• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1334630
審判番号 不服2017-3326  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-03-06 
確定日 2017-12-11 
事件の表示 特願2013- 19884「固体撮像装置およびカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月25日出願公開、特開2014-154563、請求項の数(11)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年2月4日を出願日とする出願であって、平成28年1月13日付で審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年9月21日付で拒絶理由通知が通知され、同年11月16日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、同年12月2日付で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされたものである。
これに対して、平成29年3月6日付で審判請求がなされ、当審において同年8月3日付で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年10月4日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正(以下、「本手続補正」という。)がなされたものである。

第2 原査定の概要
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成28年9月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書並びに手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由1(進歩性)について

・請求項 1-10
・引用文献等 1-6

出願人は、平成28年11月16日付けの手続補正書において、請求項1について「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」点を補正し、
平成28年11月16日付けの意見書において、「つまり、引用文献2に記載された発明において、遮光膜39の開口の形状は、フォトダイオードPDの受光面の形状に従っており、受光面の形状が四角形であれば開口の形状も四角形になり、受光面の形状が多角形であれば開口の形状も多角形になり、受光面の形状が円形であれば開口の形状も円形になります。 一方、主引例である引用文献1では、隆起部112は、平面格子形状を有し(段落0085)、隆起部112の開口は、図9に示されるように四角形の形状を有します。また、光電変換部102も、図9に示されるように四角形の形状を有します。つまり、引用文献1に記載された発明において、隆起部112の開口の形状は、光電変換部102の形状である四角形と同様に、四角形です。 したがって、引用文献1における、四角形の光電変換部102と、四角形の開口を有する隆起部112とを備える構成に対して引用文献2に記載された発明を適用して、隆起部112の開口を円形に変更するような改良は、当業者が引用文献1、2の記載から容易に想到し得るようなものではありません。」(主張1)、
『一方、引用文献3に記載された発明は、隆起部112の側面を覆っている部分における平坦な第1屈折率層42と平坦な第2屈折率層43との屈折率差によって光の波面51を湾曲させレンズ作用を起こさせるものです(図5、段落0047)。よって、引用文献2に記載された発明において、絶縁膜34(半導体基板22)の表面に平行な部分における第1屈折率層42の膜厚t1は、レンズ作用とは全く関係がありませんし、そもそも、第1屈折率層42と第2屈折率層43との界面は、凸レンズ面や凹レンズ面のようなレンズ面を構成するものではありません。 よって、仮に、引用文献3に、絶縁膜34(半導体基板22)の表面に平行な部分における第1屈折率層42の膜厚t1を遮光膜39の膜厚t2より小さくしようとする思想が開示されていると解釈することが可能であるとしても(段落0036、0061)、それは、レンズ作用あるいはレンズパワーを変更することとは全く関係がありません。 したがって、引用文献3に記載された事項に基づいて引用文献1における凹レンズの形状を変更するようなことは、当業者にとって容易に想到し得ることではありません。 また、仮に、引用文献3の記載に基づいて引用文献1における2層構造の膜のうち下側の膜である絶縁膜113aの厚さを薄くするという思考が働いたとしても、そのような思考の下では、絶縁膜113aの上面は、引用文献3の第1屈折率層42の上面のように平坦になる筈です。この場合、もはや絶縁膜113a(の上面)は、凹レンズとしては機能しなくなります。そして、引用文献3の記載に基づいて引用文献1における2層構造の膜のうち下側の膜である絶縁膜113aの厚さを単純に薄くした場合、それによって平坦になった第1屈折率層42の上面は、本願の補正後の請求項1、8、9における「凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」ことに対応する構造を有しなくなります。
つまり、特徴(b)は、引用文献1、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得るものではありません。』(主張2)旨、主張している。
出願人の主張1について検討すると、引用文献2に記載された発明において、遮光膜39の開口の形状は、段落[0074]に記載されているように「集光状態に応じて遮光膜39の開口形状を適宜選択することができる」ものであり、フォトダイオードPDの形状に従うものではない。そうすると、引用文献1に記載された発明において、引用文献1に記載されたフォトダイオードPDがどのような形状であったとしても、引用文献2に記載された発明を適用して集光状態に応じて遮光膜39の開口形状を適宜選択し、「複数の円形開口」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
出願人の主張2について検討すると、引用文献1に記載された発明において、引用文献1の段落[0086]に記載されているように、絶縁膜113aは「シリコン基板112の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう絶縁膜113aを形成する」ものであり、絶縁膜113aを凹レンズの形状とすること(すなわち、平坦化膜113bを凸レンズの形状とすること)は、引用文献1に記載された発明において必須の事項である。よって引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して絶縁膜113aの厚さを薄くする場合、上記凹レンズ/凸レンズとして機能する形状を維持することは、当業者が当然考慮する事項である。そうすると、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して、「凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
したがって、出願人の主張は、採用できない。
また、請求項8、9についても、上記と同様である。請求項2-7、10については、平成28年9月21日付けの拒絶理由通知と同様である。
よって、請求項1-10に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2012-84815号公報
2.特開2011-135100号公報
3.特開2012-124377号公報
4.特開2005-117008号公報
5.特開2012-15283号公報
6.特開2011-238688号公報」
2 原査定の拒絶理由通知の概要
平成28年9月21日付拒絶理由通知書の概要は、次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1
・引用文献等 1、2
・備考

引用文献1の段落[0073]-[0076]、及び図1、図9を参照すると、引用文献1には、「複数の画素が、半導体基板101の裏面側領域に形成され、半導体基板101の表面側には、信号処理回路を構成する素子に接続される配線104が、層間絶縁膜106を介して多層に形成され、入射光を光電変換する光電変換部102を有する、被写体からの光が裏面側から入射される裏面照射型の固体撮像装置100であり、該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部112が選択的に形成され、該半導体基板の表面上には絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成され、この絶縁膜上113aには、平坦化膜113bが形成されており、該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きくなっている」発明が記載されている。
本願の請求項1に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1に記載された発明の「表面側」、「裏面側」、「光反射性部材からなる隆起部112」は、それぞれ本願の請求項1に係る発明の「第1面」、「第2面」、「遮光体」に相当する。引用文献1に記載された発明の「複数の画素が、半導体基板101の裏面側領域に形成され、半導体基板101の表面側には、信号処理回路を構成する素子に接続される配線104が、層間絶縁膜106を介して多層に形成され、入射光を光電変換する光電変換部102を有する、被写体からの光が裏面側から入射される裏面照射型の固体撮像装置100」は、本願の請求項1に係る発明の「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置」に相当する。また、引用文献1に記載された発明の「該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部112が選択的に形成され」は、図9から明らかなように、本願の請求項1に係る発明の「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と」に相当する。更に、引用文献1に記載された発明の「該半導体基板の表面上には絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成され」は、本願の請求項1に係る発明の「前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と」に相当する。加えて、引用文献1に記載された発明の「この絶縁膜上113aには、平坦化膜113bが形成されており、該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きくなっている」は、本願の請求項1に係る発明の「前記第1層よりも高い屈折率を有し、前記第1層を覆う第2層と、を備え」に相当する。そして、引用文献1に記載された発明の「該半導体基板の表面上には絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成され、この絶縁膜上113aには、平坦化膜113bが形成されており」は、図1から明らかなように、絶縁膜113aの凹レンズ形状を反映して平坦化膜113bが裏面側に向かって凸の形状となるから、本願の請求項1に係る発明の「前記第1層と前記第2層との境界面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有する」に相当する。
したがって、両者は「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、前記第1層よりも高い屈折率を有し、前記第1層を覆う第2層と、を備え、前記第1層と前記第2層との境界面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有することを特徴とする固体撮像装置。」で一致し、本願の請求項1に係る発明が「複数の円形開口」であるのに対して、引用文献1に記載された発明では、「円形」の特定がされていない点で相違している。
上記相違点について検討する。
引用文献2の段落[0036]-[0037]、[0076]、及び図11Cを参照すると、引用文献2には、「フォトダイオードPDの受光面34となる基板裏面22B上には、絶縁層が形成される。この絶縁層は、本例では反射防止膜36で形成される。この反射防止膜36上の画素境界に、すなわち画素境界に対応する部分に遮光膜39が形成される。図11Cに示す遮光膜39は、開口形状として円形の開口39cを有して構成される。」と記載されている。
引用文献1、2に記載された発明は、裏面照射型の固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、隣接画素間の光学混色を抑制する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、「複数の円形開口」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項1に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 2
・引用文献等 1-3
・備考

本願の請求項2に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、本願の請求項2に係る発明が「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層が有する厚さが前記遮光体が有する厚さよりも小さい」のに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献3の段落[0036]、[0061]、及び図1、図2を参照すると、引用文献3には、「遮光膜39の膜厚t2は、出来るだけ薄い状態で遮光効果が得られるように、100nm?500nm程度が好ましい。マイクロレンズ37とフォトダイオードPD間の距離を短くして感度特性をより向上させるためには、第1屈折率層42の膜厚を100nm以下にすることが好ましい。従って、上記したシリコン酸化(SiO)膜の第1屈折率層42の場合、膜厚t1=t3は、75nm?82nm程度とするのが好ましい。」と記載されている。
引用文献1、3に記載された発明は、裏面照射型の固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、光学混色を低減する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して、「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層が有する厚さが前記遮光体が有する厚さよりも小さい」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項2に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 3
・引用文献等 1-3
・備考

