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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K
管理番号 1334730
審判番号 不服2016-13094  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-31 
確定日 2017-12-04 
事件の表示 特願2014-555492「デジタイザ用磁場遮蔽シートおよびその製造方法、並びにこれを利用した携帯端末機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 8月 8日国際公開、WO2013/115616、平成27年 4月 9日国内公表、特表2015-510695、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2013年2月4日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年2月3日 韓国(KR) 2012年4月17日 韓国(KR))を国際出願日とする出願であって、手続きの概要は以下のとおりである。

手続補正 :平成26年 9月16日
拒絶理由通知 :平成27年 8月14日(起案日)
意見書 :平成27年12月22日
手続補正 :平成27年12月22日
拒絶査定 :平成28年 6月10日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成28年 8月31日
理由補充 :平成28年11月 4日
拒絶理由通知(当審) :平成29年 5月26日(起案日)
意見書 :平成29年 7月 7日
手続補正 :平成29年 7月 7日

第2 本願発明

本願の請求項1ないし15に係る発明は、平成29年7月7日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
ナノ結晶粒合金からなり、複数の微細片に分離された少なくとも1層の薄板状の磁性シート、
前記薄板状の磁性シートの一側面に、第1接着層を通して接着される保護フィルム、及び前記薄板状の磁性シートの他側面に、一側面に具備された第2接着層を通して接着される両面テープを含み、
前記複数の微細片が絶縁されるように前記複数の微細片の間の隙間は前記第1接着層の一部と前記第2接着層の一部が充填され、
前記薄板状の磁性シートは16.5μH?19.5μHの範囲のインダクタンス値を持つことを特徴とするデジタイザ用磁場遮蔽シート。」

第3 原査定の理由について

1.原査定の理由の概要

本願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



請求項1ないし20に対して引用文献1ないし3
引用文献1:特開2009-3796号公報
引用文献2:特開2008-112830号公報
引用文献3:特開平6-140783号公報

2.原査定の理由についての判断

(1)引用文献

原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(平成21年1月8日公開)には、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与した。)

ア.「【請求項1】
位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
からなることを特徴とする位置検出装置。」

イ.「【0001】
本発明は、例えばペン型の位置指示器を使用して入力操作を行う位置検出装置およびこれを用いた表示装置に関し、特に電磁的な作用により位置検出を行うものに関する。」

ウ.「【0039】
次に、本実施の形態に用いる磁路板30についてより詳細に説明する。図2(a)は本実施の形態における磁路板30の構造例を示した部分斜視図であり、図2(b)はその断面図である。磁路板30は、アモルファス層31とアモルファス層31よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層32とで構成される。この非アモルファス層32となる金属として例えばアルミニウムを使用することができる。
アモルファス層31は、帯状のアモルファス金属31aを長手軸に平行に複数並べて面状に形成する。
【0040】
アモルファス金属31aは非常に薄い(約20μm)ので電気的なシールド効果は期待できない。よって電気的なシールド効果を有し、アモルファス層31よりも比透磁率の低い金属としてアルミニウムを用いて磁路板30を構成している。また、アルミニウムは軽量の金属であるため、従来の珪素鋼板に比べて位置検出装置の軽量化に貢献できる。さらに、アルミニウムを使用することによってコストの低減を図ることもできる。なお、非アモルファス層32に使用する材料は、アルミニウムに限定されるものではなく、電気的なシールドを行うことができ、アモルファス金属31aより比透磁率が低い金属であればよい。」

エ.「【0041】
図3(a)、(b)は、上述した磁路板30が磁束の通り道を形成する状態を示した断面図である。図3(a)は、センサコイル21の電流によって発生した磁束33が磁路板30のアモルファス層31内を通っている状態を示している。図示したように、磁束33は磁路板30のアモルファス金属31a内に入ると磁路板31aに沿って進み表面から出る。つまりアモルファス層31は磁束の通り道である磁路を形成している。図の点線は磁路板31aがない場合の磁力線33bを示している。アモルファス層31がある場合(実線)とない場合(点線)を比較すると、アモルファス層31がある場合は、磁力線33がアモルファス層31内を通過して表面に出ており、アモルファス層31が磁路を形成していることがわかる。
【0042】
同様に図3(b)には、磁路板30から見てセンサコイル21と反対側から入ってくる磁束34の様子を示した。これはいわゆる磁気的なノイズである。図示したようにノイズとなる磁束34は非アモルファス層32側からアモルファス層31内に入り、再び非アモルファス層32側から出る。よってノイズとなる磁束34はアモルファス層31による磁路のためにセンサコイル21に到達しない。
このようにアモルファス層31は磁束33、34の通り道を形成するので、磁束がアモルファス層31を貫通せず、外部の磁気的なノイズがセンサコイル21の磁界に影響を及ぼすことはない。」

オ.「【0045】
図4において「アモルファス+アルミ箔」と「珪素鋼板」を比較すると、アモルファス+アルミ箔を用いた場合信号レベルは珪素鋼板の約2倍となっており、明らかに信号レベルが上がっていることがわかる。アルミ箔はアルミニウムを薄くした状態であるのでアルミニウム層と同じである。このグラフから「アモルファス+アルミ箔」は珪素鋼板より信号レベルを大きく取り出せることがわかる。」

上記摘示事項及び図面の記載から以下のことがいえる。

a.引用文献1には、「ペン型の位置指示器を使用して入力操作を行う位置検出装置」であって、「電磁的な作用により位置検出を行うもの」が記載されている(摘示事項イ.)。

b.位置検出装置は、位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成され、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、からなる(摘示事項ア.)。

「位置検出装置」に用いられる「磁路板」に着目して、以上を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。

「位置指示器から出力された電磁波を受信するセンサコイルを配置したセンサ基板と、
前記センサ基板上の前記センサコイルが配置されている領域以上の面積を有し、前記センサ基板の前記位置指示器と対向する面と反対側の面に配置される磁路板と、
からなり、ペン型の位置指示器を使用して入力操作を行い、電磁的な作用により位置検出を行う位置検出装置に用いられる磁路板であって、
アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成される磁路板。」

(2)対比

そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

ア.デジタイザ用磁場遮蔽シート
引用発明の「位置検出装置」は、「ペン型の位置指示器を使用して入力操作を行い、電磁的な作用により位置検出を行う」から、「デジタイザ」といえる。また、引用発明の「磁路板」は、これを形成する「アモルファス層」が非常に薄いアモルファス金属であり(摘示事項ウ.)、「非アモルファス層」が例えばアルミニウムを薄くしたアルミ箔である(摘示事項オ.)から、「シート」といえる。そして、アモルファス層は磁束の通り道を形成するので、磁束がアモルファス層を貫通せず、外部の磁気的なノイズがセンサコイルの磁界に影響を及ぼすことはないから、「磁路板」は、「磁場遮蔽」の機能を有する。
したがって、本願発明と引用発明とは、「デジタイザ用磁場遮蔽シート」である点で一致する。

イ.デジタイザ用磁場遮蔽シートの構造
本願発明は、「ナノ結晶粒合金からなり、複数の微細片に分離された少なくとも1層の薄板状の磁性シート、前記薄板状の磁性シートの一側面に、第1接着層を通して接着される保護フィルム、及び前記薄板状の磁性シートの他側面に、一側面に具備された第2接着層を通して接着される両面テープを含み、前記複数の微細片が絶縁されるように前記複数の微細片の間の隙間は前記第1接着層の一部と前記第2接着層の一部が充填され」るのに対し、引用発明は、「アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成される」点で相違する。

ウ.薄板状の磁性シートのインダクタンス値
本願発明は、「前記薄板状の磁性シートは16.5μH?19.5μHの範囲のインダクタンス値を持つ」のに対し、引用発明は、アモルファス層のインダクタンス値について特定がない点で相違する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>

「デジタイザ用磁場遮蔽シート。」の点。

そして、次の点で相違する。

<相違点>

ア.本願発明は、「ナノ結晶粒合金からなり、複数の微細片に分離された少なくとも1層の薄板状の磁性シート、前記薄板状の磁性シートの一側面に、第1接着層を通して接着される保護フィルム、及び前記薄板状の磁性シートの他側面に、一側面に具備された第2接着層を通して接着される両面テープを含み、前記複数の微細片が絶縁されるように前記複数の微細片の間の隙間は前記第1接着層の一部と前記第2接着層の一部が充填され」るのに対し、引用発明は、「アモルファス層と該アモルファス層よりも比透磁率の低い金属からなる非アモルファス層とを積層して形成される」点。

