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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C08L 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C08L 審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 C08L 審判 全部申し立て 2項進歩性 C08L 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 C08L 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 C08L 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:857 C08L |
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管理番号 | 1334365 |
異議申立番号 | 異議2017-700188 |
総通号数 | 216 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-12-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-02-27 |
確定日 | 2017-10-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第5979860号発明「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5979860号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、〔2?5〕、6、7、8について訂正することを認める。 特許第5979860号の請求項2ないし8に係る特許を維持する。 特許第5979860号の請求項1に係る特許についての申立を却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5979860号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、平成23年12月8日に特許出願され、平成28年8月5日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、特許異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人」という。)により平成29年2月27日(受理日、同年2月28日)に特許異議申立書(以下、「申立書」という。)が提出され、当審において同年5月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年7月24日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正の請求」という。)があった。 なお、申立人に対する訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)に対しては、申立人からの応答はなかった。 第2 訂正の適否についての判断 1.本件訂正の内容 本件訂正における請求の趣旨は、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1ないし8について訂正することを求める、というものである。 (1)訂正事項1 請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 請求項2における 「前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、請求項1に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する。 (3)訂正事項3 請求項3における 「前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、請求項1又は2に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有し、 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する (4)訂正事項4 請求項4における 「前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、 「前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項2又は3に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」に訂正する。 (5)訂正事項5 請求項5における 「ペレット長が5?30mmである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」を、 「ペレット長が5?30mmである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」に訂正する。 (6)訂正事項6 請求項6における 「請求項1乃至5のいずれかに一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。」を、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。」に訂正する。 (7)訂正事項7 請求項7における 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、 成形品の外観安定性を向上させる方法。」を、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。」に訂正する。 (8)訂正事項8 請求項8における 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」を、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」に訂正する。 (9)訂正事項9 明細書の段落【0014】における 「〔1〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔2〕 前記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である、前記〔1〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔3〕 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔4〕 前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔5〕 ペレット長が5?30mmである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔6〕 前記〔1〕乃至〔5〕のいずれかに一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。 〔7〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、 成形品の外観安定性を向上させる方法。 〔8〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1)(前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」を、 「〔1〕(削除) 〔2〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔3〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有し、 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔4〕 前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔5〕 ペレット長が5?30mmである、前記[2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔6〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。 〔7〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。 〔8〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」に訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし6は、請求項2ないし6が、訂正の請求の対象である請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する関係にあるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。 したがって、訂正事項1ないし6についての訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」ごとにされたものである。 (2)訂正事項1についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (3)訂正事項2についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項2は、 (i)請求項1を引用する請求項2について、引用関係を解消して独立形式に改めると共に、 (ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」 に限定するものである。 そして、(i)は、請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 イ 新規事項の有無 訂正後の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」及び「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」は、訂正前の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」に包含されるものである。 また、本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、・・・ラクタム等を共重合成分として用いることができる。」、【0033】には、「前記ラクタムとしては、例えば、・・・カプロラクタム・・・等が挙げられる。」と記載され、実施例1?8及び10?11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1?8のポリアミドを使用したペレットの製造例が、実施例9には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例9のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。 よって、訂正事項1による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項2は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正後の請求項2を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 (4)訂正事項3についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、 (i)請求項1又は2を引用する訂正前の請求項3を請求項2を引用するものに限定するとともに、引用関係を解消して独立形式に改め、 (ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」 に限定するものである。 そして、(i)は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 イ 新規事項の有無 訂正後の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」は、訂正前の「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」に包含されるものであるし、本件特許明細書の実施例1?8及び10?11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1?8のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。 よって、訂正事項3による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項3は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 訂正後の請求項3を引用する訂正後の請求項4及び5についての訂正も同様である。 (5)訂正事項4についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項4は、訂正事項1に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。 イ 新規事項の有無 訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項4は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 訂正後の請求項4を引用する訂正後の請求項5についての訂正も同様である。 (6)訂正事項5についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項5は、訂正事項1に係る訂正に伴って、従属項である請求項が引用する項番号の整合を図るために訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明をするものであるから、新規事項の追加に該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合する。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項5は、明瞭でない記載の釈明をするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。 (7)訂正事項6についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項6は、 (i)請求項1ないし5を引用する訂正前の請求項6を請求項2を引用するものに限定するとともに、引用関係を解消して独立形式に改め、 (ii)訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」(ただし、訂正前請求項2は引用形式であるためそこには直接の記載はなく、引用元である請求項1に記載されている。)である、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」 に限定するものである。 そして、(i)は、特許請求の範囲の減縮及び請求項間の引用関係の解消を目的とするものであり、(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する請求項間の引用関係の解消、及び、同第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項6による訂正は、(3)イで記載したとおりの理由によって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項6は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定するものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (8)訂正事項7についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項7は、 (i)訂正前の請求項7の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」について、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」と特定されていたのを、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」 に限定し、更に、 (ii)式(1)で示される(Y)について、「-0.3≦(Y)≦0.8」と特定されていたのを、 「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲に限定するものである。 そして、(i)及び(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項7の(Y)の値の訂正に関し、本件特許の願書に添付した明細書(本件特許明細書)の【0024】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は、・・・好ましくは0.05≦(Y)≦0.8・・・の範囲である。」と記載されている。 また、(A)のポリアミドの種類についての訂正に関し、本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、・・・ラクタム等を共重合成分として用いることができる。」、【0033】には、「前記ラクタムとしては、例えば、・・・カプロラクタム・・・等が挙げられる。」と記載され、実施例1?8及び10?11には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例1?8のポリアミドを使用したペレットの製造例が、実施例9には、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」に相当する製造例9のポリアミドを使用したペレットの製造例が記載されている。 よって、訂正事項7による訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項7は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定し、(Y)の値をより狭い範囲に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (9)訂正事項8についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項8は、 (i)訂正前の請求項8の発明特定事項である「(A)」の「ポリアミド」について、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」と特定されていたのを、 「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」 に限定し、更に、 (ii)式(1)で示される(Y)について、「-0.3≦(Y)≦0.8」と特定されていたのを、 「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲に限定するものである。 そして、(i)及び(ii)は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、訂正事項8による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項8による訂正は、(8)イで記載したとおりの理由によって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項8は、(A)のポリアミドの種類を明細書に記載されていたものに限定し、(Y)の値をより狭い範囲に限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 (10)訂正事項9についての訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正の目的について 訂正事項9は、上記訂正事項1?8に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 訂正事項9は、上記訂正事項1?8に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1ないし8が、それぞれ、願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項を追加するものではないことは(1)?