引用文献1の段落[0078]を参照すると、引用文献1には、「絶縁膜113aを構成する透光性の無機材料は、例えば、1.2?1.6の範囲の屈折率を有する、例えばシリコン酸化膜であり、平坦化膜113bを構成する透光性の有機材料は1.5?2.0の範囲の屈折率を有する、例えば透明樹脂膜である。」と記載されている。
本願の請求項3に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「前記第1層は、無機材料で構成されている」点で一致し、本願の請求項3に係る発明が「前記第2層は、無機材料で構成されている」のに対して、引用文献1に記載された発明では、「前記第2層は、有機材料で構成されている」点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献3の段落[0030]を参照すると、引用文献3には、「第2屈折率層43の材料としては、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化窒化膜などが用いられる。」と記載されている。
引用文献1、3に記載された発明は、裏面照射型の固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、光学混色を低減する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して、「前記第2層は、無機材料で構成されている」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項3に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 4
・引用文献等 1-3
・備考

引用文献1の段落[0078]を参照すると、引用文献1には、「絶縁膜113aを構成する透光性の無機材料は、例えば、1.2?1.6の範囲の屈折率を有する、例えばシリコン酸化膜であり、平坦化膜113bを構成する透光性の有機材料は1.5?2.0の範囲の屈折率を有する、例えば透明樹脂膜である。」と記載されている。
本願の請求項4に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「前記第1層は、酸化シリコンで構成され、前記第2層は、前記第1層よりも高い屈折率を有する材料で構成されている」点で一致し、本願の請求項4に係る発明が「前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウムおよび酸化チタンからなるグループから選択される材料」であるのに対して、引用文献1に記載された発明では、「前記第2層は、例えば透明樹脂膜である」点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献3の段落[0030]を参照すると、引用文献3には、「第2屈折率層43の材料としては、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化窒化膜などが用いられる。つまり、屈折率の大小関係は、第1屈折率層42<第2屈折率層43である。」と記載されている。
引用文献1、3に記載された発明は、裏面照射型の固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、光学混色を低減する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して、「前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコンからなるグループから選択される材料」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。また、第1層の屈折率<第2層の屈折率を満たす他の周知の材料とすることも、当業者が適宜なし得る事項である。

よって、本願の請求項4に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 5
・引用文献等 1-4
・備考

引用文献1の段落[0079]を参照すると、引用文献1には、「上記平坦化膜113b上には、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115が積層されている。」と記載されている。
本願の請求項5に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「前記第2層の上に配置されたカラーフィルタ層を更に備え」ている点で一致し、本願の請求項5に係る発明が「前記複数の円形開口のそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」のに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献4の段落[0074]、[0115]、及び図11(B)を参照すると、引用文献4には、「遮光膜の開口部の大きさを画素上方のカラーフィルタの色ごとに調整することで、固体撮像素子の分光感度を制御することができる。図11(B)に、開口形状を円形にした場合を示す。図に示すように、開口部108はそれぞれ円形もしくは実質的に円形となるように形成されており、開口部108R、108G、108Rの開口面積(108RL、108GL、108BL)を108RL>108GL>108BLの関係になるように設定されている。」と記載されている。
引用文献1、4に記載された発明は、固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、色再現性を向上する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献4に記載された発明を適用して、「前記複数の円形開口のそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項5に係る発明は、引用文献1-4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 6
・引用文献等 1-5
・備考

引用文献1の段落[0079]を参照すると、引用文献1には、「上記平坦化膜113b上には、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115が積層されている。」と記載されている。
本願の請求項6に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「前記カラーフィルタ層の上に配置された複数のマイクロレンズを更に備え」ている点で一致し、本願の請求項6に係る発明が「前記複数のマイクロレンズのそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」のに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献5の段落[0055]-[0058]、及び図16を参照すると、引用文献5には、「図16に示すように、青色カラーフィルタ層13上および赤色カラーフィルタ層14上に形成された第1のマイクロレンズ51の平面形状は、円形のものである。緑色カラーフィルタ層15上に形成された第2のマイクロレンズ52の平面形状も同様に、円形のものである。このように形成された第1、第2のマイクロレンズ51、52は、互いに大きさが異なるものである。すなわち、第1のマイクロレンズ51の平面形状の面積は、第2のマイクロレンズ52の平面形状の面積よりも大きくなるように形成されている。」と記載されている。
引用文献1、5に記載された発明は、固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、色再現性を向上する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献5に記載された発明を適用して、「前記複数のマイクロレンズのそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項6に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 7
・引用文献等 1-5
・備考

本願の請求項7に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、本願の請求項7に係る発明が「前記複数の光電変換部が配置された領域は、有効画素領域およびオプティカルブラック画素領域を含み、前記遮光体は、前記オプティカルブラック画素領域に配置された光電変換部を遮光するように配置されている」のに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献2の段落[0079]、及び図12を参照すると、引用文献2には、「画素領域23に対応する絶縁膜52上に画素境界における格子状の遮光膜39が形成されると共に、周辺回路部57及び画素領域の光学的黒レベル領域23Bに対応する絶縁膜52上に連続した遮光膜39が形成される。光学的黒レベル領域23Bは、有効画素領域23Aの外周に形成される。これら画素境界の遮光膜39と、周辺回路57及び光学的黒レベル領域23Bにわたる連続した遮光膜39は、同材料膜で同時に形成される。」と記載されている。
引用文献1、2に記載された発明は、裏面照射型の固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、隣接画素間の光学混色を抑制する機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、「前記複数の光電変換部が配置された領域は、有効画素領域およびオプティカルブラック画素領域を含み、前記遮光体は、前記オプティカルブラック画素領域に配置された光電変換部を遮光するように配置されている」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項7に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 8
・引用文献等 1-6
・備考

本願の請求項8に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、本願の請求項8に係る発明が「前記第2層の上面は、前記第2層によって複数の両凸レンズが構成されるように複数の凸面領域を有する」のに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献6の段落[0026]-[0027]、及び図2を参照すると、引用文献6には、「下凸層内レンズ33上には、例えばSiNからなる上凸形状の層内レンズ(以下、上凸層内レンズという)34が形成されている。マイクロレンズ37に入射した入射光は、上凸層内レンズ34によって集光されて遮光膜開口部30aに導かれ、さらに下凸層内レンズ33によって集光されることで、効率よく受光素子12によって受光される。」と記載されている。
引用文献1、6に記載された発明は、固体撮像装置である点で同一の技術分野に属するものであり、集光効率を高める機能ないし作用の点で共通するから、引用文献1に記載された発明において、引用文献6に記載された発明を適用して、「前記第2層の上面は、前記第2層によって複数の両凸レンズが構成されるように複数の凸面領域を有する」構成とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項8に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 9
・引用文献等 1-3
・備考

本願の請求項9に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、前記第1層を覆う第2層と、を備え、前記第1層と前記第2層との境界面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンで構成されている、ことを特徴とする固体撮像装置。」である点で一致し、本願の請求項9に係る発明が「複数の円形開口」、及び「前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウムおよび酸化チタンからなるグループから選択される材料」であることに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

しかしながら、上記「・請求項 1」の「・備考」と同様の理由により、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、「複数の円形開口」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。
また、上記「・請求項 4」の「・備考」と同様の理由により、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された発明を適用して、「前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコンからなるグループから選択される材料」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項9に係る発明は、引用文献1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 10
・引用文献等 1、2
・備考

本願の請求項10に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、前記第1層を覆う第2層と、を備え、前記第1層と前記第2層との境界面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出していることを特徴とする固体撮像装置。」である点で一致し、本願の請求項10に係る発明が「複数の円形開口」である、及び「前記複数の光電変換部のそれぞれ光を集光させる」ことに対して、引用文献1に記載された発明では、そのような特定がされていない点で相違している。

上記相違点について検討する。
引用文献1の段落[0088]-[0089]を参照すると、引用文献1には、「このような構成の裏面照射型の固体撮像装置100では、撮像領域上に各画素の光電変換部を囲むように格子状金属膜(隆起部)112を設け、さらに撮像領域上に、この格子状金属膜112による段差を反映して、絶縁膜113aを凹レンズが形成されるよう形成しているので、固体撮像装置100の裏面側から入射する被写体からの光が、絶縁膜113aが形成する凹レンズにより、効果的に該光電変換部102に集光されることとなる。つまり、マイクロレンズで集光された入射光が凹レンズ(層内レンズ)を介して光電変換部のフォトダイオード中心に入射するとともに、隣接画素へ散乱した光は金属膜で全反射して所望のフォトダイオードにのみ入射するので、混色(クロストーク)の発生を抑制することができる。」と記載されている。引用文献1に記載された発明は、層内レンズと光電変換部がそれぞれ1対1に対応しているので、本願の請求項10に係る発明の「前記複数の光電変換部のそれぞれ光を集光させる」に相当する。
また、上記「・請求項 1」の「・備考」と同様の理由により、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用して、「複数の円形開口」とすることは、当業者が容易に想到し得た事項である。

よって、本願の請求項10に係る発明は、引用文献1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。

・請求項 11
・引用文献等 1-6
・備考

引用文献1の段落[0093]-[0094]、及び図11を参照すると、引用文献1には、「上記実施形態1の固体撮像装置を撮像部に用いた、例えばデジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラなどのデジタルカメラや、画像入力カメラ、スキャナ、ファクシミリ、カメラ付き携帯電話装置などの、画像入力デバイスを有した電子情報機器について以下簡単に説明する。図11に示す本発明の実施形態2による電子情報機器90は、本発明の上記実施形態1の固体撮像装置を、被写体の撮影を行う撮像部91として備えたものであり、このような撮像部による撮影により得られた高品位な画像データを記録用に所定の信号処理した後にデータ記録する記録メディアなどのメモリ部92と、この画像データを表示用に所定の信号処理した後に液晶表示画面などの表示画面上に表示する液晶表示装置などの表示部93と、この画像データを通信用に所定の信号処理をした後に通信処理する送受信装置などの通信部94と、この画像データを印刷(印字)して出力(プリントアウト)する画像出力部95とのうちの少なくともいずれかを有している。」と記載されている。
本願の請求項11に係る発明と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者は「固体撮像装置と、前記固体撮像装置から出力される信号を処理する処理部と、を備えることを特徴とするカメラ。」である点で一致する。

