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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1334352
異議申立番号 異議2016-700541  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-06-14 
確定日 2017-10-10 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5833285号発明「暖炉のインサート又はストーブ型の機器のための、ガラス材料で作られた板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5833285号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正することを認める。 特許第5833285号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5833285号の請求項1?15に係る特許についての出願は、2005年 7月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2004年 7月30日、フランス国)を国際出願日とする特許出願であって、平成27年11月 6日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人「井上 清」により特許異議の申立てがされ、平成28年 9月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である平成29年 1月 4日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年 2月 9日付けで意見書が提出され、平成29年 3月 7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である平成29年 6月12日に意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人から平成29年 7月14日付けで意見書が提出されたものである。


2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
平成29年 6月12日付けの訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は以下のとおりである。なお、本件訂正請求により、平成29年 1月 4日付けの訂正の請求は特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
本件訂正請求による訂正の内容は以下のア?カのとおりである。

ア.訂正事項1
請求項1に、「前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み」と記載されているのを、「前記被膜は、(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層を含み」に訂正する。

イ.訂正事項2
請求項2を、「暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも600℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記誘電性材料は金属酸化物及び金属オキシ窒化物から選択されており、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、暖炉インサート又はストーブのための板。」に訂正する。

ウ.訂正事項3
請求項3を、「暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも650℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記高屈折率の誘電性材料は、TiO_(2)、SnO_(2)、Si_(3)N_(4)、Sn_(x)Zn_(y)O_(z)、TiZnO_(x)、Si_(x)Ti_(y)O_(z)、ZnO、ZrO_(2)及びNb_(2)O_(5)から選ばれ、かつ、前記低屈折率の誘電性材料は、SiO_(2)、ケイ素オキシ窒化物、ケイ素オキシカーバイド、混合ケイ素アルミニウム酸化物及びフッ素化合物から選ばれており、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、暖炉インサート又はストーブのための板。」に訂正する。

エ.訂正事項4
請求項7を、「暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記被膜が、次の交互した酸化物層:TiO_(2)/SiO_(2)/TiO_(2)を含む多層体から形成されている、暖炉インサート又はストーブのための板。」に訂正する。

オ.訂正事項5
請求項8を、「暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に合み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記被膜が少なくとも外部面上に1.8を超える高屈折率の層を含む、暖炉インサート又はストーブのための板。」に訂正する。

カ.訂正事項6
請求項10を、「暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に合み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与されており、前記他の種類の機能を有する被膜が、ドープされた金属酸化物で作られだ低放射機能を有する被膜、又はSiO_(2)で作られた被膜である、暖炉インサート又はストーブのための板。」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

ア.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み」の記載において、「金属層」を「銀層」に限定するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、被膜についての上記2つの要件の記載の冒頭に「(i)」、「(ii)」を付する訂正は、記載をより明瞭にするための形式上の訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正である。

そして、訂正事項1の「誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層を含み」において、「銀層」を用いることは、願書に添付した明細書の【0017】に記載されており、新たな技術的事項を導入しないものである。
また、「(i)」、「(ii)」を付する訂正は、記載をより明瞭にするための形式上の訂正であって、新たな技術的事項を導入しないものである。
したがって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」といい、それぞれ「本件明細書」などという。)に記載した事項の範囲内の訂正であって、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

イ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消して、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、この訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消した上で、訂正後の請求項2に係る発明について、「被膜」を訂正前の請求項1に記載していた「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されて」いるものに限定した上で、誘電性材料を「金属酸化物及び金属オキシ窒化物から選択され」るものに更に限定するものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、請求項1を引用していた訂正前の請求項2について請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるとともに、請求項2について、「被膜」を請求項1に記載していた「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されて」いるものに限定した上で、本件明細書の段落【0018】の「被膜は、低屈折率…の誘電体材料と交互している高屈折率…の誘電体材料、特に…などのような金属酸化物(又は金属…オキシ窒化物)型の材料に基づく薄膜多層体(又は積層体)から形成され」との記載を根拠に、誘電性材料を「金属酸化物及び金属オキシ窒化物から選択され」るものに更に限定するための訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

