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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1334334
異議申立番号 異議2017-700196  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-27 
確定日 2017-09-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5982248号発明「半導体装置製造用仮接合層,積層体,及び,半導体装置の製造方法。」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5982248号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5982248号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第5982248号の請求項1ないし10に係る特許についての出願は,平成24年9月28日に特許出願され,平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ,その後,平成29年2月27日に,その特許について,特許異議申立人 磯 瑠里子 により特許異議の申立てがなされ,平成29年4月27日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である同年6月19日に意見書の提出及び訂正の請求があり,同年7月27日に特許異議申立人から意見書の提出があったものである。

2 訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年6月19日付け訂正請求書(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のアないしウのとおりである。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層である半導体装置製造用仮接合層。」とあるのを,「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む半導体装置製造用仮接合層。」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に「前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置製造用仮接合層。」とあるうち,請求項1を引用するものについて,独立形式に改め,「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。」とした後,上記「ポリスチレン樹脂」及び上記「オレフィンモノマー重合体」を削除して,「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がテルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。」と訂正する。

ウ 訂正事項3
明細書の段落【0021】に記載された
「本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討した結果,支持体と被処理部材との間に炭化水素樹脂層と接着性層を設けることにより,研磨や加熱などの物理的な刺激に対して高い耐久性を持ち,また剥離の際には剥離溶剤を接触させることにより,上記の従来技術において行うような,加熱や,活性光線若しくは放射線の照射を行うこともなく,処理済部材に対する仮支持を容易に解除できることを見出し,本発明を完成するに至った。すなわち,本発明は,以下の通りである。
<1> (A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層である半導体装置製造用仮接合層。
<2> 前記炭化水素樹脂が,ポリスチレン樹脂である,<1>に記載の半導体装置製造用仮接合層。
<3> 前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含むことを特徴とする<1>又は<2>に記載の半導体装置製造用仮接合層。
<4> 支持体と,被処理部材と,前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する,積層体。
<5> 被処理部材の第1の面と基板とを,<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体,装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程,前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程,及び,前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程,を有する,前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
<6> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に,前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する,<5>に記載の半導体装置の製造方法。
<7> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後,かつ,前記被処理部材の前記第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程の前に,前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する,<5>又は<6>に記載の半導体装置の製造方法。
<8> 前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が,前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む,<5>?<7>のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
<9> 前記剥離溶剤が,炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,<8>に記載の半導体装置の製造方法。
<10> 前記剥離溶剤が,シクロペンタン,n-ヘキサン,シクロヘキサン,n-ヘプタン,リモネン,-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,<9>に記載の半導体装置の製造方法。
本発明は,上記<1>?<10>に記載の半導体装置製造用仮接合層,積層体,及び,半導体装置の製造方法に関するものであるが,その他の事項についても参考のために記載する。」を,
「本発明者らは,上記課題を解決すべく鋭意検討した結果,支持体と被処理部材との間に炭化水素樹脂層と接着性層を設けることにより,研磨や加熱などの物理的な刺激に対して高い耐久性を持ち,また剥離の際には剥離溶剤を接触させることにより,上記の従来技術において行うような,加熱や,活性光線若しくは放射線の照射を行うこともなく,処理済部材に対する仮支持を容易に解除できることを見出し,本発明を完成するに至った。すなわち,本発明は,以下の通りである。
<1> (A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層がバインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む半導体装置製造用仮接合層。
<2> 前記炭化水素樹脂が,ポリスチレン樹脂である,<1>に記載の半導体装置製造用仮接合層。
<3>(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がテルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。
<4> 支持体と,被処理部材と,前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する,積層体。
<5> 被処理部材の第1の面と基板とを,<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程,前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程,及び,前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程,を有する,前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
<6> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に,前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する,<5>に記載の半導体装置の製造方法。
<7> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後,かつ,前記被処理部材の前記第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程の前に,前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する,<5>又は<6>に記載の半導体装置の製造方法。
<8> 前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が,前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む,<5>?<7>のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
<9> 前記剥離溶剤が,炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,<8>に記載の半導体装置の製造方法。
<10> 前記剥離溶剤が,シクロペンタン,n-ヘキサン,シクロヘキサン,n-ヘプタン,リモネン,p-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,<9>に記載の半導体装置の製造方法。
本発明は,上記<1>?<10>に記載の半導体装置製造用仮接合層,積層体,及び,半導体装置の製造方法に関するものであるが,その他の事項についても参考のために記載する。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア 訂正事項1
(ア)訂正の目的について
訂正前の請求項1に係る発明は,「半導体装置製造用仮接合層」について,剥離層と接着性層とを有することを規定している。
これに対して,訂正後の請求項1に係る発明では,「接着性層が,バインターと,重合性モノマーと,熱重合性開始剤とを含む」との記載により,接着性層がどのような成分を含んでいるかについて明らかにすることで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,訂正後の請求項1を引用する請求項2,4?10は,訂正後請求項1に記載された「接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,熱重合性開始剤とを含む」との記載を引用することにより,「接着性層」をより具体的に特定し,更に限定するものであるため,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記のように,訂正事項1については,請求項1に関して「接着性層」がどのような成分を含んでいるかについて明らかにする訂正であり,カテゴリーや対象,目的を変更するものではないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1は,願書に添付した明細書中の発明の詳細な説明に基づいて導き出される構成である。
「接着性層」に係る説明として,【0050】には「接着性組成物(ひいては接着性層)は,バインダーを有していることが好ましい。」,【0052】には「また,接着性組成物(ひいては接着性層)は,重合性モノマーを含有することが好ましい。」,【0134】には「本発明の接着性組成物(ひいては接着性層)は,熱重合開始剤,すなわち熱によりラジカル又は酸を発生する化合物を含有することも好ましい。」との記載がされているから,当該訂正事項1は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

イ 訂正事項2
(ア)訂正の目的について
訂正事項2は,訂正前の請求項3の記載が訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを,請求項間の引用関係を解消し,請求項1の記載を引用しないものとし,独立形式請求項へ改めるための訂正であって,特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。また,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3に「前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層である」とあるのを,上記訂正事項2においては,「前記剥離層がテルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり」との記載により,「剥離層」について更に減縮することで,特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから,当該訂正事項2は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に,訂正後の請求項3を引用する請求項4?10は,訂正後請求項3に記載された,「前記剥離層がテルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり」との記載を引用することにより,「剥離層」を更に限定するものであるため,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記のように,訂正事項2は,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3における「剥離層」について更に限縮する訂正であるから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記のように,訂正事項2は,訂正前の請求項1を引用する訂正前の請求項3における「剥離層」について更に減縮する訂正であるから,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 訂正事項3
(ア)訂正の目的について
訂正事項3は,訂正事項1及び2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正である。
よって,訂正事項3は特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

(イ)実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更する訂正ではないこと
上記のように,訂正事項3は,訂正事項1及び2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり,訂正後の請求項1?10に対応する記載を発明の要旨として記載する訂正であるため,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものには該当せず,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

(ウ)願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記のように,訂正事項3は,訂正事項1及び2に係る訂正に伴って,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るための訂正であり,訂正後の請求項1?10に対応する記載を発明の要旨として記載する訂正であるため,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり,特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。

エ 一群の請求項について
訂正事項1ないし3による訂正は一群の請求項に対して請求されたものである

(3)むすび
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号,第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第4項,及び,同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1-10〕について,本件訂正請求による訂正を認める。

3 特許異議の申立てについて
(1)本件発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1」ないし「本件発明10」という。)は,その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む半導体装置製造用仮接合層。
【請求項2】
前記炭化水素樹脂が,ポリスチレン樹脂である,請求項1に記載の半導体装置製造用仮接合層。
【請求項3】
(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層がテルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり,前記接着性層が,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。
【請求項4】
支持体と,被処理部材と,前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する,積層体。
【請求項5】
被処理部材の第1の面と基板とを,請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程,前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程,及び,前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程,を有する,前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に,前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する,請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後,かつ,前記被処理部材の前記第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程の前に,前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する,請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が,前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む,請求項5?7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記剥離溶剤が,炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記剥離溶剤が,シクロペンタン,n-ヘキサン,シクロヘキサン,n-ヘプタン,リモネン,p-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である,請求項9に記載の半導体装置の製造方法。」

(2)取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし10に係る特許に対して平成29年4月27日付けで特許権者に通知した取消理由は,要旨次のとおりである。

1 本件特許の下記の請求項に係る発明は,本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2 本件特許の下記の請求項に係る発明は,本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,その発明に係る特許は取り消すべきものである。

・甲第1号証:国際公開第2012/057893号(日本語訳として特表2013-535838号公報を参照)
・甲第2号証:特開2010-109324号公報
・甲第3号証:特開2004-64040号公報

(1)請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。また,請求項2ないし10に係る発明を,それぞれ「本件発明2」ないし「本件発明10」という。)について
ア 本件発明1は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

すなわち,甲第1号証の請求項1,請求項6,請求項15,請求項20,第8ページ第23行-第13ページ第25行(公表特許公報【0024】-【0037】。以下同じ。)等の記載を参照されたい。
甲第1号証の第12ページ第30行-第13ページ第9行(【0035】)には,「処理が完了すると,基板12及び24は,多くの分離方法(図示せず)によって分離することができる。1つの方法では第1及び第2の接合層20,32の1つ又は両方を溶媒(例えば,リモネン,ドデセン,プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME))中に溶解する。」(下線は当審で付与した。)と記載されている。したがって,甲第1号証の「第1の接合層」は,本件発明1の「剥離層」に相当する。
また,甲第1号証の第11ページ第22-27行(【0031】)には,「第1及び第2の接合層20及び32が形成される材料は,第1及び第2の基板12及び24それぞれと並びに互いに強固な接着剤接合を形成できるものでなければならない。」と記載されている。したがって,甲第1号証の「第2の接合層」は,本件発明1の「接着性層」に相当する。
さらに,甲第1号証の第1ページ第14-17行(【0003】)の「本発明は,広くは,多層接合システムを利用する新規な暫定ウェーハー接合方法に関する。本発明の方法は,ウェーハーの薄層化及び他の背面処理中にデバイスウェーハーをキャリヤー基板上に支持することができる。」との記載から,甲第1号証の前記「第1の接合層」及び前記「第2の接合層」を含む接合層は,本件発明1の「半導体装置製造用仮接合層」に相当する。
そして,甲第1号証の請求項6,請求項20には,前記「第1の接合層」が,「溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択される」ことが記載されており,これは,本件発明1の「剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む」と一部重複する。
したがって,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明である。また仮に,甲第1号証に記載された発明と,本件発明1との間に相違点が存在したとしても,甲第1号証に記載された発明において,前記相違点について本件発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことであり,その効果も格別のものとは認められない。

イ 本件発明1は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

すなわち,甲第2号証の請求項1,請求項5,請求項9-10,請求項12-13,【0048】等の記載を参照されたい。甲第2号証の「第2接着剤層」,「第1接着剤層」は,それぞれ,本件発明1の「剥離層」,「接着性層」に相当し,甲第2号証の前記「第2接着剤層」及び前記「第1接着剤層」を含む接着剤層は,本件発明1の「半導体装置製造用仮接合層」に相当する。
そして,甲第2号証の請求項13,【0048】には,前記「第2接着剤層」が,「炭化水素樹脂」である「シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選択される」を含む層であることが記載されており,これは,本件発明1の「剥離層がポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくども一種の炭化水素樹脂を含む」と一部重複する。
したがって,本件発明1は,甲第2号証に記載された発明である。また仮に,甲第2号証に記載された発明と,本件発明1との間に相違点が存在したとしても,甲第2号証に記載された発明において,前記相違点について本件発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たことであり,その効果も格別のものとは認められない。

ウ 本件発明1は,甲第1号証に記載された発明と,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。

すなわち,甲第1号証の第13ページ第38行-第15ページ第9行(【0038】-【0043】)等の記載を参照されたい。
甲第1号証の「リフトオフ層44」,「接合層20」は,それぞれ,本件発明1の「剥離層」,「接着性層」に相当する。
そして,甲第1号証の第14ページ第14行-同ページ第25行(【0040】-【0041】)には,「リフトオフ層44を形成するために用いられる組成物は,1%の塩化水素酸水溶液,50%の酢酸水溶液,イソプロパノール,1-ドデセン,R-リモネン,シクロペンタノン,PGME,及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)から成る群から選択される溶液中で層44が可溶性であるように選択されるべきである。より詳細には,リフトオフ層44は,特定の除去溶液に接触してから約4?5時間の後に,約95%以上,好ましくは約99%以上,好ましくは100%溶解/除去される。
リフトオフ層44を形成するために好ましい組成物は上述の特性を持つ市販の組成物から選択することができる。」ことが記載されている。
一方,甲第1号証,甲第2号証等の記載から,ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂が,溶液中で可溶性という特性を備えた組成物として周知であると認められる。
そうすると,甲第1号証の第13ページ第38行-第15ページ第9行(【0038】-【0043】)に記載された発明において,「リフトオフ層44を形成するために用いられる組成物」として,溶液中で可溶性という特性を備えた組成物として知られている,ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含むものとすることは当業者が適宜なしたことであり,このような構成を採用したことによる効果も格別のものとは認められない。

(2)本件発明2について
本件発明2は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の請求項6,請求項20には,前記「第1の接合層」に含まれる炭化水素樹脂として,ポリスチレン樹脂が示されている。

(3)本件発明3について
本件発明3は,甲第1号証に記載された発明と,甲第3号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第10ページ第1行-第15行(【0027】)に「キャリヤー面26上に第2の接合層32を形成するように,第2の組成物が第2の基板24に適用される。・・・組成物が適用された後,好ましくは,温度約80℃?約250℃,より好ましくは約170℃?約220℃へ,時間約60秒?約8分(好ましくは約90秒?約6分)間加熱される。第2の接合層32を形成するために使用される組成物に依存して,焼成によって架橋反応が開始され層32を硬化することができる。幾つかの実施形態では,使用される組成物に応じて,層に多段焼成プロセスを施すことが好ましい」ことが,第11ページ第22-27行(【0031】)に「第1及び第2の接合層20及び32が形成される材料は,第1及び第2の基板12及び24それぞれと並びに互いに強固な接着剤接合を形成できるものでなければならない。」ことが,さらに,第12ページ第11-20行(【0033】)に「次に構造体10及び22は,第1の接合層20の上部表面21が第2の接合層32の上部表面33に接触するように向かい合わせにされ一緒にプレスされる(図1(b))。プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,これら2つの構造体10及び22の接合が有効になり接合されたスタック34が形成される。接合パラメータは,接合層20及び32が形成される組成物に依存して変動するが,このステップの典型的な温度範囲は,約150℃?約375℃の範囲,好ましくは約160℃?約350℃の範囲であり,典型的な圧力範囲は,約1,000N?約5,000N,好ましくは約2,000N?約4,000Nであり,時間は約30秒?約5分,より好ましくは約2分?約4分である。」ことが記載されている。
そうすると,上記記載から,甲第1号証の「第2の接合層」は,焼成によって架橋反応が開始され層を硬化するものであって,強固な接着剤接合を形成できるものであり,プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,接合が有効になる材料であると理解される。
一方,甲第3号証の【0024】に「接合層は被研削基材を光熱変換層を介して支持体に固定するために用いられる。光熱変換層における分解による基材と支持体との分離の後には,接合層が付着した基材が得られる。このため,接合層はピールにより基材から容易に剥離されうるものであることが必要である。したがって,接合層は基材を支持体に固定するためには十分な接着力を有するが,ピールにより剥離されうるために十分に低い接着力を有するものである。本発明において,接合層として使用可能な接着剤としては,ゴム,エラストマーなどを溶剤に溶解したゴム系接着剤,エポキシ,ウレタンなどをベースとする一液熱硬化型接着剤,エポキシ,ウレタン,アクリルなどをベースとする二液混合反応型接着剤,ホットメルト型接着剤,アクリル,エポキシなどをベースとする紫外線(UV)もしくは電子線硬化型接着剤,水分散型接着剤が挙げられる。(1)ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート又はポリエステルアクリレートなどの重合性ビニル基を有するオリゴマー及び/又は(2)アクリルもしくはメタクリルモノマーに光重合開始剤,及び,場合により,添加剤を添加したUV硬化型接着剤は好適に使用される。添加剤としては,増粘剤,可塑剤,分散剤,上記透明フィラー以外のフィラー,難燃剤及び熱老化防止剤などが挙げられる。」と記載されているように,本件特許の出願時において,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む接着性層は周知であったといえる。
そうすると,焼成によって架橋反応が開始され層を硬化するものであって,強固な接着剤接合を形成できるものであり,プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,接合が有効になる材料であると理解される甲第1号証の「第2の接合層」を,バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含むものとすることは当業者が容易になし得たことである。また,このような構成を採用したことによる効果も格別のものとは認められない。

(4)本件発明4について
ア 本件発明4は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の「キャリヤー面を有する第2の基板」,「背面及びデバイス面を有する第1の基板」は,それぞれ,本件発明4の「支持体」,「被処理部材」に相当する。

イ 本件発明4は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第2号証の「支持板」,「基板」は,それぞれ,本件発明4の「支持体」,「被処理部材」に相当する。

(5)本件発明5について
ア 本件発明5は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の請求項11等の記載を参照されたい。

イ 本件発明5は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第2号証の【0002】-【0004】の記載を参照されたい。甲第2号証に記載された発明は,前記【0002】-【0004】に記載されたウエハの「研削」を前提とした発明と理解されるところ,当該「研削」は,本件発明5の「機械的又は化学的な処理」に相当する。

(6)本件発明6について
ア 本件発明6は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第10ページ第1行-第15行(【0027】)に記載された,「キャリヤー面26上に第2の接合層32を形成するように,第2の組成物が第2の基板24に適用される。・・・組成物が適用された後,好ましくは,温度約80℃?約250℃,より好ましくは約170℃?約220℃へ,時間約60秒?約8分(好ましくは約90秒?約6分)間加熱される。」工程は,第2の接合層を加熱する工程であるから,熱を照射する工程といえる。したがって,当該工程は,本件発明6の,「前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程」に相当する。
そして,前記工程は,甲第1号証の第12ページ第11-20行(【0033】)に記載された,「次に構造体10及び22は,第1の接合層20の上部表面21が第2の接合層32の上部表面33に接触するように向かい合わせにされ一緒にプレスされる(図1(b))。プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,これら2つの構造体10及び22の接合が有効になり接合されたスタック34が形成される。」工程よりも前に行われる工程であるから,甲第1号証に記載された発明は,「被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に,前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する」ものと認められる。

イ 本件発明6は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
甲第2号証の【0076】の「接着剤組成物1を・・・80℃で5分間乾燥させて」という工程は,本件発明6の「前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に,前記仮接合層の接着性層に対して,活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程」に相当する。また,仮に相違するとしても,前記「80℃」での「乾燥」を,ランプ加熱等の,放射熱を用いた加熱で行うことは当業者が適宜なし得たことである。

(7)本件発明7について
ア 本件発明7は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第12ページ第11-20行(【0033】)に記載された「次に構造体10及び22は,第1の接合層20の上部表面21が第2の接合層32の上部表面33に接触するように向かい合わせにされ一緒にプレスされる(図1(b))。プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,これら2つの構造体10及び22の接合が有効になり接合されたスタック34が形成される。接合パラメータは,接合層20及び32が形成される組成物に依存して変動するが,このステップの典型的な温度範囲は,約150℃?約375℃の範囲,好ましくは約160℃?約350℃の範囲であり,典型的な圧力範囲は,約1,000N?約5,000N,好ましくは約2,000N?約4,000Nであり,時間は約30秒?約5分,より好ましくは約2分?約4分である。」工程は,本件発明7の「前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後,かつ,前記被処理部材の前記第2の面に対して,機械的又は化学的な処理を施し,処理済部材を得る工程の前に,前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程」に相当する。

(8)本件発明8について
ア 本件発明8は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第12ページ第30行-第13ページ第9行(【0035】)の,「処理が完了すると,基板12及び24は,多くの分離方法(図示せず)によって分離することができる。1つの方法では第1及び第2の接合層20,32の1つ又は両方を溶媒(例えば,リモネン,ドデセン,プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME))中に溶解する。」(下線は当審で付与した。)との記載を参照されたい。

イ 本件発明8は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第2号証の請求項1の記載を参照されたい。

(9)本件発明9-10について
ア 本件発明9-10は,甲第1号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第1号証,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第12ページ第30行-第13ページ第9行(【0035】),甲第2号証の【0061】の記載を参照されたい。

イ 本件発明9-10は,甲第2号証に記載された発明であるか,仮にそうでないとしても,甲第2号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものである。
すなわち,甲第1号証の第12ページ第30行-第13ページ第9行(【0035】),甲第2号証の【0061】の記載を参照されたい。

(3)甲号証,甲発明等
ア 甲第1号証について
取消理由に引用された甲第1号証には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は,当審で付与した。以下同じ。)
・「15. An article comprising:
a first substrate having a back surface and a device surface:
a first bonding layer adjacent said device surface and having a softening temperature;
a second bonding layer adjacent said first bonding layer and having a softening temperature, wherein the softening temperature of said first bonding layer is at least about 20 °C greater than the softening temperature of said second bonding layer; and
a second substrate having a carrier surface, said second bonding layer being adjacent said carrier surface.
16. The article of claim 15, wherein said first bonding layer has a thickness T_(1) of at least about 24 μm.
17. The article of claim 15, wherein said second bonding layer has a thickness T _(3) of less than about 35 μm.
18. The article of claim 15, wherein said first bonding layer has a softening point of at least about 100°C.
19. The article of claim 15, wherein said second bonding layer has a softening point of less than about 220 °C.
20. The article of claim 15, wherein said first bonding layer is formed from a composition comprising a polymer or oligomer dissolved or dispersed in a solvent system, said polymer or oligomer being selected from the group consisting of polymers and oligomers of cyclic olefins, epoxies, acrylics, silicones, styrenics, vinyl halides, vinyl esters, polyamides, polyimides, polysulfones, polyethersulfones, cyclic olefins, polyolefin rubbers, and polyurethanes, ethylene-propylene rubbers, polyamide esters, polyimide esters, poiyacetals, and polyvinyl buterol.
21. The article of claim 15, wherein said second bonding layer is formed from a composition comprising a polymer or oligomer dissolved or dispersed in a solvent system, said polymer or oligomer being selected from the group consisting of polymers and oligomers of cyclic olefins, epoxies, acrylics, silicones, styrenics, vinyl halides, vinyl esters, polyamides, polyimides, polysulfones, polyethersulfones, cyclic olefins, polyolefin rubbers, and polyurethanes, ethylene-propylene rubbers, polyamide esters, polyimide esters, poiyacetals, and polyvinyl buterol.
22. The article of claim 15, wherein said device surface comprises an array of devices selected from the group consisting of integrated circuits; MEMS; microsensors; power semiconductors; light-emitting diodes; photonic circuits; interposers; embedded passive devices; and microdevices fabricated on or from silicon, silicon-germanium, gallium arsenide, and gallium nitride.
23. The article of claim 15, wherein said second substrate comprises a material selected from the group consisting of silicon, sapphire, quartz, metal, glass, and ceramics.
24. The article of claim 15, said device surface comprising at least one structure selected from the group consisting of: solder bumps; metal posts; metal pillars; and structures formed from a material selected from the group consisting of silicon, polysilicon, silicon dioxide, silicon (oxy)nitride, metal, low k dielectrics, polymer dielectrics, metal nitrides, and metal silicides. 」(第35ページ第16行-第37ページ第5行)(対応する公表特許公報である特表2013-535838号公報に基づく日本語訳。以下同じ。「【請求項15】
物品であって:
背面及びデバイス面を有する第1の基板;
前記デバイス面に隣接し,軟化温度を有する第1の接合層;
前記第1の接合層に隣接し軟化温度を有する第2の接合層であって,前記第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い,第2の接合層;及び,
キャリヤー面を有する第2の基板であって,前記第2の接合層は前記キャリヤー面に隣接する,第2の基板;
を含む物品。
【請求項16】
前記第1の接合層の厚みT_(1)は少なくとも約24μm以上である請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記第2の接合層の厚みT_(3)は約35μm未満である請求項15に記載の物品。
【請求項18】
前記第1の接合層の軟化点は約100℃以上である請求項15に記載の物品。
【請求項19】
前記第2の接合層の軟化点は約220℃未満である請求項15に記載の物品。
【請求項20】
前記第1の接合層は,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択される請求項15に記載の物品。
【請求項21】
前記第2の接合層は,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択される請求項15に記載の物品。
【請求項22】
前記デバイス面は,集積回路;MEMS;マイクロセンサ;電力半導体;発光ダイオード;光子回路;インターポーザ;埋め込み受動デバイス;及びシリコン,シリコンゲルマニウム,ガリウムヒ素,及びガリウム窒素上に製造される又はそれらから製造されるマイクロデバイス:から成る群から選択されるデバイスアレイを含む請求項15に記載の物品。
【請求項23】
前記第2の基板は,シリコン,サファイヤ,水晶,金属,ガラス,及びセラミックスから成る群から選択される材料を含む請求項15に記載の物品。
【請求項24】
前記デバイス面は,半田バンプ;金属ポスト;金属ピラー;及びシリコン,ポリシリコン,二酸化ケイ素,(オキシ)窒化ケイ素,金属,低k誘電体,ポリマー誘電体,窒化金属,及び金属シリサイドから成る群から選択される材料から形成される構造体:から成る群から選択される少なくとも1つの構造体を含む請求項15に記載の物品。」)

・「The present invention is broadly concerned with novel temporary wafer bonding methods utilizing multiple layer bonding systems, The inventive methods can support a device wafer on a carrier substrate during wafer thinning and other backside processing. 」(第1ページ第15-17行)(「本発明は,広くは,多層接合システムを利用する新規な暫定ウェーハー接合方法に関する。本発明の方法は,ウェーハーの薄層化及び他の背面処理中にデバイスウェーハーをキャリヤー基板上に支持することができる。」)

・「1. Bilayer Bonding Scheme 1

Referring to Fig. 1(a), a precursor structure 10 is depicted in a schematic and cross- sectional view. Structure 10 includes a first substrate 12. Substrate 12 has a front or device surface 14, a back surface 16, and an outermost edge 18. Although substrate 12 can be of any shape, it would typically be circular in shape. Preferred first substrates 12 include device wafers such as those whose device surfaces comprise arrays of devices (not shown) selected from the group consisting of integrated circuits, MEMS, microsensors, power semiconductors, light- emitting diodes, photonic circuits, interposers, embedded passive devices, and other microdevices fabricated on or from silicon and other semiconducting materials such as silicon- germanium, gallium arsenide, and gallium nitride. The surfaces of these devices commonly comprise structures (again, not shown) formed from one or more of the following materials: silicon, polysilicon, silicon dioxide, silicon (oxy)nitride, metals (e.g., copper, aluminum, gold, tungsten, tantalum), low k dielectrics, polymer dielectrics, and various metal nitrides and silicides. The device surface 14 can also include at least one structure selected from the group consisting of: solder bumps; metal posts; metal pillars; and structures formed from a material selected from the group consisting of silicon, polysilicon, silicon dioxide, silicon (oxy)nitride, metal, low k dielectrics, polymer dielectrics, metal nitrides, and metal silicides.

A composition is applied to the first substrate 12 to form a first bonding layer 20 on the device surface 14, as shown in Fig. 1 (a). Bonding layer 20 has an upper surface 21 remote from first substrate 12, and preferably, the first bonding layer 20 is formed directly adjacent the device surface 14 (i.e., without any intermediate layers between the first bonding layer 20 and substrate 12). The composition can be applied by any known application method, with one preferred method being spin-coating the composition at speeds of from about 500 rpm to about 5,000 rpm (preferably from about 500 rpm to about 2,000 rpm) for a time period of from about 5 seconds to about 120 seconds (preferably from about 30 seconds to about 90 seconds). After the composition is applied, it is preferably heated to a temperature of from about 80°C to about 250°C, and more preferably from about 170°C to about 220°C and for time periods of from about 60 seconds to about 8 minutes (preferably from about 90 seconds to about 6 minutes). Depending upon the composition used to form the first bonding layer 20, baking can also initiate a crosslinking reaction to cure the layer 20. In some embodiments, it is preferable to subject the layer to a multi-stage bake process, depending upon the composition utilized. Also, in some instances, the above application and bake process can be repeated on a further aliquot of the composition, so that the first bonding layer 20 is "built" on the first substrate 12 in multiple steps.

A second precursor structure 22 is also depicted in a schematic and cross- sectional view in Fig. 1 (a). Second precursor structure 22 includes a second substrate 24. In this embodiment, second substrate 24 is a carrier wafer. That is, second substrate 24 has a front or carrier surface 26, a back surface 28, and an outermost edge 30. Although second substrate 24 can be of any shape, it would typically be circular in shape and sized similarly to first substrate 12. Preferred second substrates 24 include silicon, sapphire, quartz, metals (e.g., aluminum, copper, steel), and various glasses and ceramics.

A second composition is applied to the second substrate 24 to form a second bonding layer 32 on the carrier surface 26, as shown in Fig. 1(a). Second bonding layer 32 has an upper surface 33 remote from second substrate 24, and a lower surface 35 adjacent second substrate 24. Preferably, the second bonding layer 32 is formed directly adjacent the carrier surface 26 (i.e., without any intermediate layers between the second bonding layer 32 and second substrate 24). The composition can be applied by any known application method, with one preferred method being spin-coating the composition at speeds of from about 500 rpm to about 5,000 rpm (preferably from about 500 rpm to about 2,000 rpm) for a time period of from about 5 seconds to about 120 seconds (preferably from about 30 seconds to about 90 seconds). After the composition is applied, it is preferably heated to a temperature of from about 80 °C to about 250 °C, and more preferably from about 170°C to about 220 °C and for time periods of from about 60 seconds to about 8 minutes (preferably from about 90 seconds to about 6 minutes). Depending upon the composition used to form the second bonding layer 32, baking can also initiate a crosslinking reaction to cure the layer 32. In some embodiments, it is preferable to subject the layer to a multi-stage bake process, depending upon the composition utilized.

The thickness of first and second bonding layers 20 and 32 (as weii as other layers as described herein) can best be illustrated by reference to Fig. 2, where like numbering has been used to represent like parts. Device surface 14 has been drawn in Fig. 2 to schematically depict the variation in topography on device surface 14 due to the presence of the above-described devices as well as of raised features, contact holes, via holes, lines, trenches, etc., that are present on or in device surface 14. Among the various features found on device surface 14 are highest feature 36 and lowest feature 38. (As used herein, "highest" refers to the feature extending the farthest from back surface 16 of first substrate 12, while "lowest" refers to the feature whose lowest point is closest to back surface 16 of first substrate 12.) Highest feature 36 has an uppermost surface 36a, while lowest feature 38 has a lowermost surface or point 38a. When referring to the thickness of a layer that has been applied to a topographical (i.e., non-planar) surface, two thicknesses may be references. T_(1 )refers to the distance from a lower plane 40 defined by lowermost surface or point 38a and extending to upper surface 21 , as exemplified in Fig. 2. T _(2) refers to the layer's thickness as measured above the uppermost surface 36a. Specifically, and as shown in Fig. 2, this thickness T _(2) begins at upper plane 42 and extends to the upper surface 21. When referring to the thickness of a layer that has been applied to a planar (or substantially planar) surface, that thickness is represented by T _(3) in Fig. _(2), and is the distance between lower surface 35 and upper surface 33 of layer 32. Finally, in some instances, thickness T _(4) is used, and it refers to the distance from lower plane 40 to upper plane 42. All thicknesses refer to average thicknesses taken over five measurements.

In the embodiment of this invention, first bonding layer 20 preferably has a thickness T_(1) that is at least equal to T _(4) , preferably from about 1.1 T _(4) to about 1.5T _(4) , and more preferably from about 1.2T _(4) to about 1.3T _(4) . This will typically result in a thickness T_(1) of at least about 24 μm, more preferably from about 45 μm to about 200 μm, and even more preferably from about 50 μm to about 150 μm. Furthermore, first bonding layer 20 preferably has a thickness T _(2) of at least about 5 μm, more preferably from about 5 μm to about 50 μm, and even more preferably from about 10 μm to about 30 μm. Second bonding layer 32 has a thickness T _(3) of less than about 35 μm, preferably from about 1 μm to about 35 μm, more preferably from about 1 μm to about 25 μm, and even more preferably from about 1 μm to about 15 μm.

First bonding layer 20 preferably has a softening point (ring and ball) that is at least about 20 °C higher than the softening point of second bonding layer 32, more preferably from about 20 U C to about 200°C higher, and even more preferably from about 20°C to about 100°C higher. This will typically result in first bonding layer 20 having a softening point that is at least about 100°C, preferably from about 150°C to about 400°C, and more preferably from about 200°C to about 300°C. Furthermore, typical softening points of second bonding layer 32 will be less than about 220 °C, preferably from about 50 °C to about 220 °C, and more preferably from about 100°C to about 150°C.

The materials from which first and second bonding layers 20 and 32 are formed should be capable of forming a strong adhesive bond with the first and second substrates 12 and 24, respectively, as well as with one another. Anything with an adhesion strength of greater than about 50 psig, preferably from about 80 psig to about 250 psig, and more preferably from about 100 psig to about 150 psig as determined by ASTM D4541/D7234, would be desirable for use as first and second bonding layers 20 and 32.

Advantageously, the compositions for use in forming first and second bonding layers 20 and 32 can be selected from commercially available bonding compositions that would be capable of being formed into layers possessing the above properties. Typical such compositions are organic and will comprise a polymer or oligomer dissolved or dispersed in a solvent system. The polymer or oligomer is typically selected from the group consisting of polymers and oligomers of cyclic olefins, epoxies, acrylics, silicones, styrenics, vinyl halides, vinyl esters, polyamides, polyimides, polysulfones, polyethersulfones, cyclic olefins, polyolefm rubbers, and polyurethanes, ethylene-propylene rubbers, polyamide esters, polyimide esters, polyacetals, and polyvinyl butyral. Typical solvent systems will depend upon the polymer or oligomer selection. Typical solids contents of the compositions will range from about 1 % to about 60% by weight, and preferably from about 3% to about 40% by weight, based upon the total weight of the composition taken as 100% by weight. Some suitable compositions are described in U.S. Patent Publication Nos. 2007/0185310, 2008/0173970, 2009/0038750, and 2010/01 12305, each incorporated by reference herein.

Structures 10 and 22 are then pressed together in a face-to-face relationship, so that upper surface 21 of first bonding layer 20 is in contact with upper surface 33 of second bonding layer 32 (Fig. 1 (b)). While pressing, sufficient pressure and heat are applied for a sufficient amount of time so as to effect bonding of the two structures 10 and 22 together to form bonded stack 34. The bonding parameters will vary depending upon the compositions from which bonding layers 20 and 32 are formed, but typical temperatures during this step will range from about 150°C to about 375 °C, and preferably from about 160°C to about 350°C, with typical pressures ranging from about 1,000 N to about 5,000 N, and preferably from about 2,000 N to about 4,000 N, for a time period of from about 30 seconds to about 5 minutes, and more preferably from about 2 minutes to about 4 minutes.

At this stage, the first substrate 12 can be safely handled and subjected to further processes that might otherwise have damaged first substrate 12 without being bonded to second substrate 24. Thus, the structure can safely be subjected to backside processing such as back- grinding, CMP, etching, metal and dielectric deposition, patterning (e.g., photolithography, via etching), passivation, annealing, and combinations thereof, without separation of substrates 12 and 24 occurring, and without infiltration of any chemistries encountered during these subsequent processing steps. Not only can first bonding layer 20 and second bonding layer 32 survive these processes, they can also survive processing temperatures up to about 450 °C, preferably from about 200°C to about 400°C, and more preferably from about 200°C to about 350°C.

Once processing is complete, the substrates 12 and 24 can be separated by any number of separation methods (not shown). One method involves dissolving one or both of the first and second bonding layers 20, 32 in a solvent (e.g., limonene, dodecene, propylene glycol monomethyl ether (PGME)). Alternatively, substrates 12 and 24 can also be separated by first mechanically disrupting or destroying the periphery of one or both of first and second bonding layers 20, 32 using laser ablation, plasma etching, water jetting, or other high energy techniques that effectively etch or decompose first and second bonding layers 20, 32. It is also suitable to first saw or cut through the first and second bonding layers 20, 32 or cleave the layers 20, 32 by some equivalent means. Regardless of which of the above means is utilized, a low mechanical force (e.g., finger pressure, gentle wedging) can then be applied to completely separate the substrates 12 and 24.

The most preferred separation method involves heating the bonded stack 34 to temperatures of at least about 100°C, preferably from about 150°C to about 220°C, and more preferably from about 180°C to about 200°C. It will be appreciated that at these temperatures, second bonding layer 32 will soften, allowing the substrates 12 and 24 to be separated (e.g., by a slide debonding method, such as that described in U.S. Patent Publication No. 2008/020001 1 , incorporated by reference herein). After separation, any remaining first or second bonding layer 20 and 32 can be removed with a solvent capable of dissolving the particular layer 20 or 32. In some embodiments, the composition for forming first bonding layer 20 will be selected so that it is suitable leave some or all of it on the first substrate 12 permanently. In these instances, first bonding layer 20 will serve some function (e.g., gap fill) in subsequent wafer processing steps, an advantage missing from prior art processes.