(9)で述べた通りであるから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項9は、上記訂正事項1?7に係る訂正に伴い訂正される特許請求の範囲の記載と明細書の記載との整合を図るための訂正であって、訂正事項1?8は、新規事項を追加するものではないから、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 エ 願書に添付した明細書に訂正と関係する請求項についての説明 訂正事項9は、特許請求の範囲に記載した全ての請求項に関係しており、本件訂正では、実質的に全ての請求項について訂正を請求している。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に適合するものである。 (11)まとめ 以上のとおり、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項ごとにされたものであるし、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第4項ないし第6項に適合するものであるから、本件訂正を認める。 なお、特許権者は、本件訂正請求において、訂正前の請求項2、3及び6について、独立形式とする訂正(訂正事項2、3及び6)を、請求項4及び5について、請求項1との間の引用関係を解消する訂正(訂正事項4及び5)を請求するとともに、本訂正請求において「引用関係の解消の求め」を要求している。そして、本件訂正は認められるので、訂正後の請求項2及び3とこれらに従属する請求項4及び5のみが、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項を構成することになる。 第3 訂正後の本件発明 本件特許の請求項1ないし8に係る発明(それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明8」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、本件訂正の請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 削除 【請求項2】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・ (1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項3】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有し、 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項4】 前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項2又は3に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項5】 ペレット長が5?30mmである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項6】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。 【請求項7】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。 【請求項8】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。」 以下、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」を、「(A)のポリアミド」と、 「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5」を、「(x)の条件」と、 「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8」(合議体注;式(1)は省略する。)を「式(Y)の条件」と、 「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材」を、「(B)の繊維状強化材」ともいう。 第4 取消理由の概要 当審において平成29年5月22日付けの取消理由通知書で通知した取消理由の概要は次のとおりである。 1.本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 2.本件特許は、発明の詳細な説明の記載について下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 3.本件特許の請求項1、3?5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるし、本件特許の請求項6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲第1号証に記載された発明に甲3或いは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、本件特許の請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、或いは、甲第1号証に記載された発明及び甲第4号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、いずれも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3?8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 甲第1号証:特開2002-234999号公報 甲第2号証:申立人従業員高村元が平成29年2月16日付けで作成した「実験報告書」 甲第3号証:福本修編、「ポリアミド樹脂ハンドブック」、初版、日刊工業新聞社、昭和63年1月30日発行、第142?143頁 甲第4号証:平井利昌監修「エンジニアリングプラスチック」(株)プラスチックス・エージ(1990年6月10日第3版発行)、第272頁 甲第5号証:特開2005-325191号公報 甲第6号証:社団法人日本分析化学会 高分子分析研究懇談会編「新版 高分子分析ハンドブック」(株)紀伊國屋書店(1995年1月12日初版第1刷発行)、222頁 甲第7号証:フィラー研究会編「複合材料とフィラー」(株)シーエムシー出版(2004年4月27日 普及版第1刷発行)、第127?128頁 (以下、それぞれ「甲1」?「甲7」という。いずれも申立人が提示した甲各号証である。) 第5 当審の判断 第5-1 取消理由1(特許法第36条第6項第1号)について (1)本件発明が解決しようとする課題について 本件訂正後の特許明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明の【0010】?【0012】によれば、本件発明2?6が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与える長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを提供すること」であり、本件発明7が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、長繊維強化ポリアミド樹脂成形品の外観安定性を向上させる方法を提供すること」であり、本件発明8が解決しようとする課題は、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂成形品を提供すること」であると認められる。(以下、本件発明2ないし8が解決しようとする課題をまとめて、「本件発明の課題」ともいう。) (2)取消理由1の概略 訂正前の本件発明1?8に対して通知された取消理由1は、具体的には、概略以下のとおりである。 本件特許明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲の場合についてまで、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性及び耐衝撃特性に優れた成形品を得ることができることは理解できない。 本件特許明細書の【0021】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることは記載されるが、そのことから、「式(Y)の条件」が-0.3≦(Y)<0.05の範囲にあるポリアミドが、訂正前の本件発明の課題を解決できることを当業者に認識できるとはいえないし、その点が、本件特許の出願時の技術常識であるともいえない。してみると、「式(Y)の条件」として、-0.3≦(Y)<0.05の範囲を包含する訂正前の本件発明1、3ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記本件発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものである。 また、本件特許明細書の発明の詳細な説明からは、当業者は、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」であるか「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」以外である場合についてまでは、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性及び耐衝撃特性に優れた成形品を得ることができることは理解できない。 本件特許明細書の【0025】には、「本実施形態の目的(合議体注;これは、本件特許明細書の【0012】に記載されるとおり、「過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供すること」と認める。)を損なわない範囲で、アジピン酸、イソフタル酸以外の種々のジカルボン酸成分や、ヘキサメチレンジアミン以外の種々のジアミン、さらには、アミノ酸、ラクタム等の種々の共重合成分をその構成成分として用いることができる。」との一般的な記載がされている。 しかしながら、ポリアミドの構成成分の違いにより、得られるポリアミドの融点や固化温度、結晶性といった物性が変化することは本件特許出願時の技術常識であり、物性が変化すれば、当然、成形品の表面外観安定性や耐衝撃性等の機械的強度も異なってくるから、このような記載からは、共重合成分やその共重合割合についての特定がなく、任意の共重合成分が任意の割合で共重合されていてもよいポリアミドであり、かつ、過酷な成形条件下において成形した場合においても成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与えることができる長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供することが可能なものを、当業者は理解することができない。 してみると、ポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」であるか「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」以外である場合を包含する訂正前の本件発明1ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、上記本件特許発明の課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えて、特許を請求するものである。 (3)取消理由1についての判断 訂正により、本件発明2ないし8においては、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「式(Y)の条件」が「0.05≦(Y)≦0.8」であることが特定され、また、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明2、6及び7)、あるいは、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明3ないし5及び8)と特定された。 そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、(Y)が「全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標」であることが記載されており(【0021】)、また、成形品の製造に使用される長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例1?8、10及び11)または「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例9)であって、かつ、(Y)が0.15?0.57の範囲内のものが、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた成形品を与えることができることが具体的に示されている。 そうすると、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、0.05≦(Y)≦0.8の範囲にあるポリアミドが、本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。 よって、本件発明2ないし8は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件特許発明の課題が解決されると当業者が認識できる範囲内のものであるといえ、本件発明2ないし8は、発明の詳細な説明に記載したものといえる。 第5-2 取消理由2(特許法第36条第4項第1号)について (1)取消理由2の概略 訂正前の本件発明1ないし8に対して通知された取消理由2は、具体的には、概略以下のとおりである。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、「(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」で定義される(EG)の値の具体的な調整方法については記載されていないし、その調整方法が、本件特許出願時、当業者に技術常識として知られていたともいえない。 そうすると、発明の詳細な説明の記載からは、当業者は、(EG)の値に基づいて「(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]」((x)はポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率)の式により算出されるものとして定義される(Y)の値の調整方法について、当業者は理解できないし、それが本件特許出願時の技術常識として知られていたともいえない。 そうすると、本件発明1ないし8に特定されるポリアミドのうち実施例で具体的に製造された特定のポリアミド以外のものについては、どのようにすれば本件発明1?8で特定される、「-0.3≦(Y)≦0.8」を満たすポリアミドを製造できるのかを、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から当業者が理解できるとはいえない。 よって、発明の詳細な説明は、本件発明1?8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。 (2)取消理由1についての判断 訂正により、本件発明2ないし8の「(A)ポリアミド」は、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(本件発明2、6及び7)、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる 単位と、からなるポリアミド」(本件発明3ないし5及び8)に訂正されたところ、 本件発明2ないし8では、この特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、かつ、 「下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」 であるポリアミドが発明特定事項となっている。 (なお、(1)の式中の(x)は、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率」と定義されている。) そこで、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者が、本件発明2ないし8で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすもの全体について製造でき、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明2ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるかについて検討する。 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。(下線は、当審で付した。) 「【0021】 前記式(1)において、(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標である(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)。 【0022】 (A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)と、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)には相関性があり、すなわちブロック化比率(Y)は、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理論値(x=EG)に対して、どれだけブロック化に移行、すなわちどれだけポリアミド中の6I鎖単位の比率が高くなっており、イソフタル酸末端基比率が高くなっているかを示す指標でもある。 【0023】 従って、上記式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる。・・・ 【0024】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は、-0.3≦(Y)≦0.8であり、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8、より好ましくは0.05≦(Y)≦0.7、さらに好ましくは0.1≦(Y)≦0.6の範囲である。 イソフタル酸成分比率(x)を上記範囲内とし、かつ前記(Y)の範囲を-0.3≦(Y)≦0.8とすることにより、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性、耐衝撃特性が優れたものとなる。」 「【0039】 ((A)ポリアミドの製造方法) ・・・(A)ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。 全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。 上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。 【0040】 重合形態としては、特に限定されず・・・。 また、重合装置も特に限定されず・・・。 【0041】 上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。 バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。 重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。 例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110?200℃の温度下で攪拌し、約60?90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。 その後、内部圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。 