• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 F16H
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16H
管理番号 1334688
審判番号 不服2016-17845  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-11-30 
確定日 2017-12-03 
事件の表示 特願2013-163456「手動式回転器具」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 2月16日出願公開、特開2015- 31383、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年8月6日の出願であって、平成28年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年3月26日に意見書が提出されるとともに明細書及び特許請求の範囲を対象とする手続補正がされたが、同年8月23日付け(発送日:同年8月30日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において、平成29年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月31日に意見書が提出されるとともに明細書及び図面を対象とする手続補正がされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、平成28年3月26日に手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
被回転体に回転力を付与する出力回転軸と、
その出力回転軸を回転軸に有する出力歯車と、
その出力歯車に直接歯合又は歯車系を介して歯合される第1入力歯車と、
その第1入力歯車と同軸上に配置されるとともに前記出力歯車に直接歯合又は歯車列を介して歯合される第2入力歯車と、
前記第1入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第1ハンドル杆と、
その第1ハンドル杆の引動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車に伝達する一方、その第1ハンドル杆の押動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車から切断する第1クラッチと、
前記第2入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第2ハンドル杆と、
その第2ハンドル杆の引動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車から切断する一方、その第2ハンドル杆の押動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車に伝達する第2クラッチと、
前記第1及び第2ハンドル杆同士を連結して同一方向に連動揺動させるとともに使用者により把持されるハンドルグリップとを備えており、
前記第1及び第2クラッチによって、前記第1及び第2ハンドル杆の引動及び押動の切り替わりに関わらず、前記出力歯車、第1入力歯車及び第2入力歯車がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力回転軸を連続的に同一方向に回転させるものであることを特徴とする手動式回転器具。
【請求項2】
被回転体に回転力を付与する出力回転軸と、
その出力回転軸を回転軸に有する第1及び第2出力歯車と、
その第1出力歯車に直接歯合又は歯車系を介して歯合される第1入力歯車と、
その第1入力歯車と同軸上に配置されるとともに前記第2出力歯車に直接歯合又は歯車列を介して歯合される第2入力歯車と、
前記第1入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第1ハンドル杆と、
その第1ハンドル杆の引動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車に伝達する一方、その第1ハンドル杆の押動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車から切断する第1クラッチと、
前記第2入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第2ハンドル杆と、
その第2ハンドル杆の引動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車から切断する一方、その第2ハンドル杆の押動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車に伝達する第2クラッチと、
前記第1及び第2ハンドル杆同士を連結して同一方向に連動揺動させるとともに使用者により把持されるハンドルグリップとを備えており、
前記第1及び第2クラッチによって、前記第1及び第2ハンドル杆の引動及び押動の切り替わりに関わらず、前記第1及び第2出力歯車、並びに、第1及び第2入力歯車がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力回転軸を連続的に同一方向に回転させるものであることを特徴とする手動式回転器具。」