ウ.訂正事項3について
訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項2を介して請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項2を引用しないものとした上で、訂正前の請求項3のうちの請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
また、この訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消した上で、訂正後の請求項3に係る発明について、「被膜」を請求項1に記載していた「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されて」いるものに限定した上で、高屈折率の誘電材料及び低屈折率の誘電材料をそれぞれ更に特定することにより、請求項3を更に限定するものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正前の請求項3について請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるとともに、請求項3について、「被膜」を訂正前の請求項1に記載していた「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されて」いるものに限定した上で、本件明細書の段落【0019】の「高屈折率の層材料として、例えばTiO_(2)又は場合によりSnO_(2)、Si_(3)N_(4)、Sn_(x)Zn_(y)O_(z)、TiZnO_(x)又はSi_(x)Ti_(y)O_(z)、ZnO、ZrO_(2)、Nb_(2)O_(5)などを挙げることができる。低屈折率の層材料として、例えばSiO_(2)又は場合によりケイ素オキシ窒化物及び/もしくはオキシカーバイド、又は混合ケイ素アルミニウム酸化物、あるいは例えば…フッ素化合物などを挙げることができる」との記載を根拠に、高屈折率及び低屈折率の各誘電材料を更に限定するための訂正であるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。

エ.訂正事項4について
訂正事項4は、訂正前の請求項7が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

オ.訂正事項5について
訂正事項5は、訂正前の請求項8が請求項1の記載を引用する記載であるところ、請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

カ.訂正事項6について
訂正事項6は、訂正前の請求項10が請求項9の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項10のうちの請求項9を介して請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、独立形式請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、何ら実質的な内容の変更を伴うものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

(4)一群の請求項について
訂正事項1?6に係る訂正前の請求項1?15について、請求項2?15はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1?6によって連動して訂正されるものである。
よって、本件訂正請求は、一群の請求項〔1?15〕について請求するものと認められるから、特許法120条の5第4項に適合する。

(5)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?15〕について訂正を認める。

3.本件訂正発明
上記2.のとおり訂正を認めたので、訂正後の請求項1?15に係る発明(以下「本件訂正発明1」?「本件訂正発明15」という。)は、次の事項により特定されるとおりのものである(下線は訂正箇所である。)。

【請求項1】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜は、(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層を含み、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項2】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも600℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記誘電性材料は金属酸化物及び金属オキシ窒化物から選択されており、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項3】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも650℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記高屈折率の誘電性材料は、TiO_(2)、SnO_(2)、Si_(3)N_(4)、Sn_(x)Zn_(y)O_(z)、TiZnO_(x)、Si_(x)Ti_(y)O_(z)、ZnO、ZrO_(2)及びNb_(2)O_(5)から選ばれ、かつ、前記低屈折率の誘電性材料は、SiO_(2)、ケイ素オキシ窒化物、ケイ素オキシカーバイド、混合ケイ素アルミニウム酸化物及びフッ素化合物から選ばれており、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項4】
耐熱性が少なくとも700℃である、請求項3に記載の板。
【請求項5】
光反射率R_(L)が20?80%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の板。
【請求項6】
光反射率R_(L)が30?70%である、請求項5に記載の板。
【請求項7】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記被膜が、次の交互した酸化物層:TiO_(2)/SiO_(2)/TiO_(2)を含む多層体から形成されている、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項8】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、前記被膜が少なくとも外部面上に1.8を超える高屈折率の層を含む、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項9】
反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与された、請求項1?8のいずれか1項に記載の板。
【請求項10】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み、前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与されており、前記他の種類の機能を有する被膜が、ドープされた金属酸化物で作られた低放射機能を有する被膜、又はSiO_(2)で作られた被膜である、暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項11】
前記ドープされた金属酸化物がSnO_(2):Fである、請求項10に記載の板。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの板を含む、暖炉インサート又はストーブ型の機器。
【請求項13】
前記ガラス基板上に少なくとも1つの反射被膜を堆積する工程を含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の板を製造する方法。
【請求項14】
前記反射被膜の前記堆積がカソードスパッタによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのスパッタ、熱分解又は蒸着コーターを含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の板を製造する装置。

4.当審の判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由の概要
平成29年 3月 7日付けで当審が通知した取消理由において、平成29年 1月 4日付けで請求された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲に記載の請求項1、5?6、9、12?15に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許を取り消すべきものであることの通知を行った。

<刊行物>
・甲第1号証:特開2003-322330号公報
・甲第2号証:米国特許第6024084号明細書

(2)特許法第29条第2項について

ア.本件訂正発明1
取消理由通知において引用した甲第1号証(以下、「甲1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付加したものである。)。

「【請求項1】波長0.4?0.8μmにおいて、肉厚4mmでの平均透過率が10?50%であることを特徴とする燃焼装置窓用材料。」

「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、薪、ガス、石炭、石油等を燃料とする燃焼装置の覗き窓に使用される燃焼装置窓用材料に関するものである。」

