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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09D
管理番号 1334713
審判番号 不服2016-4472  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-25 
確定日 2017-11-16 
事件の表示 特願2013-505475「塗料組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成23年10月27日国際公開、WO2011/131721、平成25年 8月 8日国内公表、特表2013-531692〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)4月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年4月20日、(EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成23年 4月20日 :特許出願
平成27年 1月30日付け:拒絶理由の通知
平成27年 5月22日 :意見書、手続補正書の提出
平成27年11月20日付け:拒絶査定
平成28年 3月25日 :審判請求書、手続補正書の提出
平成28年 5月30日付け:前置報告
平成29年 2月 6日付け:拒絶理由の通知
平成29年 5月 8日 :意見書、手続補正書の提出

2.本願発明について
本願の請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明13」という。まとめて、「本願発明」ということもある。)は、平成29年5月8日に提出された手続補正書による手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものと認められる。
「[請求項1]
i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸;
ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物;
iii)脱水剤、および
iv)1種以上の結合剤:
を含んでなる塗料組成物であって、
塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触されること、
ここで、
塗料組成物には0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれ、
前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する、
を特徴とする、塗料組成物。
[請求項2]
成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触され、また混合される、請求項1記載の塗料組成物。
[請求項3]
カルボン酸が12?25重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる、請求項1?2のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項4]
少なくとも1種の金属酸化物化合物が、酸化銅(I)、酸化亜鉛および酸化鉄(III)の1種以上から選択される、請求項1?3のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項5]
少なくとも1種の金属酸化物化合物が、40?60重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる、請求項1?4のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項6]
脱水剤が無水石膏および/または分子ふるい/ゼオライトの1種以上から選択される、請求項1?5のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項7]
脱水剤が1?5重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる、請求項1?6のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項8]
結合剤が、次のモノマー:C_(1)-C_(10)アルキル(C_(0)-C_(10)アルク)アクリレート;トリアルキルシリル(C_(0)-C_(10)アルク)アクリレートの1種以上から形成されるオリゴマーまたはポリマー材料を含んでなる、請求項1?7のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項9]
結合剤が1?5重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる、請求項1?8のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項10]
結合剤が、少なくとも50重量%の、バーサチック酸のビニルエステルのモノマー単位から形成されるオリゴマーまたはポリマー組成物を含んでなる、請求項1?7のいずれかに記載の塗料組成物。
[請求項11]
i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸;およびii)少なくとも1種の金属酸化物化合物を含んでなり、0.5重量%未満の金属樹脂酸塩を含む塗料組成物であって、
ここで、
塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触され、
前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する、
塗料組成物。
[請求項12]
請求項1?11のいずれかに記載の塗料組成物で塗布された船舶または海洋構造物。
[請求項13]
i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸、
ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物、
iii)脱水剤、および
iv)1種以上の結合剤:
を含んでなる塗料組成物を形成する方法であって、
成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤iii)を、成分i)またはii)の他方と接触させる工程を含み、
ここで、塗料組成物が0.5重量%未満の金属樹脂酸塩を含み、
前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する、
方法。」

3.拒絶理由について
平成29年2月6日付けで当審が通知した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
理由I(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由II(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