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-203013号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「入力軸の往復回転を出力軸の一方向性回転にする変換機構」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0015】
【実施例】図1,2に示すように、入力軸12の正逆の往復回転を出力軸14の一方向性回転に変換する機構10は、本発明の好適実施例を構成する。機構10は、前述の型式の結束工具Tに使用されるように図1,2に示される。結束工具Tは、機構10と、結束工具Tの他の要素とに対するフレーム16を有している。入力軸線を限定する入力軸12は、フレーム16に支承され、入力軸線のまわりに回転可能である。出力軸線を限定する出力軸14は、フレーム16に支承され、出力軸線のまわりに回転可能である。出力軸線は、入力軸線に対して垂直である。
【0016】図示のように、入力軸12は、その隣接する部分に比較して直径が小さくなった環状凹所18を備えている。出力軸14は、夫々の軸12,14を相互に対して位置決めするように入力軸12の凹所18内に延びる円筒形端部20を有している。凹所18は、円筒形端部20を閉じ込めるように、しかしながら入力軸12が出力軸14に摩擦抵抗を与えることなく回転するのを出力軸14に許容するように、寸法を定めてある。
【0017】出力軸14は、円筒形端部20と同様な他の円筒形端部22と、図示のように丸められたかどを有するほゞ正方形でもよい非円形断面の中間部分24とを備えている。出力軸14は、円筒形端部20における軸受(図示せず)を介してフレームに支承される。一連のカムCは、出力軸14と、カムCとの一緒の回転を可能にするように中間部分24に装着される。カムCは、一連のパンチ(図示せず)を駆動するように配置され、該パンチは、周知の態様で一連の噛合い継手(図示せず)を介してストラップを結合するために図1,2に示すストラップSのような鋼ストラップの重なる端部に噛合い肩(図示せず)を打抜くように配置される。該カム及びパンチは、上述の型式の周知の結束工具に使用されるカム及びパンチにほゞ類似してもよい。
【0018】作動ハンドル26が入力軸線のまわりで旋回するように入力軸12に固定され、このハンドルで入力軸12を入力軸線のまわりに回転することができる作動ハンドル26は、図1の第1制限位置と、図2の第2制限位置との間を手動で旋回可能である。ピン28は、入力軸12から半径方向へ延びるように該軸12に固定される。入力軸12上へ延びるようにフレーム16に固定されたねじ付きスタッド30は、入力軸12が作動ハンドル26の第1制限位置に相当する位置へ回転されたときにピン28に係合するように配置される。入力軸12の下へ延びるようにフレーム16に固定されるねじ付きスタッド32は、入力軸12が作動ハンドル26の第2制限位置に相当する位置へ回転されたときにピン28に係合するように配置される。従って、作動ハンドル26の第1制限位置は、入力軸12の第1制限位置を限定し、作動ハンドル26の第2制限位置は、入力軸12の第2制限位置を限定する。又、夫々のスタッド30,32及びピン28は、入力軸12の第1制限位置と第2制限位置との間で約180°の範囲内を回転するために入力軸12の回転を制限するように協働する。こゝに、作動ハンドル26の前方運動とは、作動ハンドル26の第1制限位置への旋回運動、作動ハンドル26の逆転運動とは、作動ハンドル26の第2制限位置への旋回運動とする。
【0019】機構10は、3個の傘歯車、即ち、第1歯車40と、第2歯車42と、第3歯車44とを有している。第1,第2の歯車40,42の各々は、入力軸12と該歯車との間の相対的な回転を可能にするように入力軸12のまわりに装着される。従って、第1歯車40は、単一の凹所50を除き円筒形当接面48によって限られ、入力軸12の円筒形部分52がそれを通って延びる円形軸方向孔46を有している。又、第2歯車42は、単一の凹所58を除き円筒形当接面56によって限られ、入力軸12の円筒形部分60がそれを通って延びる円形軸方向孔54を有している。入力軸12の円筒形部分52,60は、凹所18によって隔たれている。第3歯車44は、該歯車44と、出力軸14との一緒の回転を可能にするように出力軸14に結合される。従って、第3歯車44は、出力軸14の中間部分24に合致する非円形軸方向孔62を有し、出力軸14の該部分24は、一連のカムCと出力軸14の円筒形端部20との間で第3歯車44を出力軸14に結合するように該孔62を通って延びる。第3歯車44は、第1歯車40と第2歯車42とに噛合う。」

