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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L |
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管理番号 | 1334343 |
異議申立番号 | 異議2017-700298 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-03-23 |
確定日 | 2017-09-22 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5998310号発明「ゴム組成物及びその製造方法、並びに、タイヤ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5998310号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 特許第5998310号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 特許第5998310号の請求項1ないし10に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成27年11月25日(優先権主張 平成26年11月27日)を国際出願日とする出願であって、平成28年9月2日に設定登録され、同年9月28日に特許公報が発行され、その後、平成29年3月22日付けで特許異議申立人竹口美穂により特許異議の申立てがされ、同年3月27日付けで特許異議申立人渡辺広基により特許異議の申立てがされ、同年5月22日付けで請求項1ないし10に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月24日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がされ、その訂正の請求に対して特許異議申立人竹口美穂から同年8月30日付けで意見書が提出されたものである。 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、 前記熱可塑性樹脂(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して5?40質量部であり、 0℃におけるtanδが0.5以下であり、 30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下であり、 動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下であることを特徴とする、 ゴム組成物。」と記載されているのを、 「天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、 前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であり、 0℃におけるtanδが0.5以下であり、 30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下であり、 動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下であることを特徴とする、 ゴム組成物。」と訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項8に 「前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項1?7のいずれか一項に記載のゴム組成物。」と記載されているのを、 「前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項1?7のいずれか一項に記載のゴム組成物。」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1 ア 「熱可塑性樹脂(B)」を「C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂」と減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項1の「C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂」は、本件特許明細書の段落【0015】及び段落【0032】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 訂正事項1は、「熱可塑性樹脂(B)」を「C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂」と減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (2) 訂正事項2 ア 「熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である」を「熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である」と減縮するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 訂正事項2の「熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である」は、本件特許明細書の段落【0015】及び段落【0032】に記載されているから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 訂正事項2は、「熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である」を「熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である」と減縮するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (3) 一群の請求項について 訂正事項1に係る訂正前の請求項1ないし10について、請求項2ないし10は、直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、訂正前の請求項1ないし10に対応する訂正後の請求項1ないし10は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 むすび 以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-10〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 本件訂正請求により訂正された請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ順に「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。総称して、「本件特許発明」という場合もある。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、 前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であり、 0℃におけるtanδが0.5以下であり、 30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下であり、 動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下であることを特徴とする、 ゴム組成物。 【請求項2】 0℃におけるtanδと30℃におけるtanδとの差が0.30以下である、請求項1に記載のゴム組成物。 【請求項3】 0℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.35以下である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。 【請求項4】 更に、軟化剤(D)を、前記ゴム成分100質量部に対して1?5質量部含む、請求項1?3のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項5】 前記軟化剤(D)が、鉱物又は石油由来の軟化剤である、請求項4に記載のゴム組成物。 【請求項6】 前記シリカの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して40?70質量部である、請求項1?5のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項7】 前記充填剤(C)が更にカーボンブラックを含み、該カーボンブラックの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して1?10質量部である、請求項1?6のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項8】 前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項1?7のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法であって、 加硫剤及び加硫促進剤を含む加硫系配合剤を除いて、前記天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、前記熱可塑性樹脂(B)と、前記シリカを70質量%以上含む充填剤(C)とを150?165℃で混練する工程を含むことを特徴とする、ゴム組成物の製造方法。 【請求項10】 請求項1?8のいずれか一項に記載のゴム組成物をトレッドゴムに用いたことを特徴とする、タイヤ。」 第4 取消理由の概要 1 証拠方法 特許異議申立人渡辺広基の提出した特許異議申立書(以下、「申立書」という。)には、以下の証拠が添付されている。 甲第1号証 特許第4372171号公報 甲第2号証 特開2014-173062号公報 甲第3号証 特開2010-31262号公報 甲第4号証 特開2010-235663号公報 甲第5号証 特開2011-246561号公報 甲第6号証 特開2014-47295号公報 甲第7号証 国際公開第2013/077020号 (以下、それぞれ「甲1」ないし「甲7」と略していう。) 2 取消理由1 本件特許は、特許請求の範囲の請求項1ないし7並びに請求項9及び10の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由2 本件特許発明1ないし3、6、7及び10は、その優先権主張日前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 よって、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。 4 取消理由3 本件特許発明1ないし10は、その優先権主張日前に日本国内において、頒布された甲1に記載された発明及び甲2、4ないし7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるものである。 第5 取消理由2及び3についての判断 1 甲1に記載された事項 甲1には、「タイヤトレッド用ゴム組成物」に関し、次の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 100?70重量部の天然ゴム(NR)及び0?30重量部の末端変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)からなるゴム成分の合計100重量部、BET比表面積が140m^(2)/g以下のシリカ50?100重量部、軟化点が100℃を超える芳香族ビニル変性テルペン樹脂10?50重量部を含んでなり、ゴム組成物中に使用される非石油系原料の比率が80重量%以上であるタイヤトレッド用ゴム組成物。 ・・・ 【請求項3】 請求項1・・・に記載のゴム組成物を用いた空気入りタイヤ。」 (2)「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 従って、本発明の目的は、可能な限り原材料に天然系素材を使用することによって環境に配慮すると同時に、転がり抵抗とウェット性能をともに向上させたタイヤトレッド用ゴム組成物を提供することにある。」 (3)「【0012】 本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物には、更に、芳香族ビニル変性テルペン樹脂を用いることによってウェット性能の向上が可能となる。ここで用いる芳香族ビニル変性テルペン樹脂は、例えばα-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、カンフェン等のテルペン類と、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物とを共重合させることによって得られる公知の樹脂であり、例えばヤスハラケミカル(株)製YSレジン TO-125,TO-115,TR-105などの市販品を用いることもできる。この配合量が少ないとウェット性能が十分に向上しないので好ましくなく、逆に多いとゴム組成物がやわらかくなりすぎてしまい、所定の性能が得られないので好ましくない。」 (4)「【実施例】 【0015】 以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。 【0016】 実施例1?5及び比較例1?5サンプルの調製 表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.8リットルの密閉型ミキサーで5分間混練し、140℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物の非石油系原料比率(%)を表Iに示す。 【0017】 次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で15分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。結果は表Iに示す。」 (5)「 」 2 甲1に記載された発明 上記記載事項(1)ないし(5)、特に上記記載事項(5)の「実施例4」から、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 甲1発明 「NR90重量部、SBR-1(末端変性品)10重量部、CB5重量部、シリカ-1(BET比表面積:115)65重量部及びテルペン樹脂-1(芳香族ビニル変性)15重量部を含むタイヤトレッド用ゴム組成物。」 3 対比・判断 (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、その機能、性質からみて、後者の「NR90重量部、SBR-1(末端変性品)10重量部」は前者の「天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)」に相当し、同様に「CB5重量部、シリカ-1(BET比表面積:115)65重量部」は「シリカを70質量%以上含む充填剤(C)」、「テルペン樹脂-1(芳香族ビニル変性)」は「熱可塑性樹脂(B)」に、「NR90重量部、SBR-1(末端変性品)10重量部及びテルペン樹脂-1(芳香族ビニル変性)15重量部」は「熱可塑性樹脂(B)の配合量が、ゴム成分(A)100質量部に対して5?40質量部」に、「タイヤトレッド用ゴム組成物」は「ゴム組成物」に、それぞれ相当する。 以上の点からみて、本件特許発明1と甲1発明とは、 [一致点] 「天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、 前記熱可塑性樹脂(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して5?40質量部である、 ゴム組成物。」 である点で一致し、 次の点で一応相違する。 [相違点] 相違点1 本件特許発明1では、「0℃におけるtanδが0.5以下」であるのに対して、甲1発明では、かかる発明特定事項を有さない点。 相違点2 本件特許発明1では、「30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下」を含有するのに対して、甲1発明では、かかる発明特定事項を有さない点。 