よって、本願の請求項11に係る発明は、引用文献1-6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、特許を受けることができない。


<引用文献等一覧>
1.特開2012-84815号公報
2.特開2011-135100号公報
3.特開2012-124377号公報
4.特開2005-117008号公報
5.特開2012-15283号公報
6.特開2011-238688号公報」

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は、次のとおりである。
「A.この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1.請求項9に記載された発明の「前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれ光を集光させる」が、如何なる構成かわからない。
つまり、上記記載の「光電変換部のそれぞれ光」とは、如何なる光であるのかわからない。

B.この出願の下記の請求項に係る発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



<引用文献等一覧>
引用例1:特開2012-84815号公報
引用例2:特開2007-311477号公報
引用例3:特開2012-124377号公報
引用例4:特開2008-192951号公報
引用例5:特開2007-5629号公報
引用例6:特開2006-86356号公報
引用例7:特開2011-135100号公報
引用例8:特開2011-238688号公報

請求項1
引用例:1,2
備考:
引用例1に記載された発明と請求項1に記載された発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
[相違点1]
請求項1に記載された発明の「遮光体」は「円形開口を有」しているのに対して、引用例1に記載された発明の対応する構成である「隆起部112」はそのようになっていない点。
[相違点2]
請求項1に記載された発明の「レンズ面」は、「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」のに対して、引用例1に記載された発明の対応する構成であるレンズ面の厚さと「隆起部112」の厚さの大小について、発明の詳細な説明に明記されていない点。

以下上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例2に、
「【0019】
遮光層73の、フォトダイオード30の上方に位置するように開口部73aが形成され、開口部73aに層内レンズ75が形成されている。層内レンズ75は、マイクロレンズ60側から入射した光を下方のフォトダイオード30に集光させるように機能する。本実施形態では、層内レンズ75は、上面及び下面に凸面を有する、いわゆる両凸型のレンズ形状としたが特にこれに限定されない。例えば、下面にのみ凸面を有する、いわゆる下凸型のレンズ形状としてもよい。」
「【0026】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
図7(a)から(c)に示すように、開口部73aの形状は特に限定されず、画素部の構成によって適宜変更することができる。例えば、図7(a)に示すように、開口部73aの形状を正方形状としてもよく、または、図7(b)に示すように、六角形などの多角形状としてもよい。さらに、図7(c)に示すように、正円形状とすることで、光の入射方向にかかわらず、フォトダイオード30に均一な光量を受光させることができる。」
と記載されているように、層内レンズを構成する際に、「光の入射方向にかかわらず、フォトダイオード30に均一な光量を受光させる」ために、請求項1に記載された発明の「遮光体」に対応する構成である「遮光層73」の「開口部73a」を正円形状とすることは、公知の技術である。
引用例1に記載された発明の「遮光体」について、引用例2記載の公知技術を適用し、光の入射方向にかかわらず、フォトダイオードに均一な光量を受光させるために、開口部の形状を「円形開口」とすることは、当業者が容易に想到する事項である。
[相違点2]について
引用例1の発明の詳細な説明には記載はないものの、引用例1に記載された発明の図1に記載されているように、請求項1に記載された発明の「前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さ」および「前記遮光体の厚さ」に対応する構成である、「絶縁膜113a」の「反射防止膜111」に向かって最も突出した部分の厚さ、および、「隆起部112」の厚さは、請求項1に記載された発明と同様の関係を有しているから、[相違点2]は実質的相違点であるとは認められない。
加えて、層内レンズにおいてどこに焦点位置を設けるかは、設計時に適宜考慮する事項であり、また、その考慮した焦点位置になるように層内レンズのパワーを調整することも、当業者が設計時に適宜考慮することであるから、その際に、層内レンズのパワー(層内レンズの形状)を決めるために、請求項1に記載された発明の「前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さ」と「前記遮光体の厚さ」をどのような関係、即ち、「レンズ面」の「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さ」くすることは、当業者が適宜為し得たことである。

請求項2
引用例:1-3
備考:
[相違点3]
請求項2に記載された発明は、「前記第2層は、無機材料で構成されている」のに対して、引用例1に記載された発明はそうでない点。
[相違点3]について
引用例3【0029】【0030】に記載されているように、「シリコン酸化膜」と屈折率の異なる材料として、「シリコン窒化膜」などの無機材料を採用することは、公知の技術である。
そして、引用例1に記載された発明において「透明樹脂膜」に換えて、上記公知技術である「シリコン窒化膜」などの無機材料を採用することは、当業者が適宜為し得たものである。

請求項3
引用例:1-4
備考:
引用例1および3や、引用例4【0052】に記載されているように、層内レンズを構成する材料として、酸化シリコン,酸窒化シリコン,窒化シリコン、酸化ハフニウムまたは酸化チタンを採用することは、公知の技術である。
引用例1に記載された発明において、層内レンズを構成する際に、その屈折率の大小に基づいて、上記公知技術で示された材料を採用することは、当業者が容易に想到することである。

請求項4,5
引用例:1-6
備考:
「相違点4」
請求項4に記載された発明は、「開口のそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」のに対して、引用例1に記載された発明はそのようになっていない点。
[相違点5]
請求項5に記載された発明は、「前記複数のマイクロレンズのそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する」のに対して、引用例1に記載された発明はそのようになっていない点。
[相違点4]および[相違点5]について
引用例5「(実施の形態2)」として記載されているように、カラーフィルタを有する固体撮像装置において光の波長(即ち、「カラー」)に応じて、遮光膜およびマイクロレンズの大きさを異なるものとすることは、公知の技術である。
また、引用例6【0014】に記載されているように、マイクロレンズの直径を色に応じて異なるものとすることは、公知の技術である。
引用例1に記載された発明において、上記各公知技術を採用し、請求項4および5に記載された発明と同様の発明とすることは、当業者が容易に為し得たことである。

請求項6
引用例:1-7
備考:
オプティカルブラック画素領域は、引用例3図1や引用例7図12に記載されているように、周知の構成であるから、引用例1に記載された発明において、該周知技術を採用し、請求項6に記載された発明と同様の発明とすることに、格別の困難性は認められない。

請求項7
引用例:1-8
層内レンズを両凸レンズとすることは、引用例2図2や引用例8図2に記載されているように、周知の構成であるから、引用例1に記載された発明において、該周知技術を採用し、請求項7に記載された発明と同様の発明とすることに、格別の困難性は認められない。

請求項8
引用例:1-4
備考:
請求項1ないし3に係る上記備考を参照されたい。

請求項9
引用例:1-3
引用例1に記載された発明のレンズ面も、複数の光電変換部のそれぞれに光を集光させていると認められる。
その他の点については、請求項1に係る上記備考を参照されたい。

請求項10
引用例:1-8
備考:
引用例1「(実施の形態2)」に記載されているように、引用例1に記載された固体撮像装置をカメラに備えるようにすることは、適宜行われている。
なお、引用例1「(実施の形態2)」には、請求項10に記載された発明の「処理部」に対応する構成の明記はないが、【0094】に「撮像部による撮影により得られた高品位な画像データを記録用に所定の信号処理した後に」と記載されているように、引用例1に記載された発明においても、請求項10に記載された発明の「処理部」に相当する構成を当然備えていると認められる。 」

第4 本願発明
本願請求項1-11に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明11」という。)は、本手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-11に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-11は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体と、
前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層よりも高い屈折率を有し、前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項2】
前記第1層および前記第2層は、無機材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の固体撮像装置。
【請求項3】
前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンで構成され、
前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウムおよび酸化チタンからなるグループから選択される材料のうち前記第1層よりも高い屈折率を有する材料で構成されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の固体撮像装置。
【請求項4】
前記第2層の上に配置されたカラーフィルタ層を更に備え、
前記複数の円形開口のそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項5】
前記カラーフィルタ層の上に配置された複数のマイクロレンズを更に備え、
前記複数のマイクロレンズのそれぞれは、それに対応するカラーに応じた大きさを有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の固体撮像装置。
【請求項6】
前記複数の光電変換部が配置された領域は、有効画素領域およびオプティカルブラック画素領域を含み、
前記遮光体は、前記オプティカルブラック画素領域に配置された光電変換部を遮光するように配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項7】
前記第2層の上面は、前記第2層によって複数の両凸レンズが構成されるように複数の凸面領域を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項8】
第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体と、
前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さく、
前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンで構成され、
前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウムおよび酸化チタンからなるグループから選択される材料で構成されている、ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項9】
第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体と、
前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さく、
前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれに光を集光させる
ことを特徴とする固体撮像装置。
【請求項10】
前記レンズ面の形状は、前記複数の円形開口のそれぞれにおいて連続回転対称性を有する、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の固体撮像装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の固体撮像装置と、
前記固体撮像装置から出力される信号を処理する処理部と、
を備えることを特徴とするカメラ。」