「【0008】【課題を解決するための手段】本発明の燃焼装置窓用材料は、波長0.4?0.8μmにおいて、肉厚4mmでの平均透過率が10?50%であることを特徴とする。
【0009】【作用】本発明の燃焼装置窓用材料は、波長0.4?0.8μmにおいて、肉厚4mmでの平均透過率が10?50%であるため、好ましくは波長0.6?0.8μmにおける最小透過率が、波長0.4?0.6μmにおける最大透過率よりも大きいと、燃焼炎が見えやすく、また煤が窓材料の表面に付着しても目立ちにくく長期間に亘って優れた美観を維持できる。すなわち、平均透過率が10%よりも低いと、燃焼装置内の燃焼炎が見えにくいため、燃焼の有無が確認できず、あるいは感覚的な暖房効果が得られない。また、平均透過率が50%よりも高いと、煤の付着が目立って、美観を損ねる。」

「【0012】着色膜が、Si、Ti、Al、Nb、W、Mo、Pt及びAuから選ばれた1種の金属、ハロステイ、インコネル及びニクロムから選ばれた1種の合金、あるいは、Ti、Nb、W、Moから選ばれた少なくとも1種の金属の窒化物を含むと、静電気による埃の付着が少なくなり、清掃の頻度を減らすことができるため好ましい。特に、上記した金属、合金あるいは金属窒化物にアルミニウムを導入すると、アルミニウムが着色膜の界面で酸化物となりバリアとして働くため、耐熱性に優れ好ましい。」

「【0014】また、着色膜の上に酸化防止膜が形成され、さらに好ましくは低膨張ガラス表面と着色膜との間にも酸化防止膜が形成されてなると、燃焼装置窓用材料の耐熱性が向上し、室内側表面が、燃焼時の最高温度である400℃に達しても、上記金属、合金あるいは金属窒化物を含む着色層が酸化されにくく、着色層の変質を抑制できる。
【0015】酸化防止膜が、Si、Ti、Al、Nb、W、Moから選ばれた少なくとも1種の金属の窒化物又は、SiあるいはAlの酸化物を含むと、着色膜の酸化防止効果が高いため好ましい。」

「【0024】上記した第1?5の実施形態において、特に、着色膜が、TiN、Si、AlTiN、WあるいはWNを含むと、耐熱性に優れるため好ましい。また、酸化防止膜が、SiN、AlN、SiO_(2)あるいはAl_(2)O_(3)を含むと、着色膜の酸化防止効果に優れるため好ましい。
【0025】また、上記した第3?5の実施形態において、着色膜が、酸化防止膜を介して、2層又は3層形成されてなると、色調、可視光透過率あるいは赤外線反射率を微調整でき、また耐熱性もさらに向上するため好ましい。
【0026】低膨張ガラスとしては、600℃からの急冷に耐える、いわゆる耐熱衝撃性が高い材料が使用でき、具体的には50×10^(-7)/℃以下の熱膨張係数を有する材料が好適であり、低膨張の硼珪酸ガラス、石英ガラスあるいはβ-石英固溶体を主結晶とする低膨張結晶化ガラスが使用可能である。特に、30?500℃における平均熱膨張係数が、-10?+30×10^(-7)/℃、さらに好ましくは-10?+20×10^(-7)/℃のガラスは、耐熱衝撃性がさらに高く、燃焼時に、低膨張ガラス板内での温度分布が大きくなってもストレスが発生しにくく割れにくいため好ましい。また、低膨張ガラスは、着色していても構わない。」

「【0031】【表2】

【0032】【表3】



「【0034】図1?5に示すように、30?500℃における平均線熱膨張係数が-5×10^(-7)/℃である透明結晶化ガラス(日本電気硝子社製、N-0)からなる基板11上に、表1?5に示す膜構成となるようにスパッタ法を用いて、着色膜12a、及び酸化防止膜12bからなるスパッタ膜12を形成し、実施例1?14の燃焼装置窓用材料10を作製した。尚、比較例は、スパッタ膜12を形成しなかった。
【0035】次に、上記した燃焼装置窓用材料をガスストーブの覗き窓としてスパッタ膜が形成された面が室内側になるように装着した後、ガスストーブを点火し100時間燃焼させた後、覗き窓の外観、燃焼室内部温度、覗き窓からの熱線輻射及び埃の付着量について評価した。」

「【0038】実施例1?14は、煤の付着は見られるものの目立たず、一方、燃焼室内部の燃焼炎が確認できた。特に、実施例7及び8は、波長0.6?0.8μmにおける最小透過率が、波長0.4?0.6μmにおける最大透過率よりも大きく、煤の付着は全く目立たず、燃焼炎は、はっきりと確認できた。また、燃焼室内部温度は550℃と高く、覗き窓から0.5m離れた地点での温度は60℃以下と低かった。さらに、室内側表面の埃の付着量は、比較例の1/10程度と少なかった。」

