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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1334392
異議申立番号 異議2017-700647  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-06-22 
確定日 2017-11-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6070702号発明「シールリングおよびシールリングの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6070702号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯

特許第6070702号の請求項1ないし17に係る特許についての出願は、平成25年1月15日(優先権主張 平成24年6月4日)を国際出願日として特許出願され、平成29年1月13日にその特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし17に係る特許に対して、特許異議申立人 株式会社ワノテックジャパンにより特許異議の申立てがなされたものである。

第2 本件特許発明

特許第6070702号の請求項1ないし17の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」ないし「本件特許発明17」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングであって、
基材層と、
前記基材層の一方表面に配置されたろう材層とが接合されたクラッド材から構成され、
前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆う側面ろう材部分が除去されており、
前記ろう材層は、AgとCuとを主に含み、
前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度は、前記ろう材層の内部におけるAgの濃度よりも大きい、シールリング。
【請求項2】
前記基材層は、前記基材層の前記一方表面と略平坦面状に形成された前記側面とを接続する丸形状の角部を含み、
前記ろう材層のうちの前記略平坦面状の側面を覆う前記側面ろう材部分が少なくとも除去されている、請求項1に記載のシールリング。
【請求項3】
前記基材層は、FeとNiとCoとを主に含む、請求項1に記載のシールリング。
【請求項4】
電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングの製造方法であって、
基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に前記ろう材層が延伸して形成された、前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆う側面ろう材部分を除去する工程とを備え、
前記側面ろう材部分を除去する工程は、前記側面ろう材部分をウェットエッチングにより除去する工程を含み、
前記ろう材層は、AgとCuとを主に含み、
前記ウェットエッチングのエッチング液は、前記ろう材層の表面を酸化させる酸化剤と、酸化された前記ろう材層を除去する酸化物除去剤と、水と、前記ろう材層の表面のCuを優先的に除去するためのCu優先除去剤とを含み、
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記エッチング液を用いて前記ろう材層の表面におけるCuを優先的に除去することにより、前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度を、前記ろう材層の内部におけるAgの濃度よりも大きくする工程を含む、シールリングの製造方法。
【請求項5】
電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングの製造方法であって、
基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に前記ろう材層が延伸して形成された、前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆う側面ろう材部分を除去する工程とを備え、
前記側面ろう材部分を除去する工程は、前記側面ろう材部分をウェットエッチングにより除去する工程を含み、
前記ろう材層は、AgとCuとを主に含み、
前記ウェットエッチングのエッチング液は、前記ろう材層の表面を酸化させる酸化剤と、酸化された前記ろう材層を除去する酸化物除去剤と、水と、前記ろう材層の表面のCuを優先的に除去するためのCu優先除去剤とを含み、
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記エッチング液を用いて前記ろう材層の表面におけるCuを優先的に除去することにより、前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度を、前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する前の前記ろう材層におけるAgの濃度よりも大きくする工程を含む、シールリングの製造方法。
【請求項6】
前記基材層は、前記基材層の前記一方表面と略平坦面状に形成された前記側面とを接続する丸形状の角部を含み、
前記側面ろう材部分を除去する工程は、前記ろう材層のうちの前記略平坦面状の側面を覆う前記側面ろう材部分を少なくとも除去する工程を含む、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項7】
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記ろう材層を前記ウェットエッチングにより等方的に除去することにより、前記側面ろう材部分を除去する工程を含む、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項8】
前記ろう材層を前記ウェットエッチングにより等方的に除去する工程は、前記ウェットエッチングにより、前記側面ろう材部分を除去するとともに、前記ろう材層の角部を丸形状に形成する工程を含む、請求項7に記載のシールリングの製造方法。
【請求項9】
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記ろう材層がエッチングされやすく、かつ、前記基材層がエッチングされにくい前記エッチング液を用いて、前記側面ろう材部分を除去する工程を含む、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項10】
前記基材層は、FeとNiとCoとを主に含む、請求項9に記載のシールリングの製造方法。
【請求項11】
前記エッチング液は、過酸化水素により構成される前記酸化剤と、酢酸により構成される前記酸化物除去剤とを含む、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項12】
前記Cu優先除去剤は、強酸により構成されている、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項13】
前記Cu優先除去剤は、前記強酸である硫酸により構成されている、請求項12に記載のシールリングの製造方法。
【請求項14】
前記エッチング液には、前記硫酸が前記エッチング液全体の0.5質量%以上の濃度になるように添加されている、請求項13に記載のシールリングの製造方法。
【請求項15】
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程の前後で前記ろう材層の固相線は略変化しない、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項16】
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記シールリングの表面に残った酸化された前記ろう材層を取り除いて洗浄する工程を兼ねる、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。
【請求項17】
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程に先立って、前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に形成された前記基材層の微小突起を除去する工程をさらに備え、
前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記側面ろう材部分と、前記微小突起を除去する際に付着する異物とを前記ウェットエッチングにより除去する工程を含む、請求項4または5に記載のシールリングの製造方法。」