It will be appreciated that this bilayer embodiment provides a number of advantages. The bonding temperatures and overall thermal stability of the structure can be controlled due to the inventive methods. That is, the inventive method allows the use of higher processing temperatures while simultaneously making bonding and debonding possible at lower temperatures. 」(第8ページ第23行-第13ページ第25行)(「1.二層接合方式I
図1(a)を参照すると,前躯体構造体10が概略断面図として示されている。構造体10は第1の基板12を含む。基板12は前面又はデバイス面14,背面16,及び最外側エッジ18を有する。基板12は任意の形状でよいが,通常は円形形状である。好ましい第1の基板12はデバイスウェーハーを含み,そのデバイス面は集積回路,MEMS,マイクロセンサー,動力半導体,発光ダイオード,フォトニック回路,インタポーザー,埋込受動素子,及び,シリコン,又はシリコンゲルマニウム,ガリウムヒ素,およびガリウム窒素のような半導体材料上に製造される又はそれらから製造される他のマイクロデバイス,から成る群から選択されたデバイスアレイ(図示されていない)を含む。これらのデバイスの表面は一般に以下の材料の1つ以上から形成された構造体(これも図示されていない)を含む:シリコン,ポリシリコン,二酸化ケイ素,(オキシ)窒化ケイ素,金属(例えば,銅,アルミニウム,金,タングステン,タンタル),低k誘電体,高分子誘電体,および各種窒化金属および金属シリサイド。またデバイス面14は,半田バンプ;金属ポスト;金属ピラー;及びシリコン,ポリシリコン,二酸化ケイ素,(オキシ)窒化ケイ素,金属,低k誘電体,ポリマー誘電体,窒化金属,及び金属シリサイドから成る群から選択される材料から形成される構造体:から成る群から選択される少なくとも1つの構造体を含むことができる。
図1(a)に示すようにデバイス面14上に第1の接合層20を形成するように,第1の基板12に組成物が適用される。接合層20は第1の基板12から離れた上部表面21を有し,好ましくは,第1の接合層20はデバイス面14に直接隣接して形成される(即ち,第1の接合層20と基板12との間に中間層が存在しない)。組成物は任意の既知の方法によって適用することができる。1つの好ましい方法は,速度約500rpm?約5,000rpm(好ましくは約500rpm?約2,000rpm)で,時間約5秒?約120秒(好ましくは約30秒?約90秒)間,組成物をスピンコートすることである。組成物を適用した後,温度約80℃?約250℃,より好ましくは約170℃?約220℃で時間約60秒?約8分(好ましくは約90秒?約6分)間加熱することが好ましい。第1の接合層20を形成するために用いられる組成物に依存して,焼成によって架橋反応が開始され層20を硬化することができる。幾つかの実施形態では,用いられる組成物に応じて,層に多段焼成プロセスを施すことが好ましい。また幾つかの例では,組成物の更なるアリコットを用いて上述の適用及び焼成プロセスが繰り返され,多数のステップによって,第1の接合層20が第1の基板12上に「構築される」。
第2の前駆体構造体22も図1(a)の概略断面図に示されている。第2の前駆体構造体22は第2の基板24を含む。この実施形態では,第2の基板24はキャリヤーウェーハーである。即ち,第2の基板24は前面又はキャリヤー面26,背面28,及び最外側エッジ30を有する。第2の基板24は任意の形状でよいが,通常は円形形状であり,第1の基板12と同じサイズである。好ましい第2の基板24はシリコン,サファイヤ,水晶,金属(例えば,アルミニウム,銅,鋼),並びに種々のガラス及びセラミックスを含む。
図1(a)に示すように,キャリヤー面26上に第2の接合層32を形成するように,第2の組成物が第2の基板24に適用される。第2の接合層32は,第2の基板24から離れた上部表面33,及び第2の基板24に隣接する下部表面35を有する。好ましくは,第2の接合層32はキャリヤー面26に直接隣接して形成される(即ち,第2の接合層32と第2の基板24との間に中間層が存在しない)。組成物は任意の既知の適用方法によって適用してよく,1つの好ましい方法は,組成物を,速度約500rpm?約5,000rpm(好ましくは約500rpm?約2,000rpm)で,時間約5秒?約120秒(好ましくは約30秒?約90秒)間スピンコートすることである。組成物が適用された後,好ましくは,温度約80℃?約250℃,より好ましくは約170℃?約220℃へ,時間約60秒?約8分(好ましくは約90秒?約6分)間加熱される。第2の接合層32を形成するために使用される組成物に依存して,焼成によって架橋反応が開始され層32を硬化することができる。幾つかの実施形態では,使用される組成物に応じて,層に多段焼成プロセスを施すことが好ましい
第1及び第2の接合層20及び32(並びに本明細書中に説明する他の層)の厚みは,図2を参照することによって最良に説明される。類似の番号が類似の部分を示すように用いられている。デバイス面14上に存在する上述のデバイスや,隆起した特徴,コンタクト孔,ビア孔,ライン,トレンチ等によるデバイス面14上のトポグラフィの変動を概略的に示すように,デバイス面14が図2に示されている。デバイス面14上に見られる様々な特徴の中に,最も高い特徴36及び最も低い特徴38がある(本明細書中に用いられる場合,「最も高い」は,特徴が第1の基板12の背面16から最も遠くまで延在している特徴を指し,一方「最も低い」は,その最下点が第1の基板12の背面に最も近い特徴を指す)。最も高い特徴36は最上表面36aを有し,一方最も低い特徴38は最下表面又は最下点38aを有する。トポグラフィが存在する(即ち,平面ではない) 表面に適用される層の厚みを指すときは,2つの厚みを参照としてもよい。T_(1)は,図2に例示されるように最下表面又は最下点38aによって定義される下側平面40から上部表面21に延びる距離を示す。T_(2)は最上表面36aの上で測定した層の厚みを示す。具体的には,図2に示すように,この厚みT_(2)は上側表面42から始まり上部表面21まで延びる。平面の(又は実質的に平面の)表面に適用された層の厚みを指すときは,その厚みは図2のT_(3)で表され,層32の下部表面35と上部表面33との間の距離である。最後に,幾つかの例では厚みT_(4)が用いられ,これは下側平面40から上側表面42までの距離を示す。全ての厚みは5つの測定値の平均の厚みを示す。
本発明の実施形態において,第1の接合層20は,好ましくは厚みT_(1)を有し,厚みT_(1)は,少なくともT_(4)に等しく,好ましくは約1.1T_(4)?約1.5T_(4),より好ましくは約1.2T_(4)?約1.3T_(4)である。この結果,典型的には,厚みT_(1)が,少なくとも約24μm,より好ましくは約45μm?約200μm,更により好ましくは約50μm?約150μmとなる。更に,第1の接合層20は好ましくは厚みT_(2)を有し,厚みT_(2)は約5μm以上,より好ましくは約5μm?約50μm,更により好ましくは約10μm?約30μmである。第2の接合層32は厚みT_(3)を有し,厚みT_(3)は約35μm未満,好ましくは約1μm?約35μm,より好ましくは約1μm?約25μm,更により好ましくは約1μm?約15μmである。
第1の接合層20は好ましくは軟化点(環球式軟化点)を有し,その軟化点は第2の接合層32の軟化点より,約20℃以上高く,より好ましくは約20℃?約200℃高く,更により好ましくは約20℃?約100℃高い。この結果,典型的には,第1の接合層20の軟化点は約100℃以上,好ましくは約150℃?約400℃,より好ましくは約200℃?約300℃となる。更に,第2の接合層32の典型的な軟化点は,約220℃未満,好ましくは約50℃?約220℃,より好ましくは約100℃?約150℃となる。
第1及び第2の接合層20及び32が形成される材料は,第1及び第2の基板12及び24それぞれと並びに互いに強固な接着剤接合を形成できるものでなければならない。ASTMD4541/D7234の測定で,接着強さが約50psigより上,好ましくは約80psig?約250psig,より好ましくは約100psig?約150psigであるものが第1及び第2の接合層20及び32として使用するのに望ましい。
有利なことに,第1及び第2の接合層20及び32を形成するために用いる組成物は,上述の特性を有する層内に形成可能とされる市販の接合組成物から選択することができる。典型的には,そのような組成物は有機であり,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む。ポリマー又はオリゴマーは,典型的には,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロールの,ポリマー又はオリゴマーから成る群から選択される。典型的な溶媒系はポリマー又はオリゴマーの選択に依存する。組成物の総重量を100重量%としたときに,組成物の典型的な固形分は,約1重量%?約60重量%,好ましくは約3重量%?約40重量%の範囲となる。幾つかの適切な組成物が,各々参照として本明細書中に含まれる,米国特許公開番号第2007/0185310号,第2008/0173970号,第2009/0038750号,及び2010/0112305号に記載されている。
次に構造体10及び22は,第1の接合層20の上部表面21が第2の接合層32の上部表面33に接触するように向かい合わせにされ一緒にプレスされる(図1(b))。プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,これら2つの構造体10及び22の接合が有効になり接合されたスタック34が形成される。接合パラメータは,接合層20及び32が形成される組成物に依存して変動するが,このステップの典型的な温度範囲は,約150℃?約375℃の範囲,好ましくは約160℃?約350℃の範囲であり,典型的な圧力範囲は,約1,000N?約5,000N,好ましくは約2,000N?約4,000Nであり,時間は約30秒?約5分,より好ましくは約2分?約4分である。
この段階で,第1の基板12は安全にハンドリングすることができ,第2の基板24に接合されていなければ第1の基板に損傷を与え損ねなかった更なる処理を施すことができる。このように,基板12及び24の分離を起こすことなく構造体に,背面研削,CMP,エッチング,金属及び誘電体堆積,パターニング(例えば,フォトリソグラフィ,ビアエッチング),不動態化,アニーリング,及びそれらの組合せ等の背面処理を安全に施すことができ,またこれらの後処理ステップ中に遭遇する任意の化学薬品が浸入することもない。第1の接合層20及び第2の接合層32は,これらのプロセスに耐えられるだけでなく,最大約450℃,好ましくは約200℃?約400℃,より好ましくは約200℃?約350℃の処理温度にも耐えうる。
処理が完了すると,基板12及び24は,多くの分離方法(図示せず)によって分離することができる。1つの方法では第1及び第2の接合層20,32の1つ又は両方を溶媒(例えば,リモネン,ドデセン,プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGME))中に溶解する。或いは,最初にレーザ切断,プラズマエッチング,ウォータージェッティング,又は,第1及び第2の接合層20,32を効果的にエッチング又は分解するその他の高エネルギー技術を用いて第1及び第2の接合層20,32の1つ又は両方の周囲を機械的に分解又は破壊することによって基板12及び24を分離することができる。また,最初に第1及び第2の接合層20,32を貫通して鋸引き又は切断するかもしくは層20,32を何らかの同等手段を用いて切り裂くことも適切である。上述の手段のどれを用いるかに拘らず,その後,低機械力(例えば,指の圧力,緩やかな割り裂き)を加えることにより基板12及び24を完全に分離させることができる。
最も好ましい分離方法は,接合されたスタック34を,約100℃以上,好ましくは約150℃?約220℃,より好ましくは約180℃?約200℃の温度に加熱することである。これらの温度で,第2の接合層32が軟化し,基板12及び24を分離させる(例えば,参照として本明細書に含まれる,米国特許公開番号第2008/0200011号に記載されるようなスライド剥離方法によって)ことは理解されるであろう。分離後,残留する第1又は第2の接合層20及び32を,特定の層20又は32を溶解する性能のある溶媒を用いて除去することができる。幾つかの実施形態では,第1の接合層20を形成するための組成物は,その一部又は全部が第1の基板12上に永久的に残ることが適切であるように選択される。その場合,第1の接合層20が後続のウェーハー処理ステップにおいて何らかの機能(例えば,間隙充填)を実行する。これは先行技術のプロセスにはなかった有利な点である。
この二層の実施形態が多くの利点を提供することは理解されるであろう。本発明の方法により,構造体の接合温度及び全体の熱安定性を制御することができる。即ち,本発明の方法は,より高い処理温度の使用を可能にすると同時により低い温度で接合及び剥離を可能にする。」)

・「2. Bilayer Bonding Scheme II

The second bilayer bonding scheme is shown in Fig. 3, with like numbers representing like parts. In this embodiment, a "cleaning" or lift-off layer 44 having an upper surface 46 and lower surface 48 is formed on device surface 14. Lift-off layer 44 can be formed by any known application method, with one preferred method being spin-coating the composition used to form layer 44 at speeds of from about 500 rpm to about 5,000 rpm (preferably from about 500 rpm to about 2,000 rpm) for a time period of from about 5 seconds to about 120 seconds (preferably from about 30 seconds to about 90 seconds). After the composition is applied, it is preferably heated to a temperature of from about 60 °C to about 250 °C, and more preferably from about 80 °C to about 220 °C and for time periods of from about 60 seconds to about 4 minutes (preferably from about 90 seconds to about 2 minutes). In some embodiments, it is preferable to subject the layer to a multi-stage bake process, depending upon the composition utilized. Depending upon the composition used to form the lift-off layer 44, baking can also initiate a crosslinking reaction to cure the layer 44.

Lift-off layer 44 preferably has a thickness T_(1) of less than about 3 μm, more preferably from about 0.5 μm to about 3 μm, and even more preferably from about 1 μm to about 1.5 μm. In other embodiments, lift-off layer 44 is a conformal layer, so it would not have the above thickness.

The compositions used to form lift-off layer 44 should be selected so that layer 44 is soluble in solutions selected from the group consisting of 1 % hydrochloric acid aqueous solution, 50% acetic acid aqueous solution, isopropanol, 1-dodecene, R-limonene, cyclopcntanone, PGME, and tetramcthylammonium hydroxide (TMAH). More specifically, lift-off layer 44 will be at least about 95%, preferably at least about 99%, and preferably 100% dissolved/removed after about 4-5 hours of contact with the particular remover solution.

Preferred compositions for forming lift-off layer 44 can be selected from commercially available compositions possessing the above properties. Examples of such compositions include those selected from the group consisting of poly(vinyl pyridine) and polyamic acids. Two preferred such compositions are ProLIFT (R) and the WGF series of wet-developable materials (available from Brewer Science, Inc.). A particularly preferred composition for use is described in U.S. Patent Publication No. 2009/0035590, incorporated by reference herein.

Next, a bonding layer 20 is formed on lift-off layer 44 (Fig. 3(b)). Bonding layer 20 preferably has a thickness T, as described with respect to Fig. 1, and a thickness T 2 of at least about 5 μm, more preferably from about 5 μm to about 50 μm, and even more preferably from about 10 μm to about 30 μm. A second substrate 24 is then bonded to bonding layer 20 (Fig. 3(c)), as described previously, to form a bonded stack 50. The bonded stack 50 can then be subjected to further processing as described above.

Once the first and second substrates 12 and 24 are ready to be separated, the bonded stack 50 is exposed to one of the above remover solutions (preferably for time periods of from about 1 minute to about 5 hours, and more preferably from about 2 minutes to about 60 minutes), so that the solution will dissolve lift-off layer 44, thus allowing the substrates 12 and 24 to be separated. Advantageously, in embodiments where lift-off layer 44 is functioning as a "cleaning" layer, the substrates 12 and 24 can be separated by heating to soften bonding layer 20 sufficiently to allow substrates 12 and 24 to be separated. Once the substrates 12 and 24 have been separated, lift-off/cleaning layer 44 can be removed with a remover solution, and this will simultaneously cause any remaining residue of bonding layer 20 to also be removed. 」(第13ページ第27行-第15ページ第9行)(「2.二層接合方式II
第2の二層接合方式を図3に示す。類似の番号は類似の部分を表す。この実施形態では,上部表面46及び下部表面48を有する「クリーニング層」又はリフトオフ層44がデバイス面14上に形成される。リフトオフ層44は,任意の既知の適用方法によって形成することができ,1つの好ましい方法では,層44を形成するために用いられる組成物を,速度約500rpm?約5,000rpm(好ましくは約500rpm?約2,000rpm)で,時間約5秒?約120秒(好ましくは約30秒?約90秒)の間,スピンコートする。組成物は,適用された後,好ましくは,温度約60℃?約250℃,より好ましくは約80℃?約220℃に,時間約60秒?約4分(好ましくは約90秒?約2分)間,加熱される。幾つかの実施形態では,使用される組成物に応じて,層に多段焼成プロセスを施すことが好ましい。リフトオフ層44を形成するために用いられる組成物に依存して,焼成によって架橋反応が開始され層44を硬化することができる。
リフトオフ層44は好ましくは厚みT1を有し,厚みT_(1)は約3μm未満,より好ましくは約0.5μm?約3μm,更により好ましくは約1μm?約1.5μmである。別の実施形態では,リフトオフ層44が共形層であり, そのため上述の厚みを有しない。
リフトオフ層44を形成するために用いられる組成物は,1%の塩化水素酸水溶液,50%の酢酸水溶液,イソプロパノール,1-ドデセン,R-リモネン,シクロペンタノン,PGME,及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)から成る群から選択される溶液中で層44が可溶性であるように選択されるべきである。より詳細には,リフトオフ層44は,特定の除去溶液に接触してから約4?5時間の後に,約95%以上,好ましくは約99%以上,好ましくは100%溶解/除去される。
リフトオフ層44を形成するために好ましい組成物は上述の特性を持つ市販の組成物から選択することができる。そのような組成物の例には,ポリ(ビニルピリジン)及びポリアミド酸から成る群から選択される組成物が含まれる。これら2種の好ましい組成物は,ProLIFT(R)及び,湿式現像可能な材料のWGFシリーズ(Brewer Science社から入手可能)である。使用が特に好ましい組成物は参照として本明細書に含まれる,米国特許公開番号第2009/0035590号に記載されている。
次にリフトオフ層44上に接合層20が形成される(図3(b))。接合層20は,好ましくは,図1に関連して説明したような厚みT1,及び,約5μm以上,より好ましくは約5μm?約50μm,更により好ましくは約10μm?約30μmの厚みT2を有する。次に第2の基板24が上述のように接合層20に接合され(図3(c)),接合されたスタック50を形成する。次に接合されたスタック50に上述のような更なる処理を施すことができる。
第1及び第2の基板12及び24の分離の準備が整うと,接合されたスタック50は,上述の除去溶液の1つに暴露され(好ましくは約1分?約5時間,より好ましくは約2分?約60分の間),その結果,溶液がリフトオフ層44を溶解して,基板12及び24が分離される。有利なこととして,リフトオフ層44が「クリーニング」層として機能する実施形態では,基板12及び24を分離させるために十分に接合層20を軟化させるよう加熱することによって基板12及び24を分離させることができる。基板12及び24が分離されると,リフトオフ/クリーニング層44を除去溶液によって除去することができ,これは同時に残っているすべての接合層20残留物も除去する。」)

したがって,上記甲第1号証には,請求項15ないし24に記載された発明の実施形態であると解される「二層接合方式I」に係る発明(以下「甲1A発明」という。)が記載されていると認められる。
さらに,上記甲第1号証には,「第2の二層接合方式を図3に示す。類似の番号は類似の部分を表す。」と記載されており,このため,「二層接合方式II」の「接合層20」は,「二層接合方式I」において,同一の番号「20」を付して説明されている「第1の接合層20」と同様の構成を備えるものと解されるから,甲第1号証には,「二層接合方式II」に係る発明(以下「甲1B発明」という。)が記載されていると認められる。

・甲1A発明
「A 軟化温度を有する第1の接合層,
B 前記第1の接合層に隣接し軟化温度を有する第2の接合層であって,前記第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い,第2の接合層を含み,
C 前記第1の接合層は,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択され,
D 前記第2の接合層は,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択される
E 仮接合層。」

・甲1B発明
「デバイス面を有する第1の基板と,
前記デバイス面に隣接するリフトオフ層と,
前記リフトオフ層に隣接する接合層20と,
前記接合層20に隣接する第2の基板と,
を含む物品であって,
前記リフトオフ層を形成するために用いられる組成物は,1%の塩化水素酸水溶液,50%の酢酸水溶液,イソプロパノール,1-ドデセン,R-リモネン,シクロペンタノン,PGME,及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)から成る群から選択される溶液中でリフトオフ層が可溶性であるように選択されるべきであり,より詳細には,リフトオフ層は,特定の除去溶液に接触してから約4?5時間の後に,約95%以上,好ましくは約99%以上,好ましくは100%溶解/除去されるものであって,リフトオフ層44を形成するために好ましい組成物は上述の特性を持つ市販の組成物から選択することができ,そのような組成物の例には,ポリ(ビニルピリジン)及びポリアミド酸から成る群から選択される組成物が含まれるものであり,
前記接合層20は,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択されるものであって,組成物を適用した後,温度約80℃?約250℃,より好ましくは約170℃?約220℃で時間約60秒?約8分(好ましくは約90秒?約6分)間加熱することが好ましく,接合層20を形成するために用いられる組成物に依存して,焼成によって架橋反応が開始され層を硬化することで,接合層20を「構築」するものであり,
前記デバイス面は,集積回路;MEMS;マイクロセンサ;電力半導体;発光ダイオード;光子回路;インターポーザ;埋め込み受動デバイス;及びシリコン,シリコンゲルマニウム,ガリウムヒ素,及びガリウム窒素上に製造される又はそれらから製造されるマイクロデバイス:から成る群から選択されるデバイスアレイを含むものであり,
前記物品は,広くは,多層接合システムを利用する新規な暫定ウェーハー接合方法に関するものであって,ウェーハーの薄層化及び他の背面処理中にデバイスウェーハーをキャリヤー基板上に支持することができるものである物品。」

イ 甲第2号証ないし甲第3号証について
取消理由に引用された甲第2号証には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項9】
基板と,上記基板上に形成された第1接着剤層と,上記第1接着剤層上に形成された,第1接着剤層よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層,若しくは,第1接着剤層が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層と,上記第2接着剤層に貼着された支持板とを含むことを特徴とする積層体。
【請求項10】
請求項9に記載の積層体に含まれる第2接着剤層を形成するための接着剤。
【請求項11】
平均分子量が5000?10000の接着化合物を含むことを特徴とする請求項10に記載の接着剤。
【請求項12】
炭化水素樹脂または極性溶媒溶解性化合物を含むことを特徴とする請求項10に記載の接着剤。
【請求項13】
上記炭化水素樹脂は,シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選択されることを特徴とする請求項12に記載の接着剤。」

・「【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る剥離方法について,図1および図2を参照して以下に説明する。図1は,本発明に係る剥離方法に用いられる,本発明に係る積層体1を示す断面図であり,図2は,本発明の一実施形態に係る剥離方法の各工程を示す断面図である。図1および図2に示すように,積層体1は,ウエハ(基板)2,サポートプレート(支持板)3,第1接着剤層4および第2接着剤層5を含むように構成されている。積層体1において,第1接着剤層4および第2接着剤層5は接着積層体6として,ウエハ2とサポートプレート3とを貼り合わせている。
【0018】
本発明に係る剥離方法は,第1接着剤層4と,第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層5,若しくは,第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層5とを介してサポートプレート3が貼着されているウエハ2から,サポートプレート3を剥離する剥離方法であって,サポートプレート3側に位置する第2接着剤層5を溶解してサポートプレート3を上記ウエハ2から剥離する剥離工程を包含している。
【0019】
なお,本実施形態においては,サポートプレート3として厚さ方向に貫通孔を有する孔あきサポートプレート3を用いているが,本発明はこれに限定されない。孔あきサポートプレート3を用いることによって,孔を介して第2接着剤層5に溶剤を供給することができる。
【0020】
(第1接着剤層4)
第1接着剤層4は,ウエハ2と第2接着剤層5とに接着している。第1接着剤層4は,ウエハ2とサポートプレート3とを,第2接着剤層5を介して十分接着させることが可能な接着化合物を含む第1接着剤材料により形成されていればよく,従来公知の接着剤材料を好適に使用可能である。第1接着剤層4を形成する第1接着剤材料としては,アクリル-スチレン系樹脂,マレイミド系樹脂を含むものが挙げられる。
【0021】
アクリル-スチレン系樹脂として,例えば,単量体として,スチレンまたはスチレンの誘導体と,(メタ)アクリル酸エステル等とを用いて重合した樹脂が挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸エステルとしては,(メタ)アクリル酸エステルとしては,例えば,鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステル,脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル,芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。鎖式構造からなる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては,炭素数15?20のアルキル基を有するアクリル系長鎖アルキルエステル,炭素数1?14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステル等が挙げられる。アクリル系長鎖アルキルエステルとしては,アルキル基がn-ペンタデシル基,n-ヘキサデシル基,n-ヘプタデシル基,n-オクタデシル基,n-ノナデシル基,n-エイコシル基等であるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。なお,当該アルキル基は,分岐状であってもよい。
【0023】
炭素数1?14のアルキル基を有するアクリル系アルキルエステルとしては,既存のアクリル系接着剤に用いられている公知のアクリル系アルキルエステルが挙げられる。例えば,アルキル基が,メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,2-エチルヘキシル基,イソオクチル基,イソノニル基,イソデシル基,ドデシル基,ラウリル基,トリデシル基等からなるアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0024】
脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては,シクロヘキシル(メタ)アクリレート,シクロペンチル(メタ)アクリレート,1-アダマンチル(メタ)アクリレート,ノルボルニル(メタ)アクリレート,イソボルニル(メタ)アクリレート,トリシクロデカニル(メタ)アクリレート,テトラシクロドデカニル(メタ)アクリレート,ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられるが,イソボルニルメタアクリレート,ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては,特に限定されるものではないが,芳香族環としては,例えばフェニル基,ベンジル基,トリル基,キシリル基,ビフェニル基,ナフチル基,アントラセニル基,フェノキシメチル基,フェノキシエチル基等が挙げられる。また,芳香族環は,炭素数1?5の鎖状または分岐状のアルキル基を有していてもよい。具体的には,フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0026】
マレイミド系樹脂としては,例えば,単量体として,N-メチルマレイミド,N-エチルマレイミド,N-n-プロピルマレイミド,N-イソプロピルマレイミド,N-n-ブチルマレイミド,N-イソブチルマレイミド,N-sec-ブチルマレイミド,N-tert-ブチルマレイミド,N-n-ペンチルマレイミド,N-n-ヘキシルマレイミド,N-n-へプチルマレイミド,N-n-オクチルマレイミド,N-ラウリルマレイミド,N-ステアリルマレイミドなどのアルキル基を有するマレイミド,N-シクロプロピルマレイミド,N-シクロブチルマレイミド,N-シクロペンチルマレイミド,N-シクロヘキシルマレイミド,N-シクロヘプチルマレイミド,N-シクロオクチルマレイミド等の脂肪族炭化水素基を有するマレイミド,N-フェニルマレイミド,N-m-メチルフェニルマレイミド,N-o-メチルフェニルマレイミド,N-p-メチルフェニルマレイミド等のアリール基を有する芳香族マレイミド等を重合して得られた樹脂が挙げられる。
【0027】
第1接着剤層4の層厚は,ウエハ2とサポートプレート3との接着および耐熱性を維持するために,15?30μmであることが好ましく,15μmであることが特に好ましいが,これに限定されない。第1接着剤層4は,ウエハ2上に上記接着化合物を含む第1接着剤材料を塗布し,ウエハ2上において層状に固化させることによって形成することができる。また,予め第1接着剤材料を層状に固化させたものをウエハ2上に移動させることによって形成してもよい。
【0028】
(第2接着剤層5)
第2接着剤層5は,サポートプレート3側に位置し,第1接着剤層4とサポートプレート3とを接着している。第2接着剤層5は,第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解する,または第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解するように形成されている。本発明に係る接着剤は,第2接着剤層5を形成するためのものであり,後述する第2接着剤材料を含むものである。
【0029】
第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層5は,高溶解性の第2接着剤材料により形成されていることが意図され,上述した第1接着剤材料に含まれる接着化合物よりも平均分子量が小さい接着化合物を含む第2接着剤材料により形成されるものであることができる。
【0030】
第2接着剤層5を第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解するように形成することによって,サポートプレート3をウエハ2から剥離するとき,サポートプレート3の孔を介して溶剤を第2接着剤層5に供給し,溶解速度の速い第2接着剤層5をより短時間で溶解させ,第2接着剤層5に接着されたサポートプレート3をより短時間で剥離することができる。サポートプレート3を剥離した後で第1接着剤層4を溶解することで,サポートプレート3の存在により溶剤の浸透が妨げられることがないため,第1接着剤層4の溶解も短時間で行うことができる。
【0031】
第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層5は,第1接着剤層4に含まれる接着化合物の平均分子量の10%?30%に相当する平均分子量の接着化合物を含む第2接着剤材料によって形成されていることが好ましい。これにより,剥離時間を短縮するために十分な溶解速度を得ることができる。第1接着剤層4を従来用いられている一般的な第1接着剤材料を用いて形成した場合,第2接着剤層5を,平均分子量5000?10000の接着化合物を含む第2接着剤材料を用いて形成すればよい。例えば,第1接着剤層4を,平均分子量40000の接着化合物を含む第1接着剤材料を用いて形成した場合,第2接着剤層5を,平均分子量10000の接着化合物を含む第2接着剤材料を用いて形成することができる。
【0032】
第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層5は,第1接着剤層4が溶解する溶剤に対する耐性を有する第2接着剤材料により形成されていることが意図され,第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に対する溶解速度の速い第2接着剤材料により形成されていることが好ましい。
【0033】
第2接着剤層5を第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解するように形成することによって,サポートプレート3をウエハ2から剥離するとき,サポートプレート3の孔を介して溶剤を第2接着剤層5に供給し,第2接着剤層5を溶解する溶剤により第2接着剤層5のみを溶解させ,第2接着剤層5により接着されたサポートプレート3を剥離することができる。サポートプレート3を剥離した後で第1接着剤層4を溶解することで,サポートプレート3の存在により溶剤の浸透が妨げられることがないため,第1接着剤層4の溶解も迅速に行うことができる。
【0034】
ここで,本実施形態においては孔あきサポートプレート3を用いているので,ウエハ2の薄化プロセスにおいて,例えばフォトリソグラフィ工程におけるバックリンス液のような溶剤がサポートプレート3の孔を介して第2接着剤層5にかかる可能性がある。第1接着剤層4のような,ウエハ2とサポートプレート3とを貼着する一般的な接着剤層は,PGMEA(propylene glycol monomethyl ether acetate),HP(2-ヘプタノン)等の有機溶媒を含む溶剤に対して耐性がなく,薄化プロセスにおいてこのような溶剤がサポートプレート3の孔を介して浸入すると,接着剤層が溶解してしまう。これにより,サポートプレート3にデラミネーションが発生し,薄化プロセスを良好に行うことができないという問題が生じる。この問題を解決するために,従来,溶剤がかかるような工程においては,バックテープによりサポートプレート3の孔を塞ぎ,サポートプレート3の孔への溶剤の浸透を防いでいるが,処理効率の低下やコストアップに繋がるため好ましくない。
【0035】
本発明においては,上述したような有機溶媒を含む溶剤に対して耐性のある第2接着剤層5をサポートプレート3側に設けることによって,第1接着剤層4が上記溶剤に対して耐性のある第2接着剤層5に覆われるので,上記溶剤がサポートプレート3の孔を介して浸入したとしても,第1接着剤層4および第2接着剤層5が溶解せず,サポートプレート3のデラミネーションが発生しない。したがって,バックテープによりサポートプレート3の孔を塞ぐ必要がない。
【0036】
第2接着剤層5は,第1接着剤層4とは異なる溶剤によって溶解するように形成されていればよく,第1接着剤層4を有機溶媒で溶解する第1接着剤材料により形成している場合には,有機溶媒に対して耐性を有する第2接着剤材料により第2接着剤層5を形成すればよい。このような第2接着剤材料に含まれる接着化合物として,炭化水素樹脂または極性溶媒溶解性(例えば水溶性)化合物を用いることができる。
【0037】
炭化水素樹脂として,シクロオレフィン系ポリマー(以下,「樹脂(A)」ということがある),テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂(以下,「樹脂(B)」ということがある)等が挙げられるが,これに限定されない。」

・「【0058】
次に,図2中(a)?(e)を参照して本発明に係る剥離方法の処理フローを説明する。本発明に係る剥離方法は,上述した剥離工程を少なくとも含んでいればよく,当該剥離工程の後に,第1接着剤層4を溶解する溶解工程をさらに含んでいることが好ましい。本実施形態においては,当該溶解工程を含む本発明に係る剥離方法を例として説明する。
【0059】
まず,本発明に係る剥離工程において,図2中(a)に示すように,剥離処理の対象となる本発明に係る積層体1を準備する。次に,図2中(b)に示すように,第2接着剤層5を溶解する溶剤を,サポートプレート3の第2接着剤層5に接していない側から注入する。注入された溶剤は,サポートプレート3の貫通孔を介して浸入し,第2接着剤層5に浸透して,第2接着剤層5を溶解させる。
【0060】
このとき,第2接着剤層5を溶解する溶剤は,第2接着剤層5の特性に応じて適宜選択される。第2接着剤層5を,第1接着剤材料に含まれる接着化合物よりも平均分子量が小さい接着化合物を含む第2接着剤材料により形成した場合には,第1接着剤材料が溶解する溶剤と同一の溶剤を使用することができる。このような溶剤として,溶解度パラメータ(SP値)が8より大きく,10より小さい溶剤であることが好ましく,例えば,PGMEA,HP等が挙げられる。
【0061】
また,第2接着剤層5を,炭化水素樹脂により形成した場合,非極性溶媒を溶剤として好適に使用可能であり,このような溶剤として,例えば,炭化水素系溶剤が挙げられる。前記炭化水素系溶剤としては,直鎖,分岐または環状の炭化水素が挙げられる。具体的には,ヘキサン,ヘプタン,オクタン,ノナン,メチルオクタン,デカン,ウンデカン,ドデカン,トリデカン等の直鎖状の炭化水素,炭素数3から15の分岐状の炭化水素;ゲラニオール,ネロール,リナロール,シトラール,シトロネロール,p-メンタン,o-メンタン,m-メンタン,ジフェニルメンタン,メントール,イソメントール,ネオメントール,リモネン,α-テルピネン,β-テルピネン,γ-テルピネン,α-テルピネオール,β-テルピネオール,γ-テルピネオール,テルピネン-1-オール,テルピネン-4-オール,1,4-テルピン,1,8-テルピン,カルボン,ヨノン,ツヨン,カンファー,ボルナン,ボルネオール,ノルボルナン,ピナン,α-ピネン,β-ピネン,ツジャン,α-ツジョン,β-ツジョン,カラン,ショウノウ,ロンギホレン,1,4-シネオール,1,8-シネオール等のモノテルペン類,アビエタン,アビエチン酸等のジテルペン類等の環状の炭化水素(テルペン類)が挙げられる。
【0062】
中でも,環状骨格を有する炭化水素であるテルペン系溶剤を用いることが好ましい。このようなテルペン系溶剤としては,具体的には,中でもモノテルペン類が入手の容易さから好ましく,その中でもリモネン,ピネン,ピナン,およびp-メンタンの中から選ばれる少なくとも1種が高い溶解性能を有することから好ましい。これらの中でも,SP値が8以下の非極性溶媒が好適に使用可能であり,SP値が7.4以下の非極性溶媒を使用することがより好ましい。
【0063】
さらに,第2接着剤層5を,極性溶媒溶解性(例えば水溶性)化合物により形成した場合,従来公知の極性溶媒を溶剤として好適に使用可能であるが,SP値が10以上の極性溶媒を使用することが好ましく,SP値が12以上の極性溶媒を使用することがより好ましい。SP値が12以上の極性溶媒として,例えば,水,メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール等が挙げられる。
【0064】
ついで,図2中(c)に示すように,第2接着剤層5が溶解した後,サポートプレート3を剥離する。なお,サポートプレート3を剥離した後,第1接着剤層4上を洗浄して溶け残った第2接着剤層5を取り除いてもよい。
【0065】
そして,図2中(d)に示すように,第1接着剤層4が溶解する溶剤を,第1接着剤層4の全面に注入して第1接着剤層4を溶解し,図2中(e)に示すように,サポートプレート3が剥離され,第1接着剤層4および第2接着剤層5が取り除かれたウエハ2が得られる。第1接着剤層4が溶解する溶剤としては,上述した第1接着剤材料に含まれる接着化合物よりも平均分子量が小さい接着化合物を含む第2接着剤材料により形成した第2接着剤層5を溶解する溶剤と同一の溶剤を使用することができる。
【0066】
上述したように,本発明に係る剥離方法によれば,サポートプレート3をウエハ2から剥離するとき,サポートプレート3の孔を介して溶剤を第2接着剤層5に供給し,第2接着剤層5を溶解する溶剤により第2接着剤層5を短時間で溶解させ,第2接着剤層5により接着されたサポートプレート3を剥離することができる。サポートプレート3を剥離した後で第1接着剤層4を溶解することで,サポートプレート3の存在により溶剤の浸透が妨げられることがないため,第1接着剤層4の溶解も迅速に行うことができる。」

・「【0067】
(熱重合禁止剤)
本発明において,第1接着剤材料または第2接着剤材料として使用する接着剤組成物は,熱重合禁止剤を含有してもよい。熱重合禁止剤は,熱によるラジカル重合反応を防止するのに有効な物質である。熱重合禁止剤は,ラジカルに対して高い反応性を示し,モノマーよりも優先的に反応するため,重合が禁止される。そのため,熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は,高温環境下(特に250℃?350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される。これにより,250℃で1時間加熱する高温プロセスを経ても,接着剤組成物を容易に溶解できる。したがって,接着剤組成物により形成された接着剤層を,高温プロセス後においても容易に剥離することができ,また残渣の発生も抑えることができる。」

したがって,上記甲第2号証には次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

・甲2発明
「A 第1接着剤層と,
B 上記第1接着剤層上に形成された,第1接着剤層よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層,若しくは,第1接着剤層が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層を含み,
C 上記第1接着剤層が,アクリルースチレン系樹脂,マレイミド系樹脂を含み,
D 上記第2接着剤層が,シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む
E 仮接合層。」

取消理由に引用された甲第3号証には,図面とともに次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
被研削基材と,
前記被研削基材と接している接合層と,
光吸収剤及び熱分解性樹脂を含む光熱変換層と,
光透過性支持体と,
を含み,
但し,前記光熱変換層は,前記接合層とは反対側の前記被研削基材の表面を研削した後に,放射エネルギーが照射されたときに分解して,研削後の基材と前記光透過性支持体とを分離するものである,積層体。
<途中省略>
【請求項11】
前記接合層は光硬化型接着剤である,請求項1?10のいずれか1項記載の積層体。」

・「【0024】
接合層
接合層は被研削基材を光熱変換層を介して支持体に固定するために用いられる。光熱変換層における分解による基材と支持体との分離の後には,接合層が付着した基材が得られる。このため,接合層はピールにより基材から容易に剥離されうるものであることが必要である。したがって,接合層は基材を支持体に固定するためには十分な接着力を有するが,ピールにより剥離されうるために十分に低い接着力を有するものである。本発明において,接合層として使用可能な接着剤としては,ゴム,エラストマーなどを溶剤に溶解したゴム系接着剤,エポキシ,ウレタンなどをベースとする一液熱硬化型接着剤,エポキシ,ウレタン,アクリルなどをベースとする二液混合反応型接着剤,ホットメルト型接着剤,アクリル,エポキシなどをベースとする紫外線(UV)もしくは電子線硬化型接着剤,水分散型接着剤が挙げられる。(1)ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート又はポリエステルアクリレートなどの重合性ビニル基を有するオリゴマー及び/又は(2)アクリルもしくはメタクリルモノマーに光重合開始剤,及び,場合により,添加剤を添加したUV硬化型接着剤は好適に使用される。添加剤としては,増粘剤,可塑剤,分散剤,上記透明フィラー以外のフィラー,難燃剤及び熱老化防止剤などが挙げられる。」

・「【0051】
実施例1
光透過性支持体として,直径220mm×厚さ1.0mmのガラス基板を用い,ウェハとして,直径200mm×厚さ750μmのシリコンウェハを用いた。ガラス基板に上記の表1に記載される組成の光熱変換層前駆体の10%溶液(プロピレングリコールメチルエーテルアセテート溶剤中)をスピンコートにより塗布する。これを加熱により乾燥し,紫外線(UV)照射して硬化させて支持体上に光熱変換層を形成した。一方,ウェハに上記の表2に記載される組成の接合層前駆体を同様にスピンコートにより塗布し,図2に示すような真空接着装置内でガラス基板とウェハとを貼り合せて,それにUV照射して接合層前駆体を硬化させて,積層体を得た。この積層体はガラス基板/光熱変換層/接合層/シリコンウェハの構成であり,光熱変換層の厚さは0.9μmであり,接合層の厚さは100μmであり,接着面積は314cm^(2)であった。」

(4)対比・判断
ア 甲第1号証(甲1A発明)を主引例とした検討
(ア)本件発明1について
・対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると,次のことがいえる。
(i)甲1A発明の「第1の接合層」は,本件発明1の「剥離層」に相当し,同様に「第2の接合層」は「接着性層」に相当する。

(ii)そして,甲1A発明は,「第1の接合層」が,「スチレン,エチレンプロピレンゴム,ポリオレフィンゴム」等の「ポリマー又はオリゴマー」である場合を包含し,この「スチレンのポリマー」等は炭化水素樹脂である。
そうすると,本件発明1の「剥離層」に含まれる材料が選ばれる元となる群と,甲1A発明の「第1の接合層」に含まれる材料が選ばれる元となる群とは,その構成要素が,一部重複する。

(iii)甲1A発明の「仮接合層」は,本件発明1の「半導体装置製造用仮接合層」に相当する。

したがって,本件発明1と甲1A発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層。」

(相違点)
(相違点1)本件発明1の「接着性層」が,「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」のに対して,甲1A発明の「第2の接合層」は,そのような構成を備えていない点。

(相違点2)本件発明1の「剥離層」が,「ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,甲1A発明の「第1の接合層」は,「溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む組成物から形成され,前記ポリマー又はオリゴマーは,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロール,のポリマー及びオリゴマーから成る群から選択され」るものであって,本件発明1の「ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」と,一部しか重複しない点。

・相違点についての判断
(i)相違点1について
相違点1に係る本件発明1の,「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」という構成は,実質的なものである。
したがって,本件発明1の発明特定事項は,甲1A発明の発明特定事項と一致しないから,本件発明1は,甲第1号証に記載された発明であるとは認められない。

さらに,甲第1号証には,「有利なことに,第1及び第2の接合層20及び32を形成するために用いる組成物は,上述の特性を有する層内に形成可能とされる市販の接合組成物から選択することができる。典型的には,そのような組成物は有機であり,溶媒系中に溶解又は分散されたポリマー又はオリゴマーを含む。ポリマー又はオリゴマーは,典型的には,環状オレフィン,エポキシ,アクリル,シリコン,スチレン,ハロゲン化ビニル,ビニルエステル,ポリアミド,ポリイミド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,環状オレフィン,ポリオレフィンゴム,及びポリウレタン,エチレンプロピレンゴム,ポリアミドエステル,ポリイミドエステル,ポリアセタール,及びポリビニルブテロールの,ポリマー又はオリゴマーから成る群から選択される。」と記載されている。
そして,甲第3号証には,「被研削基材と,前記被研削基材と接している接合層と,光吸収剤及び熱分解性樹脂を含む光熱変換層と,光透過性支持体と,を含」む「積層体」が記載されており,前記接合層として使用可能な接着剤として,「(1)ウレタンアクリレート,エポキシアクリレート又はポリエステルアクリレートなどの重合性ビニル基を有するオリゴマー及び/又は(2)アクリルもしくはメタクリルモノマーに光重合開始剤,及び,場合により,添加剤を添加したUV硬化型接着剤は好適に使用される」と記載されている。
しかしながら,甲第1号証及び甲第3号証には,接着性層が「熱重合開始剤」を含むことは記載されていない。
そうすると,甲1A発明において,相違点1について,本件発明1の構成とすることが,甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易になし得たことであるとは認められない。
したがって,他の相違点については検討をするまでもなく,本件発明1は,甲1A発明と,甲第1号証及び甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

なお,異議申立人は,意見書において,「重合開始剤として光重合開始剤及び熱重合開始剤はともに周知である」から,「熱により硬化させるために,『バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む接着性層』を『バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む接着性層』とすることは,当業者であれば容易に想到し得たことである。よって,本件訂正請求項1に係る発明は,進歩性を有しないものと思料する。」と主張する。
しかしながら,仮に,「重合開始剤として光重合開始剤及び熱重合開始剤はともに周知」であったとしても,甲1A発明において,相違点1について,本件発明1の構成とすることが当業者にとって容易であったとは認められない。その理由は,以下のとおりである。

すなわち,上記(3)アのとおり,甲1A発明は,「A 軟化温度を有する第1の接合層,B 前記第1の接合層に隣接し軟化温度を有する第2の接合層であって,前記第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い,第2の接合層を含」む「仮接合層」に係る発明である。
そして,甲第1号証の上記(3)アの記載から,甲1A発明は,「次に構造体10及び22は,第1の接合層20の上部表面21が第2の接合層32の上部表面33に接触するように向かい合わせにされ一緒にプレスされる(図1(b))。プレスされると同時に,十分な時間十分な圧力及び熱が加えられて,これら2つの構造体10及び22の接合が有効になり接合されたスタック34が形成され」,「第1の接合層20及び第2の接合層32は,これらのプロセスに耐えられるだけでなく,最大約450℃,好ましくは約200℃?約400℃,より好ましくは約200℃?約350℃の処理温度にも耐えうる」ものであって,しかも,「『接合されたスタック34を,約100℃以上,好ましくは約150℃?約220℃,より好ましくは約180℃?約200℃の温度に加熱する』『これらの温度で,第2の接合層32が軟化し,基板12及び24を分離させる』」という分離方法を,「最も好ましい分離方法」として用いることができる発明であると理解される。
すなわち,甲1A発明は,「構造体の接合温度及び全体の熱安定性を制御することができる。即ち,本発明の方法は,より高い処理温度の使用を可能にすると同時により低い温度で接合及び剥離を可能にする」という効果を奏するものといえる。
他方,甲1A発明の「第2の接合層」を,「熱重合開始剤」を含むものとした場合には,当該「第2の接合層」は,接合の際の加熱及び高い処理温度によって重合し,硬化するものと認められる。
そして,甲1A発明は,「A 軟化温度を有する第1の接合層,B 前記第1の接合層に隣接し軟化温度を有する第2の接合層であって,前記第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い,第2の接合層を含」むという構成を有し,当該構成を有することによって前記効果を奏する発明であることから,甲1A発明において,相違点1について,本件発明1の構成とすることが当業者にとって容易であったといえるためには,「熱重合開始剤」によって重合した「第2の接合層」の軟化温度と,ポリスチレン樹脂等の炭化水素樹脂を含むものとされる「第1の接合層」の軟化温度とを比較した場合に,「第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い」という条件を満たすようにすることが容易であったことを要するものといえる。
しかしながら,「第2の接合層」を,「熱重合開始剤」を含むものとすることによって,当該接合層の軟化温度が低くなることが当然に生じる事象であるとは認めることはできない。
さらに,甲第1号証,甲第3号証の記載及び技術常識から,甲1A発明において,第2接合層を「熱重合開始剤」を含むものとすることによって,「第1の接合層の軟化温度は,前記第2の接合層の軟化温度よりも約20℃以上高い」ものとする動機を見いだすこともできない。
してみれば,甲1A発明において,「第2の接合層」を,「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」ものとすること,すなわち,上記相違点1について,本件発明1の構成とすることが当業者にとって容易であったとは認めることはできない。

そして,本件発明1は,「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」という構成を備えることによって,本件特許明細書に記載された,「【0135】熱重合開始剤が存在することにより,接着性層と剥離層とが接合された後,熱重合開始剤の分解温度以上に加熱することで,接着性層を硬化させて,より耐熱性・耐薬品性の高い接着を行えるという利点がある。」及び「熱ラジカル発生剤を添加することによって,仮接着剤を用いて形成された接着性層に対して熱を照射した後に,被処理部材と接着性支持体との仮接着を行う場合においては,熱により架橋性基を有する反応性化合物における架橋反応が進行することにより,後に詳述するように,接着性層の接着性(すなわち,粘着性及びタック性)を前もって低下させることができる。【0137】一方,被処理部材と接着性支持体との仮接着を行った後に,接着性支持体における接着性層に対して熱を照射した後に場合には,熱により架橋性基を有する反応性化合物における架橋反応が進行することにより,接着性層がより強靭になり,被処理部材の機械的又は化学的な処理を施している時などに生じやすい接着性層の凝集破壊を抑制できる。すなわち,接着性層における接着性を向上できる。」という格別の効果を奏するものと認められる。
したがって,仮に,「重合開始剤として光重合開始剤及び熱重合開始剤はともに周知」であったとしても,本件発明1は,甲1A発明と,甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(イ)本件発明3について
本件発明3と甲1A発明とを対比すると,本件発明3と甲1A発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層。」

