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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60R |
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管理番号 | 1334780 |
審判番号 | 不服2017-870 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2017-01-20 |
確定日 | 2017-12-12 |
事件の表示 | 特願2012-257286号「電子制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年6月9日出願公開、特開2014-104795号、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年11月26日の出願であって、平成28年5月31日付けで拒絶理由が通知され、同年7月19日に意見書が提出され、同年11月28日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、平成29年1月20日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 本願の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 [刊行物] 1.特開2001-313364号公報(以下、「刊行物1」という。) 2.特開2000-236247号公報(以下、「刊行物2」という。) 第3 本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1及び2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりものである。 「【請求項1】 自動車に搭載された複数の負荷に対応して負荷制御ユニットに設けられた複数の半導体リレーを制御する電子制御装置であって、 前記半導体リレーの周囲の温度を測定する温度測定手段と、 前記温度測定手段によって測定された前記温度が、前記半導体リレーにおける自己保護遮断機能の働くことのない所定の周囲温度範囲内で設定された動作規制温度閾値以上のとき、前記複数の負荷のうち一部の負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段と、を有していることを特徴とする電子制御装置。 【請求項2】 前記一部の負荷が、前記複数の負荷のうち重要度の低い負荷とされていることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。」 第4 刊行物に記載された事項及び発明 1 刊行物1について (1)刊行物1に記載された事項 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物1には、図とともに、以下の事項が記載されている。 なお、下線は当審で付加した。以下同様である。 (1a) 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した過熱保護回路を共通にする技術や複数の過熱保護回路の出力信号をOR出力する技術の場合には、パッケージ内のいずれかのパワーMOSトランジスタが過熱したときに他のパワーMOSトランジスタまでもオフにされてしまうので好ましくない。 【0005】つまり、パワーMOSトランジスタにより電力を通断される負荷(即ち通電制御対象)には、自動車の走行に直接影響する重要なもの(例えば燃料ポンプ、インジェクタ等)から、走行には直接影響しない重要度の低いもの(例えばランプ、吸気VSV等)までさまざまであり、重要度の低い通電制御対象のパワーMOSトランジスタが過熱したことで重要な通電制御対象のパワーMOSトランジスタまでもがオフにされてしまうのは、各種の制御等の観点から好ましくない。 【0006】本発明は、複数のパワーMOSトランジスタを同一パッケージに収容する場合に予想される前記の様な問題を防止することを目的としている。」 (1b) 「【0008】特に本発明では、過熱信号が入力されると、予め設定されているオフ順序に従って複数のパワーMOSトランジスタのいずれかをオフにさせる(ソフト及び/又はハードによる)強制オフ手段を備えている。 従って、本発明によれば、強制オフ手段によってパワーMOSトランジスタを順次オフすることにより、パワーMOSトランジスタの過熱を防止することができる。 【0009】つまり、複数のパワーMOSトランジスタは、それぞれ電源から負荷への電力を通断するが、各パワーMOSトランジスタは、負荷の故障(例えばショート故障)などにより過熱することがある。よって、複数のパワーMOSトランジスタのいずれかが過熱状態にある場合には(温度が例えば過熱判定値以上になると)、過熱信号出力手段は、過熱信号を出力するので、この過熱信号が入力されると、強制オフ手段は、予め設定されているオフ順序に従って複数のパワーMOSトランジスタのいずれかをオフにさせる。これにより、オフしたパワーMOSトランジスタ(従ってそれに接続されている負荷)が過熱の原因であった場合には、過熱状態は解消されることになる。」 (1c) 「【0015】このように、通電制御対象となる負荷の重要度が低い順にパワーMOSトランジスタをオフにして行くので、パッケージ内のいずれかのパワーMOSトランジスタが過熱状態になっても、パッケージに含まれる全部のパワーMOSトランジスタを一気にオフにしないから、重要な負荷(例えば燃料ポンプやインジェクタ等)の動作を継続させることができる。」 (1d) 「【0049】 【発明の実施の形態】次に、本発明のパワーMOSトランジスタの過熱保護装置及び記録媒体の実施の形態の例(実施例)れについて、図面に基づいて説明する。 (実施例1)本実施例は、本発明のパワーMOSトランジスタの過熱保護装置を、自動車のエンジン制御用電子制御ユニット(エンジン制御用ECU)に適用した例である。 【0050】a)図1に示すように、エンジン制御用電子制御ユニット10(以下、単にECU10)は、CPU10a、入力回路10b、出力回路10c等から構成されている。この構成自体は公知であるので詳細の説明は省略するが、入力回路10bには、例えば吸気温センサ12a、回転数センサ12b、O2 センサ12c及びシフトレバーセンサ12dの検出信号、各種のスイッチ信号12eやその他の信号12fが入力される。 【0051】CPU10aは、内蔵のROM(図示は省略)に格納されているプログラムに従い、これらセンサ等からの入力に基づいて、エンジン制御のための処理を実行する。CPU10aの制御出力は、出力回路10cを介して制御対象となる燃料ポンプ14a、インジェクタ14b、ランプ14c、吸気制御VSV14d、シフトインジケータ14e、その他の制御対象14fの動作を制御する。」 (1e) 「【0052】詳しくは、出力回路10cには、図2に例示される構造の駆動IC16が備わっている。この駆動IC16は、1個のパッケージ24に1枚のチップ22を封入した形式である。チップ22には、4つの駆動回路18a?18dとそれらのほぼ中心に配された過熱検出回路20が設けられている。各駆動回路18a?18dには、それぞれ1個のパワーMOSトランジスタ1?4(以下、MOS1?4)が含まれている。 【0053】駆動回路18a?18dの概要は図3に示すとおりであり、パワーMOSトランジスタのドレインには、負荷を介して電源が接続され、ソースはアースされている。また、パワーMOSトランジスタのゲートにはCPU10aの制御信号が入力される。」 (1f) 「【0054】前記負荷は、上述の燃料ポンプ14a、インジェクタ14b、ランプ14c、吸気制御VSV14d、シフトインジケータ14e、その他の制御対象14fのいずれかである。従って、本実施例の場合、MOS1(駆動回路18a)が燃料ポンプ14a、MOS2(駆動回路18b)がランプ14c、MOS3(駆動回路18c)が吸気制御VSV14d、MOS4(駆動回路18d)がシフトインジケータ14eに接続されている。尚、インジェクタ14b及びその他の制御対象14fは、他の駆動ICに接続されている。 【0055】特に本実施例では、後に詳述する様に、各MOS1?4をオフする優先順位は、車両の制御においてその重要度が低いとみなされる方から先にオフするように設定されている。即ち、MOS4>MOS3>MOS2>MOS1の様に、MOSの区別を示す番号の大きいものから先にオフする様に設定されている。」 (1g) 「【0056】また、図2に示すように、各MOS1?4は、過熱検出回路20からほぼ等距離に配されている。前記過熱検出回路20は、例えばサーミスタのように、温度の変化によって電気的な物性値が変化する素子を備えており、その素子の物性値が設定値(本実施例の場合MOS1?4の過熱状態に相当する値)以上になると、過熱信号を出力する(正確には信号レベルを例えばハイからローに変化させる。)。この過熱信号は、駆動IC16の複数の端子26の中の1つ(端子26a)からCPU10aに入力される。 【0057】尚、他の端子26は、それぞれCPU10aからの制御信号の入力用、負荷との接続用またはアース用に割り当てられる。CPU10aからの制御信号の入力用に割り当てられた端子26が入力部に該当し、負荷との接続用に割り当てられた端子26が出力部に該当し、過熱信号用の端子26aが検出信号出力部に該当する。」 (1h) 「【0058】b)次に、CPU10aが過熱からの保護するためにMOS1?4を強制的にオフにする過熱保護処理を、図4のフローチャートに従って説明する。尚、この過熱保護処理は、例えばタイマ割込によって繰り返し実行される。CPU10aは、過熱保護処理を開始すると、まず、S(ステップ)110にて、過熱信号を読み込む。 【0059】続くS120では、過熱検出回路20がMOS1?4の過熱状態を検出したか否かを判断する。ここで、過熱状態になっていない(NO)と判断されるとS130に進み、一方、過熱状態になっている(YES)と判断されるとS140に進む。 【0060】S120では、負荷を特定する番号(負荷数)Nを4にセットし、一旦本処理を終了する。本実施例の場合、負荷の番号Nは、燃料ポンプ14a(すなわちMOS1)が1、ランプ14c(MOS2)が2、吸気制御VSV14d(MOS3)が3、シフトインジケータ14e(MOS4)が4に設定されている。したがって、N=4ならMOS4が選択されたことになる。 【0061】一方、S140では、過熱状態になっているので、セットされている負荷番号Nに対応するMOSをオフにさせて、その負荷への通電を遮断する。続くS150では、負荷番号NをN-1にセットして、一旦本処理を終了する。 【0062】つまり、ECU10の起動時に、過熱検出回路20がMOS1?4の過熱状態を検出していることは、回路の故障等は別として普通はあり得ないから、通常は、ここでセットされている負荷番号N=4であり、対応するMOS4がオフにされて、シフトインジケータ14eへの通電が遮断される。 