(2)「【0022】機構10は、第1爪80を有し、爪80は、作用位置と不作用位置との間を移動するのを許容されるような態様で入力軸12に装着される。この爪80は、その作用位置と不作用位置との間をほゞ半径方向に動けるように第1ソケット72内に配置される管状部分82を有している。又、爪80は、その作用位置において第1ソケット72から第1歯車40の単一の凹所50内へ延びる端分84を有する。端部84は、爪80の不作用位置において該凹所50から引込められて第1歯車40の円筒形当接面48に当接する。管状部分82を通って延び端部84に当接するように第1ソケット72に収容されるコイルばね86は、爪80の作用位置を除いて第1歯車40及び第1爪80の相対的な運動を許容するように爪80をその作用位置に向かって該当接面48に対して押付ける。従って、その作用位置では、第1爪80は、入力軸12のその第2制限位置への回転に対応する回転方向(図で反時計方向)においてのみ第1歯車40および入力軸12の一緒の回転を可能にするように第1歯車40を入力軸12へ結合する。
【0023】機構10は、第2爪90を有し、爪90は、作用位置と不作用位置との間を半径方向に動けるような態様で入力軸12の第2ソケット74内に配置される管状部分92を有している。爪90は、その作用位置において第2ソケット74から第2歯車42の単一の凹所58内へ延びる端部94を有する。端部94は、該爪90の不作用位置において該凹所58から引込められて第2歯車42の円筒形当接面56に当接する。管状部分92を通って延び端部94に当接するように第2ソケット74に収容されるコイルばね96は、爪90の作用位置を除いて第2歯車42及び第2爪90の相対的な運動を許容するように爪90をその作用位置に向かって該当接面56に対して押付ける。従って、その作用位置では、第2爪90は、入力軸12のその第1制限位置への回転に対応する回転方向(図で時計方向)においてのみ第2歯車42及び入力軸12の一緒の回転を可能にするように第2歯車42を入力軸12へ結合する。」

(3)「【0026】機構10の各操作サイクルは、入力軸12の往復回転により、即ち、図5の矢印Aのようにその第2制限位置からその第1制限位置への入力軸12の180°の回転と、図6の矢印Bのようにその第1制限位置からその第2制限位置への入力軸12の180°回転とによってもたらされる。その第2制限位置からその第1制限位置への入力軸12の回転は、作動ハンドル26の前方運動によって手動で行われる。その第1制限位置からその第2制限位置への入力軸12の回転は、作動ハンドル26の逆転運動によって手動で行われる。機構10の各操作サイクルは、完全な1回転にわたる出力軸14の一方向性回転を生じる。
【0027】入力軸12が作動ハンドル26の逆転運動で第2制限位置に向かって回転するとき、第1歯車40と入力軸は、第1爪80によって結合されるために一緒に回転し、一方、第2歯車42は、第3歯車44を介して反対に回転される。第2歯車42の反対の回転で第2爪90の端部94は、コイルばね96によって第2歯車42の円筒形当接面56に対して付勢され、該面56に沿って移動する。入力軸12がその第2制限位置に達すると、第2爪90の端部94は、第2凹所58に進入可能であり、該凹所58内へコイルばね96によって付勢される。入力軸12が第2制限位置から第1制限位置に向かって回転を開始する際、第1爪80は、カム面100,102により第1凹所50から外へカム係合で移動される。
【0028】入力軸12が作動ハンドル26の前方運動で第1制限位置に向かって回転する際、第2歯車42と入力軸12は、第2爪90によって結合されるために一緒に回転し、一方、第1歯車40は、第3歯車44によって反対に回転される。第1歯車40が反対に回転すると、第1爪80の端部84は、コイルばね86によって第1歯車40の円筒形当接面48に対して付勢され、該面48に沿って移動する。入力軸12がその第1制限位置に達すると、第1爪80の端部84は、第1凹所50に進入可能であり、該凹所50内へコイルばね86によって付勢される。入力軸12が第1制限位置から第2制限位置に向かって回転を開始する際、第2爪90は、カム面110,112によって第2凹所58からカム係合によって外へ移動される。」

(4)前記「(2)」及び「(3)」の記載事項から、作動ハンドル26の前方運動は、第1制限位置への回転方向で、第2歯車42が回転すること、また、作動ハンドル26の逆転運動は、第2制限位置への回転で、第1歯車40が回転することがいえる。