第3 申立理由の概要

特許異議申立人は、主たる証拠として甲第1号証、及び従たる証拠として甲第2ないし12号証を提出し、
(1)本件特許発明1ないし3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(2)本件特許発明4ないし6は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(3)本件特許発明7、8は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証、甲第7号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証、甲第7号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(4)本件特許発明9ないし14は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証、甲第8号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証、甲第8号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(5)本件特許発明15は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証、甲第9号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証、甲第9号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(6)本件特許発明16は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証、甲第4号証及び甲第10号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証、甲第4号証及び甲第10号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、
(7)本件特許発明17は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項(甲第12号証、甲第11号証)に基づいて、または、甲第1号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3ないし6号証、甲第12号証、甲第11号証)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、
請求項1ないし17に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張している。
[証拠]
甲第1号証:特開2003-133449号公報
甲第2号証:特開平3-134198号公報
甲第3号証:特開2001-48668号公報
甲第4号証:特開昭59-79913号公報
甲第5号証:特公平1-15355号公報
甲第6号証:特開平9-298021号公報
甲第7号証:特開2004-253463号公報
甲第8号証:特開2005-105411号公報
甲第9号証:横山亨「図解合金状態図読本」,(株)オーム社,1980年2月20日,81頁
甲第10号証:特公平7-101721号公報
甲第11号証:特開2010-97963号公報
甲第12号証:特開平11-67742号公報

第4 甲第1ないし6号証の記載事項(なお、下線は当審で付与した。)

1.甲第1号証(特開2003-133449号公報)
甲第1号証には、「ろう材付きシールリング」について、図面とともに以下の各記載がある。
(1)「【請求項1】 金属製のシールリングの下面にろう材が被着されて成り、電子部品収納用パッケージの絶縁基体に設けた封止用メタライズ層に前記ろう材を介して接合されるろう材付きシールリングであって、前記ろう材は、その一部が前記シールリングの側面の1/6?2/3の高さまで延在していることを特徴とするろう材付きシールリング。」

(2)「【0025】シールリング2は、鉄-ニッケル合金や鉄-ニッケル-コバルト合金等から成る略四角形の枠体である。このシールリング2は、通常、その内周が搭載部1aの開口と略同じ大きさであり、厚みが0.1?0.25mm程度、各辺の幅が0.1?0.4mm程度である。さらに、その外周面および内周面の各角部には曲率半径が0.1?2mm程度の丸みを有している。そして、その下面に銀-銅合金等のろう材6が被着されているとともに、ろう材6の一部がその側面の1/6?2/3の高さまで延在しており、それによって本発明のろう材付きシールリングが形成されている。シールリング2の下面に被着されたろう材6の厚みは20?60μm程度であり、側面に延在するろう材6の厚みは10μm以下程度である。」

(3)「【0027】本発明においては、ろう材6がシールリング2の側面の1/6?2/3の高さまで延在しており、そのことが重要である。このように、ろう材6がシールリング2の側面の1/6?2/3の高さまで延在していることから、本発明のろう材付きシールリングを絶縁基体1の封止用メタライズ層5上にろう材6が当接するように位置決めするとともにろう材6を溶融させてろう付けする際に、ろう材6が元々延在しているシールリング2の側面の1/6?2/3の高さまではろう材6とシールリング2との濡れ性が極めて良好であり、このシールリング2の側面の1/6?2/3までの高さの領域と封止用メタライズ層5との間に大きなろう材6の溜まりが形成されてシールリング2がろう材6を介して封止用メタライズ層5に強固に接合される。他方、ろう材6が元々延在していないシールリング2の側面の上端部ではろう材6との濡れ性がそれほど良好ではなく、したがってこの上端部を介してシールリング2の上面にろう材6が多量に這い上がることを有効に防止することができる。」

