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審決分類 審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B32B
審判 一部申し立て 2項進歩性  B32B
管理番号 1334358
異議申立番号 異議2016-701109  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-11-30 
確定日 2017-10-06 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5928268号発明「導電性フィルム、タッチパネル、及び、表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5928268号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1?4、10、11][5?9、12?14]について訂正することを認める。 特許第5928268号の請求項1?4、10、11に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第5928268号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?4、10、11に係る特許についての出願は、平成24年9月12日の出願であって、平成28年5月13日にその特許権の設定登録がされた。
その後、請求項1?4に係る特許について、特許異議申立人増山美紀(以下、「申立人1」という。)により、及び、請求項1、3、4、10、11に係る特許について、特許異議申立人小松一枝及び前田知子(以下、「申立人2」という。)により特許異議の申立てがなされ、平成29年3月6日付けで取消理由が通知され、平成29年5月2日付けで意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされ、平成29年5月12日付けで申立人1及び2に対し訂正請求があった旨の通知がなされ、平成29年6月15日に申立人1からのみ意見書が提出された。

2.本件訂正請求についての判断
(1)訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は以下のとおりである。
ア.訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備える」とあるのを、
「前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備え、前記透明電極層は、膜厚が1?30nmであり、シート抵抗が、0.0001?50Ω/□である」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2?4、10、11も同様に訂正する。)
イ.訂正事項2
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性フィルム」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、
「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板と、前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備え、前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている導電性フィルム」に訂正する。(請求項5の記載を引用する請求項6?9も同様に訂正する。)
ウ.訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性フィルム」とあるうち、請求項2を引用するものについて、
「前記透明導電層の厚さが1nm以上20nm以下であり、全光線透過率が80%以上である請求項5に記載の導電性フィルム。」と改め、新たに請求項12とする。
エ.訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性フィルム」とあるうち、請求項3を引用するものについて、
「前記熱可塑性樹脂が、セルロースアシレート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から選ばれる少なくともいずれか一つである請求項5又は12に記載の導電性フィルム。」と改め、新たに請求項13とする。
オ.訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に、
「前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性フィルム」とあるうち、請求項4を引用するものについて、
「前記導電性フィルムが幅手方向の寸法が0.3m以上、長手方向の寸法が200m以上であり、長手方向に巻回されたロール状である請求項5,12,13のいずれか1項に記載の導電性フィルム。」と改め、新たに請求項14とする。

(2)訂正の適否
ア.訂正前の請求項1及びそれぞれが当該請求項1を直接的又は間接的に引用する訂正前の請求項2?11は一群の請求項であり、訂正事項1?5による訂正は当該一群の請求項1?11に対し請求されたものである。

イ.訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「透明導電層」について、本件特許明細書の段落【0025】の「透明導電層は、導電性を有する程度に連続した金属膜である。・・・また、膜厚が1?30nm、好ましくは1?20nmであり、シート抵抗が0.0001?50Ω/□、好ましくは0.01?40Ω/□である。」との記載等に基づいて、「膜厚が1?30nmであり、シート抵抗が、0.0001?50Ω/□である」ことを限定するものである。
ゆえに、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項5が、請求項1?4を引用するものであったところ、請求項間の引用関係を解消し、請求項1を引用するものについて、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」を目的とする訂正であり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

エ.訂正事項3について
訂正事項3は、請求項1?4を引用するものであった訂正前の請求項5のうちの請求項2を引用するものについて、訂正事項2により独立形式請求項へ改められた請求項5を引用する従属形式請求項へ改めるための訂正であって、訂正事項2による訂正を前提とし、請求項間の引用関係を明瞭化するための訂正といえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

オ.訂正事項4について
訂正事項4は、請求項1?4を引用するものであった訂正前の請求項5のうちの請求項3を引用するものについて、訂正事項2により独立形式請求項へ改められた請求項5及び訂正事項3により請求項5の従属形式請求項へ改められた請求項12を引用する従属形式請求項へ改めるための訂正であって、訂正事項2による訂正を前提とし、請求項間の引用関係を明瞭化するための訂正といえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