第5 引用例、引用発明等
1 引用例1(当審拒絶理由において引用例1として引用された文献)について
原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2012-84815号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0072】
(実施形態1)
図1は本発明の実施形態1による固体撮像装置を説明する図である。
【0073】
本発明の実施形態1による固体撮像装置100は、被写体からの光が裏面側から入射される裏面照射型の固体撮像装置であり、半導体基板の表面上での画素及び駆動回路を構成する素子のレイアウトは、従来のものと同一であり、半導体基板の裏面側構造が従来の裏面入射型の固体撮像装置とは異なっている。
【0074】
つまり、この実施形態1の固体撮像装置100は、複数の画素を配列してなり、画素毎に撮像信号を生成する撮像領域と、該画素を構成する回路素子を駆動する駆動回路とを備えている。
【0075】
ここで、画素は、シリコン基板などの半導体基板101の裏面側領域に形成され、入射光を光電変換する光電変換部102と、該半導体基板の表面側に形成され、該入射光の光電変換により得られた光電変換信号を該光電変換部から該撮像信号として読み出す信号処理回路とを有している。ここでは、半導体基板101の表面側には、信号処理回路を構成する素子に接続される配線104が、層間絶縁膜106を介して多層に形成されている。
【0076】
該半導体基板の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光反射性部材からなる隆起部112が選択的に形成され、該半導体基板の表面上には絶縁膜113aが、該隆起部による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部に集光する凹レンズが形成されるよう形成されている。この絶縁膜上113aには、平坦化膜113bが形成されており、該平坦化膜の屈折率は、該絶縁膜の屈折率より大きくなっている。なお、図1中、111は反射防止膜である。
【0077】
ここで、上記隆起部は金属材料により構成されており、金属材料としては例えばタングステンを用いることができる。また、この隆起部を構成する金属材料としては、タングステン以外に、アルミニウム、チタン、窒化チタンあるいは銅を用いることができる。
【0078】
また、絶縁膜113aを構成する透光性の無機材料は、例えば、1.2?1.6の範囲の屈折率を有する、例えばシリコン酸化膜であり、平坦化膜113bを構成する透光性の有機材料は1.5?2.0の範囲の屈折率を有する、例えば透明樹脂膜である。
【0079】
さらに、上記平坦化膜113b上には、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115が積層されている。
【0080】
ここで、前記複数の画素は行列状に配列されて画素アレイを構成しており、上記隆起部は、該複数の画素の各々の光電変換部を囲むよう平面形状を格子形状とした格子状金属膜である。また、この金属材料からなる格子状隆起部の高さは、0.1μm?0.5μmの範囲に設定され、またその線状部分の幅は例えば100nmである。」
(2)「【0081】
次に製造方法について説明する。
【0082】
まず、シリコン基板(具体的にはシリコンウエハ)101の表面にイオン注入により光電変換部を形成するためのN型拡散領域102を形成し、さらに、このn型拡散領域102が、各画素の光電変換部に分離されるよう、平面格子状のp型拡散領域103を素子分離領域として形成する(図2)。
【0083】
続いて、該シリコン基板101の表面部に、例えば、通常のLSI製造プロセスを用いて、読み出しトランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ、及び選択トランジスタ(図示せず)等の能動素子を構成するp型及びn型拡散層等を形成し、続いて、シリコン基板404の表面側に、上記形成した能動素子を接続する配線104を、層間絶縁間105を介して形成する(図3)。
【0084】
次に、上記シリコン基板101の表面側に他のシリコン基板(具体的にはシリコンウエハ)201を貼り付け(図4)、その後、該シリコン基板101と他のシリコン基板201とを、シリコン基板101の裏面が上を向くよう反転させ、700μm程度の厚さのシリコン基板101の裏面側を、その厚さが3μm程度となり、拡散領域102及び103の底面が露出する程度まで、CMP(化学機械研磨)などのエッチング処理によりエッチングする(図5)。
【0085】
その後、シリコン窒化膜などの反射防止膜(厚さ50nm)111を、該シリコン基板のエッチングした面上に形成し(図6)、例えばタングステンのスパッタリングなどの成膜処理により金属膜112aを形成し(図7)、該金属膜112aを、各画素に対応する光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう選択的にエッチングして、平面格子形状を有する隆起部112を形成する(図8)。図9は、パターニングされた金属膜112a(隆起部)の形状を示す平面図であり、この状態の半導体基板111の裏面側の構造を示している。
【0086】
その後、シリコン基板112の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう絶縁膜113aを形成する。
【0087】
続いて、この絶縁膜113a上に平坦化膜113bを形成し、該平坦化膜13b上に、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115を積層する(図10)。
【0088】
このような構成の裏面照射型の固体撮像装置100では、撮像領域上に各画素の光電変換部を囲むように格子状金属膜(隆起部)112を設け、さらに撮像領域上に、この格子状金属膜112による段差を反映して、絶縁膜113aを凹レンズが形成されるよう形成しているので、固体撮像装置100の裏面側から入射する被写体からの光が、絶縁膜113aが形成する凹レンズにより、効果的に該光電変換部102に集光されることとなる。
【0089】
つまり、マイクロレンズで集光された入射光が凹レンズ(層内レンズ)を介して光電変換部のフォトダイオード中心に入射するとともに、隣接画素へ散乱した光は金属膜で全反射して所望のフォトダイオードにのみ入射するので、混色(クロストーク)の発生を抑制することができる。
【0090】
これにより裏面側からの入射光による隣接画素間の混色(クロストーク)を抑制することができる。」
(3)したがって、上記引用例1には次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「半導体基板101の裏面側領域に形成された、入射光を光電変換する光電変換部102と、
該半導体基板101の表面側に層間絶縁膜106を介して多層に形成された、配線104とを有し、
被写体からの光が裏面側から入射される裏面照射型の固体撮像装置であって、
該半導体基板101の裏面側に反射防止膜111を形成し、
該半導体基板101の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう平面格子形状を有する光反射性部材からなる隆起部112を形成し、
該半導体基板101の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるようシリコン酸化膜からなる絶縁膜113aを形成し、
絶縁膜113a上に、該絶縁膜113aの屈折率より大きい透明樹脂膜からなる平坦化膜113bを形成し、
該平坦化膜113b上に、複数の画素の各々に対応するカラーフィルター114およびマイクロレンズ115を積層する、
ことを特徴とする固体撮像装置。」
2 引用例2(当審拒絶理由において引用例7として引用された文献)について
原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2011-135100号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0074】
上述の実施の形態の固体撮像装置21、51においては、集光状態に応じて遮光膜39の開口形状を適宜選択することができる。図11A?Cに、遮光膜39の開口形状の例を示す。図11Aに示す遮光膜39は、開口形状として四角形の開口39aを有して構成される。したがって、フォトダイオードPDの受光面の形状は四角形になる。四角形状の開口39aを有するときは、最大の感度が得られる。
【0075】
図11Bに示す遮光膜39は、開口形状として多角形、本例では八角形の開口39bを有して構成される。したがって、フォトダイオードPDの受光面の形状は八角形になる。八角形状の開口39bを有するときは、四角形状と比較して、対角方向のフレアを低減することができる。
【0076】
図11Cに示す遮光膜39は、開口形状として円形の開口39cを有して構成される。したがて、フォトダイオードPDの受光面の形状は円形になる。円形(図11Aの四角形状の内接円)の開口39cを有するときは、水平と対角の中間方向に発生するフレアも低減することができる。但し、感度に関しては、図11A?図11Cのうちで一番低い。
【0077】
そして、図11A?11Cのいずれの構成においても、上下左右対称の形状で、かつ半導体基板22中に形成されたフォトダイオードPDの中心Oと遮光膜開口中心Oとが一致するように、画素境界の遮光膜39が形成される。フォトダイオードPDの中心と遮光膜開口中心を一致させることにより、入射角度依存の対称性を保つことができ、画面全体で等方的な感度特性が得られる。
【0078】
<4.第3実施の形態>
[固体撮像装置の構成例]
