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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G01S
管理番号 1334848
審判番号 不服2015-12831  
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-06 
確定日 2017-11-20 
事件の表示 特願2013-533867「紫外線放射光線を用いた捜索および救援」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月19日国際公開、WO2012/050786、平成25年12月19日国内公表、特表2013-545086〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月23日を出願日(パリ条約による優先権主張 2010年10月12日(優先日)、米国)とする国際特許出願であって、平成26年3月3日付けで拒絶理由が通知がされ、同年9月8日付けで手続補正がされ、平成27年3月3日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がされたものである。
その後、当審より平成28年5月26日付けで拒絶理由が通知がされ、同年8月26日付けで手続補正がされ、同年11月15日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知されたところ、平成29年5月16日付けで意見書が提出された。

第2 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、概略、以下のとおりである。

「本件出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。



請求項1の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するための回路」という記載、請求項10の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器に結合される回路と、を備え、前記回路が、前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期させ」という記載、及び請求項11の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するステップ」という記載に対応する、発明の詳細な説明の段落【0053】?【0061】、【0065】、【図8A】?【図8C】の記載について、下記1?4が不明であるため、本件出願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1?16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。

1 段落【0053】に「第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bは、回路760に結合される。回路760は、第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる」、「第1および第2の光電ガス放電検出器は、回路760に結合され、検出器730A,730Bのガス充電および放電を同期させる」と記載されているが、
(1)「同期させる」ということが具体的にどのようなことであるのかが不明である。
(第1及び第2の検出器の出力のand出力を検出するということなのか、or出力を検出するということなのか、それとも単に2つの検出器を並行して使用するということなのか。)
(2)「回路760」が具体的にどのような構成の回路であるのか、また、「回路760」が具体的にどのようにして「第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる」のかが不明である。

2 【図8A】に記載された回路においては、「回路760の第1入力762は結合された第2の出力信号735Aおよび第4の出力信号735B(即ち、カソード電極信号)に応答し、また、回路760の第2の入力764は結合された第1の出力信号733Aおよび第3の出力信号733B(即ちアノード電極信号)に応答する」(段落【0056】)ことになるが、このようにすると、「検出器760A,760Bのそれぞれの出力信号(733A,735A,733B,735B)が同期されることになる」(同段落)のか、その技術的な理由が不明である。

3 【図8A】に記載された回路により、「システム700の感度および信頼性を、非同期検出器からのガス放電排出から干渉を低減および/または除去することによって強化することができる」(段落【0057】)、「多数の同期した紫外線c-帯域放射光線検出器の他の利点として、電気ノイズの削減を含み、より信頼性のある正確な結果をもたらすことができる」(段落【0058】)という利点(効果)を得ることができる技術的な理由が不明である。
(2つの検出器出力のandを検出してノイズを除去する一般的な手法は、【図8A】の回路では実現不能と思われる。)
また、【図8B】、【図8C】に記載された回路により、上記利点(効果)を得ることができる技術的な理由が不明である。

4 段落【0065】に「多数の検出器の出力を同期して(検出器は、光電ガス放電検出器を含む)検出期間の干渉を低減、最小化、および/または除去するステップ」と記載されているが、「同期」するということが具体的にどのようなことであるのか、また、「多数の検出器の出力を同期」することと「検出期間の干渉を低減、最小化、および/または除去する」こととの関係が不明である。」

第3 本願特許請求の範囲の記載
平成28年8月26日付けで補正された本願特許請求の範囲の請求項1、2、10?12の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】
システムであって、
捜索および救援動作の間に放射光線の検出を可能とし、前記放射光線の少なくとも一部が紫外線c-帯域放射光線を含んだ紫外線c-帯域放射光線検出器であって、紫外線c-帯域放射光線検出器が、検出した紫外線c-帯域放射光線のレベルに対応付けて値の範囲を生成するように構成されることを特徴とする、紫外線c-帯域放射光線検出器と、
検出した紫外線c-帯域放射光線に応答して刺激を発生する刺激発生器と、
を備え、
前記紫外線c-帯域放射光線検出器が、
第1の紫外線c-帯域放射光線検出器と、
第2の紫外線c-帯域放射光線検出器と、
前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するための回路と、を備え、
前記刺激発生器が、生成した値を受け、これに応じて当該生成した値に比例した刺激を発生し、
前記刺激が、体知覚刺激、音響刺激または視覚刺激の内少なくとも1つを含み、
前記刺激発生器が、生成した値に比例して、比較的強い刺激または弱い刺激を発生することができる、
ことを特徴とする、システム。」