カ.訂正事項5について
訂正事項5は、請求項1?4を引用するものであった訂正前の請求項5のうちの請求項4を引用するものについて、訂正事項2により独立形式請求項へ改められた請求項5、訂正事項3により請求項5の従属形式請求項へ改められた請求項12及び訂正事項4により請求項5又は12の従属形式請求項へ改められた請求項13を引用する従属形式請求項へ改めるための訂正であって、訂正事項2による訂正を前提とし、請求項間の引用関係を明瞭化するための訂正といえるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすること」及び同項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とする訂正であり、かつ、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合する。
そして、訂正後の請求項5?9、12?14に係る訂正事項2?5は、別の訂正単位とする、引用関係の解消の求めを目的とする訂正であるところ、訂正事項2?5は、上記2.(2)ウ.?カ.で示したように、いずれも適法であるから、訂正後の請求項5?9、12?14を別の訂正単位とすることを認める。
したがって、訂正後の請求項[1?4、10、11][5?9、12?14]について訂正を認める。


3.特許異議の申立てについて
(1)本件発明
上記のとおり訂正が認められるから本件特許の請求項1?4、10及び11に係る発明(以下、「本件発明1?4、10及び11」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1?4、10及び11に記載された次の事項により特定される、次のとおりのものである。

【請求項1】
面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板と、
前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備え、
前記透明電極層は、膜厚が1?30nmであり、シート抵抗が、0.0001?50Ω/□である
導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明導電層の厚さが1nm以上20nm以下であり、全光線透過率が80%以上である請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、セルロースアシレート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から選ばれる少なくともいずれか一つである請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記導電性フィルムが幅手方向の寸法が0.3m以上、長手方向の寸法が200m以上であり、長手方向に巻回されたロール状である請求項1?3のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載の導電性フィルムを電極として備えるタッチパネル。
【請求項11】
請求項10に記載のタッチパネルと、前記タッチパネルに重ねて配置された表示パネルを備える表示装置。

(2)取消理由の概要
平成29年3月6日付け取消理由通知の概要は、以下のとおりである。
なお、上記取消理由通知においては、申立人1及び申立人2が申し立てた全ての特許異議申立理由を採用した。

《理由1》本件発明1?3は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
《理由2》本件発明1?4、10、11は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

申立人1による特許異議申立書(以下、「申立書1」という。)に添付された甲第1号証?甲第4号証を、甲1-1?甲1-4といい、申立人2による特許異議申立書(以下、「申立書2」という。)に添付された甲第1号証?甲第6号証を、甲2-1?甲2-6という。
甲1-1等に記載された発明を、甲1-1発明等といい、甲1-1等に記載された事項を、甲1-1記載事項等という。

甲1-1.特開2004-348270号公報
甲1-2.国際公開第2011/078231号
甲1-3.「高機能光学材料ゼオノアフィルム」パンフレット、日本ゼオン株式会社、2002年8月
甲1-4.国際公開第2010/106899号
甲2-1.特開2009-176608号公報
甲2-2.国際公開第2009/035059号
甲2-3.特開2011-70968号公報
甲2-4.特開2004-309979号公報
甲2-5.特開2012-66477号公報
甲2-6.国際公開第2011/048663号