その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。 さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。 【0042】 ニーダー等の押出型反応機を用いる場合・・・ 【0043】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミド(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることが好ましい。 触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず・・・」 また、【0117】の表1の実施例1?11には、ポリアミドが、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例1?8、10及び11)であるか、「(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」(実施例9)のいずれかである「(A)のポリアミド」についての結果として、以下の記載がある。 「 」 これらの本件特許明細書の記載によれば、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす「(A)のポリアミド」に関し、本件特許明細書の【0023】に、「式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる」と記載されているから、「(Y)」は、「(x)」と、「(EG)」が決まれば、一義的に定まる値であると言える。 そして、「(x)」については、【0039】に、「全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。」と記載されているし、本件特許明細書の表1の実施例1?4等からもその点が読み取れるから、本件特許明細書の記載からは、カルボン酸成分原料中のイソフタル酸成分の仕込み量を高めることで、全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を高めた(A)のポリアミドを製造できることが理解できる。 ここで、明細書の【0021】には、「(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)」であると記載されており、また、【0039】?【0043】には、「(Y)の制御方法」に関し、「(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要」(【0039】)であり、より具体的には、重合系内で、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110?200℃の温度下で攪拌し、約60?90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮し、その後、内部圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続け、その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることにより製造できる旨の記載がされている(【0041】;以下、【0041】に記載の製造方法を「段落0041の製造方法」という。)。 そして、本件特許明細書には、具体的な実験例として、特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、上記「段落0041の製造方法」に合致する製造例1?9の重合方法によって、(Y)の値が、0.15?0.57の範囲のポリアミドA1?A9が得られたことが具体的に記載されており(実施例1?11)、一方、「段落0041の製造方法」に合致しない製造例12?14の重合方法によって得られたポリアミドA12?14では、本件発明の(Y)の範囲を満たさないことが確認されている(比較例3?5)。 また、(Y)の値を算出するための(EG)は、「イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量」であり、ポリアミド共重合体の末端の調整により変化する値であるといえるところ、ポリアミド共重合体の末端調整のための方法として、末端調整剤の存在下でモノマーを重合させることは周知慣用技術である(例えば、特開2006-124669号公報(特許権者の意見書に添付された参考文献1)の【0035】、【0037】、【0039】、特開2002-194210号公報(同参考文献2)の【0022】、特開平11-92657号公報(同参考文献3)の【0009】、【0010】、特開平3-76755号公報(同参考文献4)の3頁右下欄9?15行、特開2011-219635号公報(同参考文献5)の【0019】、【0020】)し、その際、末端調整剤としてアジピン酸を用いることも周知慣用技術といえる(例えば、参考文献1の【0039】、参考文献3の【0010】、参考文献5の【0020】)。 そして、参考文献2の【0022】の「末端調整剤として…二塩基酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大する。」との記載から、末端調整剤として、ジカルボン酸を用いるとアミノ末端基が減少するとともにカルボキシル末端基が増大することが、本件特許の出願時の技術常識と理解でき、これに加え、本件特許明細書の【表1】から、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例1のポリアミド(A1)(実施例1)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例5のポリアミド(A5)(実施例5)との対比や、過剰にアジピン酸を添加して重合した製造例3のポリアミド(A3)(実施例3)と過剰のアジピン酸を添加せずに重合した製造例6のポリアミド(A6)(実施例6)との対比から、アジピン酸を過剰に用いると、(x)の値が同じ場合であっても、(EG)を減少させ、(Y)の値を減少させることが可能であることが理解できる。 そうすると、末端調整剤としてアジピン酸を用いることが周知慣用技術であるとの本件特許出願時の技術常識に照らせば、「段落0041の製造方法」についての説明の記載、及び、過剰のアジピン酸の添加条件を変化させて得られた、(Y)の値が、0.15?0.57の範囲のポリアミドA1?A9の具体的な製造例の記載をあわせみた当業者は、「0.05≦(Y)≦0.8」を満たす、上記特定の組成からなる(A)のポリアミドを、過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。 よって、本件特許の出願時の技術常識を参酌して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、本件発明2ないし8で特定される上記特定の組成からなる「(A)ポリアミド」であって、「0.05≦(Y)≦0.8」の範囲を満たすものについて過度の試行錯誤を伴わずに製造できるといえる。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明2ないし8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。 第5-3 取消理由3(特許法第29条第2項)について 1.取消理由3の概要 訂正前の本件発明1ないし8に対して通知された取消理由3は、具体的には、概略以下のとおりである。 訂正前の本件発明1、3ないし5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の本件発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明に甲3あるいは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるし、訂正前の本件発明8は、甲に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 1.甲1の記載等 (1)甲1の記載 甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、合議体が付した。 「【請求項1】 少なくとも次の成分(A)、(B)から構成される柱状の成形材料であって、成分(B)が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じであることを特徴とする成形材料。 成分(A):少なくとも、 (a1)ヘキサメチレンジアミンアジパミド単位が60?90重量%、 (a2)ヘキサメチレンイソフタルアミド単位が1?30重量%、及び (a3)カプロアミド単位が0?10重量%、 からなるポリアミド樹脂30?95重量% 成分(B):強化繊維束5?70重量% ・・・ 【請求項7】 長さが1?50mmの範囲内である請求項1?6のいずれかに記載の成形材料。 【請求項8】 成形材料の形態が、長繊維ペレットである請求項1?7のいずれかに記載の成形材料。 ・・・ 【請求項14】 請求項1?13のいずれかに記載の成形材料を成形してなる成形品。 【請求項15】 少なくとも次の第1、第2工程からなる請求項1?13のいずれかに記載の成形材料の製造方法。 第1工程:成分(A)を溶融させた後、その中に少なくとも連続した成分(B)を通過せしめ、連続したストランドを得るストランド化工程 第2工程:連続したストランドを冷却した後、切断して柱状の成形材料を得る切断工程 【請求項16】 第1工程の前に、次の予備工程を有する請求項15に記載の成形材料の製造方法。 予備工程:成分(C)を溶融させた後、成分(B)中に含浸させる含浸工程 ・・・」 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、長繊維で強化された熱可塑性樹脂からなる成形材料に関する。さらに詳しくは、成形性を損なうことなく、成形品とした場合に機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れた成形材料およびその製造方法、ならびにこれから得られる成形品に関するものである。 「【0019】 また、強化繊維の平均繊維径は、得られる成形品の機械特性と表面外観の観点から、1?20μmの範囲であることが好ましく、2?12μmの範囲であることがより好ましく、3?10μmの範囲であることが更に好ましい。」 「【0061】 【実施例】以下に実施例および比較例を示す・・・ [成分(A)の特性評価方法] (1)相対粘度(98%硫酸法)ηr ポリマー1gを98%硫酸100mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃にて測定した。 [熱可塑性樹脂組成物の特性評価方法] ・・・ (4)表面外観 上記で成形した・・・薄肉平板成形品の表面を目視観察し、強化繊維の分散性不良欠陥(浮き、膨れ)の数を測定した。 ・・・ 【0065】 ・・・ 成分(A)ポリアミド樹脂 本発明に用いた成分(A)は以下の通り調製した。また得られた各種の成分(A)の相対粘度(98%硫酸法)ηrについて、表1に記載した。 【0066】 【表1】 【0067】A-1: ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩およびε-カプロラクタムをそれぞれ表1に記載の重量比で投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm^(2)に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。 【0068】A-2、3: 表1に示す共重合比率に従い、上記A-1と全く同様の方法で調整した。 【0069】A-4:ポリアミド6ホモポリマー 東レ(株)製 ナイロン樹脂 (ηr=2.35) A-5: 上記A-1と全く同様の方法で、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩を重合し、ポリアミド66ホモポリマーを得た。 成分(B)強化繊維束 B-1:東レ(株)製トレカ T700SC-12K 成分(C)フェノール系重合体 ・・・ 成分(D)導電性付与剤 ・・・ 成分(E)難燃剤 ・・・ (実施例1?5、比較例1?2)あらかじめ、成分(A)、及び必要に応じ、成分(C)、(D)、(E)の一部または全量を2軸押出機にてそれぞれコンパウンドしマスターペレットとした。2軸押出機は、日本製鋼所(株)製TEX30α型2軸押出機を使用し、成分(A)の樹脂成分をメインフィーダーより供給し、その他成分をサイドフィーダーから供給した。シリンダー及びダイス温度:260?290℃、スクリュー回転数:250rpmに設定した。また必要に応じ、ベント部を設けた。 【0070】長繊維ペレットの製造は以下に示す方法で行った。 【0071】成分(B)の連続した繊維束を200℃に加熱しながら開繊させ、十分溶融させた成分(C)の一部または全量をギアポンプにて計量し、コーターを用いて成分(B)の連続繊維に塗布した。さらに、その繊維束を、180℃に加熱された一直線上に上下交互に配置された10個のロール(φ50mm)間に通過させ、成分(C)を成分(B)に十分含浸させた。 【0072】続いて、成分(A)、及びまたは得られたマスターペレットの一部または全量を単軸押出機にて、その先端に取り付けたクロスヘッドダイ中に十分混練された状態で押し出すと同時に、上記操作を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A)及びまたはマスターペレットの成分を成分(B)の繊維表面に被覆した。 【0073】上記記載の方法により得られたストランドを、冷却後、カッターにて7mmの長さに切断して芯鞘構造の柱状ペレットを得た。さらに、筐体成形用の樹脂ペレットとしての組成及び添加量が表2記載の通りとなるよう、得られたペレットに成分(A)及びまたはマスターペレットをブレンドし成形材料とした。 【0074】上記の長繊維ペレットの製造は連続してオンラインで行った。 【0075】得られた成形材料を80℃、5時間以上真空下で乾燥させた後、樹脂組成物の特性評価に供した。 【0076】得られた成形材料を、日本製鋼所(株)製J150EII-P型射出成形機を用いて、各試験片用の金型を用いて成形を行った。条件はいずれもシリンダー温度:280℃、金型温度:70℃、冷却時間30秒、射出速度70%とした。成形後、真空下で80℃、12時間の乾燥を行い、かつデシケーター中で室温、3時間保管した乾燥状態の試験片について評価を行った。以上の実施例1?5、比較例1?2の組成および評価結果を、表2にまとめた。 【0077】 【表2】 【0078】表2の実施例及び比較例より以下のことが明らかである。 【0079】実施例1?5は全て、優れた成形性と高い曲げ弾性率(d)及びアイゾット衝撃強度を兼ね備えていることがわかる。 【0080】実施例1?3と、比較例1、2との対比より、本発明の成形材料からなる成形品が曲げ弾性率(w)、表面外観及び寸法安定性に優れていることが明らかである。」 (2)甲1-1?甲1-3発明 甲1の【0001】の記載によれば、甲1は、長繊維で強化された熱可塑性樹脂からなる成形材料及びその製造方法、成形品に関するものである。 甲1の【0066】、【0067】及び【0070】?【0073】の記載によれば、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットに関し、甲1には、表1のA-1或いはA-3の欄に記載の組成からなるポリアミド原料からの、所定の相対粘度(98%硫酸法)ηrを有するポリアミド成分(A-1)或いは(A-3)(【0066】)と、強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K(【0068】)とを含むペレットが記載されている。 そうすると、甲1には、次の2つの長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの発明が記載されていると認められる。 <甲1-1(A1)発明> 「少なくとも次の成分(A-1)、(B)から構成される柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、 (a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び (a3)ε-カプロラクタム8重量%、 からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂、 成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」 <甲1-1(A3)発明;> 「少なくとも次の成分(A-3)、(B)から構成される柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.35の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1’)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩90重量%、 (a2’)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩10重量% からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂、 成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」 また、甲1には、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法に関し、【0066】の表1のA-1又はA-3の欄に記載の組成からなるポリアミド原料から【0067】に記載のポリアミドの製造工程により、成分(A-1)或いは(A-3)のポリアミド樹脂を製造し、次いで、【0070】?【0073】に記載の長繊維ペレットの製造工程に従い、上記ポリアミド樹脂と、強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kとを含む、長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造したことが記載されている。 そうすると、甲1には、次の2つの長繊維ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法の発明が記載されていると認められる。 <甲1-2(A1)発明> 「甲1-1(A1)発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 (A1)原料から、以下のポリアミドの製造工程により、成分(A-1)のポリアミド樹脂を製造する工程、 成分(B)である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kの連続した繊維束を開繊させ、十分溶融させた成分(C)であるフェノール系重合体を塗布、含浸させる予備工程、 成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-1)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る工程、 得られたストランドを、冷却後、7mmの長さに切断して柱状ペレットを得る工程、 により、 柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造する方法。 ポリアミドの製造工程: 重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm^(2)に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」 <甲1-2(A3)発明> 「甲1-1(A3)発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 (A1)原料から、以下のポリアミドの製造工程により、成分(A-3)のポリアミド樹脂を製造する工程、 成分(B)である東レ(株)製トレカ T700SC-12Kの連続した繊維束を開繊させ、十分溶融させた成分(C)であるフェノール系重合体を塗布、含浸させる予備工程、 成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-3)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る工程、 得られたストランドを、冷却後、7mmの長さに切断して柱状ペレットを得る工程、 により、 柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造する方法。 