図12に、本発明に係る固体撮像装置の第3実施の形態を示す。本実施の形態の固体撮像装置は、裏面照射型のCMOS固体撮像装置である。第3実施の形態に係る固体撮像装置56は、半導体基板22の画素領域23に各フォトダイオードPDが形成され、周辺回路部57にロジック回路(図示しない)が形成され、半導体基板22の裏面22B上に反射防止膜36、絶縁膜52が順に形成されて成る。
【0079】
そして、本実施の形態においては、画素領域23に対応する絶縁膜52上に画素境界における格子状の遮光膜39が形成されると共に、周辺回路部57及び画素領域の光学的黒レベル領域23Bに対応する絶縁膜52上に連続した遮光膜39が形成される。光学的黒レベル領域23Bは、有効画素領域23Aの外周に形成される。これら画素境界の遮光膜39と、周辺回路57及び光学的黒レベル領域23Bにわたる連続した遮光膜39は、同材料膜で同時に形成される。画素境界における遮光膜39と、周辺回路57及び光学的黒レベル領域23Bにわたる遮光膜39とは、互いに連続一体に形成される。
【0080】
本実施の形態では、さらに遮光膜39,39を含む絶縁膜52上に平坦化膜41が形成され、平坦化膜41の画素領域23に対応する領域上にオンチップカラーフィルタ42及びオンチップマイクロレンズ43が形成される。周辺回路部57においても、基板表面側に層間絶縁膜を介して複数層の配線を配置した多層配線層が形成される。
その他の構成は、第2実施の形態で説明したと同様であるので、図8と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0081】
第3実施の形態に係る固体撮像装置56によれば、周辺回路部57から光学的黒レベル領域23Bに連続する遮光膜39と、画素境界における格子状の遮光膜39を同時に形成された構成を有するので、遮光膜39による段差が低減する。これにより、有効画素領域内でのオンチップマイクロレンズ43のレンズ高さを揃えることができ、有効画素全体で均一な集光状態が得られる。
【0082】
その他、オンチップマイクロレンズ43で集光しきれない光による隣接画素への光学混色を低減し、回折光の有効画素への入射を抑制してMgフレアの発生を低減するなど、第2実施の形態で説明したと同様の効果を奏する。かくして第3実施の形態に係る裏面照射型の固体撮像装置56は、画質の向上を図ることができる。」
(2)したがって、上記引用例2には実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「裏面照射型のCMOS固体撮像装置において、
画素領域23に対応する絶縁膜52上に、フォトダイオードPDの受光面の形状と同じ開口形状を有する遮光膜39が形成され、フォトダイオードのPDの受光面が四角形の場合は開口形状を四角形とし、また、フォトダイオードのPDの受光面が円形の場合は開口形状を円形とすると共に、
周辺回路部57及び画素領域の光学的黒レベル領域23Bに対応する絶縁膜52上に連続した遮光膜39が形成され、
画素境界に遮光膜39を形成することにより、オンチップマイクロレンズ43で集光しきれない光による隣接画素への光学混色を低減し、回折光の有効画素への入射を抑制してMgフレアの発生を低減すること。」
3 引用例3(当審拒絶理由において引用例3として引用された文献)について
原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2012-124377号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0024】
<1.第1実施の形態>
[固体撮像装置の構成例]
図1に、本発明に係る固体撮像装置の第1実施の形態を示す。本実施の形態の固体撮像装置は、裏面照射型のCMOS固体撮像装置に適用した場合である。第1実施の形態に係る固体撮像装置21は、薄膜化された例えばシリコンの半導体基板22に、光電変換部となるフォトダイオードPDと複数の画素トランジスタとからなる複数の画素26が2次元配列された画素領域23を有する。画素領域23は、有効画素領域24と、有効画素領域24の外側の光学的黒レベルの基準となる画素領域である、いわゆるオプティカルブラック領域25とを有して成る。
【0025】
画素26は、フォトダイオードPDと複数の画素トランジスタとによる単位画素として構成することができる。また、画素26は、共有画素構造とすることができる。共有画素構造は、複数のフォトダイオードPDと、複数の転送トランジスタと、共有する1つのフローティングディフュージョンと、共有する1つずつの他の画素トランジスタとから構成される。複数の画素トランジスタ(MOSトランジスタ)は、例えば転送トランジスタ、リセットトランジスタ及び増幅トランジスタの3つのトランジスタで構成することができる。その他、選択トランジスタ追加して4つのトランジスタで構成することもできる。図1では、複数の画素トランジスタを、転送ゲート電極27を有する転送トランジスタTr1で代表して示している。
【0026】
フォトダイオードPDは、半導体基板22の表面側から裏面側にわたって形成される。画素トランジスタは、半導体基板22の表面側に形成される。半導体基板22の表面側の上部に層間絶縁膜29を介して複数層の配線30を配置してなる多層配線層31が形成され、この多層配線層31に例えばシリコン基板等による支持基板32が接合される。多層配線層31と支持基板32との接合は、例えば接着剤層28を介して接合することができる。
【0027】
半導体基板22の光入射側となる裏面上に単層膜あるいは複数層膜ならなる絶縁膜34が形成される。この絶縁膜34の上部にオンチップカラーフィルタ(以下、カラーフィルタという)35、平坦化膜36及びオンチップマイクロレンズ(以下、マイクロレンズという)37が形成される。絶縁膜34としては、例えばシリコン酸化膜やハフニウム酸化膜などから成る反射防止膜として構成することもできる。
【0028】
そして、本実施の形態では、画素領域23の有効画素領域24及びオプティカルブラック領域25の前記絶縁膜34上に遮光膜39が形成される。有効画素領域24では、遮光膜39が各画素のフォトダイオードPDを囲んで形成され、オプティカルブラック領域25では、有効画素領域24の遮光膜39から延長して同じ膜による遮光膜39が全面に形成される。有効画素領域24では、各フォトダイオードPD上に対応する領域に、遮光膜39で囲まれた凹状部41が形成される。 遮光膜39は、例えば、Al、Cu、Wなどの単独膜や、その合金膜等の金属膜が用いられる。
【0029】
有効画素領域24からオプティカルブラック領域25にかけて、遮光膜39及び凹状部41の表面に相対的に屈折率が低い第1屈折率層42が形成される。第1屈折率層42の材料としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン酸化炭化膜、フッ化マグネシウム膜、フッ化カルシウム膜等が用いられる。
【0030】
有効画素領域23では、第1屈折率層42上に凹状部41内を埋め込むように、第1屈折率層42より相対的に屈折率が高い第2屈折率層43が形成される。本例では、遮光膜39が第2屈折率層43内に埋め込まれるように形成され、第2屈折率層43の表面が平坦化される。第2屈折率層43の材料としては、例えば、シリコン窒化膜、シリコン酸化窒化膜などが用いられる。つまり、屈折率の大小関係は、第1屈折率層42<第2屈折率層43である。各画素のフォトダイオードPDに対応して、遮光膜39と第1屈折率層42と第2屈折率層43とにより、内部集光体が形成される。この第2屈折率層43上に平坦化膜40を介して上記のカラーフィルタ35が形成される。平坦化膜40は、第2屈折率層43の屈折率より低い屈折率を有する。」
(2)「【0047】
図5は、レンズ機能の説明図である。第1屈折率層42と第2屈折率層43の屈折率関係が、第1屈折率層42<第2屈折率層43、であるとき、入射する光Lの波面(破線図示)51は、図5に示すようになる。すなわち、入射光Lが内部集光体に入るまでは光の波面51は平行である。入射光Lが内部集光体に入った後は、入射光の進行速度が第2屈折率層43中より第1屈折率層42の方が速くなることで、光の波面51は湾曲する。このように、屈折率差に基づく光の位相差で光の波面51が湾曲し、レンズ作用が生じる。入射した光は、このレンズ効果によりフォトダイオードPDへ集光される。」
(3)したがって、上記引用例3には実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「裏面照射型のCMOS固体撮像装置であって、
有効画素領域24からオプティカルブラック領域25にかけて、遮光膜39及び凹状部41の表面に相対的に屈折率が低い、シリコン酸化膜、シリコン酸化炭化膜、フッ化マグネシウム膜、フッ化カルシウム膜等からなる、第1屈折率層42を形成し、
有効画素領域23では、第1屈折率層42上に凹状部41内を埋め込むように、第1屈折率層42より相対的に屈折率が高い、シリコン窒化膜、シリコン酸化窒化膜等からなる、第2屈折率層43を形成し、
第2屈折率層43の表面を平坦化し、
第1屈折率層42と第2屈折率層43の屈折率差に基づく光の位相差で光の波面51が湾曲し、レンズ作用が生じ、入射した光は、フォトダイオードPDへ集光されること。」
4 引用例4について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-117008号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0027】
受光部においては、2つの垂直転送電極3,4の上方が、開口部8を有する遮光膜9で覆われている。遮光膜9は、受光部において、画素30以外の領域に光が入射することを防止する。遮光膜9の開口部8は、各画素30の(直)上方に形成され、高感度フォトダイオード6及び低感度フォトダイオード5の各一部を露出する。開口部8は、高感度フォトダイオード6上方の開口率は高く、低感度フォトダイオード5上方の開口率は低くなるように形成される。受光部に入射した光は、開口部8を通って各画素30に入射する。」
(2)「【0073】