《理由1について》
《理由1-1》
本件発明1?3は、甲1-1発明である。
《理由1-2》
本件発明1?3は、甲1-3記載事項を踏まえると、甲1-2発明である。

《理由2について》
《理由2-1》
本件発明1?3は、甲1-4発明及び甲1-1記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明4は、甲1-1発明または甲1-2発明または甲1-4発明と甲1-1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
《理由2-2》
本件発明1、3、4、10、11は、甲2-1発明及び甲2-4?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
《理由2-3》
本件発明1、3、4、10、11は、甲2-2発明及び甲2-4?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
《理由2-4》
本件発明1、3、4、10、11は、甲2-3発明及び甲2-4?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)判断
ア.《理由1-1》について
(ア)甲1-1発明
甲1-1の【請求項1】、段落【0001】、【0010】、【0011】、【0031】?【0035】、【0050】、【0051】、【0071】及び【図1】の記載を踏まえると、甲1-1には、以下の甲1-1発明が記載されている。
《甲1-1発明》
ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリエーテルスルフォン系樹脂(PES) 、ポリアリレート系樹脂(PAR)、環状ポリオレフィン系樹脂などのリタデーションの小さい光学等方性フィルムの上面に、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛 、酸化カドミウム、ITOなどの金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、パラジウムなどの金属の薄膜である透明導電膜で構成された固定電極を備える下部電極フィルム。
(イ)甲1-1発明との対比、判断
本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、甲1-1発明の「下部電極フィルム」は、本件発明1の「導電性フィルム」に相当する。
また、甲1-1発明の「ポリカーボネート系樹脂(PC)、ポリエーテルスルフォン系樹脂(PES) 、ポリアリレート系樹脂(PAR)、環状ポリオレフィン系樹脂などのリタデーションの小さい光学等方性フィルム」、「酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛 、酸化カドミウム、ITOなどの金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、パラジウムなどの金属の薄膜である透明導電膜で構成された固定電極」と、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」、「前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層」とは、各々、「熱可塑性樹脂からなる基板」、「基板上に形成された透明導電層」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲1-1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点1》
「熱可塑性樹脂からなる基板」及び「基板上に形成された透明導電層」が、本件発明1では「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」もの及び「銀を主成分とする」ものである(以下、「本件発明1特定事項」という。)のに対し、甲1-1発明では「リタデーションの小さい」もの及び「酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛 、酸化カドミウム、ITOなどの金属酸化物や、金、銀、銅、錫、ニッケル、アルミニウム、パラジウムなどの金属の薄膜である」ものである点。

上記《相違点1》について検討する。
本件特許明細書には、本件発明1特定事項について、以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、透明プラスティック基板上にITO導電膜を形成する方法では、抵抗値、透明性の両立や、ディスプレイと組み合わせた時の視認性に課題がある。さらに、ITO導電膜では工程での連続生産時での幅手方向の抵抗値ムラや、高い熱処理が必要なため、プラスティック基板に損傷が発生し、またロール状態での経時安定性(湿熱耐久性)が劣り、好ましくない。
また、銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの技術においても、透過率、抵抗値、画像視認性、経時安定性を両立することができていない。
【0008】
上述した問題の解決のため、本発明においては、低抵抗且つ高透過率を有し、経時安定性に優れる導電性フィルム、タッチパネル、及び、表示装置を提供するものである。
・・・
【0010】
本発明の導電性フィルムによれば、面方向リタデーション(R0)値が+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂を基板に用いることにより、透過率の高い導電性フィルムを構成することができる。また、銀を主成分とする透明導電層を用いることにより、電極形成時のアニール処理を行うことなく、低抵抗な導電性フィルムとなる。さらに、透明導電層形成時に、アニール処理が不要となるため、熱による熱可塑性樹脂への損傷を防ぐことができ、熱可塑性樹脂の面方向リタデーションに影響を与えることなく、経時安定性に優れる導電性フィルムを構成することができる。
また、この導電性フィルムを備えることにより、低抵抗且つ高透過率を有し、経時安定性に優れるタッチパネル、及び、表示装置を構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低抵抗且つ高透過率を有し、経時安定性に優れる導電性フィルム、タッチパネル、及び、表示装置を提供することができる。」

これらの記載事項からみて、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
そして、上記作用効果が奏されることは、本件特許明細書の【表3】に記載された、基材が同じで電極層材料が異なる、導電性フィルムNo.202及び203(比較例:電極層材料がITOスパッタ)と、No.217?220(本発明:電極層材料が銀蒸着)の評価結果に裏付けられている。
一方、甲1-1の段落【0051】には、透明電極層の材質としての「銀」とITO等のその他の金属酸化物及び金属は、同列に例示されており、「銀」に特に着目したものではない。
しかも、甲1-1には、本件発明1による「リタデーションの小さい光学等方性フィルム」に銀薄膜による透明導電膜を形成することで、「電極形成時のアニール処理を行うことなく、低抵抗な導電性フィルムとなる。さらに、透明導電層形成時に、アニール処理が不要となるため、熱による熱可塑性樹脂への損傷を防ぐことができ、熱可塑性樹脂の面方向リタデーションに影響を与えることなく、経時安定性に優れる導電性フィルムを構成することができる」(本件特許明細書の段落【0010】)という作用効果(以下、「本件発明1作用効果」という。)と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていない。
そして、このことは、甲1-2?1-4及び甲2-1?2-6にも記載や示唆はされておらず、当業者にとって当然の技術常識ともいえないから、甲1-1に記載されているに等しい事項とすることはできない。
ゆえに、上記《相違点1》は、単に表現が異なるだけの一応の相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1-1発明ではない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明2及び3も、上記と同様の理由により、甲1-1発明ではない。