(4)「【0029】このようなろう材付きシールリングは、下面にろう材層が圧着された金属板を打抜き金型によりろう材層側から所定の枠状に打抜いた後、それに適当なバレル研磨および/または化学研磨を施すことにより製作される。このとき、ろう材6の外周部が打抜き時の摩擦によりシールリング2の側面に延びて付着する。シールリング2の側面に延在するろう材6の厚みは、シールリング2の側面の下端側で厚く、上端側で薄くなる。そして、バレル研磨や化学研磨により上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去することによってろう材6がシールリング2の側面に延在する高さをシールリング2の側面1/6?2/3の高さとした本発明のろう材付きシールリングを得ることができる。」

・上記甲第1号証に記載の「ろう材付きシールリング」は、上記(1)の記載事項、及び図1、図2によれば、金属製のシールリング2の下面にろう材6が被着されて成り、電子部品収納用パッケージの絶縁基体1に設けた封止用メタライズ層5にろう材6を介して接合されるろう材付きシールリングであって、ろう材6は、その一部がシールリング2の側面の1/6?2/3の高さまで延在しているろう材付きシールリングである。
・上記(2)の記載事項によれば、ろう材6は、例えば銀-銅合金である。
・上記(4)の記載事項によれば、ろう材付きシールリングは、下面にろう材層が圧着された金属板をろう材層側から所定の枠状に打抜くことにより製作されるものである。
このとき、ろう材6の外周部がシールリング2の側面に延びて付着するが、化学研磨などにより、シールリング2の側面に延在するろう材6の上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去することによって、ろう材6がシールリング2の側面に延在する高さをシールリング2の側面1/6?2/3の高さとしてなるものである。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「電子部品収納用パッケージに用いられるろう材付きシールリングであって、
金属製のシールリングと、
前記シールリングの下面に圧着されたろう材とからなり、
前記ろう材は、銀-銅合金であり、
前記ろう材は、前記シールリングの側面に延在する部分のうち上端側の薄い部分が所定の高さだけ除去され、残りの部分が前記シールリングの側面の1/6?2/3の高さまで延在している、ろう材付きシールリング」

また、上記ろう材付きシールリングの製造工程に着目し、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明’」という。)が記載されているといえる。
「電子部品収納用パッケージに用いられるろう材付きシールリングの製造方法であって、
下面にろう材層が圧着された金属板を打抜き金型によりろう材層側から所定の枠状に打抜く工程と、
打抜き時の摩擦により金属製のシールリングの側面に延びて付着したろう材のうち、上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去することによって、前記ろう材が前記シールリングの側面に延在する高さを前記シールリングの側面1/6?2/3の高さとする工程と、を含み、
前記ろう材は、銀-銅合金であり、
前記シールリングの側面に延びて付着したろう材のうちの上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去する工程は、化学研磨により除去する工程である、ろう材付きシールリングの製造方法。」

2.甲第2号証(特開平3-134198号公報)
甲第2号証には、「銀ろう上へのニッケルめっき方法」について、図面とともに以下の各記載がある。
(1)「(従来の技術)
ピングリッドアレイタイプの半導体装置値用のセラミックパッケージでは、第4図に示すように、セラミックベース10上に外部導通用のリードピン14を銀ろう16によってろう付けし、この銀ろう16並びにリードピン14上に耐蝕用のニッケルめっき層18を形成するようにしている。
(発明が解決しようとする課題)
ところで、銀ろう上へ密着性のよいニッケルめっき層を形成するのは非常に困難であることが知られている。
通常は、シアン系の研磨液に浸漬することで、銀ろう表面の酸化膜を除去すると共に銀ろう表面を荒らして凹凸を形成し、ニッケルめっき層との物理的結合を高めるようにしているのが一般的である・・(以下、略)」(1頁右下欄10行?2頁左上欄5行)

(2)「 銀ろうは銀と銅の合金からなり、・・(中略)・・
従来のシアン系の研磨液は、銀ろう表面を荒らして微細な凹凸を形成するものであるが、この処理では銀ろう中の銅が主としてエッチングされ、銀ろう表面はかえって銀リッチの状態となり、密着性が改善されないものと推察される。」(2頁右上欄2?13行)