「【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、前記c-帯域放射光線検出器が光電ガス放電検出器である、システム。」

「【請求項10】
ハンドヘルド・デバイスであって、
捜索および救援動作の間に放射光線の検出を可能とし、前記放射光線の少なくとも一部が紫外線c-帯域放射光線を含んだ紫外線c-帯域放射光線検出器であって、紫外線c-帯域放射光線検出器が、検出した紫外線c-帯域放射光線のレベルに対応付けて値の範囲を生成するように構成されることを特徴とする、紫外線c-帯域放射光線検出器と、
検出した紫外線c-帯域放射光線に応答して刺激を発生する刺激発生器であって、刺激発生器が、生成した値を受け、これに応じて当該生成した値に比例した刺激を発生することを特徴とする刺激発生器と、
前記紫外線c-帯域放射光線検出器および前記刺激発生器をハウジングするための長尺体と、
を備え、
前記刺激発生器が、検出した紫外線c-帯域放射光線に応答して前記長尺体を振動させるように構成され、
前記紫外線c-帯域放射光線検出器が、
第1の紫外線c-帯域放射光線検出器と、
第2の紫外線c-帯域放射光線検出器と、
前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器に結合される回路と、を備え、
前記回路が、前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期させ、
前記刺激発生器が、前記長尺体の縦軸に対する紫外線c-帯域放射光線を発する供給源の方向に対応して、前記長尺軸を振動させるように構成され、
前記刺激発生器が、生成した値に比例して、比較的強い刺激または弱い刺激を発生することができる、
ことを特徴とするハンドヘルド・デバイス。」

「【請求項11】
捜索および救援方法であって、
捜索および救援ビーコンによって発せられる紫外線c-帯域放射光線を検出するステップであって、検出した紫外線c-帯域放射光線のレベルに対応付けて値の範囲を生成するように紫外線c-帯域放射光線検出器が構成されることを特徴とする、紫外線c-帯域放射光線を検出するステップと、
ユーザに知らせるために、検出した紫外線c-帯域放射光線に応答して刺激を発生するステップであって、生成した値を受け、これに応じて当該生成した値に比例した刺激を刺激発生器が生成することを特徴とする、刺激を発生するステップと、
を含み、
前記紫外線c-放射光線が第1の紫外線c-帯域放射光線検出器および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器を用いて検出され、更に、
前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するステップを含み、
前記刺激が、体知覚刺激、音響刺激または視覚刺激の内少なくとも1つを含み、
前記刺激発生器が、生成した値に比例して、比較的強い刺激または弱い刺激を発生することができる、
ことを特徴とする方法。」