イ.《理由1-2》について
(ア)甲1-2発明
甲1-2の[請求項1]、[請求項3]、段落[0001]、[0006]、[0007]、[0032]、[0033]、[0036]、[0059]?[0066]及び甲1-3の1四角-1(合議体注:「1四角」は、四角の中に数字の1が記載された四角数字の代替表記である。)?1四角-4の記載を踏まえると、甲1-2には、以下の甲1-2発明が記載されている。
《甲1-2発明》
波長550nmにおける面内方向リタデーション値が、20nm以下である透明なプラスチック製の基体シートと、前記基体シート上に形成された、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バインダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどとからなる透明導電膜層とを備え、前記透明導電膜層は、厚さが数十nm程度から数μm程度であり、表面抵抗値数が、数mΩから数百Ωである、基体シートと前記基体シート上に形成された透明導電膜層とを備えたもの。
(イ)甲1-2発明との対比、判断
本件発明1と甲1-2発明とを対比すると、甲1-2発明の「波長550nmにおける面内方向リタデーション値が、20nm以下である透明なプラスチック製の基体シート」、「基体シートと前記基体シート上に形成された透明導電膜層とを備えたもの」は、各々、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」、「導電性フィルム」に相当する。
また、甲1-2発明の「前記基体シート上に形成された、インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バインダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどとからなる透明導電膜層」と、本件発明1の「前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層」とは、「基板上に形成された透明導電層」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲1-2発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点2》
「基板上に形成された透明導電層」が、本件発明1では「銀を主成分とする」ものであるのに対し、甲1-2発明では「インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バインダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなどとからなる」ものである点。

上記《相違点2》について検討する。
上記3.(3)ア.(イ)で示したように、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
一方、甲1-2の段落[0036]には、透明導電膜層の材質として、「インジウムスズ酸化物、亜鉛酸化物などの金属酸化物や、樹脂バインダーとカーボンナノチューブや金属ナノワイヤなど」が示されているが、「銀」は示されていない。
そして、導電性を発現する金属ナノワイヤとして、「銀を主成分とするもの」は、通常採用するものとして周知である(申立書1の13頁21?27行)としても、甲1-2には、「波長550nmにおける面内方向リタデーション値が、20nm以下である透明なプラスチック製の基体シート」に銀を材質とした透明導電膜層を形成することで、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていない。
そして、このことは、甲1-1、1-3、1-4及び甲2-1?2-6にも記載や示唆はされておらず、当業者にとって当然の技術常識ともいえないから、甲1-1に記載されているに等しい事項とすることはできない。
ゆえに、上記《相違点2》は、単に表現が異なるだけの一応の相違点ではなく、実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1-2発明ではない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備える、本件発明2及び3も、上記と同様の理由により、甲1-2発明ではない。

ウ.《理由2-1》について
(ア)甲1-4発明
甲1-4の[請求項1]、[請求項2]、段落[0001]、[0009]、[0017]、[0025]、[0026]、[0030]、[0036]、[0037]及び[0052]の記載を踏まえると、甲1-4には、以下の甲1-4発明が記載されている。
《甲1-4発明》
ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂フィルムと、前記透明樹脂フィルム上に形成された、透明樹脂と銀ナノワイヤを含む導電性繊維層とを備え、膜厚が300μm以下であり、表面抵抗率が、50Ω/□以下である透明導電膜。
(イ)甲1-4発明との対比、判断
本件発明1と甲1-4発明とを対比すると、甲1-4発明の「透明樹脂と銀ナノワイヤを含む導電性繊維層」、「透明導電膜」は、各々、本件発明1の「銀を主成分とする透明導電層」、「導電性フィルム」に相当する。
また、甲1-4発明の「ポリエチレンテレフタレート等の透明樹脂フィルム」と、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」とは、「熱可塑性樹脂からなる基板」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲1-4発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点3》
「熱可塑性樹脂からなる基板」が、本件発明1では「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものであるのに対し、甲1-4発明では「透明」ではあるもの面方向リタデーション(R0値)が不明なものである点。