(相違点)
(相違点3)本件発明3の「接着性層」が,「バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む」のに対して,甲1A発明の「第2の接合層」は,そのような構成を備えていない点。

(相違点4)本件発明3の「剥離層」が,「テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,甲1A発明の「第1の接合層」は,そのような構成を備えていない点。

・相違点についての判断
(i)相違点4について
「剥離層」が,「テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」という構成は,甲第1号証,甲第3号証には記載されていない。
そうすると,甲1A発明において,相違点4について,本件発明3の構成とすることは,当業者が容易になし得たこととは認められない。
したがって,他の相違点については検討をするまでもなく,本件発明3は,甲1A発明と,甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(ウ)本件発明2,及び,本件発明4ないし10について
本件発明2,及び,本件発明4ないし10も,本件発明1の「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」,本件発明3の「剥離層」が「テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,甲第1号証に記載された発明であるとは認められず,また,当業者であっても,甲1A発明と,甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

イ 甲第1号証(甲1B発明)を主引例とした検討
本件発明1について
・対比
本件発明1と甲1B発明とを対比すると,次のことがいえる。
(i)甲1B発明の「リフトオフ層」は,本件発明1の「剥離層」に相当し,同様に「接合層20」は「接着性層」に相当する。

(ii)甲1B発明の「物品」は,本件発明1の「半導体装置製造用仮接合層」に相当する。

したがって,本件発明1と甲1B発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層。」

(相違点)
(相違点5)本件発明1の「接着性層」が,「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」のに対して,甲1B発明の「接合層20」は,そのような構成を備えていない点。

(相違点6)本件発明1の「剥離層」が,「ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,甲1B発明の「リフトオフ層」は,「1%の塩化水素酸水溶液,50%の酢酸水溶液,イソプロパノール,1-ドデセン,R-リモネン,シクロペンタノン,PGME,及びテトラメチルアンモニウム水酸化物(TMAH)から成る群から選択される溶液中でリフトオフ層が可溶性であるように選択されるべきであり,より詳細には,リフトオフ層は,特定の除去溶液に接触してから約4?5時間の後に,約95%以上,好ましくは約99%以上,好ましくは100%溶解/除去されるものであって,リフトオフ層44を形成するために好ましい組成物は上述の特性を持つ市販の組成物から選択することができ,そのような組成物の例には,ポリ(ビニルピリジン)及びポリアミド酸から成る群から選択される組成物が含まれるものであ」るものである点。

・相違点についての判断
(i)相違点5について
甲第1号証,甲第2号証,甲第3号証には,接着性層が「熱重合開始剤」を含むことは記載されていない。
そうすると,甲1B発明において,相違点5について,本件発明1の構成とすることは,当業者が容易になし得たこととは認められない。
したがって,他の相違点について検討をするまでもなく,本件発明1は,甲1B発明と,甲第2号証,甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。
よって,甲1B発明と,甲第2号証,甲第3号証に記載された事項からは,当業者が本件発明1を容易に発明をすることができたとは認められない。

ウ 甲第2号証(甲2発明)を主引例とした検討
(ア)本件発明1について
・対比
本件発明1と甲2発明とを対比すると,次のことがいえる。
(i)甲2発明の「第1接着剤層」は,本件発明1における「接着性層」に相当し,同様に「第2接着剤層」は「剥離層」に相当する。

(ii)本件発明1の「剥離層」が,「ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,甲2発明の「第2接着剤層」は,「シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む」ものであり,両者は「炭化水素樹脂を含む層」である点で一致する。

(iii)甲2発明の「仮接合層」は,本件発明1の「半導体装置製造用仮接合層」に相当する。

したがって,本件発明1と甲2発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層が炭化水素樹脂を含む層である,半導体装置製造用仮接合層。」

(相違点)
(相違点7)本件発明1の「接着性層」が,「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」のに対して,甲2発明の「第1接着剤層」が,そのような構成を備えていない点。

(相違点8)本件発明1の「剥離層」が,「ポリスチレン樹脂,オレフィンモノマー重合体,テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,甲2発明の「第2接着剤層」が,「シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む」ものである点。

・相違点についての判断
(i)相違点7について
相違点7に係る本件発明1の,「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」という構成は,実質的なものである。
したがって,本件発明1の発明特定事項は,甲2発明の発明特定事項と一致しないから,本件発明1は,甲第2号証に記載された発明であるとは認められない。

さらに,上記(3)イのとおり,甲2発明は,「A 第1接着剤層と,B 上記第1接着剤層上に形成された,第1接着剤層よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層,若しくは,第1接着剤層が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層を含」む「仮接合層」に係る発明である。
そして,甲第2号証の上記(3)イの記載によれば,甲2発明は,「第1接着剤層4と,第1接着剤層4よりも速く溶剤に溶解する第2接着剤層5,若しくは,第1接着剤層4が溶解する溶剤とは異なる溶剤に溶解する第2接着剤層5とを介してサポートプレート3が貼着されているウエハ2から,サポートプレート3を剥離する剥離方法であって,サポートプレート3側に位置する第2接着剤層5を溶解してサポートプレート3を上記ウエハ2から剥離する剥離工程を包含している」剥離方法に用いられることを想定した「仮接合層」に係る発明であるところ,甲2発明に係る前記剥離方法は,「上述した剥離工程を少なくとも含んでいればよく,当該剥離工程の後に,第1接着剤層4を溶解する溶解工程をさらに含んでいることが好まし」く,このため,甲2発明において,「第1接着剤材料または第2接着剤材料として使用する接着剤組成物は,熱重合禁止剤を含有」してもよく,そして,第1接着剤材料または第2接着剤材料として使用する接着剤組成物が,熱重合禁止剤を含有する場合には,「熱重合禁止剤を含む接着剤組成物は,高温環境下(特に250℃?350℃)における接着剤組成物の重合反応が抑制される」ことから,「250℃で1時間加熱する高温プロセスを経ても,接着剤組成物を容易に溶解でき」,「したがって,接着剤組成物により形成された接着剤層を,高温プロセス後においても容易に剥離することができ,また残渣の発生も抑えることができる」という有利な効果を奏することが理解される。

そうすると,このような事項が記載された甲第2号証に接した当業者において,甲2発明の「第1接着剤層」を「熱重合開始剤」を含むものとすることは,ウエハ2から,第2接着剤層を除去する際に,残渣の発生に繋がることが予測され,このような残渣の発生が望ましくないことは明らかであるから,甲第2号証には,甲2発明において,相違点7について,本件発明1の構成とすることに阻害要因があるものと認められる。
したがって,本件発明1は,他の相違点については検討するまでもなく,甲2発明から,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(イ)本件発明3について
本件発明3と甲2発明とを対比すると,本件発明3と甲2発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「(A)剥離層と,(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって,前記剥離層が炭化水素樹脂を含む層である,半導体装置製造用仮接合層。」

(相違点)
(相違点9)本件発明3の「接着性層」が,「バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む」のに対して,甲2発明の「第1接着剤層」は,そのような構成を備えていない点。

(相違点10)本件発明3の「剥離層」が,「テルペン樹脂,ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層」であるのに対して,「第2接着剤層」が,「シクロオレフィン系ポリマー,テルペン樹脂,ロジン系樹脂および石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む」ものである点。

・相違点についての判断
(i)相違点9について
上記「相違点7について」と同様の理由により,甲第2号証には,甲2発明において,相違点9について,本件発明1の構成とすることに阻害要因があるものと認められる。
したがって,本件発明3は,他の相違点については検討するまでもなく,甲2発明から,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

(ウ)本件発明2,及び,本件発明4ないし10について
本件発明2,及び,本件発明4ないし10も,本件発明1の「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,熱重合開始剤とを含む」,本件発明3の「接着性層」が「バインダーと,重合性モノマーと,光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む」と同一の構成を備えるものであるから,本件発明1と同じ理由により,甲第2号証に記載された発明であるとは認められず,また,当業者であっても,甲2発明と,甲第3号証に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

エ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は,意見書において,「ii.訂正請求項3の進歩性」について,甲第1号証の第13ページ第38行-第15ページ第9行(特表2013-535838号公報の【0038】-【0041】)から,甲第1号証には,「リフトオフ層44」を発明特定事項として含む発明が記載されていることを前提としたうえで,その進歩性の欠如を主張する。
しかしながら,前記「リフトオフ層44」を発明特定事項として含む発明に基づく,請求項3に係る発明の進歩性の欠如の主張は,異議申立書に記載された異議申立ての理由ではなく,また,取消理由通知書で通知した取消理由にも該当しない。
したがって,前記主張は,その主張の前提を欠くから採用することはできない。

4 むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,本件請求項1ないし10に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ICやLSIなどの半導体デバイスの製造プロセスにおいては、通常、半導体シリコンウエハ上に多数のICチップが形成され、ダイシングにより個片化される。
電子機器の更なる小型化及び高性能化のニーズに伴い、電子機器に搭載されるICチップについても更なる小型化及び高集積化が求められているが、シリコン基板の面方向における集積回路の高集積化は限界に近づいている。
【0003】
ICチップ内の集積回路から、ICチップの外部端子への電気的な接続方法としては、従来より、ワイヤーボンディング法が広く知られているが、ICチップの小型化を図るべく、近年、シリコン基板に貫通孔を設け、外部端子としての金属プラグを貫通孔内を貫通するように集積回路に接続する方法(いわゆる、シリコン貫通電極(TSV)を形成する方法)が知られている。しかしながら、シリコン貫通電極を形成する方法のみでは、上記した近年のICチップに対する更なる高集積化のニーズに充分応えられるものではない。
【0004】
以上を鑑み、ICチップ内の集積回路を多層化することにより、シリコン基板の単位面積当たりの集積度を向上させる技術が知られている。しかしながら、集積回路の多層化は、ICチップの厚みを増大させるため、ICチップを構成する部材の薄型化が必要である。このような部材の薄型化としては、例えば、シリコン基板の薄型化が検討されており、ICチップの小型化につながるのみならず、シリコン貫通電極の製造におけるシリコン基板の貫通孔製造工程を省力化できることから、有望視されている。
【0005】
半導体デバイスの製造プロセスに用いられる、半導体シリコンウエハとしては、約700?900μmの厚さを有するものが広く知られているが、近年、ICチップの小型化等を目的に、半導体シリコンウエハの厚さを200μm以下となるまで薄くすることが試みられている。
しかしながら、厚さ200μm以下の半導体シリコンウエハは非常に薄く、ひいては、これを基材とする半導体デバイス製造用部材も非常に薄いため、このような部材に対して更なる処理を施したり、あるいは、このような部材を単に移動したりする場合等において、部材を安定的に、かつ、損傷を与えることなく支持することは困難である。
【0006】
上記のような問題を解決すべく、表面にデバイスが設けられた薄型化前の半導体ウエハと加工用支持基板とをシリコーン粘着剤により仮接着し、半導体ウエハの裏面を研削して薄型化した後に、半導体ウエハを穿孔してシリコン貫通電極を設け、その後、半導体ウエハから加工用支持基板を脱離させる技術が知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、半導体ウエハの裏面研削時の耐研削抵抗、異方性ドライエッチング工程などにおける耐熱性、メッキやエッチング時の耐薬品性、最終的な加工用支持基板とのスムースな剥離と低被着体汚染性を同時に達成することが可能であるとされている。
【0007】
また、ウエハの支持方法としては、ウエハを支持層システムにより支持する方法であって、ウエハと支持層システムとの間に、プラズマ堆積法により得られるプラズマポリマー層を分離層として介装させて、支持層システムと分離層との間の接着結合を、ウエハと分離層との間の接合結合より大きくなるようにし、ウエハを支持層システムから脱離する際に、ウエハが分離層から容易に脱離するように構成した技術も知られている(特許文献2参照)。
【0008】
また、ポリエーテルスルホンと粘性付与剤を使用して、仮接着を行い、加熱により仮接着を解除する技術が知られている(特許文献3)。
また、カルボン酸類とアミン類からなる混合物により、仮接着を行い、加熱により仮接着を解除する技術も知られている(特許文献4)
また、セルロースポリマー類等からなる接合層を加温した状態で、デバイスウエハと支持基板を圧着することで接着させて、加温して横方向にスライドすることによりデバイスウエハを支持基板から脱離する技術が知られている(特許文献5)。
【0009】
また、シンジオタクチック1、2-ポリブタジエンと光重合開始剤からなり、放射線の照射により接着力が変化する粘着フィルムが知られている(特許文献6)
更に、ポリカーボネート類からなる接着剤により、支持基板と半導体ウエハとを仮接着し、半導体ウエハに対して処理を行った後、照射線を照射し、次いで、加熱することにより、処理済の半導体ウエハを支持基板から脱離する技術が知られている(特許文献7)
【0010】
また、仮接着のために炭化水素樹脂を接着剤として使用する技術が知られている(特許文献8)。
また、仮接着のために赤外線を吸収する化合物からなる層と接着剤層の2層を接着性層として使用する技術が知られている(特許文献9)。
また、仮接着のために無機化合物層と接着剤層の2層を接着性層として使用する技術が知られている(特許文献10)。
また、仮接着のためにフルオロカーボン層と接着剤層の2層を接着性層として使用する技術が知られている(特許文献11)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2011-119427号公報
【特許文献2】特表2009-528688号公報
【特許文献3】特開2011-225814号公報
【特許文献4】特開2011-052142号公報
【特許文献5】特表2010-506406号公報
【特許文献6】特開2007-045939号公報
【特許文献7】米国特許公開2011/0318938号明細書
【特許文献8】特開2011-219506号公報
【特許文献9】特開2012-124467号公報
【特許文献10】特開2012-109538号公報
【特許文献11】特開2012-109519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、デバイスが設けられた半導体ウエハの表面(すなわち、デバイスウエハのデバイス面)と支持基板(キャリア基板)とを、特許文献1等で知られている粘着剤からなる層を介して仮接着する場合には、半導体ウエハを安定的に支持するべく、粘着剤層には一定の強さの粘着度が要求される。
そのため、半導体ウエハのデバイス面の全面と支持基板とを粘着剤層を介して仮接着する場合においては、半導体ウエハと支持基板との仮接着を充分なものとし、半導体ウエハを安定的に、かつ、損傷を与えることなく支持しようとする程、反面、半導体ウエハと支持基板との仮接着が強すぎることにより、支持基板から半導体ウエハを脱離する際に、デバイスが破損したり、半導体ウエハからデバイスが脱離してしまうという不具合が生じやすい。
【0013】
また、特許文献2のように、ウエハと支持層システムとの接着が強くなりすぎることを抑制すべく、ウエハと支持層システムとの間に、分離層としてのプラズマポリマー層を、プラズマ堆積法により形成する方法は、(1)通常、プラズマ堆積法を実施するための設備コストは大きい;(2)プラズマ堆積法による層形成は、プラズマ装置内の真空化やモノマーの堆積に時間を要する;及び(3)プラズマポリマー層からなる分離層を設けても、加工に供されるウエハを支持する場合においては、ウエハと分離層との接着結合を充分なものとしながら、反面、ウエハの支持を解除する場合においては、ウエハが容易に分離層から脱離するような接着結合にコントロールすることは容易ではない;等の問題がある。
【0014】
また、特許文献3、4及び5記載のように、加熱により仮接着を解除する方法では、半導体ウエハを脱離する際にデバイスが破損する不具合が生じやすい。
【0015】
また、特許文献6及び7記載のように、照射線を照射して仮接着を解除する方法では、照射線を透過する支持基板を使用する必要がある。
【0016】
また、特許文献8のように、炭化水素樹脂層のみを接着剤として用いた場合、接着剤の接着性が十分ではない。
【0017】
また、特許文献9のように、赤外線等の照射線を照射することにより仮接着を解除する方法では、上記照射線を透過する支持基板を用意する必要がある。
【0018】
また、特許文献10のように、無機化合物層を用いた場合は、上記無機化合物層を完全に除去することが困難であり、半導体の欠陥を生じる可能性が高い。
【0019】
また、特許文献11のように、フルオロカーボン層を用いた場合は、上記フルオロカーボン層の形成に別途の設備が必要となり、生産性が低下する。
【0020】
本発明は、上記背景を鑑みてなされたものであり、その目的は、被処理部材(半導体ウエハなど)に機械的又は化学的な処理を施す際に、被処理部材を確実かつ容易に仮支持できるとともに、処理済部材に損傷を与えることなく、処理済部材に対する仮支持を容易に解除できる、半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、支持体と被処理部材との間に炭化水素樹脂層と接着性層を設けることにより、研磨や加熱などの物理的な刺激に対して高い耐久性を持ち、また剥離の際には剥離溶剤を接触させることにより、上記の従来技術において行うような、加熱や、活性光線若しくは放射線の照射を行うこともなく、処理済部材に対する仮支持を容易に解除できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1> (A)剥離層と、(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって、前記剥離層がポリスチレン樹脂、オレフィンモノマー重合体、テルペン樹脂、ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり、前記接着性層が、バインダーと、重合性モノマーと、熱重合開始剤とを含む半導体装置製造用仮接合層。
<2> 前記炭化水素樹脂が、ポリスチレン樹脂である、<1>に記載の半導体装置製造用仮接合層。
<3> (A)剥離層と、(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって、前記剥離層がテルペン樹脂、ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり、前記接着性層が、バインダーと、重合性モノマーと、光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。
<4> 支持体と、被処理部材と、前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する、積層体。
<5> 被処理部材の第1の面と基板とを、<1>?<3>のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程、前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程、及び、前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程、を有する、前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
<6> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に、前記仮接合層の接着性層に対して、活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する、<5>に記載の半導体装置の製造方法。
<7> 前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後、かつ、前記被処理部材の前記第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程の前に、前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する、<5>又は<6>に記載の半導体装置の製造方法。
<8> 前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が、前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む、<5>?<7>のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
<9> 前記剥離溶剤が、炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、<8>に記載の半導体装置の製造方法。
<10> 前記剥離溶剤が、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、リモネン、p-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、<9>に記載の半導体装置の製造方法。
本発明は、上記<1>?<10>に記載の半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法に関するものであるが、その他の事項についても参考のために記載する。
【0022】
〔1〕
(A)剥離層と、(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって、前記剥離層が炭化水素樹脂を含む層である半導体装置製造用仮接合層。
〔2〕
前記炭化水素樹脂が、オレフィンモノマー重合体、テルペン樹脂、ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である、〔1〕に記載の半導体装置製造用仮接合層。
〔3〕
前記炭化水素樹脂が、ポリスチレン樹脂又はシクロオレフィンモノマー重合体である、〔1〕又は〔2〕に記載の半導体装置製造用仮接合層。
〔4〕
前記接着性層が、バインダーと、重合性モノマーと、光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含むことを特徴とする〔1〕?〔3〕のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層。
〔5〕
支持体と、被処理部材と、前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた〔1〕?〔4〕のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する、積層体。
〔6〕
被処理部材の第1の面と基板とを、〔1〕?〔4〕のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程、前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程、及び、前記接合層から前記処理済部材を脱離する工程、を有する、前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
〔7〕
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に、前記仮接合層の接着性層に対して、活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する、〔6〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔8〕
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後、かつ、前記被処理部材の前記第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程の前に、前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する、〔6〕又は〔7〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔9〕
前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が、前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む、〔6〕?〔8〕のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
〔10〕
前記剥離溶剤が、炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、〔9〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔11〕
前記剥離溶剤が、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、リモネン、p-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、〔10〕に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被処理部材に機械的又は化学的な処理を施す際に、被処理部材を確実かつ容易に仮支持できるとともに、処理済部材に損傷を与えることなく、処理済部材に対する仮支持を解除できる、半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1A、図1B及び図1Cは、それぞれ、接着性支持体とデバイスウエハとの仮接着を説明する概略断面図、接着性支持体により仮接着されたデバイスウエハを示す概略断面図、及び、接着性支持体により仮接着されたデバイスウエハが薄型化された状態を示す概略断面図である。
【図2】従来の接着性支持体とデバイスウエハとの仮接着状態の解除を説明する概略断面図である。
【図3】図3Aは、接着性支持体に対する露光を説明する概略断面図を示し、図3Bは、マスクの概略上面図を示す。
【図4】図4Aは、パターン露光された接着性支持体の概略断面図を示し、図4Bは、パターン露光された接着性支持体の概略上面図を示す。
【図5】接着性支持体に対する活性光線若しくは放射線又は熱の照射を説明する概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。
本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」は、例えば、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等を含むものを意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味している。
また、本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯、紫外線、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線、EUV光等による露光のみならず、電子線及びイオンビーム等の粒子線による描画をも意味している。
なお、本明細書において、“(メタ)アクリレート”はアクリレートおよびメタアクリレートを表し、“(メタ)アクリルはアクリルおよびメタアクリルを表し、“(メタ)アクリロイル”は、アクリロイルおよびメタクリロイルを表す。また、本明細書中において、“単量体”と“モノマー”とは同義である。本発明における単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、質量平均分子量が2,000以下の化合物をいう。本明細書中において、重合性化合物とは、重合性基を有する化合物のことをいい、単量体であっても、ポリマーであってもよい。重合性基とは、重合反応に関与する基を言う。
なお、以下に説明する実施の形態において、既に参照した図面において説明した部材等については、図中に同一符号あるいは相当符号を付すことにより説明を簡略化あるいは省略化する。
【0026】
本発明の半導体装置製造用仮接合層(以下、単に、「仮接合層」とも言う)は、(A)剥離層、及び、(B)接着性層を有する。
本発明の半導体装置製造用仮接合層によれば、後に詳述する被処理部材に機械的又は化学的な処理を施す際に、被処理部材を確実かつ容易に仮支持できるとともに、処理済部材に損傷を与えることなく、処理済部材に対する仮支持を解除できる半導体装置製造用仮接合層が得られる。
本発明の半導体装置製造用仮接合層は、シリコン貫通電極形成用であることが好ましい。シリコン貫通電極の形成については後に詳述する。
【0027】
(A)剥離層
剥離層は、後述する剥離溶剤による剥離性を向上させる目的で用いる。そのため、剥離層は熱・薬品に対して接着性の変化が小さい一方で、剥離溶剤に対する良好な溶解性を有していることが求められる。上記剥離層は炭化水素樹脂を含有する。
【0028】
剥離層は、前述の炭化水素樹脂と溶剤とを含有する剥離層組成物を、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、ドクターコート法、浸漬法などを用いて、被処理部材に塗布し、次いで、乾燥することにより形成することができる。
剥離層の厚みは、例えば、1?500μmの範囲内とされるが、特に限定されるものではない。
【0029】
以下、上記剥離層組成物が含有する炭化水素樹脂について説明する。
【0030】
本発明においては、上記剥離層組成物が含有する炭化水素樹脂として任意のものを使用できる。
本発明における炭化水素樹脂は基本的には炭素原子と水素原子のみからなる樹脂を意味するが、基本となる骨格が炭化水素樹脂であれば、側鎖としてその他の原子を含んでいても良い。また、本発明における炭化水素樹脂にアクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂のように、主鎖に炭化水素基以外の官能基が直接結合する樹脂は含まれない。
【0031】
上記条件に合致する炭化水素樹脂としては例えば、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、水添ロジン、水添ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、変性ロジン、ロジン変性フェノール樹脂、アルキルフェノール樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、変性石油樹脂、脂環族石油樹脂、クマロン石油樹脂、インデン石油樹脂、オレフィンモノマー重合体(例えば、メチルペンテン共重合体)、シクロオレフィンモノマー重合体(例えば、ノルボルネン共重合体、ジシクロペンタジエン共重合体、テトラシクロドデセン共重合体)などが挙げられる。
【0032】
中でも、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン、石油樹脂、水素化ロジン、重合ロジン、オレフィンモノマー重合体、シクロオレフィンモノマー重合体が好ましく、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン、オレフィンモノマー重合体、シクロオレフィンモノマー重合体がより好ましく、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン、オレフィンモノマー重合体、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンモノマー重合体が更に好ましく、ポリスチレン樹脂、テルペン樹脂、ロジン、シクロオレフィンモノマー重合体、オレフィンモノマー重合体が特に好ましく、ポリスチレン樹脂又はシクロオレフィンモノマー重合体が最も好ましい。
【0033】
シクロオレフィンコポリマーの作製に用いられる環状オレフィン系樹脂の例には、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィンの重合体、環状共役ジエンの重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれら重合体の水素化物などが含まれる。好ましい例には、下記一般式(II)で表される繰り返し単位を少なくとも1種以上含む付加(共)重合体環状オレフィン系樹脂、及び必要に応じ、一般式(I)で表される繰り返し単位の少なくとも1種以上を更に含んでなる付加(共)重合体環状オレフィン系樹脂が含まれる。また、他の好ましい例には、一般式(III)で表される環状繰り返し単位を少なくとも1種含む開環(共)重合体が含まれる。
【0034】
【化1】