第1の実施例においては、低感度フォトダイオード遮光膜9bの遮光部分の大きさを変化させ、遮光膜9の開口部8のうち低感度フォトダイオード5上方の開口部分の大きさを調整することで、低感度フォトダイオード5に入射する赤色光の量を増加させ、または青色光の量を減少させて、固体撮像素子の分光感度を制御した。高感度フォトダイオード遮光膜9aの遮光部分の大きさを変化させ、遮光膜9の開口部8のうち高感度フォトダイオード6上方の開口部分の大きさを調整することで、分光感度の制御を行うこともできる。例えば赤色光が入射する画素においては、高感度フォトダイオード遮光膜9aの遮光部分を小さくし、遮光膜9の開口部8Rのうち高感度フォトダイオード6上方の開口部分の大きさを大きくして、高感度フォトダイオード6に入射する赤色光の量を増加させる。青色光が入射する画素においては、その逆の調整を行う。
【0074】
遮光膜の開口部の大きさを画素上方のカラーフィルタの色ごとに調整することで、固体撮像素子の分光感度を制御することができる。特に、感度特性の異なる複数種類のフォトダイオードを設けた固体撮像素子において、フォトダイオードやカラーフィルタの構造を変えることなく、分光感度を所定の値に調整することができ、分光感度を向上させることが可能である。高感度フォトダイオードと低感度フォトダイオードの感度比を調整し、分光感度のバランスを向上させることができる。このため、画像劣化の小さい画像を得ることができる。例えばホワイトバランス補正時の色S/N比の悪化等を防ぐことができる。」
(3)「【0115】
図11(B)に、開口形状を円形にした場合を示す。図に示すように、開口部108はそれぞれ円形もしくは実質的に円形となるように形成されており、開口部108R、108G、108Rの開口面積(108RL、108GL、108BL)を108RL>108GL>108BLの関係になるように設定されている。このように、開口形状を円形もしくは実質的に円形(等方性の形状)にすることで、図11(A)に示す正方形の場合と同様に、長方形の開口形状を採用した場合に比べて、さらに画素サイズを小さくしても、集光効率の減衰を抑制することができる。なお、開口形状は、楕円形としても良い。」
(4)したがって、上記引用例4には実質的に次の事項(以下、「引用例4記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「固体撮像素子であって、
受光部において、画素30以外の領域に光が入射することを防止し、各画素30の(直)上方に形成され、開口部8を有する遮光膜9は、
遮光膜の開口部の大きさを画素上方のカラーフィルタの色ごとに調整することで、固体撮像素子の分光感度を制御し、
開口形状を円形もしくは実質的に円形(等方性の形状)にすることで、画素サイズを小さくしても、集光効率の減衰を抑制すること。」
5 引用例5について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-15283号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0055】
図16乃至図18に示される固体撮像装置は、図1乃至図3に示される固体撮像装置と比較して、第1のマイクロレンズ51および第2のマイクロレンズ52の形状および大きさが異なっている。すなわち、図16に示すように、青色カラーフィルタ層13上および赤色カラーフィルタ層14上に形成された第1のマイクロレンズ51の平面形状は、円形のものである。このような複数の第1のマイクロレンズ51は、各色のカラーフィルタ層13、14、15の格子配列における斜め方向においては、これらのカラーフィルタ層13、14、15の角部上において互いの円周が接するとともに、垂直・水平方向においては、これらのカラーフィルタ層16上において互いに離間するように市松状に配列形成されている。
【0056】
緑色カラーフィルタ層15上に形成された第2のマイクロレンズ52の平面形状も同様に、円形のものである。このような複数の第2のマイクロレンズ52は、第1のマイクロレンズ51の間に配置されるように市松状に配列形成されている。
【0057】
さらに複数の第2のマイクロレンズ52は、各色のカラーフィルタ層13、14、15の格子配列における斜め方向においては、これらのカラーフィルタ層13、14、15の角部上において互いに離間するとともに、垂直・水平方向においても、カラーフィルタ層16上において互いに離間するように市松状に配列形成されている。そして、垂直・水平方向においては、カラーフィルタ層16上において、第2のマイクロレンズ52の円周が、隣接する第1のマイクロレンズ51の円周と接するように形成されている。
【0058】
このように形成された第1、第2のマイクロレンズ51、52は、互いに大きさが異なるものである。すなわち、第1のマイクロレンズ51の平面形状の面積は、第2のマイクロレンズ52の平面形状の面積よりも大きくなるように形成されている。さらに、図17および図18に示される第1のマイクロレンズ51の高さHhは、図18に示される第2のマイクロレンズ12の高さHlよりも高くなるように形成されている。」
(2)したがって、上記引用例5には実質的に次の事項(以下、「引用例5記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「固体撮像装置のマイクロレンズであって、
青色カラーフィルタ層13上および赤色カラーフィルタ層14に形成された第1のマイクロレンズ51と緑色カラーフィルタ層15上に形成された第2のマイクロレンズ52の大きさを異なるものとすること。」
6 引用例6(当審拒絶理由において引用例8として引用された文献)について
原査定の拒絶の理由および当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2011-238688号公報(以下、「引用例6」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0023】
反射防止膜29上には、各垂直転送電極19a,19b上を覆うようにタングステンなどの遮光性をもつ材料からなる遮光膜30が形成されている。遮光膜30は、受光素子12の直上位置に開口部(以下、遮光膜開口部という)30aを有し、それ以外の領域を遮光している。
【0024】
遮光膜30及びその遮光膜開口部30aから露呈した反射防止膜29上には、光透過性及び加熱流動性をもつBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)からなるBPSG膜(透明膜)32が形成されている。BPSG膜32には、下凸曲面状の内面を有するBPSG凹部(第1凹部)32aが遮光膜開口部30aから露呈した反射防止膜29上に位置するように形成されている。
【0025】
BPSG凹部32aの内面には、BPSGよりも屈折率が高い例えばSiN(レンズ材料)が充填されており、受光素子12に向けて突出した下凸形状の層内レンズ(以下、下凸層内レンズという)33が形成されている。この下凸層内レンズ33は、SiNを複数回(図中では2回)積層してなる積層構造を有している。
【0026】
下凸層内レンズ33上には、例えばSiNからなる上凸形状の層内レンズ(以下、上凸層内レンズという)34が形成されている。また、上凸層内レンズ34上には、周知の透光性の平坦化膜35、カラーフィルタ36、マイクロレンズ37が形成されている。
【0027】
マイクロレンズ37に入射した入射光は、上凸層内レンズ34によって集光されて遮光膜開口部30aに導かれ、さらに下凸層内レンズ33によって集光されることで、効率よく受光素子12によって受光される。」
(2)したがって、上記引用例6には実質的に次の事項(以下、「引用例6記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「受光素子12の直上位置に開口部(以下、遮光膜開口部という)30aを有し、それ以外の領域を遮光している、遮光膜30を備え、
遮光膜30及びその遮光膜開口部30aには、光透過性及び加熱流動性をもつBPSG(Boron Phosphor Silicate Glass)からなるBPSG膜(透明膜)32が形成され、
BPSG凹部32aの内面には、BPSGよりも屈折率が高い例えばSiN(レンズ材料)が充填され、受光素子12に向けて突出した下凸形状の層内レンズ(以下、下凸層内レンズという)33が形成され、
下凸層内レンズ33上には、SiNからなる上凸形状の層内レンズ34が形成されること。」
7 引用例7(当審拒絶理由において引用例2として引用された文献)について
当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2007-311477号公報(以下、「引用例7」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0019】
遮光層73の、フォトダイオード30の上方に位置するように開口部73aが形成され、開口部73aに層内レンズ75が形成されている。層内レンズ75は、マイクロレンズ60側から入射した光を下方のフォトダイオード30に集光させるように機能する。本実施形態では、層内レンズ75は、上面及び下面に凸面を有する、いわゆる両凸型のレンズ形状としたが特にこれに限定されない。例えば、下面にのみ凸面を有する、いわゆる下凸型のレンズ形状としてもよい。
【0020】
本実施形態の固体撮像素子10では、層内レンズ75の形成された層をすべて遮光層で覆う構成としたが、層内レンズ75の少なくとも周縁に遮光性材料からなる遮光層73が形成されていればよい。
【0021】
固体撮像素子10は、層内レンズ75の周縁に遮光層73が形成されているため、層内レンズ75に入射した光がフォトダイオード30へ集光されずに層内レンズ75の外側へ漏れることを遮光層73によって防止することができる。こうすれば、光の入射角に依存して層内レンズ75から光が漏れることを防止でき、画素部ごとに均一な集光性能を確保することができるようになる。