上記《相違点3》について検討する。
上記3.(3)ア.(イ)で示したように、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
一方、導電性フィルムの基材に、面方向リタデーションの値が小さいものを採用することが既に知られていた(例えば、甲1-1、甲1-2、甲2-4、甲2-5を参照)としても、甲1-4には、「透明樹脂フィルム」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることで、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていないし、甲1-1?甲1-3及び甲2-1?甲2-6にも記載や示唆がされていない。
ゆえに、甲1-4発明において、「透明樹脂フィルム」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いようとする動機はなく、また、面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることにより、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることも想起できないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲1-4発明と甲1-1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そして、本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えているから、上記と同様の理由により、甲1-4発明と甲1-1記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4も、本件発明1の発明特定事項の全てを発明特定事項とし、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項としているところ、上記3.(3)ア.(イ)及びイ.(イ)で示したように、本件発明1についての、甲1-1発明との《相違点1》及び甲-2発明との《相違点2》は、甲1-1?1-4及び甲2-1?2-6には記載や示唆がされていないことを踏まえると、本件発明4は、甲1-1発明または甲1-2発明または甲1-4発明と甲1-1記載事項及び周知技術とに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

エ.《理由2-2》について
(ア)甲2-1発明
甲2-1の【請求項1】、【請求項10】?【請求項12】、段落【0001】、【0003】、【0004】、【0010】及び【0037】の記載を踏まえると、甲2-1には、以下の甲2-1発明が記載されている。
《甲2-1発明》
ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シリコーン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリエーテルスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である透明性樹脂基材と、前記透明性樹脂基板上に形成された体積平均粒子径が1nm?2μmである純銀粒子の表面に界面活性剤が吸着された粉末を含む導電ペーストを用いて形成された幾何学パターンを備える、透明導電性フィルム。
(イ)甲2-1発明との対比、判断
本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明の「体積平均粒子径が1nm?2μmである純銀粒子の表面に界面活性剤が吸着された粉末を含む導電ペーストを用いて形成された幾何学パターン」、「透明導電性フィルム」は、各々、本件発明1の「銀を主成分とする透明導電層」、「導電性フィルム」に相当する。
また、甲2-1発明の「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、シリコーン樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリエーテルスルホン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種である透明性樹脂基材」と、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」とは、「熱可塑性樹脂からなる基板」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲2-1発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点4》
「熱可塑性樹脂からなる基板」が、本件発明1では「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものであるのに対し、甲2-1発明では「透明」ではあるもの面方向リタデーション(R0値)が不明なものである点。

上記《相違点4》について検討する。
上記3.(3)ア.(イ)で示したように、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
一方、導電性フィルムの基材に、面方向リタデーションの値が小さいものを採用することが既に知られていた(例えば、甲1-1、甲1-2、甲2-4、甲2-5を参照)としても、甲2-1には、「透明性樹脂基材」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることで、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていないし、甲1-1?甲1-4及び甲2-2?甲2-6にも記載や示唆がされていない。
ゆえに、甲2-1発明において、「透明樹脂フィルム」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いようとする動機はなく、また、面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることにより、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることも想起できないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲2-1発明、甲1-1?甲1-4及び甲2-2?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えている、本件発明3、4、10、11は、上記と同様の理由により、甲2-1発明、甲1-1?甲1-4及び甲2-2?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ.《理由2-3》について
(ア)甲2-2発明
甲2-2の請求の範囲の[1]、[6]、段落[0001]、[0015]、[0018]、[0021]、[0050]及び[0051]の記載を踏まえると、甲2-2には、以下の甲2-2発明が記載されている。
《甲2-2発明》
全光線透過率が80%以上である、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂などからなる基板と、前記基板上に形成され、直線状銀ナノワイヤを含む導電膜であって、該直線状銀ナノワイヤが互いに交点で接合して網目を形成している導電膜とを備える、フィルム。
(イ)甲2-2発明との対比、判断
本件発明1と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明の「直線状銀ナノワイヤを含む導電膜であって、該直線状銀ナノワイヤが互いに交点で接合して網目を形成している導電膜」、「フィルム」は、各々、本件発明1の「銀を主成分とする透明導電層」、「導電性フィルム」に相当する。
また、甲2-2発明の「全光線透過率が80%以上である、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、セルロース樹脂などからなる基板」と、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」とは、「熱可塑性樹脂からなる基板」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲2-2発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点5》
「熱可塑性樹脂からなる基板」が、本件発明1では「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものであるのに対し、甲2-1発明では「全光線透過率が80%以上」ではあるもの面方向リタデーション(R0値)が不明なものである点。