よって、甲1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた1つの基板から形成され、少なくとも1つの着色膜及び酸化防止膜が基板の片面上に形成され、
前記着色膜及び酸化防止膜が前記基板の面上に形成され、
前記基板が結晶化ガラスであって、耐熱衝撃性に優れており、
酸化防止膜がSi、Ti、Al、Nb、W、Moから選ばれた少なくとも1種の金属の窒化物又は、SiあるいはAlの酸化物からなり、着色膜がSi、Ti、Al、Nb、W、Mo、Pt及びAuから選ばれた1種の金属、ハロステイ、インコネル及びニクロムから選ばれた1種の合金からなる、
耐熱性に優れたストーブの覗き窓。」

ここで、引用発明の「結晶化ガラス」、「酸化防止膜」、「着色膜」はそれぞれ本件訂正発明1の「ガラス-セラミック板」、「誘電性材料」、「金属層」に相当する。
また、引用発明の着色膜及び酸化防止膜は、実施例7?8、10の記載から0.4μm?0.8μmの平均透過率が30?35%程度であるから、本件発明の反射被膜に相当し、さらに、着色膜及び酸化防止膜の合計膜厚が70nm、220nm及び320nmとなる場合が記載されている。

よって、本件訂正発明1と引用発明とを対比すると、
「ストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であり、
前記被膜は、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み、
前記被膜の厚さは、70nm、220nm又は320nmである、
ストーブのための板。」 である点で一致し、以下の3点(以下、「相違点A」、「相違点B」、「相違点C」という。)で相違する。

相違点A:本件訂正発明1は、ガラス-セラミック板の耐熱性が少なくとも500℃であるのに対し、引用発明は、ガラス-セラミック板に相当する結晶化ガラスが、どの程度の耐熱性であるのかが不明な点。

相違点B:本件訂正発明1は、被膜が、暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、基板の面上に形成されているのに対し、引用発明は、被膜が基板のどちら側の面に形成されているのかが不明な点。

相違点C:本件訂正発明1は、被膜が、(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層であるのに対し、引用発明は、酸化防止膜がSi、Ti、Al、Nb、W、Moから選ばれた少なくとも1種の金属の窒化物又は、SiあるいはAlの酸化物からなり、着色膜がSi、Ti、Al、Nb、W、Mo、Pt及びAuから選ばれた1種の金属、ハロステイ、インコネル及びニクロムから選ばれた1種の合金からなる点。

上記相違点について検討する。

・相違点Aについて
甲1には、600℃からの急冷に耐える耐熱衝撃性が高い材料結晶化ガラスを用いること(【0026】)、耐熱性に優れる被膜を形成すること(【0012】、【0024】、【0025】)、燃焼室内部温度が550℃でも使用可能であること(【0038】)が記載されており、耐熱性が少なくとも500℃の結晶化ガラスを用いているものと認められる。
よって、引用発明の結晶化ガラスの耐熱性は少なくとも500℃であるものと認められる。

・相違点Bについて
甲1には、燃焼装置窓用材料をガスストーブの覗き窓としてスパッタ膜が形成された面が室内側になるように装着すること(【0035】)、静電気による埃の付着が少なくなり、清掃の頻度を減らすことができること(【0012】)が記載されており、「燃焼装置窓用材料の耐熱性が向上し、室内側表面が、燃焼時の最高温度である400℃に達しても」(【0014】)、「また、燃焼室内部温度は550℃と高く」の記載から、甲1に記載の「室内側」は、燃焼室側ではなく、燃焼室と反対側である「ストーブの外側」と認められる。
よって、引用発明の着色膜及び酸化防止膜はストーブの外側に向けられることを意図した、基板の面上に形成されているものと認められる。

・相違点Cについて
まず、被膜が、「(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層を含」む場合について検討する。
甲1には、被膜に用いる着色膜としてアルミニウムを用いることで耐熱性が優れたものとなること、及び、酸化防止膜としてSiN、SiO_(2)を用いることで着色膜の酸化防止効果が優れたものとなることが記載されているが、着色膜として銀を用いることは記載されていない。
また、甲2にもガラス板上に形成する被膜に銀を用いることが記載されていない。

次に、被膜が、「(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されている」場合について検討する。

特許異議申立人は特許異議申立書において、「甲2発明には「酸化スズ、シリカ、フッ素ドープ酸化スズ膜」を使用することが記載され、シリカ膜は、屈折率1.65未満の誘電性材料であり、酸化スズ膜とフッ素ドープ酸化スズ膜は、屈折率1.8を超える高屈折率の誘電性材料であるため、本件特許発明1における「前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」に相当する。
また、甲2発明の図2(FIG.2)に記載の装置は、参考資料1(US2002/0043261A1)の図1A(FIG.1A)に記載のストーブ30とほぼ同じ装置であることから、甲2発明における「the glasssubstrates in a view window of an oven」は、本件特許発明1における「ストーブのためのガラス板」に相当することが理解できる。
このように甲1発明と甲2発明は、その用途が同一であるため、甲1発明におけるストーブ用窓の被膜として甲2発明の被膜を採用することに格別の困難性はない。」と主張し、本件訂正前発明1について、甲1及び甲2を提出し、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張し、平成29年 2月 9日付け意見書において、上記主張と同様の主張によって、本件訂正発明1について、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから特許を取り消すべきものである旨主張している。