理由I(サポート要件)
(I-1)本願発明1について
本願発明1においては、塗料組成物がi)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸、ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物、iii)脱水剤及びiv)1種以上の結合剤、を含むことが特定されているが、構成成分i)?iv)はいずれも性質の異なる様々な化合物を包含するものであり、また、いずれの成分も配合割合は不特定であるから、本願発明1の塗料組成物は、多岐にわたる性質を備えた様々な塗料組成物を包含するものである。また、本願発明1においては塗料の適用対象、用途も特段特定されていないから、この点から見ても、本願発明1の塗料組成物は、多岐にわたる性質を備えた様々な塗料組成物を包含するものと解される。さらに、本願発明1においては、「塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触される」ことが特定されているが、上記のとおり、成分i)?iii)の性質、反応性は多岐にわたること、成分iv)の結合剤や、その他の任意成分も共存すること、及び配合成分の割合がいずれも特定されていないことを勘案すると、上記の順番で成分iii)脱水剤と成分i)及びii)とを接触させたとしても、塗料組成物中で必ずしも完全に脱水が行われるとは限らず、本願発明の課題の解決に寄与するものと直ちに解することはできない。加えて、本願発明1においては、「0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれる」ことが特定されているが、この条件は、例えば原料として用いる「i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸塩」の配合割合が0.5重量%未満であった場合には、脱水剤の作用如何に関わらず、自ずから満たされる条件にすぎないし、出願時の技術常識を考慮しても、金属樹脂酸塩の含有量が0.5重量%未満であることをもって、直ちに上記i)?iv)及び任意成分を含む広範な組成を有する塗料組成物の性質が定まるとは考えにくいから、本願発明の課題の解決に役立つ発明特定事項であるのか、直ちに理解することはできない。
これに対して、本願明細書の記載事項及び出願時の技術常識に照らしても、本願発明1に包含される広範な成分の組合せと、「0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれる」点によって特徴付けられるすべての塗料組成物が、本願発明の課題を解決し得るものであることを理解することはできない。
そうすると、出願時の常識に照らしても、本願発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本願発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(I-2)本願発明11について
本願発明11も、本願発明1と同様に、カルボン酸及び金属酸化物化合物は、いずれも性質の異なる様々な化合物を包含するものであり、また、いずれの成分も配合割合は不特定であるから、出願時の常識に照らしても、本願発明11の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。よって、本願発明11は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(I-3)本願発明2?10、12について
本願発明2?10、12は本願発明1を直接又は間接的に引用して記載されているところ、本願発明1と同じ理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものということができない。

(I-4)本願発明13について
本願発明13は、本願発明1と同様の発明特定事項を含む塗料組成物を形成する方法の発明であるところ、本願発明1と同様の理由により、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

理由II(明確性)
本願発明1は、「塗料組成物」(物の発明)であるが、本願発明1は、「塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触される」という、その物の製造方法の記載を含んでいる。
ここで、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかしながら、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書等に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、本願発明1は明確でない。
また、本願発明1を直接又は間接的に引用して記載されている物の発明である本願発明2?10及び12についても、同じ理由により明確でない。