イ.本願発明は、「前記薄板状の磁性シートは16.5μH?19.5μHの範囲のインダクタンス値を持つ」のに対し、引用発明は、アモルファス層のインダクタンス値について特定がない点。

(3)判断

そこで、上記相違点ア.について検討する。

引用文献2には、「インダクタや磁気シールド等に用いられる磁性シートの製造方法」(【0001】)について、「シート基材上に接着層を介して薄板状磁性体を接着して磁性シートを形成する工程と、前記薄板状磁性体を前記シート基材に接着された状態を維持しつつ、外力により複数に分割する工程とを具備する」(【0008】)ことが記載されている。そして、「薄板状磁性体3の分割工程における磁性体片5の飛び散りを防止するために、薄板状磁性体3上には接着剤付き保護フィルム等をカバー層として貼り付けることができる」(【0028】)ことも記載されている。
しかしながら、引用文献2に記載された「磁性シートの製造方法」は、「分割した磁性体間における隙間の発生を抑制」することを目的とし(【0007】)、本願発明の「前記複数の微細片が絶縁されるように前記複数の微細片の間の隙間は前記第1接着層の一部と前記第2接着層の一部が充填され」る構成とは相容れないから、引用文献2の記載事項を参酌しても、該構成を当業者が容易に想到し得るとはいえない。

引用文献3は、「3層のアモルファス層は、それぞれのアモルファスリボン2の接合境界線が上下で一致しないようにされて、磁気の漏れがないようにしている」(【0012】)こと及び「硅素鋼板」を用いることが記載されているに過ぎず、相違点ア.についての判断を左右するものではない。

したがって、上記相違点イ.について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項2ないし8に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項9に係る発明は、本願発明を方法の発明として表現したものであるので、本願発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項10、11に係る発明は、請求項9に係る発明をさらに限定したものであるので、請求項9に係る発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項12に係る発明は、本願発明の「磁場遮蔽シート」を備えた「デジタイザ機能を有する携帯端末機器」であるので、本願発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

請求項13ないし15に係る発明は、請求項12に係る発明をさらに限定したものであるので、請求項12に係る発明と同様に、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 平成29年5月26日付けで通知した当審拒絶理由について

1.平成29年5月26日付けで通知した当審拒絶理由の概要

本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



(1)発明の詳細な説明には、「薄板状の磁性シートの一側面に、第1接着層を通して接着される保護フィルム」(以下「構成1」という。)が任意の構成である旨の記載はない。
また、構成1がなければ、多数の微細片を十分に絶縁させることができない。
したがって、構成1を有する旨の限定がない請求項1、2、4ないし9、13ないし16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

(2)発明の詳細な説明には、「多数の微細片の隙間は、第2接着層の一部のみではなく、第1接着層の一部も充填されて多数の微細片を絶縁させること」(以下「構成2」という。)が任意の構成である旨の記載はない。
また、構成2がなければ、多数の微細片を十分に絶縁させることができない。
したがって、構成2を有する旨の限定がない請求項1ないし9、13ないし16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない。

2.平成29年5月26日付けで通知した当審拒絶理由についての判断

平成29年7月7日付け手続補正により、請求項1、12(補正前の13)において、「構成1」を有する旨限定された。
よって、不備(1)は解消した。

同手続補正により、請求項1、12において、さらに、「構成2」を有する旨限定された。
よって、不備(2)は解消した。

そうすると、もはや、平成29年5月26日付けで通知した当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび

上記のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-11-08 
出願番号 特願2014-555492(P2014-555492)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05K)
P 1 8・ 537- WY (H05K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 遠藤 邦喜  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 井上 信一
関谷 隆一
発明の名称 デジタイザ用磁場遮蔽シートおよびその製造方法、並びにこれを利用した携帯端末機器  
代理人 ▲吉▼川 俊雄  
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