「【請求項12】
前記紫外線c-放射光線が光電ガス放電検出器を用いて検出される、請求項11記載の方法。」

第4 当審の判断
1 本願明細書の発明の詳細な説明には以下の記載がある。なお、下線は当審が付した。
「【0053】
これより図8Aを参照すると、更なる実施形態では、システム700は、少なくとも2つの紫外線c-帯域検出器(例えば、第1の紫外線c-帯域放射光線放出器730Aおよび第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730B)を含む。第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bは、回路760に結合される。回路760は、第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる。いくつかの実施形態では、第1の紫外線c-帯域放射光線検出器730Aは第1の光電ガス放電検出器を含み、第2の紫外線c-帯域放射光線検出器は第2の光電ガス放電検出器を含むものもある。第1および第2の光電ガス放電検出器は、回路760に結合され、検出器730A,730Bのガス充電および放電を同期させる。
【0054】
ある特定の実施形態では、第1の紫外線c-帯域放射光線検出器730Aは、第1の出力信号733Aが供給される出力ポート732A、および第2の出力信号735Bが供給される出力ポート734Aを含む。第1の出力信号733Aおよび第2の出力信号735Aは、検出器730Aのカソード電極信号およびアノード電極信号を表すことができ、検出器730Aで受ける紫外線c-帯域放射光線に比例する。
【0055】
第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730Bは、第3の出力信号733Bが供給される出力ポート732B、および第4の出力信号735Bが供給される出力ポート734Bを含む。第3の出力信号733Bおよび第4の出力信号735Bは、検出器730Bのカソード電極信号およびアノード電極信号を表すことができ、検出器730Bで受ける紫外線c-帯域放射光線に比例する。
【0056】
回路760の第1入力762は結合された第2の出力信号735Aおよび第4の出力信号735B(即ち、カソード電極信号)に応答し、また、回路760の第2の入力764は結合された第1の出力信号733Aおよび第3の出力信号733B(即ちアノード電極信号)に応答する。このようにして、検出器760A,760Bのそれぞれの出力信号(733A,735A,733B,735B)が同期されることになると言うことができる。
【0057】
有利なことに、このような構成は、システム700の感度および信頼性を、非同期検出器からのガス放電排出から干渉を低減および/または除去することによって強化することができる。更にまた、2つ以上の紫外線cー帯域放射光線検出器(例えば、検出器730A,730B)は、放射光線を検出するために増加した表面領域を設けることができる。この表面領域は、システム700の感度を増加させることができる。したがって、システム700は、比較的大きめの距離以上で、および/または比較的弱い放射光線源から発せられた紫外線c-帯域射放射光線を検出するために用いることができる。更に、検出器(例えば、検出器730A,730B)は、様々な所望の方向からの放射光線を、視界の範囲、例えば、360度視野や270度視野等で受けることができる。
【0058】
多数の同期した紫外線c-帯域放射光線検出器の他の利点として、電気ノイズの削減を含み、より信頼性のある正確な結果をもたらすことができる。例えば、各検出器730は、電気ノイズを呈することができ、その少なくとも一部分は、検出器電極の熱効果によって生じる。しかしながら、各検出器730が統計学的に無相関の熱効果によって励起されるので、各検出器730からの電気的ノイズ・コンポーネントの合計を削減することができ、および/または最小化することができる(即ち、電気的ノイズ・コンポーネントの一部分は、一時的に平均ゼロよりも高くなり、そして、電気ノイズ・コンポーネントの他の部分は、一時的に平均ゼロよりも低くなる)。つまり、電気的ノイズ・コンポーネントの合計は、検出器730の数をそれぞれ2倍にするために、平均して最高3dBよりも低くすることができる。例えば、2つの紫外線c-帯域放射光線検出器730は、電気バックグランド・ノイズの熱誘起コンポーネントを、単一の紫外線c-帯域放射光線検出器と比較して最大3dB削減することができ、4つの紫外線c-帯域放射光線検出器730は、電気バックグランド・ノイズを最大6dB削減でき、8つの紫外線c-帯域放射光線検出器730は、電気バックグランド・ノイズを最大9dB削減できる、といった具合である。
【0059】
1つの実施形態では、図8bに示される検出器の配列では、第1の検出器730A’、第2の検出器730B’、および第3の検出器730C’が同期して回路760’に結合される。第1検出器730A’は、第1の方向737Aと平行して平面799に配置され、第1方向737Aから受けた放射光線の指向感度を供給する。第2検出器730B’は、第1方向737Aと直行する第2方向737Bと平行して平面799に配置され、第2方向737Bから受けた放射光線への指向性感度を供給する。第3検出器730Cは第1方向737と反対の第3の方向737Cと平行して平面799に配置され、第3方向737Cから受けた放射光線の指向性感度を供給する。このようにして、第1検出器730A’、第2検出器B’および第3検出器730C’は、配列位置Pのまわりの約270度に等しい検出器視界を提供することができる。
【0060】
これより図8Cを参照すると、同期される検出器(全般的に符号730’’で表す)におけるある特定の実施形態では、検出器730’’に結合される回路760’’は、信号条件付ボード739を含み、入力ポート764’においてアノード信号733’’に結合し、入力ポート762’にカソード信号735’’に結合し、それぞれ受けるように構成される。なお、3つの紫外線c-帯域検出器730’’が図8Cに示されているが、勿論、如何なる数の紫外線c-帯域検出器を特定用途のノーズに応じて用いることができる。
【0061】
回路760’’は、電池770または他の電源に結合して電力を供給し、また、電力スイッチに結合して回路760’’を活性化/非活性化する。マイクロコントローラ・ユニット(MCU)774および/またはパルス幅調整器(PWM)ユニット776は、信号条件付ボード739に結合することができる。MCUおよびPWMユニットは、出力制御信号775,777を発生して、振動するモータ790の速度を制御し、これにより、ユーザが検知することができる振動を生成する。回路760’’は、例えばNMOS778および/または1つ以上の整流ダイオード779のような追加のコンポーネントを用いることができる。」