4.当審拒絶理由についての判断
(1)当審拒絶理由の理由II(明確性)について
本願発明1は、「塗料組成物」(物の発明)であるが、本願発明1には、「塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触される」及び「前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する」という、その物の製造に関する経時的要素の記載が含まれている。
そこで、まず、上記経時的要素の記載が、本願明細書の記載及び出願時における技術常識を加えて判断したときに、単に物の状態を示すことにより、本願発明1の塗料組成物に含まれる「物」の構造又は特性等を特定しているにすぎないといえるか検討すると、本願明細書の[0016]には、「どんな学説に対しても制約されることを望まないが、カルボン酸と金属酸化物化合物の反応は、反応を開始させるための触媒として痕跡量の水を要すると考えられる。次にカルボン酸と金属酸化物間の反応は更なる水を放出し、それにより反応を促進する。従って、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、成分i)またはii)の他方に、脱水剤iii)を添加することは、カルボン酸と金属酸化物化合物のあらゆる反応の前に、その系から痕跡の水を除去する。」と記載されている。当該記載からみて、上記「塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触される」及び「前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する」という発明特定事項は、本願発明1の塗料組成物が最終的に製造されるより前の、中間段階の製造工程について特定しているものであり、最終製品である本願発明1の塗料組成物中の構成成分を直接特定しているものではないと解することができる。そうすると、上記経時的要素の記載を、単に状態を示すことにより物の構造又は特性を特定しているにすぎないものということはできない。
よって、本願発明1における上記経時的要素の記載は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合に相当するが、このような場合に当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である(最二小判平成27年6月5日 平成24年(受)1204号、同2658号)。
しかし、塗料組成物という物の発明である本願発明1を、その構成成分の特徴のみにより特定することが不可能又は非実際的であり、製造方法による特定を含めなければならない事情が存在することについては、本願明細書には記載がない。そこで、平成29年2月6日付けで当審から拒絶理由を通知し、請求人に釈明の機会を与えたところ、請求人は、平成29年5月8日付け意見書において、次のとおり主張している。
「請求項1?12の発明の組成物は、i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸、ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物、iii)脱水剤を含み、極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まない「物」、即ち、構成する成分によって特定されている「物」である。
一方、更に特定されている製造方法は、極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まないと言う本発明の特徴に対応しており、金属樹脂酸塩の含量の制御が、審判長殿が挙げられた単なる成分i)の添加量の調節等の他の要因ではなく、成分の特定の順序の添加の結果達成されることを明確にするために記載されている。
即ち、成分i)、ii)、iii)を特定の順序で接触させて得られる本発明の塗料組成物は、成分i)、ii)、iii)を同時に接触させて調製された塗料組成物に比べて低いレベルの金属樹脂酸塩を含む(明細書段落[0127]、[図1]等)。これは、痕跡量の水の存在下での成分i)(カルボン酸)と成分ii)(金属酸化物)の反応による金属樹脂酸塩の生成が、反応の前にその系内から水を除去することによって抑制される結果である(段落[0017])。何故なら、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水が除去するからである。
依って、請求項1?12の発明は上記要件に適合するものであり、本発明は審判長殿ご指摘の特許法第36条第6項第2号の要件を満たすものと考える。」
しかし、請求人の、「更に特定されている製造方法は、極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まないと言う本発明の特徴に対応しており、金属樹脂酸塩の含量の制御が、審判長殿が挙げられた単なる成分i)の添加量の調節等の他の要因ではなく、成分の特定の順序の添加の結果達成されることを明確にするために記載されている」旨の主張からは、本願発明1における上記経時的要素の記載が、「極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まないと言う本発明の特徴」、すなわち、本件発明1における「塗料組成物には0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれ」るという発明特定事項と実質的に同じことを意味しているようにしか解されず、構成成分の明示的な特定以外に、重ねて上記経時的要素による特定を行わなければ、物の発明である本願発明1の特徴を特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情を理解することはできない。
また、請求人は、「成分i)、ii)、iii)を特定の順序で接触させて得られる本発明の塗料組成物は、成分i)、ii)、iii)を同時に接触させて調製された塗料組成物に比べて低いレベルの金属樹脂酸塩を含む」と主張しているが、本件発明1においては、「塗料組成物には0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれ」るという金属樹脂酸塩の含有割合を直接特定する発明特定事項が既に存在するから、「低いレベルの金属樹脂酸塩を含む」という特徴は構成成分の記載によって特定されていると解することができ、構成成分の明示的な特定以外に、重ねて上記経時的要素による特定を行わなければ、物の発明である本願発明1の特徴を特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情については説明されているとはいえない。
さらに、請求人は、「請求項1?12の発明の組成物は、i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸、ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物、iii)脱水剤を含み、極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まない「物」、即ち、構成する成分によって特定されている「物」である。」と主張しているが、上記経時的要素の記載が、「物」である塗料組成物中に、具体的にどのような構成成分が含まれることを特定しようとするものかは理解できないし、上記のような経時的要素による記載でなければ、物の発明である本願発明1に含まれる構成成分を特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情については、説明されていない。
加えて、請求人は、上記経時的要素の記載を含む本願発明1が、「その物の製造方法が記載されている場合」に該当しないという主張をしているとも認められない。
そうすると、上記意見書における請求人の主張を参酌しても、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、不可能・非実際的事情が存在することについて、明細書に記載がなく、また、出願人から主張・立証がされていないため、その存在を認める理由は見いだせない。
したがって、本願発明1は、特許を受けようとする発明を明確に記載したものとすることができないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