【0063】従って、MOS4が過熱の原因であったなら、これをオフにしたことで過熱状態は解消される。また、MOS4のオフ後に実行される過熱保護処理において、再度過熱信号が入力されていれば(S120:YES)、CPU10aは、その際にセットされている負荷番号NのMOS、この場合はN=3であるからMOS3をオフにさせ(S140)、負荷番号NをN-1(この場合N=2)にセットする(S150)。 【0064】よって、この後さらに過熱信号が入力された場合には(S120:YES)、MOS2がオフにされ(S140)、負荷番号N=1にセットされる(S150)。そして、なおも過熱信号が入力された場合には(S120:YES)、MOS1がオフにされる(S140)。つまり、駆動IC16に含まれている4個のMOS1?4が全てオフにされる。」 (1i) 「【0065】このように、MOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフされるが、各MOSによって給電される負荷(燃料ポンプ14a、ランプ14c、吸気制御VSV14d、シフトインジケータ14e)の中では、自動車の走行における重要度は、燃料ポンプ14aが最も高く、他の3つはこれよりも低い。 【0066】このように負荷の重要度が低い順にMOS1?4をオフにして行くので、パッケージ24内のいずれかのMOS1?4が過熱状態になっても、パッケージ24に含まれる全部のMOS1?4を一気にオフにしないから、重要な負荷(この例では燃料ポンプ14a)の動作を継続させることができる。 【0067】特に、上記のようにMOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフすることにより、MOS1すなわちこの中では重要度が最も高い燃料ポンプ14aを最後まで残すことができる。なお、この過熱保護処理は、対照のMOSをオフして、そのMOSが過熱状態にあるMOSならば温度が下がって過熱信号が無くなると想定される時間間隔を空けて実行することが好ましい。」 (1J) 「【0070】尚、この実施例では、過熱検出回路20が過熱信号出力手段に該当し、その配置位置がすなわち温度検出位置である。また、CPU10aが強制オフ手段として機能している。」 (2)刊行物1に記載された発明 摘記(1f)及び(1h)から、CPU10aは、MOS4をオフにさせて、シフトインジケータ14eへの通電を遮断し、MOS3をオフにさせて、吸気制御VSV14dへの通電を遮断し、MOS2をオフにさせて、ランプ14cへの通電を遮断し、MOS1をオフにさせて、燃料ポンプ14aへの通電を遮断し、4個のMOS1?4を全てオフにさせるものであると認められること、並びに、摘記(1a)?(1J)及び図1?4から、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 [引用発明] 「CPU10a、入力回路10b、出力回路10c等から構成されている自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10であって、 出力回路10cには、4つの駆動回路18a?18dと過熱検出回路20が設けられ、各駆動回路18a?18dには、それぞれ1個のMOS1?4が含まれ、各MOS1?4は、過熱検出回路20からほぼ等距離に配され、過熱検出回路20は、素子を備え、その素子の物性値がMOS1?4の過熱状態に相当する値以上になると、過熱信号を出力し、 CPU10aは、過熱信号を読み込み、過熱状態になっていると判断されると、MOS4をオフにさせて、シフトインジケータ14eへの通電を遮断し、再度過熱信号が入力されていれば、MOS3をオフにさせて、吸気制御VSV14dへの通電を遮断し、この後さらに過熱信号が入力された場合には、MOS2をオフにさせて、ランプ14cへの通電を遮断し、なおも過熱信号が入力された場合には、MOS1をオフにさせて、燃料ポンプ14aへの通電を遮断し、4個のMOS1?4を全てオフにさせ、MOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフすることにより、MOS1すなわちこの中では重要度が最も高い燃料ポンプ14aを最後まで残すことができるものである、 エンジン制御用電子制御ユニット10。」 2 刊行物2について 原査定の拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物2には、図とともに、以下の事項が記載されている。 (2a) 「【0002】 【従来の技術】従来から自動車等のランプ負荷等にバッテリー電源から電力を供給する際には、電源供給制御装置を通して各負荷に電力を供給していた。このような電源供給装置には、過電流保護のため、加熱遮断機能を有する半導体スイッチング素子が使用されている。 【0003】図8は従来のこの種の電源供給制御装置の構成例を示した回路図である。本従来例の電源供給制御装置は、電源VBの出力電圧をヘッドライトやパワーウィンドウの駆動モーダ等々の負荷10に供給する経路に、シャント抵抗RS及びサーマルFET1のドレイン、ソースを直列接続した構成を有している。 【0004】また、シャント抵抗RSを流れる電流を検出してハードウェア回路によりサーマルFET1の駆動を制御するドライバ2と、このドライバ2でモニタした電流値に基づいてサーマルFET1の駆動信号をオン、オフ制御するA/D変換器3及びマイコン(CPU)4を備えている。 