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審決分類 審判 全部申し立て 6項4号請求の範囲の記載形式不備  A61C
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61C
管理番号 1334406
異議申立番号 異議2017-700160  
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-12-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-02-22 
確定日 2017-11-06 
異議申立件数
事件の表示 特許第5977382号発明「歯間清掃具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5977382号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5977382号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成27年1月16日の特許出願であって、平成28年7月29日にその特許権の設定登録がされ(請求項の数4)、その後、その特許に対し、特許異議申立人古藤弘一郎により特許異議の申立てがされ、平成29年4月6日付けの取消理由通知に対し、平成29年6月9日付けで意見書が提出され、同年6月30日付けで取消理由通知(決定の予告)がされたものである。
なお、同取消理由通知(決定の予告)に対し、特許権者より意見書等は提出されなかった。


第2 本件発明
本件特許の請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、それらをまとめて「本件発明」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の請求項1?4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
歯間清掃具であって、
特定方向に沿って直線状に延びる形状を有する基部と、
前記基部の硬度よりも低い硬度を有するエラストマーからなり、前記基部の少なくとも一部を被覆するとともに歯間を清掃可能な清掃部と、を備え、
前記基部は、歯間に挿通されることが可能な形状を有し、かつ、前記特定方向の一端に形成された挿入端部及び前記特定方向の他端に形成された基端部を有する軸部と、前記基端部から前記特定方向に沿って前記軸部から離間するように延びており、指で把持されることが可能な形状を有する把持部と、を有し、
前記軸部は、前記挿入端部が前記基端部に対して当該軸部の軸方向と直交する軸直交方向に変位するのを許容するように撓み変形可能な形状を有し、
前記清掃部は、前記挿入端部を含みかつ前記軸部のうち前記軸方向の寸法以下の寸法を有する部位を被覆する形状を有し、
前記基部の前記軸方向の寸法は、35mm以上に設定されており、
前記軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な第1押圧力が0.5N以上1.4N以下となり、かつ、前記軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に35mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に8.0mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な第2押圧力が0.8N以上2.5N以下となるように、少なくとも前記基部の形状が設定されている、歯間清掃具。
【請求項2】
請求項1に記載の歯間清掃具において、
前記軸部は、当該軸部のうち前記挿入端部と前記基端部との間に位置するいずれの中間部位においても、少なくとも、当該軸部に外力が作用していないときの定常姿勢と、前記中間部位と前記挿入端部とを結ぶ第1直線と前記中間部位と前記基端部とを結ぶ第2直線とのなす角が90度となる屈曲姿勢と、の間で前記挿入端部が変位するのを許容するように変形可能な形状を有する、歯間清掃具。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯間清掃具において、
前記基部に対して前記軸方向の両側から圧縮荷重が作用した際に前記軸部に座屈が生じるように前記把持部の形状が設定されており、
前記清掃部は、前記軸部のうち、当該軸部に座屈が生じたときに当該軸部に座屈が生じる前における当該軸部の中心軸からの前記軸直交方向への変位量が最大となる最大変位部を被覆する形状を有する、歯間清掃具。
【請求項4】
請求項3に記載の歯間清掃具において、
前記軸部は、当該軸部のうち前記挿入端部から前記基端部側に1.0mm離間した部位と当該軸部のうち前記挿入端部から前記基端部側に9.0mm離間した部位との間に前記最大変位部が位置する形状に形成されている、歯間清掃具。」


第3 取消理由の概要
当審が平成29年4月6日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
1.取消理由A:特許法第36条第6項第2号について
請求項1に記載された「前記軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな・・・るように、少なくとも前記基部の形状が設定されている」事項は、その意味内容が不明確であるので、本件発明は、明確ではない。

2.取消理由B:特許法第36条第4項第1号について
請求項1に記載された「第1押圧力」に関し、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明の記載では当該「第1押圧力」がどのように測定されたどのような「押圧力」か不明であることから、発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえない。


第4 取消理由についての当合議体の判断
1.取消理由Aについて
本件特許請求の範囲の請求項1には、本件発明1における「基部の形状」を特定するための記載として、「第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな・・・るように、少なくとも前記基部の形状が設定されている」と記載されているので、この「第1押圧力」について以下に検討する。
(1)請求項1の記載について
請求項1の記載によれば、「第1押圧力」は、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な」力と、その測定方法により特定されている。
ここで、当該「清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な」力とは、文言に即せば、“清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧移動させるのに必要な力”であると自然に解釈できるところ、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」移動させることが不可能であることは、物理的に明らかであるから、当業者は、本件発明1の「第1押圧力」の意味内容を請求項1の記載に基づいて理解することができない。
また、本件特許の出願当時、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」移動させ得ることが、技術常識であったともいえない。

(2)本件明細書及び図面の記載について
次に、本件発明1において、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」した状態であって、かつ、「0.5N以上1.4N以下」の押圧力が生じる状態に関し、本件明細書及び図面の記載を参酌して検討する。
本件明細書には、「第1押圧力」ないし「第1押圧力」の具体的測定方法に関連して次の記載がある。
a:「【0029】
本実施形態では、上記の基部10の形状は、基部10のうち相対的に挿入端部12aの近くに位置する先端側部位1a(図3を参照)の強度に相当する第1押圧力が0.3N以上1.4N以下となり、かつ、・・・となるように設定されている。この基部10の形状は、前記第1押圧力が0.5N以上1.4N以下となり、・・・」
b:「【0030】
前記第1押圧力は、前記軸方向が水平と平行となる姿勢で歯間清掃具1のうち清掃部20の先端から把持部14側に10mm離間した部位を固定した状態において、歯間清掃具1のうち清掃部20の先端から把持部14側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な力である。・・・」
c:「【0033】
先に、図3を参照しながら、前記第1押圧力の測定方法を説明する。
【0034】
まず、図3に示されるように、前記軸方向(軸部12と把持部14とを結ぶ方向)が水平となる姿勢で歯間清掃具1を固定具32に固定する。具体的に、前記軸方向が水平と平行となる姿勢で歯間清掃具1のうち清掃部20の先端から把持部14側に10mm以上離間する部位全体を固定具32に固定する。
【0035】
次に、押圧力測定部34により、歯間清掃具1のうち清掃部20の先端から把持部14側に2.5mm離間した部位2a(前記先端側部位1aの先端部)を鉛直下向きに10mm押圧する。具体的に、押圧力測定部34が前記部位2aに接触した状態から当該押圧力測定部34を鉛直下向きに10mm変位させる。この押圧力測定部34による押圧に伴い、前記部位2aは、先端側部位1aの撓み変形を伴いながら鉛直下向きに10mm変位する。そして、このときの押圧力、すなわち、第1押圧力を押圧力測定部34により測定する。本実施形態では、この第1押圧力は、1.3Nである。」

これらの記載、特に、段落【0035】の「具体的に、押圧力測定部34が前記部位2aに接触した状態から当該押圧力測定部34を鉛直下向きに10mm変位させる。この押圧力測定部34による押圧に伴い、前記部位2aは、先端側部位1aの撓み変形を伴いながら鉛直下向きに10mm変位する。そして、このときの押圧力、すなわち、第1押圧力を押圧力測定部34により測定する。」なる記載によれば、本件発明1において、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」した状態であって、かつ、「0.5N以上1.4N以下」の押圧力が生じる状態とは、「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」することで、当該「部位」が鉛直下向きに10mm変位した状態であって、このときに「0.5N以上1.4N以下」の押圧力が押圧力測定部により測定される状態、と把握できる。
そして、「歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧」することで、当該「部位」が鉛直下向きに10mm変位した状態とすることは、物理的に不可能であるから、本件明細書及び図面の記載に基づいても、本件発明1の「第1押圧力」の意味内容を、当業者は理解することがやはりできない。

(3)特許権者の主張について
特許権者は平成29年6月9日付け意見書において、本件明細書の「段落[0034]、[0035]の記載は、『押圧力測定部34は、歯間清掃具1の部位2aに接触した位置から鉛直下向きに10mm変位する過程で当該押圧力測定部34の下面と歯間清掃具1との接触部位を前記部位2aから歯間清掃具1の先端に向かって変移させつつ、途中で押圧力測定部34の下面が歯間清掃具1の先端と接触しなくなった後、前記部位2aの押圧開始点から鉛直下向きに10mmの点に至る』と解釈するのが相当である。・・・請求項1に係る発明の『基部の形状』の技術的意味は明確である。」との主張をしている。
特許権者が主張する上記の解釈を前提とすると、本件明細書段落【0035】の「そして、このときの押圧力、すなわち、第1押圧力を押圧力測定部34により測定する。」の「このとき」は、「途中で押圧力測定部34の下面が歯間清掃具1の先端と接触しなくなった後、前記部位2aの押圧開始点から鉛直下向きに10mmの点に至る」ときと判断されるが(本件明細書にこの判断を妨げる記載は見当たらない。)、この場合、「押圧力測定部34の下面が歯間清掃具1の先端と接触しなくなった後」に測定される「第1押圧力」とは、もはや何が何をどのように押圧する「力」であるのか、そして、「基部の形状」を特定するためのパラメータとして、この「力」にどのような意味があるのか、当業者といえども理解し得ない。
なお、本件明細書段落【0034】?【0035】の記載について特許権者が主張するように解釈したとしても、請求項1に「清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な第1押圧力」と記載されている以上、当該「第1押圧力」を、上記(1)で示したように“清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧移動させるのに必要な押圧力”と、文言に即して自然に解することが、妨げられるものでもない。
してみると、本件発明1における「第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな・・・るように、少なくとも前記基部の形状が設定されている」ことの意味内容を当業者が理解できるとは依然としていえないのであるから、「請求項1に係る発明の『基部の形状』の技術的意味は明確である。」という特許権者の主張は採用できない。

(4)小括
したがって、明細書及び図面の記載並びに技術常識を考慮しても、請求項1に記載された「軸方向が水平と平行となる姿勢で当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に10mm離間した部位を固定した状態において、当該歯間清掃具のうち前記清掃部の先端から前記把持部側に2.5mm離間した部位を鉛直下向きに10mm押圧するのに必要な第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな」ることの意味内容を当業者が理解できないのであるから、その結果、「第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな・・・るように」「設定されている」「基部の形状」を当業者が明確に把握できない。
そうすると、本件発明1は明確であるとはいえず、また、請求項1を直接的又は間接的に引用して記載した請求項2?4に係る本件発明2?4についても、本件発明1と同様に明確であるとはいえない。
よって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

2.取消理由Bについて
上記1.(2)で述べたとおり、本件明細書の記載によっては、当業者が「第1押圧力」の意味内容を、その測定方法も含め明確に理解することができない。
また、上記1.(3)で述べたとおり、本件明細書における「第1押圧力」の測定方法に関する記載を特許権者の主張のとおり解釈したとしても、当業者は「第1押圧力」がどのような「力」であるのか、その意味内容をやはり理解することができない。
そうすると、本件明細書の記載からは、「第1押圧力が0.5N以上1.4N以下とな・・・るように、少なくとも前記基部の形状が設定されている」本件発明の「歯間清掃具」をどのように製造すればよいのか不明であるから、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
したがって、本件発明1?4に係る特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-09-27 
出願番号 特願2015-6487(P2015-6487)
審決分類 P 1 651・ 538- Z (A61C)
P 1 651・ 537- Z (A61C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 胡谷 佳津志  
特許庁審判長 内藤 真徳
特許庁審判官 熊倉 強
関谷 一夫
登録日 2016-07-29 
登録番号 特許第5977382号(P5977382)
権利者 小林製薬株式会社
発明の名称 歯間清掃具  
代理人 小谷 昌崇  
代理人 小谷 悦司  
代理人 荒田 秀明  
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