また、本願発明1を直接又は間接的に引用して記載されている物の発明である本願発明2?10、12、及び本願発明1と同様の経時的要素の記載を含む本願発明11についても、同じ理由により、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)当審拒絶理由の理由I(サポート要件)について
(2-1)本願発明1について
(ア)本願発明の課題について
本願明細書[0001]には、本願発明が塗料組成物、特に、海洋適用物に適した自己研磨性、防汚性塗料に関するものであることが記載され、[0002]?[0011]には、ロジンを含む自己研磨性、防汚性塗料に関する従来技術が記載され、[0012]には、先行技術文献中に提唱された組成物から誘導される塗料は、しばしば十分に高い硬度をもたず、または不十分な自己研磨率を有し、更に、自己研磨率を正確に制御することが困難であるという欠点を有する旨が記載されており、[0013]の記載と合わせると、本願発明は上記の欠点を解決し得る自己研磨性防汚性塗料組成物を提供することを課題とするものと認められる。

(イ)本願発明の実施例及び効果について
本願発明1の具体例については、まず、本願明細書の[0107]表1に実施例調合物1の配合成分が記載されており、


[0109]の表2に実施例調合物2の配合成分が記載されており、


表2の下には、表1及び表2に記載された各商品名が意味する物質名が記載されており、


上記表2に記載された「Veova9ホモポリマー溶液」は、[0110]?[0116]に記載された調製方法により調製されたものと解される。
次に、[0117]に、「実施例調合物1および2の成分を調製法1および2(比較例)に従って混合した。調製法1および2の詳細は以下に詳述される。実施例調合物1および2はまた、どんな脱水剤の添加もなしに調製された(比較例II)。この方法は調製法3と名付けられる。」と記載されているから、実施例調合物1又は2を「調製法1」に従って混合して得られる塗料組成物が本願発明の実施例に相当する具体例であると解される。ここで、[0119]表3には、下記のような「方法1」と「代わりの方法(1A)」が記載されており、[0120]には、「前記の方法1と方法1Aは両方とも本発明に従う方法である。方法1においては、金属酸化物の添加前にロジンと乾燥剤を混合する。方法1Aにおいては、ロジンの添加前に、金属酸化物と乾燥剤を混合する。」と記載されているが、


請求人が、平成29年5月8日に提出した意見書の「(3-3)について」において、「例えば、『塗料1』は、本発明の方法に従って、まずロジン溶液と乾燥剤を接触させた後酸化第一銅を加えて調製され(調製法1)、これに対して、『塗料1(比較例)』は、ロジン、酸化第一銅、乾燥剤を同時に接触させて調製され(調製法2(比較例))、『塗料1(比較例II)』は乾燥剤を添加せずに調製された(調製法3(比較例II))。」と釈明していることを参酌すると、表3左欄に記載された「方法1」に従って実施例調合物1又は2の成分を混合して得られる塗料組成物([0126]表5に記載された「塗料1」及び「塗料2」)が本願発明の実施例に相当する具体例であると解される。


そして、各実施例及び比較例の塗料組成物に含まれる金属樹脂酸塩の含有量については、[0127]?[0128]及び図1、2において、赤外線分光分析の結果、実施例の塗料1及び塗料2は樹脂酸銅からの塩の帯を表す1600cm^(-1)におけるピークが非常に弱い、又はまったくピークを示さなかったこと、及び比較例のスペクトルはずっと強いピークを示し、金属樹脂酸塩のより大きい存在を示すことが記載されており、


[0130]表6には、塗料の安定度、研磨率及び汚染率の実験データが開示されており、実施例の塗料組成物(塗料1、塗料2)は、いずれも対応する比較例の塗料組成物(塗料1(比較例)、塗料1(比較例II)、塗料2(比較例)、塗料2(比較例II))よりも安定度が高く、研磨率が高く、汚染率が低かったことが読み取れる。


