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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01N |
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管理番号 | 1334641 |
審判番号 | 不服2014-25018 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2014-12-05 |
確定日 | 2017-11-27 |
事件の表示 | 特願2014-506528「ルミネセンス検出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年10月26日国際公開、WO2012/145450、平成26年 6月 5日国内公表、特表2014-513794〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年4月19日(パリ条約による優先権主張 2011年4月22日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年7月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年12月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において、平成27年11月5日付けで拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成28年3月8日付けで意見書が提出され、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 1 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成28年3月8日になされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される次のとおりのものである。 「 検体の検出方法であって、 サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器であって、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む、サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器を提供する第一のステップと、 前記容器内で前記サンプル及び前記触媒を含む反応混合物を形成する第二のステップと、 前記容器内で、前記反応混合物から放出される光の有無を検出する第三のステップと、 を含み、 前記第三のステップは、前記壁の前記着色剤を含む部分の少なくとも一部が前記反応混合物と検出器との間に配置されるように、前記容器を前記ルミノメーター内に動作可能に配置することを更に含み、 前記壁の前記着色剤を含む部分の表面積が、前記壁の表面積の少なくとも10パーセントである、方法。」 2 本願発明の「第一のステップ」の意味 本願発明の「第一のステップ」では、「サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器であって、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む、サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器を提供する」なる表現で規定されている。 このうち「サンプル、発光反応のための触媒」は、「第二のステップ」で「容器内で前記サンプル及び前記触媒を含む反応混合物を形成する」と言及されることから明らかなとおり、「容器」自体とは別異のものであるから、上記表現における「サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器」とは、『「サンプル」と「発光反応のための触媒」と「少なくとも1つの壁を含む容器」と』の意味であると解される。 また、「第三のステップ」で「前記壁の前記着色剤を含む部分の少なくとも一部」と言及されていることから明らかなとおり、上記表現における「着色剤を含む」の主語は「前記壁の少なくとも一部分」であるから、上記表現における「前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む」とは、「前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されて」いることと、「前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む」こととの意味であると解される。 以上から、本願発明の「第一のステップ」とは、「サンプルと、発光反応のための触媒と、少なくとも1つの壁を含む容器と、を提供する第一のステップ、ここで、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、またここで、前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む」の意味であると解釈される。 なお、当該解釈が妥当であることについては、上記表現に対応する本願の国際出願時の明細書の請求項1に、 「providing a sample; a catalyst for a luminescent reaction; and a container that includes at least one wall; wherein the container is adapted for use in a luminometer; wherein at least a portion of the wall comprises a coloring agent;」 と記載されていることからも裏付けられる。 第3 引用例及び周知例 1 引用例 (1)当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特表2009-510475号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。 (1a) 「【0001】 [0001] 本発明は、最小限、試料を保持することのできる導波管試料ホルダを含む感応式ルミネッセンス検出システムに関する。本発明は、励起光源と、導波管試料ホルダ内にて試料から励起信号及び放出信号の双方の変化を検出する感応式検出システムとを含むシステムにも関する。導波管試料ホルダは、放出光を集め且つその光を検出器に案内するのに効果的である。導波管試料ホルダの設計、励起光の照射の配置、及び光フィルタは、試料及び放出試薬の極めて低濃度を検出するのを容易にし且つ、使用が容易な形態とすることができる。 (1b) 「【0009】 [0009] 本明細書にて使用するように、「ルミネッセンス」という語は、放出試薬として使用され又は放出試薬により発生される化学的又は生化学的材料によって電磁放射線が発生されることを意味する。「化学ルミネセント」とは、励起エネルギが化学的反応から得られたとき、光が発生されることを意味する。「バイオルミネセント」とは、光が生物学的又は生化学的反応によって発生される、サブセットの化学ルミネッセンスを意味する。バイオルミネッセンスの特定の例は、基質ルシフェリン(Luciferin)が酵素ルシフェラーゼ(Luciferase)及び反応剤ATP(アデノシン三リン酸)及び酸素と組み合わさる、蛍によって光を発生させるものである。「電気化学的ルミネッセンス(ECL)」とは、光を放出する化学ルミネセントの反応よりも先に電気化学的反応が行われるルミネッセンスの形態である。」 (1c) 「【0029】 [0055] 一体型導波管センサの液相の具体化に基づくルミネッセンスの用途による一例としての実施の形態が図1a、図1bに示されている。照度計は、導波管ホルダと、1つ又はより多くの検出器とを備えている。導波管試料ホルダは、試料を保持する中空の領域を有している。試料及び試薬は、器具によって試料及び試薬の投入室内に手操作にて入れ又は圧送することができる。導波管試料ホルダは、放出光を導波管試料ホルダの底端部内に案内する材料にて出来たものとすることができる。導波管試料ホルダの底部から現れる放出光を検出する1つ又はより多くの検出器を設けることができる。 【0030】 [0056] 照度計及び照度計の構成要素に対し多様な適した構造体及び配置を使用することができる。 [0057] 例えば、図1aに示したように、導波管試料ホルダの外部形状は、軸方向対称の円錐形の形状とすることができる。また、図1aに示したように、導波管試料ホルダから出る放出光を収束し又はコリメートし且つ試料を保持するため、端部に湾曲面が提供される。」 (1d) 「【0033】 [0061] 端部に平坦面を有する導波管試料ホルダが図3に示されている。 [0062] 導波管試料ホルダは、両端にて開放しており、また、該導波管試料ホルダは、図4に示すように、平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズに近接する位置に配置することができる。 【0034】 [0063] 放出光を収束させ得るように、円錐形の形状と、閉塞端における湾曲面とを有する導波管試料ホルダが図5に示されている。 [0064] 図6に示したように、導波管試料ホルダと検出器との間に光学要素が存在しない装置を使用することもできる。」 (1e) 「【図4】導波管試料ホルダが両端にて開放し、平坦な透明な材料(図示したように)、光フィルタ(図示せず)及び(又は)レンズ(図示せず)に近接して配置することができる、ルミネセント検出システムの概略側面図である。」 (1f) 「【図1】 」 (1g) 「【図4】 」 (1h) 「【図6】 」 (2) 引用発明 ア 上記(1a)の「試料及び放出試薬の極めて低濃度を検出する」には、試料を検出する方法が含まれると認められる。 イ 上記アを踏まえて上記(1a)ないし(1h)の記載内容を総合すると、引用例には、 「試料を保持することのできる導波管試料ホルダを含む感応式ルミネッセンス検出システムで試料を検出する方法において、 ルミネッセンスは、基質ルシフェリンが酵素ルシフェラーゼと組み合わされて光を発生させるバイオルミネッセンスであり、 照度計は、導波管試料ホルダと、検出器とを備え、 導波管試料ホルダは、試料を保持する中空の領域を有し、 試料及び試薬は、器具によって試料及び試薬の投入室内に手操作にて入れ又は圧送することができ、 導波管試料ホルダの底部から現れる放出光を検出する1つ又はより多くの検出器を設けることができ、 導波管試料ホルダから出る放出光を収束し又はコリメートし且つ試料を保持するため、端部に湾曲面が提供され、 導波管試料ホルダと検出器との間に光学要素が存在しない、方法。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 2 周知例 原査定の拒絶の理由及び当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開昭57-70459公報(以下、「周知例」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審において付加したものである)。 (周知a) 「尚、本発明は上記し且つ図面に示す実施例に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施し得るものであり、例えばセルカセット全体を温風等により恒温すれば反応完了時における分析法である反応終点測定法(エンドポイント法)の他、反応過程を調べる分析法である反応速度測定法(レイト法)により吸光度測定する装置にも使用できる他、本実施例ではセルカセットを無色透明としたが、反応試料は反応試薬によりその反応生成物が様様な色を呈するため、分析項目により透過光に光フィルタを用いるものもあるから、セルカセット全体或いはカセット本体または蓋部に、使用フィルタの特性を有する着色透明材を用いてフィルタ機能を持たせることも可能であり、また、セルカセットは安価に製作できるからクロスコンタミネーションなどを完全に防止すべく使い捨て(ディスポーザブル)とすることも可能であり、或いは洗浄して繰り返し使用することも可能である。この場合、セルカセット全体を使用の都度洗浄することからフローセルのように反応試料の吸引により洗い流す方式に比べ、クロスコンタミネーションはほとんど問題とならない。」