上記の記載事項及び図面の記載を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、図1?5に記載の実施例として、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「カムCに回転力を付与する出力軸14と、
その出力軸14を回転軸に有する第3歯車44と、
その第3歯車44に直接歯合される第1歯車40と、
その第1歯車40と同軸上に配置されるとともに前記第3歯車44に直接歯合される第2歯車42と、
前記第1歯車40の配設側に配設され、第1制限位置への回転方向及び第2制限位置への回転方向に入力軸線を中心として揺動される作動ハンドル26と、
その作動ハンドル26の第2制限位置への回転で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第1歯車40に伝達する一方、その作動ハンドル26の第1制限位置への回転で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第1歯車40から切断する第1爪80と、
その作動ハンドル26の第2制限位置への回転方向で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第2歯車42から切断する一方、その作動ハンドル26の第1制限位置への回転で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第2歯車42に伝達する第2爪90と、
前記第1爪80及び第2爪90によって、前記作動ハンドル26の逆転運動及び前方運動の切り替わりに関わらず、前記第3歯車44、第1歯車40及び第2歯車42がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力軸14を連続的に同一方向に回転させるものである入力軸12の往復回転を出力軸14の一方向性回転にする変換機構。」

2 引用文献2について
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-184471号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「方向変動エネルギー取出し装置」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を波力エネルギー取出し装置1に適用した一実施例を示す。図1?3において、2はフレーム体で、左右一対の側板3,3を上下左右4本の支柱4,4,…で連結して構成されている。5は入力軸、6は出力軸で、各々左右の側板間に、軸受け7,7,…を介して回転自在に取り付けられている。
【0011】入力軸5には、大径の第1及び第2の歯車8,9が固定されている。
【0012】出力軸6には、小径の第3及び第4の歯車10,11が、各々、回転伝達方向を一致させた第1及び第2のワンウェイクラッチ12,13を介して取り付けられている。
【0013】第1及び第2の歯車8,9に対する、第3及び第4の歯車10,11のギア比は、例えば4:1という値にされている。これは、力は大きいが往復速度が小さい波のエネルギーを効率的に取出すための増速機構とするためである。
【0014】第1の歯車8と第3の歯車10は直接噛み合っているが、第2の歯車9と第4の歯車11は、反転用のアイドル歯車14を挟んで結合される。反転用のアイドル歯車14は、一方の側板3に固定した支軸15の回りに回転自在に取り付けられている。
【0015】16は、はずみ車で、出力軸6に固定されている。
【0016】上記構造において、入力軸5には、往復動する水の力を正逆の回転運動に変換する受圧部材17が結合される。
【0017】この受圧部材17は、例えば、図4に示すように、入力軸5に固定され下側方に延ばされたアーム5aと、その先端に固定されて水流を受ける受圧板5bによって構成され、短周期で往復動する水の動きで、入力軸5を正逆回転させるものである。
【0018】入力軸5の正逆交互回転は、次のような作用で出力軸6の一方向回転として取り出される。
【0019】入力軸5の正逆回転に伴い、第1の歯車8は第3の歯車10を直接逆・正回転させ、第2の歯車8は、反転用のアイドル歯車14を介し、第4の歯車11を、第3の歯車10と逆向き、すなわち正・逆に回転させる。
【0020】第3の歯車10及び第4の歯車11は、回転伝達方向を一致させた第1及び第2のワンウェイクラッチ12,13を介して、出力軸6に取り付けられているので、入力軸5が正逆どちら向きに回転しても、その回転力は、第1及び第2のワンウェイクラッチ12,13の回転伝達方向と一致する向きに回転しているときの歯車10又は11を介して、出力軸6に伝達され、出力軸6から一方向回転として取り出される。
【0021】このとき、第1及び第2のワンウェイクラッチ12,13の回転伝達方向と逆向きに回転している歯車10又は11は、第1及び第2のワンウェイクラッチ12,13によって空回りする。
【0022】受圧部材17から入力される回転力は、不規則になることが予想されるが、はずみ車16によって回転トルクを円滑化し、発電機やポンプの動力源として利用し易い安定した出力を取り出すことができる」

