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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1334616
審判番号 不服2016-16631  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-07 
確定日 2017-11-15 
事件の表示 特願2012-46467「メタマテリアルアンテナを使用しているRFIDデバイス」拒絶査定不服審判事件〔平成24年9月27日出願公開,特開2012-186803〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,2012年3月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2011年3月4日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成27年12月28日付けで拒絶理由が通知され,平成28年4月5日付けで手続補正がされるとともに意見書が提出されたが,同年7月4日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年11月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年11月7日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正の概要
(1)平成28年11月7日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)は,平成28年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
RFIDチップと,
2以上のパッチセルからなるパッチセルスタックによって提供されるアンテナと,
前記RFIDチップを前記アンテナに電気的に結合するフィードラインと,
を有し,
前記パッチセルスタックに関する等価回路が,
少なくとも2つのキャパシタンスであって,少なくとも2つのキャパシタンスの各々が,直列インダクタンスを介して2以上のキャパシタンスの各々の追加のキャパシタンスに接続されることを特徴とする少なくとも2つのキャパシタンスと,
少なくとも2つのシャントインダクタンスと,を備え,
前記アンテナが,1以上の周波数バンドをサポートするように構成され,1以上の周波数バンドの各周波数バンドが中心周波数を有し,
前記アンテナが,最大の中心周波数に対応する波長の一部のサイズを有する
ことを特徴とするラジオ周波識別(RFID)タグ。」を
「【請求項1】
RFIDチップと,
2以上のパッチセルからなるパッチセルスタックによって提供されるアンテナと,
前記RFIDチップを前記アンテナに電気的に結合するフィードラインと,
を有し,
前記パッチセルスタックに関する等価回路が,
インダクタンスと直列に接続された,少なくとも2つのキャパシタンスと,
少なくとも2つのシャントインダクタンスと,を備え,
前記アンテナが,1以上の周波数バンドをサポートするように構成され,1以上の周波数バンドの各周波数バンドが中心周波数を有する
ことを特徴とするラジオ周波識別(RFID)タグ。」
とすることを含むものであり,以下の補正事項1,2を有する。

(補正事項1)
補正前の「少なくとも2つのキャパシタンスであって,少なくとも2つのキャパシタンスの各々が,直列インダクタンスを介して2以上のキャパシタンスの各々の追加のキャパシタンスに接続されることを特徴とする少なくとも2つのキャパシタンス」を,「インダクタンスと直列に接続された,少なくとも2つのキャパシタンス」とする補正。

(補正事項2)
補正前の「前記アンテナが,最大の中心周波数に対応する波長の一部のサイズを有する」点を削除する補正。

(2)本件補正は,当初明細書の段落【0033】の記載について,補正前の
「【0033】
[0040] さらに別の実施形態では,図1のアンテナ121は,パッチに対して垂直な平面に垂直に配置される2つ以上の1Dまたは2Dパッチセル420a,420bを含んでいるパッチセルスタック410(図4において最適に示される)から成ることができる。各セルの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。等価回路図440は,インダクタンス443と直列に接続される2つ以上のキャパシタンス441a,441bを含むことができる。等価回路図440は,2つ以上のシャントインダクタンス446a,446bから更に成ることができる。」を
「【0033】
[0040] さらに別の実施形態では,図1のアンテナ121は,パッチに対して垂直な平面に垂直に配置される2つ以上の1Dまたは2Dパッチセル420a,420bを含んでいるパッチセルスタック410(図4において最適に示される)から成ることができる。各セルスタックの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。等価回路図440は,インダクタンス443と直列に接続される2つ以上のキャパシタンス441a,441bを含むことができる。等価回路図440は,2つ以上のシャントインダクタンス446a,446bから更に成ることができる。」
とするものであり,以下の補正事項3を有する。

(補正事項3)
当初明細書に記載された事項のうち「各セルの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。」を,「各セルスタックの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。」とする補正。

2.補正の適否
(1)補正事項2について
補正事項2は,補正前の請求項1から,「前記アンテナが,最大の中心周波数に対応する波長の一部のサイズを有する」点を削除する補正であり,前記の点を発明の構成要件としない点で補正後の請求項1の技術範囲を拡張するものであるから,この補正は,特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当しない。また,補正事項2は,請求項の削除,誤記の訂正及び明りようでない記載の釈明のいずれの目的にも該当しない。
よって,補正事項2は,特許法第17条の2第5項各号の規定のいずれにも該当しない。