相違点3 本件特許発明1では、「動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下」であるのに対して、甲1発明では、かかる発明特定事項を有さない点。 相違点4 本件特許発明1では、ゴム組成物に「C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂」が含まれるのに対して、甲1発明では、ゴム組成物に「テルペン樹脂-1(芳香族ビニル変性)」が含まれる点。 イ 判断 (ア)事案に鑑み、上記相違点1ないし3について検討する。 申立書によれば、甲1の「実施例4」に記載されたものを原材料として、甲1の【0016】に記載された方法に従ってゴム組成物を得た後、【0017】に記載された方法に従って加硫し、次いで、本件特許明細書の【0063】に記載された方法に従い、0℃、30℃及び60℃における損失正接tanδ、並びに0℃における貯蔵弾性率E’を測定すると、甲1発明は、上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を充足するものであるとの主張がされている(第25頁第3?16行及び第26頁の表A参照)。 しかし、申立書の第26頁の表Aに示された実験結果は、実験を行った者、実験を実施した場所、日付け等を記載した書証として提出されたものではなく、上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を充足するものであるとの主張の根拠となる証拠にはなり得ない。また、他に、上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を充足するものであるとの主張の根拠となる証拠は提出されていない。 そうすると、甲1発明は、上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を充足するものであるとはいえないし、甲1発明において、上記相違点1ないし3に係る発明特定事項とすることが当業者が容易になし得るともいえない。 したがって、本件特許発明1が甲第1号証に記載された発明(甲1発明)であるとはいえないし、甲1発明において上記相違点1ないし3に係る発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることともいえない。 (イ)よって、上記相違点4について検討するまでもなく、本件特許発明1は、特許法第29条の規定に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 (2)本件特許発明2ないし10について 本件特許発明2ないし10は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、同様に、特許法第29条の規定に違反しておらず、同法第113条第2号に該当しない。 第6 取消理由1についての判断 本件特許発明1は、本件訂正請求により、本件訂正請求前の取消理由1の対象外である請求項8に記載された発明特定事項を備えるものであり、取消理由1の対象外となったものである。 そして、本件特許発明の課題の一つは、「ウェット性能を十分に確保すること」(段落【0006】)であるところ、発明の詳細な説明の段落【0032】ないし段落【0039】及び表【1】ないし表【4】の記載に照らせば、熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であることによって、上記課題が解決されると当業者が理解できる。 よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されているといえる。 第7 むすび 以上のとおりであるから、申立書の理由及び証拠によっては、本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし10に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件訂正請求による訂正後の請求項1ないし10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、シリカを70質量%以上含む充填剤(C)と、を含み、 前記熱可塑性樹脂(B)の配合量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して5?40質量部であり、 前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、C_(5)-C_(9)系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、ロジン樹脂、アルキルフェノール樹脂及びテルペンフェノール樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂であり、 0℃におけるtanδが0.5以下であり、 30℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.070以下であり、 動歪1%、0℃における貯蔵弾性率が20MPa以下であることを特徴とする、 ゴム組成物。 【請求項2】 0℃におけるtanδと30℃におけるtanδとの差が0.30以下である、請求項1に記載のゴム組成物。 【請求項3】 0℃におけるtanδと60℃におけるtanδとの差が0.35以下である、請求項1又は2に記載のゴム組成物。 【請求項4】 更に、軟化剤(D)を、前記ゴム成分100質量部に対して1?5質量部含む、請求項1?3のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項5】 前記軟化剤(D)が、鉱物又は石油由来の軟化剤である、請求項4に記載のゴム組成物。 【請求項6】 前記シリカの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して40?70質量部である、請求項1?5のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項7】 前記充填剤(C)が更にカーボンブラックを含み、該カーボンブラックの配合量が、前記ゴム成分100質量部に対して1?10質量部である、請求項1?6のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項8】 前記熱可塑性樹脂(B)が、C_(5)系樹脂、C_(9)系樹脂、及びC_(5)-C_(9)系樹脂からなる群から選択される1種以上の樹脂である、請求項1?7のいずれか一項に記載のゴム組成物。 【請求項9】 請求項1?8のいずれか一項に記載のゴム組成物の製造方法であって、 加硫剤及び加硫促進剤を含む加硫系配合剤を除いて、前記天然ゴム及び合成イソプレンゴムからなる群から選択される少なくとも1種のイソプレン系ゴムを50質量%以上含むゴム成分(A)と、前記熱可塑性樹脂(B)と、前記シリカを70質量%以上含む充填剤(C)とを150?165℃で混練する工程を含むことを特徴とする、ゴム組成物の製造方法。 【請求項10】 請求項1?8のいずれか一項に記載のゴム組成物をトレッドゴムに用いたことを特徴とする、タイヤ。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-12 |
出願番号 | 特願2016-535734(P2016-535734) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 537- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小森 勇 |
特許庁審判長 |
原田 隆興 |
特許庁審判官 |
堀 洋樹 小柳 健悟 |
登録日 | 2016-09-02 |
登録番号 | 特許第5998310号(P5998310) |
権利者 | 株式会社ブリヂストン |
発明の名称 | ゴム組成物及びその製造方法、並びに、タイヤ |
代理人 | 冨田 和幸 |
代理人 | 塚中 哲雄 |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 塚中 哲雄 |
代理人 | 冨田 和幸 |
代理人 | 杉村 光嗣 |