(第4ページ右下欄第14行-第5ページ左上欄第17行) (周知b) 「第1図 」 第4 本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明の「試料を検出する方法」は、本願発明の「検体の検出方法」に相当する。 2 (1) 引用発明の「基質ルミネッセンス」、「端部」、「導波管試料ホルダ」、及び、「検出器」を備えた「照度計」は、それぞれ本願発明の「サンプル」、「少なくとも1つの壁」、「容器」、及び、「検出器を含むルミノメーター」に相当する。 (2) 引用発明の「酵素ルシフェラーゼ」は、「基質ルミネッセンス」と「組み合わされて」「バイオルミネッセンス」を「発生させる」ためのものであるから、本願発明の「発光反応のための触媒」に相当する。 (3) 引用発明の「導波管試料ホルダ」が「検出器」を備えた「照度計」に備えられるようにされていることは、本願発明の「容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されて」いることに相当する。 (4) 引用発明では、「感応式ルミネッセンス検出システム」で「基質ルミネッセンス」と「酵素ルシフェラーゼ」と「導波管試料ホルダ」とを用いている。 よって、上記(1)ないし(3)から、引用発明において、「基質ルミネッセンス」、「酵素ルシフェラーゼ」、及び「導波管試料ホルダ」を(「感応式ルミネッセンス検出システム」に)用いさせるようにすることと、本願発明の「サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器であって、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、前記壁の少なくとも一部分は、着色剤を含む、サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器を提供する第一のステップ」とは、上記「第2 本願発明」の『2 本願発明の「第一のステップ」の意味』に照らして、「サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器であって、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器を提供する第一のステップ」の点で共通する。 3 引用発明では、「試料及び試薬」が「試料及び試薬の投入室」に入れられた結果、「基質ルシフェリン」及び「酵素ルシフェラーゼ」が、「導波管試料ホルダ」の「試料を保持する中空の領域」で混合されることは明らかである。よって、引用発明における、「試料及び試薬」を「試料及び試薬の投入室」に入れることは、本願発明の「前記容器内で前記サンプル及び前記触媒を含む反応混合物を形成する第二のステップ」に相当する。 4 (1) 引用発明において、「導波管試料ホルダの底部から現れる放出光」は、「導波管試料ホルダ」の「試料を保持する中空の領域」で、上記3のように「基質ルシフェリン」及び「酵素ルシフェラーゼ」の混合により生じた「バイオルミネッセンス」であるから、本願発明の「前記容器内で、前記反応混合物から放出される光」に相当する。 (2) 引用発明の「放出光を検出する」ことは、本願発明の「光の有無を検出する第三のステップ」に相当する。 5 引用発明の「端部」は、「導波管試料ホルダの底部」をなすものであって、「導波管試料ホルダ」の「試料を保持する中空の領域」で、上記4(1)のように「基質ルシフェリン」及び「酵素ルシフェラーゼ」の混合により生じた「バイオルミネッセンス」を「検出器」に対して「放出」するものであるから、「基質ルシフェリン」及び「酵素ルシフェラーゼ」を混合したものと「検出器」との間に配置されている。 また、引用発明の「照度計は、導波管試料ホルダと、検出器とを備え」ていることから、「導波管試料ホルダ」は「照度計」内であり、また「照度計」内では「検出器」により、「導波管試料ホルダの底部から現れる放出光」を検出するという動作が可能にされていることになる。 よって、引用発明において、上記「放出光」が「検出器」に検出されるように、「端部」が「基質ルシフェリン」及び「酵素ルシフェラーゼ」を混合したものと「検出器」との間に配置され、かつ「照度計は、導波管試料ホルダと、検出器とを備え」ることと、本願発明の「前記第三のステップは、前記壁の前記着色剤を含む部分の少なくとも一部が前記反応混合物と検出器との間に配置されるように、前記容器を前記ルミノメーター内に動作可能に配置することを更に含」むこととは、「前記第三のステップは、前記壁の少なくとも一部が前記反応混合物と検出器との間に配置されるように、前記容器を前記ルミノメーター内で動作可能とすることを更に含」む点で共通する。 第5 本願発明と引用発明との一致点・相違点 してみると、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。 (一致点) 「検体の検出方法であって、 サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器であって、前記容器は、検出器を含むルミノメーターにおける使用に適合されており、サンプル、発光反応のための触媒、及び少なくとも1つの壁を含む容器を提供する第一のステップと、 前記容器内で前記サンプル及び前記触媒を含む反応混合物を形成する第二のステップと、 前記容器内で、前記反応混合物から放出される光の有無を検出する第三のステップと、を含み、 前記第三のステップは、前記壁の少なくとも一部が前記反応混合物と検出器との間に配置されるように、前記容器を前記ルミノメーター内で動作可能とすることを更に含む、方法。」 また、本願発明と引用発明は、次の点で相違する。 (相違点1)反応混合物と検出器との間に配置される壁の少なくとも一部について、本願発明では、着色剤を含み、着色剤を含む部分の表面積が、壁の表面積の少なくとも10パーセントであるのに対して、引用発明では、その点が特定されていない点。 (相違点2)第三のステップにおいて、本願発明では、容器をルミノメーター内に配置するのに対して、引用発明では、その点が不明な点。 第6 当審の判断 1 相違点1について (1) 上記(周知a)及び(周知b)によれば、「底を含む本体が着色透明材によってフィルタ機能を有する容器」が、本願の優先権主張の日前より周知技術であった。 (2) ところで、引用例には、(1d)及び(1g)において、「両端にて開放して」いる「導波管試料ホルダ」を「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズに近接する位置に配置すること」も記載されている。 ここでいう「光フィルタ」とは、単なる「平坦な透明材料」でなく、かつ「放出光を通」すものであるから、上記(1)の周知技術と同様に、典型的には着色剤を含む色フィルタであることは技術常識である。 また、「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」が(1g)のように「両端にて開放して」いる「導波管試料ホルダ」の底を閉じていることで、「導波管試料ホルダ」及び「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」は、全体として底が「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」によって閉じられた容器構造を形成している。 (3) ここで、引用発明の「試料を保持するため」の「端部」は、「放出光を収束し又はコリメート」するものであるから、上記「導波管試料ホルダ」の底を閉じる「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」のうち「レンズ」と同様の機能及び作用を有している。 (4) また、上記「端部」の表面積を、上記「導波管試料ホルダ」の表面積全体の少なくとも10パーセントすることは、「試料を保持する」のに十分な「導波管試料ホルダ」の長さ、及び「検出器」で見込まれるべき発光範囲の大きさに応じて当業者が適宜設計しうるものである。 さらに、上記(1)の周知技術のとおり底(端部)に限らず本体自体を着色透明材(光フィルタ)とすることが知られていたことから、「光フィルタ」を採用するときに「光フィルタ」の表面積を「導波管試料ホルダ」の表面積全体の少なくとも10パーセントとすることについては、なおさらそうである。 (5) してみれば、引用発明の「試料を保持するため」の「端部」において、「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」のうち「レンズ」と同様の機能及び作用を有する、「放出光を収束し又はコリメート」する構造に代えて、「平坦な透明材料、光フィルタ又はレンズ」における「レンズ」以外の選択肢である、着色剤を含む色フィルタである「光フィルタ」を採用し、「光フィルタ」の表面積を「導波管試料ホルダ」の表面積全体の少なくとも10パーセントとすることにより、当該相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。 2 相違点2について 一般に多数の容器中の各サンプルを検出器で次々に測定するために、検出装置内に容器を次々に取り換えて配置することは、通例行われている分析技術である。 よって、引用発明において、照度計内で検出器により、導波管試料ホルダの底部から現れる放出光を検出する(容器をルミノメーター内で動作可能とする)にあたり、通例どおり、導波管試料ホルダ(容器)を照度計内に配置することにより、当該相違点2に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たことである。 3 本願発明の奏する作用効果 また、本願発明によってもたらされる作用効果は、引用例及び周知例に記載された事項から当業者が予測し得る程度のものである。 4 平成28年3月8日付け意見書における請求人の主張について 平成28年3月8日付け意見書で、請求人は引用例について、 「図4中の導波管試料ホルダも円筒状の形状(すなわち断面形状が円状)を有するものであると更に仮定し、図4に示された導波管試料ホルダ及び光学フィルタの寸法に基づいて計算すると、当該容器全体の表面積に対する光フィルタの表面積(導波管試料ホルダの断面積と同じ)の割合は約5?6%となります。少なくとも、当該割合が少なくとも10パーセントであるとは認められません。なお、図4中の導波管試料ホルダの断面形状が正方形であると仮定しても、当該容器全体の表面積に対する光フィルタの表面積の割合は10パーセント未満となります。」 なる点を根拠として、 「したがいまして、本願発明1は、引用例及び周知例1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべきものではないと思料いたします。」 と主張している。 しかしながら、引用例の発明の詳細な説明では、図4が正しい縦横比で記載されていることの裏付けはなく、むしろ(1e)に「【図4】…概略側面図である。」と明記されているとおり、図4は単なる概略図に過ぎない。 よって、引用例の図4の寸法を用いて計算した上記割合の数値範囲(「約5?6%」及び「10パーセント未満」)に基づく上記根拠は、妥当でない。 また、上記1(4)に示した点からすれば、引用発明において、当該割合をどのようなパーセントとすることも設計事項であるから、上記主張は失当である。 5 まとめ してみると、本願発明は、引用発明、周知技術、並びに引用例及び周知例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-03-22 |
結審通知日 | 2016-03-29 |
審決日 | 2016-05-02 |
出願番号 | 特願2014-506528(P2014-506528) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G01N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 横尾 雅一 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
▲高▼場 正光 藤田 年彦 |
発明の名称 | ルミネセンス検出方法 |
代理人 | 池田 正人 |
代理人 | 柳 康樹 |
代理人 | 城戸 博兒 |
代理人 | 清水 義憲 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |