設定した2軸スクリュウ押出機を用い、15Kg/時間の押出速度でペレット化した。
得られたペレットを射出成形前に120℃、6時間乾燥し、型締め力が75tonの射出成形機を用い、成形温度265℃、成形体形状が100mm×100mm×3mmの鏡面金型を用い、金型温度110℃で成形して、樹脂成形体を得た。射出成形時の離型性は良好であり、無抵抗で成形体の取り出しが可能であった。
得られた樹脂成形体の表面に、プライマー処理を施さずにアルミ膜厚140nmになるよう、アルミ蒸着を行って、アルミ蒸着を行った光反射体を得た。また上述したペレットを用いて、射出成形機で、成形温度265℃、金型温度80℃にて、ISO試験片を成形した。
以上の試験・評価結果を、各成分を重量部で表し、表1?表3に示した。
【表1】

」(段落【0114】?【0118】)

(2)引用文献4に記載された発明
引用文献4には、摘示ア4?ク4、特に摘示エ4?ク4における実施例3の記載から、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認める。

「表面に光反射層を設ける光反射体基体用ポリエステル樹脂組成物であって、該組成物がポリブチレンテレフタレート60重量部、及びポリエチレンテレフタレート40重量部の(A)ポリエステル樹脂100重量部、(B)重量平均分子量5500、酸価が3?5mgKOH/gである酸化ポリエチレンワックス0.6重量部、(C)平均粒子径が0.75μmの焼成カオリンを(A)ポリエステル樹脂100重量部に対して11.2重量部含むことを特徴とする、ポリエステル樹脂組成物。」

(3)引用文献5の記載
本件特許の優先日前に頒布された刊行物であり、平成29年2月15日付け(受理日:同年2月16日)で特許異議申立人岩崎勇から提出された意見書に添付された参考資料2である国際公開第2005/019344号(以下、「引用文献5」という。)には、次の事項(以下、「摘示ア5」、「摘示イ5」という。)が記載されている。

ア5 「1. 熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、脂肪酸系表面処理剤で処理された平均粒子径3μm以下の無機充填材(B1)を2?45質量部含有する光反射体用熱可塑性樹脂組成物。
6. 熱可塑性樹脂(A)が、ポリエステル樹脂(a)を主成分とする熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1、3、または5に記載の光反射体用熱可塑性樹脂組成物。
7. 熱可塑性樹脂(A)が、ビニル系熱可塑性樹脂(x)2?20質量%を含有することを特徴とする請求項1、3、または5に記載の光反射体用熱可塑性樹脂組成物。
8. ビニル系熱可塑性樹脂(x)が、アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(x-1)、エポキシ基含有アクリロニトリル-スチレン共重合樹脂(x-2)、マレイミド系共重合樹脂(x-3)から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の光反射体用熱可塑性樹脂組成物。」(請求の範囲の請求項1、6?8)

イ5 「本発明においては、熱可塑性樹脂(A)は、上述のポリエステル樹脂(a)の他にも、成形品の収縮率および表面平滑性の面から、ビニル系熱可塑性樹脂(x)を含有することが好ましい。ビニル系熱可塑性樹脂(x)の含有量は、特に制限されないが、熱可塑性樹脂(A)全量中、2?20質量%であることが好ましい。この含有量が2質量%以上の場合に成形品の収縮率が小さくなり表面平滑性が良好となる傾向にあり、20質量%以下の場合に成形品の機械的強度および耐熱性が良好となる傾向にある。
ビニル系熱可塑性樹脂(x)の含有量の下限値は、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が特に好ましい。また、この含有量の上限値は15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が特に好ましい。 」(第9頁下から第1行?第10頁上から第9行)

3-2 対比・判断
(1)本件発明14について
本件発明14と引用発明4とを対比する。
引用発明4における「焼成カオリン」は、本件発明14における「無機充填材」に相当する。また、引用発明4における焼成カオリンは平均粒子径が0.75μmであるから、粒子として最も小さい単位である一次粒子による平均一次粒子径は0.75μm以下になると解され、当該焼成カオリンは、本件発明14において、無機充填材の「平均一次粒子径が2.5μm以下」であるという数値範囲を満たすといえる。
引用発明4において、ポリエステル樹脂100重量部、及び酸化ポリエチレンワックス0.6重量部に対して焼成カオリンは11.2重量部を占めており、当該焼成カオリンは、樹脂成分100重量部に対して11.1重量部を占めることになるから、本件発明14において、無機充填材を「0.1?20質量部」含有するという数値範囲を満たす。

そうすると、両者は、
「ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂成分(A)100質量部に対し、平均一次粒子径が2.5μm以下の無機充填材(B)0.1?20質量部を含有するポリエステル樹脂組成物。」
の点で一致し、以下の相違点1で一応相違し、また、以下の相違点2、3で相違している。

<相違点1>
本件発明14においては、無機充填材が「比重が3g/cm^(3)以下」と特定されているのに対して、引用発明4においては、そのような特定はされていない点。

<相違点2>
本件発明14においては、樹脂成分が「スチレン系樹脂を3?15質量%含有する」と特定されているのに対して、引用発明4においては、そのような特定はされていない点。

<相違点3>
本件発明14においては、「ポリエステル樹脂組成物を、以下の条件で射出成形してなる成形品表面の最大高さRyが5.5μm以下である」、「条件:シリンダー温度260℃、射出時間30sec、射出速度60mm/sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、#14000による表面仕上げを施した鏡面金型を用い、金型温度は60℃とする。」と特定されているのに対して、引用発明4においては、そのような特定はされていない点。

相違点1について検討すると、引用発明4においては、本件発明14における無機充填材に相当する焼成カオリンの比重が3g/cm^(3)以下であることは規定されていないが、焼成カオリンの比重は一般に3g/cm^(3)以下であるものと認められる(例えば、特許異議申立書に添付された参考資料1「(株)イメリス ミネラルズ ジャパンのカオリンのカタログ」参照)。したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

次に、相違点2について検討すると、引用文献4には、ポリエステル樹脂組成物は、良好な外観、成形収縮等を目的として、アクリロニトリル-スチレン樹脂(本件発明14における「スチレン系樹脂」に相当する。)を含有することができることが記載されている(摘示ウ4)。一方、引用文献5には、引用発明4と同じ光反射体用のポリエステル樹脂組成物に関して、当該組成物に配合可能な熱可塑性樹脂はポリエステル樹脂の他にもビニル系熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、ビニル系熱可塑性樹脂の含有量が熱可塑性樹脂全量中2質量%以上の場合に成形品の収縮率が小さくなり表面平滑性が良好となる傾向にあり、20質量%以下の場合に成形品の機械的強度および耐熱性が良好となる傾向にあることが記載されている(摘示ア5、イ5)。また、引用文献5には、ビニル系熱可塑性樹脂がアクリロニトリル-スチレン共重合樹脂であること、ビニル系熱可塑性樹脂の含有量はより好ましくは3質量%以上15質量%以下であることが記載されている(摘示ア5、イ5)。
引用文献4、5は、光反射体用のポリエステル樹脂組成物に関するもので共通しており(摘示ア4、ア5)、引用発明4において、引用文献4に記載されているように、良好な外観、成形収縮等を目的としてアクリロニトリル-スチレン樹脂を、引用文献5により好ましいと記載された3質量%以上15質量%以下という含有量で含有させ、上記相違点2に係る本件発明14の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、外観、成形収縮等が良好であるという効果の他、機械的強度等が良好であるという効果は、引用文献4、5の記載から当業者が予測し得るものである。

次に、相違点3について検討すると、引用発明4の樹脂組成物は、樹脂組成物を射出成形した成形品の表面にプライマー処理を施さずに、すなわちアンダーコートしないでアルミ蒸着を行って光反射体とするものであり(摘示ク4)、アンダーコートしなくとも成形体の一面に光反射層を付与された反射体が高い輝度感・均一な反射率を有するには、樹脂成形体自体が良好な表面平滑性を有することが必要となるから(摘示イ4)、引用発明4の樹脂組成物を射出成形した成形品は、アンダーコートのない光反射体として使用できる高い表面平滑性を有さなければならない。してみると、引用発明4において、その射出成形品の表面平滑性を高いものとするために、表面粗さを評価するための測定サンプルを設定し、当該測定サンプルにおいて、表面粗さの一般的な指標として周知であるRyを小さく規定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、Ryの上限値や、その測定サンプルの設定条件が本件発明14において規定されるものであることによって格別臨界的な効果があるともいえない。

以上のことから、本件発明14は、引用発明4及び引用文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(2)本件発明15について
本件発明15と引用発明4とを対比すると、上記相違点1で一応相違し、上記相違点2、3で相違し、さらに以下の相違点4で相違し、その余の点で一致している。

<相違点4>
本件発明15においては、ポリエステル樹脂組成物について、「成形品表面の算術平均粗さRaが0.25μm以下である」と特定されているのに対して、引用発明4においては、そのような特定はされていない点。

相違点1?3については、上記「(1)本件発明14について」ですでに検討したとおりである。
次に、相違点4について検討すると、上記「(1)本件発明14について」で検討したように、引用発明4の樹脂組成物を射出成形した成形品は、アンダーコートのない光反射体として使用できる高い表面平滑性を有さなければならない。してみると、引用発明4において、その射出成形品の表面平滑性を高いものとするために、表面粗さを評価するための測定サンプルを設定し、当該測定サンプルにおいて、表面粗さの一般的な指標として周知であるRaを小さく規定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、Raの上限値や、その測定サンプルの設定条件が本件発明15において規定されるものであることによって格別臨界的な効果があるともいえない。

以上のことから、本件発明15は、引用発明4及び引用文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)本件発明16について
本件発明16と引用発明4とを対比すると、上記相違点1で一応相違し、上記相違点2、3で相違し、さらに以下の相違点5で相違し、その余の点で一致している。

<相違点5>
本件発明16においては、ポリエステル樹脂組成物について、「表面に膜厚150nmのアルミニウム層を設けた成形品の、アルミニウム層側の拡散反射率が1%未満である」と特定されているのに対して、引用発明4においては、そのような特定はされていない点。

相違点1?3については、上記「(1)本件発明14について」ですでに検討したとおりである。
次に、相違点5について検討すると、上記「(1)本件発明14について」で検討したように、引用発明4の樹脂組成物は、樹脂組成物を射出成形した成形品の表面にプライマー処理を施さずにアルミ蒸着を行って光反射体とするものである。してみると、引用発明4において、その光反射体としての性能を良好なものとするために、拡散反射率を評価するための測定サンプルを設定し、当該測定サンプルにおける拡散反射率を小さく規定することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
また、拡散反射率の上限値や、その測定サンプルの設定条件が本件発明16において規定されるものであることによって格別臨界的な効果があるともいえない。

以上のことから、本件発明16は、引用発明4及び引用文献5に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

第4 むすび
以上のとおり、請求項14?16に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極限粘度[η]が0.6?1.8dl/gであるポリブチレンテレフタレート樹脂ペレット(A1)及び極限粘度[η]が0.5?2dl/gであるポリエステル樹脂パウダー(A2)を含む樹脂成分(A)100質量部に対し、平均一次粒子径が2.5μm以下の無機充填材(B)0.1?20質量部を含有し、
ポリエステル樹脂パウダー(A2)は、平均粒子径が100?1500μmであり、含有量が樹脂成分(A)中の1?50質量%であり、
ポリエステル樹脂パウダー(A2)と無機充填材(B)の含有量の質量比が、(A2):(B)で、30:70?95:5であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
ポリエステル樹脂パウダー(A2)と無機充填材(B)のブレンド物のずり剪断最大応力が8N以下である請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
ポリエステル樹脂パウダー(A2)の平均粒子径が無機充填材(B)の平均一次粒子径の1000?8000倍である請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
ポリエステル樹脂パウダー(A2)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂パウダーである請求項1?3のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
無機充填材(B)が、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、シリカ、カオリン、硫酸バリウム及びケイ酸ジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1?4のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
無機充填材(B)が炭酸カルシウムである請求項1?5のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
樹脂成分(A)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂(A3)及び/又はスチレン系樹脂(A4)を含有し、樹脂成分(A)中の含有量が1?40質量%である請求項1?6のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
さらに、酸価10?40mgKOH/gの離型剤を、樹脂成分(A)100質量部に対し、0.001?2質量部含有する請求項1?7のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項9】
さらに、融点が150℃以上のヒンダードフェノール系安定剤を、樹脂成分(A)100質量部に対し、0.001?1質量部含有する請求項1?8のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1?9のいずれかに記載のポリエステル樹脂組成物を射出成形してなる射出成形品。
【請求項11】
光反射体基体である請求項10に記載の射出成形品。
【請求項12】
請求項11に記載の光反射体基体上に光反射層を設けた光反射体。
【請求項13】
光反射層が金属薄膜層からなり、該金属薄膜層が光反射体基体の表面に直接接している請求項12に記載の光反射体。
【請求項14】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、スチレン系樹脂を3?15質量%含有する樹脂成分(A)100質量部に対し、平均一次粒子径が2.5μm以下、比重が3g/cm^(3)以下の無機充填材(B)0.1?20質量部を含有するポリエステル樹脂組成物であって、該ポリエステル樹脂組成物を、以下の条件で射出成形してなる成形品の最大高さRyが5.5μm以下であることを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
条件:シリンダー温度260℃、射出時間30sec、射出速度60mm/sec、保圧60MPa、冷却時間15sec、#14000による表面仕上げを施した鏡面金型を用い、金型温度は60℃とする。
【請求項15】
成形品表面の算術平均粗さRaが0.25μm以下である請求項14に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項16】
表面に膜厚150nmのアルミニウム層を設けた成形品の、アルミニウム層側の拡散反射率が1%未満である請求項14又は15に記載のポリエステル樹脂組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-07-24 
出願番号 特願2015-132337(P2015-132337)
審決分類 P 1 652・ 121- ZAA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 岡▲崎▼ 忠  
特許庁審判長 小野寺 務
特許庁審判官 大島 祥吾
西山 義之
登録日 2016-01-08 
登録番号 特許第5864021号(P5864021)
権利者 三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
発明の名称 ポリエステル樹脂組成物、射出成形品、光反射体基体及び光反射体  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 平川 さやか  
代理人 平川 さやか  
代理人 小野 尚純  
代理人 小野 尚純  
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