そうすると、[0107]表1及び[0108]表2に記載された特定の成分からなる実施例調合物1及び2の配合成分を、[0119]表3の「方法1」に従って混合することにより得られる塗料組成物については、上記本願発明の課題を解決し得るものと理解することができる。
しかし、実施例調合物1及び2は、有機系の主成分として商品名で特定される完全に水素化されたロジン(18.46部又は18.56部)、併用される結合剤としてさらにBMA/MMAコポリマー又はVeova9(登録商標)ホモポリマー溶液(2.00部又は2.68部)を含有し、金属酸化物化合物に当たる成分として多量の酸化第一銅(45.53部又は45.78部)及び酸化鉄含量(7.23部又は7.27部)を含有し、脱水剤としてゼオライト(2.89部又は2.90部)を含有し、その他の固形分としてポリアミドワックスのチクソトロープ剤(0.90部又は0.91部)、殺生剤(8.81部又は8.86部)を含有するという、特定の狭い範囲の成分組成からなるものであるから、上記塗料1及び2について確認された効果は、限られた範囲の配合成分の組合せで確認された効果にすぎない。
なお、[0154]?[0163]及び図3には、脱水剤を添加しない方法3に従って調製された実施例調合物10及び11からの塗料、及び方法1に従って調製された実施例調合物12からの塗料が別の具体例として記載されており、赤外線スペクトルにより、実施例12においては樹脂酸亜鉛がほとんどまたはまったく形成されず、ロジンが未反応で残留することが確認されているが、実施例調合物12の配合成分も、有機系の主成分として天然のガムロジン(25部)が用いられ、金属酸化物化合物に当たる成分として多量の酸化亜鉛(45部)を含有し、脱水剤として実施例調合物1及び2と同じゼオライト(5部)を含有し、その他の固形分として沈殿防止剤(1部)を含有するという、特定の狭い範囲の成分組成からなる塗料組成物であり、また、当該塗料の安定度、研磨率及び汚染率の実験データは開示されていない。