ポリアミドの製造工程: 重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm^(2)に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」 さらに、甲1の表2に、実施例1として、成分(A)のポリアミド樹脂として(A-1)を77重量%、及び、成分(B)の強化繊維として、炭素繊維である(B-1)を20重量%含む成形品が、また、実施例3として、成分(A)のポリアミド樹脂として(A-3)を77重量%、及び、成分(B)の強化繊維として、炭素繊維である(B-1)を20重量%含む成形品が記載され、表2によれば、該成形品は、【0061】の「(4)表面外観」の評価の記載に従い、成形品の表面を目視観察し、強化繊維の分散性不良欠陥の数を測定して評価したところ、表面外観が○○(特に優れる)或いは○(優れる)との評価であった。 そして、甲1-1(A1)発明或いは甲1-1(A3)発明の認定において指摘した甲1の記載を踏まえれば、甲1には、次の成形品の発明が記載されていると認められる。 <甲1-3(A1)発明> 「少なくとも次の成分(A-1)、(B) 成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、 (a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び (a3)ε-カプロラクタム8重量%、 からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂 77重量%と、 成分(B):強化繊維である東レ(株)製トレカ T700SC-12K 20重量%と、 を、含み、成分(B)が成形品中に分散してなるポリアミド樹脂成形品。 」 <甲1-3(A3)発明> 「少なくとも次の成分(A-3)、(B) 成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、 (a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び (a3)ε-カプロラクタム8重量%、 からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂 77重量%と、 成分(B):強化繊維である東レ(株)製トレカ T700SC-12K 20重量%と、 を、含み、成分(B)が成形品中に分散してなるポリアミド樹脂成形品。」 2.対比及び判断 以下において、「甲1-1(A1)発明」と「甲1-1(A3)発明」をあわせて「甲1-1発明」と、「甲1-2(A1)発明」と「甲1-2(A3)発明」をあわせて「甲1-2発明」と、「甲1-3(A1)発明」と「甲1-3(A3)発明」をあわせて「甲1-3発明」という。 また、「甲1-2発明」における、「ポリアミドの製造工程:重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm^(2)に調節しながら最終到達温度は270℃とした。水浴中に吐出したポリマーをストランドカッターでペレタイズした。」は、以下、単に、「ポリアミドの製造工程:」とのみ記載し、以降の記載を省略する場合がある。 (1)本件発明2 ア 対比 本件発明2と甲1-1発明を対比する。 甲1-1(A1)発明における 「成分(A-1):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.30の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩76重量%、 (a2)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩16重量%、及び (a3)ε-カプロラクタム8重量%、 からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂」は、 そのポリアミド原料組成からみて、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、・・・(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当するし、 甲1-1(A3)発明における 「成分(A-3):相対粘度(98%硫酸法)ηr2.35の共重合ポリアミド樹脂であって、 (a1’)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の当モル塩90重量%、 (a2’)ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の当モル塩10重量% からなるポリアミド原料からのポリアミド樹脂」は、 そのポリアミド原料組成からみて、本件発明2における「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、を、含むポリアミド」であって、「当該(A)ポリアミドが、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド」である場合に相当する。 また、甲1-1発明における「成分(B):強化繊維束である東レ(株)製トレカ T700SC-12K」は、本件発明2における「(B)繊維状強化材」に相当する。 したがって、本件発明2と甲1-1発明は、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、 (B)繊維状強化材と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。」 で一致し、 以下の点で相違している。 <相違点1> (B)繊維状強化材について、本件発明2では、「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である」と特定されているのに対して、甲1-1発明では、かかる特定はなされていない点。 <相違点2> (A)のポリアミドについて、本件発明2では、「ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミドと、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2))」を満たすものであることが特定されている(つまり、第3で記載した「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであることが特定されている)のに対して、甲1-1発明では、かかる特定はなされておらず、(A)のポリアミドが、「(x)の条件」及び「式(Y)条件」を満たすものであるかは不明である点。 <相違点3> 長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含まれる(A)のポリアミドと(B)繊維状強化材の配合割合について、本件発明2では、(A)のポリアミドが「100質量部」、(B)繊維状強化材が、「100?250質量部」と特定されているのに対し、甲1-1発明では、配合割合が不明である点。 イ 判断 (ア)相違点1について 甲1の請求項8には、請求項1を引用しない形式で記載すると、 「少なくとも次の成分(A)、(B)から構成される柱状の長繊維ペレットである成形材料であって、成分(B)が軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット。 成分(A):少なくとも、 (a1)ヘキサメチレンジアミンアジパミド単位が60?90重量%、 (a2)ヘキサメチレンイソフタルアミド単位が1?30重量%、及び (a3)カプロアミド単位が0?10重量%、 からなるポリアミド樹脂30?95重量% 成分(B):強化繊維束5?70重量%」 が記載されているところ、甲1-1発明のペレットは、甲1の請求項8に特定される長繊維ペレットの具体的な態様の発明に相当するものである。 そして、請求項8では、長繊維ペレットに含まれる成分(B)について、「軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じである長繊維ペレット」と特定されているのであるから、請求項8に係る発明の長繊維ペレットの発明を具体化したものに相当する甲1-1発明の長繊維ペレットにおける成分(B)も、「軸心方向にほぼ平行に配列し、かつ成分(B)の長さが成形材料の長さと実質的に同じ」となっているものと認められる。 そうすると、相違点1は、実質的には相違点ではないし、仮に相違点であるとしても、甲1-1発明の長繊維ペレットに含まれる成分(B)を、相違点1に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。 (イ)相違点2について 甲2である申立人従業員高村元が平成29年2月16日付けで作成した「実験報告書」の表Cによれば、甲1-1発明の柱状の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含まれる共重合ポリアミド樹脂(A-1)に、(x)及び(Y)の数値が0.16及び-0.18であるものが、また、共重合ポリアミド樹脂(A-3)に、(x)及び(Y)の数値が0.09及び-0.09であるものが、それぞれ包含されていることは明らかであるが、これらは本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を満たしていない。 また、甲1に記載された発明が解決しようとする課題は、甲1の特許請求の範囲の記載及び【0007】の記載からみて、「成形する際の成形性を損なうことなく、成形品とした場合の機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れたポリアミド樹脂成形材料を提供すること」及び「機械特性(特に弾性率、衝撃強度)、吸湿時の機械特性、寸法安定性、表面外観に優れたポリアミド樹脂成成形品を提供すること」であると認められるところ、甲1には、当該課題の解決のために、ポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることについては記載されていないし、(Y)の値の算出のために使用される(EG)の値の算出についての記載もない。 そうすると、甲1の記載からは、甲1-1発明において、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成するポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは、動機付けられない。 一方、本件特許明細書の表1及び2の実施例及び比較例の記載によれば、本件発明2のように、ポリアミドとして、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットとすることで、この範囲外のポリアミドを使用する場合に比べて、本件特許明細書の【0074】で定義されるハイサイクル成形(低温金型を外観安定性使用した高温成形)の外観安定性(これは、外観安定性=(20?30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90?100ショットISO試験片のグロス平均値)で表される。)が優れたものとなることが理解でき、この点の効果は、甲1には記載も示唆もなく、甲1の記載からは当業者が予期し得ない効果である。 そうすると、甲1-1発明から、相違点2に係る構成を備えた本件発明2とすることが当業者にとって容易であるとはいえない。 (ウ)相違点3について (ア)で記載した甲1の請求項8には、長繊維(強化ポリアミド樹脂組成物)ペレット中の成分(A)及び(B)の配合割合は、成分(A)(ポリアミド樹脂)30?95重量%に対し、成分(B)(強化繊維束)5?70重量%とされており、これを、ポリアミド樹脂100質量部として換算すると、強化繊維束の配合量は「5?233質量部」(下限:100/95×5=5.2、上限:100/30×70=233)となることから、甲1-1発明における成分(A)と成分(B)の配合量について、甲1には、成分(A)100質量部に対し、成分(B)を5?233質量部とすることが記載されているといえ、甲1に記載される上記の範囲内で、適宜成分(A)と成分(B)の配合量を調整し、本件発明2で特定される配合量のペレットとすることは、当業者が容易になし得ることである。 (エ)本件発明2についての容易性について 上記のとおり、甲1-1発明のポリアミドを、相違点1及び3に係る本件発明2の構成を備えたものとすることについては当業者が容易になし得たことといえるが、相違点2に係る本件発明2の構成を備えたポリアミドとすることが当業者によって容易になし得たことであるとはいえない以上、他の相違点を備えたものとすることが容易であったとしても、本件発明2について、甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明3ないし5について 本件発明3は、本件発明2における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものであるし、また、本件発明4及び5は、本件発明2(又は3)を直接的又は間接的に引用するものであって、本件発明2(又は3)における「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものである。 そうすると、本件発明3ないし5は、甲1-1発明と、少なくとも、(1)アで記載した相違点2の点で相違している。 そして、相違点2についての判断は、(1)イで記載したとおりであって、本件発明3ないし5は甲1-1発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件発明6 ア 対比 本件発明6の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法においては、製造される対象となる「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」についての特定は、本件発明2の「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット」と実質的に同じであるから、製造されるペレットの特定に関しては、本件発明6と甲1-2発明との一致点は、(1)アで記載したと同様であり、相違点は、(1)アで記載したと同様の相違点1?3である。 また、本件発明6における、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの具体的な「製造工程」についての特定に関しては、甲1-2発明の予備工程や切断工程といった他の工程を含んでいてもよいものと認められるし、本件発明6で特定されている「ポリアミドを含浸する工程」と甲1-2発明で特定されている「ストランドを得る工程」は、いずれも、「ポリアミドで処理する工程」といえる。 そして、本件発明6と甲1-2発明とを、ペレットについての発明特定事項及びその製造工程についての発明特定事項の両者を含めて対比すると、両発明は、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、 (B)繊維状強化材と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維をポリアミドで処理する工程とを含む、 長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法を含浸する工程。」 で一致し、 (1)アで記載した相違点1?3及び下記の相違点4及び5で相違する。 <相違点4> ポリアミドを得る工程について、本件発明6では、「アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合」すると特定されているのに対し、甲1-2発明では、「重合缶内にポリアミド原料を投入し、投入した全原料と同量の純水を加え、重合缶内を充分に窒素置換した後、撹拌しながら加温を開始した。缶内圧力は最大20kg/cm^(2)に調節しながら最終到達温度は270℃とした。」と特定されている点。 <相違点5> 連続した強化用繊維をポリアミドで処理する工程について、本件発明6では、「連続した強化用繊維を引きながらポリアミドを含浸する」と特定されているのに対し、甲1-2発明では、「成分(A)をクロスヘッドダイ中に押し出すと同時に、上記予備工程を経た成分(B)の連続糸も上記クロスヘッドダイ中に連続的に供給することによって、溶融した成分(A-1)を成分(B)の繊維表面に被覆してストランドを得る」と特定されている点。 イ 判断 本件発明6は、少なくとも、相違点2で、甲1-2発明と相違しているところ、(1)アで相違点2についての判断で説示したと同様の理由によって、甲1-2発明におけるポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは当業者によって容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲1-2発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点4及び5に関する周知技術として指摘した甲3及び甲7にも記載も示唆もされていない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明6は、甲1に記載された発明から、あるいは、甲1に記載された発明、及び、甲3或いは甲7に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件発明8 ア 対比 本件発明8は、本件発明2と、「(A)のポリアミド」であって、「(x)の条件」と「式(Y)の条件」を満足するもの100質量部と、「(B)繊維状強化材」を「100?250質量部」とを含む点を、発明特定事項とする点で共通している。 そうすると、(1)アで説示した点を踏まえれば、本件発明8と甲1-3発明とは、 「(A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドと、 (B)繊維状強化材と、 を、含み、 繊維状強化材が分散してなる成形品。」 で一致し、 (1)アで記載した相違点2及び下記の相違点6、7で相違する。 <相違点6> 成形品に分散している(B)繊維状強化材について、本件発明8では、「1mm以上の重量平均繊維長」であると特定されているのに対し、甲1-3発明では、かかる特定がなく、成形品中の強化繊維の重量平均繊維長が不明である点。 <相違点7> 成形品に含まれる(A)のポリアミドと(B)繊維状強化材の配合割合について、本件発明20では、(A)のポリアミドが「100質量部」、(B)繊維状強化材が、「100?250質量部」と特定されているのに対し、甲1-3発明では、(A)のポリアミドが「77重量%」で、(B)繊維状強化材が、「100?250質量部」と特定されている点。 イ 判断 本件発明8は、少なくとも、相違点2で、甲1-3発明と相違しているところ、(1)アで相違点2についての判断で説示したと同様の理由によって、甲1-3発明におけるポリアミドを、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたものとすることは当業者が容易になし得たとはいえない。 そうすると、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明6について、甲1-3発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」を備えたポリアミドとする点については、取消理由通知において、相違点6に関する周知技術として指摘した甲4にも記載も示唆もされていない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明8は、甲1に記載された発明から、或いは、甲1に記載された発明、及び、甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 3.小括 以上のとおり、本件発明2、3ないし5は、甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないし、本件発明6は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明に甲3あるいは甲7に示される周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、本件発明8は、甲1に記載された発明に基づいて、あるいは、甲1に記載された発明及び甲4に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 よって、本件発明2、3ないし6及び8について、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものということはできず、本件の請求項2、3ないし6及び8に係る特許について、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものとすることはできない。 第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について (1)本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明についての特許法第29条第1項第3号について 申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし6に係る発明(それぞれ、本件発明1ないし6に対応するが、請求項1については、本件訂正により削除された。)について、甲2の実験報告書を参照すれば、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当するとと主張する。 しかしながら、第5(1)?(4)で述べたとおり、本件発明2ないし6と甲1に記載された発明とは、相違点を有しているから、本件発明2ないし6は、甲1に記載された発明であるとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (2)本件訂正前の請求項7に係る発明についての特許法第29条第1項第3号及び同条第2項について 申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項7に係る発明(本件発明7に対応する。)について、甲2の実験報告書を参照すれば、甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当すると主張するし、甲1に記載された発明から、当業者が容易に発明することができたものであると主張する。 そこで、検討すると、甲1には、甲1-1発明の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用して、表面外観の優れた成形品を製造する方法の発明(以下、「甲1-4発明」という。)が記載されている。 一方、本件発明7は、「(A)のポリアミド」100質量部と、「(B)繊維状強化材」を「100?250質量部」とを含む長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、「(x)の条件」、「式(Y)の条件」及び「長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である」との条件を満たす長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法の発明であって、本件発明7は、本件発明2と、少なくとも、「(A)のポリアミド」であって、「(x)の条件」と「式(Y)の条件」を満足するものを発明特定事項とする点で共通している。 そして、第5(1)アで相違点2として説示したと同様の理由によって、本件発明7は、甲1-4発明と、少なくとも、「(x)の条件」及び「式(Y)の条件」をその発明特定事項として備えるものである点で、甲1-4発明と相違しているのであるから、本件発明7は甲1に記載された発明であるとはいえない。 そして、(1)イで記載したと同様の理由によって、この相違点2に係る構成を備えたポリアミドとすることが当等業者によって容易になし得たともいえないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明7について、甲1-4発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (3)特許法第36条第6項第2号について 申立人は、申立書において、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明(本件発明1ないし8に対応する。)について本件特許明細書の実施例において認められる(Y)の範囲は、0.15?0.57であるから、実施例を参酌しても、何故(Y)を-0.3≦(Y)≦0.8と定めたのか、その理由が不明であり、技術的意味が理解できないから、本件特許請求の範囲の記載は明確ではないと主張する。 そこで検討すると、訂正後の本件発明2ないし8は、(Y)が0.05≦(Y)≦0.8であるところ、本件特許明細書の【0020】及び【0072】には、(Y)の定義及びその測定法が明確に記載されているし、(Y)の範囲を0.05≦(Y)≦0.8とする点の技術的意味についても、本件特許明細書の【0019】?【0024】)に明確に記載されている。 よって、本件発明2ないし8は明確であり、申立人の主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件発明2ないし8に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件発明2ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件発明1に係る特許は、訂正により削除されたため、本件発明1に対して、申立人がした特許異議の申し立てについては、対象となる請求項が存在しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品 【技術分野】 【0001】 本発明は、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品に関する。 【背景技術】 【0002】 ポリアミド樹脂は、成形加工性、機械物性、耐薬品性に優れていることから、従来から、衣料用、産業資材用、自動車用、電気・電子用又は工業用等の様々な部品材料として広く用いられている。 【0003】 近年、ポリアミド樹脂を用いた成形体は、生産性を向上させるために、成形温度を高くし、金型温度を下げて行うハイサイクル成形条件で成形する場合がある。 また、ポリアミド樹脂は自動車分野で広く採用されているが、このような用途では、使用環境が熱的、力学的に厳しく、特にドアミラー等に代表される自動車外装部品では衝撃特性と、表面外観性との両方を要求される場合が多いのが現状である。 【0004】 一方、高温条件下で成形を行うと、ポリアミド樹脂の分解が発生したり、流動性変化が生じたりすることにより安定して成形体が得られない場合があるという問題がある。 よって、特に、上述したようなハイサイクル成形時の成形品表面外観の安定性、更には耐衝撃特性を向上させた、過酷な成形条件下においても物性変化が少ないポリアミド樹脂が要求されている。 【0005】 このような要求に応えるため、成形体の表面外観及び機械特性を向上させることができる材料として、イソフタル酸成分を導入したポリアミド66/6Iからなるポリアミドが開示されている(例えば、特許文献1乃至4参照。)。 また、耐衝撃性を改良することができる材料として、テレフタル酸成分と、イソフタル酸成分とを導入したポリアミド6T/6Iからなるポリアミド開示されている(例えば、特許文献5参照。)。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開平6-32976号公報 【特許文献2】特開平6-32980号公報 【特許文献3】特開平7-118522号公報 【特許文献4】特開2000-219808号公報 【特許文献5】特開2000-191771号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 しかしながら、前記特許文献1乃至4に開示された技術で製造されたポリアミドは、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が、ポリアミド鎖中でブロックに共重合されている比率が高いため、一般的な成形条件下での成形品の表面外観性は改良されるものの、ハイサイクル成形条件のような過酷な成形条件下では、成形表面の外観が低下、及び外観安定性が低下してしまうという問題を有している。 【0008】 また、特許文献1乃至4に開示された技術で製造されたポリアミドは、弾性率等の機械特性は改良されるものの、前記の通り、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が、ポリアミド鎖中でブロックに共重合されている比率が高いため、そのポリマー構造起因により、すなわちポリアミド鎖中でブロックに共重合されている6I鎖単位の比率が高い構造を有していることにより、耐衝撃特性が低下してしまう問題がある。 【0009】 さらに、前記特許文献5に開示された製造技術で製造されたポリアミドは、耐衝撃特性は改良されるものの、成形表面外観性が低下する問題を有している。 【0010】 上述したように、従来技術で得られるポリアミド66/6Iでは、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理想的なランダム共重合体に比べて、ブロックに共重合されている比率が高いため、機械特性のバランスを保持しつつ、成形品表面外観の安定性を維持し、耐衝撃特性を向上させることが困難であり、成形品表面外観の安定性、耐衝撃特性に優れ、かつ過酷な成形条件下で成形した場合においても物性変化が少ないポリアミドは未だ知られていないのが実情である。 【0011】 従来において、ポリアミド樹脂の強度を向上させるために、ガラス繊維等の繊維状強化材を配合することが知られており、チョップドストランド等の短繊維を押出機で混練した繊維強化ポリアミド樹脂組成物がある。これに対し、近年の更に高度な機械的強度等の要求に応える方法として、例えば、連続した強化繊維を引きながら溶融したポリアミド樹脂に含浸させる、プルトルージョン法によって得られる長繊維強化ポリアミド樹脂組成物が検討されている。しかしながら、このような長繊維強化ポリアミド樹脂において、樹脂成分がポリアミド66では、押出時及び成形時の流動性が十分でない場合があり、成形品の表面外観が悪化する場合があるという問題を有している。このような問題は長繊維強化ポリアミド樹脂組成物に特有の問題であり、成形加工性及び表面外観性の改善が切望されている。 【0012】 そこで本発明においては、上記事情に鑑み、過酷な成形条件下において成形した場合においても、成形品の表面外観の安定性が良好で、耐衝撃特性に優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供することを主な目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0013】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位とを含む(A)ポリアミドにおいて、ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)の範囲を特定し、かつ、(EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量としたときの、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位がブロック化した指標である(Y)、{(Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]}の値の数値範囲を特定したポリアミド(A)を含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットが、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、以下の通りである。 【0014】 〔1〕(削除) 〔2〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔3〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有し、 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔4〕 前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、前記〔2〕又は〔3〕に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔5〕 ペレット長が5?30mmである、前記〔2〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 〔6〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。 〔7〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。 〔8〕 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。 【発明の効果】 【0015】 本発明によれば、過酷な成形条件下において成形した場合においても、表面外観が安定しており、かつ耐衝撃特性にも優れ、更には高温剛性にも優れた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【0016】 【図1】ブロック化比率(Y)とポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)との関係を表した図である。 【発明を実施するための形態】 【0017】 以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。 なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。 【0018】 〔長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット〕 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットは、 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が、当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さ(以下、単にペレット長と記載する場合もある。)と実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有している。 【0019】 以下、本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの構成成分について説明する。 ((A)ポリアミド) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含有されているポリアミド(以下、(A)ポリアミド、ポリアミド(A)、又は単にポリアミドと記載する場合もある。)は、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含む。 当該(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)は、0.05≦(x)≦0.5であり、好ましくは0.05≦(x)≦0.4であり、より好ましくは0.05≦(x)≦0.3である。 ここで、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)とは、ポリアミド中に含まれる(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位の比率を示している。 前記イソフタル酸成分比率(x)が0.05以上であると、ポリアミドの融点、固化温度が抑制され、本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いた成形品表面外観性が安定的なものとなる。また、イソフタル酸成分比率(x)が0.5以下であるとポリアミドの結晶性の低下を抑制でき、本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いた成形品において十分な機械的強度が得られる。 【0020】 前記(A)ポリアミドは、下記式(1)で示される(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8である。 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) 式(1)中、(x)は、上述したように、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率であり、ポリアミド中における(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位の比率を示す。 (EG)は、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2) 【0021】 前記式(1)において、(Y)は、全カルボキシル末端基において、イソフタル酸末端基がどれだけ選択的に存在しているかを表す指標である(以下、「ブロック化比率(Y)」とも表記する。)。 【0022】 (A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)と、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)には相関性があり、すなわちブロック化比率(Y)は、ポリアミド66/6I中の6I鎖単位が理論値(x=EG)に対して、どれだけブロック化に移行、すなわちどれだけポリアミド中の6I鎖単位の比率が高くなっており、イソフタル酸末端基比率が高くなっているかを示す指標でもある。 【0023】 従って、上記式(1)の分母[1-(x)]は、(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸末端基以外の末端基比率であり、上記式(1)の分子[(EG)-(x)]は、理論上のイソフタル酸末端基比率(=イソフタル酸成分比率)との差分イソフタル酸末端基比率、すなわち実際のイソフタル酸末端基比率と理論上のイソフタル酸末端基比率との差分となるため、上記式(1)によりブロック化比率の指標である(Y)を求めることができる。 後述の実施例及び比較例に基づくポリアミドの、前記ブロック化比率(Y)とポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)との関係を表した図を図1に示す。 図1の説明を下記に示す。 横軸:全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x) 縦軸:全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG) 実線の四角形で囲まれた領域:二つの四角形全体により囲まれた領域が0.05≦(x)≦0.5であり、かつ-0.3≦(Y)≦0.8である領域。図1中上側の四角形のみに囲まれた領域が0.05≦(x)≦0.5であり、かつ0.05≦(Y)≦0.8である領域。 一点鎖線:(EG)=(x) 破線量矢印:[(EG)-(x)]と[1-(x)]の関係を示す。 ◇:後述する実施例に用いたポリアミド ■:後述する比較例に用いたポリアミド 【0024】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドにおいて、前記ブロック化比率(Y)は、-0.3≦(Y)≦0.8であり、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8、より好ましくは0.05≦(Y)≦0.7、さらに好ましくは0.1≦(Y)≦0.6の範囲である。 イソフタル酸成分比率(x)を上記範囲内とし、かつ前記(Y)の範囲を-0.3≦(Y)≦0.8とすることにより、過酷な成形条件下における成形品表面外観の安定性、耐衝撃特性が優れたものとなる。 (A)ポリアミド中の全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)を算出するためのイソフタル酸末端基量、及び全カルボキシル末端基量の定量方法は、特に制限されないが、核磁気共鳴法(NMR)により求めることができる。具体的には^(1)H-NMRにより求めることができる。 