【0005】半導体スイッチング素子としてのサーマルFET1は、図示しない温度センサを内蔵してサーマルFET1が規定以上の温度まで上昇した場合には、内蔵するゲート遮断回路によってサーマルFET1を強制的にオフ制御する過熱遮断機能を備えている。」 (2b) 「【0009】一方、マイコン4は、電流モニタ回路(差動増幅器91、93)を介して電流を常時モニタしており、正常値を上回る異常電流が流れていれば、サーマルFET1の駆動信号をオフすることにより、サーマルFET1をオフ動作させる。 【0010】尚、マイコン4からオフ制御の駆動信号が出力される前に、サーマルFET1の温度が規定値を超えていれば、過熱遮断機能によってサーマルFET1はオフ動作となる。」 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比する。 ア 引用発明の「MOS1?4」は、「出力回路10c」に「設けられ」た「各駆動回路18a?18dに」「それぞれ1個」「含まれ」、それらを「オフにさせて」「通電を遮断」するものであるから、引用発明の「MOS1?4」のそれぞれと、本願発明1の実質的に自己保護遮断機能備えている「半導体リレー」(本願発明1の「前記半導体リレーにおける自己保護遮断機能」という記載から、本願発明1の半導体リレーは、実質的に自己保護遮断機能備えているといえる。)とは、「半導体リレー」の限りで共通する。 そして、引用発明では、「各MOS1?4は、過熱検出回路20からほぼ等距離に配され」、「過熱検出回路20は、素子を備え、その素子の物性値がMOS1?4の過熱状態に相当する値以上になると、過熱信号を出力」すること、及び、引用発明の「MOS1?4の過熱状態に相当する値」は、実質的に過熱状態の温度を示しているといえること(摘記(1J)も参照)から、引用発明の「過熱検出回路20」は、MOS1?4の周囲の温度を測定するものであり、本願発明1の「前記半導体リレーの周囲の温度を測定する温度測定手段」に相当する。 イ 引用発明の「シフトインジケータ14e」、「吸気制御VSV14d」、「ランプ14c」及び「燃料ポンプ14a」は、それぞれが本願発明1の「負荷」に相当するといえるから、本願発明1の「複数の負荷」に相当する。 引用発明の「過熱検出回路20は」、「素子を備え、その素子の物性値がMOS1?4の過熱状態に相当する値以上になると、過熱信号を出力し」、引用発明の「CPU10aは」、「過熱信号を読み込み、過熱状態になっていると判断されると」、「MOS4をオフにさせ」るから、引用発明の「MOS1?4の過熱状態に相当する値」は、実質的に過熱状態の温度である(上記ア)と共に、判断のための閾値でもあるといえる。 したがって、引用発明の「素子を備え、その素子の物性値がMOS1?4の過熱状態に相当する値以上になると、過熱信号を出力」する「過熱検出回路20」、及び、「過熱信号を読み込み、過熱状態になっていると判断されると、MOS4をオフにさせて、シフトインジケータ14eへの通電を遮断し、再度過熱信号が入力されていれば、MOS3をオフにさせて、吸気制御VSV14dへの通電を遮断し、この後さらに過熱信号が入力された場合には、MOS2をオフにさせて、ランプ14cへの通電を遮断し、なおも過熱信号が入力された場合には、MOS1をオフにさせて、燃料ポンプ14aへの通電を遮断し、4個のMOS1?4を全てオフにさせ、MOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフすることにより、MOS1すなわちこの中では重要度が最も高い燃料ポンプ14aを最後まで残すことができるものであ」る「CPU10a」は、「過熱検出回路20」によって測定された「MOS1?4の過熱状態に相当する値」が、閾値以上のとき、「シフトインジケータ14e」、「吸気制御VSV14d」、「ランプ14c」及び「燃料ポンプ14a」に対応して設けられた「MOS1?4」を全てオフにさせる「CPU10a」を特定しているといえるから、上記アをも踏まえると、本願発明1の「前記温度測定手段によって測定された前記温度が、前記半導体リレーにおける自己保護遮断機能の働くことのない所定の周囲温度範囲内で設定された動作規制温度閾値以上のとき、前記複数の負荷のうち一部の負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段」と、「前記温度測定手段によって測定された前記温度が、閾値以上のとき、負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段」の限りで共通しているといえる。 ウ 引用発明の「自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10」は、「CPU10a、入力回路10b、出力回路10c等から構成されている」から、「CPU10a」により、複数の負荷に対応して設けられた複数の半導体リレーを制御するものであり(上記イ)、「出力回路10c」において、複数の半導体リレーが設けられるものであり(上記ア)、当該複数の半導体リレーは、複数の負荷に対応し、「自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10」に設けらているといえる。また、当該「自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10」が、電子制御装置を構成することは明らかである。 