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第2号証には、従来技術として、次の技術事項が記載されている。
「銀ろう上へ密着性のよい耐蝕用のニッケルめっき層を形成するために、シアン系の研磨液に浸漬することで、銀ろう表面の酸化膜を除去すると共に銀ろう表面を荒らして微細な凹凸を形成するようにした際、銀ろう表面はかえって銀リッチの状態となること。」

3.甲第3号証(特開2001-48668号公報)
甲第3号証には、「セラミックスと金属の接合方法および接合体」について、図面とともに以下の各記載がある。
(1)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態のセラミックスと金属の接合方法においては、図1に示すように、セラミックス1,Ag-Cuろう材2,金属3を積層し、セラミックス1とAg-Cuろう材2の間に、あるいはセラミックス1とAg-Cuろう材2の間およびAg-Cuろう材2と金属3の間に、ろう材に溶け込み融点を高める元素(改質材4)を挿入する。図1は接合前の接合部材の組み合わせを示す断面図である。」

(2)「【0020】本発明の実施の形態の接合体の断面組織図を図2に示すように、接合後には、改質材を配置した界面の近傍に、改質材元素の濃度の高い領域が生成している。例えば、改質材としてNi/Ti膜を用いた場合、界面近傍に固溶体(Cu,Ni,Ti)相5が生成する。ろう材組織の中央部はAgの組成が相対的に高いAgリッチ相6となる。中央部のAgリッチ相6は通常の共晶Ag-Cu組織よりもヤング率が低くなる。よって中央部のヤング率の低いAgリッチ相6が応力緩和層として機能し、セラミックス1に発生する残留応力を低くすることが可能となる。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第3号証には、次の技術事項が記載されている。
「セラミックスと金属の接合において、
セラミックス、Ag-Cuろう材、金属を積層し、セラミックスとAg-Cuろう材の間に、あるいはセラミックスとAg-Cuろう材の間およびAg-Cuろう材と金属の間に、ろう材に溶け込み融点を高める改質材(例えばNi/Ti膜)を挿入した場合、接合後には、ろう材組織の中央部はAgの組成が相対的に高いAgリッチ相となること。」

4.甲第4号証(特開昭59-79913号公報)
甲第4号証には、「電気接点の製造方法」について、図面とともに以下の各記載がある。
(1)「2.特許請求の範囲
(1)銀合金からなる電気接点材料を酸などの溶解液に浸してその表層部分における銀以外の金属成分を溶解液中に溶出させ、表層部分が銀リッチ層になった上記電気接点材料を、さらにその表面が平滑になるように処理する電気接点の製造方法。」(1頁左下欄4?9行)

(2)「・・この発明によって得られる電気接点は、その表層部分が銀リッチ層となっているので酸化されにくく、したがって、表面に酸化皮膜が形成されにくいので接触抵抗が小さくなり、低負荷領域での使用が可能である。
<実施例の説明>
5%HCl溶液中にAg85-Ni15合金を浸し、スターツを用いて24時間かく拌することによって上記合金の表面に約0.1mmの銀リッチ層を生成させた。・・」(2頁左上欄9?18行)

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第4号証には、次の技術事項が記載されている。
「電気接点の製造方法において、
表面に酸化皮膜が形成されにくく、接触抵抗が小さくなるようにするために、Ag-Ni合金からなる電気接点材料を酸などの溶解液に浸してその表層部分における銀以外の金属成分を溶解液中に溶出させ、表層部分に銀リッチ層を生成するようにしたこと。」

5.甲第5号証(特公平1-15355号公報)
甲第5号証には、「銀-酸化物系複合電気接点材料の製造方法」について、以下の記載がある。
(1)「このように本発明の製造方法は、銀-酸化物系合金の電気接点材を台材に接合する際、電気接点材を塩化アンモニウム1?25容積%溶液中に浸漬して外表面の酸化物ならびに不純物を溶解除去することにより、銀リッチ面が形成されるので、ベース材と接合すると電気接点材は銀リッチ面を介して接合されることになり、その接合強度は著しく高いものとなる。・・」(1頁右下欄11?18行)