【0035】
式中、mは0?4の整数を表す。R^(1)?R^(6)は水素原子又は炭素数1?10の炭化水素基、X^(1)?X^(3)、Y^(1)?Y^(3)は水素原子、炭素数1?10の炭化水素基、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換された炭素数1?10の炭化水素基、-(CH_(2))_(n)COOR^(11)、-(CH_(2))_(n)OCOR^(12)、-(CH_(2))_(n)NCO、-(CH_(2))_(n)NO_(2)、-(CH_(2))_(n)CN、-(CH_(2))_(n)CONR^(13)R^(14)、-(CH_(2))_(n)NR^(15)R^(16)、-(CH_(2))_(n)OZ、-(CH_(2))_(n)W、又はX^(1)とY^(1)、X^(2)とY^(2)、若しくはX^(3)とY^(3)から構成された(-CO)_(2)O、(-CO)_(2)NR^(17)を表す。なお、R^(11)、R^(12)、R^(13)、R^(14)、R^(15)、R^(16)及びR^(17)は水素原子、炭素数1?20の炭化水素基、Zは炭化水素基またはハロゲンで置換された炭化水素基、WはSiR^(18)_(p)D_(3-p)(R^(18)は炭素数1?10の炭化水素基、Dはハロゲン原子、-OCOR^(18)又は-OR^(18)、pは0?3の整数を示す)を表す。nは0?10の整数を表す。
【0036】
ノルボルネン系付加(共)重合体は、特開平10-7732号、特表2002-504184号、US2004/229157A1号あるいはWO2004/070463A1号等に開示されている。ノルボルネン系多環状不飽和化合物同士を付加重合する事によって得られる。また、必要に応じ、ノルボルネン系多環状不飽和化合物と、エチレン、プロピレン、ブテン;ブタジエン、イソプレンのような共役ジエン;エチリデンノルボルネンのような非共役ジエンとを付加重合することもできる。このノルボルネン系付加(共)重合体は、三井化学(株)よりアペルの商品名で発売されており、ガラス転移温度(Tg)の異なる例えばAPL8008T(Tg70℃)、APL6013T(Tg125℃)あるいはAPL6015T(Tg145℃)などのグレードがある。ポリプラスチック(株)よりTOPAS8007、同5013、同6013、同6015などのペレットが発売されている。
更に、Ferrania社よりAppear3000が発売されている。
【0037】
ノルボルネン系重合体水素化物は、特開平1-240517号、特開平7-196736号、特開昭60-26024号、特開昭62-19801号、特開2003-1159767号あるいは特開2004-309979号等に開示されているように、多環状不飽和化合物を付加重合あるいはメタセシス開環重合した後、水素添加することにより製造できる。
前記式中、R^(5)?R^(6)が水素原子又は-CH_(3)が好ましく、X^(3)及びY^(3)が水素原子が好ましく、その他の基は適宜選択される。このノルボルネン系樹脂は、JSR(株)からアートン(Arton)GあるいはアートンFという商品名で発売されており、また日本ゼオン(株)からゼオノア(Zeonor)ZF14、ZF16、ゼオネックス(Zeonex)250、同280、同480Rという商品名で市販されており、これらを使用することができる。
【0038】
炭化水素樹脂としては、クリアロンP-135(ヤスハラケミカル(株)製)、ゼオネックス480R(日本ゼオン(株)製)、TOPAS5013(ポリプラスチックス(株)製)、TPX-MX002(三井化学(株)製)、ポリスチレン(アルドリッチ製,分子量19万)及びペンセルKK(荒川化学(株)製)が好適に挙げられる。
【0039】
炭化水素樹脂は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
炭化水素樹脂の含有量は、剥離層組成物の全固形分に対して、70質量%?100質量%が好ましく、80質量%?100質量%がより好ましい。
溶剤は、剥離層を形成できれば、公知のものを制限なく使用できるが、リモネン、シクロペンタン、シクロヘキサン、PEGMEA、メシチレン、キシレン、p-メンタン等が使用でき、リモネン、シクロペンタン、又はPEGMEAが好ましい。
溶剤は、剥離層組成物の固形分濃度が10?40質量%になるように使用されることが好ましい。
【0040】
剥離層組成物は、更に界面活性剤を含んでいても良い。
【0041】
本発明の剥離層組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0042】
特に、本発明の剥離層組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する剥離層組成物を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0043】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%?40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%?30質量%であり、特に好ましくは7質量%?25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、剥離層組成物中における溶解性も良好である。
【0044】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、同SC-101、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC1068、同SC-381、同SC-383、同S393、同KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0045】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセリンエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)等が挙げられる。
【0046】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA-745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社化学(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0047】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0048】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、東レ・ダウコーニング(株)製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF-4440」、「TSF-4300」、「TSF-4445」、「TSF-4460」、「TSF-4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビックケミー社製「BYK307」、「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
界面活性剤の添加量は、剥離層組成物の全固形分に対して、0.001質量%?2.0質量%が好ましく、より好ましくは0.005質量%?1.0質量%である。
【0049】
(B)接着性層
接着性層は、剥離層と基板とを接続する目的で用いる。そのため、接着性層は熱・薬品に対して接着性の変化が小さいことが求められる。
接着性層は、後述する各成分を含有する接着性組成物を、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、ドクターコート法、浸漬法などを用いて、キャリア基板上に塗布し、次いで、乾燥することにより形成することができる。
接着性層の厚みは、例えば、1?500μmの範囲内とされるが、特に限定されるものではない。
【0050】
接着性組成物(ひいては接着性層)は、バインダーを有していることが好ましい。
【0051】
接着性組成物(ひいては接着性層)のバインダーとして任意のものを使用できる。
例えば、前述した炭化水素樹脂、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテラフタレート、ポリエチレンテレフタラート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミドなどの合成樹脂や、天然ゴムなどの天然樹脂が挙げられる。中でも、ポリウレタン、ノボラック樹脂、ポリイミド、ポリスチレンが好ましく、ポリウレタン、ノボラック樹脂、ポリイミドがより好ましく、ポリウレタンが最も好ましい。
本発明において、バインダーは、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0052】
また、接着性組成物(ひいては接着性層)は、重合性モノマーを含有することが好ましい。
【0053】
接着性組成物(ひいては接着性層)の重合性モノマーは任意のものを使用できる。ここで重合性モノマーは重合性基を有する。重合性基とは、典型的には、活性光線若しくは放射線の照射、又は、ラジカル若しくは酸の作用により、重合することが可能な基である。なお、重合性モノマーは、上記したバインダーとは異なる化合物である。重合性モノマーは、典型的には、低分子化合物であり、分子量2000以下の低分子化合物であることが好ましく、1500以下の低分子化合物であることがより好ましく、分子量900以下の低分子化合物であることが更に好ましい。なお、分子量は、通常、100以上である。
重合性基は、例えば、付加重合反応し得る官能基であることが好ましく、付加重合反応し得る官能基としては、エチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。 また、重合性基は、光照射によりラジカルを発生し得る官能基であってもよく、そのような重合性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基等が挙げられる。なかでも、重合性基は、エチレン性不飽和結合基が好ましい。エチレン性不飽和結合基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0054】
重合性基を有する反応性化合物としては、具体的にはラジカル重合性化合物(B1)とイオン重合性化合物(B2)が挙げられる。
【0055】
ラジカル重合性化合物としては、具体的には、ラジカル重合性基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られているものであり、本発明においてはこれらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの多量体などの化学的形態のいずれであってもよい。本発明におけるラジカル重合性化合物は一種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ラジカル重合性基は、エチレン性不飽和基が好ましい。エチレン性不飽和基としては、スチリル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0056】
より具体的には、モノマー及びそのプレポリマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)やそのエステル類、アミド類、並びにこれらの多量体が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、及び不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類、並びにこれらの多量体である。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物や、単官能若しくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更に、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と、単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等のビニルベンゼン誘導体、ビニルエーテル、アリルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0057】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4-シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0058】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス-〔p-(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0059】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3-ブタンジオールジイタコネート、1,4-ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
【0060】
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0061】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
【0062】
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0063】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46-27926、特公昭51-47334、特開昭57-196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59-5240、特開昭59-5241、特開平2-226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1-165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。
【0064】
また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス-アクリルアミド、メチレンビス-メタクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビス-アクリルアミド、1,6-ヘキサメチレンビス-メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0065】
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54-21726記載のシクロヘキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
【0066】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48-41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH_(2)=C(R_(4))COOCH_(2)CH(R_(5))OH (A)
(ただし、R_(4)およびR_(5)は、HまたはCH_(3)を示す。)
また、特開昭51-37193号公報、特公平2-32293号公報、特公平2-16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号公報、特公昭56-17654号公報、特公昭62-39417号公報、特公昭62-39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
【0067】
また、ラジカル重合性化合物としては、特開2009-288705号公報の段落番号0095?段落番号0108に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0068】
また、前記ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個の付加重合可能なエチレン基を有する、常圧下で100℃以上の沸点を持つエチレン性不飽和基を持つ化合物も好ましい。その例としては、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、等の単官能のアクリレートやメタアクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、グリセリンやトリメチロールエタン等の多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48-41708号、特公昭50-6034号、特開昭51-37193号各公報に記載されているようなウレタン(メタ)アクリレート類、特開昭48-64183号、特公昭49-43191号、特公昭52-30490号各公報に記載されているポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタアクリレート及びこれらの混合物を挙げることができる。
多官能カルボン酸にグリシジル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させ得られる多官能(メタ)アクリレートなども挙げることができる。
また、その他の好ましいラジカル重合性化合物として、特開2010-160418、特開2010-129825、特許4364216等に記載される、フルオレン環を有し、エチレン性重合性基を2官能以上有する化合物、カルド樹脂も使用することが可能である。
更に、ラジカル重合性化合物のその他の例としては、特公昭46-43946号、特公平1-40337号、特公平1-40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2-25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等もあげることができる。また、ある場合には、特開昭61-22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol. 20、No. 7、300?308ページ(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0069】
また、常圧下で100℃以上の沸点を有し、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和基を持つ化合物としては、特開2008-292970号公報の段落番号[0254]?[0257]に記載の化合物も好適である。
【0070】
上記のほか、下記一般式(MO-1)?(MO-5)で表される、ラジカル重合性化合物も好適に用いることができる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0071】
【化2】

【0072】
【化3】

【0073】
前記一般式において、nは0?14であり、mは1?8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記一般式(MO-1)?(MO-5)で表されるラジカル重合性化合物の各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、-OC(=O)CH=CH_(2)、又は、-OC(=O)C(CH_(3))=CH_(2)で表される基を表す。
上記一般式(MO-1)?(MO-5)で表される、ラジカル重合性化合物の具体例としては、特開2007-269779号公報の段落番号0248?段落番号0251に記載されている化合物を本発明においても好適に用いることができる。
【0074】
また、特開平10-62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、ラジカル重合性化合物として用いることができる。
【0075】
中でも、ラジカル重合性化合物としては、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては KAYARAD D-330;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては KAYARAD D-320;日本化薬株式会社製)ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD D-310;日本化薬株式会社製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては KAYARAD DPHA ;日本化薬株式会社製)、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
【0076】
ラジカル重合性化合物としては、多官能モノマーであって、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸基を有していても良い。従って、エチレン性化合物が、上記のように混合物である場合のように未反応のカルボキシル基を有するものであれば、これをそのまま利用することができるが、必要において、上述のエチレン性化合物のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を導入しても良い。この場合、使用される非芳香族カルボン酸無水物の具体例としては、無水テトラヒドロフタル酸、アルキル化無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、アルキル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸が挙げられる。
【0077】
本発明において、酸価を有するモノマーとしては、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応のヒドロキシル基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能モノマーが好ましく、特に好ましくは、このエステルにおいて、脂肪族ポリヒドロキシ化合物がペンタエリスリトール及び/又はジペンタエリスリトールであるものである。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の多塩基酸変性アクリルオリゴマーとして、M-510、M-520などが挙げられる。
【0078】
これらのモノマーは1種を単独で用いても良いが、製造上、単一の化合物を用いることは難しいことから、2種以上を混合して用いても良い。また、必要に応じてモノマーとして酸基を有しない多官能モノマーと酸基を有する多官能モノマーを併用しても良い。
酸基を有する多官能モノマーの好ましい酸価としては、0.1?40mg-KOH/gであり、特に好ましくは5?30mg-KOH/gである。多官能モノマーの酸価が低すぎると現像溶解特性が落ち、高すぎると製造や取扱いが困難になり光重合性能が落ち、画素の表面平滑性等の硬化性が劣るものとなる。従って、異なる酸基の多官能モノマーを2種以上併用する場合、或いは酸基を有しない多官能モノマーを併用する場合、全体の多官能モノマーとしての酸基が上記範囲に入るように調整することが必須である。
また、ラジカル重合性化合物として、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体を含有することが好ましい。
カプロラクトン構造を有する多官能性単量体としては、その分子内にカプロラクトン構造を有する限り特に限定されるものではないが、例えば、トリメチロールエタン、ジトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グリセリン、ジグリセロール、トリメチロールメラミン等の多価アルコールと、(メタ)アクリル酸およびε-カプロラクトンをエステル化することにより得られる、ε-カプロラクトン変性多官能(メタ)アクリレートを挙げることができる。なかでも下記式(1)で表されるカプロラクトン構造を有する多官能性単量体が好ましい。
【0079】
【化4】

【0080】
(式中、6個のRは全てが下記式(2)で表される基であるか、または6個のRのうち1?5個が下記式(2)で表される基であり、残余が下記式(3)で表される基である。)
【0081】
【化5】

【0082】
(式中、R^(1)は水素原子またはメチル基を示し、mは1または2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。)
【0083】
【化6】

【0084】
(式中、R^(1)は水素原子またはメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。)
このようなカプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、例えば、日本化薬(株)からKAYARAD DPCAシリーズとして市販されており、DPCA-20(上記式(1)?(3)においてm=1、式(2)で表される基の数=2、R^(1)が全て水素原子である化合物)、DPCA-30(同式、m=1、式(2)で表される基の数=3、R^(1)が全て水素原子である化合物)、DPCA-60(同式、m=1、式(2)で表される基の数=6、R^(1)が全て水素原子である化合物)、DPCA-120(同式においてm=2、式(2)で表される基の数=6、R^(1)が全て水素原子である化合物)等を挙げることができる。
本発明において、カプロラクトン構造を有する多官能性単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
また、多官能モノマーとしては、下記一般式(i)又は(ii)で表される化合物の群から選択される少なくとも1種であることも好ましい。
【0086】
【化7】

【0087】
前記一般式(i)及び(ii)中、Eは、各々独立に、-((CH_(2))_(y)CH_(2)O)-、又は-((CH_(2))_(y)CH(CH_(3))O)-を表し、yは、各々独立に0?10の整数を表し、Xは、各々独立に、アクリロイル基、メタクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。
前記一般式(i)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0?10の整数を表し、各mの合計は0?40の整数である。但し、各mの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
前記一般式(ii)中、アクリロイル基及びメタクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0?10の整数を表し、各nの合計は0?60の整数である。但し、各nの合計が0の場合、Xのうちいずれか1つはカルボキシル基である。
【0088】
前記一般式(i)中、mは、0?6の整数が好ましく、0?4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2?40の整数が好ましく、2?16の整数がより好ましく、4?8の整数が特に好ましい。
前記一般式(ii)中、nは、0?6の整数が好ましく、0?4の整数がより好ましい。
また、各nの合計は、3?60の整数が好ましく、3?24の整数がより好ましく、6?12の整数が特に好ましい。
また、一般式(i)又は一般式(ii)中の-((CH_(2))_(y)CH_(2)O)-又は-((CH_(2))_(y)CH(CH_(3))O)-は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0089】
前記一般式(i)又は(ii)で表される化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。特に、一般式(ii)において、6個のX全てがアクリロイル基である形態が好ましい。
【0090】
また、一般式(i)又は(ii)で表される化合物のラジカル重合性化合物中における全含有量としては、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0091】
前記一般式(i)又は(ii)で表される化合物は、従来公知の工程である、ペンタエリスリト-ル又はジペンタエリスリト-ルにエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを開環付加反応により開環骨格を結合する工程と、開環骨格の末端水酸基に、例えば(メタ)アクリロイルクロライドを反応させて(メタ)アクリロイル基を導入する工程と、から合成することができる。各工程は良く知られた工程であり、当業者は容易に一般式(i)又は(ii)で表される化合物を合成することができる。
【0092】
前記一般式(i)、(ii)で表される化合物の中でも、ペンタエリスリトール誘導体及び/又はジペンタエリスリトール誘導体がより好ましい。
具体的には、下記式(a)?(f)で表される化合物(以下、「例示化合物(a)?(f)」ともいう。)が挙げられ、中でも、例示化合物(a)、(b)、(e)、(f)が好ましい。
【0093】
【化8】

【0094】
【化9】

【0095】
一般式(i)、(ii)で表されるラジカル重合性化合物の市販品としては、例えばサートマー社製のエチレンオキシ鎖を4個有する4官能アクリレートであるSR-494、日本化薬株式会社製のペンチレンオキシ鎖を6個有する6官能アクリレートであるDPCA-60、イソブチレンオキシ鎖を3個有する3官能アクリレートであるTPA-330などが挙げられる。
【0096】
また、ラジカル重合性化合物としては、特公昭48-41708号、特開昭51-37193号、特公平2-32293号、特公平2-16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58-49860号、特公昭56-17654号、特公昭62-39417号、特公昭62-39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63-277653号、特開昭63-260909号、特開平1-105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることもできる。
ラジカル重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS-10、UAB-140(山陽国策パルプ社製)、UA-7200」(新中村化学社製、DPHA-40H(日本化薬社製)、UA-306H、UA-306T、UA-306I、AH-600、T-600、AI-600(共栄社製)などが挙げられる。
【0097】
ラジカル重合性化合物としては、同一分子内に2個以上のメルカプト(SH)基を有する多官能チオール化合物も好適である。特に、下記一般式(I)で表すものが好ましい。
【0098】
【化10】

【0099】
(式中、R^(1)はアルキル基、R^(2)は炭素以外の原子を含んでもよいn価の脂肪族基、R^(0)はHではないアルキル基、nは2?4を表す。)
【0100】
上記一般式(I)で表される多官能チオール化合物を具体的に例示するならば、下記の構造式を有する1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン〔式(II)〕、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチルオキシエチル)-1,3,5-トリアジアン-2,4,6(1H,3H5H)-トリオン〔式(III)〕、及びペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトブチレート)〔式(IV)〕等が挙げられる。これらの多官能チオールは1種または複数組み合わせて使用することが可能である。
【0101】
【化11】