したがって、引用発明の「自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10」は、本願発明1の「負荷制御ユニット」に相当すると共に、本願発明1の「電子制御装置」にも相当し、引用発明の「CPU10a、入力回路10b、出力回路10c等から構成されている」「自動車のエンジン制御用電子制御ユニット10」は、「自動車に搭載された複数の負荷に対応して負荷制御ユニットに設けられた複数の半導体リレーを制御する電子制御装置」に相当する。 以上より、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「自動車に搭載された複数の負荷に対応して負荷制御ユニットに設けられた複数の半導体リレーを制御する電子制御装置であって、 前記半導体リレーの周囲の温度を測定する温度測定手段と、 前記温度測定手段によって測定された前記温度が、閾値以上のとき、負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段と、を有している電子制御装置。」 <相違点1> 「閾値」に関して、本願発明1は、「前記半導体リレーにおける自己保護遮断機能の働くことのない所定の周囲温度範囲内で設定された動作規制温度閾値」であるのに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。 <相違点2> 「動作規制手段」に関して、本願発明1は、「前記複数の負荷のうち一部の負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段」であるのに対して、引用発明は、「過熱検出回路20」によって測定された「MOS1?4の過熱状態に相当する値」が、閾値以上のとき、「シフトインジケータ14e」、「吸気制御VSV14d」、「ランプ14c」及び「燃料ポンプ14a」に対応して設けられた「MOS1?4」を全てオフにさせ、MOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフすることにより、MOS1すなわちこの中では重要度が最も高い燃料ポンプ14aを最後まで残すことができるものであ」る「CPU10a」である点。 (2)判断 以下、事案に鑑み、相違点2について検討する。 ア 本願発明1の課題は、「複数の半導体リレーのすべてが自己保護遮断機能により強制的に開制御されてしまうことを抑制できる電子制御装置を提供すること」(明細書の段落【0006】)であり、その課題を解決するために、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の構成、すなわち、「前記複数の負荷のうち一部の負荷に対応して設けられた前記半導体リレーを開制御する動作規制手段」の構成を備えており、その結果、「重要度の低い負荷に対応して設けられた半導体リレーについて負荷への電流を遮断するように開制御し」、「重要度の高い負荷の動作を継続」すること(明細書の段落【0010】)ができるもの、すなわち、半導体リレーを開制御する動作規制手段によって、重要度の高い負荷への電流は遮断されることがないように構成し得るものである。 イ 引用発明は、MOS4、MOS3、MOS2、MOS1の順でオフすることにより、MOS1すなわちこの中では重要度が最も高い燃料ポンプ14aを最後まで残すことができるものではあるが、動作規制手段である「CPU10a」が、「なおも過熱信号が入力された場合には、MOS1をオフにさせて、燃料ポンプ14aへの通電を遮断し」、「シフトインジケータ14e」、「吸気制御VSV14d」、「ランプ14c」及び「燃料ポンプ14a」に対応して設けられた「MOS1?4」を全てオフにさせるから、最終的には、重要度が最も高い負荷である燃料ポンプ14aへの電流も遮断されてしまうものである。 ウ そして、上記相違点2に係る本願発明1の構成、及び、この構成を導き出す動機付け(引用発明において、重要度が最も高い負荷である燃料ポンプ14aへの電流が遮断されることがないようにするという動機付け)は、刊行物1及び2のいずれにも、記載も示唆もされていないから、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明1の構成を想到することは、当業者にとって格別に困難なことではないとはいえない。 (3)小括 したがって、相違点1について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2について 本願発明2は、本願発明1の発明特定事項を全て備えるものであるから、本願発明1と同様の理由(上記1)により、引用発明及び刊行物2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明できたものとはいえない。 第7 むすび 以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-11-27 |
出願番号 | 特願2012-257286(P2012-257286) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B60R)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 志水 裕司 |
特許庁審判長 |
氏原 康宏 |
特許庁審判官 |
島田 信一 出口 昌哉 |
発明の名称 | 電子制御装置 |
代理人 | 瀧野 文雄 |
代理人 | 福田 康弘 |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 鳥野 正司 |