上記記載事項によると、甲第5号証には、次の技術事項が記載されている。
「銀-酸化物系複合電気接点材料の製造方法において、
ベース材との接合強度を高くするために、電気接点材を塩化アンモニウム1?25容積%溶液中に浸漬して外表面の酸化物ならびに不純物を溶解除去することにより、銀リッチ面を形成するようにしたこと。」

6.甲第6号証(特開平9-298021号公報)
甲第6号証には、「遮断器用電極の製造方法」について、図面とともに以下の記載がある。
(1)「【0002】
【従来の技術】従来の遮断器用電極の製造方法を図8及び図9を用いて説明する。従来、無酸素銅等からなる電極棒1と、Ag-WC系の合金等からなるコンタクト2とを接合する際には、図8に示すように電極棒1及びコンタクト2をろう材3を用いてろう材3の融点以上に加熱することによりろう付する方法、又は、亜硝酸系の溶液を用いたエッチングを行うことにより、図9に示すようにコンタクト2の電極棒1との接合面のWC又はWを熔融してAgリッチな金属層4を形成してから全体を加熱することにより電極棒1とコンタクト2との接合面を合金化して金属拡散接合する方法を用いていた。」

上記記載事項及び図面を総合勘案すると、甲第6号証には、従来技術として、次の技術事項が記載されている。
「遮断器用電極の製造方法において、
無酸素銅等からなる電極棒と、Ag-WC系の合金等からなるコンタクト2とを金属拡散接合するために、亜硝酸系の溶液を用いたエッチングを行うことにより、コンタクトの電極棒との接合面のWC又はWを熔融してAgリッチな金属層を形成するようにしたこと。」

第5 当審の判断

1.本件特許発明1について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、
ア.甲1発明における「電子部品収納用パッケージに用いられるろう材付きシールリングであって、金属製のシールリングと、前記シールリングの下面に圧着されたろう材とからなり」によれば、
(a)甲1発明における「電子部品収納用パッケージ」、「金属製のシールリング」、「ろう材」が、それぞれ本件特許発明1でいう「電子部品収納用パッケージ」、「基材層」、「ろう材層」に相当し、
甲1発明における「ろう材付きシールリング」が、本件特許発明でいう「シールリング」に相当するものである。
(b)そして、甲1発明にあっても、ろう材は、金属製のシールリングの下面(本件特許発明1でいう「一方表面」)に「圧着」されてなるものであることから、本件特許発明1と同様、いわゆるクラッド材として構成されているものと解される。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、「電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングであって、基材層と、前記基材層の一方表面に配置されたろう材層とが接合されたクラッド材から構成され」てなるものである点で一致するといえる。

イ.甲1発明における「前記ろう材は、銀-銅合金であり」によれば、
本件特許発明1と甲1発明とは、「前記ろう材層は、AgとCuとを主に含む」ものである点で一致する。

ウ.甲1発明における「前記ろう材は、前記シールリングの側面に延在する部分のうち上端側の薄い部分が所定の高さだけ除去され、残りの部分が前記シールリングの側面の1/6?2/3の高さまで延在している」によれば、
甲1発明にあっては、金属製のシールリングの側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残されることを前提とするものである。
一方、本件特許発明1にあっては、「前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆う側面ろう材部分が除去されており」とあり、本件特許明細書の段落【0051】?【0054】の記載や図6、図7も参照するに、本件特許発明1でいう「側面ろう材部分」は、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を意味しこれが除去される、つまり、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分が除去されてなるものであると解される。
したがって、本件特許発明1と甲1発明とは、「前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部が除去され」てなるものである点で共通するとみることができる。
ただし、本件特許発明1では、「側面ろう材部分」、すなわち、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分が除去されると解されるものであるのに対し、甲1発明では、側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残されるものである点で相違するといえる。

よって、本件特許発明1と甲1発明とは、
「電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングであって、
基材層と、
前記基材層の一方表面に配置されたろう材層とが接合されたクラッド材から構成され、
前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部が除去されており、
前記ろう材層は、AgとCuとを主に含む、シールリング。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
基材層の側面を覆うろう材部分について、本件特許発明1では、「側面ろう材部分」、すなわち、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分が除去されると解されるものであるのに対し、甲1発明では、側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残されるものである点。

[相違点2]
本件特許発明1では、「前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度は、前記ろう材層の内部におけるAgの濃度よりも大きい」旨特定するのに対し、甲1発明では、そのような特定を有していない点。