「【0065】
これより図10Aを参照すると、更なる実施形態では、方法1000’は、ステップ1012において、多数の検出器を用いて紫外線c-帯域放射光線を検出するステップ、並びに、ステップ1014において、多数の検出器の出力を同期して(検出器は、光電ガス放電検出器を含む)検出期間の干渉を低減、最小化、および/または除去するステップを含む。」

2 請求項2の「請求項1記載のシステムにおいて、前記c-帯域放射光線検出器が光電ガス放電検出器である、システム」という記載からすると、請求項1記載のシステムの発明には、c-帯域放射光線検出器が「光電ガス放電検出器」ではない態様のものも含まれることになるところ、c-帯域放射光線検出器が「光電ガス放電検出器」ではなく、例えば電気的装置ではない検出器(化学的変化を利用するものなど)である場合には、そもそもそれらを「同期」させるとはどのような意味であるのかが不明である。そして、(1)第1紫外線c-帯域放射光線検出器及び第2紫外線c-帯域放射光線検出器を「同期」させるということが具体的にどのようなことであるのか、(2)「同期」させる回路が具体的にどのような構成の回路であるのか、については発明の詳細な説明に記載されていないため不明であるし、また、上記(1)、(2)が優先日前に技術常識であったともいえない。
そうすると、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1記載の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するための回路」を備えるシステムの発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

3 仮に、請求項1記載のシステムの発明におけるc-帯域放射光線検出器が「光電ガス放電検出器」であるとして、以下、検討する。
(1)本願明細書の発明の詳細な説明には、「同期」について、
「回路760は、第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる。」(【0053】)、
「第1および第2の光電ガス放電検出器は、回路760に結合され、検出器730A,730Bのガス充電および放電を同期させる。」(【0053】)、
「検出器760A,760Bのそれぞれの出力信号(733A,735A,733B,735B)が同期されることになると言うことができる」(【0056】)、
「多数の同期した紫外線c-帯域放射光線検出器の他の利点として、電気ノイズの削減を含み、より信頼性のある正確な結果をもたらすことができる。」(【0058】)、
「図8bに示される検出器の配列では、第1の検出器730A’、第2の検出器730B’、および第3の検出器730C’が同期して回路760’に結合される」(【0059】)、
「同期される検出器(全般的に符号730’’で表す)におけるある特定の実施形態では、検出器730’’に結合される回路760’’は、信号条件付ボード739を含み、入力ポート764’においてアノード信号733’’に結合し、入力ポート762’にカソード信号735’’に結合し、それぞれ受けるように構成される。」(【0060】)、
「ステップ1014において、多数の検出器の出力を同期して(検出器は、光電ガス放電検出器を含む)検出期間の干渉を低減、最小化、および/または除去するステップを含む。」(【0065】)、
などと記載されている。

(2)上記(1)の記載において、
ア 「光電ガス放電検出器」が具体的にどのような構成の検出器であるのかが不明であるし、また、「光電ガス放電検出器」の具体的な構成が優先日前に技術常識であったともいえないため、「第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる」、「検出器730A,730Bのガス充電および放電を同期させる」(【0053】)ということが具体的にどのようなことであるのかが不明である。
イ 「第1および第2の紫外線c-帯域放射光線検出器730A,730Bを同期させる」、「検出器730A,730Bのガス充電および放電を同期させる」(【0053】)とある一方、「検出器760A,760Bのそれぞれの出力信号(733A,735A,733B,735B)が同期される」(【0056】)ともあり、「同期」の対象が特定できない結果、「同期」させるということが具体的にどのようなことであるのかが不明である。
ウ 「同期」させるための回路である「回路760」、「回路760’」、「回路760’’」の具体的な構成が不明であるため、「同期」させるということが具体的にどのようなことであるのかが不明である。

(3)上記(2)アないしウより、本願明細書の発明の詳細な説明において、「同期させる」ということが具体的にどのようなことであるのかが不明であるから、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1記載の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するための回路」を備えるシステムの発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

4 上記2及び3と同様の理由により、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、請求項10記載の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期させ」る「回路」を備えるハンドヘルド・デバイスの発明、及び請求項11記載の「前記第1紫外線c-帯域放射光線検出器および前記第2紫外線c-帯域放射光線検出器を同期するステップを含」む捜索および救援方法の発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