しかしながら、甲2に記載の窓はガラス板であってガラス-セラミック板ではないから、甲2には、ガラス-セラミック板に1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体からなる被膜を形成することが記載されているとはいえない。
そして、本件明細書の【0010】に記載されているように、ガラス-セラミック板は、耐熱性であって膨張係数がゼロ又はほぼゼロ(例えば15×10^(-7)K^(-1)未満)のものであるから、ガラス板とは異なるものであり、ガラス板を用いることを前提とした甲2に記載の技術的事項と組み合わせる動機付けが存在していない。
してみると、甲1と甲2とは、燃焼装置の窓としての用途は共通しているものの、甲2に記載の窓はガラス-セラミック板ではないから、ガラス-セラミック板上に形成する被膜を「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは、甲1及び甲2に記載の技術的事項から、当業者が容易に想到できるものではない。

なお、特許異議申立人は、平成29年7月14日付け意見書において、「審判官殿は、平成29年3月7日起案の取消理由通知書の20頁の ア.本件訂正発明1 の項目で、「しかしながら、甲2に記載の視認窓はガラス窓であってガラス-セラミック板ではないから、甲2には、ガラス-セラミック板に1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体からなる被膜を形成することが記載されていない。そして、本件明細書の【0010】に記載されているように、ガラス-セラミック板は、耐熱性であって膨張係数がゼロ又はほぼゼロ(例えば15×10^(-7)K^(-1)未満)のものであるから、ガラスとは異なるものであり、ガラスを用いることを前提とした甲2に記載の技術的事項と組み合わせる動機付けが存在していない。してみると、甲1と甲2とは、燃焼装置の窓としての用途は共通しているものの、甲2に記載の窓はガラス-セラミック板でないから、ガラス-セラミック板上に形成する被膜を「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは、甲1及び甲2に記載の技術的事項から、当業者が容易に想到できるものではない。」と述べられているが、この点に関して誤認があるものと思われる。
まず、ガラス-セラミックとは、いわゆる結晶化ガラスのことであるが、結晶化ガラスは、広義の概念ではガラスの一種である。このことは参考資料1(ガラスの事典)の18?19頁に、代表的な実用ガラス組成系のケイ酸塩系に結晶化ガラスが分類されていることから分かる。また、甲1の【0005】及び【0026】には、結晶化ガラスが硼珪酸ガラスや石英ガラスと同様の低膨張ガラスの一種であるものとして記載され、このことから低膨張ガラスに結晶化ガラスが含まれることや、燃焼装置のガラス窓として結晶化ガラス以外にも、硼珪酸ガラスや石英ガラスが一般に使用されていたことが理解できる。
さらに述べると、本件明細書の【0004】には、「非燃焼時に美しくないハースの内部構造を隠しつつ、これら機器の燃焼しているハースの魅力的な外観を保つことが可能になる。」の記載があるが、このような機能を有する基板はハーフミラーと呼ばれる。そしてハーフミラーとして、ガラス-セラミック板上に形成する被膜を「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは当業者に広く知られていたことである。このことは、参考資料2(特開2003-131011号公報)に、基体の表面に高屈折率膜と低屈折率膜が交互に積層されてなる多層膜(請求項1)が開示され、その基体として結晶化ガラスが使用できること(請求項6)、高屈折率膜としてTiO_(2)等、低屈折率膜としてSiO_(2)等が使用できること(【0018】【0019】)、この多層膜がハーフミラーに使用できること(【0042】)が記載されていることからも理解できる。
このような認識に立てば、甲2の燃焼装置の窓に使用されるガラス基板が、ガラス-セラミック板を含むものではないと考える方がむしろ不自然である。また百歩譲って甲2のガラス基板が、ガラス-セラミック板を含むものではないと解釈したとしても、従来から燃焼装置の窓ガラスとして結晶化ガラス、硼珪酸ガラス、石英ガラスが適宜選択して使用されていたのであるから結晶化ガラスを用いた甲1を組み合わせる動機付けは十分に存在したと言える。そして、結晶化ガラス板に高屈折率膜と低屈折率膜が交互に積層されてなる多層膜を形成したハーフミラーが周知であったことを勘案すれば、当業者が甲2の記載を参酌し、甲2の多層膜を甲1のガラス-セラミック板の多層膜と置き換えることに格別の困難性はない。
さらに審判官殿は、同取消理由通知書の18頁の ウ.本件訂正発明9 の項目で、「甲第2号証(以下、「甲2」という。)には、オーブンに設けるガラス窓の両面に形成される膜の構成が異なっていることが記載されている(第3欄第55行?第4欄第40行参照)。そして、加熱室に設けるガラス窓の両面に異なる機能の被膜を形成することは、例えば、甲2にあげられているように周知の技術であり、引用発明に適用することに格別の困難性はない。」とし、甲1に甲2を適用することによって本件訂正発明9に係る特許は当業者が容易に発明をすることができたものであると認定している。
このように審判官殿は、本件特許発明9については甲1に甲2を適用することが容易であると認定されているのであるから、本件特許発明1についても、燃焼装置の窓ガラス板上に形成する被膜を、「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは、甲2にあげられているように周知の技術であり、この多層膜を甲1で結晶化ガラスを採用した場合に適用することについても格別の困難性はないと認定されるのが妥当であると思われる。
以上のことから、「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、」の構成を有する請求項1?請求項15は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」と主張している。

ここで、本件特許明細書には、以下の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の目的は、この分野に存在する要求に適合させつつも、外観が魅力的でかつ機能的な暖炉インサートもしくはストーブ型又は相当物の新規暖房機器を提案することである。特に本発明では、この種類の機器表面での使用に適しており、かつこのように定義した目標に合致するガラス材料で作られた板が開発され、とりわけ非燃焼時に美しくないハースの内部構造を隠しつつ、これら機器の燃焼しているハースの魅力的な外観を保つことが可能になる。この種類の製品を実施する困難さは、特にこの種類の製品の耐性に関する厳しい要求、詳しくは耐熱性に関連し、及びそのような特に厳しい動作条件にさらされる異なる特性の材料を組み合わせることに関して存在する優先事項にも関連する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本目的は、ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜をその面の少なくとも1つの上に含む、本発明の板によって達成される。有利にはガラス材料から作られる少なくとも1つの基板から形成される板はガラス-セラミック板である。
【0006】
想起されることは、ガラス-セラミックは元々前駆体ガラスと呼ばれるガラスであって、その特殊な化学組成のため適当な「セラミック化(ceramization)」熱処理が制御された結晶化を誘起しうることである。この特殊な一部結晶化した構造はガラス-セラミックに独特の特性を与える。しかしながら、所望の特性に好ましくない影響を与える危険がない状態でこれらの板及び/又はその製造方法を変更することは非常にやりにくい。とりわけ現在想定されている種類の用途において、この種類の材料に反射被膜を加えることは、特にそのような被膜を劣化させる危険性、詳しくはこれら種類の材料の異なる膨張係数及び想定される頻繁な熱衝撃によりひび割れする危険性を考慮したために想定されてこなかった。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
「ガラス-セラミック板」とは、正確な意味でのガラス-セラミックで作られた板のみならず、耐熱性であって膨張係数がゼロ又はほぼゼロ(例えば15×10^(-7)K^(-1)未満)の他の任意の同様な材料で作られた板をも意味するものと以下理解される。しかしながら正確な意味でのガラス-セラミックで作られた板が好ましい。
【0011】
反射被膜をガラス材料で作られた基板、特にガラス-セラミック基板と組み合わせることには、動作中に火を見ることを可能にしつつ、非燃焼時にハースを多かれ少なかれ隠すという利点がある。また本発明の板はこの種類の用途で必要な要求に合致し、詳しくは選択した被膜に応じて、少なくとも500℃、好ましくは少なくとも600℃、とりわけ好ましくは少なくとも650℃あるいは700℃で(特に劣化及び剥離のない)耐熱性を有している。また本発明の板は引っかき又は衝撃の危険に対する良好な抵抗を示す。
【0012】
好ましくは被膜は板の外部面上、すなわち暖房機器の外側に向けられるように設計された面にあり、この面は機器の動作中に火と直接接触しない。」

以上の記載から、本件特許は、暖炉インサート又はストーブに設けるガラス窓について、耐熱性及び膨張係数の観点から、任意のガラス材料ではなく、耐熱性があり(少なくとも500℃)、膨張係数が小さいガラス-セラミック材料を用いることで、ガラス-セラミック板上に、(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層からなる被膜を設けた際に、被膜の劣化や熱衝撃によるひび割れを抑制でき、さらに、被膜を設けることで、動作中には、ガラス-セラミック板を介してハース内の火を見ることができ、逆に、非燃焼時は、ハースの内部構造を見えにくくすることができる暖炉インサート又はストーブに設けるガラス窓を形成したことが記載されている。

ここで、甲1には、結晶化ガラスの表面に着色膜と酸化防止膜を形成することで、燃焼炎が見えやすく、また煤が窓材料の表面に付着しても目立ちにくく長期間に亘って優れた美観を維持できる燃焼装置用窓材料を形成できることが記載されている。

しかしながら、甲2には、オーブンに設けたガラス窓の一方の面に酸化スズ層(1.8を超える高屈折率層に相当)、シリカ層(1.65未満の低屈折率層に相当)、及び、フッ素ドープ酸化スズ層(1.8を超える高屈折率層に相当)を設け、他方の面に酸化スズ層及びシリカ層を設けることが記載されているが、上記被膜は赤外線の反射防止膜として設けられたものであり、燃焼時には、オーブン内部の炎を見ることができ、非燃焼時には、ハースの内部構造を見えにくくするもの(内部の煤等の汚れを見えにくくするもの)を目的としたものではない。
また、甲2に記載の窓は耐熱性が500℃以上のガラス-セラミック板とすることも記載されていない。
よって、甲1と甲2とは、耐熱性が高く、膨張係数が小さいガラス-セラミック材料を用いるのか、単なるガラス板であるのかという点で異なるとともに、甲1に記載の着色膜と酸化防止膜とからなる被膜は燃焼炎が見えやすく、また煤が窓材料の表面に付着しても目立ちにくく長期間に亘って優れた美観を維持することを目的としたものであるのに対し、甲2に記載の酸化スズ層、シリカ層、及び、フッ素ドープ酸化スズ層からなる積層被膜は赤外線の反射防止を目的としたものであるから、基材であるガラス材料が異なるとともに、その表面に形成する被膜の目的も異なるものであるため、甲1に記載の被膜を甲2に記載の被膜に置き換えることの動機付けが認められない。

また、特許異議申立人は甲2の燃焼装置の窓に使用されるガラス基板が、ガラス-セラミック板を含むものではないと考える方がむしろ不自然であること、及び、参考資料2(特開2003-131011号公報)に記載されているように、ハーフミラーとして、ガラス-セラミック板上に形成する被膜を「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは当業者に広く知られていたことである旨を主張している。
しかしながら、甲2には、538℃?593℃程度で熱処理を行うことしか記載されておらず(第7欄第第8行?第13行)、ガラス-セラミック(結晶化ガラス)を形成することの記載も示唆も認められない。
さらに、参考資料2は、液晶プロジェクター等の投射型液晶装置に使用される液晶パネル用のガラス基板に関する発明であり、基体が結晶化ガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラスのいずれでも良いこと、基体上の被膜の例としてハーフミラーが列挙されているだけであり、結晶化ガラス及びハーフミラーはそれぞれ列挙されたものの一例示にすぎず、用途も異なるものである。

また、特許異議申立人は平成29年 7月14日付け意見書において、平成29年 3月 7日付けの取消理由通知において、平成29年 1月 4日付けで請求された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項9に係る発明に対し、甲1に甲2を適用することが容易であると認定されているのであるから、本件特許発明1についても、燃焼装置の窓ガラス板上に形成する被膜を、「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体」とすることは、甲2にあげられているように周知の技術であり、この多層膜を甲1で結晶化ガラスを採用した場合に適用することについても格別の困難性はないと認定されるのが妥当である旨を主張している。
しかしながら、当該請求項9は、請求項1?8のいずれか1項を引用するものであったため、被膜の構成が「Si_(3)N_(4)又はSiO_(2)の少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つのアルミニウム層を含んでおり」を含む特定において、さらに、「反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与された」という特定を含むものであり、上記被膜の構成(「Si_(3)N_(4)又はSiO_(2)・・・アルミニウム層を含んでおり」)は甲1に記載されたものであり、甲2は、当該請求項9に記載の「反対面上に他の種類の機能を有する被膜」を設けることが周知技術であることを示す文献であって、すでに検討したように、甲1に記載の酸化防止膜及び着色膜の構成を甲2に記載の特定の被膜の構成(酸化スズ層及びシリカ層)に置き換えることは当業者が容易に想到できるものではない。

よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

したがって、本件訂正発明1は甲1、甲2に記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ.本件訂正発明2?3、7?8
本件訂正発明2?3、7?8は、被膜が「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されている」もののみに限定されている。
よって、上記アと同様の理由により、甲1、甲2に記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、特許異議申立理由によって本件訂正発明2?3、7?8に係る特許を取り消すことはできない。

ウ.本件訂正発明4?6、9
本件訂正発明4?6、9は、少なくとも、本件訂正発明1?3、7?8のいずれかをより限定した発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1?甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

エ.本件訂正発明10?11
甲1、甲2には、ガラス-セラミック板の一方の面上に、「1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含」む被膜を形成し、他方の面上に「ドープされた金属酸化物で作られた低放射機能を有する被膜、又はSiO_(2)で作られた被膜」を形成することについて記載も示唆もなく、周知技術であるともいえない。