上記《相違点5》について検討する。
上記3.(3)ア.(イ)で示したように、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
一方、導電性フィルムの基材に、面方向リタデーションの値が小さいものを採用することが既に知られていた(例えば、甲1-1、甲1-2、甲2-4、甲2-5を参照)としても、甲2-2には、「透明性樹脂基材」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることで、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていないし、甲1-1?甲1-4、甲2-1及び甲2-3?甲2-6にも記載や示唆がされていない。
ゆえに、甲2-2発明において、「基板」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いようとする動機はなく、また、面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることにより、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることも想起できないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲2-2発明、甲1-1?甲1-4、甲2-1及び甲2-3?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えている、本件発明3、4、10、11は、上記と同様の理由により、甲2-2発明、甲1-1?甲1-4、甲2-1及び甲2-3?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

カ.《理由2-4》について
(ア)甲2-3発明
甲2-3の【請求項1】、【請求項4】段落【0001】、【0021】、【0033】及び【0044】?【0046】の記載を踏まえると、甲2-3には、以下の甲2-3発明が記載されている。
《甲2-3発明》
アセテート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂などの有機材料の基材と、前記基材上に形成され、銀ナノワイヤとガラス転移温度(Tg)が0?250℃のバインダー樹脂とを含有する導電性ペーストを印刷したものとを備える導電パターン。
(イ)甲2-3発明との対比、判断
本件発明1と甲2-3発明とを対比すると、甲2-3発明の「銀ナノワイヤとガラス転移温度(Tg)が0?250℃のバインダー樹脂とを含有する導電性ペーストを印刷したもの」、「導電パターン」は、各々、本件発明1の「銀を主成分とする透明導電層」、「導電性フィルム」に相当する。
また、甲2-3発明の「アセテート系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂などの有機材料の基材」と、本件発明1の「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板」とは、「熱可塑性樹脂からなる基板」という限りにおいて一致する。
そして、本件発明1と甲2-3発明とは、少なくとも、以下の点で相違する。
《相違点6》
「熱可塑性樹脂からなる基板」が、本件発明1では「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものであるのに対し、甲2-1発明では面方向リタデーション(R0値)が不明なものである点。