(2)補正事項3について
「パッチ」とは,当初明細書の【0033】の「パッチに対して垂直な平面に垂直に配置される2つ以上の1Dまたは2Dパッチセル420a,420bを含んでいるパッチセルスタック410(図4において最適に示される)」の記載及び図4から,図4の各パッチセル420a,420bの上下に配置される部材を指すものと解され,「底のパッチ」とは,そのうち「パッチセル」の下側に配置されるパッチと解される。そして,「セルスタック」は該【0033】の記載から「垂直に配置される2つ以上のパッチセルを含んでいるパッチセルスタック410」を指すものと解される。すると,「セルスタックの底のパッチ」とは,垂直に配置される2つ以上のパッチセルのうち1つのパッチセルの底のパッチ,例えば図4のパッチセル420bの下側のパッチと解するのが自然である。してみると,補正事項3の「各セルスタックの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。」は,垂直に配置される2つ以上のパッチセルのうちの1つのパッチセルの底のパッチ,すなわち「1つのパッチ」のみがグランド面に接続される事項を特定したものと解される。
一方,出願当初の明細書,特許請求の範囲及び図面(以下、「当初明細書等」という。)には,「各セルの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。」(当初明細書の【0033】)と記載されており,「各セルの底のパッチ」は,各セル420a,420bのそれぞれの下側のパッチを示していると解されるから,パッチセルスタック410における2つのパッチセル420a,420bのそれぞれの「パッチセル」の「底のパッチ」,すなわち「2つのパッチ」がグランド面に接続される事項が記載されている。
してみると,補正事項3は「パッチセルスタック410」の「グランド面に接続される」対象を,当初明細書等に記載された2つの「パッチセル」のそれぞれの「パッチ」から,1つの「パッチセル」の「パッチ」に変更するものと認められるが,そのような事項は,当初明細書等に記載されておらず,当初明細書等の記載から当業者に自明な事項であるとも認められない。
そうすると,補正事項3で特定した事項は,当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない。
したがって,補正事項3は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。

3.結語
以上のとおり,本件補正2は,特許法第17条の2第5項の規定に違反し,本件補正3は,特許法第17条の2第3項の規定に違反するので,該補正事項2及び3を含む本件補正は,特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成28年11月7日付けの手続補正は却下されたので,本願の請求項1-17に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年4月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-17に記載されたとおりのものである。

2.原査定の概要
原査定(平成28年7月4日付け拒絶査定)の概要は以下のとおりである。

●理由1(特許法第36条第4項第1号)について
・請求項 1-17
請求項1-17における「パッチセルスタック」は,平成27年12月28日付け拒絶理由通知書に記載した下記の理由(1)-(3)により,明細書及び図面の全ての記載並びに出願時の技術常識を参酌しても,請求項で特定された等価回路を持つアンテナとして当業者が作ることができない。
(1)発明の詳細な説明には,「パッチセルスタック」の構造及びこれに対応する等価回路図の例が示されている(段落[0033],[図4]を参照。)が,
出願時の技術常識を参酌しても,どのようにパッチセルスタック410の各構造から,等価回路図440が得られるかが不明である。
(2)「パッチセルスタック」は,その給電点の位置が不明であるから,アンテナとして動作させるための構成が不明である。
(3)「パッチセルスタック」について,段落[0033]における「各セルの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。」との記載は,「各セルの底のパッチ」がどの部分を指しているのか不明であり,出願時の技術常識を参酌しても,各セルのグランド面の位置が不明である。

●理由2(特許法第36条第6項第2号)について
・請求項 4,9,15
請求項4,9,15には「前記アンテナが,前記最大の中心周波数に対応する波長の1/10以下のサイズを有する」との記載がある。
しかしながら,明細書及び図面の全ての記載並びに出願時の技術常識を参酌しても,アンテナのいかなる寸法が,最大の中心周波数に対応する波長の1/10以下の「サイズ」となることを意味するのかが不明である(例えば,「サイズ」として,アンテナの高さや幅等が考えられるが,本願の当初明細書等に,このような事項は記載されていない。)。
したがって,依然として,請求項4,9,15に係る発明は明確でない。

・請求項 5,10,16
請求項5,10,16には「前記フィードラインが,モノポール・・・によって供給される」との記載がある。
しかしながら,出願時の技術常識を参酌するに,「モノポール」とはモノポールアンテナを意味すると認められるところ,フィードラインをモノポールアンテナによって供給することの技術的意味を理解することができない。
したがって,依然として,請求項5,10,16に係る発明は明確でない。

