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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1334750
審判番号 不服2016-9070  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-17 
確定日 2017-11-14 
事件の表示 特願2014-194537「簡易に水耕栽培を行う方法」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 4月28日出願公開、特開2016- 63776〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年9月25日の出願であって、平成27年11月26日付けで拒絶理由が通知され、これに対して、平成28年1月17日に意見書及び手続補正書が提出され、同年2月24日付けで拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年3月22日に請求人に発送された。これに対して、同年6月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正書が提出され、同年6月24日付けの手続補正指令書(方式)(謄本発送日同年7月19日)が通知され、これに対して、同年7月29日に手続補正書(方式)が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明は、平成28年7月29日付け手続補正書(方式)により補正された同年6月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。なお、上記補正は請求項1?3に係る発明を補正するものであり、請求項5に係る発明は補正されていない。

「【請求項5】
マイクロファイバー製の合成繊維を担体とし、根を担体に接触させて植物を栽培する方法」

第3 引用刊行物に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物は、次のとおりである。
実願昭46-83007号(実開昭48-40332号)のマイクロフィルム(原査定の引用文献1。以下「引用例1」という。)
特開平4-218319号公報(原査定の引用文献3。以下「引用例2」という。)
特開2013-256736号公報(原査定の引用文献4。以下「引用例3」という。)
特開2013-27491号公報(原査定の引用文献5。以下「引用例4」という。)
特開2014-46469号公報(原査定の引用文献6。以下「引用例5」という。)

1 引用例1
(1)引用例1に記載の事項
引用例1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は審決にて付与。以下同様。)。

ア 「2 実用新案登録請求の範囲
培養液2を収納する溜り部3を有し、この溜り部3における液面2′より上方位置に、垂直横断面形状が袋状をなす親水性で、且つ育成作物の根を通さない目の細かい布状体6を設け、この袋状布状体6の口部を育成作物の茎部が通過すべく形成すると共に、袋状布状体6から下方に親水性物体8を連設させて、その下端部を前記溜り部3内の培養液2の液面2′下に位置させ、もって、前記溜り部3内の培養液2が前記袋状布状体6に吸送されるべく構成してある布床栽培装置。」(明細書1頁4行?15行)

イ 「本考案は布床を用いて植物を育成すべく構成した布床栽培装置の改良に関するものである。」(明細書1頁下から4行?3行)

ウ 「本考案は、このような従来欠点を除去せんがために・・・特別な供給装置を用いずとも、培養液を確実に育成作物に供給することができ・・・良好に育成し得るものを提供せんとするものである。」(明細書2頁12行?17行)

エ 「6は垂直横断面形状が袋状をなす袋状布状体で、育成作物の根が通らない程度に目の細かい布で、且つ、液体を吸収しやすい親水性の布で形成されている。そして、この袋状布状体6の・・・、その底部は培養液2の液面2’より上方に位置されている。8は袋状布状体6の底部から連接された親水性物体で、その下端部は培養液2の液面2’下に位置されている。尚、実施例においては、前記親水性物体8を袋状布状体6と一体的に形成したものを示した・・・あっても良い。」(明細書3頁5行?末行)

オ 「培養液2は親水性物体8を介して毛細管現象により上方へ吸送されて袋状布状体6にまで至ると共に、そのまま毛細管現象によって袋状布状体6を介して吸送され、袋状布状体6内に位置する育成作物に供給されるのである。」(明細書4頁8行?13行)

カ 上記ア?オにおいて摘記された事項及び第1図から、袋状布状体は育成作物の根に接触していることが看て取れる。

(2)引用例1に記載の発明の認定
上記(1)に記載された事項からみて、引用例1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「育成作物の根を通さない目の細かい袋状布状体を設け、袋状布状体の口部を育成作物の茎部が通過すべく形成し、袋状布状体は育成作物の根に接触しており、袋状布状体から下方に親水性物体を連設させて、その下端部を溜り部内の培養液の液面下に位置させ、もって、前記溜り部内の培養液が、毛細管現象によって前記袋状布状体に吸送され、さらに袋状布状体内に位置する育成作物に供給される、
植物の栽培方法」

2 引用例2
(1)引用例2に記載の事項
引用例2には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の目的】この発明は、花や観葉植物等、主として園芸植物をより健全に生育するための栽培器具に関するものであり、特に、それら植物の根に対する水や養分供給と酸素補給とのバランスを良くするために改良された新規な構造からなる栽培器具を提供しようとするものである。」

イ 「【0012】吸水材5は、液槽7に貯溜された水もしくは培養液Lを、毛細管現象その他(例えばサイフォン等の原理)によって効果的に上昇させ得る、例えばスポンジ、超極細繊維織布、細粒砂、結束パイプ材等各種素材のものの採用が可能である。それら吸水材5は、吸水調整管6に対して一体成形されたものとしたり、あるいは別体で、後から装填、組み合わせるようにして形成される。
【0013】吸水調整管6は、上記した吸水材5を管芯として形成するものであるが、それ自体は非透水素材、例えばプラスチックス、ステンレス鋼、あるいはプラスチックス積層材等であって、吸収されて上昇していく水または培養液Lが、中途で外部、即ち根張り材収容凹部2内へ漏出させてしまわない構造を有し、適宜断面(内装容器1に形成される装着部13に略合致させた断面)の管体で、その両端は開放されて上下各開口部61,62を形成する。」