(ウ)成分i)?iv)についての一般的な説明について
本願明細書における、本願発明1に含まれる成分i)?iv)についての一般的な説明について検討する。
「i)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸」については、[0023]?[0027]に記載されているが、具体的に説明されている物質はロジンと、その主成分であるアビエチン酸と、それらの水素化誘導体だけであり、その配合割合については、[0027]に、「カルボン酸は好適には、約5?50重量%の間、より好適には、約5?40重量%の間、更に好適には、約10?30重量%の間、そして更により好適には、約12?25重量%の間で塗料組成物に含まれる。」と記載されている。
また、「iv)結合剤」については、[0035]に、「結合剤は好適には、あらゆる塗料形成結合剤である。結合剤はオリゴマーまたはポリマーの結合剤を含んでなることができる。」と記載され、[0036]?[0053]においてポリアクリレート材料等のオリゴマー又はポリマー材料が記載され、[0054]には、「ロジンが結合剤として働くことができる。従って、ロジンとしてカルボン酸i)が選択される場合、ロジンはまた1種以上の結合剤(iv)であることができる。」と記載されている。また、その配合割合については、[0056]に、「結合剤は好適には、約0.1?20重量%の間、より好適には約0.5?10重量%の間、より好適には1?5重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる。」と記載されている。さらに、[0063]には、「本発明者はまた、高い割合のバーサチック酸(versatic acid)のビニルエステルのモノマー単位で形成されるオリゴマーまたはポリマーの使用が、防汚自己研磨塗料組成物中で特に有利な結合剤であることを見いだした。」と記載され、[0064]?[0088]には、当該バーサチック酸のビニルエステルのモノマー単位を含むポリマーについて記載され、[0083]には、「前記の結合剤は好適には、唯一の結合剤含有物として、または前記のその他の結合剤と組み合わせて、第一の態様の塗料組成物中に含まれることができる。」と記載されている。
以上の記載、及び、上記4.(2)(2-1)(ア)「本願発明の課題について」に記載したとおり、本願発明の課題がロジンを含む自己研磨性、防汚性塗料に関する従来技術の欠点を改善することにあるとされていることを参酌すると、上記4.(2)(2-1)(イ)「本願発明の実施例及び効果について」において検討した本願発明1の実施例である「塗料1」及び「塗料2」は、有機系の主たる成分がロジン、アビエチン酸又はそれらの水素添加物である場合の代表的な具体例であると解することができる。
さらに、「ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物」については、[0028]?[0029]に、「金属酸化物化合物は好適には、酸化銅(I)、酸化銅(II)、酸化亜鉛、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、CaO、MgO、TiO_(2)、MnO_(2)の一つ以上から選択される。特に好適な金属酸化物化合物は酸化銅(I)、酸化亜鉛および酸化鉄(III)の一つ以上のから選択される。」と記載され、その配合割合については、[0030]?[0031]に、「少なくとも1種の金属酸化物化合物は好適には、約90重量%まで、より好適には約80重量%まで、そして最も好適には約70重量%までの量で塗料組成物中に含まれる。少なくとも1種の金属酸化物化合物は好適には、少なくとも約10重量%、より好適には少なくとも約20重量%、そして更により好適には約30重量%の量で塗料組成物中に含まれる。」と記載されている。
以上の記載、及び、本願発明の従来技術に関連して[0008]に、「金属酸化物がロジンのようなカルボン酸と反応して金属カルボン酸塩(ロジンの場合は、金属樹脂酸塩としても知られる金属ロジン酸塩)を形成することが当該技術分野で知られている。ロジンのようなカルボン酸を含む、当該技術分野における多数の自己研磨性防汚性塗料はまた、充填剤、顔料等のような金属酸化物を含む。従って、カルボン酸は混合されると、これらの成分と反応して金属カルボン酸塩を形成する。」と記載されていることを参酌すると、上記4.(2)(2-1)(イ)「本願発明の実施例及び効果について」において検討した本願発明1の実施例である「塗料1」及び「塗料2」は、有機系の主たる成分がロジン、アビエチン酸又はそれらの水素添加物である成分i)であり、成分ii)として、従来技術の自己研磨性、防汚性塗料に配合されていたような、ロジン等の成分i)と反応し得る金属酸化物化合物を、防汚性の発揮等の観点から、90重量%までの比較的高い割合で含有する場合の代表的な具体例であると解することができる。
加えて、「iii)脱水剤」については、[0033]に、「脱水剤は好適には、組成物から水を除去することができるあらゆる物質である。脱水剤は好適には、無機化合物である。」と記載され、その配合割合については、[0034]に、「脱水剤は好適には、約0.1?10重量%の間の量で、より好適には約0.5?8重量%の間の量で、そして更により好適には、約1?5重量%の間の量で塗料組成物中に含まれる。」と記載されている。
当該記載からみて、上記4.(2)(2-1)(イ)「本願発明の実施例及び効果について」において検討した本願発明1の実施例である「塗料1」及び「塗料2」は、iii)脱水剤として無機化合物を用いた場合の代表的な具体例であると解することができる。
そこで、以上の各成分についての一般的な説明と、実施例の記載とを合わせると、本願明細書においては、本願発明1のうち、有機系の主たる成分としてロジン、アビエチン酸又はそれらの水素添加物である成分i)を用い、併用される比較的少量の結合剤としてポリアクリレート又はバーサチック酸のビニルエステルのモノマー単位を含むポリマーからなる成分iv)を用い、成分ii)として、ロジン等の成分i)と反応し得る金属酸化物化合物を、防汚性の発揮等の観点から90重量%までの比較的高い割合で用い、脱水剤として無機系の脱水剤を用いた防汚性、自己研磨性塗料組成物については、上記「塗料1」及び「塗料2」の実験データにより、本願発明の課題を解決できることが裏付けられているものといえる。