【0102】
接着性組成物中の多官能チオールの配合量については、溶剤を除いた全固形分に対して0.3?8.9質量%、より好ましくは0.8?6.4質量%の範囲で添加するのが望ましい。多官能チオールの添加によって、接着性組成物の安定性、臭気、感度、密着性等を良化させることが出来る。
【0103】
ラジカル重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、接着性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、感度(活性光線又は放射線の照射に対する、接着性の減少の効率)の観点では、1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合は2官能以上が好ましい。また、接着性層の強度を高める観点では、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。さらに、3官能以上のものでエチレンオキサイド鎖長の異なるラジカル重合性化合物を併用することも好ましい。また、接着性組成物に含有される他の成分(例えば、高分子化合物(A)、重合開始剤等)との相溶性、分散性に対しても、ラジカル重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、キャリア基板との密着性を向上させる観点で特定の構造を選択することもあり得る。
【0104】
イオン重合性化合物(B2)としては、炭素数3?20のエポキシ化合物(B21)及び炭素数4?20のオキセタン化合物(B22)等が挙げられる。
【0105】
炭素数3?20のエポキシ化合物(B21)としては、例えば以下の単官能又は多官能エポキシ化合物が挙げられる。
単官能エポキシ化合物としては、例えば、フェニルグリシジルエーテル、p-tert?ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、1,2-ブチレンオキサイド、1,3-ブタジエンモノオキサイド、1,2-エポキシドデカン、エピクロロヒドリン、1,2-エポキシデカン、スチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、3-メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3-アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド及び3-ビニルシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。
【0106】
多官能エポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、エポキシノボラック樹脂、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンオキサイド、4-ビニルエポキシシクロヘキサン、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールジ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,1,3-テトラデカジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、1,2,7,8-ジエポキシオクタン及び1,2,5,6-ジエポキシシクロオクタンが挙げられる。
【0107】
これらのエポキシ化合物の中でも、重合速度に優れるという観点から、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、脂環式エポキシドが特に好ましい。
【0108】
炭素数4?20のオキセタン化合物(B22)としては、オキセタン環を1個?6個有する化合物等が挙げられる。
【0109】
オキセタン環を1個有する化合物としては、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-(メタ)アリルオキシメチル-3-エチルオキセタン、(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチルベンゼン、4-フルオロ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、4-メトキシ-[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、[1-(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)エチル]フェニルエーテル、イソブトキシメチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、イソボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-エチルヘキシル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、エチルジエチレングリコール(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンタジエン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルオキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラヒドロフルフリル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-テトラブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-トリブロモフェノキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、2-ヒドロキシプロピル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ブトキシエチル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタクロロフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタブロモフェニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル及びボルニル(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが挙げられる。
【0110】
オキセタン環を2?6個有する化合物としては、例えば、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、3,3’-(1,3-(2-メチレニル)プロパンジイルビス(オキシメチレン))ビス-(3-エチルオキセタン)、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジシクロペンテニルビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリシクロデカンジイルジメチレン(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、ペンタエリスリトールトリス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ポリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ジトリメチロールプロパンテトラキス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、EO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、PO変性水添ビスフェノールAビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル及びEO変性ビスフェノールF(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテルが挙げられる。
【0111】
重合性モノマーの含有量は、良好な接着強度と剥離性の観点から、前記接着性層の全固形分に対して、5?80質量%が好ましく、10?75質量%がより好ましく、10?70質量%が更に好ましい。
また、重合性モノマー及びバインダーの含有量の比率(質量比)は、90/10?10/90であることが好ましく、20/80?80/20であることがより好ましい。
【0112】
溶剤は、接着性層を形成できれば、公知のものを制限なく使用できるが、メチルアミルケトン、N-メチルピロリドン、PEGMEA、THF、リモネン、シクロヘキサノン、γブチロラクトン等が使用でき、メチルアミルケトン、N-メチルピロリドン又はPEGMEAが好ましい。
溶剤は、接着性組成物の固形分濃度が5?40質量%になるように使用されることが好ましい。
【0113】
接着性組成物(ひいては接着性層)は、光重合開始剤、すなわち活性光線又は放射線の照射によりラジカル又は酸を発生する化合物を含有することが好ましい。
光重合開始剤を有することにより、接着性層へ光を照射することで接着性組成物のラジカルまたは酸による硬化が起こり、光照射部における接着性を低下させられる。この照射を例えば接着性層中央部に行い、周縁部にのみ接着性を残せば、剥離時に溶剤浸漬により溶解すべき剥離層の面積が小さくなるため、剥離までに要する時間が短縮される、という利点がある。
【0114】
活性光線又は放射線の照射によりラジカル又は酸を発生する化合物としては、例えば、以下に述べる重合開始剤として知られているものを用いることができる。
前記重合開始剤としては、前記バインダーとしての重合性基を有する高分子化合物、又は、前記重合性モノマーとしての重合性基を有する反応性化合物における重合反応(架橋反応)を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知の重合開始剤の中から適宜選択することができる。例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましい。また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じて酸を発生させてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記重合開始剤は、約300nm?800nm(好ましくは330nm?500nm)の範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する化合物を、少なくとも1種含有していることが好ましい。
【0115】
前記重合開始剤としては、公知の化合物を制限なく使用できるが、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、トリハロメチル基を有するものなど)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体等のオキシム化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、ケトオキシムエーテル、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン、アゾ系化合物、アジド化合物、メタロセン化合物、有機ホウ素化合物、鉄アレーン錯体などが挙げられる。
【0116】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan、42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53-133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62-58241号公報記載の化合物、特開平5-281728号公報記載の化合物、特開平5-34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0117】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2-トリクロロメチル-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(4-クロロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(2-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリブロモメチル-5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリブロモメチル-5-(2-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール;2-トリクロロメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(4-クロルスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(4-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(1-ナフチル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(4-n-ブトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリプロモメチル-5-スチリル-1,3,4-オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0118】
また、上記以外の重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9,9’-アクリジニル)ヘプタンなど)、N-フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3-(2-ベンゾフラノイル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2-ベンゾフロイル)-7-(1-ピロリジニル)クマリン、3-ベンゾイル-7-ジエチルアミノクマリン、3-(2-メトキシベンゾイル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(4-ジメチルアミノベンゾイル)-7-ジエチルアミノクマリン、3,3’-カルボニルビス(5,7-ジ-n-プロポキシクマリン)、3,3’-カルボニルビス(7-ジエチルアミノクマリン)、3-ベンゾイル-7-メトキシクマリン、3-(2-フロイル)-7-ジエチルアミノクマリン、3-(4-ジエチルアミノシンナモイル)-7-ジエチルアミノクマリン、7-メトキシ-3-(3-ピリジルカルボニル)クマリン、3-ベンゾイル-5,7-ジプロポキシクマリン、7-ベンゾトリアゾール-2-イルクマリン、また、特開平5-19475号公報、特開平7-271028号公報、特開2002-363206号公報、特開2002-363207号公報、特開2002-363208号公報、特開2002-363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、LucirinTPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフロロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、η5-シクロペンタジエニル-η6-クメニル-アイアン(1+)-ヘキサフロロホスフェート(1-)など)、特開昭53-133428号公報、特公昭57-1819号公報、同57-6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる。
【0119】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、2-エトキシカルボニルベンゾフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2-クロル-チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2-ベンジル-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N-メチルアクリドン、N-ブチルアクリドン、N-ブチル-クロロアクリドンなどが挙げられる。
【0120】
光重合開始剤としては、ヒドロキシアセトフェノン化合物、アミノアセトフェノン化合物、及び、アシルホスフィン化合物も好適に用いることができる。より具体的には、例えば、特開平10-291969号公報に記載のアミノアセトフェノン系開始剤、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤も用いることができる。
ヒドロキシアセトフェノン系開始剤としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959,IRGACURE-127(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE-907、IRGACURE-369、及び、IRGACURE-379(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。アミノアセトフェノン系開始剤として、365nmまたは405nm等の長波光源に吸収波長がマッチングされた特開2009-191179公報に記載の化合物も用いることができる。また、アシルホスフィン系開始剤としては市販品であるIRGACURE-819やDAROCUR-TPO(商品名:いずれもBASF社製)を用いることができる。
【0121】
光重合開始剤として、より好ましくはオキシム系化合物が挙げられる。オキシム系開始剤の具体例としては、特開2001-233842号記載の化合物、特開2000-80068号記載の化合物、特開2006-342166号記載の化合物を用いることができる。
【0122】
本発明で重合開始剤として好適に用いられるオキシム誘導体等のオキシム化合物としては、例えば、3-ベンゾイロキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイロキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0123】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653-1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156-162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202-232、特開2000-66385号公報記載の化合物、特開2000-80068号公報、特表2004-534797号公報、特開2006-342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE-OXE01(BASF社製)、IRGACURE-OXE02(BASF社製)も好適に用いられる。
【0124】
また上記記載以外のオキシムエステル化合物として、カルバゾールN位にオキシムが連結した特表2009-519904号公報に記載の化合物、ベンゾフェノン部位にヘテロ置換基が導入された米国特許7626957号公報に記載の化合物、色素部位にニトロ基が導入された特開2010-15025号公報および米国特許公開2009-292039号記載の化合物、国際公開特許2009-131189号公報に記載のケトオキシム系化合物、トリアジン骨格とオキシム骨格を同一分子内に含有する米国特許7556910号公報に記載の化合物、405nmに吸収極大を有しg線光源に対して良好な感度を有する特開2009-221114号公報記載の化合物、などを用いてもよい。
【0125】
好ましくはさらに、特開2007-231000号公報、及び、特開2007-322744号公報に記載される環状オキシム化合物に対しても好適に用いることができる。環状オキシム化合物の中でも、特に特開2010-32985号公報、特開2010-185072号公報に記載されるカルバゾール色素に縮環した環状オキシム化合物は、高い光吸収性を有し高感度化の観点から好ましい。
また、オキシム化合物の特定部位に不飽和結合を有する特開2009-242469号公報に記載の化合物も、重合不活性ラジカルから活性ラジカルを再生することで高感度化を達成でき好適に使用することができる。
【0126】
最も好ましくは、特開2007-269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009-191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
【0127】
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry-5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0128】
本発明に用いられる重合開始剤は、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0129】
活性光線又は放射線の照射によりラジカル又は酸を発生する化合物としては、露光感度の観点から、トリハロメチルトリアジン化合物、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、メタロセン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物及びその誘導体、シクロペンタジエン-ベンゼン-鉄錯体及びその塩、ハロメチルオキサジアゾール化合物、3-アリール置換クマリン化合物からなる群より選択される化合物が好ましい。
【0130】
さらに好ましくは、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、アシルホスフィン化合物、フォスフィンオキサイド化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、オニウム化合物、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物であり、トリハロメチルトリアジン化合物、α-アミノケトン化合物、オキシム化合物、トリアリルイミダゾールダイマー、ベンゾフェノン化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物が最も好ましいく、オキシム化合物を用いるのが最も好ましい。
【0131】
また、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物は、その中でも、pKaが4以下の酸を発生する化合物が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する化合物がより好ましい。
酸を発生する化合物の例として、トリクロロメチル-s-トリアジン類、スルホニウム塩やヨードニウム塩、第四級アンモニウム塩類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及び、オキシムスルホネート化合物などを挙げることができる。これらの中でも、高感度である観点から、オキシムスルホネート化合物を用いることが好ましい。これら酸発生剤は、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0132】
酸発生剤としては、具体的には、特開2012-8223号公報の段落番号〔0073〕?〔0095〕記載の酸発生剤を挙げることができる。
【0133】
本発明の活性光線又は放射線の照射によりラジカル又は酸を発生する化合物の含有量(2種以上の場合は総含有量)は、接着性層の全固形分に対し0.1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以上20質量%以下である。
【0134】
本発明の接着性組成物(ひいては接着性層)は、熱重合開始剤、すなわち熱によりラジカル又は酸を発生する化合物を含有することも好ましい。
特に、前記バインダーとして重合性基を有する高分子化合物、又は、前記重合性モノマーを含有する場合は、熱重合開始剤を含有することが好ましい。
【0135】
熱重合開始剤が存在することにより、接着性層と剥離層とが接合された後、熱重合開始剤の分解温度以上に加熱することで、接着性層を硬化させて、より耐熱性・耐薬品性の高い接着を行えるという利点がある。
【0136】
[熱によりラジカルを発生する化合物]
熱によりラジカル発生する化合物(以下、単に、熱ラジカル発生剤とも言う)としては、公知の熱ラジカル発生剤を用いることができる。
熱ラジカル発生剤は、熱のエネルギーによってラジカルを発生し、重合性基を有する高分子化合物、及び、重合性モノマーの重合反応を開始又は促進させる化合物である。熱ラジカル発生剤を添加することによって、仮接着剤を用いて形成された接着性層に対して熱を照射した後に、被処理部材と接着性支持体との仮接着を行う場合においては、熱により架橋性基を有する反応性化合物における架橋反応が進行することにより、後に詳述するように、接着性層の接着性(すなわち、粘着性及びタック性)を前もって低下させることができる。
【0137】
一方、被処理部材と接着性支持体との仮接着を行った後に、接着性支持体における接着性層に対して熱を照射した後に場合には、熱により架橋性基を有する反応性化合物における架橋反応が進行することにより、接着性層がより強靭になり、被処理部材の機械的又は化学的な処理を施している時などに生じやすい接着性層の凝集破壊を抑制できる。すなわち、接着性層における接着性を向上できる。
【0138】
好ましい熱ラジカル発生剤としては、上述した活性光線又は放射線の照射により酸又はラジカルを発生する化合物が挙げられるが、熱分解点が130℃?250℃、好ましくは150℃?220℃の範囲の化合物を好ましく使用することができる。
熱ラジカル発生剤としては、芳香族ケトン類、オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アゾ系化合物等が挙げられる。中でも、有機過酸化物又はアゾ系化合物がより好ましく、有機過酸化物が特に好ましい。
具体的には、特開2008-63554号公報の段落0074?0118に記載されている化合物が挙げられる。
【0139】
[熱により酸を発生する化合物]
熱により酸を発生する化合物(以下、単に、熱酸発生剤とも言う)としては、公知の熱酸発生剤を用いることができる。
熱酸発生剤は、好ましくは熱分解点が130℃?250℃、より好ましくは150℃?220℃の範囲の化合物が挙げられる。
熱酸発生剤としては、例えば、加熱によりスルホン酸、カルボン酸、ジスルホニルイミドなどの低求核性の酸を発生する化合物である。
熱酸発生剤から発生する酸としてはpKaが2以下と強い、スルホン酸や電子求引基の置換したアルキル?はアリールカルボン酸、同じく電子求引基の置換したジスルホニルイミドなどが好ましい。電子求引基としてはフッ素原子などのハロゲン原子、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基を挙げることができる。
熱酸発生剤としては、上記(D)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する光酸発生剤の適用が可能である。例えばスルホニウム塩やヨードニウム塩等のオニウム塩、N-ヒドロキシイミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート、o-ニトロベンジルスルホネート等を挙げることができる。
また、本発明においては活性光線又は放射線の照射によって実質的に酸を発生せず、熱によって酸を発生するスルホン酸エステルを使用することも好ましい。
活性光線又は放射線の照射によって実質的に酸を発生していないことは、化合物の露光前後での赤外線吸収(IR)スペクトル、核磁気共鳴(NMR)スペクトル測定により、スペクトルに変化がないことで判定することができる。
スルホン酸エステルの分子量は、230?1,000が好ましく、230?800がより好ましい。
本発明で使用可能なスルホン酸エステルは、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成したものを用いてもよい。スルホン酸エステルは、例えば、塩基性条件下、スルホニルクロリド又はスルホン酸無水物を対応する多価アルコールと反応させることにより合成することができる。
熱酸発生剤は、1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0140】
接着性組成物における熱重合開始剤の含有量は、被処理部材と接着性支持体との仮接着を行う前に熱照射を行う場合における接着性層の接着性の低減、及び、被処理部材と接着性支持体との仮接着後に熱照射を行う場合における接着性層の接着性の向上の観点から、接着性組成物の全固形分に対し、0.01?50質量%が好ましく、0.1?20質量%がより好ましく、0.5?10質量%であることが最も好ましい。
【0141】
<その他の成分>
接着性組成物(ひいては接着性層)は、上記の成分に加えて、さらに本発明の効果を損なわない範囲において、目的に応じて種々の化合物を含有することができる。例えば、増感色素、連鎖移動剤、重合禁止剤、界面活性剤を好ましく使用することができる。
接着性組成物(ひいては接着性層)が有してもよい界面活性剤の具体例及び好ましい例としては、前述の剥離層組成物が有してもよい界面活性剤のものと同様である。
【0142】
接着性組成物(ひいては接着性層)においては、バインダーと、重合性モノマーと、光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを有していることが好ましい。
【0143】
次いで、以上に説明した本発明の半導体装置製造用仮接合層を用いた、接着性支持体、及び、半導体装置の製造方法について説明する。
【0144】
図1A、図1B及び図1Cは、それぞれ、接着性支持体とデバイスウエハとの仮接着を説明する概略断面図、接着性支持体により仮接着されたデバイスウエハを示す概略断面図、及び、接着性支持体により仮接着されたデバイスウエハが薄型化された状態を示す概略断面図である。
【0145】
本発明の実施形態において、図1Aに示すように、先ず、キャリア基板12の上に接着性層11が設けられてなる接着性支持体100が準備される。
キャリア基板12の素材は特に限定されないが、例えば、シリコン基板、ガラス基板、金属基板などが挙げられるが、半導体装置の基板として代表的に用いられるシリコン基板を汚染しにくい点や、半導体装置の製造工程において汎用されている静電チャックを使用できる点などを鑑みると、シリコン基板であることが好ましい。
キャリア基板12の厚みは、例えば、300μm?5mmの範囲内とされるが、特に限定されるものではない。
【0146】
接着性層11は、本発明の半導体装置製造用仮接着性組成物を、従来公知のスピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、フローコート法、ドクターコート法、浸漬法などを用いて、キャリア基板12上に塗布し、次いで、乾燥することにより形成することができる。
接着性層11の厚みは、例えば、1?500μmの範囲内とされるが、特に限定されるものではない。
【0147】
次に、以上のようにして得られた接着性支持体と、デバイスウエハとの仮接着、デバイスウエハの薄型化、及び、接着性支持体からのデバイスウエハの脱離について詳細に説明する。
【0148】
図1Aに示すように、デバイスウエハ60(被処理部材)は、シリコン基板61の表面61aに複数のデバイスチップ62が設けられてなる。そして、更にデバイスウエハ60のデバイスチップ62側の面には、剥離層71が設けられている。
ここで、シリコン基板61の厚さは、例えば、200?1200μmの範囲内となっている。
そして、接着性支持体100の接着性層11に対して、剥離層71の表面を押し当てる。これにより、図1Bに示すように、剥離層71と、接着性層11とが接着し、接着性支持体100とデバイスウエハ60とが仮接着する。これにより、剥離層71と接着性層11とを有する仮接合層80が形成される。
またこの後、必要に応じて、接着性支持体100とデバイスウエハ60との接着体を加熱し(熱を照射し)、接着層をより強靭なものとしても良い。これにより、デバイスウエハ60の後述する機械的又は化学的な処理を施している時などに生じやすい接着性層の凝集破壊を抑制できるため、接着性支持体100の接着性を高めることになる。特に、熱により架橋性基を有する反応性化合物における架橋反応を促進できる観点から、接着層は、熱重合開始剤を含有していることが好ましい。
加熱温度は50℃?300℃であることが好ましい。
【0149】
次いで、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的又は化学的な処理、具体的には、グライディングや化学機械研磨(CMP)等の薄膜化処理を施すことにより、図1Cに示すように、シリコン基板61の厚さを薄くし(例えば、厚さ1?200μmとし)、薄型デバイスウエハ60’を得る。
また、機械的又は化学的な処理として、薄膜化処理の後に、薄型デバイスウエハ60’の裏面61b’からシリコン基板を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔内にシリコン貫通電極(図示せず)を形成する処理を、必要に応じて行ってもよい。
【0150】
次いで、接着性支持体100の接着性層11から薄型デバイスウエハ60’の表面61aを脱離する。
脱離の方法は特に限定されるものではないが、仮接合層80を剥離液に接触させ、その後、必要に応じて、接着性支持体100に対して薄型デバイスウエハ60’を摺動させるか、あるいは、接着性支持体100から薄型デバイスウエハ60’を剥離することにより行うことが好ましい。仮接合層における剥離層は、剥離液に対する親和性が高いため、上記方法により、接着性層110と薄型デバイスウエハ60’の表面61aとの仮接着を容易に解除することができる。
【0151】
接着性支持体100から薄型デバイスウエハ60’を脱離した後、必要に応じて、薄型デバイスウエハ60’に対して、種々の公知の処理を施し、薄型デバイスウエハ60’を有する半導体装置を製造する。
以下、剥離液について詳細に説明する。
【0152】
剥離液としては、剥離層の炭化水素樹脂を溶解するものであれば特に制限されないが、例えば、炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤がより好ましく使用することができる。炭化水素系溶媒としては、直鎖又は分岐のアルカン、またはシクロアルカンを挙げることができる。具体的には、ペンタン、シクロペンタン、2-メチルブタン、3-メチルペンタン、ヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、トリデカン、ペンタデカン、テトラデカン、ヘキサデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等を用いることができる。これらの有機溶剤は1種または2種以上混合して用いることができる。また、テルペン系の飽和炭化水素も溶剤として用いることができ、具体的には、ピナン、ボルナン、カラン、フェンカン、ツジャン、o-メンタン、m-メンタン、p-メンタン、ジフェニルメンタン、リモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、ボルナン、ノルボルナン、ピナン、α-ピネン、β-ピネン、カラン、ロンギホレン、アビエタン等が挙げられる。また、テトラヒドロフラン(略称:THF)も好ましく用いることができる。
これら飽和炭化水素系溶剤の炭素数は6?10が好ましく、さらに好ましくは7?9である。溶剤の揮発の抑制の点で炭素数6以上が好ましく、炭素数7以上がより好ましい。
【0153】
エーテル溶剤としては、テトラヒドロフラン,シクロペンチルメチルエーテル,t-ブチルメチルエーテル,アニソールを用いることが出来る。
これらエーテル溶剤の炭素数は4?10が好ましく、さらに好ましくは4?9である。溶剤の揮発の抑制の点で炭素数4以上が好ましい。
【0154】
剥離液は、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、リモネン、p-メンタン、又は、テトラヒドロフランであることが好ましい。
【0155】
本発明において、仮接着の方法は、デバイスウエハとキャリア基板が、剥離層と接着性層とを有する仮接合層が介在するように接着している限り限定されず、接着性層に剥離層が設けられてなる仮接合層をあらかじめ作成し、この仮接合層における接着性層及び剥離層に対して、それぞれキャリア基板及びデバイスウエハと接合してもよい。
【0156】
また、本発明は、キャリア基板等の支持体と、デバイスウエハ等の被処理部材と、前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた仮接合層とを有する積層体にも関する。
【0157】
次いで、従来の実施形態について説明する。
図2は、従来の接着性支持体とデバイスウエハとの仮接着状態の解除を説明する概略断面図である。
従来の実施形態においては、図2に示すように、接着性支持体として、キャリア基板12の上に、従来の仮接着剤により形成された接着性層11’が設けられてなる接着性支持体100’を使用し、それ以外は、図1A及び図1Bを参照して説明した手順と同様に、接着性支持体100’とデバイスウエハとを仮接着し、デバイスウエハにおけるシリコン基板の薄膜化処理を行い、次いで、図1Cを参照して説明した手順と同様に、接着性支持体100’から薄型デバイスウエハ60’を剥離する。
【0158】
しかしながら、従来の仮接着剤によれば、被処理部材を確実かつ容易に仮支持できるとともに、処理済部材に損傷を与えることなく、処理済部材に対する仮支持を容易に解除することが困難である。例えば、デバイスウエハとキャリア基板との仮接着を充分にしようとするべく、従来の仮接着剤の内、接着性の高いものを採用すると、デバイスウエハとキャリア基板との仮接着が強すぎる傾向となる。よって、この強すぎる仮接着を解除するべく、例えば、図2に示すように、薄型デバイスウエハ60’の裏面にテープ(例えば、ダイシングテープ)70を貼り付け、接着性支持体100’から薄型デバイスウエハ60’を剥離する場合においては、バンプ63が設けられたデバイスチップ62から、バンプ63が脱離するなどして、デバイスチップ62を破損する不具合が生じやすい。
一方、従来の仮接着剤の内、接着性が低いものを採用すると、デバイスウエハとキャリア基板との仮接着が弱すぎ、デバイスウエハをキャリア基板で確実に支持できないという不具合が生じやすい。
【0159】
しかしながら、本発明の接着性組成物により形成された接着性層は、充分な接着性を発現するとともに、デバイスウエハ60と接着性支持体100との仮接着は、特に、接着性層11に剥離液を接触させることにより容易に解除できる。すなわち、本発明の仮接合層における剥離層によれば、デバイスウエハ60を確実かつ容易に仮支持できるとともに、薄型デバイスウエハ60’に損傷を与えることなく、薄型デバイスウエハ60’に対する仮支持を容易に解除できる。
【0160】
更に、本発明の接着性組成物(ひいては接着性層)が、特に、光重合開始剤、又は、熱重合開始剤を更に含有するとともに、ラジカル重合性化合物を含有する場合、接着性層11を、活性光線若しくは放射線又は熱の照射により接着性が減少する接着性層とすることができる。この場合、具体的には、接着性層を、活性光線若しくは放射線又は熱の照射を受ける前には、接着性を有する層であるが、活性光線若しくは放射線又は熱の照射を受けた領域においては、接着性が低下ないしは消失する層とすることができる。
【0161】
そこで、本発明においては、デバイスウエハ60と接着性支持体100とを接着させる前に、接着性支持体100の接着性層11の、剥離層71に接着される面に対して、活性光線若しくは放射線又は熱を照射しても良い。
例えば、活性光線若しくは放射線又は熱の照射により、接着性層を、低接着性領域及び高接着性領域が形成された接着性層に変換した上で、被処理部材の接着性支持体による仮接着を行っても良い。以下、この実施形態について説明する。
【0162】
図3Aは、接着性支持体に対する露光を説明する概略断面図を示し、図3Bは、マスクの概略上面図を示す。
【0163】
先ず、接着性支持体100の接着性層11にマスク40を介して活性光線又は放射線50を照射(すなわち、露光)する。
【0164】
図3A及び図3Bに示すように、マスク40は、中央域に設けられた光透過領域41と、周辺域に設けられた遮光領域42とから構成されている。
よって、上記露光は、接着性層11の中央域には露光されるが、中央域を取り囲む周辺域には露光されない、パターン露光である。
【0165】
図4Aは、パターン露光された接着性支持体の概略断面図を示し、図4Bは、パターン露光された接着性支持体の概略上面図を示す。
【0166】
上記したように、接着性層11が、活性光線又は放射線の照射により接着性が減少する接着性層である場合、上記のパターン露光を行うことにより、接着性支持体100は、図4A及び図4Bに示すように、中央域及び周辺域に、それぞれ、低接着性領域21A及び高接着性領域21Bが形成された接着性層21を有する接着性支持体110に変換される。
ここで、本明細書中における「低接着性領域」とは、「高接着性領域」と比較して低い接着性を有する領域を意味し、接着性を有さない領域(すなわち、「非接着性領域」)を包含する。同様に、「高接着性領域」とは、「低接着性領域」と比較して高い接着性を有する領域を意味する。
【0167】
この接着性支持体110は、マスク40を用いたパターン露光により、低接着性領域21A及び高接着性領域21Bが設けられるものであるが、マスク40における光透過領域及び遮光領域のそれぞれの面積及び形状はミクロンないしはナノオーダーで制御可能である。よって、パターン露光により接着性支持体110の接着性層21に形成される高接着性領域21B及び低接着性領域21Aのそれぞれの面積及び形状等を細かく制御できるため、接着性層の全体としての接着性を、デバイスウエハ60のシリコン基板61をより確実かつ容易に仮支持できるとともに、薄型デバイスウエハ60’に損傷を与えることなく、薄型デバイスウエハ60’のシリコン基板に対する仮支持をより容易に解除できる程度の接着性に、高精度で、かつ、容易に制御できる。
【0168】
また、接着性支持体110における高接着性領域21B、及び、低接着性領域21Aは、パターン露光により、その表面物性が異なるものとはされるが、構造体としては一体となっている。よって、高接着性領域21Bと低接着性領域21Aとで機械的な物性に大きな差異はなく、接着性支持体110の接着性層21にデバイスウエハ60のシリコン基板61の表面61aが接着され、次いで、シリコン基板61の裏面61bが薄膜化処理やシリコン貫通電極を形成する処理を受けても、接着性層21の高接着性領域21Bに対応する裏面61bの領域と、低接着性領域21Aに対応する裏面61bの領域との間で、上記処理に係る圧力(例えば、研削圧力や研磨圧力など)に差は生じにくく、高接着性領域21B、及び、低接着性領域21Aが、上記処理における処理精度に与える影響は少ない。これは、上記問題を生じやすい、例えば厚さ1?200μmの薄型デバイスウエハ60’を得る場合において特に有効である。
【0169】
よって、接着性支持体110を使用する形態は、デバイスウエハ60のシリコン基板61に上記の処理を施す際に、処理精度に与える影響を抑制しつつ、シリコン基板61をより確実かつ容易に仮支持できるとともに、薄型デバイスウエハ60’に損傷を与えることなく、薄型デバイスウエハ60’に対する仮支持をより容易に解除できる形態として好ましい。
【0170】
また、接着性層11が、活性光線若しくは放射線又は熱の照射により接着性が減少する接着性層である場合、例えば、このような接着性層を、活性光線若しくは放射線又は熱を照射することにより、接着性層の基板側の内表面から外表面に向けて接着性が低下された接着性層に変換した上で、被処理部材の接着性支持体による仮接着を行っても良い。以下、この実施形態について説明する。
【0171】
図5は、接着性支持体に対する活性光線若しくは放射線又は熱の照射を説明する概略断面図である。
【0172】
先ず、接着性層11の外表面に向けて活性光線若しくは放射線又は熱50’を照射することにより、接着性支持体100は、図5に示すように、基板側の内表面31bから外表面31aに向けて接着性が低下された接着性層31を有する接着性支持体120に変換される。
すなわち、接着性層31は、外表面31a側には低接着性領域31Aを、内表面31b側には高接着性領域31Bをそれぞれ有することになる。
このような接着性層31は、活性光線若しくは放射線又は熱50’の照射量を、外表面31aには、活性光線若しくは放射線又は熱50が充分に照射されるものの、内表面31bまでには、活性光線若しくは放射線又は熱50が到達しないような照射量とすることにより、容易に形成できる。
ここで、このような照射量の変更は、露光機や加熱装置の設定を変更することにより容易に行うことができるため、設備コストを抑制できるとともに、接着性層21、31の形成に多くの時間を費やすものでもない。
以上のように、上記の接着性層31は、その形成が容易である。
【0173】
更に、外表面31aにおける接着性及び内表面31bにおける接着性のそれぞれは、接着性層11を構成する素材の選択、及び、活性光線若しくは放射線又は熱の照射量の調整等により、精度良く制御できるものである。
その結果、基板12及びシリコン基板61のそれぞれに対する接着性層31の接着性を、デバイスウエハ60のシリコン基板61を確実かつ容易に仮支持できるとともに、薄型デバイスウエハ60’に損傷を与えることなく、薄型デバイスウエハ60’のシリコン基板に対する仮支持を容易に解除できる程度の接着性に、高精度で、かつ、容易に制御できる。
【0174】
よって、接着性支持体120を使用する形態も、デバイスウエハ60のシリコン基板61に上記の処理を施す際に、シリコン基板61をより確実かつ容易に仮支持できるとともに、薄型デバイスウエハ60’に損傷を与えることなく、薄型デバイスウエハ60’に対する仮支持をより容易に解除できる形態として好ましい。
【0175】
本発明の半導体装置の製造方法は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0176】
前述した実施形態において、本発明の接着性組成物より形成される接着性層は、デバイスウエハの仮接着の前に、キャリア基板の上に設けられることにより接着性支持体を構成したが、先ず、剥離層の上に設けられることにより仮接合層が形成してもよく、この場合、仮接着性層における接着性層及び剥離層がそれぞれキャリア基板及びデバイスウエハに接着されている。
【0177】
例えば、パターン露光に使用されるマスクは、バイナリマスクであっても、ハーフトーンマスクであっても良い。
【0178】
また、露光は、マスクを介したマスク露光としたが、電子線等をも用いた描画による選択的露光であっても良い。
【0179】
また、前述した実施形態において、接着性層は単層構造であるが、接着性層は多層構造であってもよい。多層構造の接着性層を形成する方法としては、活性光線又は放射線を照射する前に、前述した従来公知の方法で接着性組成物を段階的に塗布する方法や、活性光線又は放射線を照射した後に、前述した従来公知の方法で接着性組成物を塗布する方法などが挙げられる。接着性層が多層構造である形態において、例えば、接着性層11が、活性光線若しくは放射線又は熱の照射により接着性が減少する接着性層である場合には、活性光線若しくは放射線又は熱の照射により、各層間の接着性を減少させることにより、接着性層全体としての接着性を減少させることもできる。
【0180】
また、前述した実施形態においては、接着性支持体により支持される被処理部材として、シリコン基板を挙げたが、これに限定されるものではなく、半導体装置の製造方法において、機械的又は化学的な処理に供され得るいずれの被処理部材であっても良い。
例えば、被処理部材としては、化合物半導体基板を挙げることもでき、化合物半導体基板の具体例としては、SiC基板、SiGe基板、ZnS基板、ZnSe基板、GaAs基板、InP基板、及び、GaN基板などが挙げられる。
【0181】
更に、前述した実施形態においては、接着性支持体により支持されたシリコン基板に対する機械的又は化学的な処理として、シリコン基板の薄膜化処理、及び、シリコン貫通電極の形成処理を挙げたが、これらに限定されるものではなく、半導体装置の製造方法において必要ないずれの処理も挙げられる。
【0182】
その他、前述した実施形態において例示した、マスクにおける光透過領域及び遮光領域、接着性層における高接着性領域及び低接着性領域、並びに、デバイスウエハにおけるデバイスチップの形状、寸法、数、配置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【実施例】
【0183】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。実施例2及び3は「参考例」と読み替えるものとする。
【0184】
<接着性支持体の形成>
4インチSiウエハに下記表1記載に示す組成の各液状接着性組成物をスピンコーター(Mikasa製 Opticoat MS-A100,1200rpm,30秒)により塗布したのち、100℃で30秒ベークし、厚さ10μmの接着性層が設けられたウエハ1(すなわち接着性支持体)を形成した。
【0185】
【表1】