【0025】 <アジピン酸、イソフタル酸以外の共重合成分> 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドには、本実施形態の目的を損なわない範囲で、アジピン酸、イソフタル酸以外の、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及びヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン、重縮合可能なアミノ酸、ラクタム等を共重合成分として用いることができる。 【0026】 前記脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2-ジメチルコハク酸、2,3-ジメチルグルタル酸、2,2-ジエチルコハク酸、2,3-ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2-ジメチルグルタル酸、2-メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸等の炭素数3?20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。 【0027】 前記脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3-シクロペンタンジカルボン酸等の、脂環構造の炭素数が3?10である、好ましくは炭素数が5?10である、脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。 脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。 【0028】 前記芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、及び5-ナトリウムスルホイソフタル酸等の、無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8?20の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。 種々の置換基としては、例えば、炭素数1?6のアルキル基、炭素数6?12のアリール基、炭素数7?20のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基等のハロゲン基、炭素数3?10のアルキルシリル基、並びにスルホン酸基及びナトリウム塩等のその塩である基等が挙げられる。 【0029】 前記ヘキサメチレンジアミン以外の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2-メチルペンタメチレンジアミン(2-メチル-1,5-ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4-ジメチルオクタメチレンジアミン等の炭素数3?20の分岐状飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。 【0030】 前記脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミン等の炭素数2?20の直鎖飽和脂肪族ジアミン等が挙げられる。 【0031】 前記芳香族ジアミンとしては、例えば、メタキシリレンジアミン等が挙げられる。 【0032】 前記重縮合可能なアミノ酸としては、例えば、6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等が挙げられる。 【0033】 前記ラクタムとしては、例えば、ブチルラクタム、ピバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカノラクタム等が挙げられる。 【0034】 上述したジカルボン酸成分、ジアミン成分、アミノ酸成分、及びラクタム成分は、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。 【0035】 <末端封止剤> 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミド及びその他の共重合成分を重合させたポリアミド共重合体の原料として、分子量調節や耐熱水性向上のために、末端封止剤を更に添加することができる。 例えば、ポリアミド、又は上述したポリアミド共重合体を重合する際に、公知の末端封止剤を更に添加することにより、重合量を制御することができる。 【0036】 前記末端封止剤としては、特に限定されないが、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸等の酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類等が挙げられる。 それらの中でもモノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。 これらの末端封止剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 【0037】 前記末端封止剤として用いられるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するモノカルボン酸であれば特に限定されないが、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸等の脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸、α-ナフタレンカルボン酸、β-ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸等の芳香族モノカルボン酸;等が挙げられる。 これらのモノカルボン酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 【0038】 前記末端封止剤として用いられるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するモノアミンであれば特に限定されないが、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン及びジブチルアミン等の脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミン等の脂環式モノアミン;アニリン、トルイジン、ジフェニルアミン及びナフチルアミン等の芳香族モノアミン;等が挙げられる。 これらのモノアミンは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 【0039】 ((A)ポリアミドの製造方法) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドの製造方法としては、上述したようにその他の共重合成分を有するポリアミド共重合体である場合を含めて、前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が0.05≦(x)≦0.5であり、上記式(1)におけるブロック化比率の指標である(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8、好ましくは0.05≦(Y)≦0.8となるようなポリアミド(又はポリアミド共重合体)が得られればよい。 (A)ポリアミドの製造方法としては、例えば、アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(熱溶融重合法);熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(熱溶融重合・固相重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物の水溶液、又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダー等の押出機で再び溶融させて重合度を上昇させる方法(プレポリマー・押出重合法);アジピン酸、イソフタル酸、ヘキサメチレンジアミン、及び必要に応じてその他の成分の混合物、固体塩又は重縮合物を、固体状態を維持したまま重合(固相重合法)させる方法等が挙げられる。 全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)を上記数値範囲内に制御するための方法としては、原料の仕込み量の調整、重合条件の調整が有効である。 上記式(1)におけるブロック化比率の指標となる(Y)を上記数値範囲内に制御するためには、イソフタル酸成分のブロック化を制御することが必要である。具体的には、重合系内で、溶融状態を維持しながら、圧力を適宜調整し、重合温度を好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上としながら、均一混合下において重縮合反応を進め、最終重合内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるような条件下で重合させる熱溶融重合法を用いることにより制御することができる。 【0040】 重合形態としては、特に限定されず、バッチ式、連続式のいずれでもよい。 また、重合装置も特に限定されず、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、ニーダー等の押出機型反応器等を用いることができる。 【0041】 上述したように、(Y)が-0.3≦(Y)≦0.8の範囲となるようにするには、熱溶融重合法によりポリアミドを作製することが好ましく、バッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを作製することがより好ましい。 バッチ式の熱溶融重合法の一例について以下に説明する。 重合温度条件については特に限定されないが、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは170℃以上である。 例えば、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は水溶液を110?200℃の温度下で攪拌し、約60?90%まで水蒸気を徐々に抜いて加熱濃縮する。 その後、内部圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。 その後、水及び/又はガス成分を除きながら、圧力を約1.5?5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、内部温度が好ましくは240℃以上、より好ましくは245℃以上に達した時点で、水及び/又はガス成分を除きながら圧力を徐々に抜き、最終内部温度が好ましくは250℃以上、より好ましくは260℃以上になるように、常圧で又は減圧して重縮合を行う熱溶融重合法を用いることができる。 さらには、アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンとの混合物、固体塩又は重縮合物を融点以下の温度で熱重縮合させる固相重合法等も用いることができる。これらの方法は必要に応じて組み合わせてもよい。 【0042】 ニーダー等の押出型反応機を用いる場合、押出の条件は、減圧度は0?0.07MPa程度が好ましい。 押出温度は、JIS-K7121に準じた示差走査熱量(DSC)測定で求まる融点よりも1?100℃程度高い温度が好ましい。 剪断速度は、100(sec^(-1))以上程度であることが好ましく、平均滞留時間は0.1?15分程度が好ましい。 上記押出条件とすることにより、着色や高分子量化できない等の問題の発生を効果的に抑制できる。 【0043】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミド(ポリアミド共重合体を含む、以下同じ。)の製造においては、所定の触媒を用いることが好ましい。 触媒としては、ポリアミドに用いられる公知のものであれば特に限定されず、例えば、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルト亜リン酸、ピロ亜リン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスホン酸、2-メトキシフェニルホスホン酸、2-(2’-ピリジル)エチルホスホン酸、及びそれらの金属塩等が挙げられる。 金属塩の金属としては、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、バナジウム、カルシウム、亜鉛、コバルト、マンガン、錫、タングステン、ゲルマニウム、チタン、アンチモン等の金属塩やアンモニウム塩等が挙げられる。 また、エチルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ヘキシルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、オクタデシルエステル、ステアリルエステル、フェニルエステル等のリン酸エステル類も用いることができる。 【0044】 ((A)ポリアミドの物性) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを構成する(A)ポリアミドは、蟻酸溶液粘度(JIS K 6816)が、好ましくは10?30である。 蟻酸溶液粘度が10以上であると、実用上十分な機械的特性を有する成形品が得られ、蟻酸溶液粘度が30以下であると、成形時の流動性が良好なものとなり、表面外観に優れた成形品が得られる。 【0045】 ((B)繊維状強化材) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットは、上述した(A)ポリアミド100質量部と、(B)繊維状強化材(以下、繊維状強化材(B)と記載することもある。)100?250質量部を含有する。 (B)繊維状強化材の種類としては特に制約はなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、高融点(高軟化点)の樹脂繊維等が挙げられる。 これらの中でも、加工性、成形性、及び経済性の観点から、ガラス繊維が好ましく用いられる。これらの繊維状強化材は、1種類で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 【0046】 ガラス繊維は、機械強度向上の点から表面処理されたものが好ましい。 表面処理としては、特に限定されないが、例えば、カップリング剤やフィルム形成剤を用いることができる。 前記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。 【0047】 前記シラン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピル-トリス(2-メトキシ-エトキシ)シラン、N-メチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロイミダゾールプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,O-(ビストリメチルシリル)アミド、N,N-ビス(トリメチルシリル)ウレア等が挙げられる。 これらの中でも、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(1,1-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアミノシラン及びエポキシシランが、経済性に優れ、取り扱い易いため、好ましく用いられる。 【0048】 前記チタン系カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネートイソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミドエチル、アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられる。 【0049】 前記フィルム形成剤としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、無水マレイン酸とエチレン、スチレン、α-メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3-ジクロロブタジエン、1,3-ペンタジエン、シクロオクタジエン等の不飽和単量体とのコポリマー;エポキシ系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、酢酸ビニル系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー等の重合体が挙げられる。 これらの中でも、経済性と性能が優れる観点から、ウレタン系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ブタジエン無水マレイン酸コポリマー、エチレン無水マレイン酸コポリマー、スチレン無水マレイン酸コポリマー、及びこれらの混合物が好ましい。 【0050】 上述したようなカップリング剤及びフィルム形成剤を用いて、ガラス繊維の表面処理を行う方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。 例えば、上記カップリング剤及びフィルム形成剤の有機溶媒溶液又は懸濁液を、いわゆるサイジング剤として表面に塗布するサイジング処理;ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディミキサー、V型ブレンダー等を用いて塗布する乾式混合;スプレーにより塗布するスプレー法;インテグラルブレンド法;ドライコンセントレート法等が挙げられる。 また、これらの方法を組合せた方法(例えば、カップリング剤とフィルム形成剤の一部をサイジング処理により塗布した後、残りのフィルム形成剤をスプレーする方法等)も挙げられる。 これらの中でも、経済性に優れるという観点から、サイジング処理、乾式混合、スプレー法及びこれらを組合せた方法が好ましい。 【0051】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットに含まれる(B)繊維状強化材は、重量平均繊維長がペレット長と実質上同一である。 前記「重量平均繊維長とペレット長とが実質上同一」とは、後述のようにしてペレット中の(B)繊維状強化材の重量平均繊維長を測定した際の重量平均繊維長が、ペレットの長さの0.9?1.1倍であることを言うものとする。 (B)繊維状強化材は、本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さ方向に平行配列していることが好ましい。 【0052】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さは5?30mmであることが好ましく、より好ましくは7?20mmであり、さらに好ましくは10?15mmである。 ペレット長が5mmよりも短いと、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物としての強度発現が十分ではなく、30mmより長いと、成形時のホッパーでの分級やブリッジを起しやすく、取扱い性が悪くなる。 【0053】 また、当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いた射出成形品中の繊維状強化材の重量平均繊維長は1mm以上が好ましく、1.5mm?5mm程度が好ましい。 成形品中に分散している(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が1mm以上であれば、成形品の補強効果が発揮され、特に高温雰囲気下の剛性改善効果や、一定荷重下での経時的変形量が減少することで破壊に至るまでの耐久性に優れ、更には衝撃性が飛躍的に改善される。 また、射出成形品における流動方向と直角方向の機械的特性や成形収縮率の異方性や反りが小さくなり、部品設計上の利点となる。 【0054】 (B)繊維状強化材の平均繊維径は、強度発現と押出加工時の取扱い性とのバランスの観点から5?20μmが好ましく、10?18μmがより好ましい。 (B)繊維状強化材の平均繊維径は、顕微鏡法により測定することができる。例えば、用いるガラス繊維の断面を顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維断面の直径を計測する方法により測定し、当該測定値から、下記式(I)により平均繊維径を算出する。 平均繊維径=ガラス繊維直径の合計/ガラス繊維の数 ・・・(I) 【0055】 上記(B)繊維状強化材の数平均繊維長及び重量平均繊維長は、顕微鏡法により測定することができる。 