(2)「【0032】以上、本発明の一実施形態につき説明したが、本発明は波のエネルギー取出し装置の他に正逆流水流や空気の流れなど、方向が変動するあらゆる流体流からエネルギーを取出すのに適用可能である。」

3 引用文献3について
原査定に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭54-168475号(実開昭56-84486号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には、「幼小児用自動車の車体」に関して、図面(特に、第5図参照。)とともに次の事項が記載されている。
(1)「(10)は支持部(9)に両側部を回転自在に嵌合した後車軸で、曲柄(10a)の2個を具有する。(11)は方向転換軸で、両端部を屈曲してその屈曲部を回動片(12)に各回動自在に接続し、各回動片(12)は保持杆(7)に枢着した各前車輪の軸(13)に挿入固着する。(14)は前車輪で、軸(13)の屈曲部に各枢着する。(15)は後車輪で、後車輪(10)の一端部、ないし、両端部に各固着する。一端部に固着した場合は他端部は回転自在に取付けること勿論である。(16)はペダルで、操縦者の両足に対応した位置に配置する。(17)は連結杆で、各ペダル(16)と曲柄(10a)とを各接続する。」(明細書7ページ17行?8ページ8行)

(2)第5図を参照すると、ペダル16が見て取れる。

第4 対比、判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「カムC」は、本願発明1の「被回転体」に相当する。
以下同様に、「出力軸14」は、「出力回転軸」に、
「第3歯車44」は、「出力歯車」に、
「第3歯車44に直接歯合される第1歯車40」は、「出力歯車に直接歯合又は歯車系を介して歯合される第1入力歯車」に、
「第3歯車44に直接歯合される第2歯車42」は、「出力歯車に直接歯合又は歯車列を介して歯合される第2入力歯車」に、
「第1制限位置への回転」及び「前方運動」は、「押動」に、
「第2制限位置への回転」及び「逆転運動」は、「引動」に、
「入力軸線」は、「揺動軸」に、
「作動ハンドル26」は、「第1ハンドル杆」に、
「第1爪80」は、「第1クラッチ」に、
「第2爪90」は、「第2クラッチ」に、
「入力軸12の往復回転を出力軸14の一方向性回転にする変換機構」は、「手動式回転器具」に、それぞれ相当する。

以上のことから、本願発明1と引用発明とは次の点で一致する。
「被回転体に回転力を付与する出力回転軸と、
その出力回転軸を回転軸に有する出力歯車と、
その出力歯車に直接歯合又は歯車系を介して歯合される第1入力歯車と、
その第1入力歯車と同軸上に配置されるとともに前記出力歯車に直接歯合又は歯車列を介して歯合される第2入力歯車と、
前記第1入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第1ハンドル杆と、
その第1ハンドル杆の引動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車に伝達する一方、その第1ハンドル杆の押動状態で当該第1ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第1入力歯車から切断する第1クラッチと、
前記第1及び第2クラッチによって、前記第1ハンドル杆の引動及び押動の切り替わりに関わらず、前記出力歯車、第1入力歯車及び第2入力歯車がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力回転軸を連続的に同一方向に回転させるものである手動式回転器具。」

一方で、両者は次の点で相違する。
[相違点]
本願発明1では、
「前記第2入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第2ハンドル杆と、その第2ハンドル杆の引動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車から切断する一方、その第2ハンドル杆の押動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車に伝達する第2クラッチと、前記第1及び第2ハンドル杆同士を連結して同一方向に連動揺動させるとともに使用者により把持されるハンドルグリップとを備えており、前記第1及び第2クラッチによって、前記第1及び第2ハンドル杆の引動及び押動の切り替わりに関わらず、前記出力歯車、第1入力歯車及び第2入力歯車がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力回転軸を連続的に同一方向に回転させるものである」のに対して、
引用発明は、第2ハンドル杆を備えておらず、「その作動ハンドル26の第2制限位置への回転方向で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第2歯車42から切断する一方、その作動ハンドル26の第1制限位置への回転で当該作動ハンドル26の入力軸線の回転を前記第2歯車42に伝達する第2爪90と、前記第1爪80及び第2爪90によって、前記作動ハンドル26の逆転運動及び前方運動の切り替わりに関わらず、前記第3歯車44、第1歯車40及び第2歯車42がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力軸14を連続的に同一方向に回転させるものである」点。

(2)相違点についての判断
引用文献2(前記「第3 2」を参照。)には、方向変動エネルギー取出し装置において、入力軸5に、往復動する水の力を正逆の回転運動に変換する受圧部材17が結合され、この受圧部材17は、入力軸5に固定され下側方に延ばされたアーム5aと、その先端に固定されて水流を受ける受圧板5bによって構成され、短周期で往復動する水の動きで、入力軸5を正逆回転させるもので、入力軸5が正逆どちら向きに回転しても、その回転力は、第1及び第2のワンウェイクラッチ12、13の回転伝達方向と一致する向きに回転しているときの歯車10又は11を介して、出力軸6に伝達され、出力軸6から一方向回転として取り出され、受圧部材17から入力される回転力は、発電機やポンプの動力源として利用し易い安定した出力を取り出すことができることが記載されている(以下、「引用文献2に記載された技術的事項」という。)。
また、引用文献3(前記「第3 3」を参照。)には、幼小児用自動車の車体において、ペダル16を設けたものが記載されている(以下、「引用文献3に記載された技術的事項」という。)。
しかし、引用文献2及び3に記載された技術的事項は、いずれも、本願発明1のハンドル杆に相当する部材を開示するものではないから、上記相違点に係る本願発明1の構成のうち、「前記第2入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第2ハンドル杆」、及び「前記第1及び第2ハンドル杆同士を連結して同一方向に連動揺動させるとともに使用者により把持されるハンドルグリップ」の点を、何ら示唆するものではない。
そうすると、たとえ引用発明に引用文献2及び3に記載された技術的事項を適用したとしても、上記相違点に係る本願発明1の構成に至るものではない。
したがって、上記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
よって、本願発明1は、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は、上記相違点に係る本願発明1の構成に対応する「前記第2入力歯車の配設側に配設され、押動方向及び引動方向に揺動軸を中心として揺動される第2ハンドル杆と、その第2ハンドル杆の引動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車から切断する一方、その第2ハンドル杆の押動状態で当該第2ハンドル杆の揺動軸の回転を前記第2入力歯車に伝達する第2クラッチと、前記第1及び第2ハンドル杆同士を連結して同一方向に連動揺動させるとともに使用者により把持されるハンドルグリップとを備えており、前記第1及び第2クラッチによって、前記第1及び第2ハンドル杆の引動及び押動の切り替わりに関わらず、前記第1及び第2出力歯車、並びに、第1及び第2入力歯車がそれぞれ所定の一方向に回転され、前記出力回転軸を連続的に同一方向に回転させるものである」との構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定について
原査定は、請求項1及び2について上記引用文献1?3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
しかし、前記「第4」のとおり、本願発明1及び2は、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審では、明細書の段落【0048】?【0060】及び【図6】?【図8】に記載の第2実施例(以下、「当初明細書の第2実施例」という。)は、当業者がその実施をすることができる程度に記載されていないから、本願は、明細書及び図面の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないとの拒絶の理由を通知している。
しかし、平成29年8月31日の手続補正により、当初明細書の第2実施例に関する記載は、全て削除された結果、この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、本願発明1及び2は、引用発明、並びに引用文献2及び3に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、原査定の理由及び当審が通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-08 
出願番号 特願2013-163456(P2013-163456)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (F16H)
P 1 8・ 121- WY (F16H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 高吉 統久  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 内田 博之
小関 峰夫
発明の名称 手動式回転器具  
代理人 水野 友文  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