(2)「【0026】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良などが可能である。
図7(a)から(c)に示すように、開口部73aの形状は特に限定されず、画素部の構成によって適宜変更することができる。例えば、図7(a)に示すように、開口部73aの形状を正方形状としてもよく、または、図7(b)に示すように、六角形などの多角形状としてもよい。さらに、図7(c)に示すように、正円形状とすることで、光の入射方向にかかわらず、フォトダイオード30に均一な光量を受光させることができる。」
(3)したがって、上記引用例7には実質的に次の事項(以下、「引用例7記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「フォトダイオード30の上方に位置するように開口部73aが形成され、開口部73aに層内レンズ75が形成されている遮光層73であって、
層内レンズ75の周縁に遮光層73が形成されているため、層内レンズ75に入射した光がフォトダイオード30へ集光されずに層内レンズ75の外側へ漏れることを遮光層73によって防止し、
開口部73aの形状を、正円形状とすることで、光の入射方向にかかわらず、フォトダイオード30に均一な光量を受光させることができること。」
8 引用例8(当審拒絶理由において引用例4として引用された文献)について
当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2008-192951号公報(以下、「引用例8」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、光電変換素子を備えた固体撮像装置およびその製造方法に関するものである。」
(2)「【0014】
本発明の固体撮像装置の製造方法は、半導体基板の撮像用領域に2次元状に配置された光電変換素子を形成する工程(a)と、前記光電変換素子の上方に層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜に埋め込まれた配線と、前記層間絶縁膜および前記配線の上に形成され、前記配線の材料が拡散するのを防止する拡散防止膜を有する配線層を複数層形成する工程(b)と、前記複数の配線層のうち前記光電変換素子と平面的に見て重なる部分を除去して開口部を形成する工程(c)と、前記工程(c)で形成した開口部内に透明部材を埋め込むことにより、前記光電変換素子の上方に光導波路を形成する工程(d)と、前記光導波路の上方に第1のマイクロレンズを形成する工程(e)とを備えている。
【0015】
この方法により、配線が多層になる場合でも光電変換素子に効率良く光を入射させることが可能となる」
(3)「【0052】
層内レンズ163は、例えば窒化シリコンの他に、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウムなどで構成されていてもよい。」
(4)「【0056】
図2(b)に示すように、本実施形態の固体撮像装置の画素アレイにおいては多数の光電変換素子112と、光電変換素子112の上方に形成され、光電変換素子112に光を取り込ませるための開口部210とが共に行列状に等間隔で配置されている。なお、この開口部210は、金属膜により形成されており、配線と遮光膜の両方の役割を果たす。」
(5)「【0068】
次に、第3の拡散防止膜141上にCVD法などにより、例えば酸化シリコンからなる第4の層間絶縁膜142を形成した後、リソグラフィ法によってパターニングされたマスク192を用いてエッチングを行い、層間絶縁膜114、三層の配線層、第4の層間絶縁膜142のうち光電変換素子112の直上方に位置する部分を除去し、エッチングストッパー膜113に達する開口部を形成する。この際に、エッチングストッパー膜113があることで、光電変換素子112がドライエッチングによってダメージを受けるのを防いでいる。なお、開口部の直径はフォトダイオードの幅とほぼ同じとし、例えば1μm程度とする。開口部の平面形状は略円形であるが、四辺形など円形以外の形状であってもよい。また、開口部の深さは2μm程度である。」
(6)したがって、上記引用例8には実質的に次の事項(以下、「引用例8記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「光電変換素子を備えた固体撮像装置の製造方法において、
半導体基板の撮像用領域に2次元状に配置された光電変換素子を形成する工程(a)と、
前記光電変換素子の上方に層間絶縁膜と、前記層間絶縁膜に埋め込まれた配線と、前記層間絶縁膜および前記配線の上に形成され、前記配線の材料が拡散するのを防止する拡散防止膜を有する配線層を複数層形成する工程(b)と、
前記複数の配線層のうち前記光電変換素子と平面的に見て重なる部分を除去して開口部を形成し、配線と遮光膜の両方の役割を果たさせる工程(c)と、
前記工程(c)で形成した開口部内に透明部材を埋め込むことにより、前記光電変換素子の上方に光導波路を形成する工程(d)と、
前記光導波路の上方に第1のマイクロレンズを形成する工程(e)とを備え、
層内レンズ163を、窒化シリコンの他に、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化ハフニウムなどで構成し、
開口部の平面形状を略円形とすること。」
9 引用例9(当審拒絶理由において引用例5として引用された文献)について
当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2007-5629号公報(以下、「引用例9」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0013】
本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、固体撮像装置の概略断面図である。
ここでは、2画素のみを表している。固体撮像装置は、半導体基板1、遮光膜3、層間絶縁膜4、カラーフィルタ5及びマイクロレンズ6を備える。半導体基板1には、複数の受光領域2が形成されている。各受光領域2は、受光量に応じて電荷を生成し、蓄積する。遮光膜3は、半導体基板1を覆い、各受光領域の対応位置に開口3aを有する。開口3aには、入射光のうち、カラーフィルタ5を透過した成分が入射される。カラーフィルタ5は、画素毎に区分されており、画素毎(1画素は1受光領域を有するので、「受光領域毎」ともいえる。)に定められた波長域の光を透過する。マイクロレンズ6は、画素毎に配され、入射光を各受光領域2に集光する。層間絶縁膜4は、透光性及び絶縁性を併せ持つ材料からなる。」
(2)「【0017】
一方、仮に、開口13aのサイズが他の開口のサイズと均一である場合を想定すれば、R成分の光の減衰量は、曲線22に従うので、他の成分の光の減衰量よりも大きくなることがわかる。したがって、R成分のみが他の成分よりも感度が低くなる。
実施の形態1では、R画素の開口を他の画素の開口よりも広くすることで、上記のようなR成分の感度低下を抑制している。その結果、画質低下が軽減される。
(実施の形態2)
実施の形態2は、光の波長域が長くなるほど遮光膜の開口が広くなる。それ以外の構成については実施の形態1と同様なので説明を省略する。
【0018】
図5は、実施の形態2に係る固体撮像装置の遮光膜部分を表した平面図である。
遮光膜31は、画素(32乃至35)毎に、開口(32a乃至35a)を有する。実施の形態2では、R画素、G画素、B画素の順に開口サイズを大、中、小とすることを特徴とする。図5(a)の例では、開口33a、開口32a及び35a、開口34aの順に広い。また、開口32a及び35aは、それぞれ同じ広さである。
【0019】
図5(a)では、全画素にわたり画素サイズが均一である例であるが、図5(b)のように、画素毎に画素サイズが異なっていてもよい。ただし、図5(b)の例でも、R画素の開口18a、G画素の開口17a及び20a、B画素の開口19の順に広いことには変わりはない。
図6は、開口での光の減衰量の波長依存性を示す図である。
【0020】
曲線41は、図5(a)における開口33aの光の減衰量を示している。曲線42は、図5(a)における開口32a及び35aの光の減衰量を示している。曲線43は、図5(a)における開口34aの光の減衰量を示している。これによれば、開口33aでのR成分の光の減衰量、開口32a及び35aでのG成分の光の減衰量、開口34aでのB成分の光の減衰量がいずれも同程度である。
【0021】
実施の形態2では、実施の形態1と同様に、R画素の開口を他の画素の開口よりも広くすることで、R成分の感度低下を抑制し、画質低下を軽減することができる。さらに、実施の形態2では、R画素、G画素、B画素の順に開口サイズを大、中、小とすることで、全ての波長域にわたり感度をそろえつつ、短い波長域については開口サイズを小さくすることができる。したがって、撮像装置全体の小型化を図ることができる。
【0022】
図7は、実施の形態2に係る固体撮像装置の遮光膜部分とマイクロレンズとをあわせて表した平面図である。
撮像装置は、画素(52乃至55)毎に、マイクロレンズ(52b乃至55b)を有する。図7に示すように、各マイクロレンズは、対応する開口が広いほど集光面積が広い。したがって、マイクロレンズの集光面積が全画素にわたり均一である場合に比べて、光の波長域が長いほど光の入射量を増やすことができる。したがって、R成分の光の感度低下を、さらに抑制することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3では、遮光膜及びマイクロレンズの構成が実施の形態1と異なる。それ以外の構成については実施の形態1と同様なので説明を省略する。」
(3)したがって、上記引用例9には実質的に次の事項(以下、「引用例9記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「半導体基板1、遮光膜3、層間絶縁膜4、カラーフィルタ5及びマイクロレンズ6を備える、固体撮像装置において、
遮光膜3は、半導体基板1を覆い、各受光領域の対応位置に開口3aを有し、開口3aには、入射光のうち、カラーフィルタ5を透過した成分が入射され、
光の波長域が長くなるほど遮光膜3の開口が広くし、また、
画素(52乃至55)毎に、マイクロレンズ(52b乃至55b)を有し、
光の波長域が長いほど光の入射量を増やすよう、マイクロレンズ(52b乃至55b)の集光面積を変えること。」
10 引用例10(当審拒絶理由において引用例6として引用された文献)について
当審拒絶理由の拒絶の理由に引用された特開2006-86356号公報(以下、「引用例10」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0014】
本発明による固体撮像素子の第1の態様は、入射光により光電変換を行い光量に応じた信号電荷を生成する受光部と、前記受光部に対応するようにオンチップ状に配置されるカラーフィルタと、前記受光部に入射光を導き、前記カラーフィルタに対応するようにオンチップ状に配置されるマイクロレンズと、を少なくとも有する画素がマトリクス状に複数配置され、前記カラーフィルタは、輝度信号の最大成分を生成する画素に配置される強輝度色層、及び、最大成分とはならない信号を生成する画素に配置される少なくとも一層以上の弱輝度色層を有しており、前記強輝度色層に対応して配置されるマイクロレンズの直径は、前記弱輝度色層に対応して配置されるマイクロレンズの直径より大なることを特徴とする。」
(2)したがって、上記引用例10には実質的に次の事項(以下、「引用例10記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「固体撮像素子において、入射光により光電変換を行い光量に応じた信号電荷を生成する受光部と、前記受光部に対応するようにオンチップ状に配置されるカラーフィルタと、前記受光部に入射光を導き、前記カラーフィルタに対応するようにオンチップ状に配置されるマイクロレンズと、を少なくとも有する画素がマトリクス状に複数配置され、前記カラーフィルタは、輝度信号の最大成分を生成する画素に配置される強輝度色層、及び、最大成分とはならない信号を生成する画素に配置される少なくとも一層以上の弱輝度色層を有し、前記強輝度色層に対応して配置されるマイクロレンズの直径は、前記弱輝度色層に対応して配置されるマイクロレンズの直径より大なること。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用例1発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用例1発明の「表面側」,「裏面側」,「半導体基板101」,「層間絶縁膜106を介して多層に形成された、配線104」,「入射光を光電変換する光電変換部102」,および「裏面照射型の固体撮像装置」は、それぞれ本願発明1の「第1面」,「第2面」,「半導体層」,「配線構造」,「複数の光電変換部」および「前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置」に相当する。
イ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう平面格子形状を有する光反射性部材からなる隆起部112」は、「裏面上」にあり、「光反射性部材からな」っており、また、「平面格子形状を有」していることから開口を備えていると言えるから、本願発明1の「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」と、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の」「開口を有する遮光体」である点で共通する。
ウ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成された「シリコン酸化膜からなる絶縁膜113a」は、本願発明1の「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記複数の」「開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」である点で共通する。
エ 引用例1発明の「絶縁膜113a上に」形成された、「該絶縁膜113aの屈折率より大きい透明樹脂膜からなる平坦化膜113b」は、本願発明1の「前記第1層よりも高い屈折率を有し、前記第1層を覆う第2層」に相当する。
オ 引用例1発明の「絶縁膜113a」は「該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成されており、また、「絶縁膜113a上に」形成された「平坦化膜113b」は、「該絶縁膜113aの屈折率より大きい」から、本願発明1の「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい、」ことと、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の」「開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し」ている点で、共通する。
カ したがって、本願発明1と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、
前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層よりも高い屈折率を有し、前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有する、
ことを特徴とする固体撮像装置。
[相違点1]
本願発明1の「遮光体」は、「前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有す」のに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点2]
本願発明1は「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」のに対して、引用例1発明の「隆起部112」と「絶縁膜113a」の厚さの大小について明記されていない点。
(2)相違点についての判断
[相違点1]について以下に検討する。
引用例1発明の「隆起部112」は「平面格子形状」であり、また、この「平面格子形状」は「画素の境界」の形状を反映しており、引用例1には「隆起部112」の「平面格子形状」を「画素の境界」と異なる形状とすることについて記載されておらず、また、「画素の境界」の形状を「平面格子形状」と異なる形状とすることも記載されていないから、引用例1発明の「隆起部112」の形状を「円形開口を有す」ようにすることが容易であったとは言えない。
また、引用例3,5,6,9および10には、「円形開口を有する」「遮光体」の構成は記載されていないから、引用例1発明に引用例3,5,6,9および10の記載を適用し、[相違点1]に係る構成を想起することはできない。
引用例2,4,7および8には、引用例2に記載された「遮光膜39」,引用例4に記載された「遮光膜9」,引用例7に記載された「遮光層73」および引用例8に記載された「配線と遮光膜の両方の役割を果たさせる」「配線層」の、開口を円形とするとの記載はあるが、それぞれの遮光の機能を有する構成は、引用例1発明の「該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるようシリコン酸化膜からなる絶縁膜113aを形成」するという「隆起部112」と同様の機能は有していないから、引用例1発明に、引用例2,4,7および8に記載された「遮光体」の開口を円形とするとの事項を採用し、[相違点1]に係る構成を採用することが容易であるとは言えない。