例えば、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレット、又は長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットを用いて成形した成形品を、ポリアミド樹脂組成物の分解温度以上で加熱し、残ったガラス繊維を、顕微鏡を用いて写真撮影し、ガラス繊維の長さを計測する方法により測定することができる。 顕微鏡法によって得られた測定値から、数平均繊維長及び重量平均繊維長を計算する方法としては、下記式(I)、式(II)が挙げられる。 数平均繊維長=ガラス繊維長さの合計/ガラス繊維の数 ・・・(I) 重量平均繊維長=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(II) 【0056】 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットにおける、(B)繊維状強化材の配合割合は、(A)ポリアミド100質量部に対し、100?250質量部であり、好ましくは100?200質量部であり、より好ましくは150?200質量部である。 (B)繊維状強化材の配合割合を上記範囲内にすることにより、優れた機械的強度が得られ、かつ押出性及び成形性に支障をきたす傾向を抑えることができる。 【0057】 (劣化抑制剤) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットには、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、熱劣化、熱時の変色防止、耐熱エージング性、及び耐候性の向上を目的に劣化抑制剤を添加してもよい。 劣化抑制剤としては、特に限定されないが、例えば、酢酸銅及びヨウ化銅等の銅化合物;ヒンダードフェノール化合物等のフェノール系安定剤;ホスファイト系安定剤;ヒンダードアミン系安定剤;トリアジン系安定剤;及びイオウ系安定剤等が挙げられる。 これらの劣化抑制剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。 【0058】 (成形性改良剤) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットには、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、成形性改良剤を添加してもよい。 成形性改良剤としては、特に限定されないが、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミド等が挙げられる。 【0059】 前記高級脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、エルカ酸、オレイン酸、ラウリン酸、及びモンタン酸等の炭素数8?40の飽和又は不飽和の、直鎖又は分岐状の脂肪族モノカルボン酸等が挙げられる。 これらの中でも、ステアリン酸及びモンタン酸が好ましい。 【0060】 前記高級脂肪酸金属塩とは、前記高級脂肪酸の金属塩である。 金属塩の金属元素としては、元素周期律表の第1,2,3族元素、亜鉛、及びアルミニウム等が好ましく、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及びマグネシウム等の、第1,2族元素、並びにアルミニウム等がより好ましい。 高級脂肪酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、モンタン酸カルシウム、及びモンタン酸ナトリウム、パルミチン酸カルシウム等が挙げられる。 これらの中でも、モンタン酸の金属塩及びステアリン酸の金属塩が好ましい。 【0061】 前記高級脂肪酸エステルとは、前記高級脂肪酸とアルコールとのエステル化物である。 炭素数8?40の脂肪族カルボン酸と炭素数8?40の脂肪族アルコールとのエステルが好ましい。 脂肪族アルコールとしては、例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、及びラウリルアルコール等が挙げられる。 高級脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等が挙げられる。 【0062】 前記高級脂肪酸アミドとは、前記高級脂肪酸のアミド化合物である。 高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、N-ステアリルステアリルアミド、N-ステアリルエルカ酸アミド等が挙げられる。 高級脂肪酸アミドとしては、好ましくは、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリルアミド、及びN-ステアリルエルカ酸アミドであり、より好ましくはエチレンビスステアリルアミド及びN-ステアリルエルカ酸アミドである。 【0063】 これらの高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、高級脂肪酸エステル、及び高級脂肪酸アミドは、それぞれ1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。 【0064】 (着色剤) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットには、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、着色剤を添加してもよい。 着色剤としては、特に限定されないが、例えば、ニグロシン等の染料、酸化チタン及びカーボンブラック等の顔料;アルミニウム、着色アルミニウム、ニッケル、スズ、銅、金、銀、白金、酸化鉄、ステンレス、及びチタン等の金属粒子;マイカ製パール顔料、カラーグラファイト、カラーガラス繊維、及びカラーガラスフレーク等のメタリック顔料等が挙げられる。 【0065】 (その他の樹脂) 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットには、必要に応じて、本実施形態の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を添加してもよい。 このような樹脂としては、特に限定されるものではないが、後述する熱可塑性樹脂やゴム成分等が挙げられる。 【0066】 前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アタクチックポリスチレン、アイソタクチックポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン6、66、612等の他のポリアミド(本実施形態のポリアミド以外のポリアミド);ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のポリエーテル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド、ポリオキシメチレン等の縮合系樹脂;ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含ハロゲンビニル化合物系樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂等が挙げられる。 これらの熱可塑性樹脂は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。 【0067】 前記ゴム成分としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ネオプレン、ポリスルフィドゴム、チオコールゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、スチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-(1-ブテン)共重合体、エチレン-(1-ヘキセン)共重合体、エチレン-(1-オクテン)共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)や、ブタジエン-アクリロニトリル-スチレン-コアシェルゴム(ABS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MBS)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレート-スチレン-コアシェルゴム(MAS)、オクチルアクリレート-ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(MABS)、アルキルアクリレート-ブタジエン-アクリロニトリル-スチレンコアシェルゴム(AABS)、ブタジエン-スチレン-コアシェルゴム(SBR)、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートシロキサンをはじめとするシロキサン含有コアシェルゴム等のコアシェルタイプ等が挙げられる。 これらのゴム成分は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合せて用いてもよい。 【0068】 〔長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法〕 上述した材料を用いて、本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを製造する方法としては、プルトルージョン法(引き抜き成形法)が好ましく用いられる。 引き抜き成形は、基本的には連続した強化用繊維を引きながら樹脂を含浸するものであり、溶融した樹脂を入れた含浸浴の中を繊維を通し含浸する方法、クロスヘッドダイの中を繊維を通しながら押出機等からクロスヘッドダイに樹脂を供給し含浸させ、ストランド状に形成させる方法等の公知の方法が利用できる。このストランドを引き取る際に冷却固化させた後、ペレタイズすることによって長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得ることができる。 かかる方法により得られたポリアミド樹脂組成物ペレットは、ペレット長を5?50mmにペレタイズするのが好ましい。 なお、前記方法により得られたポリアミド樹脂組成物ペレット中の(B)繊維状強化材は、ペレットの長さ方向に平行配列し、(B)繊維状強化材の重量平均繊維長はペレットと実質上同一の長さとなる。 上述した材料の配合方法としては、公知の押出技術を用いることができる。 例えば、溶融混練温度は、樹脂温度にして250?350℃程度が好ましい。溶融混練時間は、1?30分程度が好ましい。 また、ポリアミド樹脂組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。 具体的には、混合方法は、例えば、(A)ポリアミドと(B)繊維状強化材、必要に応じてその他の材料を、ヘンシェルミキサー等を用いて混合し、溶融混練機に供給し、混練する方法や、減圧装置を備えた単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミドに、サイドフィダーから(B)繊維状強化材、必要に応じてその他の材料を配合する方法等が挙げられる。 【0069】 〔長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いた成形品〕 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを成形し、成形品を得る方法としては、特に限定されず、公知の成形方法を用いることができる。 例えば、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形、射出圧縮成形、加飾成形、他材質成形、ガスアシスト射出成形、発砲射出成形、低圧成形、超薄肉射出成形(超高速射出成形)、及び金型内複合成形(インサート成形、アウトサート成形)等の成形方法が挙げられる。 【0070】 〔用途〕 本実施形態の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの成形品は、過酷な成形条件下における成形品の表面外観の安定性、耐衝撃特性に優れ、更には高温剛性にも優れることから、特に耐熱性も要求される様々な用途に用いることができる。 例えば、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野において、好適に用いることができる。 【実施例】 【0071】 以下、具体的な実施例と比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0072】 先ず、ポリアミドの構成要素、物性の測定方法、及び特性の評価方法を下記に示す。 〔測定方法〕 <ポリアミドのイソフタル酸成分比率、イソフタル酸末端基、及び全カルボキシル末端基の定量> ポリアミドを用いて、^(1)H-NMRにより求めた。 溶媒として重硫酸を用いた。 装置は日本電子製、「ECA400型」を用いた。 繰返時間は12秒、積算回数は64回で測定した。 各成分の特性シグナルの積分値より、イソフタル酸成分量、イソフタル酸末端基量、その他のカルボキシル末端基(例えばアジピン酸末端基)量を算出し、これらの値から、全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、及び上記式(1)のパラメータ(Y)をさらに算出した。 【0073】 <蟻酸溶液粘度> ポリアミドを蟻酸に溶解し、JIS K6810に準じて測定した。 【0074】 <ハイサイクル成形時の外観安定性/グロス値の評価> 装置は、日精樹脂(株)製「FN3000」射出成形機と可塑化用スクリューの圧縮比が1.8で逆流防止リングとスクリューのクリアランスが5mmの長繊維用スクリューを用いた。 シリンダー温度を320℃、充填時間が約1秒になるよう射出圧力、射出速度を適宜調整し、金型温度はポリアミド樹脂組成物のガラス転移温度に応じて80?120℃の範囲で適宜設定した。100ショットまで成形を行い、ISO試験片を得た。 得られた成形品(ISO試験片)の外観安定性は、堀場(株)製、ハンディ光沢度計「IG320」を用いてグロス値を測定し、下記方法により求めた。 外観安定性=(20?30ショットISO試験片のグロス平均値)-(90?100ショットISO試験片のグロス平均値) 上記の数値差が小さいほど、外観安定性に優れるものと判断した。 なお表1、2中、「(1)-(2)」とは、上記外観安定性の式により算出されるグロス値を示す。 【0075】 <衝撃特性:シャルピー衝撃強さの測定> 上記外観安定性試験で得られた20?25ショットISO試験片を用いて、ISO 179に準じてシャルピー衝撃強さ測定した。 測定値はn=6の平均値とした。 【0076】 <高温剛性:23℃、80℃、120℃雰囲気下での曲げ強度、曲げ弾性率の測定> 上記外観安定性試験と同様の方法で得られたISO試験片を用いて、ISO178に準じて、周囲温度23℃、80℃、120℃雰囲気下で曲げ強度、曲げ弾性率を測定した。また、23℃で測定した曲げ弾性率に対する120℃で測定した曲げ弾性率の割合(%)を剛性保持率とし、この値が大きければ大きいほど高温剛性に優れているものと判断した。 なお、下記表1、表2中、曲げ強度を「強度」、曲げ弾性率を「弾性率」と表記した。 【0077】 <成形品中の(B)繊維状強化材の重量平均繊維長の測定> 上記高温剛性評価試験で得られたISO試験片を、磁器るつぼに入れ、電気マッフル炉(ヤマト科学製FP-31型,設定温度600℃)を用いて試験片を燃焼させた。 燃焼後のガラス繊維をスライドガラス上に移し、光学顕微鏡下で観察し、画像解析装置を用いて、任意に選んだガラス繊維400本の長さを測定した値から、下記式(II)により算出した。 重量平均繊維長=ガラス繊維長さの2乗和/ガラス繊維長さの合計 ・・・(II) 【0078】 〔(A)ポリアミド〕 <製造例1:ポリアミド(A1)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。 このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。 その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0079】 <製造例2:ポリアミド(A2)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1132g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368gを用いた。 その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0080】 <製造例3:ポリアミド(A3)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。 その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0081】 <製造例4:ポリアミド(A4)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。 その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0082】 <製造例5:ポリアミド(A5)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。 その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0083】 <製造例6:ポリアミド(A6)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1044g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩456gを用いた。全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。 その他の条件は、製造例1の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0084】 <製造例7:ポリアミド(A7)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩386g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で400torrの減圧下に10分維持した。 このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。 その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0085】 <製造例8:ポリアミド(A8)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1114g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に20分維持した。 このとき、重合の最終内部温度は270℃であった。 その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0086】 <製造例9:ポリアミド(A9)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1109g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩368g、εカプロラクタム5g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が245℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。 このとき、重合の最終内部温度は265℃であった。 その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表1に示す。 【0087】 <製造例10:ポリアミド(A10)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1500g、全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、その後、オートクレーブ内を真空装置で650torrの減圧下に10分維持した。 このとき、重合の最終内部温度は290℃であった。 その後、オートクレーブ内を窒素で加圧し下部紡口(ノズル)から得られたポリマーをストランド状で排出し、水冷、カッティングを行いペレット状にして、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0088】 <製造例11:ポリアミド(A11)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1455g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンの等モル塩45gを用いた。 その他の条件は、製造例10と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0089】 <製造例12:ポリアミド(A12)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。 得られたポリアミドを粉砕した後、内容積10Lのエバポレーターに入れ、窒素気流下、200℃で10時間固相重合した。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0090】 <製造例13:ポリアミド(A13)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩816g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩684gを用いた。 その他の条件は、製造例12と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0091】 <製造例14:ポリアミド(A14)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1220g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩280g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を、内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま2時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次に、1時間かけてオートクレーブ内の圧力を1MPaまで下げ、次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、ポリアミドを得た。得られたポリアミドを粉砕した後、100℃、窒素雰囲気下で12時間乾燥し、ポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0092】 <製造例15:ポリアミド(A15)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。 その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0093】 <製造例16:ポリアミド(A16)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩570g、及びイソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩930gを用いた。 全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を添加しなかった。 その他の条件は、製造例1と同様の方法によりポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0094】 <製造例17:ポリアミド(A17)の製造> アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩1237g、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとの等モル塩263g、及び全等モル塩成分に対して0.5モル%過剰のアジピン酸を蒸留水1500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作製した。 この水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブに仕込み、窒素置換した。 110?150℃の温度下で前記水溶液を撹拌しながら、溶液濃度70質量%まで水蒸気を徐々に抜いて濃縮した。 その後、オートクレーブの内部温度を220℃に昇温した。 このとき、オートクレーブは1.8MPaまで昇圧した。 そのまま1時間、オートクレーブの内部温度が260℃になるまで加熱し、水蒸気を徐々に抜いて圧力を1.8MPaに保ちながら1時間反応させた。 次にバルブを閉止し、ヒーターを切り、約8時間かけてオートクレーブの内部温度を常温まで冷却し、蟻酸溶液粘度7のポリアミドを得た。 得られたポリアミドの全カルボン酸中のイソフタル酸成分比率(x)、全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率(EG)、上記式(1)で示されるパラメータ(Y)、蟻酸溶液粘度等のポリマー特性を上記記載の方法により測定及び算出した。これらを下記表2に示す。 【0095】 〔(B)繊維状強化材〕 ポリアミド樹脂組成物に含有させる(B)繊維状強化材を示す。 (B1)ガラス繊維ロービング(商品名:ER4301H、重慶国際複合材料有限公司製、平均繊維径:17μm、TEX数:1200TEX) (B2)ガラス繊維チョップドストランド(商品名:T275H、日本電気硝子(株)製、平均繊維径:10μm、繊維カット長3mm、断面形状は円形) 【0096】 〔実施例1〕 二軸押出機(Coperion社製ZSK25)を用い、ポリアミド(A1)をフィードホッパーより供給し、シリンダー設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpmの条件で、押出機内で溶融混練した。 溶融したポリアミド樹脂を、長繊維強化樹脂製造装置((株)神戸製鋼所製KOSLFP-212)の含浸ダイに供給した。 この含浸ダイに3本のガラス繊維ロービング(B1)の束を導入し、ダイ内で樹脂溶融混練物が含浸したガラス繊維ロービング(B1)の束をダイノズルから連続的に引き抜いて、1本のストランド状にして、そのストランドを水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーで切断することにより、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 ストランドの引取速度は30m/分であり、得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物のペレットの長さは10mm、前記ペレット中の繊維状強化材であるガラス繊維含有量は50質量%であった。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0097】 〔実施例2〕 ポリアミド(A2)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0098】 〔実施例3〕 ポリアミド(A3)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0099】 〔実施例4〕 ポリアミド(A4)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0100】 〔実施例5〕 ポリアミド(A5)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0101】 〔実施例6〕 ポリアミド(A6)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0102】 〔実施例7〕 ポリアミド(A7)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0103】 〔実施例8〕 ポリアミド(A8)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0104】 〔実施例9〕 ポリアミド(A9)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0105】 〔実施例10〕 含浸ダイノズル径を変更して、ポリアミド樹脂組成物ペレット中のガラス繊維ロービング(B1)の量を60質量%((A)ポリアミド100質量部に対して(B)繊維状強化材150質量部)にした以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0106】 〔実施例11〕 引取速度とペレタイザー回転数を変更して、ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さを20mmにした。その他の条件は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0107】 〔比較例1〕 ポリアミド(A10)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0108】 〔比較例2〕 ポリアミド(A11)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0109】 〔比較例3〕 ポリアミド(A12)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0110】 〔比較例4〕 ポリアミド(A13)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0111】 〔比較例5〕 ポリアミド(A14)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0112】 〔比較例6〕 ポリアミド(A15)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0113】 〔比較例7〕 ポリアミド(A16)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様にして、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られた長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。 【0114】 〔比較例8〕 ポリアミド(A17)を用いた以外は実施例1に記載した方法と同様に実施したが、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットが得られなかった。 【0115】 〔比較例9〕 二軸押出機(Coperion社製ZSK25)を用い、ポリアミド(A1)をトップフィード口より供給し、下流のサイドフィード口よりガラス繊維チョップドストランド(B2)をポリアミド(A1)50質量%に対して50質量%の割合でそれぞれ供給し、シリンダー設定温度:290℃、スクリュー回転数300rpmの条件で、押出機内で溶融混練した。 得られたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物をストランド状になるよう成形し、水冷バス中で冷却固化した後、ペレタイザーでペレタイズしてガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られたペレットの長さは3mm、ペレット中のガラス繊維の重量平均繊維長は0.30mmであった。 得られたガラス短繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0116】 〔比較例10〕 ポリアミドとして、ポリアミド66(商品名:レオナ1200,旭化成ケミカルズ(株)製)を用いた以外は、実施例1に記載した方法と同様にして、ガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを得た。 得られたガラス長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて、上記記載の方法により成形品を製造し、ハイサイクル成形時の外観安定性、衝撃特性、高温剛性の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。 【0117】 【表1】 【0118】 【表2】 【0119】 前記表1に示すように、実施例1?11の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の成形品は、いずれも極めて優れた外観安定性、衝撃特性、高温剛性を有することが確認された。 一方、(Y)が、-0.3≦(Y)≦0.8の範囲外である比較例3、4、5、8のポリアミド樹脂組成物の成形品、及び(x)が、0.05≦(x)≦0.5の範囲外である比較例1、2、6、7の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物の成形品は、表面外観の安定性、衝撃特性が大きく低下したことが確認された。 比較例9のようにガラス短繊維を用いると、成形品中のガラス繊維長が短くなるため、衝撃強度や剛性が低くなり、高温剛性が十分に得られなかった。 また比較例10のように、通常のポリアミド66を含むポリアミド樹脂組成物を用いた場合は、ハイサイクル成形での外観安定性が大幅に低下することが確認された。 【産業上の利用可能性】 【0120】 本発明の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及びこれを用いた成形品は、自動車分野、電気・電子分野、機械・工業分野、事務機器分野、航空・宇宙分野等において、産業上の利用可能性がある。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 削除 【請求項2】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項3】 (A):(a)アジピン酸とペキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミドであって、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有し、 前記全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)、前記イソフタル酸末端基量、及び前記全カルボキシル末端基量が、核磁気共鳴法(NMR)により求めた値である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項4】 前記(B)繊維状強化材が5?20μmの平均繊維径を有するガラス繊維である、請求項2又は3に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項5】 ペレット長が5?30mmである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット。 【請求項6】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミドであり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B):長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における重量平均繊維長が当該長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの長さと実質上同一である(B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法であって、 アジピン酸、イソフタル酸、及びヘキサメチレンジアミンを重合する際に、重合系内の内部温度が240℃以上になるまで内部圧力を1.5?5.0MPaに保った後、加熱を続けた状態で、圧力を徐々に抜き、最終内部温度が250℃以上になるように、常圧下又は減圧下で重縮合してポリアミドを得る工程と、 連続した強化用繊維を引きながら得られたポリアミドを含浸する工程と、 を、含む、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットの製造方法。 【請求項7】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなるポリアミド100質量部と、 (B)繊維状強化材100?250質量部と、 を、含有する長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを用いて成形を行う際に、 前記(A)ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8であり、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)]・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量・・・(2)) 前記長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット中における前記(B)繊維状強化材の重量平均繊維長が当該ペレットの長さと実質上同一である、長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレットを使用することにより、成形品の外観安定性を向上させる方法。 【請求項8】 (A):(a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 (b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、 を、含むポリアミドであって、 当該(A)ポリアミドが、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、からなるポリアミド、または、 (a)アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、(b)イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンとからなる単位と、εカプロラクタムからなる単位と、からなり、 当該ポリアミド中における全カルボン酸成分中のイソフタル酸成分比率(x)が、0.05≦(x)≦0.5であり、 かつ、下記式(1)で示される(Y)が、0.05≦(Y)≦0.8である(A)ポリアミド100質量部と、 (Y)=[(EG)-(x)]/[1-(x)] ・・・(1) (前記式(1)中、(EG)は、(A)ポリアミド中に含有されている全カルボキシル末端基中のイソフタル酸末端基比率を示し、下記式(2)で示される。 (EG)=イソフタル酸末端基量/全カルボキシル末端基量 ・・・(2)) (B)繊維状強化材100?250質量部と、を含み、 前記(B)繊維状強化材が1mm以上の重量平均繊維長で分散してなる成形品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2017-09-29 |
出願番号 | 特願2011-268966(P2011-268966) |
審決分類 |
P
1
651・
853-
YAA
(C08L)
P 1 651・ 851- YAA (C08L) P 1 651・ 121- YAA (C08L) P 1 651・ 536- YAA (C08L) P 1 651・ 857- YAA (C08L) P 1 651・ 113- YAA (C08L) P 1 651・ 537- YAA (C08L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 山村 周平 |
特許庁審判長 |
小柳 健悟 |
特許庁審判官 |
渕野 留香 藤原 浩子 |
登録日 | 2016-08-05 |
登録番号 | 特許第5979860号(P5979860) |
権利者 | 旭化成株式会社 |
発明の名称 | 長繊維強化ポリアミド樹脂組成物ペレット及び成形品 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 秋山 祐子 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 内藤 和彦 |
代理人 | 江口 昭彦 |
代理人 | 稲葉 良幸 |
代理人 | 大貫 敏史 |
代理人 | 秋山 祐子 |
代理人 | 内藤 和彦 |