ウ 「【0019】なお、図には示されていないが、植物は、吸水調整管6の上端開口部61にその根元が乗るような状態とした上、その根を周囲に略均等に拡げながら、適宜根張り材を詰めていき、根張り材で根は勿論のこと、植物の根元全体が埋まってしまい、当然吸水調整管6の上端開口部61および露出状となっている吸水材5も、この根張り材の中の最適な高さ位置に配されるようにする。」

(2)引用例2に記載の技術事項の認定
上記(1)に記載された事項からみて、引用例2には、次の技術事項(以下「引2技術事項」という。)が記載されていると認められる。

「花や観葉植物等、主として園芸植物をより健全に生育するための栽培に関するものであり、植物は、吸水調整管の上端開口部にその根元が乗るような状態とし、吸水調整管は、吸水材を管芯として形成するものであり、吸水材は、液槽に貯溜された水もしくは培養液を、毛細管現象その他(例えばサイフォン等の原理)によって効果的に上昇させ得るものであり、超極細繊維織布とすることが可能であること」

3 引用例3
引用例3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、一種類のポリエステルとポリアミド複合繊維マイクロファイバータオル生地の生産方法及びタオル生地を提供することである。最低一面の基布パイル束上端部の摩擦起絨処理を利用して、断裂のパイルを開放式のふわふわしている絨毛に成形させ、手触りがよく、保温性が優れ、お肌に優しく、吸水性が強く、柔軟性がいいなどの強大なメリットがあるタオル生地を得る。」

4 引用例4
引用例4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0025】
・・・合成繊維のマイクロファイバー素材とすることもできる。・・・」

5 引用例5
引用例5には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0024】
・・・化合繊マイクロファイバーからなる絡口不織布等から、・・・」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「植物の栽培方法」は、本願発明の「植物を栽培する方法」に相当する。

2 引用発明の「袋状布状体」は、「育成作物の根に接触しており」、「袋状布状体から下方に親水性物体を連設させて、その下端部を溜り部内の培養液の液面下に位置させ、もって、前記溜り部内の培養液が、毛細管現象によって前記袋状布状体に吸送され」るのであるから、本願発明の「担体」に相当し、「根を担体に接触させ」る点で一致する。また、「袋状布状体」は、布製であり、布とは「麻・葛などの繊維で織った織物」(広辞苑第三版)であるから、本願発明と「繊維を担体とし」ている点で共通する。

3 上記1、2から、本願発明と引用発明とは、 以下の点で一致・相違する。
(一致点)
「繊維を担体とし、根を担体に接触させて植物を栽培する方法」

(相違点)
本願発明は、マイクロファイバー製の合成繊維を担体としているのに対し、引用発明はそのような特定がなされていない点。

第5 判断
1 相違点について
毛細管現象によって養液等を吸い上げる吸水材(本願発明の「担体」に相当する。)を超極細繊維(本願発明の「マイクロファイバー製」に相当する。)とすることは、引用例2に開示されている(上記「第3 2(2)」参照)。さらに、マイクロファイバーは合成繊維で構成されることが一般的であり、例えば引用例3?5に記載されているように、周知技術にすぎず、引2技術事項において、マイクロファイバーを合成繊維で構成することは明示的に特定されていないものの、当然含んでいる、あるいは想定されている事項であるということができる。
そして、引2技術事項は、引用発明と同様、毛細管現象によって養液等を吸い上げる担体を用いた植物の栽培方法に関するものであるから、引2技術事項を、引用発明に適用し、引用発明の「袋状布状体」を本願発明のように「マイクロファイバー製の合成繊維」とすることは当業者が容易に想到しうる程度のことにすぎない。加えていうと、引用例2の【0012】に「吸水材5は・・・各種素材のものの採用が可能である。」と記載されているように、担体をどのような素材のものとするかは、当業者が適宜に決定(選択)し得る程度の事項にすぎない。
なお、仮にマイクロファイバーを合成繊維で構成することが、引2技術事項に含まれている事項であるとはいえないとしても、上記したようにマイクロファイバーを合成繊維で構成することは周知技術にすぎないこと、及び合成繊維は布材料としてきわめて広く用いられているものであることから、引2技術事項を引用発明に適用するに際して、マイクロファイバーの材料として合成繊維を採用することは格別なことではなく、当業者が必要に応じて適宜設定しうる設計事項にすぎない。

2 効果について
上記1において検討したように、引用発明の「袋状布状体」の材料としてマイクロファイバーを用いた場合には、本願発明と同様の効果を奏することとなり、本願発明の作用効果は、引用発明及び引2技術事項、周知技術の作用効果からみて、当業者が予測し得る程度のものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引2技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-07-27 
結審通知日 2017-08-22 
審決日 2017-09-04 
出願番号 特願2014-194537(P2014-194537)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 門 良成川野 汐音木村 隆一  
特許庁審判長 小野 忠悦
特許庁審判官 井上 博之
藤田 都志行
発明の名称 簡易に水耕栽培を行う方法  

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