【0186】
表1中に記載の化合物は、以下の通りである。
【0187】
S1 : メチルアミルケトン
S2 : プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
S3 : N-メチル-2-ピロリドン
【0188】
〔バインダー〕
【0189】
【化12】

【0190】
高分子化合物(2):NKオリゴEA7440(新中村化学製、カルボン酸基及びラジカル重合性基を有するノボラック樹脂)
高分子化合物(3):Durimide 10(富士フイルム製、ポリイミド樹脂)
【0191】
〔重合性モノマー〕
重合性モノマー(1):UA-1100H(新中村化学製、4官能ウレタンアクリレート)
重合性モノマー(2):A-TMPT(新中村化学製、トリメチロールプロパントリアクリレート)
重合性モノマー(3):2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)プロパン(東京化成(株)製)
【0192】
〔光重合開始剤〕
光重合開始剤(1):IRGACURE OXE 02(BASF社製)
【0193】
〔熱重合開始剤〕
熱重合開始剤(1):パーブチルZ(日油(株)製、t-ブチルパーオキシベンゾエート)
【0194】
<被処理部材の作成>
4インチSiウエハに下記表2記載に示す組成の各液状剥離層組成物をスピンコーター(Mikasa製 Opticoat MS-A100,1200rpm,30秒)により塗布したのち、100℃で300秒ベークし、厚さ20μmの剥離層が設けられたウエハ2(すなわち被処理部材)を形成した。
【0195】
【表2】

【0196】
炭化水素樹脂(1):クリアロンP-135(ヤスハラケミカル(株)製)
炭化水素樹脂(2): ゼオネックス480R(日本ゼオン(株)製)
炭化水素樹脂(3):TOPAS5013(ポリプラスチックス(株)製)
炭化水素樹脂(4): TPX-MX002 (三井化学(株)製)
炭化水素樹脂(5):ポリスチレン(アルドリッチ製,分子量19万)
炭化水素樹脂(6):ペンセルKK(荒川化学(株)製)
比較樹脂(1): MACROMELT 6901(ヘンケル社製,ナイロン)
比較樹脂(2): (下記式(3)で表される繰り返し単位:下記式(1)で表される繰り返し単位=50:50(モル比)) 分子量 8,000
比較樹脂(3): (下記式(6)で表される繰り返し単位:下記式(7)で表される繰り返し単位=70:30(モル比)) 分子量 6,500
【0197】
【化13】

【0198】
【化14】

【0199】
<積層体試験片の作成>
下記表3に記載の組み合わせでウエハ1とウエハ2を圧着及びベークすることで試験片を作成した。以下に圧着及びベークの方法を示す。
【0200】
[圧着]
表面に何も塗布していない4インチSiウエハ又は剥離層付き4インチSiウエハ(以降ウエハ2とする)を分割し、5mm×20mmのサンプル片とした。同様に分割した5mm×20mmのウエハ1のサンプル片を、その接着性層が、表面に何も塗布していない4インチSiウエハ又はウエハ2の剥離層に対して5mm×5mmの正方形で接触するように重ね、25℃で20N/cm^(2)で30秒間加圧接着した。
【0201】
[ベーク]
加圧接着後、180℃で60秒間加熱した。
<積層体試験片の接着力測定>
作成された積層体試験片のせん断接着力を、引っ張り試験機(イマダ製デジタルフォースゲージ、型式:ZP-50N)を用いて、250mm/minの条件で接着性層の面に沿った方向に引っ張り測定した。測定は25℃と100℃で行った。結果を下記表3に示す。<剥離性試験片の剥離性測定>
作成された試験片を、表3に記載の剥離液に25℃で浸漬させた。2枚のサンプル片が自然に剥離するまで浸漬し、その時間を計測した。結果を下記表3に示す。
【0202】
<積層体試験片の耐薬性測定>
作成された試験片を、表3に記載の薬液に25℃で60min浸漬させた。浸漬中に2枚のサンプル片が自然に剥離したものをB、剥離しなかったものをAとした。結果を下記表3に示す。
【0203】
【表3】

【0204】
表3記載の略称はそれぞれ以下の通りである。
【0205】
THF: テトラヒドロフラン
NMP: N-メチルピロリドン
TMAH: テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド
【0206】
以上のように、剥離層を有していない比較例1は接着性は得られるもの剥離性が不十分であり、接着性層を有していない比較例2は接着性が不十分であり、また、剥離層が炭化水素樹脂を含まない層である比較例3?6は、剥離性及び耐薬性(耐NMP,シクロヘキサノン・PGMEA)が不十分であったのに対して、実施例においては、本発明の仮接合層を使用することで、接着性と剥離性を両立できることが分かった。
また、実施例9を除く全ての実施例において、以下に示す露光プロセスを経た場合、接着性層と剥離層との接着性は全く発現しなかった。
【0207】
[露光]
ウエハ1の接着性層に、UV露光装置(浜松ホトニクス製 LC8)を用いて、254nmの波長の光を、500mJ/cm^(2)の露光量で露光した。
【0208】
よって、このような接着性層を接着性支持体の接着性層とし、接着性層にパターン露光を行うことにより(すなわち、露光部と未露光部とを設けることにより)、接着性層に高接着性領域と低接着性領域とを設けることができるため、上記したように、被処理部材に機械的又は化学的な処理を施す際に、処理精度に与える影響を抑制しつつ、被処理部材を確実かつ容易に仮支持できるとともに、処理済部材に損傷を与えることなく、処理済部材に対する仮支持を解除することが可能となる。
【符号の説明】
【0209】
11,11’,21,31 接着性層
12 キャリア基板
21A,31A 低接着性領域
21B,31B 高接着性領域
31a 接着性層の外表面
31b 接着性層の内表面
40 マスク
41 光透過領域
42 遮光領域
50 活性光線又は放射線
50’ 活性光線若しくは放射線又は熱
60 デバイスウエハ
60’ 薄型デバイスウエハ
61 シリコン基板
61a シリコン基板の表面
61b シリコン基板の裏面
61b’ 薄型デバイスウエハの裏面
62 デバイスチップ
63 バンプ
70 テープ
71 剥離層
80 仮接合層
100,100’,110,120 接着性支持体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)剥離層と、(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって、前記剥離層がポリスチレン樹脂、オレフィンモノマー重合体、テルペン樹脂、ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり、前記接着性層が、バインダーと、重合性モノマーと、熱重合開始剤とを含む半導体装置製造用仮接合層。
【請求項2】
前記炭化水素樹脂が、ポリスチレン樹脂である、請求項1に記載の半導体装置製造用仮接合層。
【請求項3】
(A)剥離層と、(B)接着性層とを有する半導体装置製造用仮接合層であって、前記剥離層がテルペン樹脂、ロジン及び石油樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の炭化水素樹脂を含む層であり、前記接着性層が、バインダーと、重合性モノマーと、光重合開始剤及び熱重合開始剤の少なくとも一方とを含む半導体装置製造用仮接合層。
【請求項4】
支持体と、被処理部材と、前記支持体と前記被処理部材との間に設けられた請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層とを有する、積層体。
【請求項5】
被処理部材の第1の面と基板とを、請求項1?3のいずれか1項に記載の半導体装置製造用仮接合層が介在するように接着させる工程、前記被処理部材の前記第1の面とは異なる第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程、及び、前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程、を有する、前記処理済部材を有する半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の前に、前記仮接合層の接着性層に対して、活性光線若しくは放射線又は熱を照射する工程を更に有する、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記被処理部材の第1の面と前記基板とを前記仮接合層を介して接着させる工程の後、かつ、前記被処理部材の前記第2の面に対して、機械的又は化学的な処理を施し、処理済部材を得る工程の前に、前記仮接合層を50℃?300℃の温度で加熱する工程を更に有する、請求項5又は6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記仮接合層から前記処理済部材を脱離する工程が、前記仮接合層に剥離溶剤を接触させる工程を含む、請求項5?7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記剥離溶剤が、炭化水素系溶剤及びエーテル溶剤からなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記剥離溶剤が、シクロペンタン、n-ヘキサン、シクロヘキサン、n-ヘプタン、リモネン、p-メンタン及びテトラヒドロフランからなる群より選ばれる少なくとも一種の溶剤である、請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-11 
出願番号 特願2012-218586(P2012-218586)
審決分類 P 1 651・ 113- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 弘亘  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 飯田 清司
加藤 浩一
登録日 2016-08-05 
登録番号 特許第5982248号(P5982248)
権利者 富士フイルム株式会社
発明の名称 半導体装置製造用仮接合層、積層体、及び、半導体装置の製造方法。  
代理人 尾澤 俊之  
代理人 高松 猛  
代理人 高松 猛  
代理人 尾澤 俊之  

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