そして、本願発明1は、[相違点1]に係る構成を有することにより、
「【0017】
遮光体133に円形開口OPが存在することにより、半導体層101の第2面F2の露出部分および遮光体133によって連続回転対称性を有する凹凸形状が形成される。レンズ面Lもまた、当該凹凸形状に応じた形状、即ち、連続回転対称性を有する形状を有する。よって、集光効率は、レンズ面Lに入射する光線の方向(ここでの方向は、第2面F2に垂直な方向から固体撮像装置100を観察した平面視における光線の方向である。)に依存しない。よって、有効画素領域(撮像領域)EPR内における感度の不均一性および/または混色の低減効果の不均一性が低減されうる。」
という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]に係る構成は、引用例1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
2 本願発明8について
(1)対比
本願発明8と引用例1発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用例1発明の「表面側」,「裏面側」,「半導体基板101」,「層間絶縁膜106を介して多層に形成された、配線104」,「入射光を光電変換する光電変換部102」,および「裏面照射型の固体撮像装置」は、それぞれ本願発明8の「第1面」,「第2面」,「半導体層」,「配線構造」,「複数の光電変換部」および「前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置」に相当する。
イ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう平面格子形状を有する光反射性部材からなる隆起部112」は、「裏面上」にあり、「光反射性部材からな」っており、また、「平面格子形状を有」していることから開口を備えていると言えるから、本願発明8の「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」と、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の」「開口を有する遮光体」である点で共通する。
ウ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成された「絶縁膜113a」は、本願発明8の「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記複数の」「開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」である点で共通する。
エ 引用例1発明の「絶縁膜113a上に」形成された、「平坦化膜113b」は、本願発明8の「前記第1層を覆う第2層」に相当する。
オ 引用例1発明の「絶縁膜113a」は「該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成されており、また、「絶縁膜113a上に」形成された「平坦化膜113b」は、「該絶縁膜113aの屈折率より大きい」から、本願発明8の「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい、」ことと、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の」「開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し」ている点で、共通する。
カ 引用例1発明の「絶縁膜113a」は「シリコン酸化膜から」なっているから、このことは、本願発明8の「前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンで構成され」ることに相当する。
キ したがって、本願発明8と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、
前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、
前記第1層は、酸化シリコン又は酸窒化シリコンで構成されている、ことを特徴とする固体撮像装置。」
[相違点3]
本願発明8の「遮光体」は、「前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有す」のに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点4]
本願発明8は「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」のに対して、引用例1発明の「隆起部112」と「絶縁膜113a」の厚さの大小について明記されていない点。
[相違点5]
本願発明8は「前記第2層は、酸窒化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウムおよび酸化チタンからなるグループから選択される材料で構成されている」のに対して、引用例1発明はそうでない点。
(2)相違点についての判断
[相違点3]について以下に検討する。
[相違点3]は、上記「1(2)相違点についての判断」で検討した[相違点1]と同じ相違点であるから、上記「1(2)相違点についての判断」で検討したとおり、[相違点3]に係る構成は、引用例1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
3 本願発明9について
(1)対比
本願発明9と引用例1発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用例1発明の「表面側」,「裏面側」,「半導体基板101」,「層間絶縁膜106を介して多層に形成された、配線104」,「入射光を光電変換する光電変換部102」,および「裏面照射型の固体撮像装置」は、それぞれ本願発明9の「第1面」,「第2面」,「半導体層」,「配線構造」,「複数の光電変換部」および「前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置」に相当する。
イ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面上の隣接する画素の境界部分に、光電変換部102を分離する素子分離領域103上にのみ残るよう平面格子形状を有する光反射性部材からなる隆起部112」は、「裏面上」にあり、「光反射性部材からな」っており、また、「平面格子形状を有」していることから開口を備えていると言えるから、本願発明9の「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」と、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の」「開口を有する遮光体」である点で共通する。
ウ 引用例1発明の「該半導体基板101の裏面側の隆起部112及び反射防止膜111上に、該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成された「絶縁膜113a」は、本願発明9の「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記複数の」「開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」である点で共通する。
エ 引用例1発明の「絶縁膜113a上に」形成された、「平坦化膜113b」は、本願発明9の「前記第1層を覆う第2層」に相当する。
オ 引用例1発明の「絶縁膜113a」は「該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるよう」形成されており、また、「絶縁膜113a上に」形成された「平坦化膜113b」は、「該絶縁膜113aの屈折率より大きい」から、本願発明9の「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい、」ことと、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の」「開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し」ている点で、共通する。
カ 引用例1発明は「該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるようシリコン酸化膜からなる絶縁膜113aを形成」しているから、このことは、本願発明9の「前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれに光を集光させる」ことに相当する。
キ したがって、本願発明9と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
[一致点]
「第1面および第2面を有する半導体層と、前記第1面の上に配置された配線構造とを含み、前記半導体層の中に複数の光電変換部が配置され、前記第2面に対して被写体からの光が入射する固体撮像装置であって、
前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の開口を有する遮光体と、
前記複数の開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層と、
前記第1層を覆う第2層と、を備え、
前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の開口において前記第2面に向かって突出する形状を有し、前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さく、
前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれに光を集光させる
ことを特徴とする固体撮像装置。」
[相違点6]
本願発明9の「遮光体」は、「前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有す」のに対して、引用例1発明はそうでない点。
[相違点7]
本願発明9は「前記形状のうち前記第2面に向かって最も突出した部分における前記第1層の厚さが前記遮光体の厚さよりも小さい」のに対して、引用例1発明の「隆起部112」と「絶縁膜113a」の厚さの大小について明記されていない点。
(2)相違点についての判断
[相違点6]について以下に検討する。
[相違点6]は、上記「1(2)相違点についての判断」で検討した[相違点1]と同じ相違点であるから、上記「1(2)相違点についての判断」で検討したとおり、[相違点6]に係る構成は、引用例1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
4 本願発明2ないし7および10,11について
本願発明2ないし7は、本願発明1の発明特定事項を全て有する発明である。
また、本願発明10および11は、本願発明1,8もしくは9の発明特定事項を全て有する発明である。
してみれば、本願発明1,8もしくは9が引用例1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本願発明2ないし7および10,11も、引用例1ないし10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
本願発明1ないし11は、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」を備え、「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記第1層を覆う第2層と」を備え、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状」とするという技術的事項を有する「固体撮像装置」である。
そして、前記「第6」で検討したとおり、本願発明1ないし11の「遮光体」に対応する、原査定における引用例1発明の「隆起部112」は「平面格子形状」であり、該形状を「円形開口を有す」ようにすることが容易であったとは言えない。
また、原査定における引用例3,5および6には、「円形開口を有する」「遮光体」の構成は記載されていないから、引用例1発明に原査定における引用例3,5および6の記載を適用し、引用例1発明の「隆起部112」の形状を「円形開口を有す」ように想起することはできない。
原査定における引用例2および4には、遮光の機能を有する構成の開口を円形とするとの記載はあるが、それぞれの遮光の機能を有する構成は、引用例1発明の「該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるようシリコン酸化膜からなる絶縁膜113aを形成」するという「隆起部112」と同様の機能は有していないから、引用例1発明に、原査定における引用例2および4に記載された「遮光体」の開口を円形とするとの事項を採用することが容易であるとは言えない。
そうすると、本願発明1ないし11の、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」を備え、「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記第1層を覆う第2層と」を備え、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状」とする構成は、原査定における引用例1ないし6には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし11は、当業者であっても、原査定における引用文献1および6に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
当審拒絶理由で拒絶の理由を示した、補正前の請求項9の「前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれ光を集光させる」は、本手続補正により「前記レンズ面は、前記複数の光電変換部のそれぞれに光を集光させる」となったから、本手続補正により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないとの、当審拒絶理由で示した理由は解消した。
2 特許法第29条第2項について
本願発明1ないし11は、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」を備え、「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記第1層を覆う第2層と」を備え、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状」とするという技術的事項を有する「固体撮像装置」である。
そして、前記「第6」で検討したとおり、本願発明1ないし11の「遮光体」に対応する、当審拒絶理由における引用例1発明の「隆起部112」の形状は「平面格子形状」であり、該形状を「円形開口を有す」ようにすることが容易であったとは言えない。
また、当審拒絶理由における引用例3,6,9および10には、「円形開口を有する」「遮光体」の構成は記載されていないから、引用例1発明に当審拒絶理由における引用例3,6,9および10の記載を適用し、引用例1発明の「隆起部112」の形状を「円形開口を有す」ように想起することはできない。
当審拒絶理由における引用例2,7および8には、遮光の機能を有する構成の開口を円形とするとの記載はあるが、それぞれの遮光の機能を有する構成は、引用例1発明の「該隆起部112による段差が反映されて、該入射光を該光電変換部102に集光する凹レンズが形成されるようシリコン酸化膜からなる絶縁膜113aを形成」するという「隆起部112」と同様の機能は有していないから、引用例1発明に、当審拒絶理由における引用例2,7および8に記載された「遮光体」の開口を円形とするとの事項を採用することが容易であるとは言えない。
そうすると、本願発明1ないし11の、「前記第2面の上に配置され、前記複数の光電変換部に対応する複数の円形開口を有する遮光体」を備え、「前記複数の円形開口および前記遮光体を覆うように前記第2面の側に配された第1層」と、「前記第1層を覆う第2層と」を備え、「前記第1層と前記第2層との境界面は、凸レンズとして機能するレンズ面を含み、前記レンズ面は、前記複数の円形開口において前記第2面に向かって突出する形状」とする構成は、当審拒絶理由における引用文献1ないし3および6ないし10には記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし11は、当業者であっても、当審拒絶理由における引用文献1ないし3および6ないし10に基づいて容易に発明できたものではない。
3 当審拒絶理由についてのまとめ
以上のとおり、当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-27 
出願番号 特願2013-19884(P2013-19884)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 俊哉小池 英敏  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 須藤 竜也
小田 浩
発明の名称 固体撮像装置およびカメラ  
代理人 永川 行光  
代理人 木村 秀二  
代理人 下山 治  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