3.当審の判断
そこで,原査定の理由1,2について検討する。

●理由1(特許法第36条第4項第1号)について
本願発明は,「前記パッチセルスタックに関する等価回路が,インダクタンスと直列に接続された,少なくとも2つのキャパシタンスと,少なくとも2つのシャントインダクタンスと,を備え」る「2以上のパッチセルからなるパッチセルスタックによって提供されるアンテナ」という発明特定事項を備えていることから,発明の詳細な説明の図4の「等価回路図440」の実施形態に基づくものと解され,この点は審判請求書の「2.(2)補正の説明」の項における請求人の釈明とも整合する。
そこで,発明の詳細な説明の図4の「等価回路図440」に関する記載に着目すると,段落【0033】に「図1のアンテナ121は,パッチに対して垂直な平面に垂直に配置される2つ以上の1Dまたは2Dパッチセル420a,420bを含んでいるパッチセルスタック410(図4において最適に示される)から成ることができる。各セルの底のパッチは,グランド面に接続されることができる。等価回路図440は,インダクタンス443と直列に接続される2つ以上のキャパシタンス441a,441bを含むことができる。等価回路図440は,2つ以上のシャントインダクタンス446a,446bから更に成ることができる。」と記載され,それに対応して図面の図4に「パッチセルスタック410」の「ブロック線図」及び「等価回路図」が図示されている。
上記記載によれば,「等価回路図440」が図4に図示される「パッチセルスタック410」の「ブロック線図」の等価回路として記載していることは理解できるものの,「インダクタンス433」,「キャパシタンス441a,441b」,「シャントインダクタンス446a,446b」を含む「等価回路図440」が該「
ブロック線図」に図示される「パッチセルスタック410」の構成要素とどのような関係にあるとして導出したのかについては,何ら記載されていない。
そして,「パッチセルスタック410」の構造に着目しても,上記記載では「パッチに対して垂直な平面に垂直に配置される2つ以上の1Dまたは2Dパッチセル420a,420bを含むこと」,及び,「各セルの底のパッチは,グランド面に接続されること」が特定されているに留まり,また,図4の「ブロック線図」をみても,パッチセル420aとパッチセル420bとが垂直に配置されること,パッチセル420aとパッチセル420bとの間に直線で示されるものがあることしか読み取ることができず,加えて,アンテナの動作に不可欠な給電点が「パッチセルスタック410」のいずれに位置するのかも不明であるため,「パッチセルスタック410」の構造と「等価回路図440」との関係は依然として不明である。

なお,請求人は,審判請求書において,
(1)「補正前の「少なくとも2つのキャパシタンスであって,少なくとも2つのキャパシタンスの各々が,直列インダクタンスを介して2以上のキャパシタンスの各々の追加のキャパシタンスに接続されることを特徴とする少なくとも2つのキャパシタンス」という記載を「インダクタンスと直列に接続された,少なくとも2つのキャパシタンス」と補正した。かかる補正により,インダクタンス443と直列に接続された少なくとも2つのキャパシタンス441a,441bという図4に記載した等価回路と整合する構成となりご指摘頂いた不明瞭は解消した。」旨を主張するが,仮に,等価回路自体の構成が明確になったとしても,「パッチセルスタック410」の構造と「等価回路図440」との関係は,依然として不明である。
また,
(2)「図1にてアンテナ121への給電は,フィードライン131にて行われているのと同様に,図4において立体的に示されているパッチセル420aおよび420bとの間を電気的に結合している直線がフィードラインに相当し,アンテナへの給電が明確に開示されている。」旨を主張するが,本願発明では「アンテナに電気的に結合するフィードライン」とあるから,「フィードライン」は「アンテナ」とは別体のものと認められる。他方,図4の「ブロック線図」に図示される直線は,「パッチセル420a」と「パッチセル420b」の間に位置していることが読み取れるから「パッチセルスタック410」,すなわち「アンテナ」の構成要素であることは明らかである。してみると,前記直線が「フィードライン」に相当するとの主張には,そもそも矛盾が認められるので採用できない。
したがって,本願明細書及び図面の全ての記載並びに出願日当時の技術常識を斟酌しても,本願発明の「前記パッチセルスタックに関する等価回路が,インダクタンスと直列に接続された,少なくとも2つのキャパシタンスと,少なくとも2つのシャントインダクタンスと,を備え」る「2以上のパッチセルからなるパッチセルスタックによって提供されるアンテナ」を作成することは困難であるから,本願明細書及び図面の記載はその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

よって,本願は,原査定の理由1が依然として解消していない。

●理由2(特許法第36条第6項第2号)について
上述のとおり,平成28年11月7日付けの手続補正は却下されたので,当該理由は解消していない。
よって,本願は,原査定の理由2が依然として解消していない。

第4 むすび
以上のとおり,本願は,原査定の拒絶理由により拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-16 
結審通知日 2017-06-19 
審決日 2017-07-05 
出願番号 特願2012-46467(P2012-46467)
審決分類 P 1 8・ 57- Z (H01Q)
P 1 8・ 537- Z (H01Q)
P 1 8・ 536- Z (H01Q)
P 1 8・ 561- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 一央米倉 秀明西村 純  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 中野 浩昌
吉田 隆之
発明の名称 メタマテリアルアンテナを使用しているRFIDデバイス  
代理人 小野 新次郎  
代理人 夫馬 直樹  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 竹内 茂雄  

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