よって、本件訂正発明10は甲1、甲2に記載の技術的事項及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許異議申立理由及び平成29年 2月 9日付け意見書の主張を採用することもできない。
(なお、平成29年 7月14日付け意見書において、本件訂正発明10に関する主張はない。)

本件訂正発明10を引用する本件訂正発明11についても同様である。
したがって、特許異議申立理由によって本件訂正発明10?11に係る特許を取り消すことはできない。

オ.本件訂正発明12?15
本件訂正発明12?15は、少なくとも、本件訂正発明1?3、7?8、10のいずれかをより限定した発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1?甲2に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得た発明とはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件請求項1?15に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1?15に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、
前記被膜は、
(i)1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、
(ii)誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの銀層を含み、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項2】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも600℃であり、
前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、
前記誘電性材料は金属酸化物及び金属オキシ窒化物から選択されており、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項3】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも650℃であり、
前記被膜は、
1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、
前記高屈折率の誘電性材料は、TiO_(2)、SnO_(2)、Si_(3)N_(4)、Sn_(x)Zn_(y)O_(z)、TiZnO_(x)、Si_(x)Ti_(y)O_(z)、ZnO、ZrO_(2)及びNb_(2)O_(5)から選ばれ、かつ、
前記低屈折率の誘電性材料は、SiO_(2)、ケイ素オキシ窒化物、ケイ素オキシカーバイド、混合ケイ素アルミニウム酸化物及びフッ素化合物から選ばれており、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間である、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項4】
耐熱性が少なくとも700℃である、請求項3に記載の板。
【請求項5】
光反射率R_(L)が20?80%である、請求項1?4のいずれか1項に記載の板。
【請求項6】
光反射率R_(L)が30?70%である、請求項5に記載の板。
【請求項7】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、
前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、
前記被膜が、次の交互した酸化物層:TiO_(2)/SiO_(2)/TiO_(2)を含む多層体から形成されている、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項8】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、
前記被膜は、1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されており、
前記被膜が少なくとも外部面上に1.8を超える高屈折率の層を含む、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項9】
反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与された、請求項1?8のいずれか1項に記載の板。
【請求項10】
暖炉インサート又はストーブのための板であって、
ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成され、少なくとも1つの反射被膜を前記基板の片面上に含み、
前記被膜が、前記暖炉インサート又はストーブの外側に向けられることを意図した、前記基板の面上に形成され、
前記ガラス材料で作られた少なくとも1つの基板から形成された前記板がガラス-セラミック板であってその耐熱性が少なくとも500℃であり、
前記被膜は、
1.8を超える高屈折率及び1.65未満の低屈折率の交互した誘電性材料に基づく薄膜多層体によって形成されているか、または、
誘電性材料に基づく少なくとも1つの層により保護されている、少なくとも1つの金属層を含み、
前記被膜の厚さは、20nmと1000nmとの間であり、
反対面上に他の種類の機能を有する被膜も付与されており、
前記他の種類の機能を有する被膜が、ドープされた金属酸化物で作られた低放射機能を有する被膜、又はSiO_(2)で作られた被膜である、
暖炉インサート又はストーブのための板。
【請求項11】
前記ドープされた金属酸化物がSnO_(2):Fである、請求項10に記載の板。
【請求項12】
請求項1?11のいずれか1項に記載の少なくとも1つの板を含む、暖炉インサート又はストーブ型の機器。
【請求項13】
前記ガラス基板上に少なくとも1つの反射被膜を堆積する工程を含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の板を製造する方法。
【請求項14】
前記反射被膜の前記堆積がカソードスパッタによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つのスパッタ、熱分解又は蒸着コーターを含む、請求項1?11のいずれか1項に記載の板を製造する装置。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-25 
出願番号 特願2007-523131(P2007-523131)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C03C)
P 1 651・ 113- YAA (C03C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 武重 竜男吉川 潤  
特許庁審判長 新居田 知生
特許庁審判官 山本 雄一
後藤 政博
登録日 2015-11-06 
登録番号 特許第5833285号(P5833285)
権利者 ユーロケラ ソシエテ オン ノーム コレクティフ
発明の名称 暖炉のインサート又はストーブ型の機器のための、ガラス材料で作られた板  
代理人 石田 敬  
代理人 関根 宣夫  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 塩川 和哉  
代理人 塩川 和哉  
代理人 蛯谷 厚志  
代理人 関根 宣夫  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  
代理人 永坂 友康  
代理人 古賀 哲次  
代理人 青木 篤  
代理人 出野 知  
代理人 古賀 哲次  
代理人 出野 知  
代理人 永坂 友康  

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