(エ)本願発明1の発明特定事項について
これに対して、本願発明1においては、塗料組成物がi)ロジンまたはその水素化誘導体の1種以上を含んでなるカルボン酸、ii)少なくとも1種の金属酸化物化合物、iii)脱水剤及びiv)1種以上の結合剤、を含むことが特定されているが、構成成分i)?iv)はいずれも性質の異なる様々な化合物を包含するものであり、また、本願発明1においては、「塗料組成物には0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれ」ることは特定されているが、i)?iv)のいずれの成分も配合割合は不特定であるから、本願発明1の塗料組成物は、多岐にわたる性質を備えた様々な塗料組成物を包含するものである。さらに、本願発明1においては塗料の適用対象、用途も特段特定されていないから、この点から見ても、本願発明1の塗料組成物は、多岐にわたる性質を備えた様々な塗料組成物を包含するものと解される。
また、本願発明1において、「塗料組成物の製造において、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、成分i)またはii)の他方と接触される」こと、及び「前記成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および前記成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水を除去する」ことが特定されている点について検討すると、本願明細書の実験データからみて、実施例調合物1及び2という特定の配合成分の組合せにおいては、上記の順番で成分iii)脱水剤と成分i)及びii)とを接触させること、及びi)又はii)の添加の前に、i)又はii)の他方の混合物からあらゆる水が除去されることが、「塗料組成物には0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれ」るという要件と結び付けられ、自己研磨性、防汚性塗料としての一定の効果が得られることが認められる。また、上記4.(2)(2-1)(ウ)「成分i)?iv)についての一般的な説明について」における検討を踏まえると、本願発明1のうち、有機系の主たる成分としてロジン、アビエチン酸又はそれらの水素添加物である成分i)を用い、併用される比較的少量の結合剤としてポリアクリレート又はバーサチック酸のビニルエステルのモノマー単位を含むポリマーからなる成分iv)を用い、成分ii)として、ロジン等の成分i)と反応し得る金属酸化物化合物を、防汚性の発揮等の観点から90重量%までの比較的高い割合で用い、脱水剤として無機系の脱水剤を用いた防汚性、自己研磨性塗料組成物については、実施例調合物1及び2と同様の効果が得られるものと解される。しかし、上記のとおり、本願発明1においては成分i)?iv)の性質は多岐にわたり、その他の任意成分も共存することができ、配合成分の割合がいずれも特定されておらず、用途も特段に特定されていないのであるから、そのような広範な配合成分と、上記製造工程及び金属樹脂酸塩の含有量が0.5重量%未満であることとが組み合わされた本願発明1の範囲においてまで、実施例調合物1及び2において得られたような自己研磨性、防汚性に関する好ましい効果が得られるものとは考え難い。
さらに、出願時の技術常識に照らしても、本願発明1に包含される広範な成分i)?iv)の組合せと、「0.5重量%未満の金属樹脂酸塩が含まれる」点によって特徴付けられるすべての塗料組成物が、硬度、自己研磨率、自己研磨率の正確な制御等の点で好ましい性質を兼ね備えた塗膜を形成し、上記本願発明の課題を解決し得るものとはいえない。
そうすると、本願の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を参酌しても、本願発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本願発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(オ)請求人の主張について
請求人は、平成29年5月8日に提出した意見書の「(3-1)について」において、本願明細書の[0017]を引用した上で、「上記記載から、成分i)またはii)のいずれかの添加の前に、脱水剤が、脱水剤および成分i)またはii)の他方の混合物全体にわたり十分に均等に分散されてそこから実質的にあらゆる水が除去するという作用が、金属樹脂酸塩を極く少量含むかもしくは含まない塗料組成物を与えること、斯かる塗料組成物が優れた自己研磨率と優れた侵食率を示すことは明らかである。つまり、請求項1の特定の順序での脱水剤の添加によって水が除去される結果、低レベルの金属樹脂酸塩を含み、優れた効果を示す塗料組成物が生成し、本発明の課題が解決されることは明らかである。」と主張する。
しかし、上記のとおり、本願発明1においては成分i)?iv)の性質は多岐にわたり、その他の任意成分も共存することができ、配合成分の割合がいずれも特定されておらず、用途も特段に特定されていないのであるから、そのような広範な配合成分と、上記製造工程及び金属樹脂酸塩の含有量が0.5重量%未満であることとが組み合わされたとしても、自己研磨性、防汚性に関する好ましい効果を備え、本願発明の課題を解決し得る塗料組成物が得られるものとはいえない。
また、請求人は、上記意見書の「(3-2)について」において、本願明細書の[0062]を引用した上で、「本発明では、インサイチューで起こる制御不能な副反応が回避されるという利点を更に有するので、金属樹脂酸塩の含有量が制御可能である。換言すれば、本発明の特定の順序の成分の添加の結果、金属樹脂塩の含量が極めて少量もしくは金属樹脂塩を含まない塗料組成物が得られるので、その後金属樹脂酸を添加して0.5重量%未満の所望の含量、即ち制御された含量を達成することができる。即ち、本発明の金属樹脂酸塩の含量の制御は、成分の特定の順序の添加によって達成されるものである。」と主張する。
しかし、上記のとおり、本願発明1においては成分i)?iv)の性質は多岐にわたり、その他の任意成分も共存することができ、配合成分の割合がいずれも特定されておらず、用途も特段に特定されていないのであるから、仮に請求人のいうように金属樹脂酸塩の含有量を0.5重量%未満に制御可能であるとしても、そのことによって直ちに本願発明1が、上記発明の課題を解決し得る塗料組成物になるものとはいえない。
さらに、請求人は、上記意見書の「(3-3)について」において、「本発明における成分の特定の順序の添加により系から水が除去された結果、低含量の金属樹脂酸塩を含む塗料組成物が得られたことは、実施例に記載されており、また、実施例には本発明の塗料組成物とその製造方法が明確に記載されている。」、「更に、実施例の塗料組成物が本発明の課題を解決できることは明らかであると考える。」、「依って、[図1]、[図2]から、本発明の方法によって得られた塗料組成物が極く少量の金属樹脂酸塩を含むか全く含まないことは明らかであると考える。それは[図3]からも明らかである。これに対して、成分i)、ii)、iii)を同時に接触させて調製された塗料組成物はかなりの量の金属樹脂酸塩を含む。更に、本発明の方法によって得られた塗料組成物は、缶の安定度、研磨率、汚染率において優れている(明細書段落[0130])。以上より、特許請求の範囲に記載された塗料組成物およびその製造方法は、本発明の課題の解決に寄与することは明らかであるから、本発明は・・・特許法第36条第6項第1号の要件を満たすものと考える。」と主張する。
しかし、上記のとおり、本願発明1においては成分i)?iv)の性質は多岐にわたり、その他の任意成分も共存することができ、配合成分の割合がいずれも特定されておらず、用途も特段に特定されていないのであるから、実施例の結果をもって、直ちに本願発明1の拡張された範囲においても、自己研磨性、防汚性に関する好ましい効果を備え、本願発明の課題を解決し得るものと解することはできない。
よって、請求人の主張はいずれも採用することができない。