(2)判断
まず上記[相違点1]について検討すると、甲1発明では、側面に延在するろう材部分のうち、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残されることを前提とするものである〔例えば本件特許明細書の段落【0027】の記載(上記「第4 1.(3)」)も参照〕。
したがって、甲1発明において、側面に延在するろう材部分のうち、側面に延在する下端側の部分も除去すること、つまり、側面に延在するすべてのろう材部分が除去されたものとすることについては、阻害要因があるといえ、導き出すことはできない。

なお、甲第2?6号証、さらには甲第7?12号証のいずれにも、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分が除去されてなる構成については、記載も示唆もない。

よって、上記[相違点2]について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、または、甲1発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

2.本件特許発明2、3について
請求項2、3は、請求項1に従属する請求項であり、本件特許発明2、3は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるといえるから、上記本件特許発明1についての判断(上記「1.(2)」を参照)と同様の理由により、本件特許発明2、3は、甲1発明及び甲第2号証に記載の技術事項に基づいて、または、甲1発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3.本件特許発明4について
(1)対比
本件特許発明4と甲1発明’とを対比すると(なお、「本件特許発明1と甲1発明との対比」と共通する部分は省略する。)、
ア.甲1発明’における「下面にろう材層が圧着された金属板を打抜き金型によりろう材層側から所定の枠状に打抜く工程と」によれば、
甲1発明’におけるかかる工程は、本件特許発明4でいう「前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程」に相当し、
甲1発明’にあっても、本件特許発明4でいう「基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程」を当然有しているといえるから、
本件特許発明4と甲1発明’とは、「基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程と、前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程と」を備えるものである点で一致する。

イ.甲1発明’における「打抜き時の摩擦により金属製のシールリングの側面に延びて付着したろう材のうち、上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去することによって、前記ろう材が前記シールリングの側面に延在する高さを前記シールリングの側面1/6?2/3の高さとする工程と」によれば、
本件特許発明4と甲1発明’とは、「前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に前記ろう材層が延伸して形成された、前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程と」を備えるものである点で共通するとみることができる。
ただし、基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程について、本件特許発明4では、「側面ろう材部分」、すなわち、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を除去する工程であると解されるものであるのに対し、甲1発明’では、側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残す工程である点で相違するといえる。

ウ.甲1発明’における「前記シールリングの側面に延びて付着したろう材のうちの上端側の薄い部分を所定の高さだけ除去する工程は、化学研磨により除去する工程である・・」によれば、
甲1発明’における「化学研磨」も、エッチングであることに変わりないから、
本件特許発明4と甲1発明’とは、「前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程は、前記ろう材部分の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程を含」むものである点で共通するということができる。
ただし、エッチングについて、本件特許発明4では、「ウェット」エッチングである旨特定するのに対し、甲1発明’では、そのような特定がない点で相違するといえる。

よって、本件特許発明4と甲1発明’とは、
「電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングの製造方法であって、
基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に前記ろう材層が延伸して形成された、前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程とを備え、
前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程は、前記ろう材部分の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程を含み、
記ろう材層は、AgとCuとを主に含む、シールリングの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程について、本件特許発明4では、「側面ろう材部分」、すなわち、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を除去する工程であると解されるものであるのに対し、甲1発明’では、側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残す工程である点。

[相違点2]
上記[相違点1]にも関連して、基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程について、本件特許発明4では、「ウェット」エッチングであり、さらに「前記ウェットエッチングのエッチング液は、前記ろう材層の表面を酸化させる酸化剤と、酸化された前記ろう材層を除去する酸化物除去剤と、水と、前記ろう材層の表面のCuを優先的に除去するためのCu優先除去剤とを含み、前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記エッチング液を用いて前記ろう材層の表面におけるCuを優先的に除去することにより、前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度を、前記ろう材層の内部におけるAgの濃度よりも大きくする工程を含む」旨特定するのに対し、甲1発明’では、化学研磨により除去すると特定するにすぎない点。

(2)判断
まず上記[相違点1]について検討すると、本件特許発明1に関して検討した[相違点1]の判断(上記「1.(2)」を参照)と同様、甲1発明’では、側面に延在するろう材部分のうち、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残す工程を前提とするものである〔例えば本件特許明細書の段落【0027】の記載(上記「第4 1.(3)」)も参照〕。
したがって、甲1発明’において、側面に延在するろう材部分のうち、側面に延在する下端側の部分も除去すること、つまり、側面に延在するすべてのろう材部分を除去する工程とすることについては、阻害要因があるといえ、導き出すことはできない。

なお、甲第2?6号証、さらには甲第7?12号証のいずれにも、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を除去する工程については、記載も示唆もない。

よって、上記[相違点2]について検討するまでもなく、本件特許発明4は、甲1発明’、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、または、甲1発明’及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.本件特許発明5について
(1)対比
本件特許発明5と甲1発明’とを対比すると(なお、「本件特許発明4と甲1発明’との対比」と共通する部分は省略する。)、
本件特許発明5と甲1発明’とは、
「電子部品収納用パッケージに用いられるシールリングの製造方法であって、
基材層と前記基材層の一方表面に接合されるろう材層とのクラッド材を準備する工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く工程と、
前記クラッド材を前記シールリングの形状に打ち抜く際に前記ろう材層が延伸して形成された、前記ろう材層のうちの前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程とを備え、
前記基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程は、前記ろう材部分の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程を含み、
記ろう材層は、AgとCuとを主に含む、シールリングの製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部を除去する工程について、本件特許発明4では、「側面ろう材部分」、すなわち、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を除去する工程であると解されるものであるのに対し、甲1発明’では、側面に延在するろう材部分のうち、上端側の薄い部分のみが所定の高さだけ除去され、側面に延在する下端側の部分は、側面の1/6?2/3の高さまで除去されずに残す工程である点。

[相違点2]
上記[相違点1]にも関連して、基材層の側面を覆うろう材部分の少なくとも一部をエッチングにより除去する工程について、本件特許発明5では、「ウェット」エッチングであり、さらに「前記ウェットエッチングのエッチング液は、前記ろう材層の表面を酸化させる酸化剤と、酸化された前記ろう材層を除去する酸化物除去剤と、水と、前記ろう材層の表面のCuを優先的に除去するためのCu優先除去剤とを含み、前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する工程は、前記エッチング液を用いて前記ろう材層の表面におけるCuを優先的に除去することにより、前記ろう材層の表面近傍におけるAgの濃度を、前記側面ろう材部分を前記ウェットエッチングにより除去する前の前記ろう材層におけるAgの濃度よりも大きくする工程を含む」旨特定するのに対し、甲1発明’では、化学研磨により除去すると特定するにすぎない点

(2)判断
上記[相違点1]は、上記「3.(2)」で検討した[相違点1]と同じである。
したがって、上記「3.(2)」で検討した[相違点1]についての判断と同様の理由により、甲1発明’において、側面に延在するろう材部分のうち、側面に延在する下端側の部分も除去すること、つまり、側面に延在するすべてのろう材部分を除去する工程とすることについては、阻害要因があるといえ、導き出すことはできない。

なお、甲第2?6号証、さらには甲第7?12号証のいずれにも、基材層の側面を覆うすべてのろう材部分を除去する工程については、記載も示唆もない。

よって、上記[相違点2]について検討するまでもなく、本件特許発明5は、甲1発明’、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、または、甲1発明’及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.本件特許発明6ないし17について
請求項6ないし17は、請求項4または請求項5に従属する請求項であり、本件特許発明6ないし17は、本件特許発明4または本件特許発明5の発明特定事項をすべて含みさらに発明特定事項を追加して限定したものであるといえるから、上記本件特許発明4または上記本件特許発明5についての判断(上記「3.(2)」または「4.(2)」を参照)と同様の理由により、本件特許発明6ないし17は、甲1発明’、甲第2号証に記載の技術事項及び周知の技術事項に基づいて、または、甲1発明’及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6.まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし3は、甲1発明及び甲第2ないし6号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、また、本件特許発明4ないし17は、甲1発明’及び甲第2ないし12号証にそれぞれ記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、よって、請求項1ないし17に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということはできない。

第6 むすび

したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-10-20 
出願番号 特願2014-519851(P2014-519851)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 和俊  
特許庁審判長 森川 幸俊
特許庁審判官 國分 直樹
井上 信一
登録日 2017-01-13 
登録番号 特許第6070702号(P6070702)
権利者 日立金属株式会社
発明の名称 シールリングおよびシールリングの製造方法  
代理人 大菅 義之  
代理人 宮園 博一  
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