上記《相違点6》について検討する。
上記3.(3)ア.(イ)で示したように、本件発明1は、本件発明1特定事項により、【0010】及び【0011】に記載された作用効果が奏され、段落【0007】に記載された従来のITO導電膜や銀薄膜を用いた透明導電性フィルムの課題を解決したものである。
一方、導電性フィルムの基材に、面方向リタデーションの値が小さいものを採用することが既に知られていた(例えば、甲1-1、甲1-2、甲2-4、甲2-5を参照)としても、甲2-3には、「有機材料の基材」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることで、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることについては、記載や示唆はされていないし、甲1-1?甲1-4、甲2-1、甲2-2及び甲2-4?甲2-6にも記載や示唆がされていない。
ゆえに、甲2-3発明において、「有機材料の基材」として、「面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いようとする動機はなく、また、面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす」ものを用いることにより、本件発明1作用効果と同様の作用効果が奏されることも想起できないといわざるを得ない。
したがって、本件発明1は、甲2-3発明、甲1-1?甲1-4、甲2-1、甲2-2及び甲2-4?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明1の発明特定事項の全てを含み、さらに、技術的な限定を加える事項を発明特定事項として備えている、本件発明3、4、10、11は、上記と同様の理由により、甲2-3発明、甲1-1?甲1-4、甲2-1、甲2-2及び甲2-4?2-6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4)小括
以上のとおり、本件発明1?4、10,11に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当せず、また、同法第29条第2項の規定に違反してされたものではないから、同法第113条第2号の規定に該当することを理由に取り消されるべきものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由によっては、本件発明1?4、10、11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1?4、10、11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板と、
前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備え、
前記透明導電層は、膜厚が1?30nmであり、シート抵抗が0.0001?50Ω/□である
導電性フィルム。
【請求項2】
前記透明導電層の厚さが1nm以上20nm以下であり、全光線透過率が80%以上である請求項1に記載の導電性フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、セルロースアシレート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から選ばれる少なくともいずれか一つである請求項1又は2に記載の導電性フィルム。
【請求項4】
前記導電性フィルムが幅手方向の寸法が0.3m以上、長手方向の寸法が200m以上であり、長手方向に巻回されたロール状である請求項1?3のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
【請求項5】
面方向リタデーション(R0値)が、+50nm≧R0≧-50nmを満たす熱可塑性樹脂からなる基板と、
前記基板上に形成された銀を主成分とする透明導電層とを備え、
前記透明導電層が、窒素含有層に隣接して設けられている導電性フィルム。
【請求項6】
前記窒素含有層は、分子量Mと有効非共有電子対の数nとの関係が、2.0×10^(-3)≦[n/M]を満たす化合物を含む請求項5に記載の導電性フィルム。
【請求項7】
前記窒素含有層は、一般式(1)で示される化合物を含む請求項5に記載の導電性フィルム。

[一般式(1)の式中、E101?E108は、各々-C(R12)=又は-N=を表し、E101?E108のうち少なくとも1つは-N=である。また、一般式(1)中のR11、及び上記R12は水素原子又は置換基を表す。]
【請求項8】
前記窒素含有層は、一般式(5)で示される化合物を含む請求項5に記載の導電性フィルム。

[一般式(5)の式中、E501及びE502のうちの少なくとも1つは窒素原子であり、E511?E515のうちの少なくとも1つは窒素原子であり、E521?E525のうちの少なくとも1つは窒素原子である。またR51は置換基を表す。]
【請求項9】
前記窒素含有層は、一般式(6)で示される化合物を含む請求項5に記載の導電性フィルム。

[一般式(6)の式中、E601?E612は、各々-C(R61)=又は-N=を表し、R61は水素原子又は置換基を表す。またAr61は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。]
【請求項10】
請求項1?9のいずれか1項に記載の導電性フィルムを電極として備えるタッチパネル。
【請求項11】
請求項10に記載のタッチパネルと、前記タッチパネルに重ねて配置された表示パネルを備える表示装置。
【請求項12】
前記透明導電層の厚さが1nm以上20nm以下であり、全光線透過率が80%以上である請求項5に記載の導電性フィルム。
【請求項13】
前記熱可塑性樹脂が、セルロースアシレート樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、及び(メタ)アクリル樹脂から選ばれる少なくともいずれか一つである請求項5又は12に記載の導電性フィルム。
【請求項14】
前記導電性フィルムが幅手方向の寸法が0.3m以上、長手方向の寸法が200m以上であり、長手方向に巻回されたロール状である請求項5,12,13のいずれか1項に記載の導電性フィルム。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-09-28 
出願番号 特願2012-200484(P2012-200484)
審決分類 P 1 652・ 121- YAA (B32B)
P 1 652・ 113- YAA (B32B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 横島 隆裕  
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 井上 茂夫
渡邊 豊英
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5928268号(P5928268)
権利者 コニカミノルタ株式会社
発明の名称 導電性フィルム、タッチパネル、及び、表示装置  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  
代理人 特許業務法人信友国際特許事務所  
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