5 請求人の主張について
請求人は、平成29年5月16日付けの意見書において、「ここで段落[0053]のご指摘頂いた箇所に関し、同期化は、検出器のガス充電および放電サイクルが同期されることを必要とする、すなわち、ガス充電が検出器にわたって同時に起こり、放電が検出器にわたって同時に行われるように構成される。ある例示的な実施形態では、これは、共通のアノードおよびカソードを検出器にわたって有することによって達成される。光電式ガス放電検出器は、周期的なガス充放電の原理で動作し、この周期性は入射放射線に関連する。かかる光電式ガス放電検出器の技術的特性を明確にすることによりご指摘頂いた不明瞭は解消した。」(「2.拒絶理由(特許法第36条第4項第1号)について」「(2)指示的事項「1」および「2」について」)と主張するが、「光電ガス放電検出器」が具体的にどのような構成の検出器であるのかが不明であるため、(1)「同期化は、検出器のガス充電および放電サイクルが同期されることを必要とする、すなわち、ガス充電が検出器にわたって同時に起こり、放電が検出器にわたって同時に行われるように構成される」、(2)「光電式ガス放電検出器は、周期的なガス充放電の原理で動作し、この周期性は入射放射線に関連する」、ということがどのようなことであるのか不明であるし、また、「光電ガス放電検出器」の具体的な構成が優先日前に技術常識であったともいえないため、上記(1)、(2)が本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていると同視することもできない。
また、請求人は、同意見書において、「ここで、上述した光電式ガス放電検出器は、検出器が放電すると、紫外線が放射される。複数のこのような検出器を有する装置を構成する場合、これらの放射が望ましくないノイズ源となることが判明した。例えば、典型的な回路は、本願の図8Aに示されている。これは、共通アノードリード及び共通カソードリードに接続された3つの光電式ガス放電検出器(730A、730B)を示す。光電式ガス放電検出器は、周期的なガス充電およびガス放電の原理で動作し、この周期性は入射放射線に関連する。検出器のカソードに入射するUV放射線は、放電が起こるまで光電子が蓄積し、アノードとカソードとの間の回路を閉じる。しかし、検出器は共通のアノードおよびカソードリードを有するので、一方の検出器が放電すると、他方の検出器のカソードの光電子が放電検出器の閉回路にわたって流れる。したがって、図8Aに示す回路の効果は、検出器の出力の合計ではなく、代わりに、検出器のパルス出力が互いに同期していることになる。これは、本明細書にて指摘した理由から技術的に有利である。本願の発明者らは、検出器放電として生成されたUV光子が、別の検出器上の光電子の蓄積に寄与し得ると判断した。これは、結果として、他の検出器のノイズ源または誤った読み取り値をもたらす可能性がある。本願の発明者らは、検出器の電荷および放電サイクルの同期化を提供することによって、放電生成UV光子によって引き起こされる別の検出器の有害な影響を緩和することができることを見出した。したがって、互いに近接した複数の光電式ガス放電検出器の使用に関連する欠点を伴わずに、検出器エリアを効果的に増加させることが可能である。」(「2.拒絶理由(特許法第36条第4項第1号)について」「(3)指示的事項「3」および「4」について」)と主張するが、「光電ガス放電検出器」が具体的にどのような構成の検出器であるのかが不明であるため、(1)「光電式ガス放電検出器は、周期的なガス充電およびガス放電の原理で動作し、この周期性は入射放射線に関連する」、(2)「検出器のカソードに入射するUV放射線は、放電が起こるまで光電子が蓄積し、アノードとカソードとの間の回路を閉じる。しかし、検出器は共通のアノードおよびカソードリードを有するので、一方の検出器が放電すると、他方の検出器のカソードの光電子が放電検出器の閉回路にわたって流れる。したがって、図8Aに示す回路の効果は、検出器の出力の合計ではなく、代わりに、検出器のパルス出力が互いに同期していることになる」、(3)「検出器の電荷および放電サイクルの同期化を提供する」、ということがどのようなことであるのか不明であるし、また、「光電ガス放電検出器」の具体的な構成が優先日前に技術常識であったともいえないため、上記(1)ないし(3)が本願明細書の発明の詳細な説明に記載されていると同視することもできない。

第5 むすび
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、当業者が発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
よって、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-06-29 
結審通知日 2017-06-30 
審決日 2017-07-11 
出願番号 特願2013-533867(P2013-533867)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G01S)
P 1 8・ 537- WZ (G01S)
P 1 8・ 536- WZ (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 関根 洋之
須原 宏光
発明の名称 紫外線放射光線を用いた捜索および救援  
代理人 山本 修  
代理人 小林 泰  
代理人 小野 新次郎  
代理人 竹内 茂雄  
代理人 夫馬 直樹  

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