(カ)小括
したがって、本願発明1は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

(2-2)本願発明11について
本願発明11においては、本願発明1におけるi)及びii)と同じ成分を含むこと、本願発明1と同様に、塗料組成物が0.5重量%未満の金属樹脂酸塩を含むこと、及び脱水剤が、本願発明1と同様の手順で成分i)、ii)と接触されることが特定されているが、上記4.(2)(2-1)「本願発明1について」における検討を踏まえると、同じ理由により、本願発明11の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、本願発明11は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2-3)本願発明2?10、12について
本願発明2?10及び12は、本願発明1を直接又は間接的に引用して記載されていることから、上記4.(2)(2-1)「本願発明1について」における検討を踏まえると、同じ理由により、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2-4)本願発明13について
本願発明13は、本願発明1と同様の発明特定事項を含む塗料組成物を形成する方法の発明であるが、上記4.(2)(2-1)「本願発明1について」における検討を踏まえると、同じ理由により、いずれも特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

5.むすび
以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号及び同第1号に規定する要件を満たしておらず、特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-19 
結審通知日 2017-06-21 
審決日 2017-07-05 
出願番号 特願2013-505475(P2013-505475)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 達也  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 天野 宏樹
原 賢一
発明の名称 塗料組成物  
代理人 特許業務法人小田島特許事務所  

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